JP7101403B2 - 電力取引支援装置及び電力取引支援方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 平成30年2月22日にウェブサイト(論文検索サイトarXiv)にて公開
本発明は、卸電力取引市場に対する入札を支援する電力取引支援装置及び電力取引支援方法に関する。
日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power eXchange)では、主要市場として、一日前市場(スポット市場)と、その調整市場としての当日市場(時間前市場)とが開設されている。一日前市場は、翌日に受け渡しする電力の取引を行う市場であり、当日市場は、当日に受け渡しする電力の取引を行う市場である。一日前市場及び当日市場では、一日を30分単位で区切った48個の入札時間帯(コマ)毎に電力の取引が行われる。
電気事業者は、一日前市場及び当日市場の2つの市場から電力を調達し、その調達した電力を電力供給先に供給する。しかし、電気事業者が調達した電力の量(以降、「調達量」と称する)が実際の需要量を下回った場合には、電気事業者は、その不足分に応じた弁済金であるペナルティ料金(インバランス料金)を電力会社(例えば、一般送配電事業者)に支払わなければならない。このペナルティ料金の単価は、一般的に、一日前市場での電力単価(電力卸価格)及び当日市場での電力単価よりも高く設定されている。一方、電気事業者の調達量が実際の需要量を上回った場合には、その超過分は、電気事業者が蓄電システムを備えていない限りは、電力会社に無償で提供されることとなる。したがって、この場合は、無償提供による無駄が生じる。
このように、電気事業者の調達量が実際の需要量と一致しない場合には、ペナルティ料金や無駄が生じるため、調達量と需要量との不一致を最小限に抑えることが求められる。このためには、一日前市場及び当日市場への入札時に需要量を予測することが必要となるが、一般的に、当日市場への入札時における需要量の予測精度は、一日前市場への入札時における需要量の予測精度よりも高い傾向にある。また、一般的に、当日市場での電力単価は、一日前市場での電力単価よりも高い傾向にある。そこで、前記各入札時での予測需要量と前記各市場での電力単価とを考慮して、電気事業者が卸電力取引市場から電力を調達するのに要する料金(以降、「電力調達料金」と称する)が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分する技術が求められている。
この種の技術として、例えば、閉場時間の異なる複数の電力市場に対する入札支援を行うための技術であって、前日と当日の予測精度の相違を考慮して、複数の市場へ入札量を最適に配分することが可能な売電スケジュールを生成するとした技術が知られている(特許文献1参照)。
特開2016-62191号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来技術では、前日と当日の予測精度の相違を考慮することにより、複数の市場へ入札量を最適に配分するとしているが、前日の予測精度及び当日の予測精度の少なくとも一方が低い場合は、当然ながら、電力調達料金が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分することはできない。
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、前日の予測精度及び当日の予測精度に応じて、電力調達料金の期待値が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分することを可能とする電力取引支援装置及び電力取引支援方法を提供することを主目的とする。
本発明は、卸電力取引市場に対する入札を支援する電力取引支援装置であって、過去の電力需要データに基づき、一日前市場への入札時の予測電力需要量である前日予測量を予測する前日予測量予測部と、過去の電力需要データに基づき、当日市場への入札時の予測電力需要量である当日予測量を予測する当日予測量予測部と、過去の前記前日予測量とそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差である前日予測誤差、及び過去の前記当日予測量とそれに対応する前記過去の実際の電力需要量との予測誤差である当日予測誤差をそれぞれ算出する予測誤差算出部と、前記前日予測量を前記前日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記前日予測量に基づいて決定された入札量で前記一日前市場に対して入札する一日前市場入札部と、前記当日予測量を前記当日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記当日予測量に基づいて決定された入札量で前記当日市場に対して入札する当日市場入札部とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、前日の予測精度及び当日の予測精度に応じて、電力調達料金の期待値が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分することが可能となる。
本発明に係る電力取引支援装置が適用される電力取引システムの概略図 本発明に係る電力取引支援装置のハードウェア構成図 本発明に係る電力取引支援装置の機能ブロック図 本発明に係る電力取引支援装置の当日市場入札部での処理を説明するための図 本発明に係る電力取引支援装置による増減パラメータ決定処理の流れを示すフロー図 本発明に係る電力取引支援装置による一日前市場入札処理の流れを示すフロー図 本発明に係る電力取引支援装置による当日市場入札処理の流れを示すフロー図 電力調達料金の期待値のグラフ 電力調達料金の分散のグラフ パラメータ(A、B)が(0、0)である場合の電力調達料金C(A、B)のシミュレーション結果を示すヒストグラム パラメータ(A、B)が(0.6、-2)である場合の電力調達料金C(A、B)のシミュレーション結果を示すヒストグラム 標準偏差σを5に変更した場合の電力調達料金Cの期待値のグラフ 標準偏差σを5に変更した場合の電力調達料金Cの分散のグラフ 標準偏差σを0.1に変更した場合の電力調達料金Cの期待値のグラフ 標準偏差σを0.1に変更した場合の電力調達料金Cの分散のグラフ 当日電力単価bを1.2に変更した場合の電力調達料金Cの期待値のグラフ 当日電力単価bを1.2に変更した場合の電力調達料金Cの分散のグラフ 当日電力単価bを2.8に変更した場合の電力調達料金Cの期待値のグラフ 当日電力単価bを2.8に変更した場合の電力調達料金Cの分散のグラフ 前日電力単価aを0.5に変更した場合の電力調達料金Cの期待値のグラフ 前日電力単価aを0.5に変更した場合の電力調達料金Cの分散のグラフ ペナルティ単価cを3.5に変更した場合の電力調達料金Cの期待値のグラフ ペナルティ単価cを3.5に変更した場合の電力調達料金Cの分散のグラフ
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、卸電力取引市場に対する入札を支援する電力取引支援装置であって、過去の電力需要データに基づき、一日前市場への入札時の予測電力需要量である前日予測量を予測する前日予測量予測部と、過去の電力需要データに基づき、当日市場への入札時の予測電力需要量である当日予測量を予測する当日予測量予測部と、過去の前記前日予測量とそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差である前日予測誤差、及び過去の前記当日予測量とそれに対応する前記過去の実際の電力需要量との予測誤差である当日予測誤差をそれぞれ算出する予測誤差算出部と、前記前日予測量を前記前日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記前日予測量に基づいて決定された入札量で前記一日前市場に対して入札する一日前市場入札部と、前記当日予測量を前記当日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記当日予測量に基づいて決定された入札量で前記当日市場に対して入札する当日市場入札部とを備えたことを特徴とする。
この第1の発明に係る電力取引支援装置によれば、過去の前日予測量及び当日予測量とそれに対応する過去の実際の電力需要量とに基づいてそれぞれ算出した前日予測誤差及び当日予測誤差に基づき、前日予測量及び当日予測量をそれぞれ補正することができる。これにより、前日の予測精度及び当日の予測精度に応じて、電力調達料金の期待値が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分することが可能となる。
