以下、図面を参照し、本発明の一実施形態のコネクタを説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のコネクタは、以下の実施形態に限定されない。
図1および図2に示されるように、本実施形態のコネクタ1は、相手方コネクタCと接続され、コネクタ1と相手方コネクタCとによって、コネクタ構造Sを構成している。本実施形態では、コネクタ1がメスコネクタであり、相手方コネクタCがオスコネクタである。なお、コネクタ1がオスコネクタであり、相手方コネクタCがメスコネクタであってもよい。また、コネクタ1および相手方コネクタCを含むコネクタ構造Sは、例えば、電線Wが設けられたコネクタ1と、基板(図示せず)に取り付けられた相手方コネクタCとを接続するコネクタ構造であってもよいし、電線対電線など、他の構造を有するコネクタ構造であってもよい。
なお、以下では、後述するコネクタ1の端子が延在する方向を、端子の延在方向(以下、単に延在方向という)D1と呼ぶ。本実施形態では、延在方向D1は、コネクタ1と相手方コネクタCとが嵌合する方向と同方向となっている。また、端子2の延在方向D1に垂直な一の方向を高さ方向D2と呼ぶ。本実施形態では、高さ方向D2は、後述する突出部Pの突出方向と同方向となっている。また、端子2の延在方向D1および高さ方向D2の両方に垂直な方向を幅方向D3と呼ぶ。本実施形態では、幅方向D3は、複数の端子2が隣接する方向と同方向となっている。延在方向D1、高さ方向D2および幅方向D3は互いに垂直な方向となっている。また、端子2が、インナーハウジング4に向かって挿入される挿入方向をD11、インナーハウジング4から離脱する離脱方向をD12と呼ぶ。本実施形態では、挿入方向D11は、コネクタ1が相手方コネクタCに嵌合する方向と同方向であり、離脱方向D12は、コネクタ1が相手方コネクタCから離脱する方向と同方向となる。
相手方コネクタCは、本実施形態では、複数の相手方端子T(図1参照)と、複数の相手方端子Tが取り付けられる相手方ハウジング(オスハウジング)Hとを備えている。
相手方ハウジングHは、複数の相手方端子Tを保持する。相手方ハウジングHは、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。相手方ハウジングHは、コネクタ1の後述する嵌合部12と嵌合接続される。
相手方ハウジングHは、相手方端子Tが挿入される複数の端子挿入孔H1を有している。端子挿入孔H1のそれぞれは、相手方端子Tが挿入されて保持される孔である。複数の端子挿入孔H1は、相手方端子Tの配列に応じた数、位置に設けられる。
相手方端子Tは、コネクタ1の端子2(図4参照)に電気的に接続される端子である。本実施形態では、相手方端子Tはオス端子であり、メス端子であるコネクタ1の端子2に挿入される。具体的には、コネクタ1が相手方コネクタCに接続されたときに、相手方端子Tは、端子2に挿入されて、電気的に接続される。
相手方端子Tは、導電性を有する金属材料によって形成される。本実施形態では、相手方端子Tは細長いピン状に形成されている。相手方端子Tは、一端側が端子2に接続され、他端側は、図示しない基板にはんだ付けされて、基板の回路パターンに対して電気的に接続される。なお、相手方端子Tの形状は、端子2に接続されて電気的に接続可能であれば、特に限定されない。例えば、相手方端子は、端子2に挿入可能な板状に形成されていてもよい。また、コネクタ1の端子がオス端子である場合、相手方端子はメス端子とすることもできる。
相手方ハウジングHは、図1および図2に示されるように、コネクタ1の後述する嵌合部12が嵌合する。相手方ハウジングHは、図3に示されるように、コネクタ1の嵌合部12が挿入されて収容される、収容空間H2を有している。相手方ハウジングHの収容空間H2は、嵌合部12の外周を取り囲む壁部によって画定される。相手方ハウジングHの壁部の内面ISが、コネクタ1の嵌合部12の外周(後述する突出部P)に接触して嵌合する。本実施形態では、相手方ハウジングHの壁部は、第1嵌合壁部(上壁部)H31、第2嵌合壁部(底壁部)H32、第3嵌合壁部(側壁部)H33および第4嵌合壁部(側壁部)H34を有している。
本実施形態では、相手方ハウジングHの内面ISは、後述する突出部Pと当接可能な平坦面を有している。なお、相手方ハウジングHの内面ISは、第1嵌合壁部H31の内面だけでなく、第2嵌合壁部H32、第3嵌合壁部H33および第4嵌合壁部H34の内面も含み、ガイド溝H4以外の溝や凹部を有していてもよい。また、相手方ハウジングHの壁部(第1嵌合壁部(上壁部)H31)は、相手方ハウジングHの内面ISにおいて凹部として形成された、後述する嵌合部12のガイド突条13がガイドされるガイド溝H4を有している。ガイド溝H4は、本実施形態では、第1嵌合壁部H31の内面ISにおいて、端子2の延在方向D1に沿って延びる凹溝である。ガイド溝H4は、ガイド突条13が収容可能なように、ガイド突条13に対応した形状で、ガイド突条13よりもわずかに大きくなるように形成されている。ガイド溝H4は、ガイド突条13の位置に対応する所定の位置に形成されている。これにより、コネクタ1の嵌合部12が相手方コネクタCに嵌合する際に、コネクタ1を安定して挿入でき、さらに、コネクタ1の相手方コネクタCに対する上下方向の向きなど、コネクタ1が誤った向きで嵌合されることを抑制する。本実施形態では、図3に示されるように、幅方向D3に離間して一対のガイド溝H4が形成されている。これにより、コネクタ1がより安定して相手方コネクタCに嵌合する。
相手方ハウジングHは、コネクタ1のアウターハウジング5が相手方ハウジングHから離脱することを防止するために、アウターハウジング5に設けられたロック機構Lの係止爪51aに係合する被係止部などの抜け止め部H6(図1参照)を有している。抜け止め部H6は、本実施形態では、第1嵌合壁部H31に形成された係止凹部である。また、相手方ハウジングHは、後述するアウターハウジング5のリブ14に係合するリブ収容部H5を有している。リブ収容部H5は、リブ14の形状に対応した凹溝として形成されている。
相手方ハウジングHは、図1および図2においては、略直方体状に示されているが、相手方ハウジングHの形状は、コネクタ1の嵌合部12に接続可能であれば、特に限定されない。
コネクタ1は、図1および図2に示されるように、相手方コネクタCが外嵌される。換言すると、コネクタ1は相手方コネクタCの内側に挿入される。コネクタ1は、図1に示されるように、コネクタ基部11と、コネクタ基部11から延び、相手方コネクタCが外嵌される嵌合部12とを有している。
コネクタ基部11は、嵌合部12が延在する基部となる部位である。コネクタ基部11は、図2に示されるように、コネクタ1と相手方コネクタCとが嵌合した際に外部に露出しており、相手方コネクタCとコネクタ1とを嵌合する際に把持可能となっている。コネクタ基部11は、後述するアウターハウジング5によって構成されている。
嵌合部12は、相手方コネクタCに嵌合する部位である。嵌合部12は、相手方コネクタCの収容空間H2に挿入されて相手方コネクタCと嵌合する。コネクタ1と相手方コネクタCとが嵌合することにより、端子2と相手方端子Tとが電気的に接続される。なお、本明細書において、嵌合部12が相手方コネクタCに嵌合するという場合、嵌合部12(突出部P)が相手方コネクタCの相手方ハウジングHの内面ISに、高さ方向D2および/または幅方向D3に接触する状態で嵌め合わされることをいう。
嵌合部12は、インナーハウジング4の突出部Pとアウターハウジング5によって構成され、突出部Pが突出する部分を除いて、大部分がアウターハウジング5によって構成されている。嵌合部12は、本実施形態では、図1に示されるように、アウターハウジング5の上壁WL1、底壁WL2、側壁WL3、WL4により略直方体状に形成されている。また、嵌合部12は、アウターハウジング5の上壁WL1、底壁WL2、側壁WL3、WL4に対して垂直な先端面WL5を有している。先端面WL5は、相手方コネクタCの相手方端子Tが挿入可能な挿入孔WL51を有している。
