JP7233436B2 - 糖タンパク質のための分析方法 - Google Patents
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Description
本願は、その内容が参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2018年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/650,279号の利益を主張する。
一般に、グリカンは、いくつかの単純な糖または単糖から成る分子である、多糖である。糖または単糖は、炭水化物の基本構成単位である。グリコシル化として公知である生物学的プロセスでは、グリカン、またはより具体的には、多糖残留物が、生体内でタンパク質に追加される。そのようなプロセスは、一般的に翻訳後修飾(PTM)と称される。換言すると、タンパク質が、細胞内で翻訳または作成された後にグリカンを含むように修飾される。PTMに起因するタンパク質は、糖タンパク質と称される。消化等のプロセスに起因する糖タンパク質のサブユニットまたは断片は、糖ペプチドと称される。
糖タンパク質の研究または識別は、グライコプロテオミクスと称されることができる。タンデム質量分析は、プロテオミクスにおいてその実績がある、グライコプロテオミクスで使用するための一般的ツールである。質量分析(MS)または質量分析/質量分析(MS/MS)(本明細書ではタンデム質量分析とも称される)が、サンプル内の糖タンパク質を識別するために使用されることができる。
断片化を通したペプチド識別
多くの場合、出現する、2つのタイプのグリコシル化が、存在する。これらは、N-グリコシル化およびO-グリコシル化である。Nグリカンが、コンセンサス配列、すなわち、アスパラギン-X-セリンまたはアスパラギン-X-トレオニンを伴ってアスパラギン残基(N)上に付着され、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸残基であり得る。Oグリカンが、セリン残基(S)またはトレオニン残基(T)上に付着される。O-グリコシル化のための付加的コンセンサス配列が、存在しないため、単一残基SおよびTコンセンサス配列が、本願ではO-グリコシル化のためのコンセンサス配列と称される。
電子ベースの解離(ExD)および衝突誘起解離(CID)が、多くの場合、タンデム質量分析糖ペプチド分析のための解離技法として使用される。ExDは、限定ではないが、ECD(電子捕捉解離)またはETD(電子伝達解離)を含むことができる。CIDは、質量分析計における解離のための最も従来的な技法である。ExDおよびCIDは、糖ペプチド分析のための補完的技法である。ExDは、ペプチド骨格を優先的に解離するため、ペプチド配列を分析するための理想的なツールである。CIDは、他方では、グリカンを優先的に解離するため、グリカン構造を分析するための有用なツールである。
従来、タンデム質量分析タンパク質識別実験は、サンプルの少なくとも1つのタンパク質をペプチドに消化すること、見出されるペプチドのそれぞれを断片化すること、およびペプチド毎に生成イオンスペクトルを生成することを伴った。見出されるペプチドの生成イオンスペクトルは、次いで、タンパク質を識別するように、タンパク質データベースと比較される。
本困難への1つのアプローチは、質量分析の前にグリカンを削減することである。グリカンは、酵素を使用して削減される。N-グリコシル化の場合、全てのグリカンが、多くの場合、酵素(ペプチド-NグリコシダーゼF、PNGase F)または(ペプチド-NグリコシダーゼA、PNGase A)によって除去される。これらの酵素を使用して、修飾アスパラギンが、アスパラギン酸塩に変換されるため、本変化は、CIDベースの質量分析によって検出されることができる。修飾部位が、決定されることができる。しかしながら、グリカン情報が、失われる。
グリカンデータベース合致問題を解決することへの1つのアプローチが、同一のサンプルに2つ以上の異なる解離技法を実施し、結果を組み合わせて、糖タンパク質を決定するように実施されてきた。例えば、Mayampurath et al.は、「Computational Framework for Identification of Intact Glycopeptides in Complex Samples」(Anal. Chem. 2014, 86,453-463)と題された、その論文(以降では「Mayampurath論文」で、糖タンパク質識別が、同一の前駆イオンのETD/CIDスペクトルを組み合わせることによって改良されたことを説明した。Mayampurath et al.はまた、CID、ETC、および高エネルギーCトラップ解離(HCD)からのデータまたはスコアが、糖ペプチドを識別するように組み合わせられる、方法も説明する。Mayampurath et al.は、糖ペプチド候補を、それぞれ、CID、ETC、およびHCDスペクトルにマップすることから、別個のCID、ETC、およびHCDスコアを計算する。糖ペプチド候補は、グリカンリストからの各Nグリカンを、インシリコトリプシン消化物から取得されるシークオンを含有するペプチドに付着させることによって、構築される。換言すると、本技法は、依然として、そのグリカンリスト内のグリカンの数によって限定される。
