JP7157975B2 - タンパク質溶出防止剤およびその製造方法 - Google Patents

タンパク質溶出防止剤およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は毛髪に対する処理の際に、毛髪からタンパク質が溶出することを抑制し、毛髪に与えられるダメージを緩和するためのタンパク質溶出防止剤に関するものである。
コラーゲンは毛髪に対する処理に多く利用されている。特許文献1では、魚由来コラーゲン0.0001~10質量%と保湿剤0.001~5質量%を配合する養毛料が開示されている。この養毛料は、べたつきがなく、ごわつきのない均一な皮膜を形成させることによって、保湿剤を滞留させ、頭皮における水分状態を正常化することで優れた養毛効果を奏するとされている。
また、特許文献2では、整髪方法において用いる毛髪処理剤にヒートケア成分としてコラーゲンを用いることが開示されている。また、特許文献3には、栄養成分として加水分解コラーゲンが含まれるシャンプー剤若しくはトリートメント剤が開示されている。
特許文献4には、魚類由来コラーゲンの熱変性物を含有する化粧料であって、マグロ由来コラーゲンを45~55℃の温度範囲、0.5~2時間の条件で熱変性させたマグロ由来コラーゲンの熱変性物と、タイ由来コラーゲンを45~55℃の温度範囲、0.5~2時間の条件で熱変性させたタイ由来コラーゲンの熱変性物とを含有することを特徴とする化粧料が開示されている。この化粧料は、皮膚や毛髪の感触を向上させることができる。
なお、このマグロ由来コラーゲンの熱変性物及びタイ由来コラーゲンの熱変性物は、コラーゲンの3重螺旋構造のほとんど又は全てが解けた構造を有する。マグロ由来コラーゲンの熱変性物及びタイ由来コラーゲンの熱変性物は、ポリペプチド鎖(α鎖)、α鎖の二量体(β鎖)及びα鎖の三量体(γ鎖)を含有しているが、ポリペプチド鎖よりも低分子化された加水分解物をほとんど又は全く含有しない。
また、マグロ由来コラーゲンの熱変性物及びタイ由来コラーゲンの熱変性物における変性率は、例えば、約85~100%である。変性率は、円二色性分散計により測定されるとされている。
特開2007-262002号公報 特開2013-040163号公報 特開2003-012475号公報 特開2016-074616号公報(特許第5727081号)
このように、洗髪、整髪、養毛、染髪といったヘアケアにコラーゲンを含有させることは行われていた。これらの、コラーゲンを添加する目的は、頭皮への栄養補給やヒートケア(ドライヤーの熱に対する防御)、といった効果を期待するものであった。
毛髪はメデュラ、コルテックス、キューティクルという3層構造で形成されている。ヘアケアにおいては、従来キューティクルに関する言及は行われていたが、毛髪が3層構造である以上、表面のキューティクルだけでなく、内部のコルテックス、メデュラといった組織の溶出も毛髪のダメージとして考えられる。
また、ヘアケアという行為自体が、ある程度毛髪に刺激を与えるものであるので、毛髪からタンパク質を溶出させる処理であるとも考えられた。
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、I型コラーゲンの螺旋構造がほどけ気味になった状態(以下「構造緩和コラーゲン」とも呼ぶ。)のコラーゲンが、毛髪からタンパク質を溶出させないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
より具体的に本発明に係るタンパク質溶出防止剤は、
魚皮由来のコラーゲンを含むタンパク質溶出防止剤であって、
前記コラーゲンは、内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ62.5cm、有効長50cm)、印加電圧25kV、50mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)でのキャピラリー電気泳動において、電気泳動移動度(μep)として、10.0cm・min-1・kV-1以下を示すことを特徴とする。
本発明に係るタンパク質溶出防止剤は、毛髪からのタンパク質溶出を防止することができ、毛髪に対してダメージを与えないという効果を奏する。
実施例1で得られたコラーゲン組成物の2-メルカプトエタノール存在下加熱条件で前処理した試料(レーン1)、2-メルカプトエタノール非存在下非加熱条件で前処理した試料(レーン2)の電気泳動の結果を示す図である。尚、Mはタンパク質の分子量マーカーを示す。 実施例3で得られたコラーゲン組成物と、比較品1との水に対する溶解性の試験結果の状態を示す像である。 実施例4で得られたコラーゲンのCDスペクトルのグラフである。 実施例5で得られた、実施例1で得られたコラーゲン組成物などの保湿効果を検証のために、角層水分量を指標とした保湿試験の結果を示すグラフである。 実施例7で、本発明に係る実施例と比較例について試験毛髪からのタンパク質溶出量を比較するグラフである。
以下に本発明に係るタンパク質溶出防止剤について図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
