JP7179322B2 - 減速装置のための水系潤滑液 - Google Patents
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Description
前記減速装置は、ハウジングと、前記ハウジング内にそれぞれ配置され、互いに又は順次に噛み合う複数の歯車を有し前記扉体を上昇させるときには入力シャフトのトルクを増大させて出力シャフトに伝達する歯車式動力伝達機構とを備えていて、
該水系潤滑液は、前記ハウジング内に貯留されて前記歯車式動力伝達機構を部分的又は全面的に浸漬させることにより潤滑し、
該水系潤滑液は、水とポリアクリル酸ナトリウムとプロピレングリコールとを含み、該水系潤滑液における水に対するポリアクリル酸ナトリウムの量が1~5質量パーセントの範囲内であり、
該水系潤滑液の水素指数がpH8~pH10の範囲内である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、例えば河川、農業用水路、湖沼、海岸等(図示せず)に設置されるゲート開閉装置Sは、水門1を開閉する扉体2を動力で上昇させる一方、自重で降下させるようになっている。すなわち、水門1は、扉体2の昇降動作によって開閉される。扉体2はワイヤロープ3によって懸下され、このワイヤロープ3はワイヤドラム4に巻回されている。ワイヤドラム4は回転シャフト5に同軸状に取り付けられ、回転シャフト5と一体回転する。回転シャフト5は、回転シャフト支持部6によって回転可能に支持されている。
(1)動粘度が潤滑油と同等であること
(2)動粘度の温度変化が小さいこと
(3)潤滑液が介在する摺動部間の動摩擦係数が潤滑油を用いる場合と同等であること
(4)生体に対する毒性がないこと(好ましくは食品に添加することも可能)
(5)漏出・排出による環境汚染性が低いこと
(6)火災の可能性がないこと
(7)寒冷地では低温時に凍結しないこと
(8)酸化による劣化がほとんどないこと
(9)アルミニウム系材料及び鉄系材料に対する金属腐食性が低いこと
(10)空気中の水蒸気の混入による弊害がないこと
(11)液貯槽内での気泡分離性が良好なこと
(12)生物的劣化(腐敗)がほとんどないこと
(1)水:例えば、純水、精製水、蒸留水
(2)増粘剤兼摩擦低減剤:例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸
(3)凍結防止剤:例えば、プロピレングリコール、エタノール
(4)pH調整剤:例えば、水酸化ナトリウム、酢酸
なお、必要があれば、水系潤滑液は、合成色素、天然色素、好ましくは食用色素で着色される。これにより製品の識別、誤用誤飲の防止、外部漏出の早期検出が図られる。
(1)チャンネル
内周面を平滑面としたステンレススチール製の「コ」の字型チャンネルである。
幅50mm 高さ25mm 長さ1500mm 肉厚3mm
(2)可動物体
チャンネル内に収容可能であり、チャンネル長手方向に摺動可能な、外周面が平滑面であるステンレススチール製の「コ」の字型チャンネルである。
幅40mm 高さ30mm 長さ100mm 肉厚 1mm 質量92g
(3)台車
アルミニウム製の車輪を備えた、本体がプラスチック製の実験用簡易力学台車であり、その上に所望の質量の荷物(重り)を載せることができる。
全長135mm 全幅75mm 全高35mm 質量98g(荷物なし)
(4)テンションゲージ
測定範囲が0~50g重又は0~10g重であるばね式の棒型テンションゲージであり、台車に前後方向に伸びるように固定され、ナイロンラインに印加される張力を測定するようになっている。
(1)チャンネルの長手方向の両端部を閉止した上で、チャンネル内に可動部材を配置する。
(2)チャンネル内に摩擦低減特性を評価すべき潤滑液を注入し、可動部材とチャンネルとを潤滑液を介して摺接させる。
(3)重りの質量と台車に積載する荷の質量とを調整した上で、重りを重力で落下させることにより、台車を所定の一定速度でチャンネル長手方向に移動させ、可動部材をチャンネル長手方向に摺動させる。
(4)可動部材の移動速度が一定となっているときにテンションゲージでナイロンラインにかかる張力、すなわち可動物体にかかっている前向きの力を測定する。
(5)可動物体にかかっている前向きの力を可動物体にかかっている重力(92g重)で除算することにより、潤滑液が介在するときの可動物体とチャンネルの間の動摩擦係数を算出する。
(6)潤滑液が介在するときの可動物体とチャンネルの間の動摩擦係数の大小に基づいてこの潤滑液の摩擦低減特性を評価する。なお、可動物体とチャンネルの間の動摩擦係数は、歯車装置の歯車間における滑り摩擦の動摩擦係数とほぼ同一である。
