本開示の電力システムおよび処理装置の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
図1は、実施形態にかかる電力システムS1の全体構成を示している。電力システムS1は、電力線90、電力負荷L、ネットワークハブH1,H2、複数の太陽電池11、複数のパワーコンディショナ12、複数の蓄電池21、複数のパワーコンディショナ22、受電設備3、端末装置41および処理装置42を備えている。なお、図1において、パワーコンディショナをPCSと記載する。また、図1において、電力ネットワークを太い実線で示しており、情報ネットワークを細い実線で示している。当該情報ネットワークは、無線通信で構築されていてもよいし、有線通信で構築されていてもよく、各機器の間で適宜無線通信と有線通信とを使い分けてもよい。以下の説明において、電力システムS1から電力系統Kに電力が出力されている場合、すなわち、逆潮流している場合に、電力システムS1と電力系統Kとの接続点における電力が正の値になるものとする。一方、電力系統Kから電力システムS1に電力が出力されている場合に、接続点における電力が負の値になるものとする。
電力線90は、電力システムS1における電力ネットワークを構築するためのものである。電力線90は、受電設備3と電力系統Kとの間、受電設備3と電力負荷Lとの間、受電設備3と各パワーコンディショナ12,22のそれぞれとの間、各太陽電池11と各パワーコンディショナ12との間、各蓄電池21と各パワーコンディショナ22との間にそれぞれ配置され、これらを電気的に接続している。
電力負荷Lは、供給される電力を消費するものである。電力負荷Lは、受電設備3から電力が供給される。電力負荷Lの一例としては、工場や一般家庭などがある。なお、電力システムS1は、電力負荷Lを備えていなくてもよい。
ネットワークハブH1,H2はともに、複数の通信ケーブルを接続するための端子(ポート)が並んだ機器であり、ある通信ケーブルから流れてきた信号を他の通信ケーブルに流すことで相互通信させる。ネットワークハブH1は、WAN(Wide Area Network)81に接続されている。ネットワークハブH2は、LAN(Local Area Network)82に接続されている。
複数の太陽電池11はそれぞれ、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する。各太陽電池11は、直列・並列に接続された複数の太陽電池パネルを含んで構成されている。太陽電池パネルは、例えば、シリコンなどの半導体で生成された太陽電池セルを複数接続したものを、屋外で利用できるように樹脂や強化ガラスなどで保護したものである。各太陽電池11は、発電した電力(直流電力)を各パワーコンディショナ12に出力する。本実施形態においては、電力システムS1は、n個の太陽電池11を含んでいる。なお、nは正の整数である。本実施形態においては、各太陽電池11が、特許請求の範囲に記載の「発電機器」に相当する。
複数のパワーコンディショナ12はそれぞれ、各太陽電池11が発電した電力(直流電力)を交流電力に変換して、出力する。本実施形態においては、電力システムS1において、1つの太陽電池11に対して、1つのパワーコンディショナ12が接続されている。よって、電力システムS1は、n個のパワーコンディショナ12を含んでいる。なお、1つのパワーコンディショナ12に対して複数の太陽電池11が接続されていてもよい。各パワーコンディショナ12は、自装置の出力電力が所定の目標値となるように、出力電力を制御している。なお、各パワーコンディショナ12は、最大電力点追従制御(MPPT制御)を行うことが可能であり、当該MPPT制御を行っているときには、太陽電池11が発電した電力を抑制せず出力する。本実施形態においては、各パワーコンディショナ12が、特許請求の範囲に記載の「電力制御装置」にも「発電制御装置」にも相当する。
複数の蓄電池21はそれぞれ、繰り返し充放電を行うことができる電池である。各蓄電池21は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの二次電池である。また、電気二重層コンデンサなどのコンデンサを用いてもよい。各蓄電池21は、蓄積された電力を放電して、直流電力をパワーコンディショナ22に供給する。本実施形態においては、電力システムS1は、m個の蓄電池21を含んでいる。なお、mは、正の整数である。
複数のパワーコンディショナ22はそれぞれ、各蓄電池21の充放電を制御するものである。本実施形態の電力システムS1においては、1つの蓄電池21に対して、1つのパワーコンディショナ22が接続されている。よって、電力システムS1は、m個のパワーコンディショナ22を含んでいる。なお、1つのパワーコンディショナ22に対して複数の蓄電池21が接続されていてもよい。各パワーコンディショナ22は、各蓄電池21から入力される直流電力を交流電力に変換して出力することで、各蓄電池21を放電する。また、各パワーコンディショナ22は、入力される交流電力を直流電力に変換し、各蓄電池21に供給することで、各蓄電池21を充電する。各パワーコンディショナ22は、自装置の出力電力が所定の目標値となるように、出力電力を制御している。本実施形態においては、各パワーコンディショナ22が、特許請求の範囲に記載の「電力制御装置」にも「蓄電池制御装置」にも相当する。
各パワーコンディショナ12から出力される有効電力をPPVi
out、無効電力をQPVi
outとすると、各パワーコンディショナ12からPPVi
out+j・QPVi
outの複素電力が出力されている。なお、iは1~nまでの正の整数であって、PPV1
out+j・QPV1
outは、1番目のパワーコンディショナ12から出力される複素電力の値であり、PPVn
out+j・QPVn
outはn番目のパワーコンディショナ12から出力される複素電力の値である。また、各パワーコンディショナ22から出力される有効電力をPBk
out、無効電力をQBk
outとすると、各パワーコンディショナ22からPBk
out+j・QBk
outの複素電力が出力されている。なお、kは、1~mまでの正の整数であって、PB1
out+j・QB1
outは、1番目のパワーコンディショナ22から出力される複素電力の値であり、PBm
out+j・QBm
outはm番目のパワーコンディショナ22から出力される複素電力の値である。したがって、複数のパワーコンディショナ12,22からは、合計(ΣiPPVi
out+ΣkPBk
out)+j(ΣiQPVi
out+ΣkQBk
out)の複素電力が出力されている。なお、本実施形態においては、接続点における電圧変動抑制などに主に活用される無効電力QPVi
out,QBk
outの出力制御については、特に考慮しない。すなわち、各パワーコンディショナ12,22が制御する出力電力(以下、「個別出力電力」ともいう。)は、それぞれ有効電力PPVi
out,PBk
outとなる。したがって、各パワーコンディショナ12の個別出力電力をPPVi
out、各パワーコンディショナ22の個別出力電力をPBk
out、電力負荷Lの消費電力PLとすると、接続点における電力(以下、「接続点電力」という)は、各パワーコンディショナ12,22の個別出力電力PPVi
out,PBk
outと電力負荷Lの消費電力PLとの総和(ΣiPPVi
out+ΣkPBk