本発明に係るタンパク質溶出防止剤は、魚皮由来のコラーゲンを含み、分子量90000以上のコラーゲン含量が固形分でタンパク質量に対して70%以上で構成されている。また、水(25℃)に対する溶解度が10%以上であり、かつ非還元非加熱条件での電気泳動においてα鎖、β鎖およびγ鎖を示すバンドが観察される。
タンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンは、分子量90000以上のコラーゲン含量が固形分でタンパク質量に対して70%以上であることで、保湿性を発揮するのに適した分子量を有するコラーゲンを多量に含有した、コラーゲンの純度の高い組成物である。また、構造緩和コラーゲンの分子量については、90000以上であればよく、その上限値については特に限定はないが500000以下であればよい。
タンパク質溶出防止剤中におけるタンパク質としては、前記分子量90000以上の構造緩和コラーゲンのみで構成されていてもよいが、他の魚皮由来のタンパク質成分、例えば、分子量90000未満のコラーゲン、筋肉由来のミオシン、血液由来のアルブミンなどを含有していてもよい。
タンパク質溶出防止剤において、分子量90000以上の構造緩和コラーゲン含量を、固形分でタンパク質量に対して70%以上となるように調整する手法としては、構造緩和コラーゲンを含む組成物を限外ろ過法や透析法により精製する手法が挙げられる。限外ろ過法および透析法は、分子量90000以上のコラーゲンを回収できる方法であればよく、限外ろ過装置、透析装置、ろ液などの種類について特に限定はない。なお、分子量90000以上の構造緩和コラーゲン含量は、タンパク質溶出防止剤の全タンパク質中における分子量90000以上のコラーゲンの固形分換算の重量割合をいう。
タンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンは、水(25℃)に対する溶解度が10%以上であると、原料の魚皮由来のコラーゲンに比べて、優れた溶解性を有する。溶解度は、溶媒である水またはpH2~5の緩衝液(25℃)100g中に対して溶解できるタンパク質溶出防止剤の重量%を示す。溶解度は、公知の方法で溶解度曲線を測定することで算出することができる。なお、本発明に係るタンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンの溶解度は、化粧品など使用できる分野が幅広くなる観点から、5%以上であることが好ましい。
また、本発明に係るタンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンは、非還元非加熱条件での電気泳動においてα鎖、β鎖およびγ鎖を示すバンドが観察されるものである。
本発明において、電気泳動における非還元条件とは、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトールなどの還元剤が存在していない条件をいう。また、非加熱条件とは、試料の前処理において50℃以上の加熱条件を加えない条件をいう。
タンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンは、非還元非加熱条件で電気泳動を行うことで、α鎖、β鎖およびγ鎖を示すバンドを目視でも容易に観察可能にする。なお、電気泳動は、タンパク質を分離するための電気泳動であればよいが、α鎖、β鎖、γ鎖を明瞭に観察し易い観点から、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動が好ましい。
一般に、コラーゲンは、ポリペプチド鎖(例えば、α1鎖、α2鎖、α3鎖などのα鎖)が3本集まった三重螺旋構造を有している。そして、コラーゲンには、I型~XVIII型など様々なタイプがあり、そのタイプ毎にポリペプチド鎖の種類は異なっている。例えば、I型コラーゲンはα1鎖2本とα2鎖1本から形成されており、II型コラーゲンは3本のα1鎖から形成されており、V型コラーゲンはα1鎖、α2鎖、α3鎖から形成されていることが知られている。
β鎖とは、前記α1鎖が2本組になった2量体をいい、γ鎖とは、前記β鎖と前記α2鎖の3量体をいう。α1鎖の電気泳動のバンドは120kDa付近、α2鎖の電気泳動のバンドは100kDa付近、β鎖の電気泳動のバンドは230kDa付近、γ鎖の電気泳動のバンドは300kDa付近に観察される。
タンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンにおいてα鎖、β鎖およびγ鎖を示すバンドの観察は、クマシーブリリアントブルーR250、ポンソSなど市販のタンパク質染色剤を使い、目視で行ってもよいし、市販のゲル解析装置で行ってもよい。また、電気泳動によるバンドが、背景よりも濃い色で現れていれば、バンドがあると判断し、バンドと背景の境界が明確であれば、バンドが明瞭であると判断する(明瞭なバンドが得られない場合には、試料溶液を希釈または濃縮して明瞭なバンドが観察される濃度で電気泳動を行う。)。
また、上記の構造緩和コラーゲンの三重螺旋構造の状態については、キャピラリー電気泳動や円偏光二色性(CD)スペクトルを用いることである程度把握できる。