嵌合部12は、図1に示されるように、コネクタ1と相手方コネクタCとが嵌合した際に、コネクタ1の相手方コネクタCからの離脱を防止するロック機構Lを有している。ロック機構Lは、係止爪51aを有するアーム51bと、アーム51bを押圧操作可能な操作部51cとを有している。より具体的には、ロック機構Lは、アウターハウジング5の上壁WL1の幅方向D3で中央部に設けられ、先端面WL5から離脱方向D12側に片持ち式に延び、延在方向D1でアーム51bの中央部に係止爪51aが設けられている。コネクタ1が相手方コネクタCに挿入されたときに、ロック機構Lの係止爪51aが相手方コネクタCの抜け止め部H6に係合して、コネクタ1が相手方コネクタCに対してロックされる。また、操作部51cを高さ方向D2に押圧することによって、係止爪51cと相手方コネクタCの抜け止め部H6との間の係合が解除され、コネクタ1を相手方コネクタCから取り外すことができる。
また、嵌合部12は、図1に示されるように、相手方コネクタCの内面に形成されたガイド溝H4(図3参照)にガイドされる、端子2の延在方向D1に沿って延びるガイド突条13を有している。ガイド突条13は、後述するように、延在方向D1に沿って延びるアウターハウジング側突条13aと、延在方向D1に沿って延びるインナーハウジング側突条13bとにより構成されている。アウターハウジング側突条13aとインナーハウジング側突条13bとは、延在方向D1で直線状となるように並んでいる。
また、嵌合部12は、嵌合部12から(本実施形態では、アウターハウジング5の側壁WL3、WL4から)幅方向D3に突出するリブ14を有している。リブ14は、少なくとも嵌合部12の側部(側壁WL3、WL4)の離脱方向D12側に設けられている。リブ14は、コネクタ1と相手方コネクタCとが嵌合している際に、コネクタ1の相手方コネクタCに対する上下方向のあおりに対する、コネクタ1の保持力を高めることができる。なお、リブ14の形状は特に限定されないが、リブ14は、延在方向D1に細長い略直方体状に形成されている。
コネクタ1は、図4に示されるように、端子2と、端子2が取り付けられるインナーハウジング4と、インナーハウジング4の外側に設けられるアウターハウジング5とを備えている。
アウターハウジング5は、インナーハウジング4を収納する(図4、図16および図17参照)。本実施形態では、アウターハウジング5は、コネクタ1の外殻部を構成している。アウターハウジング5は、後述するように、インナーハウジング4の外側に設けられた際に、突出部P(後述する第1突出部P1、第2突出部P2および第3突出部P3を総称して突出部Pと呼ぶ)が貫通可能な貫通部TH(後述する第1貫通部TH1、第2貫通部TH2および第3貫通部TH3を総称して貫通部THと呼ぶ)を有している。アウターハウジング5の形状および構造は、後述するように、インナーハウジング4の突出部Pがアウターハウジング5の外面を超えて突出するように、インナーハウジング4を収納することができれば、特に限定されない。本実施形態では、アウターハウジング5は、図4に示されるように、インナーハウジング4を収容するインナーハウジング収容部5aと、インナーハウジング4から延びる電線Wを覆い、所定の方向に案内するカバー部5bとを備えている。
インナーハウジング収納部5aは、インナーハウジング4を内側に収納する部分である。本実施形態では、インナーハウジング収納部5aは、インナーハウジング4の突出部Pとともに、コネクタ1の嵌合部12を構成している。インナーハウジング収納部5aは、後述する第1貫通部TH1、第2貫通部TH2、第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3、および第3突出部P3(アウターハウジング側突条13a)を有している。本実施形態では、嵌合部12を構成するインナーハウジング収納部5aは、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52が組み付けられることによって構成され、上述した上壁WL1、底壁WL2、側壁WL3、WL4を有している。本実施形態では、インナーハウジング収納部5aにおいて、図1、図16および図17に示されるように、上壁WL1および底壁WL2に形成された第1貫通部TH1および第2貫通部TH2から第1突出部P1および第2突出部P2がそれぞれ突出し、第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3から第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)が突出している。
カバー部5bは、インナーハウジング4から延びる電線Wを覆う。本実施形態では、カバー部5bは、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52が組み付けられることによって、コネクタ1のコネクタ基部11を構成している。アウターハウジング5がカバー部5bを有している場合、コネクタ1に別途電線カバーを設ける必要がなく、部品点数を減らすことができる。本実施形態では、カバー部5bは、図1、図2および図4に示されるように、束ねられた電線Wを導出する導出部Gと、束ねられた電線Wを固定可能な結束部Tiとを有している。これにより、少ない部品点数で、電線Wを案内し、電線Wを結束した状態で固定することができる。
導出部Gは、複数の端子2にそれぞれ接続された電線Wを所定の方向に案内して導出する。導出部Gは、端子2の延在方向D1に対して曲げられた電線Wを所定の方向(本実施形態では、幅方向D3)に案内している。結束部Tiは、導出部Gによって案内される電線Wの束を、結束バンドなどの結束部材CT(図1および図2参照)によって、カバー部5bに固定可能な部位である。結束部Tiは、図4に示されるように、電線Wの束の周囲の一部を覆う湾曲状の被覆部Ti1と、結束部材CTを挿通可能な結束部材挿通部Ti2とを有している。結束部材CTが結束部材挿通部Ti2に挿通され、電線Wの長さ方向で結束部材挿通部Ti2の両側に壁が設けられていることにより、結束部材CTが電線Wの長さ方向にずれることが抑制される。また、被覆部Ti1が電線Wの束の周囲の一部(半分程度)を覆う(一部は開放している)ことにより、電線Wの本数が変わっても、安定して電線Wを保持することができる。
また、本実施形態では、アウターハウジング5は、図4に示されるように、高さ方向D2にインナーハウジング4を挟み込む、第1ハウジング部51と第2ハウジング部52とを備えている。後述するように、インナーハウジング4を第1ハウジング部51と第2ハウジング部52とで挟み込む際に、インナーハウジング4の突出部Pが第1ハウジング部51および第2ハウジング部52の貫通部THに挿通される。この場合、突起部Pが貫通部THに挿入されることにより、インナーハウジング4がアウターハウジング5に対して移動することが規制され、インナーハウジング4とアウターハウジング5との接続が容易になる。なお、アウターハウジング5は、後述するように、嵌合部12において、突出部Pがアウターハウジング5の外面から突出するように構成されていれば、必ずしも第1ハウジング部51と第2ハウジング部52とを有さずに、単一の部材から構成されていてもよい。
本実施形態では、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52は、高さ方向D2に分割され、互いに組み付けられることにより、アウターハウジング5を形成する。本実施形態では、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52は、互いに分離可能に別体として構成されている。この場合、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52を、インナーハウジング4の上壁4aおよび底壁4bのそれぞれに向かって垂直な方向(高さ方向D2)に移動させて接続することができる。したがって、突出部Pと貫通部THとの間のクリアランスを小さくしても接続することができ、インナーハウジング4とアウターハウジング5との間のガタツキを抑制することができる。なお、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52は、ヒンジなどで接続された半割状の部材であってもよい。
