体細胞、幹細胞、又は始原細胞などの第1の種類の細胞を多能性、複能性、又は単能性細胞などの所望の第2の種類の細胞に転換するために使用できる方法及びシステムが本明細書に記載される。記載される方法及びシステムは、方法及びシステムのある特定の実施を例を挙げて説明するために提供される。他の実施が可能であることが明確に理解されるべきである。具体的には、細胞の転換及び細胞の初期化に加えて、バイオマテリアル(例えば、組織、マトリックスなど)の生成、生物学的製剤(例えば、タンパク質、抗体、増殖因子など)の生成、細胞及び細胞株の成長などの多様な生体試料加工のために方法及びシステムを使用できることが理解されるべきである。
図1A~2に関して、細胞加工の自動化された方法のための自動化された細胞加工システム(ACPS)100は、エンクロージャ110を備える。エンクロージャ110は、アイソレータ120に、及びアイソレータ120を介して生物学的安全キャビネット(BSC)130に接続されている。
ACPS100はまた、冷却器、インキュベータ、冷凍器及び同種のものなどの様々な設備も備え、それらの一部はエンクロージャ110、アイソレータ120、又はBSC130の内側に配され、それらの一部は、エンクロージャ110、アイソレータ120、及び/又はBSC130の中からアクセス可能なように、エンクロージャ110、アイソレータ120、及び/又はBSC130の外側に配されている。
ACPS100は、以下にさらに詳細に記載するように、自動化された細胞加工を制御するように構成された制御ユニット1000を備える。
エンクロージャ
図1A~3Aに関して、エンクロージャ110は、4つの側壁202、204、206、208、上壁210、及び底壁212から構築された長方形のチャンバである。側壁は、前壁202、後壁204、左側壁206及び右側壁208を備える。左、右、前及び後ろなどの用語は、エンクロージャ110内の底壁212上に立ち、アイソレータ120の方へ向いた人間によって理解されるものとして本明細書では定義される。壁は金属から作られるが、壁は任意の好適な材料から作られていてもよいことが想定される。
前壁202はアイソレータ接続ポート220を有し、アイソレータ接続ポート220は、アイソレータ120の補完的ポート240に接続している。アイソレータ接続ポート220は長方形の形状であるが、アイソレータ接続ポート220は長方形以外であってもよいことが想定される。アイソレータ接続ポート220は通常、ゲート(図示せず)によって閉じられており、エンクロージャ110とアイソレータ120との間の物体の移送を可能とするためにのみ開けられる。したがって、エンクロージャ110は、アイソレータ120と選択的に流体接続している。
8つの空気入口222がエンクロージャの上壁210に画定されている。各空気入口22は、HEPA(高効率粒子エア)又はULPA(超低粒子エア)フィルタ(図示せず)を有する。エンクロージャ110の内側に取り付けられた羽根車を備えた空気フローシステムは、空気入口ポート222に設けられたHEPAフィルタを通じてエンクロージャ110内に空気を押し入れ、エンクロージャ110を通じた空気の循環を維持する。1つより多くの空気入口222があってもよいことが想定される。ULPA(超低透過エア)フィルタなどの他の適切なエアフィルタをHEPAエアフィルタの代わりに使用してもよいことが想定される。
2つの空気出口224が底壁212に形成されている。追加の空気出口225(図3A)もまた、前壁202の底部及び後壁204の底部の近くに設けられている。空気出口224の数及び構成は、示したものと異なっていてもよいことが想定される。一部の実施では、エンクロージャ110中の気流は層状である。一部の実施では、層状の気流を使用して、エンクロージャ110中の空間を複数の部分に分割することができる。層流によって創出されるエンクロージャ110の内側の部分は、以下にさらに詳細に記載するように、バッチ間の交差汚染のリスクを増加させることなく異なるバッチを加工するために使用され得る。エンクロージャ110は、自動化された細胞加工システム100を収容する部屋の周囲圧力に対して、及びアイソレータ120に対して陽圧の空気に維持される。エンクロージャ110中での迅速な空気交換は、エンクロージャ110に入ってきた可能性があるあらゆる汚染物粒子を除去するのを助け、それによってエンクロージャ110の内側に収納される物体の、エンクロージャ110に入って来る汚染物への曝露の確率を低減する。
床224に沿った空気出口224は、自動化されたゲート250によって(例えば、エンクロージャ110の滅菌の間に)閉じることができる。前壁202及び後壁204に画定されて形成された空気出口225も(例えば、エンクロージャ110の滅菌の間に)閉じることができる。底壁212に形成された出口224の全ては概ね類似しているため、出口224の1つ及び出口224を覆う自動化されたゲート250についてこれより説明する。図22~24に関して、出口224は、図示した実施ではステンレス鋼から作られたメッシュスクリーン251で覆われている。スクリーン251は任意の好適な材料から作られていてもよいことが想定される。スクリーン251は、エンクロージャ110の外側からの物体がエンクロージャ110の内側に入ってくること、又はエンクロージャ110の内側の物体が出口224を通じて落下することを確実にし、且つ防止する。ゲート250は、出口224の対向する側に取り付けられた一対のフランジ252にスライド可能に取り付けられている。フランジ252は概ね鏡像となっており、それぞれは、対向するフランジ252の溝253に向いた溝253を有する。対向する溝253は、終端を除いて底壁212と平行に延びており、各溝253は終端で、底壁212の方へ曲がったランプ255を形成する。ゲート250は、ゲート250の側部の各端部に1つ、各側部に沿って接続された2つのガイド要素254を有する。各ガイド要素254の形状及び大きさは、溝253に受け入れられて、その中でスライド又は回転するようなものとなっている。ガイド要素254は溝253に沿って動いて、出口224が密閉されている閉じたポジションと開いたポジションとの間でゲート250をガイドする。閉じたポジションでは、各側部のガイド要素254の1つが、底壁212の方へ曲がったランプ255に受け入れられる。ランプ255は、底壁212の方へゲート250を押して、ゲート250と底壁212との間の密閉を確実にする。開いたポジションでは、ガイド要素254は、溝端部255の外側で溝253に配される。対応する溝253に沿ってガイド要素254をスライド又は回転させるようにゲート250を動かすために電動アクチュエータ256がゲート250に接続されている。アクチュエータ256は、空気出口224の開閉を制御するために制御ユニット1000に接続されている。図示した実施では、アクチュエータ256は、空気出口224が完全に開いたポジション又は空気出口224が完全に閉じたポジションの間でゲート250を動かすように制御される。出口224が部分的に開いたポジションにゲート250を維持するようにゲート250が制御されてもよいことが想定される。
エンクロージャ110の内側の空間の滅菌のためにエンクロージャ110の中に滅菌剤を導入するための滅菌剤入口230が左側壁206に画定されている。滅菌剤入口230は、流体管を取り付けて、滅菌剤(図示した実施では気体又は蒸気の形態)を受け入れ、且つ受け入れた滅菌剤を滅菌剤の蒸気霧又は噴霧としてエンクロージャ110の内部に送達するように構成されている。滅菌剤空気入口230は、不使用時に外来粒子が入ってくるのを防止するためのカバーを有する。
エンクロージャ110から空気及び滅菌剤を除去するための滅菌剤出口232も前壁202に画定されている。滅菌剤出口232は、流体管を取り付けられるように構成されており、流体管は、エンクロージャ110から滅菌剤蒸気、気体又は空気を除去するためのポンプに繋がっている。
エンクロージャの中に空気を導入するための触媒コンバータ入口231が左側壁206に画定されており、この空気の導入は、滅菌手順の終わりに触媒コンバータを通じて空気を再循環させて、滅菌剤蒸気を無害且つ生分解性の水蒸気及び酸素に変換するためである。触媒コンバータ入口231は、流体管を取り付けられるように構成されており、且つ不使用時に外来粒子が入ってくるのを防止するためのカバーを有する。
触媒コンバータ出口233も左側壁206にHEPA又はULPAフィルタの上に画定されており、触媒コンバータ出口233は、そうしなければHEPA又はULPAフィルタの広い面領域に留まる蒸気滅菌剤をより迅速に中和するために、これらのHEPA及びULPAフィルタを通じて且つ触媒コンバータを通じてエンクロージャから空気を除去するために構成されている。触媒コンバータ出口233は、流体管を取り付けられるように構成されており、流体管は、触媒コンバータに、及びエンクロージャ110から空気及び滅菌剤蒸気を除去するためのポンプに繋がっている。
滅菌剤入口230及び出口232は本出願に示した以外の位置にそれぞれ画定されていてもよいこと、及び本出願に示したものとは異なる構成であってもよいことが想定される。触媒コンバータ入口231及び出口233は本出願に示した以外の位置にそれぞれ画定されていてもよいこと、及び本出願に示したものとは異なる構成であってもよいことが想定される。
滅菌剤入口230及び出口232は、エンクロージャ110の内部の汚染を除去するための自動化されたエンクロージャ滅菌ユニット550に接続されている。自動化されたエンクロージャ滅菌ユニット550は以下にさらに詳細に説明される。
様々なアクセスポートがエンクロージャ110の壁に設けられる。図3Cに最もよく見ることができるように、底壁212にエンクロージャ110は、遠心分離機150、冷凍器152、インキュベータ154、及び廃棄物レセプタクル156などの様々な加工設備にアクセスするためのアクセスポート170、172、174、176、178を有する。底壁212は凹部171及び175も画定しており、凹部171及び175においてロボットモジュール600及びクライオ冷凍機460がそれぞれ取り付けられる。凹部171、175の一方又は両方が割愛されてもよいこと、又は他の部品を取り付けるための他の凹部が形成されていてもよいことが想定される。左側壁206に画定されたアクセスポートは、サイドパネル184によって閉じられる。
エンクロージャ110のポートの数、形状、大きさ、位置及び構成は、本出願に示したもの以外であってもよいことも理解されるべきである。エンクロージャ110の(空気、滅菌剤、及び同種のものなどのための)入口及び出口の数、形状、大きさ、位置及び構成は、本出願に示したもの以外であってもよいことも理解されるべきである。
エンクロージャ110は、エンクロージャ110とアイソレータ120との間、又は、細胞の自動化された加工のためにエンクロージャ110に接続されることがあるインキュベータ、遠心分離機、冷凍器、貯蔵キャビネット、及び同種のものなどの他の加工設備との間で物体(試料、試薬容器、試料用容器、他の実験器具、及び同種のもの)を移送する場合を除いて概ね密閉されたままである。エンクロージャ110とこれらの他の加工設備との間の接続は密閉接続であり、エンクロージャ110は加工設備の内部に対して陽圧に維持されて、加工設備からエンクロージャ110の中に汚染物粒子が入って来るのを低減する。
適正製造基準(GMP)ガイドラインに適合するために、エンクロージャ110は滅菌された/無菌の環境であると概ね考えられ、クラス10のクリーンルーム(1立方フィートあたり0.5ミクロン以上の大きさの粒子が10個未満)に維持される。「滅菌された」及び「無菌の」という用語は本明細書において交換可能に使用されて、微生物的に滅菌された、すなわち、エンドトキシン、マイコプラズマ、細菌などの微生物によって、又はウイルスなどの他の感染性物質によって汚染されていないことを意味する。したがって、エンクロージャ110は無菌に及び微生物がいないように設計されること、及び、これは、エンドトキシン、マイコプラズマなどの微生物汚染について試験し、測定するシステムでのアッセイ及びプロセス、並びに直接的な微生物検出アッセイによって判定されて、試料/バッチが汚染されていないことを確実にすることが理解されるべきである。
「適正製造基準(GMP)」という用語は、臨床使用のための製造物の安全性及び有効性を確実にするために米国食品医薬品庁(FDA)及び欧州医薬品庁(EMEA)などの政府規制機関によって確立された医薬品についての規制を指すために使用される。本明細書で使用される場合、「GMP条件下」という用語は、適正製造基準(GMP)のガイドライン又は規制を満たす条件下、すなわち、最終製造物が臨床使用のために出荷できることを意味する。なお、GMP規制及び推奨されるガイドラインは国によって異なることがあるが、一般に、品質管理及び品質保証プログラムを含めて、医薬品又は細胞製造物を製造するためのGMP製造施設における厳格な管理を必要とする。そのような施設は、典型的に、2つの大きさ(≧0.5μm、≧5μm)の粒子の数に基づく空気純度に応じて4つのクラス(AD)に分類されるか、又は臨床検査改善修正法案(CLIA)の規制による「クリーンルーム」を必要とし;温度、湿度、及び圧力などの他のパラメーターが、粒子生成及び微生物増殖に対するそれらの潜在的影響力のために、多くの場合に考慮及び監視され;交差汚染を最小化するために材料及び職員の流れが分離され、且つ一方向とされており;全ての活動の文書化が必要である、などである。細胞療法製造物についてのGMP規制は、概して、以下の少なくとも一部を含む:前臨床の安全性及び有効性の記録付け文書化;ドナーにとって感染性又は遺伝子疾患の伝染のリスクがないこと;レシピエントにとって細胞又は試料加工の汚染又は他の悪影響のリスクがないこと;製造物を形成する細胞の種類及びそれらの正確な純度及び分化能力の具体的且つ詳細な決定;及び製造物のin vivoでの安全性及び有効性。
図3Cに最もよく見ることができるように、エンクロージャ110は長方形フレーム140上に支持されており、長方形フレーム140は、上水平フレーム部材によって形成された上部分142と、下水平フレーム部材によって形成された下部分144とを有する。フレーム140は、上水平フレーム部材142と下水平フレーム部材144との間に延びる鉛直フレーム部材143を備える。下部分144はホイール上に支持されて、フレーム140の再配置を促進するが、ホイールを割愛してもよいことが想定される。下部分144は、以下に記載するように、ACPS100の他の部品を支持する。図1A~1Cに示すような一部の実施では、上部分142は鉛直フレーム部材143によって床に支持され、下部分144及びホイールは割愛されている。
遠心分離機150、インキュベータ152、冷凍器154、及び廃棄物レセプタクル156は、下部分144に支持される。遠心分離機150はその上部分にアクセスポートを有し、遠心分離機150のアクセスポート(符号を付していない)が下の底壁212の対応する遠心分離機アクセスポート170と位置合わせされるように下部分144に支持される。したがって、遠心分離機150の内側の空間は、エンクロージャ110の底壁212の位置合わせされたアクセスポート及び遠心分離機150の上部分を介してエンクロージャ110の内側からアクセス可能である。同様に、インキュベータ152、冷凍器154、及び廃棄物レセプタクル156のそれぞれは、それらの各々の上壁に画定されたアクセスポートを有する。インキュベータ152、冷凍器154、及び廃棄物レセプタクル156はそれぞれ、それらの各々のアクセスポートをエンクロージャ110の底壁212の対応するアクセスポートと位置合わせするように下部分144に支持される。下部分144を割愛してもよいこと、及び、遠心分離機150、インキュベータ152、冷凍器154、及び廃棄物レセプタクル156の1つ又は複数をエンクロージャ110を支持する上部分142の下の部屋の床に置いてもよいことが想定される。遠心分離機150、インキュベータ152、冷凍器154、及び廃棄物レセプタクル156の1つ又は複数を底壁212以外のエンクロージャ110の壁に接続してもよいことも想定される。例えば、エンクロージャ110の側壁は、遠心分離機150、インキュベータ152、冷凍器154、及び廃棄物レセプタクル156の1つ又は複数への接続のためのアクセスポート(サイドパネル184によって覆われたアクセスポートなど)を有してもよい。
BSC130の壁に取り付けられたパネル226は、エンクロージャ110の圧力及び他の環境上の特徴のためのディスプレイ、及び、ライトスイッチ、空気入口222に付随する羽根車、エンクロージャ110の滅菌の間に使用される他の混合ファン、及び同種のものなどのエンクロージャ110の内側の様々な要素(これらは、ACPS100のルーチンの作動中に制御ユニット1000によって自動的に制御される)のためのマニュアルオーバーライドスイッチを備える。
エンクロージャ110は、以下に記載するようなACPS100の様々な部品を収容する。
アイソレータ
図1A~2に関して、アイソレータ120は、エンクロージャ110の前側壁202の前に配される。アイソレータ120は、4つの側壁、上壁及び下壁によって画定された概ね長方形のチャンバである。後側壁は、エンクロージャ110のアイソレータアクセスポート220に接続されたエンクロージャアクセスポート240を有する。アイソレータ120とエンクロージャ110との間に密閉接続を形成するためにエンクロージャアクセスポート240の周囲にガスケット(図示せず)が備え付けられる。エンクロージャアクセスポート220及びアイソレータアクセスポート220は、アイソレータ120とエンクロージャ110との間で物体(化学的供給品、実験器具、組織試料、及び同種のものなど)を引き渡すために開かれるゲートによって選択的に覆われている。ゲートは、アイソレータ120をエンクロージャ110に接続するポート220、240の開閉を制御するための制御ユニット1000に接続された自動化されたゲートである。
アイソレータ120の前壁は、ヒンジ連結されたウインドウ243(図示した実施では上縁部でヒンジ連結されている)の形態であり、例えば洗浄及び維持のためにアイソレータ120の内部空間にアクセスするために開けることができる。図示した実施では、前壁243は強化ガラスから作られているが、それは任意の好適な材料から作られていてもよい。前壁が固定され、内部にアクセスするために開くことができないものであってもよいことが想定される。アイソレータ120の内部の環境上の分離及び無菌性を維持しながらアイソレータ120の内側に置かれた物体を人間使用者が操作できるように、4つのグローブポート242(図では明瞭性のためにグローブは除去されている)が前壁243に設けられている。図示した実施では、アイソレータ120とエンクロージャ110との間の物体の引き渡しは、自動化された移送トレイ322を介して行われる(図3B)。移送トレイ322がポート220、240を通じてアイソレータ120の中に延びている場合、人間操作者はグローブポート242を使用して移送トレイ322とアイソレータ120との間で物体を動かす。移送トレイ322とアイソレータ120及び/又はBSC130との間で物体を動かすためにロボットモジュールがアイソレータに設けられていてもよいことが想定される。移送トレイ322は、電気的に作動される代わりに又はそれに加えて手動で作動されてもよいことも想定される。アイソレータ120とエンクロージャ110との間の物体の引き渡しは、完全に手動で行われてもよいこと、すなわち、人間操作者がグローブポート242を使用して、移送トレイ322の使用を伴って又は伴わずにポート220、240を通じて物体を移送してもよいことも想定される。
BSC130に接続するためにBSC接続ポート244がアイソレータ120の右側壁に画定されている。ポート244にわたって延びる密閉されたドア(図示せず)を開いて、BSC130とアイソレータ120との間の物体の引き渡しを可能とすることができる。BSC接続ポート244が開いている時にエンクロージャアクセスポート240が閉じている、及びその逆であることを確実にするためにインターロック機構が設けられる。
アイソレータ120は、アイソレータ120を通じたHEPAフィルタを通った空気の循環を維持するために、HEPAエアフィルタを備えた2つの空気入口246と、空気出口248とを有する。アイソレータ120から空気及び滅菌剤を除去するために滅菌剤出口234もまたアイソレータの上壁に設けられる。したがって、エンクロージャ110の滅菌中にエンクロージャ接続ポート240を開いたままとすることによって、エンクロージャ110に接続された滅菌ユニット(例えば、滅菌ユニット550)を介してアイソレータ120を滅菌することができる。滅菌剤出口234は、流体管を取り付けられるように構成されており、流体管は、アイソレータ120から滅菌剤蒸気、気体又は空気を除去するためのポンプに繋がっている。アイソレータ120を通じた空気及び/又は滅菌剤の最適な循環を維持するために羽根車ファン(図示せず)もまたアイソレータ120に設けられる。アイソレータ120は、BSC130に対して陽圧の空気に及びエンクロージャ110に対して陰圧に維持されるため、接続ポート220、240が開いている時に空気がエンクロージャ110を出てアイソレータ120に流れ、それによって、外側からエンクロージャ110に入ってくる粒子による汚染の可能性が低減される。空気入口246及び出口248の数及び構成は、本出願に示したものとは異なる構成であってもよいことが想定される。アイソレータは、試薬及び他の培地容器を貯蔵するための冷却器160に接続するためのアクセスポート245(図2に図式的に示されている)を右側壁に有する。
アイソレータ120は、エンクロージャ110の中に引き渡す前により大きい容器からより小さい容器に試料及び他の物体を移すために使用される。一部の実施では、エンクロージャ110の中に引き渡す前にアイソレータ120において物体の外部保護包装を除去してもよい。一部の実施では、アイソレータ120は、1つ又は複数の試薬容器を収容してもよい。
一部の実施では、アイソレータ120は、例えば過酸化水素を用いて、アイソレータ120を滅菌するための自動化された滅菌システム(図2に図式的に示されるシステム550など)を有する。
生物学的安全キャビネット(BSC)
図1A~2に関して、これもまた4つの側壁、上壁及び下壁によって画定された概ね長方形のチャンバの形態であるBSC130が、アイソレータ120の右側に配されている。BSC130は、その左側壁に画定され、且つアイソレータ120のBSC接続ポート244に接続されたアイソレータ接続ポート260を有する。BSC130の前壁にあるアクセスポート262は、ACPS100の中及び外に物体を移送するために人間及び/又はロボット操作者によって使用される。アクセスポート262はスライディングゲート263によって覆われ、スライディングゲート263は、それを通じて物体を移送するために開いている。図示した実施では、スライディングゲート263は強化ガラスから作られているが、それは任意の好適な材料から作られていてもよい。アクセスポート262が開いている時にアイソレータ接続ポート260が閉じている、及びその逆であることを確実にするためにインターロック機構が設けられている。図2に図式的に示されるように、アイソレータ120とBSC130との間で物体を移送するために、レール134に取り付けられた移送トレイ132が使用される。図示した実施では、物体は、人間操作者によって移送トレイ132上に置かれることができ、且つ移送トレイ132を手動で作動させてアイソレータ120とBSC130との間で移送トレイ132を動かすことができる。しかしながら、移送トレイ132を電気的に作動してもよいこと、及び、BSC130の中に及び/又はアイソレータ120の中に設けられたロボットアームによってロボットによって物体を移送トレイ132に又は移送トレイ132から動かしてもよいことが想定される。
BSC130は、BSC130を通じたHEPAフィルタを通った空気の循環を維持するために、HEPAエアフィルタで覆われた空気入口266と、空気出口268とを有する。空気入口266及び出口268の数及び構成は本出願に示したものとは異なっていてもよいことが想定される。場合によっては、羽根車ファンをBSC130の中に設けてBSC130を通じた空気循環を維持することができる。BSC130は、システム100を収容する部屋の周囲空気に対して陽圧の空気に及びアイソレータ120に対して陰圧に維持されるため、接続ポート244、260が開いている時に空気がアイソレータ120を出てBSC130に流れ、それによって、外側からエンクロージャ110に入ってくる粒子による汚染の可能性が低減される。図示した実施では、BSC130は、クラス100のクリーンルーム環境(1立方フィートあたり0.5ミクロン以上の大きさの粒子が100個未満)に維持される。しかしながら、BSC130は、より高い又はより低いレベルのクリーンルーム環境に維持されてもよいことが想定される。
BSC130は、物体をアイソレータ120の中に、及びそれによってエンクロージャ130の中に引き渡す前に物体の外面(又は滅菌された物体の容器の外部包装)を手動で洗浄又は滅菌するための場所として使用される。BSC130の内側に置かれた物体の外面を滅菌した後に、スライディングゲートが閉じられて前アクセスポート262が覆われる。次いで、HEPAフィルタを通った空気が、予め定められた期間にわたってBSC130を通じて循環されて、物体をBSCからアイソレータ120の中に引き渡すためにアイソレータ接続ポート260を開く前に空気中の粒子の数を低減する。
エンクロージャ110、アイソレータ120、及びBSC130及び/又はこれらの間の接続のいずれかの構成は、本出願に示したものとは異なっていてもよいことが想定される。例えば、エンクロージャ110、アイソレータ120、及びBSC130のいずれか1つ又は複数においてアクセスポートの数、寸法、位置は異なっていてもよい。例えばエンクロージャ110がクリーンルームの中に置かれた場合、アイソレータ120及びBSC130の一方又は両方が割愛されてもよいことも想定される。アイソレータ120及びBSC130は、物体をエンクロージャ110に導入するために又は物体をエンクロージャ110から取り出すために滅菌された又は無菌の材料をトレイ322(又は別の輸送システム)上に置くロボットシステムによって置き換えられてもよいことがさらに想定される。
エンクロージャ110とアイソレータ120、アイソレータ120とBSC130、及びBSC130と外部環境を接続する全ての接続ポート220、240、244、260、262が開いている場合、アイソレータ120に対するエンクロージャ110の中の陽圧、BSC130に対するアイソレータ120の中の陽圧、部屋又は外部環境に対するBSC130の中の陽圧に起因して、空気がエンクロージャ110からアイソレータ120へ、アイソレータ120からBSC130へ、及びBSCから部屋又は外部環境へと流れる。
上述したように、ACPS100において、エンクロージャ110は、細胞加工のために必要とされる様々な設備にアクセスすることができる。