また、第2の発明は、上記第1の発明において、前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差が、数式をもって記述された分布に従うことを特徴とする。
この第2の発明に係る電力取引支援装置によれば、前日予測誤差及び当日予測誤差が数式をもって記述された分布に従うことにより、前日予測誤差及び当日予測誤差を容易かつ正確に求めることが可能となる。
また、第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明において、前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差に基づき、前記前日予測量を増減補正する第1の増減パラメータ、及び前記当日予測量を増減補正する第2の増減パラメータをそれぞれ決定する増減パラメータ決定部をさらに備え、前記増減パラメータ決定部は、前記第1の増減パラメータにより補正された前記前日予測量に基づき算出される前記一日前市場に対する入札額の期待値と、前記第2の増減パラメータにより補正された前記当日予測量に基づき算出される前記当日市場に対する入札額の期待値と、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を下回った場合に支払うインバランス料金の期待値との和が最小となるように、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定することを特徴とする。
この第3の発明に係る電力取引支援装置によれば、第1の増減パラメータ及び第2の増減パラメータを使用することにより、前日予測量及び当日予測量の補正を容易かつ正確に行うことが可能となる。
また、第4の発明は、上記第3の発明において、前記一日前市場入札部は、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和を入札量として前記一日前市場に対して入札し、前記当日市場入札部は、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和以上の場合には、その差分を入札量として前記当日市場に対して入札し、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和よりも小さい場合には、前記当日市場に対して入札しないことを特徴とする。
この第4の発明に係る電力取引支援装置によれば、当日市場入札部において補正後の当日予測量と補正後の前日予測量とを比較するので、一日前市場及び当日市場に対する入札を適切に行うことが可能となる。
また、第5の発明は、上記第3の発明において、前記増減パラメータ決定部は、前記インバランス料金の期待値に、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を上回った場合に得られる売電収入の期待値を加えて、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定することを特徴とする。
この第5の発明に係る電力取引支援装置によれば、電気事業者に余剰電力が生じた場合は、当該余剰電力を売電するオペレーションも含めて、一日前市場及び当日市場に対する入札を適切に行うことが可能となる。
また、第6の発明は、卸電力取引市場に対する入札を支援する電力取引支援方法であって、過去の電力需要データに基づき、一日前市場への入札時の予測電力需要量である前日予測量を予測する前日予測量予測ステップと、過去の電力需要データに基づき、当日市場への入札時の予測電力需要量である当日予測量を予測する当日予測量予測ステップと、過去の前記前日予測量とそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差である前日予測誤差、及び過去の前記当日予測量とそれに対応する前記過去の実際の電力需要量との予測誤差である当日予測誤差をそれぞれ算出する予測誤差算出ステップと、前記前日予測量を前記前日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記前日予測量に基づいて決定された入札量で前記一日前市場に対して入札する一日前市場入札ステップと、前記当日予測量を前記当日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記当日予測量に基づいて決定された入札量で前記当日市場に対して入札する当日市場入札ステップとを有することを特徴とする。
この第6の発明に係る電力取引支援方法によれば、過去の前日予測量及び当日予測量とそれに対応する過去の実際の電力需要量とに基づいてそれぞれ算出した前日予測誤差及び当日予測誤差に基づき、前日予測量及び当日予測量をそれぞれ補正することができる。これにより、前日の予測精度及び当日の予測精度に応じて、電力調達料金の期待値が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分することが可能となる。
また、第7の発明は、上記第6の発明において、前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差が、数式をもって記述された分布に従うことを特徴とする。
この第7の発明に係る電力取引支援方法によれば、前日予測誤差及び当日予測誤差が数式をもって記述された分布に従うことにより、前日予測誤差及び当日予測誤差を容易かつ正確に求めることが可能となる。
また、第8の発明は、上記第6の発明または第7の発明において、前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差に基づき、前記前日予測量を増減補正する第1の増減パラメータ、及び前記当日予測量を増減補正する第2の増減パラメータをそれぞれ決定する増減パラメータ決定ステップをさらに有し、前記増減パラメータ決定ステップでは、前記第1の増減パラメータにより補正された前記前日予測量に基づき算出される前記一日前市場に対する入札額の期待値と、前記第2の増減パラメータにより補正された前記当日予測量に基づき算出される前記当日市場に対する入札額の期待値と、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を下回った場合に支払うインバランス料金の期待値との和が最小となるように、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定することを特徴とする。
この第8の発明に係る電力取引支援方法によれば、第1の増減パラメータ及び第2の増減パラメータを使用することにより、前日予測量及び当日予測量の補正を容易かつ正確に行うことが可能となる。
また、第9の発明は、上記第8の発明において、前記一日前市場入札ステップでは、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和を入札量として前記一日前市場に対して入札し、前記当日市場入札ステップでは、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和以上の場合には、その差分を入札量として前記当日市場に対して入札し、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和よりも小さい場合には、前記当日市場に対して入札しないことを特徴とする。
この第9の発明に係る電力取引支援方法によれば、当日市場入札ステップにおいて補正後の当日予測量と補正後の前日予測量とを比較するので、一日前市場及び当日市場に対する入札を適切に行うことが可能となる。
また、第10の発明は、上記第8の発明において、前記増減パラメータ決定ステップでは、前記インバランス料金の期待値に、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を上回った場合に得られる売電収入の期待値を加えて、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定することを特徴とする。
この第10の発明に係る電力取引支援方法によれば、電気事業者に余剰電力が生じた場合は、当該余剰電力を売電するオペレーションも含めて、一日前市場及び当日市場に対する入札を適切に行うことが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る電力取引支援装置1が適用される電力取引システムの概略図である。