一般に、タンデム質量分析またはMS/MSは、化合物を分析するための周知の技法である。タンデム質量分析は、サンプルからの1つ以上の化合物のイオン化、1つ以上の化合物の1つ以上の前駆イオンの選択、断片または生成イオンへの1つ以上の前駆イオンの断片化、および生成イオンの質量分析を伴う。
質量分析(MS)(または質量分析/質量分析(MS/MS))と液体クロマトグラフィ(LC)の組み合わせは、混合物内の化合物の識別および定量化のための重要な分析ツールである。概して、液体クロマトグラフィでは、分析下の流体サンプルが、(典型的には、小型固体粒子、例えば、シリカの形態の)固体吸着材料で充填されるカラムを通して通過される。固体吸着材料(典型的には、固定相と称される)との混合物の成分のわずかに異なる相互作用に起因して、異なる成分が、充塞カラムを通して異なる通過(溶出)時間を有し、種々の成分の分離をもたらし得る。LC-MSでは、LCカラムから退出する流出物が、溶出または残留時間の関数として、検出されるイオン強度(検出されたイオンの数、合計イオン強度、もしくは1つ以上の特定の被分析物の測定値)を描写し得る、抽出されるイオンクロマトグラム(XIC)またはLCピークを発生させるように、質量分光分析を連続的に受け得る。
多数の異なるタイプの実験入手方法またはワークフローが、タンデム質量分析計を使用して実施されることができる。これらのワークフローの3つの広義のカテゴリは、標的化入手、情報依存性入手(IDA)またはデータ依存性入手(DDA)、およびデータ非依存性入手(DIA)である。
(a)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、配列のスコアを増分するステップと、
(b)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(c)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(d)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分するステップと、
によって、スコア化される。
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するためのバス102と結合されるプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令を記憶するために、バス102に結合されるランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得る、メモリ106も含む。メモリ106はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令の実行の間にテンポラリ変数または他の中間情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータシステム100はさらに、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するためのバス102に結合される読取専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスを含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110が、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
タンデム質量分析計を動作させ、サンプルの糖ペプチドのペプチド配列を識別するためのシステムおよび方法の実施形態が、本発明の本詳細な説明に説明される。本詳細な説明では、解説の目的のために、多数の具体的詳細が、本発明の実施形態の徹底的な理解を提供するように記載される。しかしながら、当業者は、本発明の実施形態が、これらの具体的詳細を伴わずに実施され得ることを理解するであろう。他の事例では、構造およびデバイスが、ブロック図形態で示される。さらに、当業者は、方法が提示および実施される具体的配列が、例証的であり、配列が、変動され、依然として、本発明の実施形態の精神および範囲内に留まり得ることが検討されることを容易に理解することができる。
上記に説明されるように、CIDは、グリカンを優先的に解離する。結果として、CIDは、CIDが糖ペプチドに適用されるときに、グリカンの部分またはペプチド全体を伴うグリカンの部分を有する、グリカン断片を生成する。CIDが、サンプル内の未修飾ペプチドに適用されるとき、データベースとの比較によって配列決定され得る、ペプチド断片を生成する。糖タンパク質は、プロテアーゼ消化によって、グリコシル化ペプチドおよび未修飾ペプチドの両方を生成する。グリコシル化は、消化によって無傷であり、消化されたペプチド上に留まる。糖ペプチドのペプチド配列および未修飾ペプチドは、タンパク質の異なる部分であるため異なる。