out-PL)である。
受電設備3は、配電盤や分電盤を含んで構成されている。また、受電設備3は、電力系統Kに連系するための各種保護装置も含んでいる。たとえば、電力システムS1が電力系統Kへの逆潮流を禁止されたシステムである場合、保護装置として、逆電力継電器を含んでいる。受電設備3は、電力系統Kおよび各パワーコンディショナ12,22から供給される電力を受電する。受電設備3は、受電した電力を電力負荷Lに供給する。受電設備3は、各パワーコンディショナ12,22から電力を受電しているとき、各パワーコンディショナ12,22から受電した電力を電力系統Kから受電した電力よりも優先して電力負荷Lに供給する。また、受電設備3は、電力システムS1と電力系統Kとの接続点における電力(接続点電力)を検出する。受電設備3が検出した接続点電力の値を、接続点電力検出値という。本実施形態においては、受電設備3が、特許請求の範囲に記載の「検出装置」に相当する。
受電設備3は、LAN82に接続されており、当該LAN82を介して、ネットワークハブH2に接続されている。よって、受電設備3は、ネットワークハブH2に接続される各機器と通信可能である。本実施形態においては、受電設備3は、たとえば検出した接続点電力検出値をLAN82およびネットワークハブH2を介して、処理装置42に送信する。
端末装置41は、電力システムS1におけるユーザインタフェースである。電力システムS1の利用者は、端末装置41により、電力システムS1の各種設定操作を行ったり、電力システムS1の各種情報を確認したりする。端末装置41は、WAN81に接続されており、当該WAN81を介して、ネットワークハブH1に接続されている。よって、端末装置41は、ネットワークハブH1に接続される各機器と通信可能である。
処理装置42は、各パワーコンディショナ12,22と協調して、電力システムS1の電力制御を行うものである。処理装置42は、電力システムS1の電力制御を行うための制御指令値を導出する。制御指令値の導出についての詳細は、後述する。本実施形態においては、制御指令値として、制御指令値prPVと制御指令値prBとを導出する。制御指令値prPVは、各パワーコンディショナ12に、個別出力電力の目標値である個別目標値を算出させるための情報である。制御指令値prBは、各パワーコンディショナ22に、個別出力電力の目標値である個別目標値を算出させるための情報である。また、制御指令値prBは、蓄電池21をどれくらい充電するか放電するかを決定するための情報でもある。処理装置42は、導出した制御指令値prPVを各パワーコンディショナ12に送信し、導出した制御指令値prBを各パワーコンディショナ12,22に送信する。
処理装置42には、複数の制御モードのうちいずれかの制御モードが設定されており、設定されている制御モードに応じて、制御指令値を導出する。本実施形態における制御モードには、たとえば、通常モード、スケジュールモード、出力抑制モード、ピークカットモード、ピークカット補助モード、逆潮流回避モード、逆潮流緊急回避モードおよび緊急モードなどが含まれている。これらの制御モードについての詳細は後述する。本実施形態においては、これらの制御モードのうち、通常モード、スケジュールモード、出力抑制モード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードは、利用者によって選択設定可能であり、それ以外の制御モードは、処理装置42が電力システムS1の状況に応じて適宜自動的に設定する。なお、利用者によって選択設定可能な制御モードと自動的に設定される制御モードとは、上記したものに限定されない。たとえば、すべての制御モードを利用者によって選択設定可能に構成してもよい。また、制御モードとして、上記したものを全て設定可能に構成されていてもよいし、一部だけを設定可能に構成されていてもよい。
以上のように構成された電力システムS1は、処理装置42によって導出された制御指令値に基づいて、各パワーコンディショナ12,22が自律的に個別出力電力の制御を行いつつ、電力システムS1として、設定されている制御モードに応じた目的を達成するように電力制御を行っている。そのため、電力システムS1において、処理装置42は、設定されている制御モードに応じて制御指令値を導出し、導出した制御指令値を各パワーコンディショナ12,22に送信する。各パワーコンディショナ12,22は、処理装置42から受信する制御指令値に基づいて、個別目標値を算出して、個別出力電力が個別目標値となるように制御する。本実施形態においては、上記するように、複数の制御モードには、たとえば、通常モード、スケジュールモード、緊急モード、出力抑制モード、ピークカットモード、ピークカット補助モード、逆潮流回避モード、逆潮流緊急回避モードなどがある。これら各制御モードに応じた目的は、次に示す通りである。
通常モードは、電力システムS1の通常時における電力制御を規定した制御モードである。通常モードが設定されている間、各パワーコンディショナ12は、出力電力を抑制せず、MPPT制御を行い、かつ、各パワーコンディショナ22は、接続された蓄電池21の状態に応じて、当該蓄電池21を充放電するように、電力制御を行う。たとえば、各パワーコンディショナ22は、蓄電池21のSOC(States Of Charge:充電率)に基づいて、蓄電池21に電力が十分蓄積されている時には、蓄電池21を放電させ、蓄電池21に電力が不足している時には、蓄電池21を充電させる。また、時間帯毎によって、たとえば、昼間は、蓄電池21を放電させ、夜間に蓄電池21を充電させてもよい。
スケジュールモードは、所定の時間帯毎に、利用者が自由に設定した出力値に制御することを目的とした制御モードである。なお、所定の時間帯とは1日を複数個に分けた所定の期間であり、例えば30分毎に分けた場合48個の時間帯毎に設定可能である。なお、所定の時間帯は上記した例に限定されず、朝、昼、夕、晩、深夜などの時間帯に分けてもよいし、1日単位ではなく、1週間単位で所定の時間帯に分けてもよい。スケジュールモードが設定されている間、電力システムS1の出力電力が、利用者によって設定されたスケジュール目標値となるように電力制御を行う。スケジュール目標値は、上記所定の時間帯毎に、電力システムS1の出力電力の値を設定したものである。本実施形態においては、スケジュール目標値として、電力システムS1の出力電力に対する目標値を設定する場合を示すが、これに限定されない。たとえば、スケジュール目標値として、太陽電池11が接続された複数のパワーコンディショナ12の出力電力の合計値に対する目標値を設定してもよいし、蓄電池21が接続された複数のパワーコンディショナ22の出力電力の合計値に対する目標値を設定してもよいし、これらのすべての目標値をそれぞれ設定してもよい。
出力抑制モードは、電力システムS1における出力電力の抑制を目的とした制御モードである。電力系統Kに連系する電力システムが増えた場合、電力系統Kへの電力の供給が需要に比べて過多となる可能性がある。この供給過多の状態を解消するために、電力会社などから各電力システムに個々の出力電力を抑制するように指示される。そこで、出力抑制モードが設定されている間、電力会社からの出力抑制の指示に従うために、接続点電力検出値が抑制目標値を超えないように電力制御する。たとえば、電力会社からの出力抑制の指示として、抑制指令値が提示されるので、当該抑制指令値に基づいて抑制目標値が設定される。なお、抑制指令値が出力電力の上限値を指定する値である場合、抑制指令値を抑制目標値として設定する。あるいは、抑制指令値が出力抑制率[%]である場合、例えば、当該出力抑制率[%]と各パワーコンディショナ12,22の定格出力の合計とに基づき、出力電力の上限値を算出し、これを抑制目標値として設定する。たとえば、出力抑制率として20%である指令を取得したとき、各パワーコンディショナ12,22の定格出力の合計の80%(=100-20)を出力電力の上限値として算出し、これを抑制目標値として設定する。