例えば、キャピラリー電気泳動での電気泳動移動度は電荷/サイズ比により決まる。すなわち、電荷が同じ場合、分子の嵩高さが大きい場合に小さく、嵩高さが小さい場合には大きくなる。したがって、キャピラリー電気泳動を行った場合に、本発明に係るタンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンの電気泳動移動度が10.0cm・min-1・kV-1以下であれば、三重螺旋構造が部分的にほぐれた(緩んだといってもよい)構造緩和状態になっていると推測される。
キャピラリー電気泳動の条件としては、内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ62.5cm、有効長50cm)、印加電圧25kV、50mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)とすることで、電気泳動移動度を測定することができる。また、電気泳動移動度を測る対象は、中性マーカーを含有する試料であればよい。中性マーカーとしては、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メシチルオキシドなど、正または負の電荷を持たず、紫外部吸収を有するものが望ましい。
また、タンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンのCD(Circular Dichroism:円二色)スペクトルが207~210nmで負の極大を示し、200nmで大きく正の値を示す場合、コラーゲンの三重螺旋構造の一部が部分的にほぐれて、構造緩和を呈する状態に変化していると推測される。
本発明のタンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンでは、分子量90000以上と比較的大きな分子量のコラーゲンにおいて、その三重螺旋構造の一部がほぐれた構造緩和状態になることによって、その部分がゼラチン様の構造となり、保湿性とともに、優れた溶解性を両立させている点で、従来の魚皮由来のコラーゲンにはない効果が奏されると考えられる。
なお、コラーゲンを分解して得られるゼラチンでは、三重螺旋構造の全てがバラバラになっていると共に低分子化されている場合が多いため、特定の高次構造を持たないことからCDスペクトルを測定すると前記200nmで大きな正の値を示さない。なお、CDスペクトルは、公知の測定装置を用いて測定できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で、CDスペクトルを測定することができる。
また、本発明のタンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンは、ヒトの肌に塗布した場合、皮膚の保湿性に優れたものである。保湿性としては、例えば、肌への塗付後20分後の水分値が塗付前と比較して1.1倍以上となることが好ましく、1.3倍以上となることがより好ましい。なお、前記水分値の測定方法としては、皮膚水分計を用いて角層水分量を測定する。なお、具体的な測定は、後述の実施例に記載のようにすればよい。
タンパク質溶出防止剤に含まれる構造緩和コラーゲンの原料である魚皮の由来となる魚の種類としては、マグロ類、ブリ類、ハタ類、タラ類、カレイ類、カツオ類、クエ類等が挙げられる。中でも、魚体が大型で、分子量90000以上のコラーゲンを多量に含む魚皮を採り易い点、皮が厚いため処理中に魚皮が崩れにくく抽出・精製が容易などの点などから、クロマグロ、タイセイヨウクロマグロ、キハダマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、ビンナガマグロ、コシナガなどのマグロ類が好ましく、更には完全養殖に成功して安定して入手し易い点から、クロマグロがより好ましい。
本発明のタンパク質溶出防止剤には、水に対する溶解性および保湿性に影響を与えない範囲で、分子量90000以上の構造緩和コラーゲン以外にも他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分としては、例えば、一部断片化されたコラーゲン分子や、脂質、糖質、他のタンパク質、ビタミン類、pH調整剤及びエタノール、パラベン類やフェノキシエタノールなどの保存料などが挙げられる。
本発明のタンパク質溶出防止剤の製造方法は、魚皮から所望の分子量のコラーゲンを効率よく抽出でき、かつ、他の成分の含有量も効率よく抑えることができる観点から、
魚皮を希薄強酸処理または希薄強アルカリ処理する第一工程と、
前記希薄強酸処理した魚皮を希薄強アルカリ処理する、または前記希薄強アルカリ処理し魚皮を希薄強酸処理する第二工程と、
前記第二工程で得られた魚皮から希薄弱酸溶液を用いてコラーゲンを抽出する第三工程と、
前記第三工程で抽出したコラーゲンを限外ろ過法或いは透析法により精製する第四工程
を有することが好ましい。
第一工程で原料として使用する魚皮は、例えば、鱗、肉部などが付着した魚皮でもよいし、鱗、肉部などを切り離した魚皮でもよい。また、タンパク質溶出防止剤が着色するのを防ぐ観点から、魚体の中でも着色の少ない部分、例えば、マグロ類であれば、着色の少ない腹部の魚皮が好ましい。
また、魚皮としては、不純タンパク質、血液、色素、油分等を物理的方法または化学的方法によって完全にまたは一部除去されたものが好ましい。物理的方法としては、ヘラ、ナイフ等の刃物を用いて魚体から魚皮を回収し、鱗、肉部などに加えて、血液、色素、油分が付いた他の部分を除去する方法、水圧を利用して魚皮表面についた鱗、肉部、さらに血液、色素、油分が付いた他の部分を除去する方法などが挙げられる。