第1ハウジング部51および第2ハウジング部52の間の接続方法は特に限定されない。本実施形態では、第1ハウジング部51のハウジング係合部51dが、第2ハウジング部52のハウジング被係合部52aに高さ方向D2で係合することによって、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52が互いに接続されている。具体的には、第1ハウジング部51のハウジング係合部51dが係合爪を有し、第2ハウジング部52のハウジング被係合部52aが係合突起を有するように構成されているが、ハウジング係合部51dおよびハウジング被係合部52aの構造は特に限定されない。
貫通部THは、上述したように、アウターハウジング5がインナーハウジング4の外側に設けられた際に、突出部Pが貫通できるように形成されている。貫通部THは、突出部Pの突出方向にアウターハウジング5を貫通する。本実施形態では、突出部Pは高さ方向D2に突出しており、貫通部THは高さ方向D2にアウターハウジング5の上壁WL1を貫通した貫通孔である。なお、突出部が幅方向D3に突出する場合には、貫通部も幅方向D3に貫通させればよい。貫通部THは、突出部Pが設けられる位置に対応した位置に設けられる。
貫通部THは、貫通部THを貫通する突出部Pに対応する大きさおよび形状を有している。これにより、インナーハウジング4がアウターハウジング5に接続されたときに、インナーハウジング4の動き(例えば、延在方向D1および幅方向D3の動き)を規制することができる。貫通部THの形状は特に限定されないが、本実施形態では、略矩形状に形成されている。本実施形態では、突出部Pおよび貫通部THは、図1および図4に示されるように、延在方向D1および幅方向D3に複数設けられている。具体的には、本実施形態では、インナーハウジング4は、第1突出部P1、第2突出部P2および第3突出部P3(アウターハウジング側突条13a)を有しており、アウターハウジング5は、第1~第3突出部P1~P3のそれぞれが貫通する第1貫通部TH1、第2貫通部TH2および第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3を有している。突出部Pおよび貫通部THの数は特に限定されない。例えば、突出部Pおよび貫通部THは、本実施形態のように延在方向D1に分離するのではなく、延在方向D1に連続するように形成されていてもよい。
また、上述したように、インナーハウジング4が第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)を有する場合は、アウターハウジング5には、第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3が形成される。この場合、例えば、インナーハウジング4がアウターハウジング5に接続されたときに、第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3を貫通した第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)と、アウターハウジング5に設けられたアウターハウジング側突条13aとが延在方向D1で直線状に並ぶようにすればよい。具体的には、延在方向D1に延びるアウターハウジング側突条13aの挿入方向D11側に、第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3が設けられることにより、第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3を貫通した第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)と、アウターハウジング側突条13aとが延在方向D1で直線状に並ぶ。
つぎに、端子2およびインナーハウジング4についてそれぞれ説明する。
端子2は、相手方端子Tに電気的に接続される端子である。具体的には、コネクタ1が相手方コネクタCに接続されたときに(図2参照)、端子2は相手方端子Tに電気的に接続される。端子2は、導電性を有する金属材料によって形成される。
端子2は、相手方端子Tが接続されるとともに、電線Wが接続される。端子2は、本実施形態では、後述するように、スライダ3を介してインナーハウジング4に取り付けられる。なお、端子2の形状および構造は、特に限定されない。本実施形態では、端子2は、図6および図7に示されるように、所定の方向(端子2の延在方向D1)に直線状に延びている。端子2は、図7に示されるように、相手方コネクタCの相手方端子Tが接続される相手方端子接続部21を有している。また、端子2はさらに相手方端子接続部21から延びる弾性接触片22を有している。端子2はさらに、相手方端子接続部21から外側に突出する係合部23と、電線固定部24と、導体固定部25とを有している。本実施形態では、端子2には、電線固定部24および導体固定部25を介して電線Wが接続される。具体的には、電線固定部24において、電線Wの被覆の端部がかしめ固定され、導体固定部25において、電線Wの導体がかしめ固定される。なお、電線Wの端子2への固定方法は特に限定されない。
相手方端子接続部21は、端子2のうち、相手方端子Tが接続される部位である。相手方端子接続部21の形状および構造は、相手方端子Tと接続可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、相手方端子接続部21は、図7に示されるように、筒状壁部として構成されている。すなわち、相手方端子接続部21は、端子2における角筒状の部分として設けられている。相手方端子接続部21は、端子2の延在方向D1に沿って延び、端子2の延在方向D1に垂直な断面が略矩形状である。なお、端子2の挿入方向D11側の端部を先端部2aと呼び、端子2の離脱方向D12側の端部を基端部2bと呼ぶ。
本実施形態では、相手方端子接続部21は、図7に示されるように、第1壁部(上壁部)21aと、第1壁部21aに対向する第2壁部(底壁部)21bと、第1壁部21aおよび第2壁部21bに対して略垂直に延び、互いに対向する第3壁部(側壁)21cおよび第4壁部(側壁)21dとを備えている。また、相手方端子接続部21は、挿入方向D11側の端部に、相手方端子Tが挿入される挿入口21e(図7参照)を有している。
なお、相手方端子接続部21を含め、端子2は、所定の厚さを有する導電性の金属板を折り曲げられた構造を有している。相手方端子接続部21は、実質的には筒状に形成されているが、厳密には周方向の一部で途切れている。なお、相手方端子接続部21を含め、端子2を構成する金属板の厚さは特に限定されない。
係合部23は、スライダ3に設けられた被係合部31a(図11(B)参照)と、端子2の延在方向D1で係合する。これにより、図11(B)に示されるように、インナーハウジング4に取り付けられたスライダ3に対して所定の位置まで端子2が移動したときに、端子2がスライダ3に対して離脱方向D12に移動することが規制され、端子2が離脱することが抑制される。係合部23は、本実施形態では、相手方端子接続部(筒状壁部)21に設けられている。具体的には、係合部23は、相手方端子接続部21の第2壁部(底壁部)21bに設けられている。
