JP7136517B1 - 小麦と玄米を用いた新規製パン法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、パンをふっくらと膨らませることができる新規のパン生地およびパンの製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、所定の処理を施した穀物と小麦粉とを組み合わせることを特徴とするパン生地およびパンの製造方法を提供する。本発明の方法によれば、小麦粉としてたとえ低グルテン含有量の小麦粉(例えば、中力粉や薄力粉)を使用したとしても、ふっくらとした焼き上がりのパンを製造することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、パン生地およびパンの新規製造方法、およびその製造方法によって製造されたパン生地およびパンに関する。
小麦粉パンに含まれるグルテン(小麦グルテン)は、小麦アレルギーやセリアック病症状等の原因となることが知られているため、小麦粉の代替品として米粉を使用したグルテンフリーの米粉パンが注目を集めている。他方、小麦粉を用いないパンは本来のパンの風味を有するものではなく、やはり小麦粉を用いたパンのニーズは高いままである。グルテン含有量の低い小麦粉も存在するが、グルテンはふっくらと膨らんだパンを製造する上で重要な成分であるため、グルテン含有量の低い小麦粉を用いたパンをふっくらと膨らませることは難しい。
また、未精白の穀物を水に漬けて発芽させ、この吸水して発芽した穀物を粉砕し、それに重曹を添加してパンを製造する方法も開発されている(特許文献1)。
特開2010-148423号
本発明は、パンをふっくらと膨らませることができる新規のパン生地およびパンの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、所定の処理を施した穀物と小麦粉とを組み合わせることによって、パンをふっくらと膨らませることができることを見出し、上記の課題を解決した。本発明の方法によれば、小麦粉としてたとえ低グルテン含有量の小麦粉(例えば、中力粉や薄力粉)を使用したとしても、ふっくらとした焼き上がりのパンを製造することができる。
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
(1)小麦粉ではない穀物を水に浸して、穀物浸水液を得る工程と、
(2)前記穀物浸水液中の前記穀物を粉砕して加熱し、穀物粉砕液を得る工程と、
(3)前記穀物粉砕液に酵母を添加して発酵させ、穀物発酵液を得る工程と、
(4)前記穀物発酵液と小麦粉と酵母とを合わせて混捏してパン生地を得る工程と、
を包含する、パン生地の製造方法。
(項目2)
工程(1)を室温で行う、項目1に記載の製造方法。
(項目3)
工程(3)における前記発酵を、少なくとも約10時間以上行う、項目1または2に記載の製造方法。
(項目4)
工程(4)において、さらに前記穀物粉砕液を合わせることを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
(項目5)
前記混捏物は、約20~40ベーカーズパーセントの前記穀物を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
(項目6)
前記穀物が玄米である、項目1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
(項目7)
前記小麦粉が中力粉または薄力粉である、項目1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
(項目8)
前記小麦粉が、スペルト小麦の小麦粉である、項目1に記載の製造方法。
(項目9)
項目1~8のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたパン生地を提供する工程と、
前記パン生地を発酵させる工程と、
発酵させた前記パン生地を焼成する工程と
を包含する、パンの製造方法。
(項目10)
項目1~8のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたパン生地。
(項目11)
項目9に記載の製造方法によって製造されたパン。
本発明により、ふっくらとした焼き上がりのパンを提供するためのパン生地およびパンの製造方法が提供される。本発明の方法によれば、小麦粉としてたとえ低グルテン含有量の小麦粉(例えば、中力粉や薄力粉)を使用したとしても、ふっくらとした焼き上がりのパンを製造することができる。
