JP7168168B2 - レトルト食品の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、具材に軟体動物の肉材が含まれる場合にこの欠点は顕著であり、軟体動物の肉材を使用するレトルト食品において、品質上の大きな課題であった。
<1> 内臓を除去した、加熱処理していない軟体動物の肉材を、先端が非尖鋭状の手段を用いて加圧し、前記軟体動物の肉材の細胞組織を物理的に損傷させる損傷工程と、前記損傷工程で得られた軟体動物の肉材を25℃~65℃で30分間以上保持する保持工程と、を含むことを特徴とする軟化した軟体動物の肉材の製造方法である。
<2> 前記損傷工程の前に、前記内臓を除去した、加熱処理していない軟体動物の肉材を冷凍し解凍する冷凍解凍工程を含む前記<1>に記載の軟化した軟体動物の肉材の製造方法である。
<3> 前記加圧が、叩くことによる加圧である前記<1>又は<2>に記載の軟化した軟体動物の肉材の製造方法である。
<4> 前記保持工程において、プロテアーゼを実質的に添加しない前記<1>から<3>のいずれかに記載の軟化した軟体動物の肉材の製造方法である。
<5> 前記軟体動物がイカである前記<1>から<4>のいずれかに記載の軟化した軟体動物の肉材の製造方法である。
<6> レトルト食品の製造方法であって、前記<1>から<5>のいずれかに記載の方法で製造された軟化した軟体動物の肉材を含む食品を110~140℃で加熱する工程を含むことを特徴とする製造方法である。
本発明の軟化した軟体動物の肉材の製造方法は、内臓を除去した、加熱処理していない軟体動物の肉材を、先端が非尖鋭状の手段を用いて加圧し、前記軟体動物の肉材の細胞組織を物理的に損傷させる損傷工程と、前記損傷工程で得られた軟体動物の肉材を25℃~65℃で30分間以上保持する保持工程とを含み、さらにその他の工程を含むことができる。
前記損傷工程は、内臓を除去した、加熱処理していない軟体動物の肉材を、先端が非尖鋭状の手段を用いて加圧し、前記軟体動物の肉材の細胞組織を物理的に損傷させ、軟体動物の肉質部由来の内在性プロテアーゼを漏出させる工程である。
前記加熱処理としては、特に制限はなく、いかなる加熱処理も含まれるが、例えば、焼くことによる加熱、煮ることによる加熱、炒めることによる加熱、蒸すことによる加熱、茹でることによる加熱などが挙げられる。
前記加圧の範囲としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、少なくとも一部が加圧されていればよいが、効率的に細胞組織を物理的に損傷させ、全体的に内在性プロテアーゼを漏出できる点で、全体的に均一に加圧することが好ましい。
前記保持工程は、前記損傷工程で得られた軟体動物の肉材を25℃~65℃で30分間以上保持する工程であり、前記損傷工程により漏出した軟体動物の肉質部由来の内在性プロテアーゼによる酵素反応を進行させる工程である。
前記保持時間の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、簡便性の点で、7時間未満が好ましく、6時間未満がより好ましく、5時間未満がさらに好ましく、4時間未満が特に好ましい。
前記プロテアーゼとしては、特に制限はなく、いかなるプロテアーゼも含まれるが、例えば、パパイン、ブロメライン、フィシン、アクチニジン等の植物由来のプロテアーゼ、サチライシン、サーモライシン等の微生物由来のプロテアーゼ、トリプシン、カテプシン、ロイシンアミノペプチターゼ、ミオシナーゼ等の動物由来のプロテアーゼなどが挙げられる。
すなわち、前記保持工程において、前記損傷工程により漏出した軟体動物の肉材由来の内在性プロテアーゼのみによる酵素反応が進行することが好ましい。
前記保持工程前と比較して、前記保持工程後に、分解されたタンパク質の量が増加した場合は、前記損傷工程により、細胞組織が物理的に損傷し、軟体動物の肉質部由来の内在性プロテアーゼが漏出し、前記保持工程において、前記損傷工程により漏出した軟体動物の肉質部由来の内在性プロテアーゼによる酵素反応が進行し、タンパク質が分解されたとみなす。
前記分解されたタンパク質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ミオシンなどが挙げられる。
前記増加した遊離アミノ酸量の定量としては、常法により行うことができ、例えばTCA可溶性窒素含量(チロシン換算)の濃度変化を測定することにより行うことができる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、損傷工程前の冷凍解凍工程、内臓除去工程、保持工程後の酵素反応停止工程、保持工程後の冷却工程などが挙げられる。
前記損傷工程前の冷凍解凍工程は、前記損傷工程前に、内臓を除去した、加熱処理していない軟体動物の肉材を冷凍し解凍する工程である。
冷凍解凍工程を行うことにより、物理的損傷による内在性プロテアーゼの拡散性やその蛋白分解効果が向上する点で、冷凍解凍工程を経ないよりも好ましい。