図3は、種々の実施形態による、糖タンパク質フェチュインが図2の方法のCID分析部分を通して処理される様子の実施例を示す、例示的フローチャート300である。ステップ210では、フェチュインが、トリプシンを使用して消化され、例えば、1つ以上の糖ペプチドおよび未修飾ペプチドを生成する。ステップ220では、グリカンを伴う/伴わないペプチドが、CIDを使用して断片化され、CID生成イオンが、分析され、CID生成イオンスペクトルを生成する。
図2に戻ると、ステップ230では、CIDを用いて断片化された同一の前駆イオン(サンプルから消化される)がまた、ExDを使用して断片化され、ExD生成イオンが、分析され、ExD生成イオンスペクトルを生成する。上記に説明されるように、ExDが、ペプチド骨格を優先的に解離し、グリカンが、無傷でペプチド断片上に留まるため、これは、ペプチド配列を分析するための理想的なツールである。換言すると、ExD生成イオンスペクトルは、特に、グリコシル化アミノ酸残基を決定するために非常に適している。
図4は、種々の実施形態による、フェチュイン消化物が図2の方法のExD分析部分を通して処理される様子の実施例を示す、例示的フローチャート400である。ステップ210では、フェチュインが、例えば、トリプシンを使用して消化され、1つ以上の糖ペプチドを生成する。ステップ230では、CID測定において標的化された、消化されたフェチュイン内の同一の糖ペプチドが、ExDを使用して断片化され、ExD生成イオンが、分析され、ExD生成イオンスペクトル410を生成する。
より具体的には、糖ペプチドスコア化は、候補ペプチド配列が、糖ペプチドの修飾部位のためのコンセンサス配列を含有しないかどうかを決定することによって開始する。候補ペプチド配列が、コンセンサス配列を含有しない場合、最終スコアは、ゼロに設定される。換言すると、候補ペプチド配列は、無視される。本ステップは、図2のステップ225と同一であることに留意されたい。したがって、これは、ステップ225が実施される場合、必要とされない。ステップ225は、各候補ペプチド配列がグリコシル化修飾部位のためのコンセンサス配列を含むことを確認することを想起されたい。
図2に戻ると、付加的ステップが、糖ペプチドのペプチド部分の配列を検証し、糖ペプチドのペプチド部分の実際の修飾部位を識別し、糖ペプチドのグリカン部分の構造を決定するように、実施されることができる。ステップ241では、グリカンの質量または翻訳後修飾(PTM)質量が、計算される。PTM質量は、測定された前駆イオンと候補ペプチド配列の理論的質量との間の質量差から計算される。
図7は、種々の実施形態による、図2の方法を使用して、フェチュインの糖ペプチドのペプチド部分の配列の正当性が立証される様子、糖ペプチドのペプチド部分の実際の修飾部位が識別される様子、および糖ペプチドのグリカン部分の構造が決定される様子の実施例を示す、例示的フローチャート700である。ステップ241では、PTM質量が、計算される。PTMまたはグリカン質量は、ステップ232において見出される前駆イオンの実験質量(m/z×z)から、ステップ232において見出される候補ペプチド配列の理論的質量を減算することによって見出される。例えば、2222.81amuのPTM質量が、ステップ232において見出される前駆イオンの実験質量(987.16×4)から、ステップ232において見出される候補配列の理論的質量を減算することによって、フェチュインの糖ペプチドに関してステップ241において見出される。
修飾部位におけるグリカン720の構造もまた、ステップ243に示される。種々の実施形態では、グリカン構造720は、ステップ241において計算されるPTM質量から見出される。PTM質量を使用する、一実施形態では、グリカン構造720は、1つ以上のグリカンデータベースを使用して推定される。例えば、グリカン構造720は、実験PTM質量の事前決定された質量閾値内のグリカン質量を有するグリカンを1つ以上のグリカンデータベース内で見出すことによって、見出される。
図2に戻ると、種々の実施形態では、ステップ220において実施されるLC-CID測定およびステップ230において実施されるLC-ExD測定は、同一のサンプルに関して別個に実施される。換言すると、ステップ220および230において実施される測定は、同一の消化されたサンプル210に実施される別個の質量分析実験である。ステップ220および230における別個のCIDおよびExD質量分析実験はそれぞれ、例えば、従来のIDAタンデム質量分析ワークフローを使用することができる。
図14は、種々の実施形態による、タンデム質量分析計を動作させ、サンプルの糖ペプチドのペプチド配列を識別するためのシステムの例示的概略図1400である。図14のシステムは、イオン源デバイス110と、質量単離デバイスまたはフィルタ115と、第1の断片化デバイス120と、第2の断片化デバイス125と、質量分析器130と、プロセッサ140とを含む。