ピークカットモードは、電力システムS1における電力ピークの抑制を目的とした制御モードである。基本電気料金は、一年間の買電電力のピーク値によって決定されているため、電力ピークの抑制によって、基本電気料金の削減が期待できる。そこで、ピークカットモードが設定されている間、接続点電力検出値がピークカット目標値を超えないように電力制御を行い、電力ピークが上昇することを抑制させる。
ピークカット補助モードは、ピークカットモードと同様に電力ピークの抑制を目的とした制御モードであって、特に、電力システムS1が周知のデマンド監視装置を備えている場合に、当該デマンド監視装置と連携して電力ピークを抑制させる制御モードである。デマンド監視装置は、基本電気料金を決定するデマンド値を監視し、電力料金の削減などに利用される機器である。デマンド値は、デマンド時限(一般的に30分)毎の平均需要電力であるものとするが、デマンド時限あたりの累積需要電力であってもよい。デマンド監視装置は、デマンド時限の終了時点におけるデマンドを予測し、当該予測したデマンド値(以下、「予測デマンド値」という。)が予め設定された目標値(目標デマンド値)を超えそうなときに警報を出す。このとき、予測デマンド値と目標デマンド値とに基づいて、警報レベルを特定し、当該警報レベルに基づいた警報を出す。そこで、ピークカット補助モードが設定されている間、デマンド監視装置からの警報レベルに基づく警報信号に応じて、蓄電池21に蓄積された電力を電力負荷Lに供給することで、電力系統Kから供給される電力を減少させ、最大デマンド値を抑制するように、電力制御を行う。
逆潮流回避モードは、逆潮流の発生を回避することを目的とした制御モードである。たとえば電力システムS1が自家消費型のシステムである場合、逆潮流させることが禁止されている。また、このような逆潮流が禁止されている電力システムS1においては、電力系統Kとの接続点に逆電力継電器の設置が必要となる。逆電力継電器は、リレーの一種であり、逆潮流の発生を検出すると、電力システムS1を電力系統Kから解列させる。そこで、逆潮流回避モードが設定されている間、接続点電力検出値が逆潮流回避目標値を超えないように電力制御を行い、逆潮流の発生を回避する。
逆潮流緊急回避モードは、逆潮流回避モードと同様に逆潮流の発生を回避することを目的とした制御モードであって、特に、後述する補助継電器33を用いて電力制御を行う制御モードである。逆潮流緊急回避モードが設定されている間、補助継電器33と連携して、逆潮流の発生を回避するように電力制御を行う。
緊急モードは、電力システムS1の非常時における電力制御を保障することを目的とした制御モードである。たとえば、利用者がスケジュール設定していないにも関わらず、スケジュールモードを設定した場合、電力システムS1の電力制御が適切に行えなくなる。そこで、緊急モードが設定されている間、各パワーコンディショナ12は、出力電力を抑制せず、MPPT制御を行い、かつ、各パワーコンディショナ22は、接続された蓄電池21の充電も放電も行わないように、電力制御を行う。
図2は、図1に示す電力システムS1の電力制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、図2においても、図1と同様に、パワーコンディショナをPCSと記載する。また、図2においても、電力ネットワークを太い実線で示しており、情報ネットワークを細い実線で示している。当該情報ネットワークは、特に記載がない場合、無線通信で構築されていても有線通信で構築されていてもよい。なお、以下に示す各構成要素の動作は、各機器間および各機器内部の各要素間での通信が正常であるものとして説明する。なお、通信に異常が発生している場合についてはその後に説明する。
各パワーコンディショナ12は、図2に示すように、制御系の機能構成として、第1通信部121、第2通信部122、情報処理部124および出力制御部125を備えている。本実施形態においては、第1通信部121、第2通信部122、情報処理部124および出力制御部125は、図2に示すように通信バス129に接続されており、当該通信バス129を介して、各パワーコンディショナ12内での通信を行う。なお、各パワーコンディショナ12における通信ネットワークは、バス型接続に限定されない。また、第1通信部121と第2通信部122とは、1つのモジュールで構成されていてもよいし、それぞれ異なるモジュールで構成されていてもよい。
第1通信部121は、ネットワークハブH1に接続されており、当該ネットワークハブH1を介して、通信を行う。第1通信部121は、図2に示すように、受信部121aと送信部121bとを含んでいる。受信部121aは、ネットワークハブH1に接続された各機器から信号を受信する。送信部121bは、ネットワークハブH1に接続された各機器に信号を送信する。
第2通信部122は、ネットワークハブH2に接続されており、当該ネットワークハブH2を介して、通信を行う。第2通信部122は、図2に示すように、受信部122aと送信部122bとを含んでいる。受信部122aは、ネットワークハブH2に接続された各機器から信号を受信する。送信部122bは、ネットワークハブH2に接続された各機器に信号を送信する。
本実施形態においては、第1通信部121の受信部121aと第2通信部122の受信部122aとを合わせたものが、特許請求の範囲に記載の「電力制御装置受信部」に相当する。また、第1通信部121の送信部121bと第2通信部122の送信部122bとを合わせたものが、特許請求の範囲に記載の「電力制御装置送信部」に相当する。
情報処理部124は、各パワーコンディショナ12における各種情報処理を行う。情報処理部124は、処理装置42が導出した制御指令値pr
PVに基づいて、自装置(パワーコンディショナ12)の出力電力(個別出力電力)の目標値(個別目標値)を算出する。具体的には、情報処理部124は、下記(1)式に示す制約付き最適化問題を解くことで、個別目標値P
PVi
refを算出する。下記(1)式における下記(1a)式は、最適化問題における評価関数を示している。また、下記(1)式における下記(1b)式および下記(1c)式はそれぞれ、最適化問題における制約条件を示している。当該制約条件において、下記(1b)式は各パワーコンディショナ12の定格出力P
PVi
lmtによる制約であり、下記(1c)式は各パワーコンディショナ12の出力電流制約である。なお、下記(1c)式に示す各パワーコンディショナ12の出力電流制約の代わりに、下記(1d)式に示すパワーコンディショナ12の定格容量制約を用いてもよい。
上記(1a)式において、wPViは、i番目のパワーコンディショナ12の有効電力抑制に関する重みを表わしており、設計値である。また、Pφiは、i番目のパワーコンディショナ12の個別出力電力PPVi