係合部23は、相手方端子接続部21から外側に向かって突出している(図11(B)参照)。具体的には、係合部23は、第2壁部21bの一部が相手方端子接続部21の外側に向かって切り起こされることで形成され、第2壁部21bから外側に向かって突出した部分として設けられている。係合部23は、離脱方向D12へ向かうにつれて、第2壁部21bの外側面から離れるように傾斜して延びた板バネ状に形成されている。これにより、端子2をスライダ3に取り付ける際には、係合部23が内側方向に撓んで端子2の挿入が阻害されない。図11(B)に示されるように、インナーハウジング4の端子収容部41を構成するインナーハウジング4の上壁4a(または底壁4b)と、上壁4a(または底壁4b)に対向するスライダ3の板状部31との間の高さ方向D2の間隔は、相手方端子接続部21の高さ方向D2の寸法とほぼ同等またはわずかに大きい。これにより、端子2の係合部23がスライダ3の被係合部31aに到達する前に、端子2の係合部23が内側に一旦変形して、係合部23がスライダ3の被係合部31aの位置まで到達した所定の位置まで挿入されると、内側方向に撓んだ係合部23が外側方向に弾性復帰して、被係合部31aと係合する。これにより、端子2が端子収容部41に部分的に挿入された状態で、スライダ3から離脱方向D12に移動することが防止される。なお、係合部23の形状および構造は、スライダ3の被係合部31aと係合して、スライダ3から離脱することを抑制することができれば、特に限定されない。なお、インナーハウジング4にスライダ3が設けられない場合には、係合部23は、インナーハウジング4に設けられた被係合部(図示せず)に端子2の延在方向D1で係合すればよい。
弾性接触片22は、相手方端子Tが端子2に挿入された際に、弾性変形しながら相手方端子Tと接触して、相手方端子Tと端子2とを電気的に接続する。弾性接触片22は、相手方端子接続部21と同じ金属板によって、相手方端子接続部21と連続するように折り曲げられて形成されている。なお、弾性接触片22は、相手方端子接続部21と一体である必要はなく、別体として構成されていてもよい。
インナーハウジング4は、複数の端子2を収容する。インナーハウジング4は、端子2を収容した状態でアウターハウジング5の内側に位置するようにアウターハウジング5に取り付けられる。インナーハウジング4の形状および構造は、後述する突出部Pを有していれば、特に限定されない。本実施形態では、インナーハウジング4は、インナーハウジング4に対して延在方向D1にスライド可能なスライダ3が取り付けられるように構成されているが、スライダ3は任意の構成であり、スライダ3を設けずに端子2がインナーハウジング4に取り付けられていてもよい。本実施形態では、後述するように、スライダ3は、インナーハウジング4に対して第1位置(図11(A)および(B)参照)と、第2位置(図12(A)および(B)参照)との間でスライド可能であり、インナーハウジング4は、スライダ3を延在方向D1にスライド可能に受容する。インナーハウジング4は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成されている。
インナーハウジング4は、図8に示されるように、端子収容部41と、スライダ受容部42とを有している。
端子収容部41は、それぞれの端子2を収容するための空間である。端子収容部41は、延在方向D1に沿って延び、延在方向D1に垂直な断面の形状は、端子2の断面形状に対応する形状に形成されている。端子収容部41は、端子収容部41の一端側(離脱方向D12側)に、端子2が挿入される開口部41aを有している。開口部41aは、端子2を収容可能な大きさで形成されている。
インナーハウジング4に設けられる端子2および端子2を収容する端子収容部41の配列や数は、特に限定されないが、例えば、端子2(および端子収容部41)は少なくとも2列(2列または3列以上)に配置される。本実施形態では、端子2は、幅方向D3に複数並んだ端子収容部41の第1の列(図8における上側の列)に収容される端子群と、端子収容部41の第1の列に対して高さ方向D2にシフトして配置された端子収容部41の第2の列(図8における下側の列)に収容される端子群とを有している。本実施形態では、端子収容部41の第1の列は、インナーハウジング4の幅方向D3の両端に(本実施形態では2つずつ)分離して形成され、インナーハウジング4の幅方向D3の中央部には端子収容部41は形成されていない。また、端子収容部41の第2の列は、インナーハウジング4の幅方向D3に亘って形成されており、インナーハウジング4全体としては、延在方向D1に垂直な断面形状が略U字状に形成されている。なお、インナーハウジング4の全体形状や、端子2(端子収容部41)の配置は、図示する形状に限定されない。
インナーハウジング4は、図6および図8に示されるように、高さ方向D2に所定の高さを有し、延在方向D1に延びる複数の隔壁43を有している。隔壁43は、幅方向D3に隣接する一対の端子収容部41を区画している。スライダ3がインナーハウジング4に取り付けられる前は、図6および図8に示されるように、端子収容部41は高さ方向D2でスライダ受容部42に向かって開放して、スライダ受容部42と連通している。後述するように、インナーハウジング4にスライダ3が取り付けられ、スライダ3が第2位置にスライドした際に、スライダ3の板状部31がスライダ受容部42に入って、端子収容部41を高さ方向D2で閉鎖することによって、板状部31が高さ方向D2の一方で端子収容部41を仕切る隔壁となる。これにより、それぞれの端子収容部41が、隔壁43および板状部31によって画定される。
スライダ受容部42は、スライダ3を受容する空間である。スライダ受容部42は、スライダ3が第1位置と第2位置との間で移動可能となるように形成されている。本実施形態では、スライダ受容部42は、図8に示されるように、スライダ3の後述する板状部31を受容する板状部受容部42aと、スライダ3の後述するガイド部32をガイドするガイド部受容部42bとを有している。
板状部受容部42aは、スライダ3の板状部31が第1位置および第2位置の間で移動できるように形成された空間である。板状部受容部42aは、スライダ3が第2位置に移動した際に、スライダ3の板状部31によって占められる空間である。板状部受容部42aの挿入方向D11側の端部は、ハウジング4の端壁44(図6参照)によって区画されている。スライダ3が第2位置に移動した際に、スライダ3の板状部31の挿入方向D11側の端部が、この端壁44に当接してスライダ3が第2位置で停止する。
ガイド部受容部42bは、後述するスライダ3のガイド部32を受容する。ガイド部受容部42bは、本実施形態では、インナーハウジング4の内部空間のうち、幅方向D3の両端に設けられた空間である。具体的には、ガイド部受容部42bは、インナーハウジング4の幅方向D3の両端において高さ方向D2に延びるインナーハウジング4の側壁4c、4dの内側部分に形成されている。なお、ガイド部受容部42bは、スライダ3のガイド部32の位置に応じて形成されていればよく、例えば、インナーハウジング4の上壁4aや底壁4bなどに設けられていてもよい。
また、本実施形態では、インナーハウジング4は、図14に示されるように、スライダ3が取り付けられた状態でスライダ3がインナーハウジング4から離脱することを規制するハウジング側抜止部45を有している。ハウジング側抜止部45は、スライダ3に設けられたスライダ側抜止部321に延在方向D1で係合することによって、スライダ3のインナーハウジング4からの抜けを抑制している。
ハウジング側抜止部45は、離脱方向D12側は傾斜面として構成され、挿入方向D11側は、インナーハウジング4の側壁4c、4dに対して垂直な面として形成されている。一方、スライダ側抜止部321は、挿入方向D11側は傾斜面として構成され、離脱方向D12側は、高さ方向D2に沿って延びるガイド部32に対して垂直な面として形成されている。これにより、スライダ3を挿入方向D11に移動させてインナーハウジング4に取り付けるときは、スライダ側抜止部321の傾斜面がハウジング側抜止部45の傾斜面を乗り越えて、インナーハウジング4に取り付けやすい。また、スライダ3がインナーハウジング4に取り付けられた後は、スライダ側抜止部321の垂直な面がハウジング側抜止部45の垂直な面と延在方向D1で係合して、スライダ3のインナーハウジング4からの抜けが抑制される。
本実施形態では、ハウジング側抜止部45は、ガイド部受容部42b(具体的には側壁4c、4dの内面)に設けられ、スライダ側抜止部321は、スライダ3のガイド部32に設けられている。しかし、ハウジング側抜止部45およびスライダ側抜止部321は、スライダ3のインナーハウジング4からの抜けを抑制することができれば、設けられる位置は限定されない。また、本実施形態では、ハウジング側抜止部45およびスライダ側抜止部321は、共に突部として形成されているが、互いに係合してスライダ3のインナーハウジング4からの抜けを抑制することができれば、ハウジング側抜止部45およびスライダ側抜止部321の一方が突部で、他方が凹部であってもよい。