ACPS100の図示した実施では、遠心分離機150は、遠心分離機150の中に及び外に物体を移送するために遠心分離機の内側にロボットアームを備えたHettich(商標) Rotantaロボット遠心分離機である。遠心分離機150は、試料がその中に搭載されている及びその中から取り出されている間に遠心分離機150の密閉された内部チャンバがエンクロージャ110の内側の空間に対して開いているのを除いて、通常、エンクロージャ110から密閉されている。遠心分離機150の内部チャンバは、エンクロージャ110に対してわずかに陰圧に維持される。遠心分離機150はデッキ910(以下にさらに詳細に記載する)の下に備え付けられるため、遠心分離機150によって生成された粒子は、エンクロージャ110との間のアクセスポート170が開いている時にエンクロージャ110に入らない。GMP規制に適合するために所望により細胞加工の間の異なるステップを追跡するために、遠心分離機150に入ってくる及び出て行く容器の同一性を検証及び記録するためのバーコードリーダ又は他のデバイスが遠心分離機150に付随してもよい。制御ユニット1000は、自動化された細胞加工のために遠心分離機150に通信可能に連結されている。
ACPS100の図示した実施では、インキュベータ152は、インキュベータ152の中に及び外に物体を移送するためにインキュベータの内側にロボットアームを備えたLiconic(商標) STR240である。インキュベータ152はエンクロージャ110から密閉され、エンクロージャ110に対してわずかに陰圧に維持されるため、インキュベータ152によって生成された粒子は、エンクロージャ110との間のアクセスポート172が開いている時にエンクロージャ110に入らない。一部の実施では、インキュベータ152は、汚染を防止するように構築されている(例えば、銅合金から完全に構築されたチャンバ、HEPAフィルタ、インキュベータの内側の水受皿の代わりに滅菌水蒸気生成器、及び同種のものなどの特徴を含む)。インキュベータ152は、インキュベータ152の内部の汚染除去のための自動化されたインキュベータ滅菌ユニット552に接続されている。自動化されたインキュベータ滅菌ユニット552は、インキュベータ152に隣接して配され、フレーム140の下部分144に支持される。自動化されたインキュベータ滅菌ユニット552は、以下にさらに詳細に説明される。細胞が二次的なインキュベータ中又はエンクロージャ110中にある間に、例えばClO2ガスを使用して、インキュベータ152を独立して滅菌することができる。インキュベータ152はまた、GMP規制に適合するために所望により細胞加工の間の異なるステップを追跡するためにインキュベータ152に入ってくる及び出て行く容器の同一性を検証及び記録するためのバーコードリーダも有する。制御ユニット1000は、自動化された細胞加工のためにインキュベータ152に、及びインキュベータ152の滅菌のために自動化されたインキュベータ滅菌ユニット552に通信可能に連結されている。
ACPS100の図示した実施では、冷凍器154は、冷凍器154の中に及び外に物体を移送するためのリフト155(図9)を備えたLiconic(商標) STR 44である。冷凍器154はまた、GMP規制に適合するために所望により細胞加工の間の異なるステップを追跡するために冷凍器154に入ってくる及び出て行く容器の同一性を検証及び記録するためのバーコードリーダも有する。制御ユニット1000は、自動化された細胞加工のために冷凍器154に通信可能に連結されている。図示した実施では、冷凍器154は、冷凍器154からエンクロージャ110を密封するために閉めることができる1つのドアの代わりにダブルドア(ダブルドアの1つのドア270を図3Cに示している)を備える。ドア270は、追加の絶縁を提供するために絶縁ドアであり、エンクロージャ110の滅菌の間に自動的に閉まって、冷凍器ドアが絶縁ドアを欠いていれば周囲温度よりも冷たくなるであろう冷凍器ドアの辺りのある特定の滅菌剤(例えば、過酸化水素蒸気)の凝縮を防止する。絶縁ドア270は、エンクロージャ110の底壁212の上面に取り付けられたスライド式ドアである。絶縁ドア270は、電動アクチュエータによって作動され、電動アクチュエータは、制御ユニット1000に接続され、それによって滅菌手順の間に絶縁ドア270を閉じるために制御ユニット1000によって制御される。
ACPS100の図示した実施では、冷却器160は4℃に維持され、試薬容器を貯蔵するために使用される。冷却器160の内部は、アイソレータ120の右側にあるアクセスポートを通じてアイソレータ120を介してアクセス可能である。試薬容器は、人間操作者によって冷却器160の中に置かれ、アイソレータ120を通ってエンクロージャ110の中の培地注入ステーション420へと延びた培地注入ラインに接続されている。冷却器160は、上記の冷凍器154に類似した絶縁ドアを備えたダブルドアを備えてもよいことが想定される。
一部の実施では、ACPS100は、細胞加工が完了した後に容器を貯蔵するためのロボット式の凍結貯蔵ユニット162(図2に図式的に示されている)を備える。図示した実施では、凍結貯蔵ユニット162は、Askion(商標) C-lineシステム凍結貯蔵ユニットである。凍結貯蔵ユニット162は、上記の冷凍器154又は遠心分離機150のものに類似した密閉接続によってエンクロージャ110に接続されている。凍結貯蔵ユニット162は、人間操作者による操作なしで容器を自動的に貯蔵し、且つ、凍結貯蔵ユニット162からエンクロージャ110の中に取り出すことを可能にするそれ自体のロボットシステム(例えば、ロボットアームなど)を有してもよい。
エンクロージャの内側のACPSの部品
図2、3A、3B及び4に関して、エンクロージャ110の内側に、ACPS100は、貯蔵エリア300、試料調製及び加工エリア400、品質管理エリア500、回収エリア900、及びロボットモジュール600、700及び800、820を有する。
ACPS100の図示した実施では、貯蔵エリア300は、アイソレータ接続ポート220の後ろにエンクロージャ110の前壁に近接して位置しており、且つロボットモジュール700は貯蔵エリア300の後ろに配されている。ACPS100の図示した実施では、細胞加工エリア400はロボットモジュール700の後ろに位置しており、ロボットモジュール600は、エンクロージャ110の右側壁に近接して細胞加工エリア400の右側に配されており、且つロボットモジュール800、820は細胞加工エリア400の上に配されている。ACPS100の図示した実施では、回収エリア900は細胞加工エリア400の左側に配されており、且つ品質管理エリア500は回収エリア900の左側に配されている。一部の実施では、品質管理エリア500はまた、回収エリア900及び細胞加工エリア400よりも鉛直方向に高く配される。
概して、貯蔵エリア300は複数の貯蔵モジュールを備え、加工エリア400は複数の細胞加工モジュールを備え、回収エリア900は1つ又は複数の回収モジュールを備え、且つ品質管理エリア500は1つ又は複数の品質管理モジュールを備える。一部のモジュールは、細胞加工、回収及び品質管理の1つ又は複数に関する機能を行ってもよく、したがってこれらのモジュールを1つより多くの種類のモジュール(例えば、細胞加工モジュール及び回収モジュール)と考えてもよい。例えば、傾斜モジュールなどの特定の加工ステーションを、以下に記載するように回収のために使用してもよい。さらに、エリア(貯蔵エリア300、加工エリア400、品質管理エリア500及び回収エリア900)のいずれか1つ又は複数を分割して、物理的に離れた場所に配置してもよい。図2に図示した実施では、試料調製及び加工エリアは同じ場所に示されているが、それらを物理的に離れた場所に配置してもよい。同様に、上記エリアの任意の組合せを同じ場所に重ね合わせてもよいし、又は物理的に離れた場所に配置してもよい。
ACPS100の図示した実施では、ロボットモジュール700は、貯蔵エリア300、細胞加工エリア400、及び品質管理エリア500にアクセスする。ACPS100の図示した実施では、ロボットモジュール600は、細胞加工エリア400の右部分及び遠心分離機150にアクセスする。しかしながら、エンクロージャ110内の様々な部品、エリア及びモジュールの相対位置は本出願に示したものとは異なっていてもよいことが想定される。
ACPS100は、トレイ、フラスコ、ボトル、チューブ及びバイアルなどの様々な種類の細胞加工容器314をロボット操作するように構成されている。トレイの例としては、図29Bに示すOmni(商標)トレイなどの細胞加工トレイ344、図31A~31Dに示す細胞加工トレイ344’、図29Aに示すPetaka(商標)トレイなどの輸送トレイ340、及び同種のものが挙げられる。チューブの例としては、遠心チューブ346(例えば、図29Dに示すFalcon(商標)チューブ)、貯蔵チューブ884(例えば、図29Cに示すようなMicronic(商標)チューブ)、及び同種のものが挙げられる。貯蔵チューブ884はまた、バイアル884、又は極低温条件での貯蔵及び輸送のために使用される場合にはクライオバイアル884とも本明細書中で称される。フラスコの例としては、スピナーフラスコ(図示せず)、図20Aに示す多層フラスコ350(Millipore(商標) Millicell HY 3層細胞培養フラスコT-600)、及び同種のものが挙げられる。細胞加工ボトルの例としては、ローラーボトル(図示せず)及び同種のものが挙げられる。上記の例は限定を意図するものではなく、本明細書で使用される細胞加工容器314という用語は、バッチの貯蔵、処理、増殖及び輸送のために使用されることが公知である任意の種類の容器を包含してよいことが理解されるべきである。ACPS100はまた、図16に示す試薬ボトル836などの様々な種類の試薬容器をロボット操作するようにも構成されている。
図4及び図5に最もよく見ることができるように、貯蔵エリア300は、左貯蔵モジュール310、中央貯蔵モジュール320、及び右貯蔵モジュール330を備える。
図示した例示的な積み重ねの構成では、左貯蔵モジュール310は、図6に最もよく見ることができるように、細胞を加工するために使用される容器用のキャリア312のスタックを保持する。左貯蔵モジュールは、キャリア312の9×3のアレイを備え、各キャリア312は、8つの細胞加工トレイ344、344’を保持することができる(図29B)。積み重ね可能なキャリア312は、複数の細胞加工トレイ344を一緒に動かし、貯蔵することを可能とする。ACPS100はまた、-100℃~+100℃より低い温度で貯蔵し、又は該温度に供し、且つ必要に応じて暗闇に保つための細胞加工容器314及び試薬ボトル836などの試薬容器も提供する。
図示した例示的な積み重ねの構成では、右貯蔵モジュール330は、図6に最もよく見ることができるように、細胞加工用の実験器具を保持するように構成されている。右貯蔵モジュール330は、実験器具を貯蔵するための5つの棚332を備え、各棚は、実験器具を保持するための5つの別々のポジション334又はトレイ334を有する。右貯蔵モジュール330の棚332に貯蔵された実験器具は、ランダムアクセスの様式でアクセスする(棚から取り出す又はその上に置く)ことができる。異なる高さの実験器具の貯蔵を提供するために、右貯蔵モジュール330の連続する棚332の間の鉛直方向の間隔は均一でない。
図4、5、8A及び8Bに最もよく見ることができる例示的な積み重ねの構成では、中央貯蔵モジュール320は、伸縮性ガイドレール324の1つの端部に取り付けられた4つの移送トレイ322を備える。移送トレイ322は、移送トレイ322の上面に物体(細胞加工トレイ、他の実験器具、化学試薬容器、及び同種のもの)を支持するように構成されている。移送トレイ322は、それらの「ホーム」ポジションにある時にアイソレータ接続ポート220のすぐ後ろに位置し、伸縮性ガイドレール324を延ばすことによってアイソレータ120の中に動かすことができる。移送トレイ322をアイソレータ120の中に搭載し、又は取り出すことができる。図示した実施では、移送トレイ322は、ユーザーがグローブポートの中に腕を伸ばすことによって手動でアイソレータ120の中に引き入れられる。或いは、ケーブル及び滑車システム(図示せず)によりガイドレール324を延ばすことによってガイドレール324を手動で作動させ、それによって移送トレイ322を前後に動かしてもよい。各ガイドレール324の外端部(エンクロージャ110の中及び外に延びる端部)は、アパーチャを有するブラケット326を備え、フックによる外端部の把持、又は、ガイドレール324を引っ張り出し、エンクロージャ110の中にガイドレールを押し出すための別の実施による外端部の把持を促進する。ガイドレール324の内端部は、磁石328及びポジティブストップレールを有する壁の前に配され、ガイドレール324が完全に引っ込められ、且つ移送トレイ322がその「ホーム」ポジションにある時に検出を行う。移送トレイ322がそのホームポジションにある(ガイドレール324が完全に引っ込められている)時に緑色LED325を点灯するために、及び、移送トレイ322がそのホームポジションから外れた(ガイドレール324が延びている又は不適切な位置にある)時に赤色LED327を点灯するために、磁石に接続されたスイッチ329(図示した実施では、調整可能なポジションの単極双投)が使用される。エンクロージャ110の内側でホームポジションに配された時、移送トレイ322は、ロボットモジュール700のロボットアーム705によってアクセスすることができる。
図示した実施では、移送トレイ322は、エンクロージャ110の中でホームポジションから400mmの距離だけアイソレータ120の中に延びることができる。移送トレイ322は、トレイ322の中に置かれた物体を操作するためのロボットアームのグリッパ部材に充分な隙間を提供するために、125mmの距離だけ隣りの移送トレイから離して配されるように載せられる。
貯蔵エリア300は異なって構成されてもよいこと、及び本出願に示すものとは異なる種類の貯蔵モジュールを備えてもよいことが理解されるべきである。
エンクロージャ110は、高くなったプラットフォーム910を備え、以下ではこれをデッキ910と称する。試料調製及び加工エリア400及び回収エリア900は、通常、デッキ910上に設けられる。デッキ910は、様々な試料調製及び加工モジュール及び回収モジュールを備え、これらをこれより図4~31Dを参照して説明する。
デッキ910は、類似のフットプリントを有する複数のステーションをその上に有するモジュール式で構築される。図示した実施では、ステーションは、SBS規格フォーマットに適合するフットプリントを有する物体のために構成されている。例えば、ステーションの一部は、SBSのフットプリントを有する物体を受け入れるためのスロットを画定するトレイ404(図9~11A)を有する。デッキ910はまた、SBSのフォーマットではない物体のためのステーションも備える。デッキ910のステーションの一部又は全てを異なるフォーマットのために構成してもよいこと、及び/又は、デッキ910を本出願に示すものとは異なって構成してもよいことが想定される。
バイアル、チューブ、試薬容器、及び同種のものなどの異なる種類の容器のための多数のホルダが、デッキ910上の様々なステーションに配置される。一例としては、遠心チューブステーションは、遠心チューブ346(例えば、ACPS100の図示した実施では、Falcon(商標)遠心チューブ)用の遠心チューブホルダ410(図4、5及び7)を備える。ACPS100の図示した実施では、遠心チューブホルダ410を有する遠心チューブステーションは、遠心分離機アクセスポート170の近くのデッキ910の右側に位置している。各遠心チューブホルダ410は、複数のレセプタクルを有する本体部を有し、各レセプタクルは、その中に遠心チューブ346を受け入れるように構成されている。ホルダ410の基部は、SBSフォーマットのスロットに補完的な形状となっている。隣り合うレセプタクル間の間隔を充分に大きくして隙間を許容し、それにより、例えば遠心チューブを遠心分離機150の中に入れるために、チューブグリッパを有するロボットアームによって遠心チューブ346を操作できるように、ホルダ410は構成されている。さらなる例として、図9に関して、ピペットチップを保持するピペットチップホルダ418及びバイアル884を保持するバイアルホルダ452(図14)がデッキ910の他のステーションに見られる。ホルダ(例えば、ホルダ418、452)は、蓋、例えば図7に見ることができるようなピペットチップホルダ418用の蓋419も備える。別の例としては、図9及び図16に最もよく見られるように、デッキ910は試薬容器ステーションを備え、試薬容器ステーションは、ボトル836の形態の2つの試薬容器のための試薬容器ホルダ416、及び、試薬容器キャップ838が試薬容器836から取り外される時に2つのキャップ838を保持するための試薬ボトルキャップホルダ417を有する。
デッキ910は、遠心チューブなどの容器からキャップを取り外すように構成された数個のデキャッピングモジュールを備える。
図4及び図16Bに関して、ACPS100の図示した実施では、4つの遠心チューブデキャッピングモジュール412が遠心チューブホルダ410の左側に位置している。図示した実施では、遠心チューブデキャッピングモジュール412は、Hamilton(商標) STAR Liquid Handler Decapper Moduleである。各遠心チューブデキャッピングモジュール412は、遠心チューブ346を保持し、遠心チューブ346のキャップ366がロボット式のデキャッピンググリッパ830(以下に記載する)によってねじを回して完全に抜かれる前にキャップ366を緩めるように構成されている。各遠心チューブデキャッピングモジュール412は、遠心チューブ346を受け入れるための概ね円筒形のレセプタクルを画定する本体部を有する。3つのグリッパホイールがレセプタクルの中に延びて、遠心チューブ346のキャップ366を緩める又は締めるために配されたチューブ346のキャップ366に選択的に篏合する。緩められると、遠心チューブ346のキャップ366は、デキャッピンググリッパ(例えば、以下にさらに詳細に説明するデキャッピンググリッパ830)によってねじを回して完全に抜かれ、遠心チューブ346から取り外されることができる。デキャッピンググリッパは、キャップ366を把持して回転させ、且つ鉛直方向(Z方向)にキャップ366を動かして、デキャッピングモジュール412に保持された遠心チューブ346からキャップ366を分離させることができる。デキャッピンググリッパ830はまた、遠心チューブ346に再びキャップ366を嵌めることもできる。図示した実施では、遠心チューブデキャッピングモジュール412はまた、レセプタクルの中のチューブの存在を検出するためにレセプタクルの底部にチューブ存在センサも備える。制御ユニット1000は、遠心チューブ346のキャップの取り外し操作を制御するためにチューブ存在センサに接続されている。デキャッピングモジュール412は、遠心チューブ346以外のチューブ及び容器のキャップを保持し、且つ緩めるように構成されていてもよいことが想定される。ACPS100は、本出願に示したもの以外の種類のデキャッピングモジュール412を備えてもよいことが想定される。
上述したように、ACPS100はまた、遠心346チューブ、及び試薬ボトル836などの他の容器のキャップ366を(それぞれねじを回して抜く及び再び嵌めることによって)外す又は再び嵌めるためのデキャッピンググリッパ830を備えた1つ又は複数のロボットアーム824(図16)も備える。図示した実施では、デキャッピンググリッパ830(以下にさらに詳細に説明する)は、容器からキャップ及びカバーのねじを回して抜き、且つデッキ910にわたって容器を動かす。図示した実施では、各デキャッピンググリッパ830には、キャップを取り外されている又は再び嵌められている遠心チューブ346などの容器の特定用ラベルを読み取るためのバーコードスキャナ(図示せず)も付随している。バーコードスキャナは、スキャンした情報を制御ユニット1000に提供するために制御ユニット1000に接続されている。
別のデキャッピングモジュール414(図示した実施では、Hamilton(商標) Labelite I.D. Decapper Part No. 193608)が、バイアル884などのより小さいバイアルのキャップを取り外す及び再び嵌めるために品質管理エリア500の近くのデッキ910の左端部に位置している。デキャッピングモジュール414は、細胞加工の間の追跡のためにバイアル上のバーコードを読み取るために、ユニットの底部にバーコードスキャナを備える。図30B及び図29Cに関して、バイアルホルダ452は、デキャッピングモジュール414によってバイアル884のキャップを抜く及び再び嵌める間にバイアル884を保持するように構成されている。図30Bに見ることができるように、ホルダ452は、バイアル884のアレイを支持するための開口部又はレセプタクルを有するハウジングを形成する上部940と、ハウジングの底部を形成する金属シートの形態の底部942とを備えた2ピースの構築物から作られる。ホルダ452は、単一ピースとして構築されていてもよいことが想定される。底部942は開口部944のアレイを有し、各開口部944は、バーコードでタグ付けされていてもよいバイアル884の底部を各開口部944を通じて受け入れるように構成されている。したがって、バイアル884のバーコードは、ホルダ452からバイアル884を取り外すことなく読み取ることができる。加えて、底部942は、チューブ884の底部の近くの突起部946に補完的なノッチの形態の回転防止の特徴部を有する(図29C)。底部842のノッチはチューブ884の突起部946に篏合して、キャップ948がデキャッピングモジュール414によってねじを回して締められている又は抜かれている間のチューブ884の回転を防止する。
図13~15に関して、ACPS100はスモールチューブグリッパ812をさらに備え、スモールチューブグリッパ812は、例えばマイクロチューブのアレイ用のマイクロチューブホルダから、個々のマイクロチューブを拾い上げ、且つ拾い上げたマイクロチューブをデッキ910にわたって動かすように構成されている。
チューブ、ボトル、ピペット、プレートなどのための様々なホルダは、いくつもの種類のロボットアームによる普遍的な把持によってそれらを操作(輸送、キャップの取り外し及び嵌めることなど)できるように特別に設計されている。例えば、ホルダ及び容器(図30Aのバイアルホルダ452など)の一部は、2つの対向する側部に細長いノッチ454を備えて、ロボットアームによる把持を促進する。ノッチ454は、ロボットアームがホルダ又は容器を固定するのを助けて、ロボットアームからのホルダ/容器(例えば、バイアルホルダ452)のスリップを防止する。
多数のステーション又はホルダが特定の位置に配置されて、細胞加工の様々なステップを行っている間の効率を向上させる。例えば、細胞加工トレイ用の2つのインキュベータ移送ステーション153(図4)がインキュベータ152の近くに位置することにより、ロボットモジュール700は、インキュベータ152に行くべき細胞加工容器314を降ろし、且つ別の細胞加工容器314をワンパスで拾い上げることができる。同様に、インキュベータ152のロボットアームは、ポート172を選択的に閉めるインキュベータのドアが2度ではなく1度だけ開くように、1つの細胞加工容器314を降ろし、且つ別の細胞加工容器314をワンパスで拾い上げてインキュベータ152に戻すことができる。ロボットモジュール700は、第1の細胞加工容器314をインキュベータ152へと運び、且つインキュベータ152に隣接する第1のインキュベータ移送ステーション153に第1の細胞加工容器314を置く。インキュベータ152の内側にあるインキュベータのロボットアーム(図示せず)は、第2の細胞加工容器314を、インキュベータ152の内側から、インキュベータ152に隣接する第2のインキュベータ移送ステーション153へと動かし、且つ第1の細胞加工容器314を第1のインキュベータ移送ステーション153から回収してそれをインキュベータ152の内側へと動かす。次いで、ロボットモジュール700は、第2の細胞加工容器314を第2のインキュベータ移送ステーション153からデッキ910上のステーションへと運ぶ。2つのインキュベータ移送ステーション153がなければ、第1の細胞加工容器314を(ロボットモジュール700によって)デッキ910からインキュベータ移送ステーション153へと動かした後に、ポート172にわたるインキュベータのドアが第1の時点で開いている時に第1のパスで(インキュベータのロボットアームによって)インキュベータ移送ステーション153からインキュベータ152の中に動かすことになる。ポート172にわたるインキュベータのドアが第2の時点で開いている第2のパスが必要とされることになり、第2のパスでは、第2の細胞加工容器314が(ロボットアームによって)インキュベータ152からインキュベータ移送ステーション153へと動かされた後に、ポート172にわたるインキュベータのドアが第2の時点で開いている時に第2のパスで(ロボットモジュール700によって)インキュベータ移送ステーション153からデッキ910へと動かされることになる。図示した実施では、各インキュベータ移送ステーション153は、容器がステーション上に配置された時にこれを検出するためのインキュベータ移送ステーションセンサを備える。制御ユニット1000は、インキュベータ152を伴う細胞加工ステップを制御するためにインキュベータ移送ステーションセンサに接続されている。
図4及び図10A~11Dに関して、ACPS100は、液体(例えば、細胞培養培地及び/又は他の試薬)を細胞加工容器314に加えるための数個のモジュールを備える。
図4、図10A及び図11Aに関して、数個の培地注入ステーション420がデッキ910上に設けられている。1つの実施では、培地注入ステーション420は、培地注入ラインを介して、冷却器160の内側に置かれた培地供給容器(図示せず)に接続されている。培地供給容器の中に貯蔵された培地は、培地注入ステーション420及び/又は培地供給容器に接続されたポンプによって培地注入ステーション420にポンプされる。一部の実施では、培地は、培地注入ステーションを培地供給容器に接続する培地注入ラインにおいて加熱されてもよい。図4、図10A及び図11Aに関して、培地注入ステーション420は、細胞加工容器314を支持するための基部424と、分注チップを有する可動式のロボットアーム422とを備える。ロボットアーム422は、基部424上に置かれた細胞加工容器314の中に培地を分注するために分注チップが基部424上に配される注入ポジションと、分注チップを基部424から離すように動かして細胞加工容器314の基部424上への積載及び取り外しを可能とする(図10A及び図11Aに見られるような)積載ポジションとの間で可動である。積載ポジションでは、分注チップ及びロボットアーム422は、細胞加工容器314の妨害されない積載及び基部424からの取り外しを可能とする。
一部の実施では、培地注入ステーション420はセンサ426を有し、センサ426は、基部424上の細胞加工容器314の存在を感知し、且つ/又は、細胞加工容器314の中に培地を分注する前に細胞加工容器314が基部424上に正しく配置されていることを感知する。一部の実施では、培地注入ステーション420は、適切な液体レベルに達した時に細胞加工容器314への液体の分注を中止するように基部424上に配置された細胞加工容器314中の液体のレベルを検出するための液体レベルセンサを有する。