outの抑制を優先するか否かを示す設計パラメータ(以下、「優先度パラメータ」という)を示しており、設計値である。当該優先度パラメータPφiを小さくすると、各蓄電池21の充電量を少なくし、個別出力電力PPVi
outが抑制され易くなる。一方、当該優先度パラメータPφiを大きくすると、各蓄電池21の充電量を多くし、個別出力電力PPVi
outが抑制され難くなる。よって、優先度パラメータPφiは、各蓄電池21の充電を優先するか否かを示す設計パラメータであるとも言える。さらに、この優先度パラメータPφiによって、i番目のパワーコンディショナ12の定格出力による出力限界とは別に、i番目のパワーコンディショナ12の個別出力電力PPVi
outの疑似的な出力限界が設定されていると考えられる。そのため、優先度パラメータPφiは、疑似有効出力限界とも言える。上記重みwPViおよび上記優先度パラメータPφiは、利用者によって設定変更が可能である。
上記(1b)式において、PPVi
lmtは、i番目のパワーコンディショナ12の定格出力(出力限界)を表わしている。よって、上記(1b)式は、算出される個別目標値PPVi
refが定格出力PPVi
lmtを超えないように制限している。
上記(1c)式において、QPViはi番目のパワーコンディショナ12の無効電力、SPVi
dはi番目のパワーコンディショナ12の出力可能な最大の皮相電力、V0は設計時における連系点の基準電圧、VPViはi番目のパワーコンディショナ12における連系点の電圧をそれぞれ表している。
本実施形態においては、i番目のパワーコンディショナ12の有効電力抑制に関する重みwPVi(上記(1a)式参照)は、下記(2)式で算出される値を用いている。下記(2)式において、prPV
lmtは、制御指令値限界を示している。当該制御指令値限界prPV
lmtは、個別出力電力PPVi
outを0にするときの制御指令値、すなわち、個別出力電力PPVi
outを100%抑制するときの制御指令値である。また、PPVi
lmtは、上記各パワーコンディショナ12の定格出力である。なお、各パワーコンディショナ12の定格出力PPVi
lmtの代わりに、疑似有効出力限界Pφiを用いてもよい。すなわち、下記(2’)式で算出される値を用いてもよい。または、複数のパワーコンディショナ12において、すべて同じ有効電力抑制に関する重みwPViを用いてもよい。
wPVi=prPV
lmt/(2×PPVi
lmt)・・・(2)
wPVi=prPV
lmt/(2×Pφi)・・・(2’)
図3は、上記(2)式によって算出される、各パワーコンディショナ12の有効電力抑制に関する重みwPViを用いた場合の、制御指令値prPVと個別出力電力PPVi
outとの関係を示している。なお、図3には、定格出力PPVi
lmtが互いに異なる3つのパワーコンディショナ12それぞれについて示している。本実施形態においては、個別出力電力PPVi
outは、情報処理部124が算出する個別目標値PPVi
refとなるように制御されるので、同図は、制御指令値prPVと個別目標値PPVi
refとの関係を示しているともいえる。図3においては、上記制御指令値限界prPV
lmtを100とした。また図3において、定格出力PPVi
lmtが500kWのものを実線、定格出力PPVi
lmtが250kWのものを破線、定格出力PPVi
lmtが100kWのものを一点鎖線で示している。
図3が示すように、制御指令値prPVが0から100(制御指令値限界prPV
lmt)の間で20上昇する毎に、定格出力PPVi
lmtが500kWの場合100kW、定格出力PPVi
lmtが250kWの場合50kW、定格出力PPVi
lmtが100kWの場合20kWずつ低下している。これは、各パワーコンディショナ12の定格出力PPVi
lmtの20%ずつ低下していることになる。すなわち、各パワーコンディショナ12の定格出力PPVi
lmtに対する割合で個別出力電力PPVi
outを抑制している。また、各パワーコンディショナ12はともに、制御指令値prPVが上記制御指令値限界prPV
lmtのときに、個別出力電力PPVi
outが0となっている。すなわち、100%抑制している。さらに、制御指令値prPVが0のときに、個別出力電力PPVi
outが定格出力PPVi
lmtとなっている。すなわち、最大限出力可能な電力が出力されている。そして、図3に示すように、制御指令値prPVが0から制御指令値限界prPV
lmt(100)の間では、各パワーコンディショナ12の個別出力電力PPVi
outが線形的に変化している。なお、各パワーコンディショナ12は、その定格出力PPVi
lmt以上の電力を出力できないため、制御指令値prPVが負の値であるときは、図3が示すように、一定値(定格出力PPVi
lmt)となっている。以上のことから、有効電力抑制に関する重みwPViの設定において、上記(2)式を用いることで、制御指令値prPVの変化に伴い、各パワーコンディショナ12の定格出力PPVi
lmtに対する割合で、個別出力電力PPVi
outを抑制することができる。よって、複数のパワーコンディショナ12において、それらの定格出力PPVi
lmtが異なっていても、制御指令値prPVが制御指令値限界prPV
lmtのときに、個別出力電力PPVi
outの出力を100%抑制することができる。なお、有効電力抑制に関する重みwPViとして同じ値を用いた場合は、各パワーコンディショナ12の定格出力PPVi
lmtが異なっていても、一律に同じ量ずつ個別出力電力PPVi
outが低下するように構成できる。
出力制御部125は、各パワーコンディショナ12の出力電力の制御を行う。本実施形態においては、出力制御部125は、個別出力電力を、情報処理部124が算出した個別目標値に制御する。出力制御部125は、図2に示すように、インバータ回路125a、変圧器125b、検出回路125cおよび制御回路125dなどを含んで構成されている。
出力制御部125において、インバータ回路125aは、太陽電池11から入力される直流電力を電力系統Kと同期がとれた交流電力に変換する。変圧器125bは、インバータ回路125aから出力される交流電圧を昇圧(または降圧)する。検出回路125cは、各パワーコンディショナ12の出力電力を検出する。制御回路125dは、インバータ回路125aなどを制御する。また、制御回路125dは、出力制御部125において動作異常が発生している場合、それを検出する。制御回路125dは、検出回路125cが検出した出力電力に基づいて、個別出力電力を個別目標値にするための制御信号(たとえばPWM信号)を生成する。そして、生成した制御信号をインバータ回路125aに入力する。以上のようにして、各パワーコンディショナ12において、出力制御部125は、個別出力電力が個別目標値となるように制御している。なお、各出力制御部125の構成は、上記したものに限定されない。本実施形態においては、検出回路125cが、特許請求の範囲に記載の「出力電力検出部」に相当する。
各パワーコンディショナ12において、第2通信部122は、受信部122aによって、処理装置42から制御指令値prPVを受信すると、受信した制御指令値prPVを情報処理部124に出力する。情報処理部124は、入力された制御指令値prPVを用いて個別目標値を算出し、算出した個別目標値を出力制御部125に出力する。出力制御部125は、入力された個別目標値に基づいて、個別出力電力を制御する。
