JP7230570B2 - コネクタ端子用導電部材及びコネクタ端子 - Google Patents
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Description
この電気自動車の充電用プラグ部のコネクタ部品などにおいて、高電流・高電圧環境下での使用に加えて数万回の抜き差しに耐えうる耐摩耗性が求められるようになってきている。この課題に対して、特許文献1により、表面に錫めっきを施した銅合金材料上に電解ニッケルめっきを施した後、さらに電解銀めっきを施しためっき積層体が提案されている。
また、特許文献2では、Cu系基材の上にCu-Sn金属間化合物層、Sn系表面層を順に備え、Sn系表面層の上にNiめっき、硬質Agめっきを施したコネクタ用導電部材が提案され、コネクタとして長時間実装された後もある程度の高い表面硬度を維持することにより耐摩耗性を向上させたものが開示されている。
このように高電流・高電圧環境下で使用されるコネクタ用の銅端子材としては、Ni系の下地めっき層の上に貴金属めっき層を形成したものが広く用いられている。貴金属めっきの材料としては、導電性の観点からはAgが最も好適であるが、Agは空気中で硫化物を形成することにより変色、腐食を生じ易いため、長時間空気中で使用されると電気抵抗が増大するおそれがある。そのため、良好な導電性をより長く維持したい箇所ではAgよりも耐食性の高いAuの使用が望ましいが、高価なAuを使うとコストの大幅な上昇が予想され、それを抑えるためにはAuの使用量をできるだけ少なくする必要がある。すなわちAuめっきであれば、その厚さをできるだけ薄くすることが必要となる。
前記Sn層における前記Ni層との界面部に、SnにNiが固溶してなるSn-Ni固溶体及び/又はSnとNiとの金属間化合物を含有するSn-Ni層が形成され、
前記Ni層における前記基材の圧延面に対する法線方向から視た平均結晶粒径が10nm以上500nm以下であり、該平均結晶粒径の変動係数が1以下である。
なお、前記Sn-Ni層は、Sn層にNiが拡散することによって形成されるものであるが、局所的にSnが合金化せずそのまま存在している場合もある。平均結晶粒径の変動係数とは、平均結晶粒径の標準偏差を平均結晶粒径で割った値である。
この場合、Ni層の平均結晶粒径が10nm未満では、微細な結晶により耐摩耗性は向上するも、硬くなり過ぎて曲げ加工時に割れが生じ易い。Ni層の平均結晶粒径が500nmを超える粗大な結晶粒となると、耐摩耗性が低下する。また、平均結晶粒径の変動係数が1を超えると、結晶粒径のばらつきが大きくなり、実用上好ましいレベルの耐摩耗性を安定して得ることができない。
Sn-Ni固溶体及び/又はSn-Ni金属間化合物の平均結晶粒径をこの範囲にすることで、Sn層とNi層の密着性が向上する。平均結晶粒径がこの範囲を外れたものは、密着性の向上効果が十分には得られなくなる。
Sn-Ni層中にNi含有量を5at%以上とすることで、安定したSn-Ni金属間化合物層が形成され、Sn層とNi層の密着性が向上する。その含有量が5at%未満であると、Sn含有量が多過ぎるため、柔らかくなり過ぎて耐摩耗性低下のおそれがある。Ni含有量の上限は67at%が好ましい。
粒径比dTD/dNDの比がこの範囲内であると、より耐摩耗性が良好になる。dTD/dNDが1未満では、粒径が微細になることで、耐摩耗性は向上するが、細かくなり過ぎて、曲げた際に割れが生じ易くなる。dTD/dNDが10を超えると、ニッケル層の表面が粗くなり過ぎ、その凹凸の凸部が先行して摩耗することで摩耗粉が発生し、その摩耗粉の酸化による抵抗値の増大によって接続信頼性が低下するおそれがある。
Ni層におけるAu層と接する面のSaが0.5μm以下であると、耐摩耗性がさらに良好になる。0.5μmを超えると、その凹凸の凸部が先行して摩耗することで摩耗粉が発生し、その摩耗粉の酸化による抵抗値の増大によって接続信頼性が低下するおそれがある。
本発明のコネクタ端子は、前記コネクタ端子用導電部材からなり、相手端子に嵌合状態に接触する嵌合部を有し、該嵌合部の表面に前記部分皮膜が形成されている。
コネクタ端子用導電部材1,11は、Cu又はCu合金からなる基材2の表面に、Cu及びSnの金属間化合物からなる銅錫金属間化合物層3が形成され、Cu-Sn金属間化合物層3の上にSn又はSn合金からなるSn層4が形成されており、そのSn層4の表面の一部に部分皮膜5が形成されている。
具体的には、基材2は帯板状に形成された条材であり、Cu-Sn金属間化合物層3及びSn層4が形成されためっき付条材6の表面に、図2及び図3に示すように、その長さ方向に沿ってストライプ状に部分皮膜5が形成されている。なお、図2は雄端子として用いられるコネクタ端子用導電部材1、図3は雌端子として用いられるコネクタ端子用導電部材11を示している。