図10C及び図10Dに関して、別の実施では、培地注入ステーション420’は、図10Cに見ることができるように、過剰注入及びこぼれ防止特徴部を有する基部424’を有する。ドレン穴428’が基部424’の中央に画定され、基部424’の面が基部424’の端からドレン穴428’へ向かって下向きに傾斜している。ドレン穴428’は、流体管によって廃棄物レセプタクル156又は158に接続されている。基部424’の寸法は細胞加工容器314の寸法よりわずかに大きいため、培地注入ステーション420は、細胞加工容器314からこぼれるあらゆる液体が基部424’の中に落ち、基部424’の傾斜面によってドレン穴428’に導かれるように構成されている。次いで、液体はドレン穴428’から離れて液体廃棄物レセプタクル158の中へ引かれる。基部424’は、基部424’内の細胞加工容器314からこぼれる液体を含有するために外周の辺りに縁をさらに備えてもよい。分注チップ423’を基部424’から離すように動かして細胞加工容器314の基部424’上への積載及び取り外しを可能とする積載ポジション(図10C)と、基部424’上に置かれた細胞加工容器314の中に培地を分注するために分注チップ423’が基部424’上に配される注入ポジション(図10D)との間で、分注チップ423’は90°回転させることができる。
図示した実施では、培地注入ステーション420、420’は、細胞加工トレイ344、344’及びフラスコ350の形態の細胞加工容器314のために構成されているが、培地注入ステーション420、420’及び/又は傾斜モジュール430、430’、440は、トレイ344、344’及びフラスコ350以外の容器314(例えば、スピナーフラスコ、ローラーボトル、及び同種のもの)のために構成されていてもよいことが想定される。培地注入ステーション420は、試薬ボトル836などの試薬ボトルの注入のために構成されていてもよいことも想定される。分注チップの形状は、特定の種類の分注及び噴霧パターンのために、又は特定の種類の細胞加工容器314又は試薬ボトル836のために構成されていてもよい。
試薬ボトル836の注入のために構成された培地注入ステーション420は、エンクロージャ110から試薬ボトル836を取り出すことなく、エンクロージャ110の外側で貯蔵された試薬供給容器から直接的に試薬ボトル836が再注入されることを可能とする。次いで、試薬ボトル836に注入された試薬は、細胞加工、細胞回収又は細胞調製の間に必要に応じてロボットピペッタ814によって取って細胞加工容器314の中に入れることができる。エンクロージャ110の外側で貯蔵された試薬供給容器からの試薬ボトル836の直接的な再注入のために構成された培地注入ステーション420は、再注入、廃棄物156への試薬ボトル836の処分、及び新たな試薬ボトル836をエンクロージャ110の中に導入するために試薬ボトル836をエンクロージャ110の中へ及びエンクロージャ110から移送する必要性を取り除き、且つ、エンクロージャ110の中で同じ試薬のための複数の試薬ボトル836を貯蔵する必要性も低減させる。
図19に関して以下に記載するように、図示した実施のACPS100では、ロボットモジュール800の9つのロボットアーム804の1つ又は複数は、エンクロージャ110の内側又は外側(例えば、アイソレータ120の中又はアイソレータ120に接続された冷却器160の中)で貯蔵された試薬供給容器に蠕動運動ポンプを介して直接的に接続された連続フローの試薬分注器818となるように構成されている。試薬分注器818は、中止して、分注される流体をピペットチップに再注入する必要なく連続的により大容量の流体を分注するように働く。したがって、試薬分注器818は、エンクロージャ110の外側で貯蔵された試薬供給容器から試薬ボトル836を直接的に再注入するためにも使用することができる。
エンクロージャ110の外側で貯蔵された試薬供給容器からの試薬ボトル836の直接的な再注入のために構成された培地注入ステーション420及び試薬分注器818は、再注入のために試薬ボトル836をエンクロージャ110へ及びエンクロージャ110から移送する必要性を取り除き、且つ、エンクロージャ110の中で同じ試薬のための複数の試薬ボトル836を貯蔵する必要性も低減する。
そこから培地が培地注入ステーション420及び/又は他の分注器(ロボット分注器818など)に直接的にポンプされるアイソレータ120及び/又は冷却器160に貯蔵された容器は、制御ユニット1000に接続されて、容器中の液体レベルを検出するように構成された液体レベルセンサに提供されてもよいことが想定される。例えば、液体レベルセンサは、液体レベルが閾値レベルよりも低い時にこれを検出し、制御ユニット1000に容器の交換を警告するように制御ユニットに信号を送信するように構成されていてもよい。これらの容器もエンクロージャ110の中に貯蔵できることが想定される。
図10A、図10B及び図11A~11Cに関して、ACPS100は、細胞加工容器314からの既存の細胞培養培地の効果的な除去を促進するために数個の傾斜モジュール430’、440及び磁気分離モジュール430を備える。傾斜モジュール430、430’及び440はまた、細胞培養培地又は他の溶液(例えば、トリプシン)を細胞加工容器314の中に加える又は除去するために細胞加工容器314を傾斜ポジションに保持するためにも働く。
例えば、図11A~11Dは、輸送トレイ340のために構成された傾斜モジュール440を示す。輸送トレイ340の上面は、ゴムインサート342(図29Aに最もよく見られる)によって密閉されたアパーチャを1つの角の近くに有し、ゴムインサート342は、培地又は細胞培養物を輸送トレイ340の中に注入するために特定の角度で貫通している必要がある。傾斜モジュール440は、エンクロージャ110の(水平な底壁212に対して垂直な)鉛直方向に動くチップが、インサート342を貫通するために所望の角度で輸送トレイ340と接触するように輸送トレイ340を傾斜させる。輸送トレイ340の傾斜は、鉛直及び水平方向に動くように構成されたロボットモジュールの改良なしで細胞培養物を輸送トレイ340に効果的に注入することを可能とする。傾斜モジュール440は、基部442と、支点に対して旋回可能であるように基部442に接続されたピボットプレート444と、輸送トレイ340の内容物が傾斜している間に及びインサート342を通じて挿入されたチップが取り外される時に、輸送トレイ340をピボットプレート444上に保持するためのアダプタ446とを備える。図示した実施では、アダプタ446は、インサート342の近くを除いて輸送トレイ340の上面の外周に沿って伸びた形状の概ね長方形のフレームであり、該フレームは、インサート342の近くでは、該外周及びインサート342から離れるように内部を通っている。アダプタ446は、上面の外周の全体に従う形状の長方形のフレームを有していてもよいことが想定される。アダプタ446は、本出願に示したもの以外の形状を有していてもよいことも想定される。アダプタ446は、輸送トレイ340に液体を注入するためにチップをアパーチャ342に貫通させる前に傾斜モジュール440上に配置された輸送トレイ340の上面に置かれる。輸送トレイ340が注入されると、チップはインサート342から取り出される。アダプタ446は、アパーチャ342からのチップの取り出しの間の輸送トレイ340の持ち上がりを防止するために充分大きい重量を有するような好適な材料から作られている。傾斜モジュール440は、ピボットプレート444の旋回を制御するために制御ユニット1000に通信可能に連結されている。図示した実施では、ピボットプレート444は、30°の角度だけ傾斜するように構成されている。図11Aに見ることができるように、アダプタ446を保持するためのアダプタステーション450が、簡便性及び効率のために傾斜モジュール440に隣接して配されている。アダプタ446は、傾斜モジュール440上に配置される輸送トレイ340に対して使用されていない時にはアダプタステーション450上に置かれる。
図10A及び図10Bに関して、ACPS100は、磁気分離モジュール430の形態の別の傾斜モジュールを備える。磁気分離モジュール430は基部431を備え、基部431は、支点に対して旋回可能であるように基部431に接続されたトッププレート432と、トッププレート432上に配された磁気プレート434とを有する。基部431、トッププレート432及び磁気プレート434は、その上面で細胞加工容器314を支持するように構成されている。図示した実施では、基部431、トッププレート432及び磁気プレート434は、細胞加工トレイ344、344’ の形態の細胞加工容器314を支持するように構成されているが、磁気分離モジュール430は、フラスコ350及び輸送容器340などの他の種類の細胞加工容器314のために構成されていてもよいことが想定される。図10A及び図10Bでは水平に延びるポジションで示されているトッププレート432及び磁気プレート434は、基部431の水平な上面に対してある角度で配されるように傾斜することができる。図示した実施では、トッププレート432は、水平面に対して10°までの角度で傾斜するように構成されているが、最大傾斜角度は10°以外であってもよいことが想定される。
磁気分離モジュール430は、細胞培養物の精製又は細胞の分離若しくは選択、又は磁気トランスフェクションのために使用することができる。一例としては、所望の細胞又は所望しない細胞のいずれかに対して鉄又は他の磁心を有する抗体を使用することができる。抗体は、所望の細胞又は所望しない細胞のいずれかを標的化する能力について選択することができる。所望の及び所望しない細胞を有する非接着細胞培養物(例えば、トリプシン処理後、又は細胞懸濁培養物)を含有する細胞加工容器314に選択した抗体を加える。細胞加工容器314を磁気傾斜モジュール440の磁気プレート434上に置いた時に、磁心でタグ付けされた細胞は、細胞加工容器314の底に固定されたままとなる一方、磁心なしでタグ付けされていない細胞は培地中の溶液に残る。細胞加工容器314が、好ましくは傾斜ポジションで、磁気プレート434上に置かれている間に、磁心なしでタグ付けされていない細胞を含有する培地は、ロボット吸引器812(図15)又はロボットピペッタ814(図19)で吸引されて、タグ付けされていない細胞を細胞加工容器314から除去すると同時に、タグ付けされた細胞を細胞加工容器314の中に保つ。次いで、所望であればさらなる加工のために、細胞加工容器314中に残ったタグ付けされた細胞を(培地注入ステーション420の1つを使用して新たな培地を細胞加工容器314に加えることによって)新たな培地中に再懸濁してもよいし、又は、タグ付けされた細胞が所望でない細胞であればそれを処分してもよい。或いは、タグ付けされていない細胞が所望の細胞である場合、タグ付けされていない細胞を含有する培地をピペットで取って、これをさらなる加工などのために別の細胞加工容器314に分注することができる。細胞加工容器314から培地を吸引しながら細胞加工容器314を傾斜させる能力は、細胞加工容器314からタグ付けされていない細胞を含有する培地をより効率的且つ徹底的に除去することを可能とし、それにより、タグ付けされた細胞とタグ付けされていない細胞とのより効率的且つ徹底的な分離が可能となる。磁気分離モジュール430はまた、接着細胞の磁気トランスフェクション(例えば、Magnetofectamine(商標)、Oz Biosciences)などの他の目的のためにも使用することができ、この場合、例えば、脂質を含有する鉄心の中のDNAプラスミドが磁石の作用によって下に引っ張られて細胞の中に入る。
図示した実施のACPS100は、磁気プレート434が割愛されている以外は上記の磁気分離モジュール430に類似した傾斜モジュール430’(図9及び図11A)も備える。傾斜モジュール430’は、細胞加工容器314からの液体の効率的な除去のために、吸引の間に傾斜ポジションに細胞加工容器314を保持するために使用される。
傾斜モジュール440、430’及び/又は磁気分離モジュール430に隣接する培地注入ステーション420の配置は、細胞加工容器314からの既存の細胞培養培地の除去後の細胞加工容器314への新鮮な細胞培養培地及び/又は他の試薬の追加を促進する。同様に、試薬ボトル836を有する試薬容器ホルダ416も(図9に見られるように)傾斜モジュール440及び/又は磁気分離モジュール430に隣接して置くことができ、それによって、細胞加工容器314からの既存の細胞培養培地の除去後の細胞加工容器314への新鮮な細胞培養培地及び/又は他の試薬の追加を促進する。
図31A~31Dに関して、細胞加工トレイ344(図29B)に類似した細胞加工トレイ344’の別の実施をこれより説明する。細胞加工トレイ344’は、基部510及び4つの壁512、514、516、518を有し、これらの壁は、基部510から上に延びて、加工されているバッチを含有するための内部ボリューム520を画定する。基部510はSBSフォーマットのフットプリントを有するように構成されているため、傾斜モジュール430、430’、及び同種のものなどのACPS100のSBフォーマットのステーションで使用することができる。2つの対向する壁512、516は、他の2つの対向する壁514、518より長い。
直線状のノッチ454が、対応する壁512、514、516、518の下の基部510の各側部に画定されている。ノッチ454は、細胞加工トレイ344’がプレートグリッパ816などのロボットグリッパによってより確実に把持されることを可能とする。細胞加工トレイ344’の対向する壁512、516又は514、518は、グリッパ816の2つのアームの間に保持され、各グリッパアームは、対抗する壁512、516又は514、518の1つと接触し、且つ各グリッパアームは、グリッパアームと接触する対応する壁512、514、516、518に形成されたノッチ454に篏合する。したがって、細胞加工トレイ344’は、スリップのリスクなくグリッパ818のアームの間に確実に保持される。細胞加工トレイ344’は、図29Bの細胞加工トレイ344のカバーに類似したカバーを有してもよいこと、及び、カバーの各側壁もノッチ454に類似したノッチを有して、ロボットグリッパ816によるカバーの確実な把持を可能としてもよいことが想定される。ノッチ454は、ロボットグリッパ816の同一又は異なる構成に合致する異なる構成を有してもよいことも想定される。ノッチ454を有する細胞加工トレイは、96ウェルプレートなどの、それら自身の内部ボリュームをそれぞれに有する数個の独立したウェルを含有してもよいことが想定される。
内部ボリューム520の床524を形成する基部510の内面は概ね平坦である。より長い壁512、516の内面も直線状であり、互いに対して平行に延びる。より長い壁512、516は、平坦な床524に対して垂直に延びる内面を有する。床524に対して垂直であり、且つ壁512、156の内面の間を等距離で延びる長手方向の中央面526を画定することができる。長手方向の中央面526及び床524に対して垂直であり、且つ壁512、516の内面を二分するように延びる短手方向の中央面528を画定することができる。
図示した実施では、より短い壁514、518のそれぞれの内面は、ある角度を成す2つの切断面として形成される。壁514、518は互いに鏡像であるため、壁514のみを本明細書に説明する。
壁514の内面は、長手方向の中央面526の対向する側部で延びる2つの部分530、532を有する。壁部分530は壁516の内面に対して垂直ではなく、図31Aにあるように上から見た時に壁516の内面に対して110°の角度を成す。該角度は110°以外の鈍角であってもよいことが想定される。壁部分530はまた、床524に対しても垂直でなく、床524に対して鈍角を成している。壁断面530、532は床524に対して垂直であってもよいことが想定される。壁部分532は、壁部分530とミラーとなる角度であるため、本明細書には詳細に説明しない。壁部分530、532は、長手方向の中央面と交差して液体回収領域534を形成する。
図示した実施では、壁518は、壁514の鏡像であり、壁断面530、532を有し、且つ、長手方向の中央面526と壁断面530、532との交差点の近くに画定された液体回収領域534を有する。
細胞加工容器344’が傾斜モジュール430’などの傾斜モジュール上に置かれ、且つ短手方向の傾斜軸536(長手方向の中央面526に対して垂直な軸線)に関して傾斜された時、壁514、518の1つは、壁514、518の他の1つより低く配されて、細胞加工容器の液体内容物が壁514、518のより低い1つへ向かって動くことを引き起こす。壁512、516の内面及び床524に対する壁断面530、532の勾配は、細胞加工トレイ244’の液体内容物が短手方向の傾斜軸に関して傾斜している時に液体回収領域534の中に回収されることを可能とする。床524に対する壁断面530、532の勾配は、液体回収領域534にピペット又は吸引器チップをより容易にアクセスさせることを可能とする。次いで、液体回収領域534に回収された細胞加工トレイ344’の液体内容物は、例えば、ロボット吸引器812、又はロボットピペッタ814の1つを使用して、液体回収領域534から効率的に吸引することができる。
したがって、細胞加工トレイ344’は、傾斜モジュール430、430’などの傾斜モジュール上に置かれた時に、細胞加工トレイ344’からの液体回収の効率及び細胞加工トレイ344’からの液体のより完全な(throrough)除去を向上させるように構成されている。
図示した実施では、より短い壁514、518のそれぞれは液体回収領域534を形成しているが、より短い壁514、518のみが液体回収領域を有していてもよいことが想定される。液体回収領域534は壁512、514、516、518の任意の1つ又は複数によって形成されていてもよいことが想定される。
ACPS100はまた、図20A~20Cに示すフラスコ350などの細胞加工容器314を操作するようにも構成されている。図示した実施では、フラスコ350は、3つの層を有する多層フラスコ350であるが、フラスコ350は、1つ、2つ、又は、3つより多くの層を有していてもよいことが想定される。多層フラスコ350は、細胞の生育のためのより大きい表面積を提供し、上に向いたキャップ付きの開口部352を介したピペッティングのためにアクセスすることができる。鉛直上向きのキャップ付きの開口部を覆うキャップ352は、デキャッパ830などのデッキ910上に設けられたデキャッピングモジュールのいずれかによるキャップの取り外しのために簡便である。ACPSは、多層フラスコ350用の2軸傾斜モジュール370を備え、これは、多層フラスコの全ての層への培地の追加、及び、ロボット分注器818又はロボットピペッタ814による350による培地の追加後の運動を促進するためのものである。多層フラスコ350は、短手方向軸354及び長手方向軸356を画定する。2軸傾斜モジュール370は、短手方向軸354に対して平行な短手方向ピボット軸355(図20B)に関して及び多層フラスコ350の長手方向軸356に対して平行な長手方向ピボット軸357(図20C)に関してフラスコ350を傾斜させる。傾斜モジュール370は、基部372と、(傾斜モジュール370の非傾斜ポジションで)基部370上に配され、且つ支点に対して旋回可能であるように基部372に接続された下プラットフォーム374とを備える。下プラットフォーム374は、図20B及び図20Dに見ることができるように、短手方向ピボット軸355に関して支点に対して旋回可能であるように基部372に接続されており、且つ伸縮アーム機構920によって短手方向ピボット軸355に関して支点に対して旋回可能である。伸縮アーム920は、例えば電気的に又は空気圧により、作動させることができる。基部372に対して下プラットフォーム374を旋回させるための機構は、本出願に示したもの以外であってもよいことが想定される。傾斜モジュール370は、上プラットフォーム376を備え、上プラットフォーム376は、(傾斜モジュール370の非傾斜ポジションで)下プラットフォーム374上に配され、且つ長手方向ピボット軸357に関して支点に対して旋回可能であるように下プラットフォーム374に接続されている。上プラットフォーム376は、図20Cに見ることができるように、伸縮アーム機構930によって長手方向ピボット軸357に関して支点に対して旋回可能である。伸縮アーム930は、例えば電気的に又は空気圧により、作動させることができる。下プラットフォーム374に対して上プラットフォーム376を旋回させるための機構は、本出願に示したもの以外であってもよいことが想定される。一対の留めアーム378は、(傾斜モジュール370の非傾斜ポジションで)上プラットフォーム374から上向きに延びている。多層フラスコ350は、アーム378の間に受け入れるように傾斜モジュール370上に配置することができる。それによってアーム378は、多層フラスコ350が短手方向ピボット軸355に関して及び/又は長手方向ピボット軸357に関して傾斜している間、傾斜モジュール370上に多層フラスコ350を留める。傾斜モジュール370は、短手方向ピボット軸355及び長手方向ピボット軸357の一方又は両方に関する多層フラスコ350の傾斜を可能とする。傾斜モジュール370は、細胞加工2300の間の多層フラスコの傾斜を制御するために制御ユニット1000に通信可能に接続されている。傾斜モジュール370は、ACPS100の一部の実施では、デッキ910上にステーションとして備えられる。
多層フラスコ350は、(例えば、トリプシン又はAccutaseを使用した時の)接着細胞の酵素放出のための面加熱機能を可能とするために熱伝導面を有する。上プラットフォーム376及び/又はアーム378は、フラスコ350を加熱するための加熱機能を有していてもよいことが想定される。
上述したように、個々の物体の滅菌、吸引器の内部通路及びピペッタヘッド及びチップの滅菌、及び液体廃棄物の廃棄のために、液体滅菌ステーション556(図9)がデッキ910上に設けられている。液体滅菌ステーション556を以下にさらに詳細に説明する。
ACPS100はまた、無菌濾過ステーション492(図9)も備え、無菌濾過ステーション492では、例えば試薬及び培地の滅菌のために、材料は空気圧又は真空によって無菌フィルタを押し通される。図示した実施では、無菌濾過システム492は、空気圧を感知するための空気圧センサを備え、空気圧センサは、濾過操作の制御ユニット1000による制御のために制御ユニット1000に接続されている。図示した実施では、無菌濾過システム492は、Hamilton(商標) ML Star CVS Stationである。
自動キャリブレーション用のピペット体積分注自己キャリブレーションステーション490がデッキ910上に備えられている。自己キャリブレーションステーション490は、ピペッタによって分注される流体の体積に関してピペッタをキャリブレーションするために構成されている。
ACPS100はまた、チューブ、バイアル、試薬容器及び細胞加工容器314などの容器を加熱及び冷却するための数個の部品もデッキ910上に提供する。ACPS100は、-100℃~+100℃の異なる温度範囲形態のために加熱及び冷却するための異なるステーション及び異なるモジュールを備える。加熱及び冷却部品の例としては、加熱及び振とうモジュール494(周囲温度から+105℃までの温度のために使用されるHamilton(商標) HHS3.0)、加熱及び冷却モジュール495(+4℃~+110℃の温度のために作動するInheco(商標) CPAC Ultraflat HT 2-TECm)、及び同種のものが挙げられる。図21の実施などの一部の実施では、ACPS100はまた、+4℃の温度で容器を貯蔵するための数個のチルリングステーション496も備える。加熱及び冷却部品494、495、496のそれぞれは、加熱及び冷却操作の制御ユニット1000による制御のために制御ユニット1000に接続された温度センサを備える。
ACPS100は、加熱又は冷却された液体を貯蔵するためのいくつかの液体貯蔵チューブ又はボトルを備える。加熱又は冷却された液体を貯蔵する液体貯蔵チューブ又はボトルは、温度伝導ホルダ(例えば、試薬容器ホルダ416)の中にあり、ボトル/チューブ/バイアルホルダの中に含有されたチューブ又はボトルをそれぞれ加熱又は冷却するための加熱された底部プレート及び/又は搭載された冷却ステーションを有するカスタムラック上に配置される。例えば、培地などのある特定の物質は、搭載された冷却ステーションを有するカスタムラック上に置かれた培地貯蔵ボトル中で+4℃で貯蔵される一方、増殖因子などの物質は、カスタムラック上に置かれた貯蔵バイアル中で-20℃で貯蔵される。
ACPS100は、例えば、加工の後並びに搬送及び/又は貯蔵の前に、細胞のバッチを冷凍するためのクライオ冷凍機460を備える。ACPS100の図示した実施では、冷凍器460はGrant(商標) EF600M Controlled Rate Freezerであり、これは、トレイ、プレート、チューブ、及び同種のものなどの様々な容器314中の細胞及び他の物質及び製造物(試薬及びアッセイなど)の制御された冷凍又は加熱のために使用される。冷凍器460は、冷凍のために小バイアルを保持するように構成されており、デッキ910の左端部に配される。バイアル中の細胞培養物及び/又は他の物質の冷凍は、核生成によって補助することができ、核生成は、使用されている凍結保存用溶液に応じて(例えば、約-10℃での)冷凍加工の間の正しい時点で(冷凍器モジュールに貯蔵された)冷凍されたチップをバイアル中の細胞溶液に浸すことによって達成される。クライオ冷凍機460は、クライオ冷凍機460の大部分がデッキ910の下に配されるように凹部175に備え付けられている。クライオ冷凍機460のこの配置は、クライオ冷凍機460の存在によってデッキ910上で作られる凝縮の量を低減し、クライオ冷凍機460によって生成された熱がエンクロージャ110の外側に消散することを可能とする。クライオ冷凍機460は温度センサを備え、温度センサは、クライオ冷凍機460によって行われる冷凍又は加熱操作の制御ユニット1000による制御のために制御ユニット1000に接続されている。
一部の実施では、ACPS100はまた、冷凍器154に加えて、又はその代わりに、-86℃の冷凍器もデッキ910上に備える。
梱包モジュール
一部の実施では、ACPS100は、貯蔵及び/又は搬送及び輸送のために最終加工された細胞培養製造物を調製2600するための梱包モジュール950(図2に図式的に示されている)を備える。図示した実施では、梱包モジュール950は、エンクロージャ110の外側に配されており、且つアクセスポート(これより示す)によってエンクロージャ110に接続されている。梱包モジュール950は、回収2400(図28に関して以下にさらに詳細に説明する)の間にそこに注入された加工された細胞培養物を有していた、加工された細胞培養物の容器314、例えば輸送トレイ340(例えば、図示した実施では、Petaka(商標)カセット)を受け取る。梱包モジュール950は、適切な極低温の温度と共に搬送するため又は材料を保存するために適切な容器又は箱(例えば、クライオバイアル884用の液体窒素、又は輸送トレイ340用の冷パック又は37℃の熱パック)の中に輸送トレイ340又はクライオバイアル884を入れるように構成されている。梱包モジュール950は、例えばドライシッパー中の、クライオバイアル884などのクライオ容器用、又は絶縁ボックス中の輸送トレイ340用のホルダを備える。例えば、最終加工された細胞培養物を積んだ輸送トレイ340を、+0℃~+37℃の範囲内の温度、例えば、0℃、+4℃、室温、又は+37℃で輸送するために梱包することができる。一部の実施では、梱包モジュール950はまた、加工試料の適切な特定用情報、及び場合によっては加工情報を容器にラベル付けするために構成されていてもよい。一部の実施では、梱包モジュール950はまた、搬送の準備ができた容器に宛先を付すようにも構成されてよい。一部の実施では、梱包モジュール950は、エンクロージャ110の内側に部分的に含まれ、且つ回収モジュールの一部を含んでもよい。クライオ冷凍機460は梱包モジュール950の一部分であってもよいことが想定される。冷凍されたクライオバイアル中の最終細胞製造物を貯蔵するためのより大容量のクライオ冷凍機が梱包モジュール950の一部分であってもよいことも想定される。バイアル中又は他の容器中に最終生成物(例えば、抗体、生物学的物質、タンパク質、及び同種のもの)を貯蔵するための冷蔵庫、冷凍器又は他の環境制御貯蔵モジュールが梱包モジュール950の一部分であってもよいことも想定される。