また、インナーハウジング4は、本実施形態では、スライダ3を第1位置および第2位置で保持するために、図15(A)および(B)に示されるように、ハウジング側係止部46を有している。ハウジング側係止部46は、スライダ3の第1位置および第2位置のそれぞれにおいて、スライダ3に設けられたスライダ側係止部322と係合する。具体的には、スライダ3が第1位置にあるときには、図15(A)に示されるように、スライダ側係止部322がハウジング側係止部46と係合して、所定の力が加わるまではスライダ3の第2位置への移動を規制する。また、スライダ3が第2位置にあるときには、図15(B)に示されるように、スライダ側係止部322がハウジング側係止部46と係合して、所定の力が加わるまではスライダ3の第1位置への移動を規制する。これにより、スライダ3を第1位置および第2位置で保持する。
本実施形態では、ハウジング側係止部46は、挿入方向D11側および離脱方向D12側が傾斜面として構成され、同様に、スライダ側係止部322も挿入方向D11側および離脱方向D12側が傾斜面として構成されている。また、スライダ3が第1位置に位置するときに、図15(A)に示されるように、ハウジング側係止部46の離脱方向D12側の傾斜面が、スライダ側係止部322の挿入方向D11側の傾斜面と接触する位置、または近接した位置に配置されている。これにより、端子2の端子収容部41への挿入時にスライダ3にわずかに挿入方向D11側への力が加わったとしても、スライダ側係止部322の挿入方向D11側の傾斜面が、ハウジング側係止部46の離脱方向D12側の傾斜面に接触することによって、スライダ3は第2位置に移動せずに第1位置で保持される。したがって、スライダ3およびインナーハウジング4への端子2の取り付けが容易になる。また、スライダ3を第2位置に移動させた後は、図15(B)に示されるように、ハウジング側係止部46の挿入方向D11側の傾斜面が、スライダ側係止部322の離脱方向D12側の傾斜面と接触する位置、または近接した位置に配置されている。これにより、スライダ3に偶発的に離脱方向D12側への力が加わったとしても、所定の大きさの力が加わるまでは、スライダ側係止部322の離脱方向D12側の傾斜面が、ハウジング側係止部46の挿入方向D11側の傾斜面に接触することによって、スライダ3は第1位置に移動せずに第2位置で保持される。また、誤ってスライダ3を第2位置まで移動させてしまった場合など、何らかの事情でスライダ3を第1位置に戻したい場合は、スライダ3に離脱方向D12側へと所定の大きさの力を加えれば、スライダ側係止部322がハウジング側係止部46を乗り越え、スライダ3を第1位置に戻すことができる。
本実施形態では、ハウジング側係止部46は、ガイド部受容部42b(具体的には側壁4c、4dの内面)に設けられ、スライダ側係止部322は、スライダ3のガイド部32に設けられている。しかし、ハウジング側係止部46およびスライダ側係止部322が設けられる位置は、スライダ3を第1位置および第2位置で保持することができれば、限定されない。また、本実施形態では、ハウジング側係止部46およびスライダ側係止部322は、共に突部として形成されているが、互いに係合してスライダ3を第1位置および第2位置で保持することができれば、ハウジング側係止部46およびスライダ側係止部322の一方が突部で、他方が凹部であってもよい。なお、本実施形態では、ハウジング側係止部46は、ハウジング側抜止部45に対して、高さ方向D2でオフセットして配置され、スライダ側係止部322は、スライダ側抜止部321に対して、高さ方向D2でオフセットして配置されている。これにより、スライダ3をインナーハウジング4に対してスライドさせる際に、スライダ側係止部322がハウジング側抜止部45に干渉せず、スライダ側抜止部321がハウジング側係止部46に干渉しないように構成されている。これにより、スライダ3のインナーハウジング4に対する移動を円滑にすることができる。
スライダ3は、インナーハウジング4に対して延在方向D1に沿ってスライドする。スライダ3は、スライダ3がハウジング4に対して、離脱方向D12へと後退した位置となる第1位置(図11(A)、(B)および図15(A)参照)と、スライダ3がハウジング4に対して、挿入方向D11へと前進した第2位置(図12(A)、(B)および図15(B)参照)との間でスライド可能である。なお、本実施形態では、スライダ3の第1位置において、スライダ3に係合した端子2の基端部2bが開口部41aの外側に位置しているが、後述する効果を奏する限り、端子2の基端部2bが開口部41aの内側に位置していてもよい。
スライダ3の第1位置は、図9、図10、図11(A)および(B)に示されるように、端子2をスライダ3に取り付ける際にスライダ3が位置する位置であり、端子2は、スライダ3が第1位置に位置するときにスライダ3に係合する。端子2の第1位置は図示する位置に限定されないが、本実施形態では、端子2の第1位置は、端子2が取り付けられた状態では、端子2の基端部2bが開口部41aの外側となるような位置である。スライダ3の第2位置は、図12(A)、(B)および図15(B)に示されるように、第1位置に対して延在方向D1で挿入方向D11側にスライダ3が移動して、端子2が端子収容部41に収容された状態となる位置である。この第2位置において、端子2はインナーハウジング4に対して、相手方端子Tが接続可能な所定の位置に位置付けられる。
スライダ3には、複数の端子2が係合して取り付けられる。本実施形態では、後述するように、端子2は、スライダ3が第1位置にあるときに、端子2の係合部23がスライダ3の被係合部31aに係合することによって、スライダ3に取り付けられる。端子2のスライダ3への係合方法は、後述するように、端子2がスライダ3に係合した際に、スライダ3とともに移動することができれば、特に限定されない。したがって、端子2の係合部23およびスライダ3の被係合部31aの構造は図示される構造に限定されない。
本実施形態では、スライダ3は、図6に示されるように、板状部31と、ガイド部32とを備えている。また、本実施形態では、スライダ3は、スライダ3を外部から挿入方向D11へ押圧可能な押圧部33を備えている。
板状部31は、複数の端子2を取り付けることができるように、延在方向D1および幅方向D3に沿って延びて、端子2が係合するように構成された板状体である。板状部31は、本実施形態では、略矩形状である。板状部31の先端311(挿入方向D11側の端部)は、スライダ3が第1位置にあるときには、インナーハウジング4の端壁44から延在方向D1で離間するように配置されている(図11(A)参照)。また、スライダ3が第2位置にあるときには、板状部31の先端311は、端壁44に当接するように構成されている(図12(A)参照)。板状部31の後端312(離脱方向D12側の端部)は、スライダ3が第1位置にあるときには、インナーハウジング4の開口部41aから離脱方向D12に突出した位置に位置する(図11(A)参照)。スライダ3が第2位置にあるときには、板状部31の後端312は、インナーハウジング4の内部に収容された位置に位置付けられる(図10(A)参照)。
本実施形態では、板状部31が第2位置にあるときに、高さ方向D2で対向する2列の端子2を互いに隔離する隔壁の少なくとも一部を構成する。これにより、上述したように、インナーハウジング4に対してスライダ3が第2位置にスライドした際に、スライダ3の板状部31がスライダ受容部42に入ることによって、板状部31が高さ方向D2の一方で端子収容部41を仕切る隔壁となる。それぞれの端子収容部41が、隔壁43および板状部31によって画定される。すなわち、スライダ3の第2位置へのスライド後に、板状部31が端子収容部41の隔壁となり、絶縁機能を奏する。より具体的には、本実施形態では、図11および図12に示されるように、インナーハウジング4は、第2位置にある板状部31の挿入方向D11側に板状部31の延長線上に延びる壁部47を有している。スライダ3が第2位置へ移動して、板状部31の先端311が端壁44に当接したときに、板状部31と壁部47とは、高さ方向D2に端子収容部41を仕切る連続した隔壁となる。したがって、スライダ3が、端子収容部41を囲う隔壁の一部として機能するので、インナーハウジング4の構成をシンプルにすることができる。