前記内臓除去工程は、前記損傷工程前に軟体動物から内臓を除去する工程である。
前記内臓とは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、消化器、泌尿器などの内臓を含む内臓嚢が挙げられる。
前記保持工程後の酵素反応停止工程は、前記保持工程後に酵素反応を停止させる工程である。
前記保持工程後の冷却工程は、前記保持工程後の軟化した軟体動物の肉材を冷却する工程である。
前記冷却としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、放冷、差圧冷却、真空冷却、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
前記冷却後の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、衛生上の点で、30℃以下が好ましく、25℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。
本発明のレトルト食品の製造方法は、前記軟化した軟体動物の肉材の製造方法で製造された軟化した軟体動物の肉材を含む食品を110~140℃で加熱する工程を含み、さらにその他の工程を含むことができる。
前記110~140℃で加熱する工程は、前記軟化した軟体動物の肉材の製造方法で製造された軟化した軟体動物の肉材を含む食品を110~140℃で加熱する工程である。
前記110~140℃で加熱する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パウチ、缶、瓶等の容器に密封された食品を、品温が110~140℃になるように加熱する方法、パウチ、缶、瓶等の容器に密封された食品を、高圧釜で加熱する方法などが挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填工程、110~140℃で加熱する工程後の冷却工程などが挙げられる。
前記充填工程は、前記軟化した軟体動物の肉材の製造方法で製造された軟化した軟体動物の肉材を含む食品を、前記110~140℃で加熱する工程前に、パウチ、缶、瓶等の容器に充填する工程である。
前記110~140℃で加熱する工程後の冷却工程は、前記110~140℃で加熱する工程後の食品を冷却する工程である。
前記冷却としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、放冷、差圧冷却、真空冷却、又はこれらの組合せなどが挙げられる。
前記冷却後の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、衛生上の点で、30℃以下が好ましく、25℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。
(実施例1)
冷凍した後、解凍したコウイカを開き、消化器、泌尿器などの内臓を含む内臓嚢を除去し、加熱処理されていない軟体動物の肉材(縦 約15cm、横 約15cm)を得た。
軟体動物の肉材を全体的に均一に、肉材との接触面の形状が平面状であり、接触面積が50cm2の木槌で叩くことにより、細胞組織を物理的に損傷させ、コウイカの肉質部由来の内在性プロテアーゼを漏出させた。肉材を木槌で叩く様子を示す写真を図1に示した。
内在性プロテアーゼを漏出させた肉材を、30℃に設定したインキュベータ内にて1時間保持し、酵素反応を進行させた。
その後、90℃で30分間の茹でることによる加熱を行い、酵素反応を停止した。
酵素反応を停止させた肉材を、レトルト処理として、125℃に調整した3%食塩水内で30分間加熱し、軟化した軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
90℃で30分間の茹でることによる加熱まで行い、レトルト処理を行わなかったものをコントロールとして、軟体動物の肉材の食感を10名のパネルにより下記評価基準にて評価し、平均点を求めた。
5:コントロールと同等、或いはそれよりも柔らかい
4:コントロールよりもわずかに劣るが、柔らかい食感である
3:コントロールよりも硬さを感じるものの、及第点である食感である
2:コントロールよりもかなり硬さを感じ、食べるのにやや抵抗がある
1:非常に硬く、食べるのに抵抗がある
30℃に設定したインキュベータ内での保持時間を、1時間から2時間に変えた以外は、実施例1と同様に軟化した軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
30℃に設定したインキュベータ内での保持時間を、1時間から3時間に変えた以外は、実施例1と同様に軟化した軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
インキュベータの設定温度を、30℃から45℃に変えた以外は、実施例1と同様に軟化した軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