デッキ910はまた、当業者によって理解されており、本明細書には記載しない様々な他の部品を備える。
これより図3B、4及び9を参照して品質管理エリア400を説明する。品質管理エリア400は、フローサイトメータ470などの様々な品質管理モジュール、及び、加工された細胞の品質を検証するための一体化された顕微鏡及びプレートリーダモジュール472を備える。品質管理モジュールは、細胞の同一性、細胞の純度、細胞の分化能力、及び細胞培養物の無汚染(本出願では無菌性と称される)、及び同種のものの検証などの品質管理基準が可能であり、これらの一部又は全ては、GMP規制に適合するために必要とされる。品質管理モジュールの構成は様々であってよく、例えば、2つ又はそれより多くのモジュールを1つのユニットとして一緒に構成してもよいし、又は別々のユニットで提供してもよい。
フローサイトメータ470は、細胞培養物中の特定種類の細胞を同定し、その数をカウントする。フローサイトメータ470は、同一性及び純度のために細胞数、細胞生存能力及び他の細胞マーカーを測定するために使用される。フローサイトメータ470を使用して、細胞直径及び細胞密度などの細胞の特徴を、特定の細胞マーカーの発現、細胞純度(細胞及び/又はデブリの総数に対する所望の細胞種の数の比)、及び同種のものと共に解析することができる。フローサイトメータ470は、細胞加工の間及び/又は終了時、細胞加工が完了した後に細胞培養物の加工内管理解析のために使用することができる。フローサイトメータ470は、1又は複数の種類の解析を行うように構成されていてもよく、且つ、多数の試薬容器471がフローサイトメータ470に隣接して置かれて、フローサイトメータ470が解析機能を行うことを可能とする。ロボットモジュール700のロボットアーム705は、デッキ910から細胞加工容器314を拾い上げ、解析のためにそれをフローサイトメータ470のプラットフォームに置くように、及び、解析のために必要とされる時に試薬を細胞培養トレイに加えるために試薬容器471を操作するように構成されている。一部の実施では、フローサイトメータ470は、細胞成長の進行を解析するため、及び、フローサイトメータ解析から得られたデータを使用して、次の継代のための時間及び/又は細胞加工の終了時間を予測するため(すなわち、所望の細胞数がいつ得られるかを予測するため)に、細胞加工の間に使用される。フローサイトメータ470は、バーコード、例えば、細胞加工容器314の中の特定の試料(複数可)のための特定用情報などの細胞加工容器314上のバーコードを読み取るように構成されている。フローサイトメータ470は、制御ユニット1000に接続されて、特定用情報と共に解析の結果を制御ユニット1000に送る。ACPS100の図示した実施では、フローサイトメータ470はMiltenyi MACSQuant Analyzer 10であるが、任意の好適なフローサイトメータを使用してもよいことが想定される。
顕微鏡及びプレートリーダモジュール472の図示した実施では、蛍光顕微鏡は、細胞密集度の読出しアッセイ及び同一性の読出しアッセイ(例えば、抗体マーカーの使用による)及び分化能力(例えば、神経幹細胞について、これは三分化能及び神経突起伸長の測定であり得る)、核型解析、及び同種のものなどのアッセイを行うために使用される一方、プレートリーダは、エンドトキシン、マイコプラズマ、タンパク質定量化、テロメラーゼ活性、増殖因子放出の定量化、及び同種のものについてのアッセイを行うために使用される。顕微鏡及びプレートリーダモジュール472の図示した実施では、蛍光顕微鏡を使用して、細胞密集度を測定し、細胞形態を解析し、細胞成長及び/又は分化パラメーターを測定及び解析し、細胞表面又は他のマーカーの発現を測定及び解析し、且つ/又は核型解析を行う。蛍光顕微鏡は、核型(karyotope)解析及び同種のものなどの解析を行うためにスペクトルカメラも備えてよい。
顕微鏡及びプレートリーダ472は、細胞加工の間及び/又は終了時、細胞加工が完了した後の細胞培養物の解析のために使用することができる。ACPS100の図示した実施では、モジュール472は、Molecular Devices i3x Reader及び蛍光顕微鏡法モジュールであるが、任意の好適なプレートリーダ及び顕微鏡法モジュールを使用してもよいことが想定される。顕微鏡は、本出願に示すモジュール472におけるようにプレートリーダと一体化されていなくてもよいこと、及びシステムは別々の顕微鏡及びプレートリーダモジュールを備えていてもよいことが想定される。ロボットモジュール700のロボットアーム705は、デッキ910から細胞加工容器314を拾い上げ、解析のためにそれをモジュール472のプラットフォームに置くように構成されている。モジュール472は、細胞加工容器の存在を検出するためのセンサを備える。顕微鏡及びプレートリーダモジュール472はまた、例えば、細胞加工容器314の中の特定の試料(複数可)の特定用情報などの細胞加工容器314上のバーコードを読み取るために、バーコードリーダ又は同種のものも備える。顕微鏡及びプレートリーダモジュール472は、制御ユニット1000に接続されており、特定用情報と共に解析の結果を制御ユニット1000に送るように構成されている。一部の実施では、顕微鏡及びプレートリーダモジュール472は、(例えば、形態及び/又は密集度測定による増殖速度によって)細胞成長の進行を解析するため、及び、解析から得られたデータを使用して、次の継代のための時間及び/又は細胞加工の完了時間を予測するため(すなわち、所望の細胞数がいつ得られるかを予測するため)に、細胞加工の間に使用される。
一部の実施では、ACPS100は、遺伝子組込み、診断(例えば、遺伝子突然変異の検出)、及びテロメラーゼ活性などの解析を行うためにPCR装置(図示せず)を備える。
一部の実施では、ACPS100は、微生物的な無菌性(微生物汚染物、例えば、細菌、細菌胞子、酵母、カビ、カビ胞子などの存在又は不存在)を判定するために微生物検出器を品質管理エリア500に備える。ACPS100に備えられ得る微生物検出器の例は、Biomerieux Industry(商標)によって製造されるScan RDI(登録商標)微生物検出器である。
フローサイトメータ470、顕微鏡及びプレーターリーダーモジュール(plater reader module)472、及びPCR装置以外の品質管理モジュールがACPS100に備えられてもよいことが想定される。各品質管理モジュールは、解析結果を制御ユニットに送るために制御ユニットに接続されている。本出願に示す品質管理モジュール(フローサイトメータ470、顕微鏡又はプレートリーダモジュール472)の1又は複数を割愛してもよいことが想定される。
粒子カウンタ
ACPS100は、エンクロージャ110の内側の粒子数を数えるための粒子カウンタ190を備える。上述したように、図示した実施では、エンクロージャ110はクラス10の環境として維持され、且つ、GMPガイドラインに適合した細胞加工を行うために設計されている。図示した実施では、粒子カウンタ190はLight House SOLAIR3350であるが、任意の好適な粒子カウンタ190を使用してもよいことが想定される。粒子カウンタ190は、制御ユニット1000に通信可能に連結されており、制御ユニット1000が、粒子カウンタ190から受け取った粒子数データに基づいて自動化された細胞加工を制御することを可能とする。例えば、一部の実施では、粒子数が特定の予め定められた閾値を超えた時に、粒子数が予め定められた閾値より低くなるまで減少したことが判定されるまで、細胞加工容器はインキュベータ152から取り出すことができないか、又は加工の特定のステップを実行するために開くことができない。粒子カウンタ190は、細胞加工の間の汚染及び交差汚染のリスクを低減する。
ACPS100は、温度計、湿度センサ、及び同種のものなどの1又は複数の他の環境センサも備えてよいことが想定される。
廃棄物
図2、3A~3C、及び12に関して、廃棄物レセプタクル156は、エンクロージャ110に対して陰圧に維持されるようにポンプ194(図2に図式的に示されている)に接続されている。ポンプ194は、廃棄物レセプタクル156から、HEPAフィルタにはめ込まれたポート192(図2に図式的に示されている)を通じて部屋の中に(又は建物のHVAC返りダクトの中に)空気を連続的に押し入れることによって、粒子が廃棄物レセプタクル156からエンクロージャ110の中に移動することを防止する。廃棄物レセプタクル156は、固体廃棄物の廃棄のために構成されている。固体廃棄物及び容器中の液体廃棄物を廃棄物レセプタクル156に処分してもよいことが想定される。
エンクロージャの底壁212は、廃棄物レセプタクル156に流体接続された2つの廃棄物ポート176、178(図3C)を有する。廃棄物レセプタクル156に接続された1つ又は2つより多くの廃棄物ポートが存在してもよいこと、又は複数の廃棄物レセプタクル156が存在してもよいことが想定される。廃棄物レセプタクル156はまた、廃棄物レセプタクル156をエンクロージャ110に対して充分な陰圧に維持して任意の粒子が廃棄物レセプタクル156からエンクロージャ110の中に移動することを防止するために、ポンプ194(図2に図式的に示されている)に接続されたポート192(図2に図式的に示されている)も有する。
図示した実施では、ACPS100は、図12に図式的に示すように、エンクロージャ110の内側の空間から廃棄物ポート176を通じて廃棄物レセプタクル156の最上部に画定されたポート487に延びた廃棄物シュート480、及び、エンクロージャ110の内側の空間から廃棄物ポート178を通じて廃棄物レセプタクル156の右側壁に画定されたポート488に延びた廃棄物シュート482を備える。図示した実施では、シュート480、482の上端部は開いており、且つエンクロージャ110の内側の空間に配されている。図3A~12の実施では、各シュート480、482の上部分は概ね鉛直に延び、次いで各シュート480、482は廃棄物レセプタクル156に向かって傾斜している。シュート480、482の端部及び/又はエンクロージャの底壁212の廃棄物ポート176、178及び/又は廃棄物レセプタクル156のポート487、488は、廃棄物レセプタクル156の取り外し及び交換のために閉じることができる。
廃棄物シュート480、482の開口部は、汚染のリスクを低減するために、デッキ910の中央から離して、及び加工ステーション及び試薬容器のほとんどから離して配される。シュート480、480の上端部は通常閉じられており、廃棄物の排気のために必要とされた時のみ開かれてもよいことが想定される。図示した実施では、シュート480の上端部は、エンクロージャの底壁212よりも高くに、及び培地注入ステーション420及び同種のものなどのデッキ910上の部品よりも鉛直方向に高くに配されている。シュート480、482の上端部は、デッキ910上の部品より低くに配されてもよいことが想定される。シュート480、482の傾斜部分は、シュート480、482の中に落とされた内容物のはね戻りのリスクを減少させる。エンクロージャ110に対する廃棄物レセプタクル156の陰圧もまた、廃棄物のはね戻り及び任意の廃棄物粒子の加工エリア400の中への移動を防止するのを助ける。
図25~27は、廃棄物レセプタクル156’及び廃棄物シュート480’及び482’の別の実施を示す。廃棄物シュート480’及び482’は、廃棄物レセプタクル156’の中へと鉛直下向きに延びており、これは、廃棄物レセプタクル156に向かって下向きに傾斜した廃棄物シュート480、482とは対照的である。廃棄物レセプタクル156’は、外部容器486’の内側に入れ子になった内部容器484’を備える。内部容器484’は、外部容器486’の内側でスライディングプラットフォーム485’に取り付けられているため、内部容器484’は、外部容器486’の外へ内部容器484’をスライドさせることによって容易に空にすることができる。廃棄物シュート480’は、エンクロージャの底壁212のポート176を通じて、外部容器486’の上部分に画定されたポート487’に延びている。廃棄物シュート482’は、エンクロージャの底壁212のポート178を通じて、外部容器486’の上部分に画定されたポート488’に延びている。内部容器484’は、内部容器484’が外部容器486’内に完全に挿入された時にポート487’、488’及びシュート480’、482’に位置合わせされるポート(図示せず)を有する。
廃棄物シュート480、482、480’、482’は、廃棄物がシュート480、482、480’、482’を通って廃棄物レセプタクル156、156’に移動する際に廃棄物がシュートの壁に接触するのを防止するために概して充分な大きさの断面積を有するように構成される。
ACPS100はまた、液体廃棄物レセプタクル158(図2に図式的に示されている)も備える。液体廃棄物レセプタクル158は真空下にあり、エンクロージャ110及びACPS100が配される部屋に対して陰圧に維持される。エンクロージャ110の内側から液体廃棄物レセプタクル158に接続する液体廃棄物ラインは、制御ユニット1000の制御下でシステムによってエタノール及び漂白剤で自動的に滅菌することができる。一部の実施では、液体廃棄物ラインは、デッキ910上に配された液体滅菌ステーション556(図4)に直接的に繋がっている。液体廃棄物ラインからの液体廃棄物は、液体滅菌剤ステーション556に含有される液体滅菌剤と共に液体滅菌剤ステーション556から送り出される。
一部の実施では、液体廃棄物は、ロボット吸引器812によって取り出され、液体廃棄物レセプタクル158の中に処分される。一部の実施では、液体廃棄物は、閉じた容器の中に置かれ、液体廃棄物を含有する閉じた容器は、固体廃棄物と共に廃棄物レセプタクル156の中に処分される。
固体及び液体の両方の廃棄物レセプタクル156、158は、エンクロージャ110が置かれた部屋の中にいる人間によって直接的に除去及び交換され得る。廃棄物の除去中に部屋からエンクロージャ110の中に空気又は粒子が入るのを防止するために、安全性機構は、廃棄物レセプタクル156、158とエンクロージャ110との間のアクセスポートが密閉されるまでは廃棄物レセプタクル156、158を除去できないことを確実にする。
液体廃棄物レセプタクル158は、液体レベルセンサを備え、液体レベルセンサは、制御ユニット1000に接続されており、且つ液体廃棄物レセプタクル158の中の液体レベルを検出するように構成されたている。例えば、液体廃棄物レセプタクル158の中の液体レベルセンサは、液体レベルが閾値レベルを上回った時にこれを検出し、制御ユニットに信号を送って、液体廃棄物レセプタクル158を空にするように制御ユニット1000に警告するように構成されていてもよい。一部の実施では、液体廃棄物が所望の生成物(例えば、細胞によって分泌された増殖因子、抗体、又は他の生物学的物質)を含有する場合、液体廃棄物をさらなる加工のために残して、所望の生成物を単離してもよい。例えば、所望の増殖因子が細胞によって産生される場合、細胞が培養された培地をロボット吸引器812によって回収し、その後の加工のために残して、培地から増殖因子を単離することができる。
ロボットモジュール
図3B、4及び5に最もよく見られるように、ロボットモジュール600はロボットアーム605を有し、ロボットアーム605は、エンクロージャ110の底壁212に対して上下(Z方向の動き)に動くことができる。底壁212に対して平行な平面内で、ロボットアーム605はまた、右側壁208に対して平行な方向(Y方向の動き)及び前壁202に対して平行な方向(X方向の動き)にも動くことができる。ロボットモジュール600のロボットアーム605は、ロボットアーム605によって運ばれる物体(容器、及び同種のものなど)の大きさを感知するためのセンサを備え、該センサは、制御ユニット1000に信号を送るために制御ユニット1000に接続されている。ロボットモジュール600はまた、ロボットアーム605のX、Y及びZ方向の位置を検出するためのセンサも備え、該センサは、ロボットアーム605の現在の位置を指し示す信号を制御ユニット1000に送るために制御ユニット1000に接続されている。ロボットアーム605は、チューブ及びボトルのキャップの把持及び回転を促進するためにグリッパを備える。図示した実施では、ロボットモジュール600は、Peak Analysis and Automation Inc.によって製造されるPAA PronedX Armである。ロボットモジュール600は、底壁212の下に位置する遠心分離機150の底部に至るまでロボットモジュール600が届くように、エンクロージャ110の底壁212の凹部171の底部を形成する棚上に配される。ロボットモジュール600の高さは、多くの類似の特徴を有する他のロボットモジュール700の高さより大きいため、ロボットモジュール600を使用して、遠心分離機150の底部に至るまで遠心分離機150の内部にアクセスすることができる。ロボットアーム605は、デッキ910の右側にある物体にアクセスするために使用される。ロボットアーム600は、遠心分離機150とデッキ910との間でホルダ及びチューブを輸送するため、及びデッキ910の右側に配される容器のキャップ及びカバーを操作するために使用される。一部の実施では、ロボットアーム605は、ピペッタ又は吸引器として機能するように構成されていてもよいことが想定される。ロボットモジュール600は、ロボットアーム605によって運ばれる異なる容器及び同種のものを追跡するためにバーコードスキャナを備えてもよいことが想定される。一部の実施では、ロボットアーム605は、鉛直軸602に関して回転して、底壁212に対して平行な平面内で円運動するように構成されていてもよいことも想定される。
図4に最もよく見られるように、ロボットモジュール700は、ロボットアーム705を有し、ロボットアーム705は、エンクロージャ110の底壁212に対して上下(Z方向の動き)に動くことができる。底壁212に対して平行な平面内で、ロボットアーム705は、右側壁208に対して平行な方向(Y方向の動き)及び前壁202に対して平行な方向(X方向の動き)に動くことができる。ロボットモジュール700は、レール710にスライド可能に取り付けられており、レール710は、前壁202に対して平行なX方向に沿って延びているため、ロボットアーム705は、(側壁206、208に対して平行な)Y方向よりもX方向に沿ってより大きい距離を動くことができる。したがって、ロボットモジュール700のロボットアーム705は、Y方向におけるよりもX方向においてより大きい範囲の動きを有する。ロボットモジュール700は、ロボットアーム705のX、Y及びZ方向の位置を検出するためのセンサを備え、該センサは、ロボットアーム705の現在の位置を指し示す信号を制御ユニット1000に送るために制御ユニット1000に接続されている。ロボットアーム705は、エンクロージャ110の幅(X方向)及び長さ(Y方向)のほぼ全てを通じて物体にアクセスし、物体を輸送するために使用される。ロボットモジュール700のロボットアーム705は、ロボットアーム705によって運ばれる物体(細胞加工トレイ、培地及び試薬容器、及び同種のものなど)の大きさを感知するためのセンサを備え、該センサは、制御ユニット1000に信号を送るために制御ユニット1000に接続されている。ロボットアーム705は、デッキ910、貯蔵エリア300、及び品質管理エリア500の間で物体を輸送するために使用される。ロボットモジュール700はまた、インキュベータ152、傾斜モジュール440、磁気分離モジュール430、培地注入ステーション420、及びデッキ910上の同種のもの、顕微鏡及びプレートリーダ472、フローサイトメータ470、及び同種のものへ及びこれらから物を移送するために、及び、固体廃棄物レセプタクル156の中に廃棄物を捨てるためにも使用される。図示した実施では、ロボットアーム705は、Peak Analysis and Automation Inc.によって製造されるPAA PronedX Armのロボットアームである。
一部の実施では、ロボットアーム705は、チューブ及びボトルのキャップの把持及び回転を促進するためにグリッパを備えてもよいことが想定される。一部の実施では、ロボットアーム705は、ピペッタ又は吸引器として機能するように構成されていてもよいことが想定される。一部の実施では、ロボットモジュール700は、ロボットアーム705によって輸送される異なる細胞加工トレイ、培地及び試薬容器、及び同種のものを追跡するためにバーコードスキャナを備えてもよいことが想定される。一部の実施では、ロボットアーム705は、鉛直軸702に関して回転して、下壁212に対して平行な平面内で円運動するように構成されていてよいことも想定される。
図3B、4、5、13~16及び19を参照してこれよりロボットモジュール800及び820を説明する。概して、ロボットモジュール800、820は、デッキ910に含まれる多くの種類の部品を操作(キャップの取り外し、輸送、回転、ピペット、吸引など)するために使用される。
図4に最もよく見られるように、ロボットモジュール800及び820は、フレーム840に取り付けられており、フレーム840は、デッキ910の上でその外周の辺りで延びている。図3B、4及び5に最もよく見られるように、フレーム840は、デッキ910の各角部において上向きに延びた4つの鉛直フレーム部材841、及び4つの水平フレーム部材842、844、846、848を備える。前水平フレーム部材842は、前鉛直部材を接続し、且つ前及び後エンクロージャ壁202、204に対して平行にデッキ910の前部にわたって越えて延びる。後水平フレーム部材844は、後鉛直部材を接続し、且つ前及び後エンクロージャ壁202、204に対して平行にデッキ910の後部にわたって短手方向に延びる。右水平フレーム部材846は、デッキ910の右側に沿って延び、且つ前フレーム部材842の右端部を後フレーム部材844の右端部に接続する。左水平フレーム部材848は、デッキ910の左側に沿って延び、且つ前フレーム部材842の左端部を後フレーム部材844の左端部に接続する。
図4に関して、ロボットモジュール800は、ロボットモジュール820の左側に取り付けられている。ロボットモジュール800は、一対のレール802を備え、一対のレール802は、前フレーム部材842と後フレーム部材844との間に懸架されている。図示した実施では、図19に見ることができるように、ロボットモジュール800は、10個のロボットアーム804を有し、これらのロボットアーム804は、レール802に取り付けられ、そこから下向きに延びている。10個のロボットアーム804のそれぞれは、特定の機能を行うように構成されている。レール802は互いに対して固定されており、左フレーム部材848とロボットモジュール800の右側に取り付けられたロボットモジュール820との間でフレーム部材842、844に沿って短手方向(X方向)に一緒にスライドすることができる。5つのロボットアーム804は、10個全てのロボットアーム804が同じX方向の位置を有するように各レール802に取り付けられている。Y方向では、連続的なロボットアーム804は、左及び右レール802に交互に取り付けられている。レール802に取り付けられたロボットアーム804は、デッキ910の前及び後ろに向かってレール802に沿って長手方向にスライドすることができる。各ロボットアーム804はまた、デッキ910の面に向かって及び該面から離れるように上下に動くこともできる。したがって、ロボットモジュール800は、各ロボットアーム804がそのために構成されている機能を行うために、デッキ910のほとんどにアクセスすることができる。10個全てのロボットアーム804が単一のレール802に取り付けられていてもよいことが想定される。
図19は、ACPS100の1つの実施におけるロボットモジュール800の構成図である。ロボットモジュール800は、レール802に取り付けられた1つのロボット吸引器/グリッパ812、8つのロボットピペッタ814、及び1つのプレートグリッパ816を有する。ロボットモジュール800は、10個より多い又は少ないロボットアーム804を備えてもよいこと、及び、ロボットアーム804の1つ又は複数は、本明細書に記載される機能とは異なる機能のために構成されていてもよいことが想定される。例えば、ロボットアーム804の1つは、バーコードを読み取るように、pHセンサとして、又は粒子センサとして、構成されていてもよい。
図13~15を参照してこれよりロボット吸引器/グリッパ812を説明する。ロボットグリッパ/吸引器812は、本体部862及び中心軸861を有し、中心軸861は、吸引器/グリッパ812のための鉛直運動の軸線を画定する。グリッパ/吸引器812は、中心軸861に沿ってレール802に対して上下に動く。
本体部862は、基部864及びチューブ868を有し、チューブ868は、基部864から軸線方向下向きに延びている。本体部の中心軸861は、基部864及びチューブ868の中心軸と同軸である。基部864は、上面863及び下面865を有する。ニップルの形態のチューブ866は、上面863から上向きに延びている。チューブ866の中央開口部は、基部864の内部に形成された導管(図示せず)を介してチューブ868の中央開口部に接続されている。ホース867(図13~15に図式的に示されている)がチューブ866の周りに接続されており、ホース867は、物体の把持のための吸込みを提供するため又は吸引を行うために、チューブ866をポンプ(図示せず)又はチューブ868からの排気のためのポンプされるラインに接続する。
4つのプロング872は、基部864の下面865から下向きに延びている。プロング872は、チューブ868の周りの円周に分布している。プロング872は、チューブ868から間隔をおいて配されており、且つ下面865の外縁の近くに配されている。プロング872の数は、2つ、3つ、又は、4つより多くてもよいことが想定される。各プロング872は、支点に対して旋回可能に基部864に取り付けられており、半径方向内側のポジション(図14)から半径方向外側のポジション(図15)に中心軸861に関して半径方向に外向きに旋回することができる。図14に最もよく見ることができるように、各プロング872は、基部864から下に延びている上部分874、下部分876、及び上部分874を下部分876に接続する中央部分878を有する。プロング872が半径方向内側のポジションに配されている時、上部分874は、概して軸線方向に基部864から下向きに延びており、中央部分878は、上部分から下部分876に下向き且つ軸線方向に内向きに延びており、下部分876は、概して軸線方向に中央部分878から下向きに延びている。