そして、このコネクタ端子用導電部材1,11をプレス成形することにより、複数の端子が帯板の長さ方向に並んで連続的に成形される。
雄端子21は、先端に、雌端子22に嵌合状態に接触する嵌合部31が形成され、その基端部にリード線圧着部32が形成されている。嵌合部31は棒状に形成され、リード線圧着部32は、リード線33の先端に露出している導体33aを嵌合する円筒部34が嵌合部31に連続して形成され、その円筒部34に連続して、一対のかしめ片35a,35bが左右に開いた状態に一体に形成された構成とされている。これらかしめ片35a,35bは、符号35aがリード線33の外被33bをかしめる外被用かしめ片であり、符号35bがリード線33の導体33aをかしめる導体用かしめ片である。
この部分皮膜の形成部位は、コネクタ端子用導電部材1,11を端子に加工したときに、相手端子と嵌合して接触状態となる部位(嵌合予定部とする)及びリード線がかしめられて圧着状態に接続される部位(圧着予定部位とする)にそれぞれ形成され、この部分皮膜5が形成されていない部位は、Sn層4の表面が露出している。通常は、リード線圧着部32,42は、雄端子21では嵌合部31と反対面、雌端子22では嵌合部41と同じ面に形成される。したがって、雄端子21に用いられるコネクタ用導電部材1では、図2に示すように部分皮膜5がめっき付条材6の両面に形成され、雌端子22に用いられるコネクタ用導電部材11では、図3に示すように、めっき付条材6の一方の面にのみ形成される。
なお、「嵌合予定部位」は、雄端子と雌端子とが直接面接触する部分にそれに隣接する若干のマージン幅の部分を加えた部位とするのが好適である。「圧着予定部位」も同様であり、リード線が圧着して接触する部分にそれに隣接する若干のマージン幅の部分を加えた部位とするのが好適である。
この様な個々のコネクタの雄端子21及び雌端子22が、雄端子毎、あるいは雌端子毎に複数本まとめてハウジングに収容されることにより多ピン型のコネクタとなる。
基材2はコネクタ端子としての使用に適した銅又は銅合金であれば特に限定しないが、導電性、耐熱性、強度、加工性等を考慮すると、以下に列挙する各種銅合金を適用するのが好ましい。
(1)Mg:0.15~3.0質量%、P:0.0005~0.1質量%(Pは不可避不純物として存在する品種もある)、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCu-Mg系合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のMSPシリーズ。
(2)Zn:2.0~32.5質量%、Sn:0.1~0.9質量%、Ni:0.05~1.0質量%、Fe:0.001~0.1質量%、P:0.005~0.1質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCu-Zn系合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のMNEX10。
(3)Cr:0.07~0.4質量%、Zr:0.01~0.15質量%、Si:0.005~0.1質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCr-Zr系銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のMZC1。
(4)Zr:0.005~0.5質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のC151。
(5)Fe:0.05~0.15質量%、P:0.015~0.05質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するFe-P系銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のTAMAC4。
(6)Fe:2.1~2.6質量%、Zn:0.05~0.20質量%、P:0.015~0.15質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するFe-Zn系銅合金であり、例えば三菱伸銅株式会社のTAMAC194。
(7)Ni:1.0~5.0質量%、Si:0.1~1.5質量%、Mg,Sn,Znのうち1種類または2種類以上を合計で0.01~2.0質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有するCu-Ni-Si系合金(コルソン系合金)であり、例えば三菱伸銅株式会社のMAXシリーズ。