(a)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、配列のスコアを増分するステップと、
(b)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(c)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(d)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分するステップと、
によって、配列をスコア化する。
(a)配列全体からのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、配列のスコアを増分するステップと、
(b)配列全体からのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、配列のスコアを増分するステップと、
によって、1つ以上の修飾候補配列のそれぞれをスコア化する。
図15は、種々の実施形態による、タンデム質量分析計を動作させ、サンプルの糖ペプチドのペプチド配列を識別するための方法1500である。
(c)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、配列のスコアを増分するステップと、
(d)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(c)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(d)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分するステップと、
によって、スコア化される。
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、そのコンテンツが、タンデム質量分析計を動作させ、サンプルの糖ペプチドのペプチド配列を識別するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行されている命令を伴うプログラムを含む、非一過性の有形コンピュータ可読記憶媒体を含む。本方法は、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システムによって実施される。
(a)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、配列のスコアを増分するステップと、
(b)配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(c)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分しないステップと、
(d)配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する、ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、スコアを増分するステップと、
によって、配列をスコア化する。
Claims (21)
- タンデム質量分析計を動作させ、サンプルの糖ペプチドのペプチド配列を識別するためのシステムであって、
イオン源デバイスであって、前記イオン源デバイスは、プロテアーゼを使用して消化されたサンプルを受容およびイオン化し、イオンビームを生成するように適合される、イオン源デバイスと、
タンデム質量分析計(MS/MS)の質量単離デバイスであって、前記質量単離デバイスは、前記イオン源デバイスのイオンビームから前駆イオンを選択するように適合される、質量単離デバイスと、
前記MS/MSの第1の断片化デバイスであって、前記第1の断片化デバイスは、衝突誘発解離(CID)を使用して、選択された前駆イオンを断片化するように、かつ生成イオンを生成するように適合される、第1の断片化デバイスと、
前記MS/MSの第2の断片化デバイスであって、前記第2の断片化デバイスは、電子ベースの解離(ExD)を使用して、選択された前駆イオンを断片化するように、かつ生成イオンを生成するように適合される、第2の断片化デバイスと、
前記MS/MSの質量分析器であって、前記質量分析器は、前記第1または第2の断片化デバイスから生成イオンを質量分析し、生成イオンスペクトルを生成するように適合される、質量分析器と、
前記タンデム質量分析計と通信するプロセッサであって、
(i)第1のイオンビームから少なくとも1つの前駆イオンを選択するように前記質量単離デバイスに命令することと、
(ii)前記少なくとも1つの前駆イオンを断片化し、複数のCID生成イオンを生成するように前記第1の断片化デバイスに命令することと、
(iii)前記複数のCID生成イオンを質量分析し、第1のCIDスペクトルを生成するように前記質量分析器に命令することと、
(iv)前記第1のCIDスペクトルから1つ以上の理論的候補糖ペプチド配列のリストを決定することと、