本実施形態では、板状部31の延在方向D1の長さは、インナーハウジング4の延在方向D1の長さよりも短い。板状部31は、端子2の先端部2aから基端部2bまでの長さよりも短く、端子2が係合したときに、端子2が板状部31の先端311側から張り出すようになっている。板状部31の幅方向D3の長さは、インナーハウジング4の幅方向D3の長さよりも短く、複数の端子2の幅方向D3の配列長さよりも長くなっている。
板状部31は、本実施形態では、一方の面に押圧部33を有している。この押圧部33は、スライダ3を第1位置から第2位置へと向かって押し込むとき押圧される。押圧部33は、プッシャー等の装置によって押圧されてもよいし、作業者によって押圧されてもよい。押圧部33が押圧されることにより、端子2に直接力が加わらず、端子2が奥まで挿入される。したがって、端子2に力が加わることによって端子2が変形することが抑制される。本実施形態では、押圧部33は、2列の配列のうち第1の列(上側の列)に設けられ、第1の列のうち、幅方向D3で離間した端子2の間に設けられている。押圧部33が設けられる位置は、スライダ3を第1位置から第2位置に移動させることができれば、特に限定されない。例えば、押圧部33は、インナーハウジング4の幅方向D3で外側に突出して設けられていてもよい。
ガイド部32は、スライダ3が第1位置から第2位置に移動する際に、インナーハウジング4のガイド部受容部42bに挿入されてガイドされる。これにより、スライダ3のインナーハウジング4に対するスライドを円滑にする。スライダ3における、ガイド部32が設けられる位置は特に限定されないが、本実施形態では、スライダ3の幅方向D3で両端に設けられている。本実施形態では、ガイド部32は、図6に示されるように、板状部31の幅方向D3の両縁部から、板状部31に対して略垂直な方向(高さ方向D2)で両方向に延びる板状体として形成されている。具体的には、ガイド部32は、板状部31に対して略垂直に延びる基部32aと、基部32aの高さ方向D2の両端から幅方向D3で外側に突出するフランジ部32bとを有している。基部32aは、幅方向D3で外側の面に、スライダ側抜止部321と、スライダ側係止部322とが、フランジ部32bとほぼ同じ高さで突出している。
上述したように、本実施形態のコネクタ1は、延在方向D1で端子2と係合するスライダ3と、スライダ3が延在方向D1にスライド可能に取り付けられるインナーハウジング4とを備え、スライダ3は、スライダ3がハウジング4に対して、離脱方向D12へと後退した位置となる第1位置と、挿入方向D11へと前進した第2位置との間でスライド可能であり、端子2は、スライダ3が第1位置に位置するときにスライダ3に係合し、端子2は、スライダ3が第2位置に位置するときに、端子収容部41内に収容され、相手方コネクタCとの接続が可能となる。
したがって、端子2をインナーハウジング4に取り付けるために、まず、端子2の基端部2b(または基端部2b近傍の電線W)を把持して第1位置にあるスライダ3に端子2を係合させる。この場合、端子2の基端部2b(または基端部2b近傍)を把持することで、電線Wの腰折れを防ぐことができる。全ての端子2がスライダ3に係合すると、スライダ3を第1位置から第2位置に移動させることによって、端子2に力を加えることなく、端子2を所定の位置まで移動させることができる。したがって、端子2を所定の位置に移動させる際に、端子2の基端部2bに大きな力を加えて押し込む必要がないので、電線Wが腰折れすることなく、かつ、端子2の折れ曲がりなどの変形を抑制することができる。
また、本実施形態では、スライダ3が第1位置から第2位置に移動する際に、端子2は、スライダ3の被係合部31aによって第2位置に向かって押圧されて、スライダ3とともにインナーハウジング4内で第2位置に向かって移動する。本実施形態では、端子2をスライダ3に係合させて、スライダ3の移動を介して端子2をインナーハウジング4内の所定の位置(第2位置)に移動させており、端子2はインナーハウジング4に対して圧入されない。具体的には、本実施形態では、スライダ3が第2位置に移動した状態で、端子収容部41を画定する壁部(板状部31、隔壁43など)と、端子2の外周との間にクリアランスを有している。このように端子収容部41と端子2との間にクリアランスが設けられ、端子2が端子収容部41に圧入されない場合、端子2を圧入する際に生じる端子収容部41の変形が抑制され、端子2と端子収容部41との間の寸法精度を高める必要もない。例えば、特開平9-115643号公報に記載されたような構造の場合、複数の端子が仮挿入された位置から本挿入となる位置まで挿入される際に、それぞれの端子に対して、ハウジングに係合するための押圧力を加える必要がある。そのため、特開平9-115643号公報のような構造の場合、端子の数が多くなると、カバーで複数の端子の後端を一度に押圧する際に、非常に大きな力が必要となる。これに対して、本実施形態では、スライダ3が第1位置から第2位置へと移動する際に、それぞれの端子2はハウジング4(端子収容部41)に対して圧入されない。そのため、端子2が複数設けられていても、特許文献1のように複数の端子を圧入する際の累積した挿入力が必要なく、容易に端子2をハウジング4に挿入することができる。
また、本実施形態では、板状部31は、図6に示されるように、延在方向D1に沿って延びる溝部31bを有している。溝部31bは、板状部31の後端312から延在方向D1に沿って延び、係合部23が被係合部31aに向かうまでに溝部31b内を外側に張り出した状態で移動することができるように形成されている。溝部31bは、本実施形態では、係合部23の高さ方向D2の張り出し量に対応した深さを有し、かつ、係合部23の幅方向D3の幅に対応した幅を有している。板状部31が溝部31bを有している場合、相手方端子接続部21から外側に突出した係合部23が、被係合部31aと係合するまでの、板状部31の挿入方向D11への移動過程において溝部31b内を移動する間は、内側へ撓むことが抑制される。したがって、係合部23とスライダ3との摺動抵抗を低減させることができる。したがって、円滑に端子2をスライダ3に係合させることができる。
また、板状部31は、図9、図10および図11(A)に示されるように、第1位置においてインナーハウジング4の外側に位置する端部領域Rを有している。端部領域Rに端子2の基端部2bが配置されるまで、端子2の基端部2bのうち、板状部31に対して略垂直な方向に延びる一対の側部SP1、SP2を把持できるように、スライダ3は、一対の側部SP1、SP2に対向する位置が開放している(壁部等を有していない)。このように、端子2の基端部2bの一対の側部SP1、SP2が把持できるように、板状部31の端部領域Rが形成されていることによって、端子2の基端部2bを把持する装置の把持部(図示せず)などを用いて、図9の状態から図10の状態まで端子2を移動させる際に、装置の把持部がインナーハウジング4に干渉することなく、端子2を取り付けることができる。なお、端子2の基端部2bは、装置によって把持されることが好ましいが、作業者によって把持されてもよい。装置によって把持する場合、例えば、一対の側部SP1、SP2を挟み込むことが可能な一対の板状の把持片を有する装置によって把持することが好ましい。この場合、図11(A)のように、複数の端子2が隣接する場合であっても、容易に端子2を把持して仮固定することができる。
つぎに、インナーハウジング4の突出部Pについて説明する。