(1)圧縮性
潤滑液は非圧縮性であることが必須であるが、水系潤滑液及び潤滑油はいずれも非圧縮性であり、両者間に優劣はない。
40℃における潤滑液の動粘度は、おおむね20~165mPa・sの範囲内であるが、水系潤滑液では、水に対するPANaの添加量で動粘度を調整する。したがって、基本的には、水とPANaとを準備すれば、所望の動粘度の水系潤滑液を製造することができる。これに対して、潤滑油では、動粘度が異なる多種の鉱物油を混合することにより動粘度を調整するので、多種の鉱物油を準備しなければ、所望の動粘度の潤滑油を製造することができない。潤滑液は、動粘度の温度変化が小さい方が好ましい。図4から明らかなとおり、水系潤滑液の動粘度の温度変化は、潤滑油の動粘度の温度変化に比べて非常に小さい。したがって、動粘度に係る事項については、水系潤滑液は潤滑油よりも明らかに有利である。
本発明者の実験によれば、水に対するPANa添加率が1~5wt%である水系潤滑液が介在する歯車間における滑り摩擦の動摩擦係数は、0.01~0.02(実用上は適切な値)と推定され、とくにPANa添加率が1~2wt%である水系潤滑液では0.01であると推定される。これに対して、潤滑油が介在する歯車間における滑り摩擦の動摩擦係数は0.01であると推定される。したがって、水系潤滑液の摩擦低減特性は、おおむね潤滑油と同等であるといえる。
潤滑液は、酸化反応(とくに高温時)による劣化が生じにくいことが必須である。水系潤滑液は、基本的には水とポリアクリル酸ナトリウムとからなるが、ポリアクリル酸ナトリウムはその燃焼温度(数百℃)未満では酸素と化合しないので、水系潤滑液に酸化による劣化は生じない。他方、鉱物油からなる潤滑油は、必然的に酸化により劣化し、劣化速度は温度が高いほど大きくなる。この点において、水系潤滑液は潤滑油よりも有利である。
歯車装置は、一般に鉄合金及びアルミニウム合金で作成されるが、前記のとおり、水系潤滑液の水素指数がpH7~11(好ましくは、pH8~10)の範囲内に調整されているので、歯車装置に水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)による腐食はほとんど生じない。他方、作動油は、硫黄分が入っていない限り、金属腐食性は比較的低い。したがって、この点については、両者間に優劣はない。
歯車装置は、おおむね閉鎖系であり、外部から土塵や埃等の異物が侵入しない構造となっているが、完全な密閉系ではないので、大気中からの水蒸気の侵入は防ぐことができない。このため、歯車装置では、大気中から潤滑液に水蒸気が混入する。このため、潤滑油では劣化や白濁が生じる。これに対して、水系潤滑液は大部分(95~99wt%)が水であるので、大気中からの水蒸気の侵入は、何ら不具合を生じさせない。この点において、水系潤滑液は潤滑油よりも有利である。
水系潤滑液は大部分が水であって不燃性であるので、歯車装置に火災が発生する可能性はない。他方、鉱物油からなる潤滑油は可燃性であるので、失火、延焼、事故等により歯車装置に火災が発生する可能性がある。この点において、水系潤滑液は潤滑油よりも有利である。
ポリアクリル酸ナトリウムないしはポリアクリル酸は、食品や化粧品の製造分野で増粘剤として用いられているものであり、生体に対する毒性は極めて低いものである。したがって、例えば河川等に流出しても、流域の住人又は水中の生態系に悪影響を及ぼすものではない。また、水系潤滑液は水溶液であり、河川等に漏出した場合、河川等の水と即時に混和し、水底に沈殿したり、水面に浮遊したりすることはない。したがって、水系潤滑液は、河川、湖沼等に漏出した場合でも、自然界の自浄作用により分解され、環境汚染性は非常に低い。これに対して、主として鉱物油からなり、種々の添加剤を含む潤滑油は、生体に対して毒性があり、また河川、湖沼等に漏出した場合、水面に浮遊して水環境を非常に悪化させる。この点において、水系潤滑液は潤滑油よりも有利である。
一般に、潤滑液は、潤滑液貯槽内で常時空気と接触しているので、ほぼ飽和溶解度まで空気が溶解している。空気飽和溶解度は、おおむね潤滑液の圧力に比例して変化する。このため、潤滑液の循環回路内で潤滑液が減圧状態(大気圧未満)になるところ(例えば、ポンプ吸込口)では、潤滑液中に溶解していた空気の一部が溶解できなくなり微小な気泡が発生する。これらの気泡は、潤滑液の圧力が再び上昇したときに潤滑液に溶解することになるが、気泡が潤滑液に完全に溶解するには、ある程度の時間を必要とする。このため、残留している気泡によって、ポンプのキャビテーションや部品のエロージョンが発生することがある。大気圧下では、鉱物油からなる潤滑油の常温での空気飽和溶解度は体積基準で9%程度であるが、水系潤滑液の場合は体積基準で2%程度である。このように、水系潤滑液の空気飽和溶解度が潤滑油に比べて小さいので、気泡の発生量が少なくなり、ポンプのキャビテーションや部品のエロージョンの発生が低減される。この点において、水系潤滑液は潤滑油よりも有利である。