(v)前記サンプルから前記イオン源デバイスによって生成される第2のイオンビームから、前記少なくとも1つの前駆イオンを再び選択するように前記質量単離デバイスに命令することと、
(vi)前記少なくとも1つの前駆イオンを断片化し、複数のExD生成イオンを生成するように前記第2の断片化デバイスに命令することと、
(vii)前記複数のExD生成イオンを質量分析し、ExDスペクトルを生成するように前記質量分析器に命令することと、
(viii)前記リストの候補配列毎に、cおよびz断片ルールを使用して、前記配列を計算的に断片化し、複数の理論的断片を生成し、前記複数の理論的断片に関して質量対電荷比(m/z)値を計算し、
(e)前記配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記配列のスコアを増分することと、
(f)前記配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分しないことと、
(g)前記配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分しないことと、
(h)前記配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分することと
によって、前記配列をスコア化することと、
(ix)最高スコアを伴う前記リストの候補配列を、前記サンプルの糖ペプチドのペプチド配列として識別することと
を行う、プロセッサと
を備える、システム。 - グリカン修飾部位のコンセンサス配列は、Oグリカンコンセンサス配列SまたはT、または、Nグリカンコンセンサス配列NxTまたはNxSを含み、x≠Pであり、S=セリン、T=トレオニン、N=アスパラギン、およびP=プロリンである、請求項1に記載のシステム。
- 前記プロセッサは、
前記第1のCIDスペクトルを使用して、タンパク質データベースを検索し、タンパク質のリストを生成することと、
前記プロテアーゼの開裂ルールを使用して、前記タンパク質リストのうちの各タンパク質を計算的に消化し、理論的ペプチド配列のリストを生成することと、
グリカン修飾部位のコンセンサス配列を含む前記ペプチド配列リストから各理論的糖ペプチド配列を選択し、前記1つ以上の理論的候補糖ペプチド配列のリストを生成することと
によって、前記第1のCIDスペクトルから1つ以上の理論的候補糖ペプチド配列のリストを決定する、請求項1に記載のシステム。 - 分離デバイスであって、経時的に前記消化されたサンプルのペプチドを分離し、前記分離されたペプチドを前記イオン源デバイスに導入するように適合される、分離デバイス
をさらに備え、前記プロセッサはさらに、
複数の時間ステップにおいて前駆イオンの質量範囲を選択するように前記質量単離デバイスに命令することと、
前記複数の時間ステップにおいて前記前駆イオンの質量範囲を質量分析し、前記前駆イオンの質量範囲の前駆イオン毎に、経時的に前駆イオンm/z、電荷、および強度値のクロマトグラムを生成するように前記質量分析器に命令することと、
前記クロマトグラムから前記少なくとも1つの前駆イオンを選択することであって、前記少なくとも1つの前駆イオンのm/z、電荷、および強度値は、前記クロマトグラムから把握される、ことと
を行う、請求項1に記載のシステム。 - 前記プロセッサはさらに、前記少なくとも1つの前駆イオンのm/zおよび電荷から見出される前記少なくとも1つの前駆イオンの実験質量から、前記識別された候補配列の理論的に計算された質量を減算することによって、翻訳後修飾(PTM)質量を計算する、請求項4に記載のシステム。
- 前記プロセッサはさらに、最高スコアを伴う前記識別された候補配列の正当性を立証し、前記立証することは、
前記PTM質量を前記識別された候補配列の1つ以上のコンセンサス配列グリカン修飾部位のそれぞれに追加し、1つ以上の修飾候補配列を生成し、前記1つ以上の修飾候補配列のそれぞれを理論的に断片化することと、
前記1つ以上の修飾候補配列のそれぞれをスコア化することであって、前記スコア化することは、
(c)配列全体からのc断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記配列のスコアを増分することと、
(d)配列全体からのz断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記配列のスコアを増分することと
による、ことと、
修飾候補配列のスコアが、前記識別された候補配列のスコアを超える場合に、前記識別された候補配列の正当性を立証することと
による、請求項5に記載のシステム。 - 修飾候補配列のスコアが、前記識別された候補配列のスコアを超える場合、前記プロセッサは、前記修飾候補配列の修飾部位を前記識別された候補配列の修飾部位として識別する、請求項6に記載のシステム。
- 前記プロセッサはさらに、前記PTM質量を使用して、グリカン構造およびそれらの質量のデータベースを検索することによって、前記サンプルの糖ペプチドのグリカン構造を決定する、請求項5に記載のシステム。