図1は、本発明の製造方法の工程を示す模式図である。 図2は、本発明の好ましい製造方法の工程を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
本明細書において、「パン」とは、食パン、菓子パン、調理パン又はその他の任意のパンだけでなく、パン生地の焼成によって製造される他の食品も含み得る。
本明細書において、「混捏」とは、粉体、液体及び必要に応じその他の原料の混合物をその成分を略均一に分散させるように練ることをいう。パン製造分野においては、「混捏」は「ミキシング」や「捏ね上げ」とも呼ばれる。
本明細書において、「室温」とは、約20℃~約40℃をいう。
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%をいう。
(小麦粉)
本発明における「小麦粉」は、特に記載した場合を除き、穀物としての小麦から、外皮及び胚芽を実質的に除いた胚乳部分を挽いて作られた粉をいう。小麦粉の例として、強力粉(タンパク質の割合が11.8重量%以上のもの)、準強力粉(タンパク質の割合が9.7重量%のもの)、中力粉(タンパク質の割合が、強力粉と薄力粉の間(11.8重量%未満9.3重量%超程度)のもの)、薄力粉(タンパク質の割合が9.3%重量以下のもの)、浮き粉(小麦粉の生地からグルテンを分離した残りの澱粉分)、セモリナ粉が挙げられる。
パンにおいて膨らみを良くするとの観点からは、強力粉や準強力粉などの、タンパク質(グルテン)含量の比較的高い小麦粉が一般的にはパンの製造のために使用される。中力粉はうどんやパスタ、たこ焼きなどに用いられ、薄力粉はケーキやてんぷら、唐揚げに用いられる。本発明において使用される小麦粉には、特に制限はないが、パンに一般的に使用される強力粉や準強力粉だけでなく、中力粉や薄力粉を用いた場合にもパンとして膨らみを得ることができることが、本発明の利点の1つであり得る。
好ましい実施形態において、本発明において使用される小麦粉は中力粉または薄力粉であり得る。セリアック病患者の食事療法として低グルテンが注目されているが、本発明は強力粉ではなく中力粉や薄力粉を用いることによって低グルテンを達成しつつ、パンとしての優れた味質や食感を提供し得るものである。
本発明における好ましい小麦粉は、スペルト小麦から製造された小麦粉であり得る。多収穫性へ品種改良された小麦のグルテンは難消化性であり、消化の過程でアヘン類縁物質が産生され、動物の脳神経活動に障害を与え得ることが知られている。そこで近年、小麦粉としてスペルト小麦の使用が注目されている。スペルト小麦にもグルテンが含まれているが、消化性が良く、アヘン類縁物質が産生されない。
スペルト小麦は9000年ほど前に中東地域で育てられていた小麦の原種であり、古代小麦とも呼ばれている。人工的な品種改良はほとんど行われておらず、もちろん遺伝子組換えも行われていない。
また、通常小麦は表皮と胚芽が除去されると栄養価が少なくなるが、スペルト小麦は表皮が硬く、製粉されても多くのタンパク質、アミノ酸、食物繊維、ビタミンB、ミネラルB17抗がん物質などが残ることが知られている。欧州においてはスペルト小麦が30年来使用されており、その経験によると、品種改良された通常小麦による小麦アレルギーの発症を100とすると、スペルト小麦による発症は10~15にとどまるという報告もある。
さらに、スペルト小麦の澱粉は、他の小麦に比べて体内で緩やかに分解されるため、血糖値が急上昇しない低GI値炭水化物であり、糖尿病患者や高血糖値の人、低インシュリンダイエットをしている方にも食べやすい小麦である。本発明の製造方法によれば、スペルト小麦を用いた場合にもパンとしての優れた味質や食感を提供し得る。
(穀物)
本発明のパンの製造方法においては、玄米、きび(高きび等)、あわ(あわ粒等)、ひえ(ひえ粒等)、キヌア(キヌア粒等)、アマランス(アマランス粒等)から選択される任意の小麦以外の穀物を、小麦粉と組み合わせて使用する。穀物は、精白されていない未精白のものを用いることが好ましい。通常、穀物等の食材は精白されると、表面組織(穀物ならばヌカに相当する部分)及び胚芽を傷つけられ、あるいはこれらを全て失い、発芽不能の状態つまり死んだ状態のものとなる。そして、傷つけられたり失ったりした表面組織及び胚芽の中には、ビタミン類、ミネラル類、不飽和脂肪酸、ポリフェノールに代表されるファイトケミカルが豊富に含まれている。そのため、使用する食材は未精白であることが好ましい。