これらの銅合金は、良好な熱伝導性、強度、熱クリープ性、耐熱性、加工性等を有しており、電気自動車用のコネクタ製造用銅合金条材として最適である。
また、このSn-Ni層7の平均厚みは0.02μm以上1μm以下が好ましい。また、Sn-Ni固溶体及び/又はSn-Ni金属間化合物の平均粒径は0.2μm以上5μm以下である。
また、このNi層8において、基材2の圧延面の法線方向から視た平均結晶粒径をdNDとし、基材2の圧延幅方向に対して垂直な面での平均結晶粒径をdTDとすると、その比dTD/dNDが1以上10以下である。さらに、このNi層8においてAu層9と接する面のISO25178に準拠した算術平均面高さSaは0.5μm以下である。平均結晶粒径の比dTD/dNDは1以上6以下がより好ましく、算術平均面高さSaは0.2μm以下がより好ましい。
なお、Au層もNi層も厚い方が耐摩耗性は良くなるが、あまり厚くしても効果は飽和してしまうためコスト的にメリットがなく、逆に厚過ぎると曲げの際に割れる恐れが増大することから、Au層とNi層の合計厚さは、0.05μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。
このNiめっきを施す前に、Sn層4の表面に薄くストライクめっき(フラッシュめっき)を例えば0.005μm以上0.2μm以下の厚みで施しても良い。ストライクめっきとしては、金、銀、パラジウム、ニッケル等の種々のめっきを適用できる。
Auめっきは、一般的なAuめっき浴であるシアン化金カリウムめっき浴を用いればよい。浴の温度は20℃以上50℃以下、電流密度は0.1A/dm2以上3A/dm2以下が適切である。このAuめっき層の膜厚は、本発明では0.01μm以上10μm以下の範囲で調整される。
更に、リード線圧着部32,42にも部分皮膜5が形成されてもよい。これにより、端子全体としての強度および耐久性が増し、外部リード線33とのはんだ付けなどの接合が容易になる。この外部リード線33と接合する部位は、かしめ加工などを施されることが多く、密着力が強固である部分皮膜5が形成されることにより、加工性が向上する。この場合、このリード線圧着部32,42に形成される部分皮膜5の厚みは、雄端子21と雌端子22との直接の挿抜力が作用しないので、コストダウンの面からも、嵌合部31,41に形成される部分皮膜5の厚みより小さくても良い。
(Cuめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:硫酸銅めっき液
液温:27℃
電流密度:4A/dm2
(Snめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:硫酸錫めっき液
液温:20℃
電流密度:2A/dm2
この部分皮膜用の各めっきの条件は以下の通りとした。
(銀ストライクめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:シアン化銀ストライクめっき液
液温:室温
電流密度:3A/dm2
(Niめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:スルファミン酸ニッケルめっき液
液温:50℃
電流密度:10A/dm2
(Auめっき条件)
処理方法:電解めっき
めっき液:シアン化金カリウムめっき液
液温:40℃
電流密度:1A/dm2
Ni層における平均結晶粒径は、試料表面のSEM画像より切断法にて100個の結晶粒径を算出し、これを平均した。その平均結晶粒径の標準偏差を平均結晶粒径で割ることで変動係数を求めた。
dTD/dNDの粒径比は、基材の圧延面の法線方向から視た平均結晶粒径dND、及び基材の圧延幅方向に対して垂直な面での平均結晶粒径dTDをそれぞれSEM画像により切断法にて算出し、その比率を求めた。
算術平均面高さは、ISO25178に従い、レーザー共焦点顕微鏡(LSCM)にて測定した。
Sn-Ni層における平均粒径は、SEM-EPMAによりSn-Ni固溶体及び/又はSn-Ni金属間化合物を確認した後、SEM-EBSDにより結晶粒界像を撮影し、100個の結晶粒径から算出した。
Sn-Ni層のNiの含有量(at%)は、TEM-EDXによりSn-Ni層の任意の5点で測定した値から算出した。
表面硬さは、加熱前と、実装時を想定した条件(150℃×1000hr)で加熱保持処理後について、マイクロビッカース硬度計にて測定した。