本発明に係る電力取引支援装置1は、卸電力取引所2で開設されている卸電力取引市場に対する電気事業者3の入札を支援するためのものである。電力取引支援装置1は、電気事業者3の施設等に設置され、インターネットや他の公知の通信ネットワーク等のネットワーク4を介して卸電力取引所2に接続されている。
卸電力取引所2は、日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power eXchange)等であり、主要市場として、一日前市場(スポット市場)5と、その調整市場としての当日市場(時間前市場)6とを開設している。一日前市場5は、電気事業者3が顧客(需要家)に対して電力を供給する電力供給日の前日に電力の取引を行う市場であり、当日市場6は、電力供給日の当日に電力の取引を行う市場である。一日前市場5及び当日市場6では、一日を30分単位で区切った48個の入札時間帯(コマ)毎に電力の取引が行われる。
電気事業者3は、小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者、発電事業者等であり得る。本実施形態では、電気事業者3として、各エリアの大手電力会社の送電網を使用して電力を提供する、一般的に「新電力(PPS)」と呼ばれる、2000年の規制緩和で大口向けの電力小売りが自由化された以降に新規参入した小売電気事業者を想定している。ただし、電気事業者3は、新電力(PPS)に限定されるものではなく、他の電気事業者であってもよい。
電力取引支援装置1は、公知の構成を有するコンピュータからなり、一日前市場5及び当日市場6の各市場に対する入札量の配分を決定することにより、一日前市場5及び当日市場6に対する電気事業者3の入札を支援する。
図2は、電力取引支援装置1のハードウェア構成図である。図2に示すように、電力取引支援装置1は、公知のハードウェア構成を備えており、所定の制御プログラムに基づき各種情報処理や周辺機器の制御等を統括的に実行するCPU(Central Processing Unit)等からなるプロセッサ11、プロセッサ11のワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)12、プロセッサ11が実行する制御プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)13、及びネットワーク4を介した通信処理を実行するネットワークインターフェース(I/F)14等を備えている。
また、電力取引支援装置1は、周辺機器として、電力取引支援装置1のユーザが各種命令やデータを入力するためのキーボードやタッチパネル等から構成される入力装置15、後に詳述する電力取引支援装置1が実行する電力取引支援処理に関する各種情報を表示するモニタ16、及びその電力取引支援処理で使用する各種データやそれらデータの演算結果等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)等から構成されるストレージ17等を備えている。上記の各構成要素11-17はバス10を介して相互に接続されている。
図3を参照して後に詳述する電力取引支援装置1の各種機能の少なくとも一部は、プロセッサ11が所定の制御プログラム(例えば電力取引支援用プログラム)を実行することによって実現可能である。なお、電力取引支援装置1は、コンピュータに限らず、同様の機能を果たす他の情報機器(例えばサーバ等)から構成してもよい。また、電力取引支援装置1の各種機能の少なくとも一部を他の公知のハードウェアによる処理によって代替してもよい。
図3は、電力取引支援装置1の機能ブロック図である。図3に示すように、電力取引支援装置1は、電気事業者3が入札する入札時間帯の予測電力需要量を予測する需要量予測部20と、入札時間帯における、一日前市場5での電力単価、当日市場6での電力単価、及びペナルティ料金(インバランス料金)の単価をそれぞれ予測する単価予測部30と、予測電力需要量と実際の電力需要量との予測誤差を算出する予測誤差算出部40と、予測誤差と単価予測部30の出力とに基づき、予測電力需要量を増減補正するための増減パラメータを決定する増減パラメータ決定部50と、増減パラメータを用いて予測電力需要量を補正するとともに、補正後の予測電力需要量に基づいて決定された入札量(ここでは、補正後の予測電力需要量と入札量とは等しい)で一日前市場5及び当日市場6に対してそれぞれ入札する入札部60とを備えている。各部は、図示しない制御部によって制御される。
需要量予測部20は、前日予測量予測部21と、第1記憶部22と、当日予測量予測部23と、第2記憶部24とを含む。
前日予測量予測部21は、一日前市場5への入札当日、すなわち電力供給日の前日に、電力供給先の過去の電力需要データ(需要実績データ)、電力供給日の気象情報、電力供給先のイベントデータ等に基づき、電気事業者3が入札する入札時間帯の予測電力需要量である前日予測量gを予測する。したがって、前日予測量gは、電気事業者3が一日前市場5に対して入札する時点での予測電力需要量である。前日予測量予測部21で予測された前日予測量gは、第1記憶部22に記憶される。
当日予測量予測部23は、当日市場6への入札当日、すなわち電力供給日の当日に、電力供給先の過去の電力需要データ、電力供給日の気象情報、電力供給先のイベントデータ等に基づき、入札時間帯の予測電力需要量である当日予測量hを予測する。したがって、当日予測量hは、電気事業者3が当日市場6に対して入札する時点での予測電力需要量である。当日予測量予測部23で予測された当日予測量hは、第2記憶部24に記憶される。
電力供給先の過去の電力需要データは、卸電力取引所2または後述する電力需要データ記憶部42等から取得するものとする。また、電力供給日の気象情報(予報、予測された情報を含む)は、気象庁等から取得するものとする。気象情報は、例えば、気温、湿度、天候等であり得る。前述したように、一般的に、電力供給日の当日(当日市場6に対して入札する時点)での予測精度は、電力供給日の前日(一日前市場5に対して入札する時点)での予測精度よりも高い傾向にある。そのため、一般的に、前日予測量g及び当日予測量hは互いに異なることとなる。
前日予測量予測部21及び当日予測量予測部23は、例えば、下記の(1)~(4)のいずれかの手法またはそれらの組み合わせを用いて、前日予測量g及び当日予測量hを予測することができる。
(1)過去の同じ時期の電力需要データと気象データ(気温、湿度等)に基づき重回帰分析を用いて予測する手法
(2)前日の電力需要実績と気象データ(気温、湿度等)に基づき予測する手法
(3)電力供給日と気象情報(気温、湿度、天候等)や曜日が類似する日の電力需要データに基づき予測する手法
(4)過去数年間における特定時刻の電力需要と同日の最大需要との関係に基づき予測する手法
単価予測部30は、取引データ取得部31と、電力単価予測部32と、ペナルティ単価予測部33とを含む。
取引データ取得部31は、ネットワーク4を介して、卸電力取引所2または他のデータベース等から過去の電力取引データを取得する。過去の電力取引データには、一日前市場5での過去の電力単価(以降、「前日電力単価a」と称する)、当日市場6での過去の電力単価(以降、「当日電力単価b」と称する)、及び過去のペナルティ料金の単価(以降、「ペナルティ単価c」と称する)が含まれる。
電力単価予測部32は、取引データ取得部31が取得した過去の電力取引データに基づき、前日電力単価a及び当日電力単価bをそれぞれ予測する。同様に、ペナルティ単価予測部33は、取引データ取得部31が取得した過去の電力取引データに基づき、ペナルティ単価cを予測する。
電力単価予測部32及びペナルティ単価予測部33は、例えば、過去の電力取引データから、電力供給日と時期、曜日、気象情報(気温、湿度、天候等)等の条件が類似する日のデータを検索し、その検索されたデータに基づき、前日電力単価a、当日電力単価b、及びペナルティ単価cの各単価を予測することができる。
予測誤差算出部40は、使用電力量取得部41と、電力需要データ記憶部42と、予測誤差分布決定部43とを含む。
使用電力量取得部41は、ネットワーク4を介して、電力供給先の使用電力量データを取得する。具体的には、例えば、電力供給先に設置したスマートメータから使用電力量データを取得するようにするとよい。スマートメータは、所定の通信相手に対して使用電力量データを送信可能な通信機能を有する公知の電力量計であり、ネットワーク4を介して、使用電力量取得部41に所定の時間間隔で使用電力量データを送信する。使用電力量取得部41が取得した使用電力量データは、電力供給先の電力需要データとして、電力需要データ記憶部42に記憶される。なお、スマートメータは各電力供給先に設置されており、使用電力量取得部41は、各電力供給先に設置されたスマートメータから、各電力供給先の使用電力量データをそれぞれ取得するものとする。