好ましい実施形態において、本発明において使用される穀物は玄米であり得る。玄米は、脂質および不飽和脂肪酸を小麦より多く含む。そのため、本発明の製造方法において穀物として玄米を使用した場合には、パンの味質に良い影響を与えると考えられる。この効果は、特にパンにおいて油脂を使用しない場合に顕著である。また、玄米は小麦や他の穀物と比較してアミノ酸スコアが高い点からも好ましい。
(酵母および他の微生物)
酵母は、糖分を消化し、アルコール類や有機酸などの風味成分を生成する。酵母は、パンの製造に用いられる酵母であれば特に制限はなく、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストなどの工業的に生産されている市販のパン酵母でも、果物や穀物等から自家採捕した酵母でも良い。このような酵母として、Saccharomyces cerevisiaeや、Saccharomyces exiguousなどが挙げられる。
本発明においては、酵母に加えて乳酸菌や麹菌を添加してもよい。酵母だけでなく乳酸菌や麹菌を添加することによって、製造されるパンの味質や風味を向上できることがある。
本発明のために使用され得る乳酸菌は、パンの風味を調整するために、酢酸や乳酸を生成しやすい乳酸菌であるLactobacillus plantarumやLactobacillus sanfranciscensisなどであり得る。
本発明のために使用され得る麹菌は、豆を原料とした豆麹や、麦を原料とした麦麹、米を原料とした米麹など任意の麹菌であり得るが、米麹を用いることが特に好ましい。米麹の麹菌は、特に限定されないが、酒種に用いられるAspergillus oryzaeなどを用いることができる。麹菌を使用することで、パンに麹由来の豊かな風味を付与することができる。
(穀物の処理)
1.穀物の浸水処理
本発明のパンの製造方法においては、小麦以外の穀物をまず水に漬ける(図1の「穀物の浸水」)。これによって穀物が軟化する。理論に拘束されることを意図しないが、穀物(特に、未精白の穀物)を水に漬けることによって、穀物が発芽モード、すなわち少なくとも肉眼では芽を確認することはできないが、吸水によって生命活動を開始した状態になると考えられる。穀物には、発芽を抑制する植物ホルモンであるアブシシン酸が含まれているが、穀物がそのままヒトや動物の体内に入ると、アブシシン酸の作用により、代謝の異常が起こり、結果的に細胞外ミネラルであるはずのカルシウムが細胞内で増加する。この細胞内でのカルシウム濃度の異常な増加を改善するため、免疫細胞の顆粒球が捕食作用を開始するが、役目を終えた顆粒球は死ぬときに大量の活性酸素を生成させ、この活性酸素により細胞内のミトコンドリアが傷つけられる。ミトコンドリアが傷つけられると、効率よくエネルギー代謝を行うことができなくなり、色々な疾病が生じるおそれがある。本発明において好ましい穀物は玄米であり得る。
また穀物には、吸水前の乾燥状態において、フィチン酸が塩の形(化学名ではフィチン)で含まれ、このフィチンが鉄、カルシウム、マグネシウム等のミネラルに対して強力なキレート作用を示す。もし穀物が飽和吸水率まで吸水していなければ、キレート作用を示すフィチンがそのままヒトや動物の体内に入り、消化器内で遊離状態にある他のミネラルまで一緒にキレート作用を受けることとなり、ヒトや動物にとって深刻なミネラル不足の状態を誘引するおそれがある。
しかし、本発明では、穀物を水に浸して吸水させるようにしているので、水によって、穀物の発芽の抑制が解除され、上記のようなアブシシン酸及びフィチン酸の作用を不活性化することができると考えられる。
穀物の浸水における穀物と水の重量比は、1:0.8~1:2であり、1:0.9~1:1.2であることが好ましく、より好ましくは1:1~1:1.1であり得る。水が少なすぎると穀物が餅状になるためその後の処理に適さず、水が多すぎると穀物が重湯状になり、その後の処理にやはり適さないため、上述の範囲内の重量比が好ましい。
本発明において、穀物の浸水に使用する水は、約20℃~約35℃のものを使用する。穀物の浸水時間は約5~約20時間であり、約10~約15時間が好ましい。このように、水の温度及び水に漬ける時間を設定することによって、パンの製造のために好ましい状態に穀物を変性させ得る。
2.穀物の粉砕処理
水に漬けた穀物を、その後、ミキサーやフードプロセッサー等を用いて粉砕することによって、穀物粉砕液を得る(図1の「穀物の粉砕」)。好ましい実施形態においては、この粉砕は、穀物粉砕液の全量に対して40重量%以上90重量%未満のものが30メッシュ(JIS規格、目開き500μm)のふるいを通過する程度に行い得る。このような程度に粉砕された穀物粉砕液は、粗く粉砕したものと比べて水分と穀物粒子とが分離せずに混ざり合い、また、細かく粉砕したものと比べて粘りが適度であってその後の処理に適している。