突出部Pは、図6、図16および図17に示されるように、インナーハウジング4の外面から突出している。突出部Pは、相手方コネクタCが外嵌される嵌合部12において、貫通部THを貫通して、アウターハウジング5の外面OS(図16、図17および図19参照)を超えて突出している。突出部Pは、コネクタ1と相手方コネクタCとが接続されたときに、相手方コネクタCの内面ISと嵌合するように構成されている。これにより、コネクタ1と相手方コネクタCとが接続されたときに、相手方コネクタCの内面ISと嵌合するのは、アウターハウジング5の外面OS(突出部P以外のアウターハウジング5の外周部分)ではなく、アウターハウジング5を貫通した突出部Pとなる。したがって、コネクタ1がインナーハウジング4およびアウターハウジング5の複数の部材から構成されている場合であっても、相手方コネクタCとの嵌合に関して、インナーハウジング4の寸法公差およびアウターハウジング5の寸法公差が累積することがない。したがって、コネクタ1と相手方コネクタCとが嵌合する際に、相手方端子Tと端子2との間の嵌合位置がズレにくい。したがって、コネクタ1が、相手方端子Tと嵌合する方向(本実施形態では高さ方向D2)に、インナーハウジング4およびアウターハウジング5の複数部材を有している場合であっても、嵌合位置度の精度を向上させることができる。
本実施形態では、図16および図17に示されるように、高さ方向D2における、突出部Pと、相手方コネクタCの内面ISのうち突出部Pが嵌合する部位との間の隙間が、アウターハウジング5の外面OSと、相手方コネクタCの内面ISのうちアウターハウジング5の外面OSに高さ方向D2で対向する部位との間の隙間よりも狭くなるように構成されている。これにより、インナーハウジング4とアウターハウジング5との間の高さ方向D2での寸法公差が累積せず、インナーハウジング4と相手方コネクタCの相手方ハウジングHとの間の嵌合隙間のみを考慮すればよくなる。なお、本実施形態では、第1突出部P1、第2突出部P2および第3突出部P3の全ての突出部Pと、相手方コネクタCの内面ISとの間の高さ方向D2の隙間が、アウターハウジング5の外面OSと、相手方コネクタCの内面ISとの間の隙間よりも狭くなるように構成されている。しかし、第1突出部P1、第2突出部P2および第3突出部P3のいずれか1つにおいて、突出部Pと、相手方コネクタCの内面ISとの間の高さ方向D2の隙間が、アウターハウジング5の外面OSと、相手方コネクタCの内面ISとの間の隙間よりも狭くなるように構成されていればよい。
また、本実施形態では、図17に示されるように、幅方向D3における、突出部Pと、相手方コネクタCの内面ISのうち突出部Pが嵌合する部位との間の隙間が、アウターハウジング5の外面OSと、相手方コネクタCの内面ISのうちアウターハウジング5の外面OSに幅方向D3で対向する部位との間の隙間よりも狭くなるように構成されている。この場合、インナーハウジング4とアウターハウジング5との間の幅方向D3での寸法公差が累積せず、インナーハウジング4と相手方コネクタCの相手方ハウジングHとの間の嵌合隙間のみを考慮すればよくなる。なお、本実施形態では、第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)とアウターハウジング5の外面OS(ガイド溝H4)との間の幅方向D3の隙間が、アウターハウジング側突条13aとガイド溝H4との間の幅方向D3の隙間よりも狭くなっていることにより、上記効果を奏している。なお、第3突出部P3だけでなく、第1突出部P1および第2突出部P2においても、突出部Pと相手方コネクタCの内面ISとの間の幅方向D3の隙間が、アウターハウジング5の外面OSと、相手方コネクタCの内面ISの隙間よりも狭くなるように構成されていてもよい。
突出部Pの突出高さは、突出部Pが相手方コネクタCの内面ISと嵌合するように構成されていれば、特に限定されない。具体的には、突出部Pがアウターハウジング5の外面OSを超えて突出する突出量L1(図16および図17参照)が、突出部Pが貫通する貫通部THを有するアウターハウジング5の外面OSにおいて、インナーハウジング4およびアウターハウジング5の両方に製造誤差が生じたとしても、突出部Pがアウターハウジング5の外面OSをわずかに超えるように設計されていればよい。
突出部Pが設けられる位置は特に限定されないが、アウターハウジング5の第1の面(上壁WL1または側壁WL3)および第2の面(底壁WL2または側壁WL4)のそれぞれから突出していることが好ましい。突出部Pが貫通する貫通部THは、突出部Pが形成される面に対向するアウターハウジング5の面に設けられる。このように、突出部Pが、嵌合部12において対向する両面から突出することによって、さらに嵌合位置度の精度が向上する。本実施形態では、突出部Pは、インナーハウジング4の上壁4aおよび底壁4bに設けられ、貫通部THは、アウターハウジング5の上壁WL1および底壁WL2に設けられている。この場合、高さ方向D2での嵌合位置度の精度がより向上する。
また、図示は省略するが、突出部Pは、アウターハウジング5の第3の面(側壁WL3)および第4の面(側壁WL4)のそれぞれから突出していてもよい。突出部Pが側壁WL3および側壁WL4から突出する場合、幅方向D3での嵌合位置の精度が向上する。また、突出部Pが、アウターハウジング5の第1~第4の面(上壁WL1、底壁WL2、側壁WL3、WL4)の全てから突出している場合、高さ方向D2および幅方向D3の両方での嵌合位置度の精度が向上する。
突出部Pの形状は、突出部Pが相手方コネクタCの内面ISと嵌合するように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、突出部Pは、図6に示されるように、延在方向D1に沿って長い直方体状に形成されている。突出部Pは、図16および図17に示されるように、アウターハウジング5の1つの面において、幅方向D3に離間して複数設けられている。具体的には、インナーハウジング4は、延在方向D1で挿入方向D11側に第1突出部P1を有し、延在方向D2で離脱方向D12側に第2突出部P2を有している。この場合、コネクタ1が相手方コネクタCに接続されたときに、コネクタ1が延在方向D1を軸にして回転することが抑制される。また、突出部P(第1~第3突出部P1~P3)は、図1および図5に示されるように、アウターハウジング5の1つの面において、延在方向D1に離間して複数設けられている。この場合、突出部Pが嵌合部12の挿入方向D11側だけでなく、離脱方向D12側でも相手方コネクタCの内面ISと当接するので、コネクタ1のあおりを抑制することができる。なお、本実施形態では、嵌合部12の離脱方向D12側に位置する第2突出部P2は、嵌合部12の挿入方向D11側に位置する第1突出部P1に対して幅方向D3でオフセットしている。
また、本実施形態では、図1、図4および図5に示されるように、ガイド突条13の一部がアウターハウジング側突条13aによって構成され、ガイド突条13の残りの部分が、インナーハウジング側突条13b(第3突出部P3)によって構成されている。アウターハウジング側突条13aは、アウターハウジング5の一部を構成し、アウターハウジング5の外面OSから突出する。また、インナーハウジング側突条13bは、インナーハウジング4にアウターハウジング5が取り付けられたときに、アウターハウジング側突条13aよりも高い高さで突出する第3突出部P3となっている(図1参照)。これにより、第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)は、アウターハウジング5の第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3を貫通して、相手方ハウジングHのガイド溝H4の底面BTと接触する(図17参照)。これにより、第1および第2突出部P1、P2に加えて、第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)も相手方コネクタCと嵌合するので、さらに嵌合位置度の精度が向上する。また、第1および第2突出部P1、P2と第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)とは、高さ方向D2で異なる位置で相手方コネクタCと嵌合する。したがって、第1および第2突出部P1、P2および第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)のいずれかに製造誤差が生じたとしても、いずれか一方が相手方コネクタCと嵌合して、嵌合位置の精度を向上させることができる。なお、本実施形態では、第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)は、アウターハウジング側突条13aよりも幅が広くなるように形成されている。これにより、嵌合位置度の精度の向上に加えて、コネクタ1の幅方向D3でのガタツキを抑制することができる。