予測誤差分布決定部43は、第1記憶部22に記憶された過去の前日予測量gと、電力需要データ記憶部42に記憶された電力供給先の過去の電力需要データとに基づき、過去の前日予測量gとそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差分布である前日予測誤差分布P(x)を決定する。これにより、前日予測量予測部21が過去に予測した前日予測量gについての予測誤差を求めることができる。
また、予測誤差分布決定部43は、第2記憶部24に記憶された過去の当日予測量hと、電力需要データ記憶部42に記憶された過去の電力需要データとに基づき、過去の当日予測量hとそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差分布である当日予測誤差分布P(x)を決定する。これにより、当日予測量予測部23が過去に予測した当日予測量hについての予測誤差を求めることができる。
前日予測誤差分布P(x)及び当日予測誤差分布P(x)の各予測誤差分布は、平均μ、分散σの正規分布に従うものと仮定する。各予測誤差分布P(x)、P(x)が正規分布に従うことにより、前日予測量g及び当日予測量hの各予測誤差をより正確に求めることが可能となる。なお、各予測誤差分布が正規分布に従うとの仮定は、中心極限定理(サンプルの平均と真の平均との誤差を論ずるもので、母集団の分布がどのような分布であっても、サンプルの平均と真の平均との誤差はサンプルのサイズ(個数)を大きくしたとき近似的に正規分布に従うとされる)に基づく。
予測誤差分布決定部43は、例えば、下記の(1)~(3)のいずれかの手法を用いて、前日予測誤差分布P(x)及び当日予測誤差分布P(x)を決定することができる。
(1)比較的少数のパラメータを持つパラメトリックモデル(parametric models)を用いて確率密度分布を表現し、そのモデルをデータに当てはめ、データに最もよく合うパラメータを推定する手法
(2)特定の関数型を仮定しないで、データに依存して分布の形を決めるノンパラメトリックモデル(non-parametric models)を用いる手法
(3)上記の2つの手法の中間的なもので、複雑な分布を表現するためにパラメータの数を系統的に増やせるようにすることで、パラメトリックモデルよりも一般的な関数型を表現するセミパラメトリック(semi-parametric)な手法
増減パラメータ決定部50は、単価予測部30で予測された前日電力単価a、当日電力単価b、及びペナルティ単価cの各単価と、予測誤差算出部40で算出された前日予測誤差分布P(x)及び当日予測誤差分布P(x)の各予測誤差分布とに基づき、需要量予測部20で予測された前日予測量g及び当日予測量hをそれぞれ増減補正するための第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBをそれぞれ決定する。
具体的には、増減パラメータ決定部50は、マセマティカ(Mathematica)等の計算機ソフトを使用して、一日前市場5に対する入札額の期待値と、当日市場6に対する入札額の期待値と、電気事業者3が一日前市場5及び当日市場6に対して入札した入札量(すなわち調達量)が実際の電力需要量を下回った場合に支払うペナルティ料金の期待値との和(以降、「電力調達料金の期待値」と称する)が最小となるように、第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBの値をそれぞれ決定する。統計学の観点では、電力調達料金の期待値が小さいほど、電気事業者3は低コストで電力の調達が可能であることを意味しており、電力調達料金の期待値を最小化する第1の増減パラメータA、第2の増減パラメータBを選択することで、電気事業者3の収益が改善する。ここで、電力調達料金の期待値は、下記の数式1で表すことができる。
Figure 0007101403000001
上記の数式1において、E[C+C+C]は電力調達料金の期待値であり、E[C]は一日前市場5に対する入札額の期待値であり、E[C]は当日市場6に対する入札額の期待値であり、E[C]はペナルティ料金の期待値である。この数式1の導出方法については後に詳述する。
入札部60は、一日前市場入札部61と、当日市場入札部62とを含む。
一日前市場入札部61は、まず、需要量予測部20の前日予測量予測部21で求めた前日予測量gに、増減パラメータ決定部50で求めた第1の増減パラメータAを加算して、前日予測量gを増減補正する。そして、補正後の前日予測量g、すなわち前日予測量gと第1の増減パラメータAとの和である「g+A」を入札量として、一日前市場5に入札する。
当日市場入札部62は、まず、需要量予測部20の当日予測量予測部23で求めた当日予測量hに、増減パラメータ決定部50で求めた第2の増減パラメータBを加算して、当日予測量hを増減補正する。続いて、補正後の当日予測量h、すなわち当日予測量hと第2の増減パラメータBとの和である「h+B」を、一日前市場入札部61で求めた補正後の前日予測量gである「g+A」と比較する。この比較の結果、図4(a)に示すように、「h+B」が「g+A」以上の場合には、その差分である「h+B-(g+A)」を入札量として当日市場6に入札する。逆に、図4(b)に示すように、「h+B」が「g+A」よりも小さい場合には、当日市場6には入札しない。一日前市場5に入札した入札量(g+A)が補正後の当日予測量(h+B)、すなわち予測需要量をすでに上回っているため、当日市場6への入札分は無駄になるからである。
次に、電力取引支援装置1による電力取引支援処理である、増減パラメータ決定処理、一日前市場入札処理、及び当日市場入札処理の各処理の流れを、図5-図7の各フロー図を参照して説明する。
図5は、増減パラメータ決定処理の流れを示すフロー図である。この増減パラメータ決定処理は、第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBを決定するための処理であり、一日前市場5への入札当日、すなわち電力供給日の前日までに実施される。
まず、単価予測部30の電力単価予測部32で、過去の電力取引データに基づき、前日電力単価a及び当日電力単価bをそれぞれ予測する(ステップST101)。
続いて、単価予測部30のペナルティ単価予測部33で、過去の電力取引データに基づき、ペナルティ単価cを予測する(ステップST102)。
次に、予測誤差算出部40の予測誤差分布決定部43で、第1記憶部22及び第2記憶部24に記憶された過去の前日予測量g及び過去の前日予測量gと、電力需要データ記憶部42に記憶された過去の実際の電力需要量とに基づき、過去の前日予測量g及び過去の当日予測量hとそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差分布である前日予測誤差分布P(x)及び当日予測誤差分布P(x)をそれぞれ決定する(ステップST103)。
そして、増減パラメータ決定部50で、前日電力単価a、当日電力単価b、ペナルティ単価c、前日予測誤差分布P(x)、及び当日予測誤差分布P(x)(より詳細には、各予測誤差のバラつき、すなわち予測精度)に基づき、第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBをそれぞれ求める(ステップST104(増減パラメータ決定ステップ))。前述したように、第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBは、上記の数式1で表される電力調達料金の期待値(一日前市場5に対する入札額の期待値と、当日市場6の入札額の期待値と、インバランス料金の期待値との和)が最小になるように決定される。
決定された第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBは、下記の一日前市場入札処理及び当日市場入札処理で使用するために、電力取引支援装置1のストレージ17(図2参照)等に記憶しておく。
図6は、一日前市場入札処理の流れを示すフロー図である。この一日前市場入札処理は、一日前市場5に対して入札するための処理であり、一日前市場5への入札当日、すなわち電力供給日の前日に実施される。
まず、需要量予測部20の前日予測量予測部21で、過去の電力需要データに基づき、一日前市場5への入札時の予測電力需要量である前日予測量gを予測する(ステップST201)。
次に、一日前市場入札部61で、前日予測量gに、上記の増減パラメータ決定処理で決定された第1の増減パラメータAを加算して、前日予測量gを増減補正する(ステップST202)。
そして、一日前市場入札部61は、補正後の前日予測量gである「g+A」を入札量として、一日前市場5に入札する(ステップST203)。