インキュベータの設定温度を、30℃から45℃に変え、保持時間を、1時間から3時間に変えた以外は、実施例1と同様に軟化した軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
インキュベータの設定温度を、30℃から60℃に変えた以外は、実施例1と同様に軟化した軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
木槌を用いた細胞組織の物理的損傷を行わず、30℃に設定したインキュベータ内での保持を行わなかった以外は実施例1と同様に軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
木槌を用いた細胞組織の物理的損傷を行わなかった以外は実施例3と同様に軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
30℃に設定したインキュベータ内での保持を行わなかった以外は実施例1と同様に軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
木槌を用いた細胞組織の物理的損傷の代わりに、フォークを用いた穴あけ処理を全体的に均一に行い、500mLの1%パパイン溶液(オリエンタル酵母工業株式会社製)に60分間浸漬した以外は実施例6と同様に軟体動物の肉材を製造した。官能評価結果を表1に示した。
木槌を用いた細胞組織の物理的損傷を行わず、500mLの1%パパイン溶液(オリエンタル酵母工業株式会社製)に60分間浸漬した以外は実施例6と同様に軟体動物の肉材を製造した。官能評価を表1に示した。
細胞組織の物理的損傷を行わず、インキュベータ内での保持を行わなかった比較例1では、レトルト処理後の食感が、レトルト処理を行わなかったものと比較して、硬いものであることが分かった。
細胞組織の物理的損傷を行わなかった比較例2、及びインキュベータ内での保持を行わなかった比較例3は、レトルト処理後の食感が、レトルト処理を行わなかったものと比較して、非常に硬いものであり、細胞組織の物理的損傷を行わず、インキュベータ内での保持を行わなかった比較例1と比較して、さらに劣るものであることが分かった。
細胞組織の物理的損傷の代わりに、フォークを用いた穴あけ処理を行い、パパイン溶液に浸漬した比較例4、及び細胞組織の物理的損傷を行わず、パパイン溶液に浸漬した比較例5では、レトルト処理後の食感が、レトルト処理を行わなかったものと比較して、硬いものであることが分かった。
(試験例1)
冷凍した後、解凍したコウイカを開き、消化器、泌尿器などの内臓を含む内臓嚢、及び皮を除去し、加熱処理されていない軟体動物の肉材(縦 約15cm、横 約15cm)を得た。
軟体動物の肉材を全体的に均一に、肉材との接触面の形状が平面状であり、接触面積が50cm2の木槌で叩くことにより、細胞組織を物理的に損傷させた。
10gずつ真空包装を行い、50℃に設定したインキュベータ内にて0時間、1時間、2時間、又は3時間保持した。
その後、90℃で30分間の茹でることによる加熱を行い、酵素反応を停止した。
各サンプルについて、遊離アミノ酸(チロシン換算)濃度を測定し、結果を表2及び図2に示した。
各サンプルから約3gを切り出し、重量を測定した。30mLの5%TCAを加えて、ホモジナイズした(30秒間を2回)。遠心分離(20℃、9000rpm、5分間)し、ろ紙(No.5-C)を用いてろ過した。0.5mLの上清に、2.5mLの0.5M Na2CO3、及び0.5mLのフェノール試薬(1/2希釈)を加え、30℃に設定した恒温槽で20分間保持した。分光光度計にて、660nmの吸光度を測定し、TCA可用性窒素量から遊離アミノ酸(チロシン換算)濃度を算出した。
木槌を用いた細胞組織の物理的損傷を行わなかった以外は試験例1と同様に軟体動物の肉材を製造した。各サンプルについて、遊離アミノ酸(チロシン換算)濃度を測定し、結果を表2に示した。
Claims (5)
- 内臓を除去した、加熱処理していない軟体動物の肉材を、先端が非尖鋭状の手段を用いて加圧し、前記軟体動物の肉材の細胞組織を物理的に損傷させる損傷工程と、
前記損傷工程で得られた軟体動物の肉材を25℃~65℃で30分間以上保持する保持工程と、
前記保持工程で得られた軟化した軟体動物の肉材を含む食品を110~140℃で加熱する工程と、を含むことを特徴とするレトルト食品の製造方法。 - 前記損傷工程の前に、前記内臓を除去した、加熱処理していない軟体動物の肉材を冷凍し解凍する冷凍解凍工程を含む請求項1に記載のレトルト食品の製造方法。
- 前記加圧が、叩くことによる加圧である請求項1又は2に記載のレトルト食品の製造方法。
- 前記保持工程において、プロテアーゼを実質的に添加しない請求項1から3のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法。
- 前記軟体動物がイカである請求項1から4のいずれかに記載のレトルト食品の製造方法。
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