このようにして、不純タンパク質、血液、色素、油分などを完全にまたは一部除去した魚皮を第一工程に供する。第一工程では、希薄強酸処理、希薄強アルカリ処理のいずれかを行う。
希薄強酸処理は、魚皮を所定濃度の希薄強酸溶液に浸漬、噴霧などして接触させることで行う。希薄強酸溶液の溶媒は、水であればよいが、エタノールなどの有機溶媒を混合していてもよい。
希薄強酸溶液中の強酸の種類としては、通常用いられる強酸であればよく、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられるが特に限定は無い。使用する強酸濃度としては、魚皮から油分を効率よく除去できる観点から、0.01~0.5Nが好ましく、0.05~0.3Nがより好ましく、0.1~0.2Nがさらに好ましい。
希薄強酸処理では、コラーゲンの変性を防ぎ、かつ効率的に脂質を除去する観点から、処理温度としては15~25℃で行うことが好ましく、また、処理時間としては1~72時間が好ましく、3~48時間がより好ましく、12~30時間がさらに好ましい。
希薄強アルカリ処理としては、魚皮を希薄強アルカリ溶液に浸漬、噴霧などして接触させることで行う。希薄強アルカリ溶液に用いるアルカリ成分としては、食品に用いられるアルカリ成分であればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられるが、特に限定はない。
希薄強アルカリ溶液の溶媒は、水であればよいが、エタノールなどの有機溶媒を混合していてもよい。希薄強アルカリ溶液中の希薄強アルカリ濃度としては、コラーゲン以外のタンパク質成分の除去及び油分のけん化によって不純物の除去を効率よく行うとともに、テロペプチド部分の切断を効率よく行う観点から、0.05~0.5Nが好ましく、0.1~0.2Nがより好ましい。
希薄強アルカリ処理では、コラーゲンの変性を防ぐために、処理温度としては、15℃以下で行うことが好ましく、また、処理時間としては、1~72時間が好ましく、3~48時間がより好ましく、12~30時間がさらに好ましい。
希薄強酸処理または希薄強アルカリ処理を浸漬で行う際には、攪拌機を用いて循環させてもよい。また、希薄強酸処理または希薄強アルカリ処理後、篩を用いて魚皮をろ過した後、篩上に残った魚皮残渣を水などの溶媒に浸漬して洗浄してもよい。
第二工程では、第一工程において希薄強酸処理した魚皮を希薄強アルカリ処理する、または第一工程で希薄強アルカリ処理した魚皮を希薄強酸処理する。第二工程で行う希薄強酸処理および希薄強アルカリ処理の条件については、前記第一工程で行う条件と同じであればよい。
第三工程では、第二工程で得られた魚皮から希薄弱酸溶液を用いてコラーゲンを抽出する。希薄弱酸溶液に用いる酸としては、食品に用いられる酸であればよく、例えば、炭酸、リン酸などの無機酸や、酢酸、クエン酸、乳酸などの有機酸などが挙げられるが、特に限定はない。
希薄弱酸溶液の溶媒は、水であればよいが、エタノールなどの有機溶媒を混合していてもよい。希薄弱酸溶液中の酸濃度としては、コラーゲンの酸抽出を効率よく行う観点から、0.001~2Nが好ましく、0.01~2Nがより好ましく、ナトリウム及びカリウム等の塩の状態で使用しても良い。
また、希薄弱酸溶液によるコラーゲンの抽出は、4~50℃、好ましくは30~40℃、より好ましくは35~37℃の温度条件下で、1~48時間、好ましくは3~30時間、攪拌することにより行うことが望ましい。また、第三工程で抽出されたコラーゲンに不溶分が残存している場合には、コラーゲンを含む溶液(コラーゲン溶液)をろ過法、遠心分離法などに供して不溶分を除去することが好ましい。
第三工程で得られたコラーゲンは、希薄弱酸溶液に溶解しているので、そのままでも本発明に係るタンパク質溶出防止剤として使用可能であるが、さらに精製するのが好ましい。すなわち、限外ろ過膜や透析膜を使用して限外ろ過や透析を行うことで抽出用の希薄弱酸溶液を含め、適当な弱酸溶液または緩衝液に置換すると同時に、低分子のペプチド、アミノ酸等の水溶性化合物を除去することが可能である。このように、限外ろ過や透析を行った結果物を本発明に係るタンパク質溶出防止剤として得ることができる。
限外ろ過膜或いは透析膜としては、分子量90000以上のコラーゲンを分画できるものであればよく、例えば、分画分子量30000(MWCO30000)以上の膜、好ましくはMWCO100000、より好ましくはMWCO150000の膜が挙げられるが、特に限定はない。
使用する弱酸溶液および緩衝液はpH3~6で緩衝能を有する弱酸溶液または緩衝液であればどの弱酸溶液および緩衝液であっても使用可能であるが、経済性、安全性等から考えて、クエン酸、酢酸、リン酸の溶液、これらのナトリウム塩、カリウム塩との混合液を使用することが好ましい。
また、コラーゲン溶液中に分散している油分その他の不純物を除去するため、細口径のメンブレンフィルターにてろ過してもよい。メンブレンフィルターの口径としては、1.0マイクロメートル以下のものであればよく、特に限定はない。