- 前記プロセッサはさらに、グリカン構造およびそれらの質量のデータベースを検索し、前記PTM質量を各グリカン構造の各質量と比較し、前記第1のCIDスペクトルのグリカン断片を各グリカン構造のサブユニットと比較することによって、前記サンプルの糖ペプチドのグリカン構造を決定する、請求項5に記載のシステム。
- 前記プロセッサはさらに、前記PTM質量を構成糖のリストの任意の組み合わせの質量と比較することによって、前記サンプルの糖ペプチドのグリカン構造を決定する、請求項5に記載のシステム。
- 前記構成糖のリストは、Gal、Man、GlcNAC、GalNAc、Fuc、Neu5Gc、およびNeu5Acを含むことができる、請求項10に記載のシステム。
- 前記プロセッサは、前記サンプルに適用される第1のタンデム質量分析実験においてステップ(i)-(iv)、および前記サンプルに適用される第2のタンデム質量分析実験においてステップ(v)-(ix)を実施する、請求項1に記載のシステム。
- 前記プロセッサはさらに、
前記第1のCIDスペクトルから1つ以上のグリカン断片を識別し、グリカン断片を含むため、ExD分析のために前記少なくとも1つの前駆イオンを前駆イオン包含リストに追加することと、
前記包含リストから前記第2のタンデム質量分析実験における厳選した前駆イオンのみを選択するように前記質量単離デバイスに命令することと
を行う、請求項12に記載のシステム。 - グリコシル化ペプチド濃縮方法がさらに、前記第2のタンデム質量分析実験の前に前記消化されたサンプルに適用され、濃縮される消化されたサンプルを生成し、前記第2のタンデム質量分析実験は、前記濃縮される消化されたサンプルを使用して実施される、請求項12に記載のシステム。
- 前記グリコシル化ペプチド濃縮は、レクチンカラムを使用して適用される、請求項14に記載のシステム。
- 前記プロセッサはさらに、
(x)第3のイオンビームから同一の少なくとも1つの前駆イオンを選択するように前記質量単離デバイスに命令することと、
(xi)前記少なくとも1つの前駆イオンを断片化し、第2の複数のCID生成イオンを生成するように前記第1の断片化デバイスに命令することと、
(xii)前記第2の複数のCID生成イオンを質量分析し、第2のCIDスペクトルを生成するように前記質量分析器に命令することと、
(xiii)グリカン構造およびそれらの質量のデータベースを検索し、前記第2のCIDスペクトルのグリカン断片を各グリカン断片のサブユニットと比較することによって、前記サンプルの糖ペプチドのグリカン構造を決定することと
を行う、請求項14に記載のシステム。 - 前記プロセッサは、前記濃縮される消化されたサンプルに適用される第3のタンデム質量分析実験においてステップ(x)-(xiii)を実施する、請求項16に記載のシステム。
- 前記第2のイオンビームおよび前記第3のイオンビームは、同一のイオンビームであり、前記プロセッサは、前記濃縮される消化されたサンプルに適用される前記第2のタンデム質量分析実験においてステップ(v)-(ix)およびステップ(x)-(xiii)を実施する、請求項16に記載のシステム。
- 前記第1のイオンビームおよび前記第2のイオンビームは、同一のイオンビームであり、前記プロセッサは、前記サンプルに適用される同一のタンデム質量分析実験においてステップ(i)-(iv)およびステップ(v)-(ix)を実施する、請求項1に記載のシステム。
- タンデム質量分析計を動作させ、サンプルの糖ペプチドのペプチド配列を識別するための方法であって、
プロセッサを使用して、第1のイオンビームから少なくとも1つの前駆イオンを選択するようにタンデム質量分析計(MS/MS)の質量単離デバイスに命令することであって、前記第1のイオンビームは、プロテアーゼを使用して消化されたサンプルを受容およびイオン化するように適合されるイオン源デバイスによって生成される、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記少なくとも1つの前駆イオンを断片化し、複数のCID生成イオンを生成するように、衝突誘発解離(CID)を使用して、選択された前駆イオンを断片化するように適合される前記MS/MSの第1の断片化デバイスに命令することと、
前記プロセッサを使用して、前記複数のCID生成イオンを質量分析し、第1のCIDスペクトルを生成するように前記MS/MSの質量分析器に命令することと、
前記プロセッサを使用して、前記第1のCIDスペクトルから1つ以上の理論的候補糖ペプチド配列のリストを決定することと、
前記プロセッサを使用して、前記サンプルから前記イオン源デバイスによって生成される第2のイオンビームから、前記少なくとも1つの前駆イオンを再び選択するように前記質量単離デバイスに命令することと、
前記プロセッサを使用して、前記少なくとも1つの前駆イオンを断片化し、複数のExD生成イオンを生成するように、電子ベースの解離(ExD)を使用して、前記第2のイオンビームから選択された前駆イオンを断片化するように適合される前記MS/MSの第2の断片化デバイスに命令することと、