一日前市場5に入札した入札量(g+A)は、当日市場入札処理で使用するために、電力取引支援装置1のストレージ17(図2参照)等に記憶しておく。
図7は、当日市場入札処理の流れを示すフロー図である。この当日市場入札処理は、当日市場6に対して入札するための処理であり、当日市場6への入札当日、すなわち電力供給日の当日に実施される。
まず、需要量予測部20の当日予測量予測部23で、過去の電力需要データに基づき、当日市場6への入札時の予測電力需要量である当日予測量hを予測する(ステップST301)。
続いて、入札部60の当日市場入札部62で、当日予測量hに、上記の増減パラメータ決定処理で決定された第2の増減パラメータBを加算して、当日予測量hを増減補正する(ステップST302)。
次に、当日市場入札部62で、補正後の当日予測量である「h+B」が、補正後の前日予測量gである「g+A」以上であるか否かを判定する(ステップST303)。「h+B」が「g+A」以上であると判定された場合(ステップST303:Yes)は、ステップST304に進む。一方、「h+B」が「g+A」よりも小さいと判定された場合(ステップST303:No)は、当日市場6には入札せず、処理を終了する。
ステップST304では、「h+B」と「g+A」との差分である「h+B-(g+A)」を入札量として当日市場6に入札する。
以上のように、本発明によれば、電力調達料金の期待値が最小となるように決定された第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBによって前日予測量g及び当日予測量hをそれぞれ補正することができる。したがって、前日の予測精度(すなわち前日予測量g)及び当日の予測精度(すなわち当日予測量h)に応じて、電力調達料金の期待値が最小となるように一日前市場5及び当日市場6に対する入札量を配分することが可能となる。
次に、電力調達料金の期待値を表す上記の数式1の導出方法について説明する。前述したように、一日前市場5及び当日市場6では、1日を30分単位で区切った48コマの入札時間帯毎に取引が行われる。以下では、電気事業者3が、48コマの入札時間帯のうちのtコマ目に対して入札する場合について説明する。
(電力調達料金)
まず、電気事業者3が一日前市場5及び当日市場6から電力を調達するのに要する料金である電力調達料金を求める。電力調達料金は、一日前市場5に対する入札額Cと、当日市場6に対する入札額Cと、電気事業者3の調達量が需要量を下回った場合に支払うペナルティ料金Cとの和として求められる。
一日前市場5のtコマ目の前日電力単価をaとする。そして、一日前市場5に対しては、前日予測量gに第1の増減パラメータA(以降、単に「パラメータA」と称する)を加算した入札量g+Aで入札することとする。したがって、一日前市場5に対する入札額Cは、下記の数式2で表される。
Figure 0007101403000002
当日市場6のtコマ目の当日電力単価をbとする。そして、当日市場6に対しては、一日前市場5への入札量g+Aと当日市場6への入札量との和が、当日予測量hに第2の増減パラメータB(以降、単に「パラメータB」と称する)を加算したh+Bとなるように入札することとする。つまり、g+A≦h+Bの場合には、h+B-(g+A)の入札量で当日市場6に入札する。一方、g+A>h+Bの場合には、当日市場6には入札しない。したがって、当日市場6に対する入札額Cは、下記の数式3で表される。ただし、下記の数式3におけるδは、括弧内の条件式を満たす場合には1を取り、それ以外の場合には0を取る関数とする。
Figure 0007101403000003
tコマ目の予測電力需要量をfとし、ペナルティ単価をcとする。前述したように、g+A≦h+B≦fの場合、または、h+B<g+A≦fの場合には、電気事業者3の調達量が需要量を下回るためペナルティ料金が発生する。したがって、ペナルティ料金Cは、下記の数式4で表される。ただし、下記の数式4におけるδは、括弧内の条件式を満たす場合には1を取り、それ以外の場合には0を取る関数とする。
Figure 0007101403000004
上記のようにして求めた、一日前市場5に対する入札額C、当日市場6に対する入札額C、及びペナルティ料金Cを合計したC+C+Cが、電力調達料金Cとなる。
(電力調達料金の期待値)
次に、電力調達料金の期待値E[C+C+C]を求める。G=f-gと、H=f-hを確率変数とし、G及びHの確率密度関数(予測誤差分布)をそれぞれP(x)、P(y)とする。また、予測電力需要量f、前日電力単価a、当日電力単価b、ペナルティ単価cは、それぞれ独立とする。
一日前市場5に対する入札額Cの期待値E[C]は、下記の数式5で表される。
Figure 0007101403000005
当日市場6に対する入札額Cは、G及びHを用いると、下記の数式6で表される。
Figure 0007101403000006
したがって、当日市場6に対する入札額Cの期待値E[C]は、下記の数式7で表すことができる。ただし、数式7は、予測誤差分布P(x)、P(y)を具体的に定めていない式である(後述の数式9、数式10についても同じ)。
Figure 0007101403000007
ペナルティ料金Cは、G及びHを用いると、下記の数式8で表される。
Figure 0007101403000008
したがって、ペナルティ料金Cの期待値E[C]は、下記の数式9で表すことができる。
Figure 0007101403000009
上記のようにして求めた、一日前市場5に対する入札額Cの期待値E[C]、当日市場6に対する入札額Cの期待値E[C]、及びペナルティ料金Cの期待値E[C]を合計したE[C]+E[C]+E[C]が、電力調達料金の期待値E[C+C+C]となる。したがって、電力調達料金の期待値E[C+C+C]は、下記の数式10で表すことができる。この数式10は、上記の数式1と同一である。このようにして、上記の数式1を導出することができる。なお、上述したように、数式7、数式9、数式10は予測誤差分布P(x)、P(y)を特定するものではない。以下、予測誤差が正規分布に従う例について、具体的な数値計算を含めて詳述するが、数式7、数式9、数式10の数学的記述から明白なように、本発明は予測誤差が正規分布に従うものでない場合においても、数式をもって記述された分布に従うものであれば有効に適用できることは言うまでもない。
本発明の実施態様を想定するとき、例えばビル等の個々の施設と複数世帯から構成される一群のクラスタとでは電力需要のパターンは異なってくる。すなわち、一般に予測誤差の分布は電気事業者3が電力を供給する対象の規模(スケール)によって異なる。したがって、その需要予測の誤差の分布は電力を供給する対象の特性の影響を受ける場合があると考えられることから、予測誤差分布として様々な分布を適用できるよう、上述した電力取引支援装置1(電力取引支援装置1において動作する電力取引支援用プログラム)を構成しておくことは実用上の意義がある。
Figure 0007101403000010
(予測誤差が正規分布に従う場合の期待値)
次に、実際の電力需要量に対する予測電力需要量fの予測誤差が、平均0の正規分布に従うと仮定した場合の、電力調達料金の期待値E[C+C+C](以降、単に「期待値E[C]」または「期待値E」と称する)について説明する。
実際の電力需要量に対する前日予測量gの予測誤差Gが、平均0、分散σ(t)=σ の正規分布に、実際の需要量に対する当日予測量hの予測誤差Hが、平均0、分散σ(t)=σ の正規分布にそれぞれ従うと仮定する。このとき、σ=σ(t)=σ(t)+σ(t)とすれば、Cの期待値E[C]は下記の数式11で、Cの期待値E[C]は下記の数式12でそれぞれ表すことができる。
Figure 0007101403000011
Figure 0007101403000012
したがって、tコマ目の期待値E[C]は、下記の数式13で表すことができる。
Figure 0007101403000013
(期待値の数値計算)
電気事業者3が一日前市場5及び当日市場6から電力を調達する調達条件が下記である場合の、tコマ目の期待値E[C]を数値計算で求める。
f=100、σ=√3、σ=√2、a=1、b=2、c=3
上記の調達条件について説明すると、標準偏差σ=√3は、電気事業者3の前日予測量gの予測精度の目標レベルが実際の電力需要量の±3%以内であることを考慮したものである。また、前述したように、前日予測量gは当日予測量hよりも予測精度が高いので、標準偏差σ=√2とした。また、ペナルティ単価c=3は、ペナルティ料金が前日電力単価aの3倍以上になる場合があることを考慮したものである。当日電力単価bは、前日電力単価aとペナルティ単価cの平均値とした。