3.加熱および酵母添加
上述のようにして得られた穀物粉砕液を加熱して、穀物の澱粉をα化する(図1の「加熱・α化」)。澱粉のα化とは、澱粉に水を加えて加熱して澱粉粒を崩壊させ、澱粉を糊化(ペースト化)することをいう。澱粉のα化は、澱粉を構成しているアミロースとアミロペクチンの結合が、水と熱によって崩れるために起きる現象である。α化した澱粉をα化澱粉といい、元の澱粉をβ化澱粉という。澱粉がα化すると、澱粉中のアミロースが水分中に溶け出すため、パン生地及びパンに甘みを持たせることができる。穀物粉砕液の加熱は、粉砕液がおかゆや寒天のように粘りを有するまで行えばよい。
本発明は、このようにして得られた穀物粉砕液を室温まで冷ましたのちに、それに酵母を添加して、ミキサーで攪拌等しながら発酵させることを特徴とする(図1の「酵母添加・発酵」)。本発明に係る穀物粉砕液に配合する酵母としては、パンを製造するのに使用される任意の酵母を使用することができるが、典型的にはSaccharomyces cerevisiaeである。上述のように酵母に加えて乳酸菌や麹菌を添加してもよい。穀物粉砕液に対する酵母の添加量は、当業者であれば適宜定めることができる。
上記のように一部分離した穀物粉砕液に酵母を添加した後に、必要に応じて攪拌混合や加温を行い、酵母を発酵させる。このようにして得られた液体を、本明細書においては「穀物発酵液」と称する。穀物発酵液を得るための発酵は、約10時間~約20時間ほど、典型的には約12時間以上行い得る。
当業者には明らかなように、本発明は中種法に一部基づくものである。中種法は、使用する小麦粉のうち典型的には50%以上の小麦粉と水や塩などを混ぜ合わせて軽く捏ね、酵母を添加して発酵させる。こうして得られた発酵物を中種と呼ぶ。その後、残りの材料を加えて本捏ねをして生地を作る製法が中種法である。中種法の特徴としては、中種を得るための発酵と本捏ねの後の一次発酵・二次発酵と段階的に発酵を行うため、全ての材料を本捏ねした後に発酵させるストレート法に比べてパンが出来上がるまで時間が長くかかり、スペースや設備が必要となる。他方、中種法によって製造されるパンは、きめが細かくふんわりとした柔らかい食感でボリュームがある。
本発明は、穀物を浸水・粉砕後にα化した穀物粉砕液をベースとして酵母を発酵させ、それを中種として用いることを特徴とするものである。このようにすることによって、小麦だけで中種法でパンを製造する場合に比べて、穀物の風味も添加することができる。
(小麦粉との混捏)
上述のようにして得られた穀物発酵液と、小麦粉に、さらに酵母を添加(図1の「小麦粉・酵母添加」)し、混捏してパン生地とする(図1の「混捏」)。本発明において混捏は、例えばミキシング装置やホームベーカリー等の攪拌機能により行うこともできるし、手で行うこともできる。混捏はパンの製造における一般的な温度および時間で行えばよく、一般的には約15℃~32℃程度、好ましくは約18~30℃で約3分~40分程度、好ましくは約10~30分程度行えばよい。
ここで添加される酵母は、穀物酵母液の製造のために使用した酵母と同じであってもよいし異なっていてもよいが、典型的には穀物酵母液の製造のために使用した酵母と同じ酵母を使用する。乳酸菌や麹菌を添加してもよい点も同様である。
パン生地における小麦粉に対して穀物の含有量は、約20ベーカーズパーセント~約40ベーカーズパーセントであり、好ましくは約30ベーカーズパーセントであり得る。パン生地における穀物の含有量が約20ベーカーズパーセント以上であると、穀物由来の成分が十分に存在して口どけが優れ、そして約40ベーカーズパーセント以下であるとパンの膨らみが十分であり得る。
穀物発酵液、小麦粉および酵母に加えて、糖類をさらに添加してもよい。糖類は酵母の栄養源として機能し得る。糖類としては、例えば、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、アラビノースなどの単糖類、ショ糖(スクロース)、異性化ショ糖(イソマルツロース)、還元イソマルツロース、麦芽糖(マルロース)、乳糖(ラクトース)、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、オリゴ糖、キシリトール、マルチトール、ソルビトールなどの糖アルコールを用いることができる。糖類の添加量は当業者が適宜決定することができる。
(発酵)
続いて、混捏することによって製造したパン生地を発酵させる。本発明の発酵は、典型的には一次発酵と二次発酵の2つの発酵工程を含み得る。