各パワーコンディショナ12において、出力制御部125は、検出回路125cが検出した個別出力電力の値を第1通信部121および第2通信部122に出力する。第1通信部121は、入力された個別出力電力の値を、送信部121bによって、ネットワークハブH1およびWAN81を介して、端末装置41に送信する。また、第2通信部122は、入力された個別出力電力の値を、送信部122bによって、ネットワークハブH2を介して、処理装置42に送信する。
各パワーコンディショナ12において、出力制御部125は、制御回路125dによって、当該出力制御部125の動作異常を検出すると、当該動作異常を示す信号(以下、「動作異常信号」という。)を第1通信部121に出力する。第1通信部121は、入力された動作異常信号を、送信部121bによって、ネットワークハブH1およびWAN81を介して、端末装置41に送信する。
各パワーコンディショナ22は、図2に示すように、制御系の機能構成として、第1通信部221、第2通信部222、状態取得部223、情報処理部224および出力制御部225を備えている。本実施形態においては、第1通信部221、第2通信部222、状態取得部223、情報処理部224および出力制御部225は、図2に示すように通信バス229に接続されており、当該通信バス229を介して、各パワーコンディショナ22内での通信を行う。なお、各パワーコンディショナ22における通信ネットワークは、バス型接続に限定されない。また、第1通信部221と第2通信部222とは、1つのモジュールで構成されていてもよいし、それぞれ異なるモジュールで構成されていてもよい。
第1通信部221は、ネットワークハブH1に接続されており、当該ネットワークハブH1を介して、通信を行う。第1通信部221は、図2に示すように、受信部221aと送信部221bとを含んでいる。受信部221aは、ネットワークハブH1に接続された各機器から信号を受信する。送信部221bは、ネットワークハブH1に接続された各機器に信号を送信する。
第2通信部222は、ネットワークハブH2に接続されており、当該ネットワークハブH2を介して、通信を行う。第2通信部222は、図2に示すように、受信部222aと送信部222bとを含んでいる。受信部222aは、ネットワークハブH2に接続された各機器から信号を受信する。送信部222bは、ネットワークハブH2に接続された各機器に信号を送信する。
本実施形態においては、第1通信部221の受信部221aと第2通信部222の受信部222aとを合わせたものが、特許請求の範囲に記載の「電力制御装置受信部」に相当する。また、第1通信部221の送信部221bと第2通信部222の送信部122bとを合わせたものが、特許請求の範囲に記載の「電力制御装置送信部」に相当する。
状態取得部223は、接続される蓄電池21の状態を取得する。本実施形態においては、状態取得部223は、たとえば蓄電池21のSOC(States Of Charge:充電率)、蓄電池21の最大容量などを取得する。状態取得部223は、取得した蓄電池21の状態を情報処理部224に出力する。
情報処理部224は、各パワーコンディショナ22における各種情報処理を行う。情報処理部224は、処理装置42が導出した制御指令値pr
Bに基づいて、自装置(パワーコンディショナ22)の出力電力(個別出力電力)の目標値(個別目標値)を算出する。具体的には、情報処理部224は、下記(3)式に示す制約付き最適化問題を解くことで、個別目標値P
Bk
refを算出する。下記(3)式における下記(3a)式は、最適化問題における評価関数を示している。また、下記(3)式における下記(3b)~(3e)式はそれぞれ、最適化問題における制約条件を示している。当該制約条件において、下記(3b)式は各パワーコンディショナ22の定格出力による制約であり、下記(3c)式は蓄電池21のCレート制約であり、下記(3d)式は各蓄電池21の残量制約であり、下記(3e)式は各パワーコンディショナ22の出力電流制約である。Cレートとは、蓄電池の有する全容量に対する充電時あるいは放電時の電流の相対的な比率であり、蓄電池の有する全容量を1時間で充電あるいは放電するときを1Cとしたものである。本実施形態におけるCレートには、充電側のCレートと放電側のCレートとがある。充電側のCレートは、各蓄電池21の充電するときの電流に対するCレートであり、以下の説明において「充電レート」という。放電側のCレートは、各蓄電池21の放電するときの電流に対するCレートであり、以下の説明において「放電レート」という。なお、下記(3e)式に示す各パワーコンディショナ22の出力電流制約の代わりに、下記(3f)式に示すパワーコンディショナ22の定格容量制約を用いてもよい。
上記(3a)式において、w
Bkは、k番目のパワーコンディショナ22の有効電力に関する重みを表わしている。重みw
Bkは、ユーザが設定可能である。w
SOCkは、k番目の蓄電池21のSOCに応じた重みを表している。この重みw
SOCkは、下記(4)式で算出される。下記(4)式において、A
SOCは重みw
SOCkのオフセット、K
SOCは重みw
SOCkのゲイン、s
swは重みw
SOCkのオン/オフスイッチ(例えば、オンのとき1,オフのとき0)、SOC
kはk番目の蓄電池21の現在のSOC、SOC
dは基準となるSOCをそれぞれ示している。
上記(3b)式において、PBk
lmtは、各パワーコンディショナ22の定格出力(出力限界)を表わしている。よって、上記(3b)式は、算出される個別目標値PBk
refが定格出力PBk
lmtを超えないように制限している。
上記(3c)式において、P
SMk
lmtは、k番目の蓄電池21の充電定格出力を表しており、充電レートをC
rate
Mとし、k番目の蓄電池21の定格容量をWH
S
lmtとしたときに、-C
rate
M×WH
S
lmtで求められる。なお、k番目の蓄電池21の充電定格出力P
SMk
lmtは、補正開始SOCをSOC
C、SOCの充電制限閾値をcMAXとして、下記(5)式に示すSOCに応じた蓄電池充電量補正が考慮されている。当該蓄電池充電量補正は、補正開始SOCまでは、通常通りの運転を行い、補正開始SOCからSOC上限までは、SOC上限で出力が0となるように一次関数的に出力を補正するように構成している。P
SPk
lmtは、k番目の蓄電池21の放電定格出力を表しており、放電レートをC
rate
Pとし、k番目の蓄電池21の定格容量をWH
S
lmtとしたときに、C
rate
P×WH
S
lmtで求められる。よって、上記(3c)式は、算出される個別目標値P
Bk
refが、設定されているCレート(充電レートおよび放電レート)に基づいて規定される充電定格出力と放電定格出力との範囲内に収まるように制限している。すなわち、上記(3c)式による制約によって、各パワーコンディショナ22の出力電流(個別出力電力P
Bk
out)を蓄電池21の定格容量で除算した値が設定されているCレートを超えないように制御されている。よって、Cレートは、各パワーコンディショナ22における出力電流(個別出力電力P
Bk
out)を制限するための特性値といえる。
上記(3d)式において、αk,βkは、k番目の蓄電池21の残量によって調整できる調整パラメータを表わしている。たとえば、k番目の蓄電池21の充電率SOCkが90%以上のとき、αkを0、βkをPBk