前記プロセッサを使用して、前記複数のExD生成イオンを質量分析し、ExDスペクトルを生成するように前記質量分析器に命令することと、
前記リストの候補配列毎に、前記プロセッサを使用して、cおよびz断片ルールを使用して、前記配列を計算的に断片化し、複数の理論的断片を生成し、前記複数の理論的断片に関して質量対電荷比(m/z)値を計算し、
(a)前記配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記配列のスコアを増分することと、
(b)前記配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分しないことと、
(c)前記配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分しないことと、
(d)前記配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分することと
によって、前記配列をスコア化することと、
前記プロセッサを使用して、最高スコアを伴う前記リストの候補配列を、前記サンプルの糖ペプチドのペプチド配列として識別することと
を含む、方法。 - コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、非一過性の有形コンピュータ可読記憶媒体を備え、前記非一過性の有形コンピュータ可読記憶媒体は、そのコンテンツが、命令を伴うプログラムを含み、前記命令は、タンデム質量分析計を動作させ、サンプルの糖ペプチドのペプチド配列を識別するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行され、
システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを備え、前記明確に異なるソフトウェアモジュールは、制御モジュールと、分析モジュールとを備える、ことと、
前記制御モジュールを使用して、第1のイオンビームから少なくとも1つの前駆イオンを選択するようにタンデム質量分析計(MS/MS)の質量単離デバイスに命令することであって、前記イオンビームは、プロテアーゼを使用して消化されたサンプルを受容およびイオン化するように適合されるイオン源デバイスによって生成される、ことと、
前記制御モジュールを使用して、前記少なくとも1つの前駆イオンを断片化し、複数のCID生成イオンを生成するように、衝突誘発解離(CID)を使用して、選択された前駆イオンを断片化するように適合される前記MS/MSの第1の断片化デバイスに命令することと、
前記制御モジュールを使用して、前記複数のCID生成イオンを質量分析し、第1のCIDスペクトルを生成するように前記MS/MSの質量分析器に命令することと、
前記分析モジュールを使用して、前記第1のCIDスペクトルから1つ以上の理論的候補糖ペプチド配列のリストを決定することと、
前記制御モジュールを使用して、前記サンプルから前記イオン源デバイスによって生成される第2のイオンビームから、前記少なくとも1つの前駆イオンを再び選択するように前記質量単離デバイスに命令することと、
前記制御モジュールを使用して、前記少なくとも1つの前駆イオンを断片化し、複数のExD生成イオンを生成するように、電子ベースの解離(ExD)を使用して、前記第2のイオンビームから選択された前駆イオンを断片化するように適合される前記MS/MSの第2の断片化デバイスに命令することと、
前記制御モジュールを使用して、前記複数のExD生成イオンを質量分析し、ExDスペクトルを生成するように前記質量分析器に命令することと、
前記リストの候補配列毎に、前記分析モジュールを使用して、cおよびz断片ルールを使用して、前記配列を計算的に断片化し、複数の理論的断片を生成し、前記複数の理論的断片に関して質量対電荷比(m/z)値を計算し、
(a)前記配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記配列のスコアを増分することと、
(b)前記配列のN末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分しないことと、
(c)前記配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのc断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分しないことと、
(d)前記配列のC末端側からグリカン修飾部位のコンセンサス配列までの前記複数の理論的断片のうちのz断片のm/z値に合致する前記ExDスペクトルの生成イオンピークのm/z値毎に、前記スコアを増分することと
によって、前記配列をスコア化することと、
前記分析モジュールを使用して、最高スコアを伴う前記リストの候補配列を、前記サンプルの糖ペプチドのペプチド配列として識別することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
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