プロング872の形状により、プロング872は、広範囲の直径の物体(例えば、チューブ及びバイアルなど)を把持すること、及び図30Aに示すように狭い隙間空間に配された物体を把持することができる。把持のために、比較的小さい直径の物体は、図14に見ることができるようにプロング872の下部分876によって篏合される一方、比較的大きい直径の物体は、図15に見ることができるように上部分874によって篏合される。各プロング872の下部分876において、軸線861に向かって半径方向内側に向いた面は、物体の把持を促進するための溝面880である。止めねじ882は、半径方向に各プロング872の上部分874を通って延びている。止めねじ882により、プロング872が、図15に見ることができるように各々の半径方向外側のポジションに外向きに旋回する時に、プロング872は、比較的大きい直径の物体をプロング872の上部分874の間に把持することができる。図示した実施の吸引器/グリッパ812は、小さいチューブのグリッパとして非常に効果的である。例えば、図15に関して、本発明の実施の吸引器/グリッパ812では、プロング872は、隣接するチューブ間に2.3mmの隙間886を有するように並べられた8.2mmの直径のチューブ884のアレイから8.2mmの直径を有する単一のチューブ884を把持できるように構成されている。
プロング872は、モーター899(図13に図式的に示されている)に機能可能に接続されており、モーター899は、異なる直径及び/又は幅の物体を把持するためにプロング872の半径方向のポジションを制御するように作動させることができる。各プロング872は、ブラケット890に接続されたその上部分874を有し、ブラケット890は、基部864に画定されたスロット(図示せず)を通って基部864の上に延びている。ブラケット890の下端部は、ピン892によって基部864に回転可能に取り付けられている。したがって、ブラケット890は、ピン892に関して(軸線861によって画定される半径方向及び軸線方向に対して垂直に延びる軸に関して)回転可能である。ブラケット890の上部分は、それに回転可能に取り付けられたローラー894を有する。ローラー894は、ピン892の軸線に対して平行な軸線に関して回転可能である。ローラー894は、軸線861に沿って軸線方向に延びる中央に取り付けられたシャフト896の外面と接触している。シャフト896の直径は、上方向又は下方向に連続的に増加する。シャフト896は、作動シャフト898を回転させることによって基部864に対して上向き又は下向きに動かすことができる。作動シャフト898は、軸線861に関するその回転のためにモーター899に接続されている。モーター899はアクスル912を回転させ、アクスル912は、軸線861に関して作動シャフト898を回転させるためにエンドレスベルト914によって作動シャフト898に機能可能に接続されている。シャフト896が上向き(又は下向き)に動くと、シャフト896の外面に接触しているローラー894は、シャフト896の直径の変化により半径方向に内向き又は外向きに押される。ローラー894が半径方向に外向き又は内向きに動く時に、ピン892に取り付けられたブラケット890の下部分はそれに伴ってピン892に関して回転し、軸線861に向かって又は軸線861から離れるようにプロング872の回転を引き起こす。したがって、プロング872は、内向きに回転して物体を把持し、且つ外向きに回転して把持した物体を解放することができる。図示した実施では、ローラー894が半径方向に外向きに動く時に、対応するプロング872は、軸線861から離れるように半径方向に外向きに旋回する。ピン894の周りに取り付けられたトーションばね899は、プロング872が図14の半径方向内側のポジションに配されるポジションに、取付けブラケット890を偏らせる。一部の実施では、モーター899は、アクスル912の回転の方向がモーター899に供給された電流の極性に依存するように構成されている。したがって、軸線861に関する作動シャフト898の回転の方向は、モーター891に対する電流の極性を反転させることによって反転させることができる。
図示した実施では、モーター899は、プロング872の半径方向のポジションを制御するように構成されている。モーター899は、軸線861に向かう方向にプロング872が及ぼす把持力を制御してもよいことが想定される。プロング872は、ばねで留められていなくてもよいこと、又は半径方向内側のポジションの代わりに半径方向外側のポジションに向かって偏らせてもよいことがさらに想定される。プロング372の形状は、本出願に示したものとは異なっていてもよいことが想定される。プロング372の取付け及びプロング372を旋回させるための作動機構は本出願に示したもの以外であってもよいことも想定される。
図15に見ることができるように、ロボット吸引器/グリッパ812は、細胞加工容器314などの容器から液体を吸引するためのロボット吸引器として機能するように吸引器チップ870と共に使用することができる。作動中に吸引が所望される時に、ロボットアーム804は、デッキ910上に配された吸引器チップホルダに向かって下向きに延びる。ロボットアーム804の位置が、選択された吸引器チップ870を有する吸引器チップホルダの選択された位置上になると、ロボットアーム804は下がり、プロング872は外向きに旋回してプロング872の間にチップ870を受け取り、選択された吸引器チップ870の内腔の上端部の内側にチューブ868を渡す。次いで、プロング872は内向きに旋回して止めねじ882でチップ870を把持する。チップ870がプロング872によって把持されると、ホース867の排気が(ホース867とポンプ又はポンプされるラインとの間の接続を開くことによって)開始されて、チューブ868の周りの所定の場所に固定してチップ870を保持する。チップ870は、チューブ868の外面に対して密閉される。チップ870は、基部864の下面865に対して密閉するように構成されていてもよいことも想定される。次いで、ロボット吸引器/グリッパ812は、吸引される容器の上の位置に動かされて、その中に下げられて、容器の内容物を吸引する。容器から吸引された液体は、吸引器チップ870を通じてチューブ868の中に、次いでチューブ866及びホース867を介してポンピングライン(図示せず)の中に吸い上げられる。一部の実施では、ロボット吸引器/グリッパ812は、吸引された液体が、吸引が為された容器の中に流れ戻ることを防止するためにワンウェイバルブデバイス(図示せず)を備える。吸引が完了した後に、吸引器チップ870は処分される。吸引器チップ870の廃棄のために、ロボットアーム804は、廃棄物レセプタクル156に接続された廃棄物シュート480、482の1つの上に配置され、ホース867とポンプ又はポンプされるラインの接続が切られる。チップ870の内側の圧力がゆっくりと平衡に至ると、チップ870は解放され、廃棄物レセプタクルの156中に落下する。ポンプからのホース867の流体接続が切られた後に予め定められた時間内にチップ870がチューブ868から解放されない場合、ロボットアーム804が動かされて、吸引器チップ870の外側の滅菌された部分をシュート480、482の壁に対して穏やかにタップし、それによってチューブ868からチップ870を解放する。
図示した実施では、チューブ866の真空又はポンピングは、吸引器チップ870の拾い上げと同じレベルに吸引の間維持される。しかしながら、チューブ866のポンピングは、容器からの吸引前の吸引器チップ870の把持のためとは異なって吸引の間に調節されてもよいことが想定される。一部の実施では、吸引されることになる容器はダウンホルダを備え、それにより、容器が吸引器チップに接着することを防止し、それによって容器の内容物のみが吸引器チップ870の中に吸い込まれることを確実にする。(図11A~11Dは、輸送トレイ340(例えば、Petaka(商標)トレイ)の形態の容器のためのダウンホルダ446を示す。)
使用される吸引器チップ870は、汚染を低減するために、滅菌されており、且つ使い捨て可能である。滅菌された使い捨て可能な吸引器チップ870は、各バッチの加工の間又は吸引される異なる物質の加工の間に交換される。吸引器チップ870からの吸引された内容物の逆流又はドリップによる交差汚染の可能性は、吸引器チップ870が処分されるまでチューブ868のポンピングを続けてチップオリフィス874(図15)を通じた連続的な陰圧を維持することによってさらに低減される。チューブ868及び866並びにホース867の内部通路は、デッキ910上に設けられた滅菌ステーション556(図4)から滅菌剤を吸引することによって所望により又は定期的な間隔で滅菌することができる。
図示した実施では、排気されるチューブ866、868とのプロング872の一体化により、チューブ868の周りのチップ870のより効率的且つ迅速な取付けを確実にすることによって吸引器/グリッパ812は吸引器としてより効果的に機能する。プロング872はさらに、吸引器と同じロボットアーム804を使用して様々な物体の把持を可能とする。一体化された吸引器/グリッパ812は、空間を節約すると共に、汎用的且つより効果的である。ACPS100は、本出願に示すものとは異なって構成されたロボット吸引器を備えていてもよいことが想定される。プロング872は割愛されてもよいこと、及び、基部864を有する本体部862、並びにチューブ866及び868を有するロボットアーム804は、本出願に示す一体化された吸引器/グリッパの代わりに吸引器としてのみ機能してもよいことが想定される。
ロボットモジュール800はまた、8つのロボットピペッタ814(図19に図式的に示されている)を有し、ロボットピペッタ814は、細胞加工容器314などの容器から液体を吸引するため及び該容器の中に液体を分注するために、滅菌された使い捨て可能なピペットチップ(図示せず)を保持することができる。ロボットピペッタ814によって容器から吸引された液体は、滅菌された使い捨てチップの中に吸い上げられ、その後に別の容器の中に分注されるか、又は滅菌ステーション556の液体廃棄物レセプタクル158の中に処分されることができる(次いで、それは液体廃棄物レセプタクルの中にポンプで排出される)。図示した実施では、ピペットチップはまた、濾過膜も備える。したがって、ロボットピペッタ814は、加工の間の汚染のリスクを低減するように構成されている。濾過膜は割愛されてもよいことが想定される。図示した実施では、ロボットピペッタ814は、HAMILTON(商標) STAR Lineピペッタであり、HAMILTON(商標)の300μl、4ml及び5mlの導電性無菌フィルタの使い捨てピペットチップと共に使用するために構成されている。図示した実施では、ピペットチップは、1回で5mlまでの液体を分注するように構成されているが、チップは、300μl、4ml及び5ml以外の異なる体積の液体のために構成されていてもよいことが想定される。
一部の実施では、ロボットピペッタ814は、液体密度を検出することができ、したがって、ピペットチップが挿入された容器中の液体の密度の変化を検出するために使用することができる。これにより、容器中の液体レベルを測定すること、又は、遠心分離された細胞培養試料のペレット上の上清を吸引することによりペレット及び上清を別々に回収することなど、様々な密度の液体を互いに分離することが可能となる。
ロボットピペッタ814は、様々な他の機能を行うために使用することができる。例えば、傾斜モジュール440に取り付けられた輸送トレイ340への細胞培養物の注入は、ロボットピペッタ814を使用して行われる。別の例としては、ロボットピペッタ814はまた、ロボットピペッタ814によって保持された適切な冷凍されたピペッタチップをクライオ冷凍機460上に置かれたバイアルの中に挿入することによって、クライオ冷凍機460上に置かれたバイアル中の細胞培養物を冷凍するための核生成を開始させるためにも使用することができる。
図示した実施では、ロボットアーム804の1つは、分注用ヘッド(図示せず)をロボットアーム804に取り付けることによって試薬分注器818としてさらに構成されている。分注用ヘッドは、流体管(図示せず)及び蠕動運動ポンプ(図示せず)を介して、エンクロージャ110の外側、例えばアイソレータ120中又はそれに接続された冷却器160中に貯蔵された供給容器に接続される。試薬分注器818は、中止する必要なく連続的な様式でより大容量の流体を分注するため及び分注される流体をピペットチップに再注入するために働く。したがって、試薬分注器818は、エンクロージャから試薬容器836をその注入のために除去する必要のない、エンクロージャ110内に配される容器836などの試薬容器の効率的且つ迅速な注入のために使用することができる。一部の実施では、試薬分注器818は、培地を分注するために使用することができる。
ロボットモジュール800の1つのロボットアーム804は、輸送トレイ340、ピペットチップホルダ418、遠心チューブホルダ410、及び同種のものなどの物体を把持及び輸送するためのグリッパ816として機能するように構成されている。図示した実施では、グリッパ816は、SBSフォーマットの容器及び類似の長さ及び幅寸法を有する他の物体を把持するように構成されたHamilton(商標) iSWAP Gripper(Hamilton Robotics、Reno、NV、USA)である。プレートグリッパ816は、様々な寸法の水平方向に延びた物体を保持するように構成されていてもよいことが想定される。
図4及び16を参照してこれよりロボットモジュール820を説明する。ロボットモジュール820は、前フレーム部材842と後フレーム部材844との間に懸架されたレール822を備える。図16に関して、1又は複数のロボットアーム824は、レール822から下向きに延びることができる。レール822は、ロボットモジュール800と右フレーム部材846との間でフレーム部材842、844に沿って短手方向にスライドすることができる。レール822に取り付けられたロボットアーム824は、デッキ910の前及び後ろに向かってレール822に沿って長手方向にスライドすることができる。各ロボットアーム824は、ロボットアーム824によって画定される鉛直軸826に沿ってデッキ910の面に向かって及び該面から離れるように鉛直方向に上下に動くことができる。したがって、ロボットモジュール820は、デッキ910のほとんどにアクセスすることができる。さらには、各ロボットアーム824はまた、軸線826に関して回転可能である。
図示した実施では、ロボットモジュール820は、4つのロボットアーム824を備え、4つのロボットアーム824のそれぞれは、回転するキャップグリッパ830として構成されており、これを以後便宜上デキャッパ830と称する。各デキャッパ830は、デッキ910上にある様々なチューブ及びボトルのキャップの開閉のために鉛直軸826に関して回転する。グリッパ830は、容器からキャップ及びカバーをねじを回して抜き、容器にキャップ及びカバーをねじを回して入れ、且つデッキ910にわたって容器を動かす。
図16に関して、各デキャッパ830は、中心軸831を画定する本体部832を備える。本体部832は、軸線831が軸線826と同軸になるように及び本体部832が軸線826に関して回転可能であるように、ロボットアーム824に取り付けられている。各ロボットアーム824は、本体部832の外面(軸831から離れる方に向いた面)に、支点に対して旋回可能に接続された4つのプロング834を備える。プロングの数は、2つ、3つ、又は、4つより多くてもよいことが想定される。プロング834は、全て同じ寸法を有する代わりに異なる寸法を有してもよいことがさらに想定される。プロング834は、キャップ及びチューブなどの物体の把持及び解放のために半径方向に内向きに及び外向きに旋回するように制御することができる。キャップの取り外しのために、ロボットアーム824は、キャップを取り外される容器836のキャップ838に向かって下げられ、プロング834が外向きに旋回する。プロング834がキャップ838の周りに配されると、プロング834は半径方向に内向きに旋回して、キャップを取り外される容器836のキャップ838を把持する。次いで、ロボットアーム824は適切な方向に回転されて、容器836からキャップ838をねじを回して抜く。理解されるように、容器838は、容器836上に置かれたキャップ838を、キャップを締めるために使用されたのとは逆方向に回転させることによってキャップを締めることができる。
図16の実施では、容器836は、四角の断面を有し、補完的な四角のレセプタクル840の内側に配され、レセプタクル840は、キャップ838がデキャッパ830によって回転されている間に容器836の回転を防止することによって容器836のキャップの取り外し及び締めることを助ける。したがって、効果的なキャップの取り外し及び締めることのために、容器836は、回転非対称(例えば、図16の実施のように非円形の断面)となるように構成されていてもよく、また、キャップ838がプロング834によって回転されている時に容器836の回転を防止する補完的なレセプタクルの中に配されてもよい。他の実施では、容器836は、回転非対称でないかもしれないが、キャップ838と共に回転することを防止するためにそれ以外の方法でレセプタクルの中に保持される。
ロボットモジュール820の図示した実施では、4つのデキャッパ830のそれぞれのプロング834は、特定の範囲内の大きさの物体を把持するために構成されている。各デキャッパ830に関連する大きさの範囲は、他の3つのデキャッパ830に関連するものとは異なる。したがって、4つのデキャッパ830は一緒になって、広範囲の大きさのキャップ及びカバーのキャップを取り外すための汎用のデキャッパを形成する。
ロボットモジュール820は、4つより多くの又は少ないロボットアーム824を有してもよいことが想定される。ロボットアーム824の1つ又は複数は、ピペッタ又は吸引器としても機能するように構成されていてもよいことが想定される。一部の実施では、ロボットモジュール820はまた、バーコードを読み取る、pH又は粒子数を解析する、及び同種のものなどの他の機能のために構成されたロボットアームも備えてよいことがさらに想定される。
滅菌システム
ACPS100は、エンクロージャ110及びその中に収容された全ての露出した面の全体的な滅菌を行うための自動化されたエンクロージャ滅菌システムを備える。自動化されたエンクロージャ滅菌システムは、人間の介入を必要としないエンクロージャ110の自動的な滅菌のために構成されている。自動化されたエンクロージャ滅菌システムは、アイソレータ120及びBSC130の滅菌のためにも使用されてよいことが想定される。
自動化されたエンクロージャ滅菌システムは、エンクロージャ110の自動化された滅菌のために適切な滅菌剤でエンクロージャ110をパージするための滅菌ユニット550(図2に図式的に示されている)を備える。エンクロージャ110は、上述したように滅菌剤入口230、触媒コンバータ入口231、滅菌剤出口232、及び触媒コンバータ出口233を備える。滅菌ユニット550は、エンクロージャ110に滅菌剤を導入するため及びエンクロージャ110から滅菌剤を除去するためにそれぞれ滅菌剤入口230及び出口232に接続されている。滅菌剤入口230は、滅菌ユニット550から受け取った滅菌剤を噴霧又は蒸気霧としてエンクロージャ110の内部に送達するように構成されている。滅菌剤出口232は、滅菌ユニット550のポンプに接続されており、該ポンプは、エンクロージャ110から除去された滅菌剤を大気中に放出する前に中和する。ACPS100は、滅菌剤入口230から受け取った滅菌剤を循環させるため及びエンクロージャ110の内部全体の滅菌剤の分散を増加させるためにエンクロージャ110の内側に羽根車(図示せず)を備える。
滅菌ユニット550は、適切な期間にわたって滅菌剤入口230の中に滅菌剤を注入してエンクロージャ110の面を滅菌した後に、滅菌ユニット550は、滅菌剤入口230の中への滅菌剤の注入を中止し、代わりに滅菌剤入口230の中に空気を注入してエンクロージャ110をパージし、あらゆる残留した滅菌剤粒子を取り除く。
図示した実施では、滅菌ユニット550は、滅菌剤として過酸化水素蒸気(Vaprox(商標) Sterilant、STERISなど)を注入するように構成されたSTERIS(商標) VHP 1000ED Mobile Biodecontamination System(STERIS Corporation、Mentor、OH、USA)であるが、任意の適切な滅菌ユニット及び滅菌剤を本出願に示すものの代わりに使用してもよいことが想定される。図示した実施の滅菌ユニット550はまた、触媒コンバータ入口及び出口231、233に接続されており、滅菌手順の終わりに滅菌剤蒸気を無害且つ生分解性の水蒸気及び酸素に変換するために触媒コンバータをエンクロージャ110の中に導入する。
エンクロージャ110の滅菌は、それが外部環境に対して開かれた後(例えば、修理及びメンテナンスの後)又はエンクロージャ110の中で汚染が疑われた若しくは検出された後に行われるため、エンクロージャ110の内側の全ての露出した面及び閉じ込められた空気は、あらゆる生きた生物学的汚染粒子から滅菌される。エンクロージャ110はまた、バッチの加工の間に、定期的な間隔で、又は所望により、滅菌されてもよい。
エンクロージャ110の中に滅菌剤を導入することによってエンクロージャ110の内部が滅菌される前に、細胞及び/又は培養物を含有する全ての細胞加工容器314は、エンクロージャ110から、エンクロージャ110から密閉できる区画(例えば、インキュベータ152など)に通常移され、エンクロージャ110は自動的に密閉される。
エンクロージャ110を自動的に密閉することは、空気入口222、空気出口224、及び、廃棄物レセプタクル156に接続されたポート176、178を自動的に閉じることを含む。加えて、冷凍器ドア上及びその周りでの滅菌剤の凝縮の可能性を低減するために、冷凍器154の絶縁ドアが自動的に閉められて、冷凍器154の冷えた温度からのより大きな絶縁を提供する。エンクロージャ110の外部の他のシステム部品に接続されたあらゆる他のポート(アイソレータ120に接続されたアイソレータ接続ポート220、遠心分離機150に接続されたアクセスポート170、インキュベータ152に接続されたアクセスポート172、冷凍器154に接続されたアクセスポート174、及び同種のものなど)は、閉じていることを検証され、且つ/又は、開いていると決定された場合は自動的に閉じられる。システム100はまた、全ての試薬容器が閉じているかも検証する。外部環境に繋がっていないシステム部品に接続しているアクセスポートはまた、滅菌のために開いたままであるように制御されてもよい。例えば、アクセスポート170は、遠心分離機150の内側を滅菌するために開いたままであってもよく、又はアクセスポート220は、アイソレータ120の内側を滅菌するためにそのままであってもよい。
エンクロージャ110の全体的な滅菌を行うための自動化されたエンクロージャ滅菌システムに加えて、ACPS100は、エンクロージャ110の内側にある個々の物体を滅菌するためにデッキ910上に配された液体滅菌ステーション556(図9)を備える。滅菌ステーション556は、流体ラインを介してポンプ及び滅菌液供給源に流体ラインを介して接続された容器を備える。それにより、滅菌ステーション556は、それを通じて滅菌液(例えば、図示した実施では漂白剤、又は任意の他の適切な滅菌液)を循環させるように構成されている。例えば、培地注入チップ、吸引器チップ870及びピペットチップなどの滅菌される物体は、滅菌液が循環されている間に搭載されたロボットモジュール800又は820の1つのロボットアームの1つによって適切な期間にわたって滅菌ステーション556の中に浸され得る。滅菌ステーション556は、エンクロージャ110から個々の物体を除去することなく該物体を滅菌することを可能とし、これは、加工手順の妨害を最小化することを助け、且つエンクロージャ110内での交差汚染のリスクを低減する。
インキュベータ152などのシステム部品もまた、それら自体の各々の自動化された滅菌ユニットを備える。関連する滅菌ユニットによる特定のシステム部品の滅菌の前に、システム部品を接続するアクセスポートは閉められ、且つシステム部品内に貯蔵された容器は、容器も滅菌されることが所望されるまで、そこから通常除去される。例えば、インキュベータ152は、インキュベータ152の内部を滅菌するために、自動化されたインキュベータ滅菌ユニット552(図3C)に連結される。インキュベータ152の内部がインキュベータ滅菌ユニット552によって滅菌される前に、アクセスポート172は閉じられ、インキュベータ152内に貯蔵されたあらゆる試料容器はそこから除去される。図示した実施では、自動化されたインキュベータ滅菌ユニット552は、滅菌剤として酸化エチレンを使用するMPB Industries Ltdによって製造されるSafeErase ClO2 Decontamination Systemであるが、任意の好適な滅菌ユニット及び滅菌剤を使用してもよい。
閉じられた内部空間の自動的な滅菌のために、アイソレータ120及びBSC130もまた、滅菌ユニット550又はそれに類似した別の滅菌ユニットに接続されていてもよいことが想定される。
記載された滅菌システム及び手順は、外部環境への曝露による汚染を最小にすることを確実にするのに効果的であると同時に、システム100が人間操作者による介入なしで機能することを可能にする。エンクロージャ110又はシステム部品の1つの滅菌はまた、システム100の操作者からのユーザーの入力の結果として開始されてもよいことが想定される。自動化されるものとして上記したステップの1つ又は複数(例えば、空気出口の閉鎖)は、自動化された実行に加えて、人間操作者の補助による実行が可能であってもよいことがさらに想定される。
追跡システム
上述したように、細胞加工容器314、遠心チューブ、バイアル及び輸送トレイ340の全て及び他の容器(試薬容器及び同種のものなど)の多くは、バーコードを有する。ACPS100は、エンクロージャ110の中に導入されたバッチの追跡を促進するために、エンクロージャ100の内側にバーコードスキャナ498(図2に図式的に示されている)を備える。Hamiltonデキャッパ及びインキュベータ152などの加工モジュールの多くは、加工されている容器の同一性を検証するためにバーコードスキャナを有する。制御ユニット1000は、バーコードスキャナを有するモジュールに、上記の容器を輸送するロボットモジュール600、700、800、820に、容器を貯蔵する貯蔵ラック310、320、330に、及び上記の容器を受け取ることができる培地注入ステーション420及びインキュベータ152などの加工モジュールの多くに接続されている。したがって、制御ユニット1000は、各容器の位置(ポジション)を追跡することができ、且つ、各容器の各動き、及びそれにより各容器の加工の各ステップを追跡することができる。
したがって、GMPガイドラインに適合するように、全ての容器を位置メモリ及びバーコードを介して追跡することができる。制御ユニット1000は、特定のステーション又はシステム部品(例えば、インキュベータ150又は遠心分離機150)に関連する記録を取って、特定の容器について位置メモリを提供するステーション/部品内に位置する細胞加工容器314を同定及び追跡する。制御ユニット1000はまた、容器が様々な加工ステップを通じて動かされている際に、各容器(付随するバーコードによって同定される)又はバッチに関連する記録を取る。