以上のような工程で得られた溶液状のタンパク質溶出防止剤は、凍結乾燥法、スプレードライ法などの乾燥法により乾燥物にすることも可能である。凍結乾燥法およびスプレードライ法については、タンパク質溶出防止剤の水に対する溶解性および保湿性に影響を与えない範囲で、公知の手法を用いればよい。また、タンパク質溶出防止剤は、上記のような構造緩和コラーゲンが含まれていれば、その他に公知のヘアケア剤の成分が含まれていてもよい。
以上のようにして得られる本発明に係るタンパク質溶出防止剤は、洗髪、整髪、養毛、染髪といったヘアケア関係の処理やその処理の際に用いる処理剤に好適に使用することが可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。以下の実施例では、「タンパク質溶出防止剤の取得」として、実施例1、2、「タンパク質溶出防止剤中のコラーゲンの確認」として実施例3~実施例7、「タンパク質溶出防止剤の効果」として実施例8、9を説明する。
<タンパク質溶出防止剤の取得>
(実施例1)
クロマグロ皮の赤身部分のみをヘラでそぎ落としたのち、1辺が2~3cmの正方形になるように切断した。この断片を1kg量り採り、10Lの0.1Nの希塩酸溶液に20℃で24時間浸漬した(第一工程)。
希塩酸溶液は攪拌機を用いて緩やかに循環させた。浸漬終了後、ポリプロピレン製の篩を用いてろ過した後、魚皮残渣を5Lの水に緩やかに攪拌しながら浸漬した。再度篩にてろ過し、残渣を0.1Nの水酸化ナトリウム溶液に室温で24時間浸漬した。水酸化ナトリウム溶液は攪拌機を用いて緩やかに循環させた(第二工程)。
浸漬終了後、ポリプロピレン製の篩を用いてろ過した後、魚皮残渣を5Lの水に緩やかに攪拌しながら浸漬した。再度篩にてろ過し、37℃に調整した0.1Nの酢酸溶液に3時間浸漬した(第三工程)。酢酸溶液は攪拌機を用いて緩やかに循環させた。
浸漬終了後、ポリプロピレン製の篩にてろ過した後、ろ液をフィルターろ過し、限外ろ過(MWCO150000、商品名「FB02-FC-FUS1582」、ダイセン・メンブレン・システムズ)にて、ろ液容量の5倍量のクエン酸緩衝液(0.3%クエン酸、0.05%クエン酸ナトリウム)にて溶液置換した(第四工程)。
溶液置換終了後、メンブレンフィルター(0.2μmφ)にてろ過滅菌し、タンパク質溶出防止剤を得た。得られた液体状のタンパク質溶出防止剤中におけるコラーゲンの濃度をBCA法でフィッシュゼラチンをスタンダードとして測定したところ0.4%であった。
(実施例2)
クロマグロ皮の赤身部分のみをヘラでそぎ落としたのち、1辺が2~3cmの正方形になるように切断した。この断片を1kg量り採り、10Lの0.1Nの希塩酸溶液に20℃で24時間浸漬した(第一工程)。希塩酸溶液は攪拌機を用いて緩やかに循環させた。
浸漬終了後、ポリプロピレン製の篩を用いてろ過した後、魚皮残渣を5Lの水に緩やかに攪拌しながら浸漬した。再度篩にてろ過し、残渣を0.1Nの水酸化ナトリウム溶液に室温で24時間浸漬した。水酸化ナトリウム溶液は攪拌機を用いて緩やかに循環させた(第二工程)。
浸漬終了後、ポリプロピレン製の篩を用いてろ過した後、魚皮残渣を5Lの水に緩やかに攪拌しながら浸漬した。再度篩にてろ過し、37℃に調整した0.1Nの酢酸溶液に3時間浸漬した(第三工程)。酢酸溶液は攪拌機を用いて緩やかに循環させた。
浸漬終了後、ポリプロピレン製の篩にてろ過した後、ろ液をフィルターろ過し、限外ろ過(MWCO100000、スペクトラム)にて、ろ液容量の50倍量のクエン酸緩衝液(0.3%クエン酸、0.05%クエン酸ナトリウム)にて溶液置換した(第四工程)。
溶液置換終了後、メンブレンフィルター(0.2μmφ)にてろ過滅菌し、タンパク質溶出防止剤を得た。得られた液体状のタンパク質溶出防止剤中におけるコラーゲンの濃度をBCA法でフィッシュゼラチンをスタンダードとして測定したところ0.1%となった。
<タンパク質溶出防止剤中のコラーゲンの確認>
(実施例3)
実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤を、10%ポリアクリルアミドゲルを用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったのち、クマシーブリリアントブルーR250でタンパク質バンドを検出した。これらの結果を図1に示す。なお、図1ではレーン1が実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤の2-メルカプトエタノール存在下加熱条件(95℃、10分間)で前処理した試料、レーン2は2-メルカプトエタノール非存在下非加熱条件で前処理した試料を示す。
図1に示す結果より、コラーゲンのα1鎖、α2鎖、β鎖、γ鎖を示すバンドが確認され、コラーゲン溶液が得られていることが確認できる。さらに、2-メルカプトエタノール非存在下非加熱で前処理した試料では、更に明瞭なα1鎖、α2鎖、β鎖、γ鎖を示すバンドが観察されており、高純度なコラーゲン溶液が得られていることが確認できる。なお、β鎖とはα1鎖が2本組になった2量体であり、γ鎖とはβ鎖とα2鎖の3量体である。
また、バンドの状態をWealtec社製KETA M 解析装置を用いて測定したところ、タンパク質溶出防止剤中において、分子量90000以上のコラーゲン含量は、固形分として、タンパク質量に対して85%と算出された。