耐摩耗性(摺動試験)は、山崎精機研究所製精密摺動試験装置CRS-G2050-MTS型を使用し、摺動距離0.2mm、摺動速度0.4mm/s、接触荷重1.1N、摺動回数500往復を1セットとし、これを複数セット繰り返す条件で摺動回数と接触抵抗との関係を評価した。サンプル数は3個とし、サンプルの初期(試験開始前)の接触抵抗が1mΩ以下であることを確認した後、連続的に摺動させながら接触抵抗を測定し、接触抵抗が50mΩ以上となったのが何セット目であるかに基づき、良否を判定した。具体的には、50mΩに到達したセット数について、3個とも7セット目(3001~3500往復)以降であったものを「優」、いずれか1個でも6セット目であった(ただし、それを含め全て6セット目以降であった)場合は「良」、いずれか1個でも5セット目であった(ただし、それを含め全て5セット目以降であった)場合は「可」とし、いずれか1個でも4セット目以前で50mΩに達してしまったものがあった場合は「不可」とした。
曲げ加工性は、試料をBadWay:圧延垂直方向に幅10mm×長さ60mmに切出し、JIS Z 2248に規定される金属材料曲げ試験方法に準拠し、曲げ半径Rと押し金具の厚さtとの比R/t=1として180°曲げ試験を行い、曲げ部の表面及び断面にクラック等が認められるか否かを光学顕微鏡にて倍率50倍で観察した。クラック等が認められず、表面状態も曲げの前後で大きな変化がなかったものを「◎」、表面は光沢低下などの状態変化が認められたもののクラックの発生は確認できなかったものを「〇」、クラックは認められたものの、めっき剥離は認められなかったものを「△」、めっき自体の剥離が認められたものを「×」とした。
耐食性は、JISC60068-2-60に定める方法にて評価した。このJISにおける試験方法1にて4日間暴露し、表面変色の有無の確認および表面接触抵抗の測定を実施した。変色の判断基準はJISZ2371:塩水噴霧試験のレイティングナンバ評価を援用した。表面接触抵抗測定方法は日本伸銅協会技術標準(JCBA T323:2011)に準拠し、荷重を50gfとした。試験後に変色が見られなかったもの(レイティングナンバ10に相当するもの)を○、変色した領域の面積が金めっき実施面積の0.1%以下(同レイティングナンバ9以上に相当)であったものを△、変色した領域の面積が金めっき実施面積の0.1%を超えるもの(同レイティングナンバ9未満に相当)であったものを×とした。なお、試験前のものはすべて表面接触抵抗が2mΩ未満であった。
また、表に記載の比較例とは別に、貴金属めっきの材質による耐食性比較のため、表層をAgめっき層としたものについても複数のAgめっき層の厚みのサンプルを用意して同様の耐食性評価を行った。
これらの結果を表2に示す。
2 基材
3 Cu-Sn金属間化合物層
4 Sn層
5 部分皮膜
6 めっき付条材
7 Sn-Ni層
8 Ni層
9 Au層
31,41 嵌合部
32,42 リード線圧着部
43 弾性変形容易部
34,44 円筒部
35a,45a 外被用かしめ片
35b,45b 導体用かしめ片
Claims (5)
- Cu又はCu合金からなる基材の上に、Cu及びSnの金属間化合物からなるCu-Sn金属間化合物層が形成され、該Cu-Sn金属間化合物層の上にSn又はSn合金からなるSn層が形成されており、前記Sn層の表面において、端子に成形したときに端子同士が嵌合により接触状態となる予定の嵌合予定部位に、ストライプ状に部分皮膜が形成されており、該部分皮膜は、前記Sn層の上に形成されたNi又はNi合金からなるNi層と、該Ni層の上に形成されたAu又はAu合金からなるAu層とを有し、
前記Sn層における前記Ni層との界面部に、SnにNiが固溶してなるSn-Ni固溶体及び/又はSnとNiとの金属間化合物を含有するSn-Ni層が形成され、
前記Ni層における前記基材の圧延面に対する法線方向から視た平均結晶粒径が10nm以上500nm以下であり、該平均結晶粒径の変動係数が1以下であることを特徴とするコネクタ端子用導電部材。 - 前記Ni層における前記基材の圧延面の法線方向から視た平均結晶粒径をdNDとし、前記基材の圧延幅方向に対して垂直な面での平均結晶粒径をdTDとすると、その粒径比dTD/dNDが1以上10以下であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ端子用導電部材。
- 前記Ni層において前記Au層と接する面の算術平均面高さSaが0.5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ端子用導電部材。
- 前記基材は帯板状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のコネクタ端子用導電部材。
- 請求項1から3のいずれか一項記載のコネクタ端子用導電部材からなり、相手端子に嵌合状態に接触する嵌合部を有し、該嵌合部の表面に前記部分皮膜が形成されていることを特徴とするコネクタ端子。
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