パラメータA及びパラメータBを-1.9≦A≦3、-4.9≦B≦0の範囲で動かすと、点(A、B、E[C])は図8のグラフを描く。ただし、パラメータAは10時方向を向いた軸を、パラメータBは1時方向を向いた軸を、それぞれ0.1刻みで動くものとする。また、以降に説明する図9及び図12-図23のグラフもこれに従うものとする。
図8に示すように、パラメータA、Bの値がある上限値を上回ると、パラメータA、Bの値が大きくなるに従って、期待値E[C]は単調増加する。また、パラメータA、Bの値がある下限値を下回ると、パラメータA、Bの値が小さくなるに従って、期待値E[C]は単調増加する。したがって、パラメータ(A、B)=(0、0)付近での期待値E[C]の増減傾向を調べれば、期待値E[C]を最小にするパラメータ(A、B)を求めることができる。
期待値E[C]を最小にするパラメータ(A、B)を数値計算で求めると(0.6、-2)となり、このときの期待値E[C]は、E[C]~101.835となる。一方、前日予測量g及び当日予測量hをパラメータA、Bで補正しない場合、すなわちA=B=0の場合の期待値E[C]は、E[C]~102.329となる。
したがって、上記の調達条件では、一日前市場5には前日予測量gよりも若干多め(パラメータA=0.6)に入札し、当日市場6には当日予測量hよりも幾分少なめ(パラメータB=-2)に入札すれば、前日予測量g及び当日予測量hをパラメータA、Bで補正しない場合と比べて、期待値E[C]を小さくできることが分かった。
(期待値の安定性)
上記のように期待値E[C]を小さくする方法があっても、電力調達料金Cの分散が大きく、期待値E[C]の収束が遅いと、実際の電力調達においては利用できないことがある。これは、金銭面のリスクが発生するからである。そこで、期待値E[C]を最小にするパラメータ(A、B)と、電力調達料金Cの分散との関係について調べた。結論を述べれば、期待値E[C]を最小にするパラメータ(A、B)は、電力調達料金Cの分散を小さくすることが分かった。
モンテカルロ法を用いた電力調達シミュレーションを各パラメータ(A、B)に対してそれぞれ100万回行った。このシミュレーションでは、下記の調達条件(以降、「基準調達条件」と称する)を用いた。
f=100、σ=√3、σ=√2、a=1、b=2、c=3
また、前日予測量g及び当日予測量hは、g~N(f、σ )、h~N(f、σ )と平均fの正規分布に従うものとする。
パラメータA及びパラメータBを、-1.9≦A≦3、-4.9≦B≦0の範囲で動かすと、点(A、B、E[C])は図9のグラフを描く。電力調達料金Cはパラメータ(A、B)に依存するので、このことを明示的にするために、以降、電力調達料金Cは電力調達料金C(A、B)と記載する。
このシミュレーションの結果、電力調達料金Cの分散を最小にするパラメータ(A、B)は(1、-1.4)となり、このときの電力調達料金Cの分散V[C(1、-1.4)]は1.693098となった。また、パラメータ(A、B)=(0、0)での分散V[C(0、0)]は2.879739、パラメータ(A、B)=(0.6、-2)での分散V[C(0.6、-2)]は1.821432となった。
したがって、前日予測量g及び当日予測量hをパラメータA、Bで補正しない場合の電力調達料金Cの分散V[C(0、0)]は、前日予測量g及び当日予測量hをパラメータA、B(1、-1.4)で補正した場合の電力調達料金Cの分散V[C(1、-1.4)]の約1.7倍となり、前日予測量g及び当日予測量hをパラメータA、B(0.6、-2)で補正した場合の電力調達料金Cの分散V[C(0.6、-2)]は、分散V[C(1、-1.4)]の約1.07倍となることが分かった。
図10及び図11は、パラメータ(A、B)が(0、0)及び(0.6、-2)である場合の、電力調達料金C(A、B)のシミュレーション結果をそれぞれ示すヒストグラムである。
上記の調達条件では、前日予測量g及び当日予測量hをパラメータA、Bで補正した場合は、前日予測量g及び当日予測量hをパラメータA、Bで補正しない場合と比べて、電力調達料金Cの分散が小さくなり、これにより、電力のより安定的な調達が可能になることが分かった。これは、一日前市場5への入札量を増やすことにより、ペナルティ料金の発生が抑制されたためだと考えられる。また、図9のグラフから分かるように、パラメータAの値が大きい場合には、パラメータBは、電力調達料金Cの分散に対してはほとんど影響しない。これは、前日予測量gの分散と当日予測量hの分散との差が小さいことにより、ほとんどの場合、一日前市場5で必要な調達量を確保できるためだと考えられる。
(調達条件を変更した場合のシミュレーション)
次に、上記の基準調達条件を変更した場合に、期待値Eを最小にするパラメータ(A、B)がどのように変化する傾向があるかを調べた。具体的には、基準調達条件の一部を変更し、その変更後の調達条件について、モンテカルロ法を用いた電力調達シミュレーションを100万回行い、このシミュレーションによって得られた期待値E及び分散Vのグラフを描いた。なお、基準調達条件で求めたパラメータA=0.6を前日基準値、パラメータB=-2を当日基準値と称することとする。
(前日予測量gの予測精度を低くした場合)
上記の基準調達条件では、標準偏差σの値は√3であった。この標準偏差σの値を5に変更した。この変更は、基準調達条件に対して前日予測量gの予測精度を低くしたことを意味する。図12及び図13は、この変更後の調達条件についてのシミュレーションによって得られた期待値E及び分散Vをそれぞれ示すグラフである。ただし、パラメータA、Bの範囲は、-1.9≦A≦3、-4.9≦B≦0とする。
このシミュレーションにより求められた、期待値Eを最小にするパラメータ(A、B)は(0.8、-1)であり、電力調達料金Cの分散Vを最小にするパラメータ(A、B)は(1、-0.4)であった。そして、パラメータ(A、B)が、これらの値及び(0、0)の値を取る場合の期待値E及び分散Vは、それぞれ以下のようになった。
Figure 0007101403000014
このシミュレーションの結果から、基準調達条件に対して前日予測量gの予測精度を低くした場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータA及びパラメータBはそれぞれ前日基準値(パラメータA=0.6)及び当日基準値(パラメータB=-2)よりも増加する傾向があることが分かった。
また、同様のシミュレーションを行うことにより、基準調達条件に対して前日予測量gの予測精度を高くした場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータA及びパラメータBはそれぞれ前日基準値及び当日基準値より減少する傾向があることを容易に導き出すことができる。
(当日予測量hの予測精度を高くした場合)
基準調達条件では、標準偏差σの値は√2であった。この標準偏差σの値を0.1に変更した。この変更は、基準調達条件に対して当日予測量hの予測精度を高くしたことを意味する。図14及び図15は、この変更後の調達条件ついてのシミュレーションによって得られた期待値E及び分散Vをそれぞれ示すグラフである。ただし、パラメータA、Bの範囲は、-1.9≦A≦3、-1.9≦B≦3とする。
このシミュレーションにより求められた、期待値Eを最小にするパラメータ(A、B)は(0.1、-0.1)であり、電力調達料金Cの分散Vを最小にするパラメータ(A、B)は(0.1、0)であった。そして、パラメータ(A、B)が、これらの値及び(0、0)の値を取る場合の期待値E及び分散Vは、それぞれ以下のようになった。
Figure 0007101403000015
このシミュレーションの結果から、基準調達条件に対して当日予測量hの予測精度を高くした場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータAは前日基準値よりも減少し、パラメータBは当日基準値より増加する傾向があることが分かった。
また、同様のシミュレーションを行うことにより、基準調達条件に対して当日予測量hの予測精度を低くした場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータAは前日基準値よりも増加し、パラメータBは当日基準値よりも減少する傾向があることを容易に導き出すことができる。
(当日電力単価bを下げた場合)
基準調達条件では、当日電力単価bの値は2であった。この当日電力単価bの値を1.2に変更した。この変更は、基準調達条件に対して当日電力単価bを下げたこと、すなわち当日電力単価bを前日電力単価aに近づけたことを意味する。図16及び図17は、この変更後の調達条件についてのシミュレーションによって得られた期待値E及び分散Vをそれぞれ示すグラフである。ただし、パラメータA、Bの範囲は、-1.9≦A≦3、-2.9≦B≦2とする。