(実施例4)
実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤の溶解性を検討した。実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤を凍結乾燥することにより、29.6gのコラーゲン乾燥物が得られた。コラーゲン乾燥物400mg(コラーゲンとして211mgを含有する)に1mLの常温の水を加え、固形分濃度が20%のコラーゲン溶液を得た。
一方、キハダマグロ由来の市販コラーゲンの凍結乾燥物(シージェムコラーゲン、以下、比較品1)450mg(コラーゲンとして212mg含有)にそれぞれ1mLの水を加え、軽く攪拌しながら室温で5分間放置した。これらの結果を図2に示す。なお、前記比較品1中におけるコラーゲンの含量は、固形分として、タンパク質中約90%であった。
図2に示すように、実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤の凍結乾燥物は、5分間で水に完全に溶解し、20%(w/v)の溶液が容易に調製されたことから、水(25℃)に対する溶解度は21.1%以上あり、非常に高いことが分かる。一方、比較品1は、完全には溶解しないで残渣があったことから、水(25℃)に対する溶解度は、実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤に比べると劣ることがわかる。
(実施例5)
実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤の円偏光二色性(CD)スペクトルを測定した。実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤を0.3%クエン酸-0.05%クエン酸二ナトリウム溶液で0.003mg/mLに希釈し、光路長1mmのセルを用いて、日本分光株式会社製 円二色性分散計「J-820」を用いて10℃における円偏光二色性スペクトルを分析した。
一方、キハダマグロ由来の市販コラーゲンの凍結乾燥物(比較品1)およびフィッシュゼラチン(「FGL-250TS」 新田ゼラチン社製、以下、比較品2)を用いて、0.3%クエン酸-0.05%クエン酸二ナトリウム溶液で固形分濃度が0.003mg/mLの溶液を調製し、同様に円偏光二色性スペクトルを分析した。これらの結果を図3に示す。
図3(a)は、実施例1によるタンパク質溶出防止剤であり、図3(b)は、比較品1であり、図3(c)は比較品2である。各グラフとも横軸は波長(nm)であり、縦軸は角度(mdeg)である。横軸はそれぞれ左端が190nmであり、右端は260nmである。また、縦軸は0度mdegから2.5mdeg(図3(c)だけは-0.5mdegから2.5mdeg)である。
図3に示す結果より、実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤は、円偏光二色性(CD)スペクトルが207~210nmで負の極大を示し、200nmで正の値を示すことがわかる(図3(a))。
一方、比較品1は、CDスペクトルが207nm未満で負の極大を示しており(図3(b))、また比較品2のフィッシュゼラチンは、CDスペクトルが、200nmで負の値を示しているため(図3(c))、コラーゲン分子の構造が実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤中のコラーゲンと相違していることが分かる。
(実施例6)
実施例1で得られたタンパク質溶出防止剤(以下、本発明品)および比較品1の保湿効果を検証のために、角層水分量を指標とした保湿試験を行った。前腕部をドライヤーの冷風にて1分間乾燥させ、携帯型皮膚水分計モバイルモイスチャーHP10-Nにて角層水分量を測定した(ベースライン)。
55mmろ紙に1%コラーゲンサンプル(本発明品、比較品1またはコントロール(蒸留水)を染み込ませ、乾燥部分に5分貼り付けた。ろ紙を除去して1分間風乾し、角層水分量を測定した(塗布直後)。
その後、冷風にて乾燥させながら2分後、5分後、10分後、20分後にそれぞれ前記携帯型皮膚水分計を用いて角層水分量を測定した。これらの結果を図4に示す。図4(a)を参照して、横軸は塗布後経過時間(分)を表し、縦軸は角層水分量(静電容量法による測定:水自体と全く水がない状態を100分割して表示する。)を示す。また図4(b)を参照して、横軸は塗布後経過時間(分)を表し、縦軸は角層水分量相対値(無単位)を表す。なお、角層水分量相対値とは、塗布前の角層水分量を1とした時の各経過時間後の角層水分量の比率を示す。
図4に示す結果より、本発明品は、肌への塗付後20分後の水分値が塗付前と比較して1.3倍以上であり、また、比較品1に比べて塗布後時間が経過するごとに角層水分量の低減が抑えられていることから、保湿性に優れていることがわかる。一方、比較品1は、肌への塗布後20分後の水分値が塗布前と同程度になったことから、保湿効果は20分程度でなくなることがわかる。
(実施例7)
実施例1および2で得られたタンパク質溶出防止剤(以下、本発明品)ならびに比較品1をキャピラリー電気泳動によって分析し、以下の式により電気泳動移動度(μep)を算出した。その結果を表1に示す。なお、表中、「t-0」は中性物質の移動時間を示し、「t-Protein」は、標的タンパク質の移動時間を示す。