lmtと設定することで、上記(3d)式により放電のみを行うように制限できる。また、k番目の蓄電池21の充電率SOCkが10%以下のとき、αkを-PBk
lmt、βkを0と設定することで、上記(3d)式により充電のみを行うように制限できる。さらに、k番目の蓄電池の充電率SOCkがこれらの間(10%より大きく90%未満)であるとき、αkを-PBk
lmt、βkをPBk
lmtと設定することで、充電も放電も行うように制限できる。
上記(3e)式において、QBkはk番目のパワーコンディショナ22の無効電力、SBk
dはk番目のパワーコンディショナ22の出力可能な最大の皮相電力、V0は設計時における連系点の基準電圧、VBkはk番目のパワーコンディショナ22における連系点の電圧をそれぞれ表している。
本実施形態においては、k番目のパワーコンディショナ22の有効電力に関する重みwBk(上記(3a)式参照)は、下記(6)式で算出される値を用いている。下記(6)式において、prB
lmtは、制御指令値prBの制御指令値限界を示している。当該制御指令値限界prB
lmtは、最大限出力可能な電力で各蓄電池21を充放電するときの制御指令値、すなわち、個別出力電力PBk
outが定格出力PBk
lmtの100%で充放電するときの制御指令値である。また、wSOCkは、k番目の蓄電池21のSOCに応じた重みを示しており、PBk
maxは、k番目の蓄電池21における各種制約を考慮したときに最大限出力可能な電力(以下、「制約最大出力」という。)を示している。当該制約最大出力PBk
maxは、k番目の蓄電池21の充電定格出力PSMk
lmt、k番目の蓄電池21の放電定格出力PSPk
lmtおよびk番目のパワーコンディショナ22の定格出力PBk
lmtに基づいて設定される。具体的には、充電定格出力PSMk
lmtの正負の符号を反転させた値と放電定格出力PSPk
lmtの値とを比較し、いずれか大きい方の値を求める。そして、この大きい方の値と、定格出力PBk
lmtの値とを比較し、いずれか小さい方の値を制約最大出力PBk
maxとして設定する。なお、複数のパワーコンディショナ22において、すべて同じ有効電力に関する重みwBkを用いてもよい。
wBk=prB
lmt/(2×wSOCk×PBk
max)・・・(6)
図4は、上記(6)式によって算出される、k番目のパワーコンディショナ22の有効電力に関する重みwBkを用いた場合の、制御指令値prBと個別出力電力PBk
outとの関係を示している。なお、図4には、定格出力PBk
lmtが互いに異なる3つのパワーコンディショナ22それぞれについて示している。本実施形態においては、k番目のパワーコンディショナ22は、個別出力電力PBk
outが負の値のときk番目の蓄電池21を充電し、個別出力電力PBk
outが正の値のときk番目の蓄電池21を放電する。また、個別出力電力PBk
outは、情報処理部224が算出する個別目標値PBk
refとなるように制御されるので、同図は、制御指令値prBと個別目標値PBk
refとの関係を示しているともいえる。図4においては、上記制御指令値限界prB
lmtを100とした。また、図4において、定格出力PBk
lmtが500kWのものを実線、定格出力PBk
lmtが250kWのものを破線、定格出力PBk
lmtが100kWのものを一点鎖線で示している。
図4に示すように、制御指令値prBが-100(制御指令値限界prB
lmtを負の値にしたもの)から100(制御指令値限界prB
lmt)の間で20上昇する毎に、定格出力PBk
lmtが500kWの場合100kW、定格出力PBk
lmtが250kWの場合50kW、定格出力PBk
lmtが100kWの場合20kWずつ低下している。これは、各パワーコンディショナ22の定格出力PBk
lmtの20%ずつ低下していることになる。すなわち、各パワーコンディショナ22の定格出力PBk
lmtに対する割合で個別出力電力PBk
outを制御している。したがって、同じ制御指令値prBの変化量であっても、各パワーコンディショナ22の定格出力PBk
lmtに応じて、各蓄電池21の充放電量が変化している。また、各パワーコンディショナ22はともに、制御指令値prBが制御指令値限界prB
lmtを負の値にしたもの(-prB
lmt)であるときに、定格出力PBk
lmtと同じ値の個別出力電力PBk
outで蓄電池21を放電する。一方、制御指令値prBが制御指令値限界prB
lmtであるときに、定格出力PBk
lmtと同じ値の個別出力電力PBk
outで蓄電池21を充電する。すなわち、最大限出力可能な電力で蓄電池21を充放電する。さらに、制御指令値prBが0のときに、個別出力電力PBk
outが0になっている。そして、図4に示すように、個別出力電力PBk
outが線形的に変化している。以上のことから、有効電力に関する重みwBkの設定において、上記(6)式を用いることで、制御指令値prBの変化に伴い、各パワーコンディショナ22の定格出力PBk
lmtに対する割合で、各蓄電池21を充放電することができる。よって、複数のパワーコンディショナ22において、それらの定格出力PBk
lmtが異なっていても、制御指令値prBの絶対値が制御指令値限界prB
lmtのときに、定格出力PBk
lmtの100%で蓄電池21を充放電することができる。具体的には、制御指令値prBが制御指令値限界prB
lmtの負の値であるときに、定格出力PBk
lmtの100%で蓄電池21を放電し、制御指令値prBが制御指令値限界prB
lmtの値であるときに、定格出力PBk
lmtの100%で蓄電池21を充電することができる。なお、有効電力に関する重みwBkとして同じ値を用いた場合、各パワーコンディショナ22の定格出力PBk
lmtが異なっていても、一律に同じ量ずつ個別出力電力PBk
outが低下するように構成できる。
出力制御部225は、各パワーコンディショナ22の出力電力の制御を行う。本実施形態においては、出力制御部225は、個別出力電力を、情報処理部224が算出した個別目標値に制御する。出力制御部225は、出力制御部125と同様に構成されている。出力制御部225は、図2に示すように、インバータ回路225a、変圧器225b、検出回路225cおよび制御回路225dなどを含んで構成されている。インバータ回路225a、変圧器225b、検出回路225cおよび制御回路225dは、インバータ回路125a、変圧器125b、検出回路125cおよび制御回路125dとそれぞれ同様に構成されている。なお、各出力制御部225の構成は、上記したものに限定されない。本実施形態においては、検出回路225cが、特許請求の範囲に記載の「出力電力検出部」に相当する。
各パワーコンディショナ22において、第2通信部222は、受信部222aによって、処理装置42から制御指令値prBを受信すると、受信した制御指令値prBを情報処理部224に出力する。情報処理部224は、入力された制御指令値prBを用いて個別目標値を算出し、算出した個別目標値を出力制御部225に出力する。出力制御部225は、入力された個別目標値に基づいて、個別出力電力を制御する。
各パワーコンディショナ22において、出力制御部225は、検出回路225cが検出した個別出力電力の値を第1通信部221および第2通信部222に出力する。第1通信部221は、入力された個別出力電力の値を、送信部221bによって、ネットワークハブH1およびWAN81を介して、端末装置41に送信する。また、第2通信部222は、入力された個別出力電力の値を、送信部222bによって、ネットワークハブH2を介して、処理装置42に送信する。