このシミュレーションにより求められた、期待値Eを最小にするパラメータ(A、B)は(-0.1、-0.5)であり、電力調達料金Cの分散Vを最小にするパラメータ(A、B)は(-0.1、0)であった。そして、パラメータ(A、B)が、これらの値及び(0、0)の値を取る場合の期待値E及び分散Vは、それぞれ以下のようになった。
Figure 0007101403000016
このシミュレーションの結果から、基準調達条件に対して当日電力単価bを下げた場合、すなわち当日電力単価bを前日電力価に近づけた場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータAは前日基準値よりも減少し、パラメータBは当日基準値よりも増加する傾向があることが分かった。
(当日電力単価bを上げた場合)
基準調達条件では、当日電力単価bの値は2であった。この当日電力単価bの値を2.8に変更した。この変更は、基準調達条件に対して当日電力単価bを上げたこと、すなわち当日電力単価bをペナルティ単価cに近づけたことを意味する。図18及び図19は、この変更後の調達条件についてのシミュレーションによって得られた期待値E及び分散Vをそれぞれ示すグラフである。ただし、パラメータA、Bの範囲は、-1.9≦A≦3、-4.9≦B≦0とする。
このシミュレーションにより求められた、期待値Eを最小にするパラメータ(A、B)は(0.7、-3.8)であり、電力調達料金Cの分散Vを最小にするパラメータ(A、B)は(1.2、-2.2)であった。そして、パラメータ(A、B)が、これらの値及び(0、0)の値を取る場合の期待値E及び分散Vは、それぞれ以下のようになった。
Figure 0007101403000017
このシミュレーション結果から、基準調達条件に対して当日電力単価bを上げた場合、すなわち当日電力単価bをペナルティ単価cに近づけた場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータAは前日基準値よりも増加し、パラメータBは当日基準値よりも減少する傾向があることが分かった。
(前日電力単価aを下げた場合)
基準調達条件では、前日電力単価aの値は1であった。この前日電力単価aの値を0.5に変更した。この変更は、基準調達条件に対して前日電力単価aを下げたことを意味する。図20及び図21は、この変更後の調達条件についてのシミュレーションによって得られた期待値E及び分散Vをそれぞれ示すグラフである。ただし、パラメータA、Bの範囲は、-0.9≦A≦3、-4.9≦B≦0とする。
このシミュレーションにより求められた、期待値Eを最小にするパラメータ(A、B)は(1.6、-2.5)であり、電力調達料金Cの分散Vを最小にするパラメータ(A、B)は(3.1、-1.7)であった。そして、パラメータ(A、B)が、これらの値及び(0、0)の値を取る場合の期待値E及び分散Vは、それぞれ以下のようになった。
Figure 0007101403000018
このシミュレーションの結果から、基準調達条件に対して前日電力単価aを下げた場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータAは前日基準値よりも増加し、パラメータBは当日基準値よりも減少する傾向があることが分かった。
また、同様のシミュレーションを行うことにより、基準調達条件に対して前日電力単価aを上げた場合、すなわち前日電力単価aを当日電力単価bに近づけた場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータAは前日基準値よりも減少し、パラメータBは当日基準値よりも増加する傾向があることを容易に導き出すことができる。
(ペナルティ単価cを上げた場合)
基準調達条件では、ペナルティ単価cは3であった。このペナルティ単価cを3.5に変更した。この変更は、基準調達条件に対してペナルティ単価cを上げたことを意味する。図22及び図23は、この変更後の調達条件についてのシミュレーションによって得られた期待値E及び分散Vをそれぞれ示すグラフである。ただし、パラメータA、Bの範囲は、-1.9≦A≦3、-4.9≦B≦0とする。
このシミュレーションにより求められた、期待値Eを最小にするパラメータ(A、B)は(0.8、-1.6)であり、電力調達料金Cの分散Vを最小にするパラメータ(A、B)は(1.2、-1)であった。そして、パラメータ(A、B)が、これらの値及び(0、0)の値を取る場合の期待値E及び分散Vは、それぞれ以下のようになった。
Figure 0007101403000019
このシミュレーションの結果から、基準調達条件に対してペナルティ単価cを上げた場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータA及びパラメータBはそれぞれ前日基準値(パラメータA=0.6)及び当日基準値(パラメータB=-2)よりも増加する傾向があることが分かった。
また、同様のシミュレーションを行うことにより、基準調達条件に対してペナルティ単価cを下げた場合、すなわちペナルティ単価cを当日電力単価bに近づけた場合には、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)については、パラメータA及びパラメータBはそれぞれ前日基準値(パラメータA=0.6)及び当日基準値(パラメータB=-2)よりも減少する傾向があることが分かった。
上記の各シミュレーションの結果をまとめたものを表1に示す。表1には、調達条件の一部を変更したときの、期待値E及び分散Vを最小にするパラメータ(A、B)の前日基準値及び当日基準値に対する増減が示されている。なお、上記では、調達条件の各要素(標準偏差σ、標準偏差σ、前日電力単価a、当日電力単価b、ペナルティ単価c)の変更については1つの事例のみを挙げて説明しているが、上記の各要素の変更に伴うパラメータA、Bの増減傾向が普遍的なものであることは数学的に自明である。
Figure 0007101403000020
以降、本発明の変形例について説明する。上述した実施形態においてペナルティ料金Cは数式4によって与えられているが、変形例においては下記の数式20によって与えられる。
Figure 0007101403000021
数式20は数式4と比較して右辺に第3項及び第4項が追加されている。第3項及び第4項においてdは売電単価を表す。すなわち、数式20は、予測電力需要量fより実際の電力調達量が下回る場合はペナルティ単価cに基づくペナルティ料金が発生する一方で、予測電力需要量fより実際の電力調達量が上回る場合(すなわち、余剰電力が生じた場合)は、売電単価dに基づく売電収入が生じることを意味している(この売電収入は数式20の上では負の値として表現される)。したがって、変形例ではトータルとしてのペナルティ料金Cが負の値となるケースが存在する。なお、電気事業者3が蓄電池等の蓄エネルギー手段を所有する場合、電気事業者3は余剰電力(すなわち、-(f-h-B)または-(f-g-A))を一時的に蓄電池等に充電しておき、電力需要が大きいときに放電(売電)することも可能である。
変形例においては、増減パラメータ決定部50(図3参照)は増減パラメータ決定ステップ(図5、ST104参照)において、「一日前市場5に対する入札額の期待値」と、「当日市場6に対する入札額の期待値」と、「ペナルティ料金に売電収入(ここでは、負の値)を加えた値の期待値」との和が最小となるように、第1の増減パラメータA及び第2の増減パラメータBの値をそれぞれ決定する。この「ペナルティ料金に売電収入を加えた値の期待値」については、「ペナルティ料金の期待値に、一日前市場及び当日市場に対する入札量が実際の需要量を上回った場合に得られる売電収入の期待値(負の値)を加えた値」と言い換えてもよい。
変形例においても、G=f-gと、H=f-hを確率変数とすると、売電単価dを含めた場合のペナルティ料金Cは、G及びHを用いると、下記の数式21で表される。
Figure 0007101403000022
変形例においても、G及びHの確率密度関数(予測誤差分布)をそれぞれP(x)、P(y)とすると、売電収入を考慮したペナルティ料金Cの期待値E[C]は、下記の数式22で表すことができる。
Figure 0007101403000023
したがって、数式22、数式5及び数式7を用いることで、変形例における当日のtコマ目における電力量料金の期待値E[C+C+C]は、以下の数式23で表すことができる。
Figure 0007101403000024