ACPS100は、エンクロージャ110内で起こっている活動の画像(現在のタイムスタンプと共に)を得るためにカメラ497(図2に図式的に示されている)を備える。カメラ497は、連続的に又は断続的に画像を得てよい。カメラ497は、エンクロージャ110の異なる部分における活動を捕捉するために異なる場所に配された複数のカメラであってもよいことが想定される。アイソレータ120及びBSC130の中での活動が同じカメラ497又は他のカメラ(複数可)497により記録されてもよいことも想定される。カメラ497は、制御ユニット1000に接続されており、カメラ497によって提供される画像は、制御ユニット1000に付随する又は制御ユニット1000に接続されたメモリに貯蔵される。一部の実施では、カメラ497によって得られる画像は、現在加工されている試料(複数可)に関連し、試料に関連する試料加工ログと共に又はその部分として含められる。
制御ユニット
図18に関して、図示した実施の制御ユニット1000は、細胞の自動化された加工を促進するためにACPS100の様々なモジュールに通信可能に連結されたコンピュータである。制御ユニット1000は、様々な貯蔵モジュール(貯蔵ラック310、320、及び輸送トレイ322)に通信可能に連結されている。制御ユニット1000は、様々な加工モジュール(培地注入ステーション420、インキュベータ152、デキャッピングモジュール414、及び同種のもの)に通信可能に連結されている。制御ユニット1000は、追跡システムの様々な追跡モジュールに通信可能に連結されている。制御ユニット1000は、様々なロボットモジュール600、700、800、820に通信可能に連結されている。制御ユニット1000は、様々な品質管理モジュール(サイトメーター470、顕微鏡及びプレートリーダ472、及び同種のもの)に通信可能に連結されている。制御ユニット1000は、様々な回収モジュール(輸送傾斜ホルダ傾斜モジュール、冷凍器460、及び同種のもの)に通信可能に連結されている。制御ユニット1000はまた、他の種々雑多な部品、粒子カウンタ190、アクセスポートのゲート、及び同種のものに通信可能に連結されている。制御ユニット1000は、空気出口224を開閉するための電動アクチュエータ256などのシステム部品に連結されている。
制御ユニット1000は、制御ユニット1000が細胞加工を制御すること、細胞加工を追跡及び監視すること、及び細胞加工の記録を作成することを可能とする全ての通信可能に連結されたモジュールから情報を得てそれを処理する。記録は、以下に記載する品質保証の目的のために使用されてもよい。したがって、制御ユニット1000は、GMPガイドラインに対する細胞加工の適合性を促進する。
以下は、インキュベーション152を伴う細胞加工ステップを制御する制御ユニット1000の例である。制御ユニット1000は、ロボットアーム705に、培地注入ステーション420の1つから細胞加工容器314を拾い上げること、及びインキュベータアクセスポート172の上に配される特定の位置にそれを動かすことを指示する。制御ユニット1000は、ロボットモジュール700に連結された様々なセンサから受け取った信号に基づいてロボットアーム705の位置を追跡する。細胞加工容器314が、インキュベータアクセスポート172の上に配される特定の位置にロボットアーム705によって動かされる時に、制御ユニット1000は、インキュベータ152に信号を送って、インキュベータ152のゲートを開かせる。次いで、制御ユニット1000により、インキュベータ152の内側のインキュベータのロボットアームは、インキュベータアクセスポート172を通じて上方に延びて、ロボットアーム705から細胞加工容器314を受け取り、細胞加工容器314上のバーコードがインキュベータ152の内側のバーコードスキャナによって読み取られ、次いでバーコードスキャナは、バーコードの識別情報を指し示す信号を制御ユニット1000に送る。インキュベータのロボットアームは、インキュベータ152の内側の棚に細胞加工容器314を置き、ゲートを閉めることによってインキュベータ152からエンクロージャ110を密閉する。インキュベータ152は、予め定められた温度、予め定められたCO2及びO2レベル、及び予め定められた期間にわたって細胞加工容器314をインキュベートするように制御ユニット1000によって制御される。予め定められた期間が終了した時に、制御ユニット1000は、インキュベータ150に信号を送って、インキュベータ152にアクセスするためのゲートを開かせ、細胞加工容器314をインキュベータアクセスポート172に向かってインキュベータのロボットアームによって動かさせる。細胞加工容器314上のバーコードがインキュベータのバーコードリーダによって読み取られ、バーコードの識別情報を指し示す信号が制御ユニット1000に送られる。制御ユニット1000は、ロボットモジュール700のロボットアーム705に信号を送って、インキュベータのロボットアームから細胞加工容器314を回収し、傾斜モジュール430の1つに細胞加工容器314を置かせる。制御ユニット1000は、特定の細胞加工容器314についての加工記録をアップデートして、細胞加工容器314がインキュベーションステップを完了し、特定の加工ステップを受けていることを反映させる。制御ユニット1000はさらに、特定の傾斜モジュール430’(その位置によって特定される)が特定の細胞加工容器314(場合によっては、そのバーコードによってさらに特定される)を現在保持していることを指し示す傾斜モジュール430’に関連する記録をアップデートする。
加工が続くと、この例示的な加工順序では、制御ユニット1000により、細胞加工容器314の蓋が取り外され、ロボット吸引器872が吸引器チップ870を拾い上げて、細胞加工容器314の中の古い培地を吸引した後に、細胞加工容器314を培地注入ステーション420上に置いてそれに新鮮な培地を注入すると共に、新たな滅菌濾過されたチップを拾い上げ、予め定められた容器から試薬を吸引してそれを細胞加工容器314の中に分注することによって、ロボットピペッタ814によって試薬を追加し、その後に細胞加工容器314に蓋を戻す。制御ユニット1000は、各ステップにおいて、細胞加工容器314に関連する記録、並びに、特定の傾斜モジュール440及び/又は培地注入ステーション420(その位置によって特定される)を指し示す傾斜モジュール440及び/又は培地注入ステーション420に関連する記録をさらにアップデートする。次いで、制御ユニット1000により、ロボットアーム705は細胞加工容器314を動かし、細胞加工容器314及びインキュベータ150に関連する記録のアップデートに加えて、上記に詳述するように細胞加工容器314を輸送してインキュベータ150に戻す。
一部の実施では、制御ユニット1000は、自動化された細胞加工において品質保証(QA)を可能とするように構成されている。制御ユニット1000は、細胞加工の間に又は細胞加工が完了した後に行われる品質管理解析から得られる情報を含む細胞加工ステップの様々な詳細の包括的な記録を生成する。
一部の実施では、制御ユニット1000は、加工及び/又は細胞加工の最終製造物が加工及び/又は製造物の予め定められた仕様に従っていることを検証するようにさらに構成されている。制御ユニット1000は、予め定められたチェックリストを備えていてもよく、また、予め定められたチェックリストの基準の充足を検証するように構成されていてもよい。例えば、チェックリストは、1つ又は複数のステップが正しく行われたこと、又は加工のステップの間に特定の事象が起こらなかったこと、又は1つ又は複数の製造物のパラメーターが特定の範囲内にあることを確実にするための基準を含んでもよい。細胞療法への応用のための細胞加工の例では、チェックリストは、最終製造物が患者への出荷のために準備できていることを検証するように設計されてもよい。
一部の実施では、制御ユニット1000は、加工の決定を行うようにさらに構成されており、例えば、所望の最終製造物を製造するためにどのステップを実行するかを決定するようにさらに構成されている。例えば、一部の実施では、制御ユニット1000は、1つ又は複数の特徴の解析の結果に基づいて、1つ又は複数のその後のステップの実行について決定するように構成されている。例示的な実施では、制御ユニット1000は、フローサイトメータ470又は顕微鏡及びプレートリーダ472を使用して低い細胞数又は密集度の決定に基づいてバッチのさらなるインキュベーションが必要とされることを決定し、それにしたがってインキュベータ152においてそのようなさらなるインキュベーションを実行するように構成されている。別の例示的な実施では、制御ユニット1000は、疾患を引き起こす遺伝子突然変異に特異的な抗体を使用して又はqRT-PCR装置によって解析された疾患を引き起こす遺伝子突然変異に特異的なプライマーでの実行によって得られる、疾患を引き起こす遺伝子突然変異をバッチ中の細胞が持つことを指し示す診断アッセイの結果に基づいて、遺伝子修復が必要とされることを決定し、それにしたがって遺伝子修復のための遺伝子編集の加工を実行するように構成されている。別の例示的な実施では、制御ユニット1000は、フローサイトメータ470を使用した低い生存能力の決定に基づいて、死細胞の除去が所望されることを決定し、そのような加工を実行するように構成されている。別の例示的な実施では、制御ユニット1000は、例えば、充分に強い磁石434を備えた磁気傾斜モジュール440を使用してある特定のマーカーを発現する細胞を磁気的に選別することによって所望の分化能力又は純度を達成することにより、所望の細胞の分化能力を選択するように、又はバッチ中の所望の細胞を精製するように構成されている。制御ユニット1000は、加工の間の人間の介入なしで、1つ又は複数の特徴の解析の結果を使用して様々なそのような加工の決定を行うように構成できることを理解されるべきである。
図18に関して、制御ユニット1000は、ネットワーク通信インターフェース1004に連結されたプロセッサ1002を備える。プロセッサ1002は、本明細書に記載されるものなどの様々な方法を実行するように構成されている。このために、プロセッサは、メモリ1006(ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、又は同種のものの形態)を有するか、又は、実行された時にプロセッサに本明細書に記載される様々な方法を実行させるコンピュータ読取り可能なコマンドを保存するメモリ1006に通信可能に連結されている。一部の実施では、メモリ1006はまた、加工ログ、加工記録、及び本明細書に記載される方法の実行に関する他の情報も保存する。一部の実施では、制御ユニット1000は、そのような加工ログ、加工記録、及び本明細書に記載される方法の実行に関する他の情報を保存するための1つ又は複数の他のデータ保存デバイスを備える又は該デバイスへのアクセスを有する。
[01]ネットワーク通信インターフェース1004(モデム、ネットワークカード、及び同種のものなど)は、ACPS通信ネットワーク1008上でのACPS100の他の部品との2方向通信のために構成されている。本発明の技術の図示した実施では、ACPS通信ネットワーク1008は、ローカルエリアネットワーク(LAN)である。本発明の技術の他の実施では、ACPS通信ネットワーク1008は、インターネット、広域通信ネットワーク、ローカルエリア通信ネットワーク、プライベート通信ネットワーク及び同種のものなどのLAN以外のものであってもよい。ACPS通信ネットワーク1000は、複数の通信ネットワーク1008であってもよい。ACPS通信ネットワーク1008において、通信は、無線リンク(Wireless Fidelity、又は短縮してWiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)又は同種のものなど)又は有線リンク(例えば、ユニバーサルシリアルバス若しくはUSBベースの接続又はイーサネット(登録商標)ベースの接続など)などの様々な種類の通信リンク上で起こってよい。
[02]図1A~2の実施では、制御ユニット1000は、ユーザーインターフェースを備え、ユーザーインターフェースは、ユーザーの入力を受け取るためのユーザー入力デバイス1010及びユーザーに情報を伝えるためのユーザー出力デバイス1012を備える。図1A~2の実施では、ユーザー入力デバイスは、キーボード及びマウスを備えるが、ユーザー入力デバイスは、キーボード、マウス、タッチパッド、タッチスクリーン、マイクロホン、トラックボール、ジョイスティック、フィンガートラッキング、ペントラッキング又はスタイラストラッキング要素及び同種のものなどの任意の好適なユーザー入力デバイスの形態であってよいことが想定される。図1A~2の実施では、ユーザー出力デバイス1012は、ディスプレイスクリーンの形態である。制御ユニット1000はまた、他の種類の視覚的、聴覚的又は触覚的な出力をユーザーに提供するためにスピーカー、プリンター及び同種のものなどの他の形態のユーザー出力デバイス220を備える。
[03]図示した実施では、制御ユニット1000は、単一のデスクトップコンピュータとして示されている。しかしながら、制御ユニット1000は、複数のデスクトップコンピュータ及び/又は他のコンピューティングデバイスを備えてもよく、各コンピューティングデバイスが、メモリ1006及びネットワーク通信インターフェース1004に関連付けられたプロセッサ1002を有するものであってもよいことが想定される。プロセッサ1002は、単一の共有プロセッサであってもよいし、又は、その一部が共有されたものであり得る複数の個々のプロセッサであってもよい。各プロセッサ1002には1つ又は複数のメモリ1006が関連付けられていてもよい。
[04]制御ユニット1000は、様々なタスクを実行するために当該技術分野で公知のハードウェア及び/又はソフトウェア及び/又はファームウェアを備え、該タスクとしては、センサ、システム部品又はモジュールからの信号の受信、受信した信号の加工、受信した信号に基づく細胞加工のためのその後のステップの決定、品質保証モジュール、インキュベータ、及び同種のものなどの制御可能なシステムモジュール及び/又は部品のための制御信号(指示)の生成、及び、決定されたその後のステップを実行するための制御可能なシステム部品への制御信号の送信などである。
[05]本明細書で使用される「モジュール」という用語は、ソフトウェア、ハードウェア又は任意のこれらの組合せを指すものであり得る。例えば、品質保証モジュールは、制御ユニット1000のメモリ1006内のソフトウェアモジュールである。品質保証ソフトウェアモジュールは、プロセッサ1002によって実行された時に本明細書に記載される品質保証機能を実行するコードを備える。品質保証モジュールは、それ自体のプロセッサ、メモリ及びネットワーク通信インターフェースを有する別々の専用のコンピューティングデバイスを備えたハードウェアモジュールであってもよいことが想定される。
一部の実施では、ACPS通信ネットワーク1008はインターネットではなく、制御ユニット1000は、製造物又は試験の結果を損なう可能性がある未承認のものが制御ユニット1000に入るのを防止するためにインターネットに接続されない。一部の実施では、制御ユニット1000は、外部通信ネットワーク(例えば、セルラー通信ネットワーク)、すなわちACPS通信ネットワーク1008ではない通信ネットワークを介して間接的にシステムメッセージ(エラーメッセージ、アラート又はプロンプトなど)を提供するように構成されている。制御ユニット1000は、別個の検出器が電力の喪失を感知した場合に特定の要素又は出口に対して電源をオン/オフし、電力の損失への応答として、予め定められたメッセージを送るように構成されていてもよいことが想定される。別の例としては、制御ユニット1000は、通信ネットワークに接続されたカメラによって読み取られるように構成されたモニターに予め定められたパターン(例えば、二次元バーコード)を表示してもよい。カメラは、モニターに表示されたパターンに基づいて通信ネットワークを介して適切なメッセージを送信してもよい。したがって、制御ユニット1000は、外部通信ネットワークに直接的に接続されることなく外部通信ネットワークを介して適切なレシピエントへの適切なメッセージの送信を引き起こすように構成されている。
複数のシステムの統合
図17に関して、上記のACPS100などの2つ又はそれより多くのACPS100を備えた統合されたシステム10を接続して一緒にすることができる。図17の図示した実施は、エンクロージャ110及びアイソレータ120を有する左ACPS100を備えた2つからなる統合されたACPS10を示す。右ACPS100もまた、エンクロージャ110及びアイソレータ120を備える。各ACPS100は、インキュベータ180に接続されている。左エンクロージャ110は、その右側壁208にアクセスポート182を有し、アクセスポート182は、インキュベータ180の左側壁にあるアクセスポートに接続されている。右エンクロージャ110は、その左側壁208にアクセスポート182を有し、アクセスポート182は、インキュベータ180の右側壁にあるアクセスポートに接続されている。インキュベータ180と各エンクロージャ110との間の接続は密閉されている。細胞加工容器314を、インキュベータ180とエンクロージャ110のそれぞれとの間で引き渡すことができる。したがって、細胞加工容器314を、ACPS10の外側に除去することなくインキュベータ180を介して左エンクロージャ110と右エンクロージャ110との間で引き渡すことができる。統合されたACPSは、各ACPS100内での汚染のリスクを増加させることなくリソースを共有することによって価値あるリソースのより良好な利用を可能とする。
一部の実施では、上記統合されたシステム10における上記各ACPS100のアイソレータ120は、同じBSC130に接続されている。一部の実施では、左ACPS100のアイソレータ120は第1のBSC130に接続され、右ACPS100のアイソレータ120は、第1のBSC130とは異なる第2のBSC130に接続される。
一部の実施では、上記統合されたシステム10における上記各ACPS100は、同じ制御ユニット100によって制御される。一部の実施では、左ACPS100は、第1の制御ユニット1000によって制御され、右ACPS100は、第1の制御ユニット1000とは異なる第2の制御ユニット1000によって制御される。
複数のバッチの逐次的な加工
ACPS100は、バッチ間の交差汚染なしで1つの時点に複数のバッチを加工するように構成されている。
バッチ間の交差汚染なしで1つの時点に複数のバッチを加工することは、部分的には、エンクロージャ110の構造及びレイアウト、空気フローシステム、廃棄物システム156、158、エンクロージャ110内の様々な部品の相対的な物理的配置、エンクロージャ110とエンクロージャの外側の様々な設備(遠心分離機150、おおび同種のものなど)との間の接続の構成、アイソレータ及びBSCの存在及び特定の構成、及び同種のものなどの要因によって可能とされる。
加えて、制御ユニット1000は、任意の1つの時点に1つのバッチのみがエンクロージャ100の内側の環境に曝露されることを確実にするように構成されている。制御ユニット1000は各細胞加工容器314の位置、動き及び加工を追跡するので、制御ユニット1000は、エンクロージャ110内の複数のバッチの同時の加工を制御することができ、それにより、例えば試薬の追加のために、1つの細胞加工容器314が環境に対して開いている時に、異なるバッチに属する他の細胞加工容器314は、開いている細胞加工容器314から遠隔に配される。すなわち、制御ユニット1000は、異なるバッチに属する細胞加工容器314の全てが所与の細胞加工容器314から遠隔に配された時にのみ、所与の細胞加工容器314のカバーが取り外されることを可能にするように構成されている。したがって、異なるバッチに属する閉じた細胞加工容器314は、インキュベータ152の中又は冷凍器154の中で互いに隣り合って置かれてもよいが、異なるバッチに属する2つの細胞加工容器314は、デッキ910上の別々の培地注入ステーション420上で見出され得ない。
一部の実施では、制御ユニット1000は、細胞加工容器314への材料の追加又は細胞加工容器314からの材料の除去の間を除いて、細胞加工容器314がカバーを外されたままとならないことを確実にするようにさらに構成されている。したがって、細胞加工容器314は、通常細胞加工容器314への材料の追加又は細胞加工容器314からの材料の除去の間を除いてカバーを付けたままとなる。
一部の実施では、第1のバッチ用の細胞加工容器314を閉じた後に、別のバッチ用の細胞加工容器314は、粒子カウンタ190によって測定される粒子数が閾値レベルより低い時にのみ開かれる。
一部の実施では、上述したように、エンクロージャ110の内側の空間は、層状の気流壁によって別々の空間に分割され得る。層状の気流壁は、一部の実施では、エンクロージャ110内の分離された空間の間の汚染のリスクを低減することによって、分離された空間における複数のバッチの同時の加工を可能とするように構築されていてもよい。
例えば、エンクロージャ110内の空間を第1の空間及び第2の空間に分割する層状の気流壁の存在下で、第2のバッチが第2の空間において加工されている間に、第1のバッチは第1の空間において加工されてよいことが想定される。したがって、この例では、第2のバッチの第2の細胞加工容器314が第2の空間においてその中に試薬を注入するために開かれている間に、第1のバッチの細胞加工容器314が第1の空間においてその中に試薬を注入するために開かれていてよいことが想定される。層状の気流壁による第2の空間からの第1の空間の分離は、第1のバッチと第2のバッチとの間の汚染のリスクを低減する、又は該汚染を防止する。
本明細書で提供される方法及びシステムは、バッチの逐次的な加工を使用してバッチ間の交差汚染なしで同時に多数のバッチを加工するように設計されている。本明細書で使用する場合、「逐次的な加工」という用語は、ACPS100において複数のバッチが同時に加工を受けている時に1つの時点に1つのバッチのみが環境に対して開かれている、すなわち、デッキ910上又はエンクロージャ110の中の1つのバッチのみが1つの時点に開いていることを意味する。バッチの多くが加工の異なるステップ又は段階にあってもよいこと、例えば、1つのバッチの加工がちょうど始まった一方、別のバッチは完了に近くてもよいことが理解されるべきである。さらに、全てのバッチは必ずしも同じようには加工されず、例えば、1つのバッチは、第1のセットの初期化剤を使用して第2の種類の細胞(例えば、神経幹細胞様細胞)に初期化されている第1の種類の細胞(例えば、線維芽細胞)を含んでよく、一方で別のバッチは、異なるセットの初期化剤を使用して第4の種類の細胞(例えば、皮膚毛包幹細胞様細胞)に初期化されている第3の種類の細胞(例えば、骨髄間質細胞)を含む。したがって、異なるバッチを同時に異なる加工に供することができる。実際上、逐次的な加工はまた、デッキ910上の各加工ステーションが1つの時点に1つのバッチのみを加工することも意味する。1つの時点に1つより多くのバッチが環境に対して開いていることがない限り(例えば、1つの時点に1つのバッチからの細胞加工容器314のみが環境に対して開いている)、加工ステーションは、複数のバッチを次々に順次加工することができる。1つのバッチが開かれ、必要に応じて加工され、次いで閉じられた後に、次のバッチが加工のために開かれるなどである。このようにして、複数のバッチがそれぞれ、加工の同じ又は異なるステップ又は段階にあることができ、バッチの全てがACPS100の中で同時に加工されるが、1つの時点に1つのバッチのみが環境に対して開いているため、バッチ間の交差汚染が防止される。
例による説明のために、4つの加工ステーションを有するACPS100の中で3つのバッチが同時に加工を受けている例を考える。第1のバッチが記載されるようにACPS100の中に導入され、加工が開始される。第1のバッチが第1の加工ステーションにおいて加工された後に、インキュベータ180に入れられる。次いで、第2のバッチがACPS100の中に導入され、第1の加工ステーションにおいて加工された後に、インキュベータ180に入れられる。次いで、第1のバッチがインキュベータ180から回収され、第2の加工ステーション及び第3の加工ステーションにおいて加工される。第1のバッチが第3の加工ステーションにおいて加工を受けている間に、第2のバッチがインキュベータ180から回収され、第2の加工ステーションに運ばれる。しかしながら、第3の加工ステーションにおける第1のバッチの加工が完了するまで、第2のバッチは保持される(すなわち、開かれない)。第3の加工ステーションにおける加工の後に第1のバッチが閉じられると、第2の加工ステーション及び第3の加工ステーションにおいて第2のバッチを開いて加工することができる。
第2及び第3の加工ステーションにおける第2のバッチの加工の間に、第3のバッチがシステムの中に導入され、第1の加工ステーションに運ばれ、そこで、(例えば、インキュベータ180の中で)第1及び第2のバッチが閉じられた後にのみ第3のバッチが開かれて加工される。次いで、第3のバッチは、第3のバッチについての特定の加工パラメーターに応じて、最初に第2及び第3の加工ステーションにおいて加工されることなく、加工のために第4の加工ステーションにそのまま運ばれてもよい。このようにして各加工ステーションはバッチを次々に順次加工し、各バッチは特有の順番の加工ステップを受け、バッチの加工は連携して働いて、1つの時点に1つのバッチのみが環境に対して開かれるのを確実にする。
バッチのこの逐次的な加工は、以前のシステムとは異なることが明白なはずである。以前のシステムでは、別のバッチの加工を開始できる前に、1つのバッチは完了まで加工されなければならない。以前のシステムでは、例えば、第1のバッチがシステムの中に導入され、最終製造物が得られるまで、その全体の加工、例えば、第1、第2、第3、及び第4の加工ステーションにおける加工を受ける。第1のバッチについての最終製造物は、第2のバッチがシステムの中に導入される前にシステムから放出され、次いで第2のバッチについての最終製造物がシステムから放出されるまで、第2のバッチが完了まで加工され、第2のバッチがシステムから取り出されて初めて、第3のバッチを加工のために導入することができる、などである。本出願に提供する逐次的な加工のシステムとは対照的に、そのような以前のシステムでは、交差汚染を防止するために完全な洗浄及び滅菌がバッチ間で通常必要とされる。
方法
本技術のさらなる理解のために、細胞加工のための自動化された方法2000に関してこれより上記のACPS100を説明する。
しかしながら、この説明は例示的な目的のためにのみ提供するものであり、限定を意図するものではないことが理解されるべきである。ACPS100は、例えば、細胞加工、並びに、タンパク質、抗体、ワクチン、増殖因子、組織マトリックス、及び同種のものなどの生物学的製造物の製造のための加工などの多様な方法のために使用することができる。さらに、ACPS100は、細胞株の成長又は増殖、遺伝子編集、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚性幹細胞、及び同種のものの製造などの、以下に例を挙げて説明するもの以外の種類の細胞加工のために使用することができる。ACPS100は、広範囲のそのような方法における応用を有することができ、且つ行われる特定の方法の必要性にしたがって適合できることが想定される。