各パワーコンディショナ22において、出力制御部225は、制御回路225dによって、当該出力制御部225の動作異常を検出すると、当該動作異常を示す信号(動作異常信号)を第1通信部221に出力する。第1通信部221は、入力された動作異常信号を、送信部221bによって、ネットワークハブH1およびWAN81を介して、端末装置41に送信する。
受電設備3は、図2に示すように、制御系の機能構成として、通信部31、検出部32、補助継電器33および制御部34を備えている。
通信部31は、LAN82に接続されており、当該LAN82を介して、ネットワークハブH2に接続されている。受電設備3は、通信部31によって、ネットワークハブH2に接続された機器との間で通信可能である。通信部31は、図2に示すように、受信部31aおよび送信部31bを含んでいる。受信部31aは、ネットワークハブH2に接続された各機器から信号を受信する。送信部31bは、ネットワークハブH2に接続された各機器に信号を送信する。
検出部32は、電力線90に設置されており、接続点電力(接続点電力検出値)を検出するセンサである。検出部32は、検出した接続点電力検出値を制御部34に出力する。
補助継電器33は、逆潮流を検出して動作するリレー装置であって、逆電力継電器とは異なる装置である。補助継電器33は、図示しない電気接点を有している。当該電気接点は、接続点電力が閾値以上になった場合に逆潮流の発生を検出して動作する。例えば、当該閾値として0を設定する。なお、0より所定量小さい値(ただし逆潮流回避目標値より大きい値)であってもよい。補助継電器33は、電気接点が動作すると、電気接点が動作したこと示す接点信号を制御部34に出力する。本実施形態においては、図示しない逆電力継電器は、逆潮流の状態が約50ms継続した場合に、逆潮流が発生していると検出するのに対して、補助継電器33(電気接点)は、逆潮流の状態が約10ms継続した場合に、逆潮流が発生していると検出する。すなわち、逆電力継電器が逆潮流を検出する時間より、補助継電器33が逆潮流を検出する時間を短く設定している。これにより、補助継電器33は逆電力継電器よりも早く逆潮流を検出することができる。なお、電力システムS1が電力系統Kへの逆潮流を禁止されていないシステムである場合、補助継電器33を備えていなくてもよい。
制御部34は、受電設備3の各種制御を行うものである。制御部34は、たとえば、配電盤や分電盤による電力の振り分けなどを制御する。
受電設備3において、検出部32は、検出した接続点電力検出値を制御部34に出力する。制御部34は、入力された接続点電力検出値を通信部31に出力する。通信部31は、入力された接続点電力検出値を、送信部31bによって、LAN82およびネットワークハブH2を介して、処理装置42に送信する。
受電設備3において、補助継電器33は、逆潮流を検出すると、接点信号を制御部34に出力する。制御部34は、入力された接点信号を通信部31に出力する。通信部31は、入力された接点信号を、送信部31bによって、LAN82およびネットワークハブH2を介して、処理装置42に送信する。
端末装置41は、図2に示すように、制御系の機能構成として、通信部411、操作部412、報知部413および制御部414を備えている。
通信部411は、WAN81に接続されており、当該WAN81を介して、ネットワークハブH1に接続されている。端末装置41は、通信部411によって、ネットワークハブH1に接続された機器との間で通信可能である。通信部411は、図2に示すように、受信部411aおよび送信部411bを含んでいる。受信部411aは、ネットワークハブH1に接続された各機器から信号を受信する。送信部411bは、ネットワークハブH1に接続された各機器に信号を送信する。本実施形態においては、通信部411の送信部411bが、特許請求の範囲に記載の「端末装置送信部」に相当する。
操作部412は、端末装置41における各種操作を行うためのインタフェースである。操作部412は、電力システムS1における各種設定操作を受け付ける。本実施形態においては、各種設定操作として、たとえば制御モード設定操作および調整目標値設定操作などがある。なお、操作部412は、その他、電力システムS1において利用者が設定変更可能な事物に対する操作を受け付けることができる。
報知部413は、端末装置41における各種報知を行うためのインタフェースである。報知部413は、たとえばディスプレイを含んでおり、当該ディスプレイに情報を表示させることで、ユーザにその情報を報知する。また、報知部413たとえばスピーカを含んでおり、当該スピーカに情報を音声出力させることで、ユーザにその情報を報知する。
制御部414は、端末装置41における各種制御を行うものである。制御部414は、入力される信号を報知部413に報知させる。また、制御部414は、操作部412が受け付けた操作に応じて動作する。たとえば、制御部414は、操作部412が受け付けた設定操作に応じて、設定指令を通信部411に出力し、通信部411は、これを処理装置42などに送信する。
端末装置41において、操作部412が制御モードの設定操作を受け付けると、制御部414は、当該操作に応じた制御モード設定指令を生成する。本実施形態においては、利用者によって、通常モード、スケジュールモード、出力抑制モード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードが設定可能であり、操作部412は、通常モードの設定操作を受け付けると、制御部414は、通常モードの設定を指示する制御モード設定指令を生成する。その他、スケジュールモード、出力抑制モード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードにおいても同様に、操作部412は、これらの制御モードの設定操作を受け付けると、制御部414は、設定操作された制御モードの設定を指示する制御モード設定指令を生成する。そして、制御部414は、生成した制御モード設定指令を通信部411に出力する。通信部411は、制御モード設定指令を入力されると、送信部411bによって、制御モード設定指令を、WAN81およびネットワークハブH1を介して処理装置42に送信する。
端末装置41において、操作部412が各制御モードに対する調整目標値の設定操作を受け付けると、制御部414は、当該操作に応じた調整目標値設定指令を生成する。調整目標値とは、各制御モードにおける全体目標値であって、たとえば、出力抑制モードにおいては抑制目標値であり、ピークカットモードにおいてはピークカット目標値であり、逆潮流回避モードにおいては逆潮流回避目標値であり、スケジュールモードにおいてはスケジュール目標値である。制御部414は、生成した調整目標値設定指令を通信部411に出力する。通信部411は、調整目標値設定指令を入力されると、送信部411bによって、調整目標値設定指令を、WAN81およびネットワークハブH1を介して、処理装置42に送信する。本実施形態においては、操作部412が抑制目標値、ピークカット目標値あるいは逆潮流回避目標値の設定操作を受け付けたときに、通信部411から、これらの調整目標値に対する調整目標値設定指令が送信されるように構成されている。また、操作部412がスケジュール目標値の設定操作を受け付けたときに、通信部411から、一定期間分ずつのスケジュール目標値に対する調整目標値設定指令が定期的に順次送信されるように構成されている。なお、全ての調整目標値に対する調整目標値設定指令が、定期的に送信されるように構成してもよい。本実施形態においては、操作部412と制御部414とをあわせたものが、特許請求の範囲に記載の「指示部」に相当する。