また、本実施形態では、図20に示されるように、インナーハウジング4が、インナーハウジング4の外側から端子収容部41へと連通する挿通部48を有している。さらに、第1ハウジング部51および/または第2ハウジング部52は、アウターハウジング5がインナーハウジング4を挟み込んだときに、挿通部48に挿通され、端子収容部41に収容された端子2に対して端子2の離脱方向D12で係合する、端子離脱防止部51e、52bを有している。これにより、インナーハウジング4に対してアウターハウジング5を組み付けるだけで、アウターハウジング5の端子離脱防止部51e、52bによって、端子2の離脱を防止することができる。したがって、コネクタ1の組み付けの作業性が向上するだけでなく、端子2の抜け止めに別部材が不要で、コネクタ1の部品点数を減らすことができる。
本実施形態では、挿通部48は、インナーハウジング4の上壁4aおよび底壁4bにおいて、端子2の相手方端子接続部21が端子収容部41に収容された状態で、相手方端子接続部21の後端に離脱方向D12で隣接する位置において開口している。また、端子離脱防止部51e、52bは、アウターハウジング5の内面から内側に向かって高さ方向D2に延びている。本実施形態では、端子離脱防止部51e、52bは、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52の内面のそれぞれから突出している。端子離脱防止部51e、52bは、挿通部48に挿入可能な大きさで形成され、挿通部48に挿通されたときに、相手方端子接続部21の後端の離脱方向D12側に位置して、相手方端子接続部21の後端と延在方向D1で係合できるように構成されている。
つぎに、コネクタ1の組み付け方法の一例を説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、以下の説明によって本発明が限定されるものではない。
図9に示されるように、インナーハウジング4に対してスライダ3が取り付けられた状態で、端子2を端子収容部41に挿入する。端子2は、基端部2bの側部SP1、SP2において、図示しない装置の把持部によって把持されて、インナーハウジング4の開口部41aから挿入される。端子2の外周と端子収容部41との間にはクリアランスが形成されており、端子2は端子収容部41に円滑に収容される。端子2が、スライダ3が第1位置にある状態で、所定の位置に移動すると、端子2の係合部23がスライダ3の被係合部31aに係合する。これにより、端子2のスライダ3への仮固定が完了する(図11(A)および(B)参照)。
全ての端子2がスライダ3に仮固定されると、スライダ3を第2位置に移動させる。具体的には、スライダ3の押圧部33を、装置のプッシャーなどによって挿入方向D11に押圧して、スライダ3を第2位置に移動させる。スライダ3の押圧部33が押圧されると、複数の端子2にはほぼ力が加わらない状態で、スライダ3はガイド部32がハウジング4のガイド部受容部42bに案内されて、挿入方向D11へと移動する。この際、端子2は、係合部23の先端部がスライダ3の被係合部31aに押圧されて端子2がスライダ3とともに挿入方向D11へと移動する。これにより、複数の端子2の全ておよびスライダ3が1度の操作で第2位置へと移動する。スライダ3が第2位置に移動すると、スライダ3の先端311がハウジング4の端壁44に当接するとともに、スライダ側係止部322がハウジング側係止部46に接触して、スライダ3の離脱方向D12への移動が抑制される。これにより、端子2の全体が端子収容部41に収容され、端子2のハウジング4への取り付けが完了する(図12(A)および(B)参照)。
上述したように、本実施形態では、端子2のスライダ3への仮固定時に、電線Wに強い力が加わらないので、電線Wの腰折れを防ぐことができるとともに、スライダ3へ固定する際に、端子2に強い力が加わらずに端子2の変形も抑制される。さらに、端子2を仮固定した後、スライダ3を挿入方向D11に押圧することで、仮固定された複数の端子2が一度に第2位置まで移動するので、取り付けが容易である。さらに、端子2を第2位置に移動させる際に、端子2の基端部2bには力が加わらず、第2位置に移動する際に端子2が変形することが抑制される。
端子2がインナーハウジング4に取り付けられた後、インナーハウジング4に対してアウターハウジング5の第1ハウジング部51および第2ハウジング部52が取り付けられる。具体的には、図4の矢印に示されるように、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52を高さ方向D2でインナーハウジング4を挟み込むように移動させる。この高さ方向D2での第1ハウジング部51および第2ハウジング部52の移動により、第1ハウジング部51の第1および第2貫通部TH1、TH2、第2ハウジング部52の第1および第2貫通部TH1、TH2にインナーハウジング4の第1および第2突出部P1、P2がそれぞれ入り込み、第1ハウジング部51の第3貫通部(ガイド突条貫通部)TH3にインナーハウジング4の第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)が入り込む。これにより、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52のインナーハウジング4に対する位置が安定する。したがって、ハウジング係合部51dとハウジング被係合部52aとを係合させる際など、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52を完全に係合させる際の動作が容易となる。また、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52を高さ方向D2に移動させると、第1ハウジング部51および第2ハウジング部52に設けられた端子離脱防止部51e、52bが、インナーハウジング4の挿通部48に挿通され、端子2の相手方端子接続部21の後端に係合して、端子2の離脱を防止する。したがって、この第1ハウジング部51および第2ハウジング部52のインナーハウジング4への組み付け時に、端子2の離脱を防止することができる。
つぎに、コネクタ1がインナーハウジング4とアウターハウジング5とが組み付けられた状態で、図1および図2に示されるように、コネクタ1を相手方コネクタCに挿入する。このとき、第1および第2突出部P1、P2はアウターハウジング5の上壁WL1および底壁WL2から高さ方向D2に突出し、第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)がアウターハウジング側突条13aに対して高さ方向D2に突出している。したがって、コネクタ1が相手方コネクタCに挿入されると、図16、図17および図19に示されるように、第1および第2突出部P1、P2が相手方コネクタCの内面ISに嵌合し、第3突出部P3(インナーハウジング側突条13b)は、ガイド溝H4の底面BTに嵌合する。したがって、コネクタ1がインナーハウジング4およびアウターハウジング5の複数の部材から構成されている場合であっても、相手方コネクタCとの嵌合に関して、インナーハウジング4の寸法公差およびアウターハウジング5の寸法公差が累積することがない。よって、コネクタ1と相手方コネクタCとが嵌合する際に、相手方端子Tと端子2との間の嵌合位置がズレにくく、嵌合位置度の精度を向上させることができる。コネクタ1の嵌合部12が相手方コネクタCの奥まで挿入されると、ロック機構Lの係止爪51aが相手方コネクタの抜け止め部H6と係合して、コネクタ1と相手方コネクタCとの接続が完了する。