ここに提供する例示的な実施例では、上記のACPS100は、第1の種類の細胞を第2の種類の細胞に転換するための自動化された方法2000を実行するように構成されている。ここに記載される自動化された方法2000は、加工の間にエンクロージャ110内の任意の部品の人間操作者による操作なしでの細胞加工のための最初から最後までの方法である。
細胞加工のための自動化された方法2000のフロー図を示す図28に関して、自動化された方法2000は、エンクロージャ110の中への試料の導入2100、試料の導入2100後の試料の自動的な調製2200、試料調製2200後の細胞の自動的な加工(例えば、処理又は増殖)2300、細胞加工2300後の細胞の自動的な回収2400、及び細胞加工2300の間の自動的な解析2500を含む。方法2000はまた、試料調製2200の間及び細胞加工2300の前に試料の解析2500を含んでもよい。方法2000はまた、回収2400の間又は後に試料の解析2500を含んでもよい。加えて、自動化された方法2000は、自動的な回収2400の後に貯蔵及び/又は輸送2600のために細胞の自動的な梱包を含んでもよい。さらに、自動化された方法2000は、試料の品質保証(QA)2700解析、及び/又は、予め定められた許可基準への適合性を判定するためのバッチのための自動化された方法2000の全ての実行されたステップの検査を含んでもよい。試料の導入2100から梱包2600までの方法2000の全体は、人間操作者による操作なしで自動的に実行される。
ここに提供する例示的な実施例では、ACPS100は、第1の種類の細胞を含むバッチとして指定された試料をエンクロージャ110の中に受け入れ2100、以下に記載する試料調製2200及び細胞加工2300の実行後に、ACPS100は、最終製造物として、搬送及び/又は貯蔵のために準備された形態で第2の種類の細胞を含有するバッチを提供する。
本明細書で使用される「バッチ」は、特定の供給源、例えば、患者から得られた特定の細胞又は組織試料、特定の細胞培養物、特定の細胞株などからその由来が開始する材料であって、特定の最終製造物を提供するために特定の方法でACPS100によって加工されるものを指す。バッチのサイズは、例えば細胞の増殖及び倍化につれて、加工の間に増加してもよい。例えば、バッチは最初に、患者から得られた1つの細胞又は組織試料に由来する細胞の1つの細胞加工容器314を含み得る。加工が完了した時に、同じバッチは、複数の細胞加工容器314(例えば、2個、4個、8個、16個、20個、24個、32個など)を含むことがあり、バッチ中の全ての細胞加工容器314は、同じ最初の細胞加工容器314に由来し、同じ方法で加工された細胞を含有することがある。したがって、大まかに言えば、バッチは、加工されている生体試料の性質に応じて、1人の患者からの細胞、又は1つの細胞株からの抗体などを指すことがある。本明細書で使用する場合、「生体試料」は、加工のための出発材料を指す。一部の実施形態では、生体試料は、患者から得られた細胞又は組織試料である。生体試料は、加工のためにそれがACPS100の中に導入された時に、「バッチ」と称される。したがって、各バッチは、1つの生体試料に由来する。
一部の実施では、ACPS100は、第1の種類の単離された細胞を含むバッチを提供2100される。一部の実施では、ACPS100は、患者から採られた生検などの、単離されていない形態で第1の種類の細胞を含むバッチを提供2100される。ACPS100が第1の種類の単離されていない細胞を提供される実施では、加工2300のために好適な、単離された形態の第1の種類の細胞を含有するバッチを得るために、(アイソレータ120内で人間操作者によって、又は自動的にエンクロージャ110内でのいずれかで)初期の試料調製ステップ2200が行われる。
方法2000は、エンクロージャ110の中でのバッチの自動的な加工2300を含む。理解されるように、バッチの自動的な加工2300は、細胞加工容器314中の細胞培養培地に細胞を懸濁すること、特定の時点及び特定の量でバッチに1つ又は複数の試薬を加えること、必要に応じて細胞培養培地を新しくすること、バッチを第1の加工ステーション(例えば、培地注入ステーション420)から第2の加工ステーション(例えば、加熱器494)に移送すること、及び細胞株が分割するにつれて、バッチの継続した加工のために1つの細胞加工容器314から複数の細胞加工容器314へと細胞培養物を継代することを伴ってもよい。
方法2000は、(例えば、フローサイトメータ470、顕微鏡及びプレートリーダ472、及び同種のものの1つ又は複数を使用する)バッチの1つ又は複数の特徴の自動的な解析2500を含む。バッチは、自動的な加工2300の完了後及び/又は自動的な加工2300の前若しくは間に解析2500されてもよい。一部の実施では、方法2000は、1つ又は複数の特徴の解析の結果を使用して加工の進行速度を予測し、それによって加工の1つ又は複数のその後のステップのための時間、又は加工の完了時間を決定することを含む。一部の実施では、方法2000は、1つ又は複数の特徴の解析の結果を使用して1つ又は複数のその後のステップを決定すること、例えば、バッチに対してインキュベートを行うのか、継代するのか、処理を適用するのかなどを決定することを含む。
方法2000はまた、加工2300が完了した後のバッチの自動的な回収2400も含む。本明細書で使用されるバッチの自動的な回収2400は、通常、エンクロージャ110の外側での受取りのため又は梱包2600のため又は貯蔵のためにバッチを準備することを指す。したがって、一部の実施では、細胞は、新鮮な培地に再懸濁され(場合によっては、1つの細胞培養皿から、又は細胞培養皿中の細胞の一部分から、別に取り、品質管理(QC)解析のために使用される)、細胞培養皿、輸送トレイ340、クライオバイアル(場合によっては、試料の速度制御されたクライオ冷凍を含む)、及び同種のものなどの好適な容器に入れられる。回収2400したら、バッチを、アイソレータ120を通って又はアイソレータアクセスポート220以外のアクセスポートを通ってのいずれかでエンクロージャ110の外に運ぶ。
方法2000はまた、貯蔵及び/又は輸送のためのバッチの自動的な梱包2600も含む。一部の実施では、バッチは、輸送用の容器314(例えば、輸送トレイ340)又は貯蔵用に設計された容器(例えば、クライオバイアル884)に入れられる。一部の実施では、バッチは冷凍されてもよく、冷凍された凍結保存細胞は、冷凍されたクライオバイアルホルダに移送されてもよく、次いでクライオバイアルホルダは、迅速にアイソレータ120に移送されて、そこで人間のユーザーはバッチを拾い上げ、それを貯蔵のためにクライオ冷凍機に、又は例えば臨床の場所への、搬送のために容器(例えば、LN2 Dry Shipper)に入れることができ、又は、必要に応じて任意の他のステップを行うことができる。別の実施では、凍結保存された細胞は、例えば冷凍器162などの、貯蔵用クライオ冷凍機の中に自動的に移送される。別の実施では、新鮮なバイアルに入れられた細胞は、細胞を最適にクライオ凍結するための速度制御されたクライオ冷凍機の中に(例えば、梱包モジュール950の1つ又は複数のロボットモジュールを介して、又はエンクロージャ110の中のロボットモジュール600、700の1つによって)自動的に移送された後に、細胞の最適な凍結保存のために貯蔵用クライオ冷凍機の中に自動的に移送される。1つの実施では、これらは、自動化された梱包モジュール950に接続されているため、クライオ凍結された細胞は、最終の目的地に到達するまで最適な凍結保存のための最適な温度に細胞を連続的に維持するための輸送用のLN2容器又はドライシッパーの中に自動的に梱包される。
自動的な梱包2600は任意選択である。さらに、一部の実施では、回収2400及び梱包2600は、1つのステップに組み合わせられる。例えば、バッチは、冷凍及び貯蔵のためにクライオバイアルの中に直接的に回収されてもよい。他の実施では、回収2400及び梱包2600は、別々のステップである。例えば、バッチは、輸送トレイ340の中に回収されてもよく、輸送トレイ340は、搬送用の容器の梱包のために梱包モジュール950に移送される。
自動的な品質保証2700も任意選択である。一部の実施では、品質保証2700は、回収2400及び/又は梱包2600の前、間又は後に実行することができる。バッチのために実行される方法2000の全体は、エンクロージャ110の中への試料の導入2100から貯蔵及び/又は輸送のための細胞の梱包2600までを検査されて、予め定められた許可基準を満たしているかを判定する。全ての許可基準を満たす場合、バッチは、搬送又は貯蔵のために出荷される。全ての許可基準は満たされていない場合、バッチは目印を付けられ、搬送のために出荷されず、最終的に梱包モジュール950から固体廃棄物レセプタクル156又は別の廃棄物エリアに処分される。一部の実施では、品質保証2700は、顕微鏡及びプレートリーダ472又は他の解析器具を使用して無菌性及び/又は汚染物(エンドトキシン及び/又はマイコプラズマなど)についての解析2500を開始することができる。品質保証によって所望される他の試験を実行してもよいこと、及び、品質保証2700によって所望される解析2500は、方法2000の任意の段階で、方法2000の間に所望するだけ何度も、実行してもよいことが想定される。一部の実施では、品質保証2700は、品質保証2700の結果の全ての詳細を提供する報告書、方法2000のあらゆるステップの詳細なリスト、及びバッチのために実行された解析2500の結果、及び同種のものの作成を含む。そのような報告書は、様々な形態(例えば、印刷物、データファイルなど)でユーザーに提供されてよく、特に限定されることを意図しない。さらに必要とされる加工2300の種類及びユーザーの特定の必要性に応じて、異なるバッチに対して異なる報告書を作成してもよい。一部の実施では、品質保証2700は、GMP条件が満たされたかどうかを検証する。
バッチがエンクロージャ110の中で加工2300されている時に、人間操作者によるエンクロージャ110内での部品の操作はない。方法2000は完全に自動化されており、いかなる人間の介入もなく実行可能である。しかしながら、制御ユニット1000に接続されたユーザーインターフェース1200を介して加工フローを人間操作者が監視できることが想定される。一部の実施では、ACPS100及び方法は、認可された人間操作者が、制御ユニット1000を介して加工ステップの1つ又は複数を改変する又は影響を及ぼすことを許容する。例えば、1つ又は複数の加工パラメーターに基づいて、人間操作者は、1つ又は複数の加工ステップを長期化させること、1つ又は複数の加工ステップをスキップすること、又はバッチの加工を一時的に休止することが可能であってもよい。
一部の実施では、エンクロージャ110の中への試料の導入2100から貯蔵及び/又は輸送のための細胞の梱包2600までの方法2000の全体は完全に自動化され、いかなる人間の介入もなく実行可能である。
以下の実施例を参照することにより、本発明の技術はより容易に理解されるであろう。これらの実施例は、本発明を例を挙げて説明するために与えるものであり、いかなる意味でもその範囲を限定するものと解釈してはならない。
別段の定義がなければ、又は文脈が明確にそうでないことを要求しなければ、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用できることが理解されるべきである。
実施例A
I.試料の導入
ステップ1. 移送トレイ322は、容器ホルダ(例えば、チューブホルダ410、452)に置かれた細胞加工容器314に貯蔵された生体試料(バッチ)(例えば、細胞、組織、生物学的物質(タンパク質又は抗体など)、又は他の試料)をアイソレータ120からエンクロージャ110に移送する。容器ホルダ410は、ロボットモジュール700によって移送トレイ322からデッキ910上の予め定められた位置(又はデッキ910上に移送される準備ができるまで貯蔵エリア300に)に移送される。
残りの説明では、例を挙げた説明のためのみに、バッチとして細胞又は組織試料(インキュベーション中の新鮮な培地との培地の交換の間に2日を要する)を使用する。以下及び本出願の残り全体を通じた記載を読むことにより、生物学的物質、化学的物質又は他の試料をシステムによってどのように加工できるかを当業者は理解するであろう。
II.試料調製
ステップ2. ロボットデキャッパ830は試料容器を開け、ピペッタ814は第1のピペットチップを使用して試料容器中の試料の体積を決定する。
試料が酵素消化を必要とする組織である場合、ピペッタ814は、第2のピペットチップを用いてバッチを含有する試料容器(例えば、細胞加工容器314)中に酵素溶液を分注し、ロボットモジュール700は、液体細胞溶液への組織試料の酵素消化のために試料容器を加熱振とう器494へと移送する。次いで、グリッパ816は、酵素消化された組織バッチを含有する試料容器を濾過ステーション492に移送し、そこでバッチは、1つ又は複数(例えば、数個の)所望のフィルタ孔直径(例えば、110μmの後に25μm)を通して真空濾過されて、目的の出発細胞を含有する液体化された試料を生成する。細胞は、遠心分離機150での密度勾配分離によってさらに分離されてもよい。真空又は陽圧濾過を使用して、ある特定の大きさ(サイズ排除を有する)の微細化された組織ホモジネート及び細胞/組織/材料、及び同種のものを生成してもよい。
試料が細胞溶液又は他の溶液である場合(又は試料が溶液の形態になったら)、ピペッタ814は第2のピペットチップを使用して試料を回収する。
ステップ3. ロボットピペッタ814は、(試料が溶液の形態であり、且つ試料を回収するために第2のピペットチップが使用された場合、)第2のピペットチップを使用してバッチを容器314から第1の50ml遠心チューブ346に移す。ロボット分注器818、又は第3のピペットチップを有するピペッタ814は、バッチを含有する第1の50ml遠心チューブ346に食塩水、PBS又は培地を加えて、バッチを希釈する。
ステップ4. ロボットモジュール600は、バッチを含有する第1の50ml遠心チューブ346を遠心分離機150に移す。遠心分離機150は、800×gで15分間遠心分離を行うように制御ユニット1000によって制御される。ロボットモジュール600は、遠心分離機150からデッキ910上のチューブホルダへと第1の50ml遠心チューブ346を移送する。
ステップ5. 液体密度の微小な変化を検出できるロボットピペッタ814は、第4のピペットチップを使用してチューブホルダ410上の第1の50ml遠心チューブ346から空の第2の50ml遠心チューブ346に所望の液層を移す。
ステップ6. ロボット分注器818、又は第5のピペットチップを有するピペッタ814は、バッチを含有する第2の50ml遠心チューブ346に食塩水、PBS又は培地を加えて、バッチを希釈する。
ステップ7. ロボットモジュール600は、バッチを含有する第2の50mlチューブを遠心分離機150に移す。遠心分離機150は、200×gで10分間第2の50mlチューブを遠心分離するように制御ユニット1000によって制御される。ロボットモジュール600は、遠心分離機150からデッキ910上のチューブホルダ410へと第2の50mlチューブを移送する。
ステップ8. ロボット吸引器/グリッパ812は、結果として生じた上清を第2の50mlチューブから吸引し、液体廃棄物レセプタクル158に入れる。
ステップ9. ロボット分注器818、又は第6のピペットチップを有するピペッタ814は、30mlの食塩水、PBS又は培地を第2の50mlチューブに加えることによって細胞ペレットを再懸濁する。
ステップ10. ロボットモジュール600は、バッチを含有する第2の50mlチューブを遠心分離機150に移送する。遠心分離機150は、200×gで5分間第2の50ml遠心チューブ346を遠心分離するように制御ユニット1000によって制御される。ロボットモジュール600は、遠心分離機150からデッキ910上のチューブホルダ410へと第2の50mlチューブを移送する。
ステップ11. ロボット吸引器/グリッパ812は再び、結果として生じる上清を第2の50mlチューブから吸引し、液体廃棄物レセプタクル158に入れる。
ステップ12. ロボット分注器818は、ピペッタ814と共に、第7のピペットチップを使用して所望の細胞培養培地を第2の50mlチューブに加えることによって所望の細胞培養培地中に細胞ペレットを再懸濁する。
III.加工(この実施例では細胞増殖)
ステップ13. ロボットピペッタ814は、再懸濁された細胞ペレットを、デッキ910の細胞加工容器ステーションに配置された1つ又は複数の第1の細胞加工容器314(例えば、細胞培養プレート又は皿)に分注する。
ステップ14. ロボットモジュール700は、細胞加工容器ステーションからインキュベータ152へと第1の細胞加工容器314を移送し、例えば、5% CO2及び5% O2、37℃の温度で2日間インキュベートする。
ステップ15. ロボットモジュール700は、第1の細胞加工容器314の1つを顕微鏡及びプレートリーダ472に移送して、細胞数及び/又は密集度を決定する。所望の細胞数及び密集度に達していない場合、ロボットモジュール700は、第1の細胞加工容器314をデッキ910上の傾斜モジュール430に移送する。細胞が接着培養物である場合、(新たな滅菌された吸引器チップを有する)吸引器812を用いて培地を吸引し、ロボット分注器818、培地注入ステーション420を用いるか、又はボトル838からの培地を使用してピペッタ814を用いるかのいずれかにより新たな培地を細胞加工容器314に加えた後に、細胞加工容器314をインキュベータ152に戻す。細胞が非接着培養物である場合、滅菌されたチップを使用してピペッタ814を用いて細胞懸濁液を回収し、50mlチューブに分注してそれを上記のように200×gで5分間遠心分離した後に、上清を吸引し、上記のように新鮮な培地中にペレットを再懸濁し、結果として生じた細胞溶液を新たな滅菌されたチップを使用してピペッタ814を用いて同じ又は新たな細胞加工容器314に移し、そして細胞加工容器314をインキュベータ152に戻す。1日のさらなるインキュベーションの後に、顕微鏡及びプレートリーダ472によって細胞数及び/又は密集度について細胞加工容器314を解析する。試料が所望の細胞数/密集度にまだ達していない場合、試料をさらに1日インキュベータ152に戻す。所望の細胞数/密集度にまだ達していない場合、培地の変更以降の上記ステップを所望の細胞数/密集度に達するまで繰り返す。
ステップ16. 所望の細胞数及び/又は密集度に達したら、ロボットモジュール700は、第1の細胞加工容器314を傾斜モジュール430に移送する。細胞が接着培養物である場合、追加のステップを行う:ロボット吸引器/グリッパ812は、培地の全て又はほとんどを液体廃棄物レセプタクル158に除去し(これは、培地中の目的の抗体、生物学的物質又は他のタンパク質の下流の加工及び精製のために回収されてもよい)、ロボットピペッタ814は、新たな滅菌されたピペットチップを使用して細胞解離溶液(例えば、トリプシン)を第1の細胞加工容器314にピペッティングし、ロボットモジュール700は、細胞解離溶液を活性化させるために37℃に温めながら第1の細胞加工容器314を振とうするために第1の細胞加工容器314を加熱器及び振とう器モジュール494に移送し、ロボットピペッタ814は、新たな滅菌された又は交差汚染のないピペットチップを使用して細胞溶液を上下にピペッティングして、細胞塊がより小さい細胞塊に解離するのを助け、そしてロボットピペッタ814、ロボット分注器818、又は培地注入ステーション420は、培地を第1の細胞加工容器314に加えて細胞解離溶液を中和する。
ステップ17. ロボットピペッタ814は、滅菌されたピペットチップを使用して第1の細胞加工容器314から培地+細胞を取り出し、(細胞の細胞数、生存能力、抗体染色及び特徴解析などのために顕微鏡及びプレートリーダ472及び/又はフローサイトメータ470に移送される小試料と共に)50mlチューブに分注し、それを上記のように200×gで5分間遠心分離した後に、システム(これは、エンクロージャ110の内側にあってもよいし、又は、ロボットモジュール700が解析のために試料を移送できる隣接する含有されたモジュールであってもよい)における適切なアッセイによる無菌性、エンドトキシン及び/又はマイコプラズマ解析のために、滅菌されたチップを使用してピペッタ814を用いて上清(これは、上清中の目的の抗体、生物学的物質又は他のタンパク質の下流の加工及び精製のために回収されてもよい)又は回収物を吸引する。
次いで、上記のように新たな滅菌されたピペットチップと共にピペッタ814を使用して、デキャッパ414を使用してキャップを取り外された以前に導入されたバイアルからの新鮮な培地(+添加物(適用可能な場合))に細胞ペレットを再懸濁し、結果として生じた細胞溶液を、新たな滅菌されたピペットチップを使用してピペッタ814を用いて2つ又はそれより多くの新たな第2の細胞加工容器314に移す。
ステップ18. ロボットモジュール700は、2日間のインキュベーションのために第2の細胞加工容器314をインキュベータ152に移送する。
バッチのための細胞の所望の総数が得られるまでステップ15~18を繰り返す。
IV.回収
ステップ19. ステップ15~17を繰り返す。ロボットピペッタ814は、細胞を輸送するために好適な培地中に細胞ペレットを再懸濁し、傾斜モジュール440上に置かれた1つ又は複数の輸送トレイ340に細胞を注入するか、又は、凍結保存溶液中に細胞ペレットを再懸濁し、1つ又は複数のクライオバイアル884に細胞を注入し、次いでデキャッパ414によってクライオバイアル884にキャップをして、凍結保存のための細胞の速度制御された冷凍のためにクライオ冷凍機460に移送する。
V.貯蔵又は輸送
ステップ20. ロボットモジュールは、輸送トレイ340又はクライオバイアル884を梱包モジュール950に移送する。梱包モジュール950は、輸送のために輸送トレイ340又はクライオバイアル884を箱詰めし、ラベルする。梱包モジュール950はまた、場合によっては、輸送トレイ340又はクライオバイアル884を貯蔵することができる。
VI.品質管理及び品質保証
ステップ21. 予め定められた合格/不合格の基準について顕微鏡及びプレートリーダ472及び/又はフローサイトメータ470においてステップ17からの細胞試料を解析する。顕微鏡及びプレートリーダ472又は他の解析機器(エンクロージャ110の内側にあってもよいし、又はエンクロージャ110に接続されていてもよく、また、ロボットアーム605、705又はグリッパ816によって到達可能なものである)によって無菌性、エンドトキシン及び/又はマイコプラズマに関する合格/不合格の基準についてステップ17からの上清試料を解析する。別々の品質保証制御モジュールによって試料調製、加工、回収、梱包(及び該当する場合は、貯蔵)、及び解析ステップの全て(例えば、本実施例のステップ1~20)、及び予め定められた許可基準への適合性の結果を確認し、全ての許可基準が満たされている場合、バッチを搬送のために出荷し、全ての許可基準は満たされていない場合、バッチは目印を付けられ、搬送のために出荷されず、最終的に梱包モジュール950から固体廃棄物レセプタクル156又は別の廃棄物エリアに処分される。
A.材料の流れ
(例えば、患者から得られた)細胞及び組織試料、並びにプラスチック製品(チューブ、皿、トレイなど)などの全ての試薬及び消耗品は、BSC130を通じてACPS100に導入される。BSC130においてそれらの面は洗浄され、例えばエタノール又はイソプロパノールで滅菌される。
全ての入ってくる材料の外面が洗浄及び滅菌されたら、BSC130のアクセスポート262のスライディングゲートは閉じられる。HEPAフィルタを通った空気をBSC130を通じて循環させて、BSC130の内側の空気中の粒子の数を減少させる。ある特定の期間後にBSCのアイソレータ接続ポート260(及び/又はアイソレータ120のBSC接続ポート244)が開かれ、BSC130からの材料がアイソレータ120に移送される。アイソレータ接続ポート260が開いている時は常にBSC130のアクセスポート262は閉じたままとされる、及びその逆とされることが留意されるべきである。
材料がアイソレータ120の内側に入れられると、滅菌された材料の外部保護袋が開けられる(該当する場合)。材料は、移送トレイ322上に置かれた予め指定されたトレイに置かれ、このトレイは、エンクロージャ110のエンクロージャアクセスポート240及びアイソレータアクセスポート220を通ってエンクロージャ110に引き渡される。一部の材料は、予め指定されたトレイ上に置かれることなく直接的に移送トレイ322に置かれてもよい。エンクロージャ110の内側で、ロボットモジュール700のロボットアーム705は、トレイ322上の全ての材料を拾い上げて選別する。エンクロージャ110は、閉じた滅菌された/無菌の環境を提供し、該環境中で、全ての細胞加工ステップは人間又は実際的な介入なしでロボットにより又は自動的に行われる。一部の場合には、非常に大きい容器中に受け入れられた材料は、より小さい滅菌された容器中に注がれ、次いでそれが予め指定されたトレイ及び/又は移送トレイ322に置かれる。予め指定されたトレイに置かれる前に、一部の容器のスクリューキャップは少し緩めることを必要とする場合がある一方で、他の容器のキャップは完全に除去される場合がある。大きい培地バッグ中でアイソレータ120に導入される細胞培養培地及び他の高容量材料(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)など)は、典型的に+4℃の冷却器に入れられ、エンクロージャ110の中の培地注入ステーション420によって必要に応じてポンプ及び加熱されるために指定された培地ラインに留められる。場合によっては、培地バッグは、アイソレータ120の中の指定された培地ラインに留められた後に、貯蔵のためにアイソレータ120に隣接する+4℃の冷却器に入れられ、そして培地ライン(すなわち、チューブ)を介して冷却器の中の培地バッグから直接的に培地注入ステーション420において培地を注入することができる。
エンクロージャ110の中で、予め指定されたトレイは、(i)エンクロージャ110の内側のラック332において周囲エンクロージャ空気で(これは主に、プレート、ピペットチップ、及びチューブなどのプラスチック製品からなる);(ii)+4℃で(これは主に、より小さい容量の様々な試薬及び培地からなる);又は(iii)冷凍器154の中で-20℃で(これは主に、解析用の培地添加物及び抗体などの様々な試薬からなる)、のいずれかで貯蔵される。
なお、一部の実施では、閉じた容器の中の完了した製造物(例えば、加工が完了した細胞のバッチ)は、導入されたのとは逆の順序で、例えば、エンクロージャ110へのエントリーについて上記したものと逆の順序で、エンクロージャ110から取り出される。他の実施では、閉じた容器の中の完了した製造物(すなわち、完了したバッチ)は、上記のアイソレータ接続ポート220以外のアクセスポートからエンクロージャ110を離れる。例えば、アイソレータ120及びBSC130を通って出て行くのではなく、完了した製造物は、出て行って冷凍器(図17の冷凍器180など)に入る又は別個の位置にある別のアクセスポートを通って出て行ってもよい。