このように変形例によれば、電気事業者3が余剰電力を売却することが可能である場合においても、電力調達料金の期待値が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分することが可能となる。
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。なお、上記実施形態に示した本発明に係る電力取引支援装置及び電力取引支援方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本開示の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
本発明に係る電力取引支援装置及び電力取引支援方法は、前日の予測精度及び当日の予測精度に応じて、電力調達料金の期待値が最小となるように一日前市場及び当日市場に対する入札量を配分することが可能な電力取引支援装置及び電力取引支援方法として有用である。
1 電力取引支援装置
2 卸電力取引所
3 電気事業者
4 ネットワーク
5 一日前市場
6 当日市場
20 需要量予測部
21 前日予測量予測部
22 第1記憶部
23 当日予測量予測部
24 第2記憶部
30 単価予測部
31 取引データ取得部
32 電力単価予測部
33 ペナルティ単価予測部
40 予測誤差算出部
41 使用電力量取得部
42 電力需要データ記憶部
43 予測誤差分布決定部
50 増減パラメータ決定部
60 入札部
61 一日前市場入札部
62 当日市場入札部

Claims (8)

  1. 卸電力取引市場に対する入札を支援する電力取引支援装置であって、
    過去の電力需要データに基づき、一日前市場への入札時の予測電力需要量である前日予測量を予測する前日予測量予測部と、
    過去の電力需要データに基づき、当日市場への入札時の予測電力需要量である当日予測量を予測する当日予測量予測部と、
    過去の前記前日予測量とそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差である前日予測誤差、及び過去の前記当日予測量とそれに対応する前記過去の実際の電力需要量との予測誤差である当日予測誤差をそれぞれ算出する予測誤差算出部と、
    前記前日予測量を前記前日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記前日予測量に基づいて決定された入札量で前記一日前市場に対して入札する一日前市場入札部と、
    前記当日予測量を前記当日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記当日予測量に基づいて決定された入札量で前記当日市場に対して入札する当日市場入札部と
    前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差に基づき、前記前日予測量を増減補正する第1の増減パラメータ、及び前記当日予測量を増減補正する第2の増減パラメータをそれぞれ決定する増減パラメータ決定部と
    を備え
    前記増減パラメータ決定部は、前記第1の増減パラメータにより補正された前記前日予測量に基づき算出される前記一日前市場に対する入札額の期待値と、前記第2の増減パラメータにより補正された前記当日予測量に基づき算出される前記当日市場に対する入札額の期待値と、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を下回った場合に支払うインバランス料金の期待値との和が最小となるように、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定する ことを特徴とする電力取引支援装置。
  2. 前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差が、数式をもって記述された分布に従うことを特徴とする請求項1に記載の電力取引支援装置。
  3. 前記一日前市場入札部は、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和を入札量として前記一日前市場に対して入札し、
    前記当日市場入札部は、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和以上の場合には、その差分を入札量として前記当日市場に対して入札し、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和よりも小さい場合には、前記当日市場に対して入札しないことを特徴とする請求項1または2に記載の電力取引支援装置。
  4. 前記増減パラメータ決定部は、前記インバランス料金の期待値に、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を上回った場合に得られる売電収入の期待値を加えて、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電力取引支援装置。
  5. 卸電力取引市場に対する入札を支援する電力取引支援方法であって、
    コンピュータが、
    過去の電力需要データに基づき、一日前市場への入札時の予測電力需要量である前日予測量を予測する前日予測量予測ステップと、
    過去の電力需要データに基づき、当日市場への入札時の予測電力需要量である当日予測量を予測する当日予測量予測ステップと、
    過去の前記前日予測量とそれに対応する過去の実際の電力需要量との予測誤差である前日予測誤差、及び過去の前記当日予測量とそれに対応する前記過去の実際の電力需要量との予測誤差である当日予測誤差をそれぞれ算出する予測誤差算出ステップと、
    前記前日予測量を前記前日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記前日予測量に基づいて決定された入札量で前記一日前市場に対して入札する一日前市場入札ステップと、
    前記当日予測量を前記当日予測誤差に基づいて補正するとともに、その補正後の前記当日予測量に基づいて決定された入札量で前記当日市場に対して入札する当日市場入札ステップと
    前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差に基づき、前記前日予測量を増減補正する第1の増減パラメータ、及び前記当日予測量を増減補正する第2の増減パラメータをそれぞれ決定する増減パラメータ決定ステップと
    を実行し、
    前記増減パラメータ決定ステップでは、前記第1の増減パラメータにより補正された前記前日予測量に基づき算出される前記一日前市場に対する入札額の期待値と、前記第2の増減パラメータにより補正された前記当日予測量に基づき算出される前記当日市場に対する入札額の期待値と、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を下回った場合に支払うインバランス料金の期待値との和が最小となるように、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定する ことを特徴とする電力取引支援方法。
  6. 前記前日予測誤差及び前記当日予測誤差が、数式をもって記述された分布に従うことを特徴とする請求項に記載の電力取引支援方法。
  7. 前記一日前市場入札ステップでは、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和を入札量として前記一日前市場に対して入札し、
    前記当日市場入札ステップでは、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が、前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和以上の場合には、その差分を入札量として前記当日市場に対して入札し、前記当日予測量と前記第2の増減パラメータとの和が前記前日予測量と前記第1の増減パラメータとの和よりも小さい場合には、前記当日市場に対して入札しないことを特徴とする請求項5または6に記載の電力取引支援方法。
  8. 前記増減パラメータ決定ステップでは、前記インバランス料金の期待値に、前記一日前市場及び前記当日市場に対する入札量が実際の需要量を上回った場合に得られる売電収入の期待値を加えて、前記第1の増減パラメータ及び前記第2の増減パラメータの値をそれぞれ決定することを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の電力取引支援方法。
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