電気泳動移動度(μep)(cmmin-1kV-1
=キャピラリー全長(cm) x キャピラリー有効長 (cm) x ((中性物質の移動時間(min))-1-(試料の移動時間(min))-1)/印加電圧(kV)
また、キャピラリー電気泳動の条件は、以下のとおり。
キャピラリー電気泳動装置:大塚電子製CAPI-3100
キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(ジーエルサイエンス社製、内径50μm、長さ62.5cm、有効長50cm)
試料注入:落差法(2.5cmx30秒)
印加電圧:25kV
検出波長:200nm
泳動液:50mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)
Figure 0007157975000001
表1に示す結果より本発明品は比較品1と比較して電気泳動移動度が小さく、嵩高い構造を有していることが分かる。
<タンパク質溶出防止剤の効果>
次に本発明に係るタンパク質溶出防止剤の効果についての実施例を示す。
(実施例8)
試験用の毛髪としてBeaulax社人毛黒髪(1g、10cm)を使用した。以下、試験毛髪と呼ぶ。この試験毛髪に対して以下の4つの試験を行い、使用した溶液中のコラーゲンを調べた。
(1)試験毛髪をタンパク質溶出防止剤に浸漬した後、水洗いしたもの。なお、タンパク質溶出防止剤はクロマグロとブリの皮由来のものを用意した。
(2)試験毛髪をクエン酸に浸漬した後、水洗いしたもの。
(3)試験毛髪をI型コラーゲン溶液に浸漬した後、水洗いしたもの。
(4)試験毛髪をコラーゲンペプチド溶液に浸漬した後、水洗いしたもの。
以下各試料について詳細を説明する。
(1)試験毛髪をタンパク質溶出防止剤に浸漬した後水洗いしたもの
クロマグロおよびブリの皮から実施例1の方法によって得た構造緩和クロマグロコラーゲンと構造緩和ブリコラーゲンを得た。構造緩和クロマグロコラーゲンと構造緩和ブリコラーゲンは、Amicon Ultra Centrifugal Filters 100kD-0.5mL(Merck)を用いて4℃、13000rpmで10分間遠心分離し、30μMクエン酸溶液を加えさらに遠心分離し溶媒置換を行った。溶媒置換は3回行い、その後タンパク質定量し6.0μg/mLとなるよう、30μMクエン酸溶液で希釈した。なお、タンパク質定量は、Qubit Protein Assay KitとQubit 2.0 Fluorometer(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて添付の推奨プロトコルにより行った。
構造緩和クロマグロコラーゲンとクエン酸溶液を含むタンパク質溶出防止剤を実施例7-1とし、構造緩和ブリコラーゲンとクエン酸溶液を含むタンパク質溶出防止剤を実施例7-2とした。
実施例7-1のタンパク質溶出防止剤10mLに試験毛髪を30分浸漬させた。その後試験毛髪を引き上げ、水10mLに30分浸漬させた。そして、試験毛髪を引き上げ、実施例7-1のタンパク質溶出防止剤と、水を1つのナス型フラスコに回収した(合計20mL)。ナス型フラスコに回収した溶液を凍結乾燥し、粉末を得た。この粉末を1mLの水に再溶解し実施例7-1の結果サンプルを得た。実施例7-2のタンパク質溶出防止剤についても同様の操作を行い、実施例7-2の結果サンプルを得た。
(2)試験毛髪をクエン酸に浸漬した後水洗いしたもの
クエン酸溶液を比較例1とした。30μMクエン酸溶液10mLに、30分間試験毛髪を浸漬した。その後試験毛髪を取り出して水10mLに30分試験毛髪を浸漬した。その後試験毛髪を取り出した。
試験毛髪を浸漬したクエン酸溶液と水を1つのナス型フラスコに回収した(合計20mL)。ナス型フラスコに回収した溶液を凍結乾燥し、粉末を得た。この粉末を1mLの水に再溶解し比較例7-1の結果サンプルを得た。
(3)試験毛髪をI型コラーゲン溶液に浸漬した後水洗いしたもの
市販のI型コラーゲン(キハダマグロ由来)をAmicon Ultra Centrifugal Filters 100kD-0.5mL(Merck)を用いて4℃、13000rpmで10分間遠心分離し、30μMクエン酸溶液を加えさらに遠心分離し溶媒置換を行った。溶媒置換は3回行い、その後タンパク質定量し6.0μg/mLとなるよう、30μMクエン酸溶液で希釈した。なお、タンパク質定量は、Qubit Protein Assay KitとQubit 2.0 Fluorometer(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて添付の推奨プロトコルにより行った。これにより、I型コラーゲンとクエン酸溶液を含む比較例7-2のI型コラーゲン溶液を得た。
比較例7-2のI型コラーゲン溶液10mLに試験毛髪を30分浸漬させた。その後試験毛髪を引き上げ、水10mLに30分浸漬させた。そして、試験毛髪を引き上げ、比較例7-2のI型コラーゲン溶液と、水を1つのナス型フラスコに回収した(合計20mL)。ナス型フラスコに回収した溶液を凍結乾燥し、粉末を得た。この粉末を1mLの水に再溶解し比較例7-2の結果サンプルを得た。