細胞加工の間、液体廃棄物は概して、滅菌された使い捨てチップ870を使用する液体吸引システム(ロボット吸引器/グリッパ812)によって除去される。加えて、チューブ868及び液体廃棄物ラインの内側の通路は、エンクロージャ110の内側でロボット加工システムによってエタノールで滅菌され、漂白されてもよい。固体廃棄物は、陰圧の廃棄物レセプタクル156(圧力はエンクロージャ110に対して負である)に入れられる。陰圧の固体廃棄物レセプタクル156は、空気をHEPAフィルタを通して部屋の中(又は建物のHVAC返りダクトの中に)に連続的に押し入れることによって、粒子が固体廃棄物レセプタクル156からエンクロージャ110の中に戻ってくることを防止する。システムが位置する部屋の中にいる人間によって直接的に、固体廃棄物レセプタクル及び液体廃棄物レセプタクルの両方を除去し、交換することができる。安全性機構により、廃棄物の除去の間に部屋からの空気又は粒子がエンクロージャ110の中に入ってくるのを防止するために、廃棄物容器とエンクロージャ110との間の開口部が密閉されるまでは固体又は液体廃棄物容器を除去できないことが確実とされている。
一部の実施では、エンクロージャ110は、クラス10又はより高い環境を有し、アイソレータ120及び/又は固体廃棄物レセプタクル156に対して陽圧である。アイソレータ120は、BSC130に対して陽圧である。BSC130及び固体廃棄物レセプタクル156は、部屋に対して陽圧である。液体廃棄物レセプタクル158は真空下にあり、液体ラインチューブによって隔離されており、且つエンクロージャ110及び部屋に対して陰圧下にある。インキュベータ152は、エンクロージャ110から密閉され、開いている時にエンクロージャ110に対してわずかに陰圧である。さらに、一部の実施では、インキュベータ152は、(例えば、微生物の増殖を阻害するために完全銅合金チャンバで、HEPAフィルタで、内側に置かれた水受皿の代わりに滅菌水蒸気生成器で、及び同種のもので)汚染を防止するように構築されていてもよい。
一部の実施では、細胞がインキュベータ152の内側で保護されている間に、エンクロージャ110及びアイソレータ120は、滅菌ユニット550を使用して過酸化水素(H2O2)蒸気によってさらに滅菌されてもよい。細胞が二次的なインキュベータの中又はエンクロージャ110の中にある間に、インキュベータ152はまた、例えばClO2気体を使用して滅菌されてもよい。
操作者のエラーを防止するための内臓式インターロックシステムと組み合わせたACPS100の中及び外への材料の段階的な動きは、外側の環境からの汚染又はACPS100の中に導入される材料及び品物の面上の汚染を防止するように設計されている。ACPS100の中に導入される全ての導入される品物は、バッグなどの滅菌された容器の内側にあるか、又は、ACPS100の中に導入する前に外面を無菌的に拭かれ、洗浄される。次いで、品物は、BSC130の中の空気環境洗浄サイクルを通って進んだ後に、BSC130からアイソレータ120の中に移送される。アイソレータ120の中で、滅菌された/無菌の品物は、滅菌されたカスタム容器に載せられた後に、それがエンクロージャ110の中に移送される。エンクロージャ110の内側で、全ての品物はロボットにより操作される。
B.ロボットによる製造プロセスの流れ
エンクロージャ110の中に入った後に、バッチ(すなわち、エンクロージャ110の中に導入された液体細胞又は組織試料)は、50mlの遠心チューブ346に移され、遠心チューブ346は、分離膜を有し、且つ、目的の出発細胞の密度勾配分離のために、密度勾配培地(例えば、Lymphoprep(商標) Tubeとして市販されている1.077g/mlの密度のhistopaque、Axis-shield、商品#1019817又は1019818;STEMCELL Technologies Inc.、Vancouver、Canadaによっても提供される)を予め入れてある。一例としては、Lymphoprep(商標) Tubeが使用される場合、バッチを食塩水又はPBSに1:1で希釈し、30mlの希釈したバッチをピペットで取ってLymphoprep(商標) Tubeに入れた後に、800×gで15分間遠心分離機150で遠心分離する。
なお、ロボットピペッタ814は、元々のバッチ(すなわち、エンクロージャ110の中に導入された液体細胞又は組織試料)中の液体の体積を検出することができ、内臓のアルゴリズムを使用して食塩水、PBS又はバッチとの混合が所望される他の溶液の適切な体積を決定すると共に、必要な数のLymphoprep(商標) Tubeへの混合後に全体積を分割することを可能とする。混合体積及び必要なチューブの数は、概して以下の式:全体積/30MLを使用して決定され、これを次の整数に切り上げた後に、この数を使用して式:全体積/数によって各チューブのための体積を算出する。
一部の実施では、組織試料を含むACPS100の中に導入されたバッチを、最初に酵素消化した後に、1又は複数(例えば、数個)の所望のフィルタ孔直径(例えば、110μmの後に25μm)を通して真空濾過して、密度勾配分離のための目的の出発細胞を含有する液体化された試料を生成してもよい。真空濾過はまた、ある特定の大きさ(サイズ排除を有する)微細化された組織ホモジネート、細胞/組織/材料、及び同種のものを生成するためにも使用することができる。
密度勾配遠心分離後に、液体密度の微細な変化を検出できるロボットピペッタ814によって、又はLymphoprep(商標) Tubeの膜の最上部に液体全体を移すことによって、所望の液層を空の50ml遠心チューブ346の中に移す。次いで、液層を食塩水又はPBSに1:1で希釈し、200×gで10分間遠心分離する。結果として生じる上清を液体廃棄物レセプタクル158の中に吸引し、細胞ペレットを30mlの食塩水又はPBSに再懸濁した後に、200×gで5分間遠心分離する。結果として生じる上清を再び液体廃棄物レセプタクル158に吸引し、細胞ペレットを所望の細胞培養培地に再懸濁し、1つ又は複数の細胞加工容器314(例えば、細胞培養プレート又は皿など)に入れる。次いで、細胞加工容器314をインキュベータに入れる。
最後の再懸濁された細胞ペレットにおいて、生細胞の総数及びバッチ中の所望の細胞の数は、顕微鏡472又はフローサイトメータ470のいずれかを使用して推定することができ、再懸濁された細胞ペレットの適切な希釈及び再懸濁された細胞ペレットをプレーティングするべき細胞培養皿の数を決定するためのアルゴリズムを使用することができる。
なお、所望の細胞培養培地を、培地注入ステーションから細胞培養皿にポンプ(又はそれからピペットする)してもよいし、又は搭載された培地加熱器によって所望の温度(例えば、37℃)に予備加熱された培地ボトルからピペットしてもよい。培地に所望のサイトカイン及び他の添加物を添加することもでき、これらは、システム上に貯蔵され、必要な濃度をピペットで取って培地ボトル又は培地桶の中に入れられるか、又は細胞加工容器314に直接入れられる。
設定した時点において細胞培養培地を部分的に又は完全に交換することができる。これは典型的に、細胞加工容器314(例えば、プレート)をインキュベータ152からデッキ910、好ましくは傾斜モジュール440に(ロボットモジュール600によって)動かすこと、蓋を取り外すこと、及び、ロボット吸引器872及び/又はロボットピペッタ814を使用して古い培地を吸引して液体廃棄物レセプタクル158の中に入れることからなる。次いで、細胞加工容器314を培地注入ステーション420に動かし、所望の量の新鮮な培地を注入する。任意の必要な添加物をロボットピペッタ814によって加える。次いで、蓋を細胞加工容器314に戻し、細胞加工容器314をインキュベータ152に戻す。
当該技術分野で公知の標準技術を使用して細胞を精製又は選択することができる。例えば、所望の細胞又は所望しない細胞のいずれかを標的化する抗体を例えば用いて、磁気細胞選択又は細胞選別機を使用して細胞を精製又は選択(selecting)してもよい。磁気細胞分離の例としては、鉄芯又は類似の芯を取り付けた抗体を、細胞加工容器314(例えば、チューブ又はフラスコ又は細胞培養トレイ344、344’中)に入れた浮遊細胞に加えた後に、全ての細胞を細胞加工容器314の底(例えば、プレートの底、及び/又はチューブ又はフラスコの側部など)に引っ張るために充分に強い磁石434を備えた磁気傾斜モジュール430に細胞加工容器314(これは例えば、チューブ、フラスコ、又はプレートであり得る)を置く。例えば、Sox2又はNestinなどの神経マーカーを認識する鉄芯を取り付けた抗体を使用して、全ての接着細胞のトリプシン処理後に神経幹細胞を選択することができる。次いで、所望の細胞が細胞加工容器314中に残るように、残りの細胞を有する培地を細胞加工容器314から吸引して液体廃棄物レセプタクル158に入れる。次いで、細胞加工容器314を磁石から取り外す。細胞を新鮮な培地中に再懸濁し、細胞加工容器314にプレーティングし、生育させる。或いは、混合細胞集団における細胞枯渇のための手順を使用することができ、該手順では、除去することを所望する細胞を認識するための抗体を使用し、細胞を有する培地を吸引して廃棄物に入れる代わりに、細胞を有する培地を回収し、直接的に細胞加工容器314にプレーティングする。一部の実施では、磁気的に付着しない細胞を含む培地のより良好な除去を可能とする傾斜モジュール440に磁石を置いてもよい。
例えば、DNAプラスミド、RNA、タンパク質、小分子、又は別の初期化剤を用いて、細胞を転換又は初期化することができる。DNAプラスミドの例では、DNAプラスミドを脂質カクテル(例えば、Lipofectamine LTX & Plus reagent、Invitrogen)又は磁気トランスフェクションキット(例えば、LipoMagなどのMagnetofectionキット、Oz Biosciences)と混合した後に、細胞(場合によっては培地中、又は培地を後で加えてもよい)に加えることができる。次いで、DNA-脂質複合体(磁鉄又は他の粒子を伴う又は伴わない)を含む培地を除去し、所望の時間後に新鮮な培地と交換した後に、インキュベータに戻す。
一部の場合には、冷凍器154中-20℃で添加物を冷凍及び/又は貯蔵する。この場合、それらを冷凍器154から取り出し、エンクロージャ100の内側で解凍した後に、細胞培養培地の交換処理を開始する前にピペットチップによってアクセスできるようにキャップを取り外すことができる。
一部の実施では、搭載された粒子カウンタ190により、(例えば、細胞培養皿上の)細胞のバッチに対して任意の加工ステップを行う前に空気環境が充分に清浄又は本質的に滅菌された/無菌であることが確実にされる。粒子カウンタ190による空気環境のこの監視、並びに細胞加工と空気監視との連携は、汚染、特にバッチ間の交差汚染を防止するために働く。さらには、細胞又は培地と接触する全ての部品は、滅菌を保つように設計される。これは部分的には、各バッチの加工の間に交換される滅菌された使い捨てのパーツの使用によって達成され、残りのパーツはバッチと接触させないか、又は各バッチと接触させる前に各時点で滅菌される。これらの手順もまた、汚染、特にバッチ間の交差汚染を防止し、且つ全ての時点で無菌の加工条件を維持するために働く。
一部の実施では、(例えば、加工内の制御として)密集度の%並びに細胞の形態及び健康状態を決定するために培地交換の前にロボット顕微鏡によって接着細胞の細胞培養皿を観察することができる。密集度の%がある特定の値より高い、例えば約80%より高い場合、代わりに継代プロトコールを開始する(以下にさらに詳細に記載する)。
浮遊培養のために、搭載されたフローサイトメータ470を使用して、(加工内の制御として)蛍光染色を使用して細胞数、細胞の生存能力、そして同一性さえも決定することができる。皿あたりの細胞数がある特定の値より多い、例えば約1000万細胞より多い場合、継代プロトコールを開始する(以下にさらに詳細に記載する)。
接着細胞がある特定の密集度の%より高い、例えば約80%より高い密集度であると搭載された顕微鏡472が決定した時、又は、浮遊細胞がある特定の数より多い、例えば約1000万の細胞より多いとフローサイトメータが決定した時、継代プロトコールが開始される。継代は、概して、細胞培養皿の中の細胞を2つ又はそれより多くの細胞培養皿に分割することを伴う。
浮遊(すなわち、非接着)培養の場合、継代は単に、細胞加工容器314の中の細胞を含有する培地の一部分(例えば、半分)をピペット814で取り除いた後に、取り除いた培地+細胞を新鮮な細胞加工容器314の中にピペットして入れることを伴い得る。例えば、培地+細胞の3/4を取り除いてよく、次いで各1/4を新鮮な細胞加工容器314の中にピペットして入れてよく、次いで各細胞加工容器314に充分な量の新鮮な培地(任意の必要な添加物を含み、これは培地中に加えてもよいし、或いは別々に加えてもよい)を注入することができる。細胞塊の場合にはより複雑なプロトコールを使用することができ、これは、細胞加工容器314を傾斜させ、細胞を含む全ての培地をピペットによって取り除き、培地+細胞を50ml遠心チューブ346に移し、(例えば、200×gで)遠心分離して細胞をペレット化し、吸引ツールを用いて上清を廃棄物の中に除去し、細胞ペレットを細胞解離溶液(例えば、トリプシン、Accutase(登録商標)、又は他の細胞解離溶液)に再懸濁し、場合によっては、チューブを温め、チューブを振とう若しくは回転させるか、又は細胞溶液を上下にピペッティングして、細胞塊がより小さい細胞塊又は個々の細胞に解離するのを助け、その後に培地で中和し、そしてこれを2つ又はそれより多くの細胞培養皿にプレーティングするか、又はもう1度遠心分離し、吸引ツールを用いて上清を廃棄物の中に除去し、細胞ペレットを培地に再懸濁した後に、細胞を2つ又はそれより多くの細胞培養皿にプレーティングすることを伴う。次いで、細胞加工容器314をインキュベータ152に入れる前に、(適用できれば)任意の追加の培地及び添加物を各細胞加工容器314にさらに加えることができる。
接着培養の場合、細胞加工容器314を傾斜モジュール440に置き、吸引ツールを用いて培地の全て又はほとんどを廃棄物中に除去し、細胞解離溶液(例えば、トリプシン、Accutase(登録商標)など)をピペットで取って細胞加工容器314に入れ、次いでそれを振とう器に入れ、場合によっては、細胞加工容器314を温め、且つ又は細胞溶液を上下にピペッティングして細胞塊がより小さい細胞塊又は個々の細胞に解離するのを助け、その後に培地で中和し、そしてこれを2つ又はそれより多くの細胞加工容器314にプレーティングするか、又はピペットで50mlチューブに入れて遠心分離し、吸引ツールを用いて上清を廃棄物中に除去し、細胞ペレットを培地に再懸濁した後に、細胞を2つ又はそれより多くの細胞加工容器314にプレーティングする。次いで、細胞加工容器314をインキュベータ152に入れる前に、(適用できれば)任意の追加の培地及び添加物を各細胞加工容器314にさらに加えることができる。
バッチについて細胞の所望の総数が得られた時に、そのバッチのための細胞を回収する。回収は、(上記の継代プロトコールの前又は後に)バッチのための(場合によっては、品質管理(QC)解析のために使用される1つを除いて)全ての細胞加工容器314をシステムから出して人間レシピエントへ又は別のロボットへ動かすか、又は、細胞が新鮮な培地に再懸濁されるステップの直前までの上記の継代プロトコールを開始することのいずれかを伴う(これもまた、場合によっては、1つの細胞加工容器314、又は細胞加工容器314の中の細胞の一部分を別にし、品質管理(QC)解析のために使用する)。後者の場合、継代プロトコールは、(i)(同じ又は異なる培地、添加物及び/又は濃度を使用して)細胞を細胞加工容器314にプレーティングするステップの直前まで続けた後に、細胞を輸送トレイ340(例えば、Petaka細胞培養カセット)又は別の可搬式細胞培養システムに注入するか;又は(ii)細胞ペレットを凍結保存溶液に再懸濁し、ピペットしてクライオバイアル884に入れ、温度制御されたクライオ冷凍機460(Grant EF600M Controlled Rate Freezerなど)に入れ、場合によっては、キャップをせずに小さい滅菌されたピペットチップを用いて-20℃の冷凍器から核生成を行うのを可能とした後に、冷凍加工の終わりにクライオバイアル884にキャップをし、冷凍された凍結保存された細胞をクライオ冷凍機460に移送する。或いは、冷凍された凍結保存された細胞を冷凍したクライオバイアルホルダに移し、次いでそれを迅速にアイソレータ120に移送し、そこで人間ユーザーにより、バッチを拾い上げてそれを貯蔵のためにクライオ冷凍機(例えば、クライオ冷凍機162)に入れるか、又は、例えば臨床の場所への、搬送用の容器(例えば、LN2 Dry Shipper)に入れることができ、又は、必要に応じて任意の他のステップを行うことができる。
C.ロボットによる品質管理プロセスの流れ
搭載された顕微鏡472、フローサイトメータ470及び/又はプレートリーダ472を使用して細胞、細胞培養物、条件培地及び試薬に対して様々な解析アッセイを行うことができる。そのような解析アッセイの非限定的な例をここに記載する:
細胞密集度. 搭載された顕微鏡によって細胞密集度を解析して、細胞が所望の密集度、例えば約80%より高い密集度である時に細胞継代の引き金とすることができる。加工内及び/又は加工後の品質管理(QC)の読出しとして搭載された顕微鏡によって正確な細胞形態も解析することができる。
細胞の数及び生存能力. 搭載されたフローサイトメータによって細胞の数及び生存能力並びに生細胞マーカーを迅速に解析することができ、これらは、加工内のQC(すなわち、トリプシン処理後)のために及び/又は加工後のQCの読出しとして各継代において使用することができる。搭載されたソフトウェアによって細胞数及び細胞密集度を使用して、細胞の増殖曲線を算出することができ、これにより次の継代の時間及び(合計の)細胞の所望の数が加工の終わりに準備できる時を予測することができる。
細胞の直径、密度、及びマーカー発現. フローサイトメータにより、特定の細胞マーカーの発現と共に細胞直径及び細胞密度を解析することができる。例えば、蛍光生存染色又は抗体を使用して、所望の細胞を同定し、且つ(例えば、所望の細胞である細胞及び/又は粒子のパーセンテージを決定することによって)バッチの純度を決定することができる。これらのアッセイは、加工内及び加工後のQCの読出しとして行うことができる。
細胞の分化能力及び同一性. 搭載された顕微鏡及びソフトウェアアルゴリズムを使用して分化能力又は同一性アッセイのいずれかとして、バッチ中の細胞の試料を他の培地及び/又は他の条件に入れて、それらの挙動を決定することができる。例えば、神経幹細胞を分化培地に入れて、ニューロン、アストロサイト及びオリゴデンドロサイトに分化させることができ、結果生じるニューロンの軸索の長さを測定することができる。
安全性. 腫瘍コロニー形成アッセイなどの安全性を決定するためのアッセイを行い、搭載された顕微鏡及びソフトウェアアルゴリズムを使用して解析することができる。
他のアッセイ. 例えば、タンパク質定量化のため及びテロメラーゼ活性のためのアッセイなどの数多くの他のアッセイと共に、プレートリーダを使用して、エンドトキシン、マイコプラズマ及び無菌性の加工内及び加工後のQCの読出しアッセイを行うことができる。
スペクトルカメラと共に搭載された顕微鏡472及びソフトウェアアルゴリズムを使用して核型解析を行うことができる。
搭載されたPCR装置(図示せず)及びプレートリーダ472を使用して、遺伝子の組込み及び短鎖縦列反復配列(STR)解析を行うことができる。
D.ロボットによる試薬プロセスの流れ
上記のように、全ての試薬は、BSC130及びアイソレータ120を通ってエンクロージャ110に入る。一部の実施では、試薬は、ロボットによりアイソレータ120からエンクロージャ110に導入される。試薬はより小さい容量にアリコート化され、エンクロージャ110の内側でバイアルに入れられる。一般に、アリコートは、ある特定の期間、ある特定のアッセイ、又は単回の使用のために必要とされる試薬の量に対応する。例えば、試薬は、1日あたり、アッセイあたり、及び同種のもので必要とされるより小さい容量にアリコート化することができる。アリコート化された試薬は適宜貯蔵され、例えば、それらは-20℃の冷凍器154又は-86℃の搭載された冷凍器、+4℃の搭載された冷却器又は他の冷却場所に入れることができ、又は必要に応じて室温で貯蔵することができる。
一部の実施では、試薬は、製造者から受け取った容器中でエンクロージャ110の中に導入され、人間操作者によって一度も開かれることなく、ロボットによって開けられ、アリコート化される。
アリコート化される前又は細胞若しくは培地に加えられる前に、搭載された0.22μm無菌濾過システム492によって試薬を濾過滅菌することができる。
なお、エンクロージャ110の内側で光をオフにしている間に、蛍光抗体及び染色剤、及び任意の他の光感受性材料を操作する。
冷凍されたアリコートを使用する場合、それらを冷凍器154から出し、所望により、室温でデッキ910上に置いてゆっくりと解凍するか、又はより早い解凍及び/又は温めのために加熱器に置くか、又はさらに早い解凍及び/又は温めのために振とう加熱器に置く。準備ができたら、冷凍されたアリコートを貯蔵する容器のキャップをデキャッパ(通常、0.5~4mlバイアル用のロボット吸引器/グリッパ812を使用して、及び50mlチューブ、100ml又は125mlフラスコ及び同種のもののためのデキャッパ830を使用して)によって取り外した後に、ロボットピペッタ814を使用して所望の体積を回収する。
上述したように、多くの試薬は、エンクロージャ110内に貯蔵された試薬供給容器からエンクロージャ110内の細胞加工容器314にロボットピペッタ814を使用して直接的に注入される。エンクロージャ110内での試薬の直接的なアリコート化及び長期間の貯蔵は、エンクロージャ110の中に試薬容器を連続的に導入する必要性、及び、試薬の大きいバッチを品質管理し、貯蔵する能力の必要性をなくし、したがって試薬のための例えば2年の期間にわたる、品質管理の時間及び費用を低減する。
また、培地注入ステーション420に接続された培地注入ライン及びロボットピペッタ試薬分注器818を使用して、多くの溶液が、エンクロージャ110の外側に貯蔵された溶液供給容器からエンクロージャ110内の細胞加工容器314に直接的に注入される。溶液の直接的な注入は、エンクロージャ110内での追加の溶液容器の貯蔵の必要性及びそれらの定期的な再注入の必要性をなくす。
上記の試薬のロボット操作は、汚染及びバッチ間の交差汚染のリスクの低減を助ける。
試薬及び化学物質が他の細胞と接触しない限り、試薬及び化学物質を細胞と同時に加工することができる。バッチ間の交差汚染を避けるために他では、ACPS100は、1つの時点に1つのバッチのみの細胞加工を許容するように設計されており、例えば、1つのバッチ用の細胞加工容器314のみを任意の所与の時点において開くことができる。同様に、試薬及び化学物質は、試薬及び化学物質が他のバッチと接触しない場合にのみ細胞のバッチと同時に加工され、そうでなければ、交差汚染を避けるために、いずれの細胞加工容器314も開いていないか、又は加工を受けていない時にのみ、試薬及び化学物質は加工されなければならない。
E.要約
上記の方法及びシステムは、ここで論じる利点の1つ又は複数を有し得る。
最初に、方法及びシステムは、エンドトキシン、マイコプラズマ、微生物、ウイルスなどの感染性因子からの汚染などの汚染を防止又は回避し得る。システムは、アイソレータ120及びBSC130によって提供される、本質的に滅菌された/無菌のエンクロージャ110と外部との間の数層もの分離を提供するように設計されている。したがって、試薬、培地、プラスチック製品、及び同種のものなどの消耗品は、エンクロージャ110の無菌性を乱すことなくアイソレータ120及びBSC130を介してエンクロージャ110に再供給することができる。ACPS100の中の空気の流れは、加工ステーションから粒子及び汚染物を押し出して遠ざけるように設計されている。搭載された粒子カウンタ190による連続的な監視、及び、予め定められたレベルに達した場合の加工の自動的な休止はまた、本質的に滅菌された/無菌の状態下でのみ加工ステップが行われることを確実にする。一部の実施では、エンクロージャ110の内側での実際的な人間の介入なしで最初から最後までの加工を行うことが可能である。一部の実施では、ACPS100をクリーンルームの内側で操作する必要がない程度まで、設計は無菌性を確実にする。
次に、方法及びシステムは、バッチ間の交差汚染を防止するように設計されている。同時に1つより多くのバッチが「開いて」いない又は加工を受けていない(すなわち、1つの時点に1つのバッチからの細胞加工容器314のみが環境に対して開いている)条件下で、バッチは逐次的に加工される。さらに、使い捨ての滅菌された設備(ピペットチップなど)が使用されるか、又は、設備は各バッチの加工の間に滅菌される。粒子カウンタ190は、エンクロージャ110内の粒子数を連続的に監視することができ、任意の時点で粒子数が許容された閾値より高くなった場合、粒子の数が許容されたレベルに戻るまで加工は休止される。廃棄物レセプタクル156、158は、細胞加工ステーション(すなわち、細胞加工容器314が環境に対して開かれるステーション)から離して置くことができ、また廃棄物から細胞加工容器314、試薬、又はエンクロージャ110の任意の部分へのあらゆるはね戻り又は他の汚染を防止するように構成することができる。これらの方法で、システムの設計は、バッチ間の交差汚染を防止又は回避することができる。この設計はまた、ACPS100が逐次的な加工を通じて且つバッチ間の交差汚染なしで同時にACPS100内で複数のバッチを扱うことを可能とする。一部の実施では、ACPS100は、GMP条件下、すなわちGMPのガイドライン及び規制が満たされるような条件下で、同時にACPS100内で複数のバッチを加工する能力を有するように設計される。
さらに、一部の実施では、ACPS100は、実際的な人間の介入なしで、本質的に滅菌された/無菌のエンクロージャの中での最初から最後までの加工を提供することができる。これは、手頃な費用で加工の高いスピード及び/又は効率を提供し得る。
加えて、一部の実施では、ACPS100は、GMPのガイドライン及び規制のために必要とされる品質管理(QC)及び品質保証(QA)のデータ及び情報を提供することができる。一部の実施では、最終製造物の品質保証(QA)及び/又は最終製造物の出荷は、人間操作者を必要とすることなく行われる。一部の実施では、製造物は、人間操作者を必要とすることなくQC及びQAの完了後に貯蔵される。
本発明の上記の実施形態に対する改変及び改良が当業者に明らかとなり得る。以上の説明は、限定的なものではなく例示的なものを意図する。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
本明細書で参照した全ての文献及び参照文献の内容は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。