水系潤滑液の主原料であるポリアクリル酸ナトリウムないしはポリアクリル酸は炭素、水素あるいは酸素を含む有機化合物であり、基本的には微生物の栄養源となりうるものである。したがって、微生物の増殖に必要な窒素化合物、リン化合物等が十分に供給された場合は、水系潤滑液は微生物によって生物分解される(腐敗する)可能性はある。しかし、ほぼ閉鎖系である歯車装置には、微生物の増殖に必須である窒素化合物、リン化合物等が侵入する可能性はないので、水系潤滑液中で通常の微生物が増殖する可能性はなく、水系潤滑液の生物的劣化(腐敗)は生じない。なお、水系潤滑液が河川、湖沼等に排出された場合、外界には窒素化合物、リン化合物等が大量に存在するので、水系潤滑液は生物分解される。他方、潤滑油は、生物分解される(腐敗する)ことはない。
ポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸は合成系の薬剤であるが、生体に対する毒性ないしは有害性は極めて低く、品質が食品添加レベルのポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸は、食品分野で増粘剤として使用されている。ポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸の使用が、生体の保護の観点から法的に規制されることはない。
エタノールは、アルコール飲料(酒類)の主成分であり、また医薬品として用いられているものであり、生体に対する毒性ないしは有害性は極めて低いものである。
プロピレングリコールは、医薬品や、化粧品や、麺や米飯などの食品に品質改善剤として用いられているものであり、生体に対する毒性ないしは有害性は極めて低いものである。なお、プロピレングリコールは、可燃性であることから消防法では危険物第4類に分類されているが、水系潤滑液のプロピレングリコール濃度は可燃限界濃度よりはるかに低い。したがって、水系潤滑液が、プロピレングリコールを含むことに起因して消防法による規制を受けることはない。
水酸化ナトリウムは、水中ではナトリウムイオン(Na+)と水酸化物イオン(OH-)とに電離しており、水中の水酸化物イオン濃度が高いとアルカリ性は強くなるものの、両イオンとも元々生体内に存在するイオンであり、物質としては生体にとって有毒ないしは有害なものではない。よって、pHに基づく規制を受ける点はさておき、水酸化ナトリウムの使用自体が、生体の保護の観点から法的に規制されることはない。
酢酸は、食品として用いられる酢の主成分であり、生体に対する毒性ないしは有害性は極めて低いものである。
4 ワイヤドラム、 5 回転シャフト、 6 ドラム支持部、 7 連結具、
8 歯車式減速装置、 9 出力シャフト、 10 ハウジング、
11 入力シャフト、 12 第1中間シャフト、 13 第2中間シャフト、
14 第3中間シャフト、 15 第1歯車、 16 第2歯車、
17 第3歯車、 18 第4歯車、 19 第5歯車、 20 第6歯車、
21 第7歯車、 22 第8歯車、 25 電動機、 26 導線、
27 制御盤、 30 潤滑液供給装置、 31 潤滑液供給器、 32 ノズル、
33 潤滑液貯槽、 34 潤滑液還流通路、 35 潤滑液排出ポート、
36 潤滑液受入ポート、 37 ポンプ、 38 潤滑液供給通路。
Claims (1)
- 河川、農業用水路、湖沼又は海岸に設置され扉体の昇降により水門を開閉するワイヤロープウインチ式のゲート開閉装置を構成する減速装置のための水系潤滑液であって、
前記減速装置は、ハウジングと、前記ハウジング内にそれぞれ配置され、互いに又は順次に噛み合う複数の歯車を有し前記扉体を上昇させるときには入力シャフトのトルクを増大させて出力シャフトに伝達する歯車式動力伝達機構とを備えていて、
該水系潤滑液は、前記ハウジング内に貯留されて前記歯車式動力伝達機構を部分的又は全面的に浸漬させることにより潤滑し、
該水系潤滑液は、水とポリアクリル酸ナトリウムとプロピレングリコールとを含み、該水系潤滑液における水に対するポリアクリル酸ナトリウムの量が1~5質量パーセントの範囲内であり、
該水系潤滑液の水素指数がpH8~pH10の範囲内であることを特徴とする減速装置のための水系潤滑液。
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