一次発酵は、パン生地中の糖分を酵母が分解することによって炭酸ガスが生成され、それによってパン生地を膨らませる工程である(図1の「一次発酵」)。一次発酵は約30℃で、湿度を約70~80%とし、50~90分で行い得る。
一次発酵したパン生地を、所定の重量に分割し、丸める等の形を調整し、ベンチタイム(静置)を経てから所定の形状に成型する(図1の「分割・成型」)。分割する重量は作製するパンの種類によるが、約30gから200gであり得る。ベンチタイムの時間は、例えば約20~30分であり得る。成型は、ガス抜きをした後、作製するパンの種類に合わせて、角型などの所定の形状の型に生地を入れたり、型を用いずに所定の形状に成形したり、つぶ餡などの詰め物(フィリング)を生地で包んだりすることによって行われ得る。
次いで、上記によって成型された生地を再び発酵させる二次発酵工程を行う(図1の「二次発酵」)。二次発酵は典型的には一次発酵よりも高い温度で行われる。本発明の二次発酵では、例えば、生地をホイロに収納して、ホイロの温度を30~40℃、湿度を80~90%とし、時間を50~60分とすることが好ましい。また、二次発酵工程4の途中で、生地をホイロから取り出し、生地表面をカットする等してから、更に生地をホイロに収納して二次発酵を続けてもよい。
(焼成)
発酵工程終了後、発酵生地を焼成(ベーキング)することにより、本発明に係るパンを製造することができる(図1の「焼成」)。生地の焼成は、常法により行うことができる。具体的には、生地をオーブン、電子レンジ、釜、蒸し器等の任意の手段で加熱(例えば100℃~240℃での加熱)することにより焼成工程を実施すればよい。焼成時間は、一般的には5分~100分程度である。焼成温度や焼成時間は、当業者であれば適宜調節することができる。
(好ましい実施形態)
本発明の特に好ましい実施形態を図2に示す。図1に示した実施形態とは、穀物発酵液を得た後に、小麦粉と酵母を添加して混捏する際に、酵母を添加していない穀物粉砕液も添加する点である。このようにすることによって、図1の方法と比較してパンがふっくらする。理論に拘束されることを意図しないが、発明者の経験上、穀物粉砕液中の穀物粒子がパン生地に適度の粘りを与え、それがパンの仕上がりに良い影響を与えるものと考えられる。
穀物粉砕液:穀物発酵液:小麦粉は1~2:1~2:3~10の重量比で混捏に供され得る。好ましい実施形態においては穀物粉砕液より穀物発酵液は多く、穀物発酵液:穀物発酵液は1:1.2~1:2、好ましくは1:1.3~1:1.8程度であり得る。
(油脂)
一般的には、パンの製造においては油脂が用いられることが多い。油脂はパンにしっとりとした食感を与えるため、通常は油脂が使用される。パンにおいて用いられる油脂としては、ショートニング、マーガリン、バター、コンパウンドマーガリン、ファットスプレッド、各種製パン練り込み用油脂組成物に例示される可塑性油脂類が挙げられる。これらの可塑性油脂類の原料としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂が例示できる。
本発明の好ましい実施形態においては、パン生地に油脂を添加しない。それにも拘らず、特に穀物として玄米を用いた場合には、玄米に多く含まれる脂質や不飽和脂肪酸によって、しっとりとした食感のパンを提供することができる。
(付記)
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
(実施例1)
玄米100gを水1000gに浸水し、25℃で12時間放置して玄米浸水液を得た。玄米浸水液中の玄米をミキサーで粉砕して玄米粉砕液を得た。粉砕後の玄米は、30メッシュ(JIS規格、目開き500μm)のふるいを半分以上が通過する程度に粉砕されていた。玄米粉砕液を煮詰めて澱粉をα化させ、おかゆ状にした。
おかゆ状になった玄米粉砕液のうち100gを分離し、これに酵母7gを添加して室温で12時間攪拌混合して玄米発酵液を得た。
上述のように用意した玄米粉砕液と玄米酵母液から、玄米粉砕液200gと、玄米酵母液300gとを、小麦粉(中力粉)1000gと混合し、それに酵母3gを添加し、混捏した。ここで添加した酵母は、玄米酵母液を製造するために使用した酵母と同一であった。最終的なパン生地は、30ベーカーズパーセントの玄米を含んでいた。
混捏後のパン生地を、30℃で1時間一次発酵させた。その後、パンチングによってパン生地中の炭酸ガスのガス抜きをして30分間静置し、その後生地を80~360gずつに分割して30分静置し、その後成型した。