(4)試験毛髪をコラーゲンペプチド溶液に浸漬させた後水洗いしたもの
市販のコラーゲンぺプチド(固体)の重量を測定し30μMクエン酸に溶解させ、その後タンパク質定量し6.0μg/mLとなるよう、30μMクエン酸溶液で希釈し、比較例7-3のコラーゲンペプチド溶液を得た。
比較例7-3のコラーゲンペプチド溶液10mLに試験毛髪を30分浸漬させた。その後試験毛髪を引き上げ、水10mLに30分浸漬させた。そして、試験毛髪を引き上げ、比較例7-3のコラーゲンペプチド溶液と、水を1つのナス型フラスコに回収した(合計20mL)。ナス型フラスコに回収した溶液を凍結乾燥し、粉末を得た。この粉末を1mLの水に再溶解し比較例7-3の結果サンプルを得た。
実施例7-1、7-2、比較例7-1、7-2、7-3はそれぞれ試験毛髪を浸漬させた結果サンプルに加えて、試験毛髪を浸漬させなかったコントロールサンプルも作製した。したがって、結果として得たサンプルは全部で10サンプルである。この10サンプル中のタンパク質定量を上記の装置で行った。また、これらの実験は3回行った。
結果を表2に示す。表2を参照して、クエン酸だけ試験毛髪を浸した場合、結果サンプルからは平均56.8μg/mLのタンパク質が検出された(比較例7-1、髪束有)。試験毛髪を浸漬させなかったコントロールでは、タンパク質は全く検出されなかった(比較例7-1、髪束無)。したがって、クエン酸溶液は髪束1gから56.8μg/mLのタンパク質を溶出させた。
Figure 0007157975000002
このように、髪束を浸した結果サンプル中のタンパク質量から髪束無の場合の結果サンプル中のタンパク質量を引くことで、試験毛髪から溶出したタンパク質量が求められる。
比較例7-1のクエン酸溶液に対して、実施例7-1のタンパク質溶出防止剤(構造緩和クロマグロコラーゲン含有)では、タンパク質溶出量は-3.7μg/mLとなった。これは、試験毛髪からタンパク質が溶出したというより、タンパク質溶出防止剤中の構造緩和コラーゲンが付着して、試験毛髪からのタンパク質溶出を完全に防止したと考えられる。
実施例7-2のタンパク質溶出防止剤(構造緩和ブリコラーゲン含有)では、タンパク質の溶出量は4.0μg/mLと非常に低い値であった。つまり、実施例7-2によるタンパク質溶出防止剤も試験毛髪からのタンパク質の溶出を抑制している。
比較例7-2は、I型コラーゲン溶液であるが、試験毛髪から42.1μg/mLのタンパク質が溶出した。すなわち、I型コラーゲン溶液は試験毛髪からのタンパク質の溶出をほとんど抑制できていない。
比較例7-3は、コラーゲンペプチド溶液であるが、試験毛髪から19.6μg/mLのタンパク質が溶出した。すなわち、I型コラーゲン溶液よりは、試験毛髪からのタンパク質の溶出を抑制したものの、本発明に係るタンパク質溶出防止剤ほどの溶出防止効果はない。
各サンプルと溶出量の結果を図5にまとめた。図5を参照して、横軸は各結果サンプルを表し、縦軸は溶出したタンパク質量(μg/mL)を表す。図5を参照しても、本発明に係るタンパク質溶出防止剤は毛髪からのタンパク質溶出量をきわめて低く抑えることができた。
本発明に係るタンパク質溶出防止剤は毛髪からのタンパク質溶出を防止することができるので、洗髪、整髪、養毛、染髪といったヘアケアの際に一緒に用いることで、毛髪のダメージを防止することができる。

Claims (6)

  1. 魚皮由来のコラーゲンを含むタンパク質溶出防止剤であって、
    前記コラーゲンは、内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ62.5cm、有効長50cm)、印加電圧25kV、50mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)でのキャピラリー電気泳動において、電気泳動移動度(μep)として、10.0cm・min-1・kV-1以下を示すタンパク質溶出防止剤。
  2. 前記コラーゲンは、円偏光二色性(CD)スペクトルが207~210nmで負の極大を示し、200nmで正の値を示す請求項1に記載されたタンパク質溶出防止剤。
  3. 前記コラーゲンは、肌への塗布後20分後の水分値が塗布前と比較して1.1倍以上である保湿性を有する請求項1または2の何れかの請求項に記載されたタンパク質溶出防止剤。
  4. 前記コラーゲンは、分子量90000以上のコラーゲン含量が固形分でタンパク質量に対して70%以上である請求項1乃至3の何れか一の請求項に記載されたタンパク質溶出防止剤。
  5. 前記魚皮の由来はマグロ類若しくはブリ類である請求項1乃至4の何れか一の請求項に記載されたタンパク質溶出防止剤。
  6. 魚皮を希薄強酸処理または希薄強アルカリ処理する第一工程と、
    前記希薄強酸処理した魚皮を希薄強アルカリ処理する、または前記希薄強アルカリ処理し魚皮を希薄強酸処理する第二工程と、
    前記第二工程で得られた魚皮から希薄弱酸溶液を用いてコラーゲンを抽出する第三工程と、
    前記第三工程で抽出したコラーゲンを限外ろ過法或いは透析法により精製する第四工程を含み、前記第二工程と第三工程の間には酵素処理を含まないタンパク質溶出防止剤の製造方法。
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