成型したパン生地を発酵器に入れ、38℃~40℃で60~70分二次発酵させた。二次発酵させたパン生地を焼成し、パンを得た。このパンは、ふっくらと膨らみ、風味も優れていた。中力粉を用い、かつ油脂を添加していない状態でもふっくらとし、しっとりとした優れた食感のパンが得られたことは予想外であった。
(比較例1)
玄米発酵液を用いないこと以外は実施例1と同一の条件でパンを製造した。すなわち、玄米100gを水1000gに浸水し、25℃で12時間放置して玄米浸水液を得た。玄米浸水液中の玄米をミキサーで粉砕して玄米粉砕液を得た。粉砕後の玄米は、30メッシュ(JIS規格、目開き500μm)のふるいを半分以上が通過する程度に粉砕されていた。玄米粉砕液を煮詰めて澱粉をα化させ、おかゆ状にした。
おかゆ状になった玄米粉砕液500gと、小麦粉(中力粉)1000gと、酵母10gとを添加し、混捏した。ここで添加した酵母は、玄米酵母液を製造するために使用した酵母と同一であった。最終的なパン生地は、30ベーカーズパーセントの玄米を含んでいた。
混捏後のパン生地を、30℃で1時間一次発酵させた。その後、パンチングによってパン生地中の炭酸ガスのガス抜きをして30分間静置し、その後生地を80~360gずつに分割して30分静置し、その後成型した。
成型したパン生地を発酵器に入れ、38℃~40℃で60~70分二次発酵させた。二次発酵させたパン生地を焼成し、パンを得た。得られたパンは膨らみが足りず、食感の良いものではなかった。
(比較例2)
実施例1においては、玄米粉砕液200gと、玄米酵母液300gと、小麦粉(中力粉)1000gとを混捏したが、これを玄米粉砕液200gと、玄米酵母液300gと、小麦粉(中力粉)2000gに変更し、それ以外は実施例1と同様にパンを製造した。最終的なパン生地は、15ベーカーズパーセントの玄米を含んでいた。ぱさぱさな食感で、実施例1のパンのようなしっとりした感じがなく、優れていなかった。
(比較例3)
実施例1においては、玄米粉砕液200gと、玄米酵母液300gと、小麦粉(中力粉)1000gとを混捏したが、これを玄米粉砕液200gと、玄米酵母液300gと、小麦粉(中力粉)500gに変更し、それ以外は実施例1と同様にパンを製造した。最終的なパン生地は、60ベーカーズパーセントの玄米を含んでいた。実施例1のパンのような膨らみが得られず、優れていなかった。
本発明は、パン生地およびパンの製造の分野において使用され得る。本発明により、ふっくらとした焼き上がりのパンを提供するためのパン生地およびパンの製造方法が提供される。本発明の方法によれば、小麦粉としてたとえ低グルテン含有量の小麦粉(例えば、中力粉や薄力粉)を使用したとしても、ふっくらとした焼き上がりのパンを製造することができる。

Claims (8)

  1. (1)小麦粉ではない穀物を水に浸して、穀物浸水液を得る工程と、
    (2)前記穀物浸水液中の前記穀物を粉砕して加熱し、穀物粉砕液を得る工程と、
    (3)前記穀物粉砕液に酵母を添加して発酵させ、穀物発酵液を得る工程と、
    (4)(3)で得られた前記穀物発酵液と、(2)で得られた前記穀物粉砕液と、小麦粉と酵母とを合わせて混捏してパン生地を得る工程と、
    を包含し、前記パン生地は、約20~40ベーカーズパーセントの前記穀物を含み、前記穀物が玄米であり、前記小麦粉が中力粉または薄力粉である、パン生地の製造方法。
  2. 工程(1)を室温で行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 工程(3)における前記発酵を、少なくとも約10時間以上行う、請求項1に記載の製造方法。
  4. 工程(4)において、穀物粉砕液:穀物発酵液:小麦粉は1~2:1~2:3~10の重量比で混捏に供される、請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記小麦粉が、スペルト小麦の小麦粉である、請求項1に記載の製造方法。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたパン生地を提供する工程と、
    前記パン生地を発酵させる工程と、
    発酵させた前記パン生地を焼成する工程と
    を包含する、パンの製造方法。
  7. 請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたパン生地。
  8. 請求項に記載の製造方法によって製造されたパン。
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