端末装置41において、通信部411は、受信部411aによって、各パワーコンディショナ12,22からそれぞれ個別出力電力の値を受信すると、当該個別出力電力の値を制御部414に出力する。制御部414は、入力された各個別出力電力の値を報知部413に報知させる。また、通信部411は、受信部411aによって、各パワーコンディショナ12,22から動作異常信号を受信すると、当該動作異常信号を制御部414に出力する。制御部414は、入力された動作異常信号を報知部413に報知させる。これにより、利用者は、各パワーコンディショナ12,22の出力状況(個別出力電力の値)や動作異常の発生を確認できる。
処理装置42は、図2に示すように、制御系の機能構成として、第1通信部421、第2通信部422、記憶部423、設定部424、算出部425および導出部426を備えている。本実施形態においては、第1通信部421、第2通信部422、記憶部423、設定部424、算出部425および導出部426は、通信バス429に接続されており、当該通信バス429を介して、処理装置42内での通信を行う。なお、処理装置42における通信ネットワークは、バス型接続に限定されない。また、第1通信部421と第2通信部422とは、1つのモジュールで構成されていてもよいし、異なるモジュールで構成されていてもよい。
第1通信部421は、ネットワークハブH1に接続されており、当該ネットワークハブH1を介して通信を行う。第1通信部421は、図2に示すように、受信部421aおよび送信部421bを含んでいる。受信部421aは、ネットワークハブH1に接続された各機器から信号を受信する。送信部421bは、ネットワークハブH1に接続された各機器に信号を送信する。
第1通信部421において、受信部421aは、端末装置41から制御モード設定指令を受信し、これを設定部424に出力する。また、受信部421aは、端末装置41から調整目標値設定指令を受信し、これを記憶部423に出力する。
第2通信部422は、ネットワークハブH2に接続されており、当該ネットワークハブH2を介して通信を行う。第2通信部422は、図2に示すように、受信部422aおよび送信部422bを含んでいる。受信部422aは、ネットワークハブH2に接続された各機器から信号を受信する。送信部422bは、ネットワークハブH2に接続された各機器に信号を送信する。
第2通信部422において、受信部422aは、受電設備3から接続点電力検出値を受信し、これを導出部426に出力する。また、受信部422aは、各パワーコンディショナ12,22からそれぞれ個別出力電力の値を受信し、これを算出部425に出力する。
第2通信部422において、送信部422bは、導出した制御指令値prPVを各パワーコンディショナ12に送信し、導出した制御指令値prBを各パワーコンディショナ22に送信する。
第2通信部422において、各パワーコンディショナ12,22と通信を行うとき、片方向通信で行う場合と、双方向通信で行う場合とがある。片方向通信のプロトコルは、特に限定されないが、たとえばUDP(User Datagram Protocol)である。双方向通信のプロトコルは、特に限定されないが、たとえばModbusプロトコルである。なお、UDPを用いた通信をUDP通信、Modbusプロトコルを用いた通信をModbus通信という。本実施形態においては、送信部422bは、制御指令値prPV,prBを各パワーコンディショナ12,22にそれぞれ送信するとき、UDP通信によって一斉送信する。また、本実施形態においては、受信部422aは、各パワーコンディショナ12,22からそれぞれ個別出力電力を受信するとき、Modbus通信によって受信する。この各パワーコンディショナ12,22と第2通信部422との、Modbus通信は、一対一通信である。なお、第2通信部422は、受信部422aによって、各パワーコンディショナ12,22からそれぞれ個別出力電力を受信すると、送信部422bによって各パワーコンディショナ12,22に、正常に受信したことを示す信号(受信確認信号)を送信する。
本実施形態においては、第1通信部421の受信部421aと第2通信部422の受信部422aとを合わせたものが、特許請求の範囲に記載の「処理装置受信部」に相当する。また、第1通信部421の送信部421bと第2通信部422の送信部422bとを合わせたものが、特許請求の範囲に記載の「処理装置送信部」に相当する。
記憶部423は、処理装置42における各種情報を記憶する。本実施形態においては、記憶部423には、各制御モードに対する調整目標値および通信異常時の制御指令値の設定値(以下、「異常時設定値」という。)が記憶されている。なお、異常時設定値の詳細については、後述する。記憶部423は、第1通信部421(受信部421a)から調整目標値設定指令を入力されると、当該調整目標値設定指令に基づいて、記憶されている調整目標値を更新する。
設定部424は、処理装置42における各種設定を行う。本実施形態においては、設定部424は、第1通信部421(受信部421a)から制御モード設定指令を入力されると、当該制御モード設定指令に基づいて、電力システムS1における電力制御の制御モードの設定を行う。本実施形態においては、設定部424は、通常モードの設定を指示する制御モード設定指令を入力されると、通常モードを設定する。また、スケジュールモードの設定を指示する制御モード設定指令を入力されると、スケジュールモードを設定する。同様に、出力抑制モードの設定を指示する制御モード設定指令を入力されると、出力抑制モードを設定して、ピークカットモードの設定を指示する制御モード設定指令を入力されると、ピークカットモードを設定して、逆潮流回避モードの設定を指示する制御モード設定指令を入力されると、逆潮流回避モードを設定する。なお、本実施形態においては、設定部424は、図示しないデマンド監視装置からの警報信号を入力されると、ピークカット補助モードを設定する。よって、電力システムS1は、デマンド監視装置からの警報信号に基づいて、自動的にピークカット補助モードが設定される。また、設定部424は、受電設備3(補助継電器33)からの接点信号を入力されると、逆潮流回避モードを設定する。よって、電力システムS1は、補助継電器33からの接点信号に基づいて、自動的に逆潮流回避モードが設定される。さらに、設定部424は、設定されている制御モードに対する調整目標値が記憶部423に記憶されていないと、緊急モードを設定する。たとえば、スケジュールモードが設定されているにも関わらず、記憶部423にスケジュール目標値が記憶されていない場合、緊急モードを設定する。
算出部425は、第2通信部422から入力される個別出力電力の値を用いて、接続点電力推算値、太陽電池PCS群総出力値および蓄電池PCS群総出力値を算出する。具体的には、算出部425は、各パワーコンディショナ12,22の各個別出力電力の値をすべて合計することで、接続点電力推算値を算出する。算出部425は、各パワーコンディショナ12の各個別出力電力の値を合計することで、太陽電池PCS総出力値を算出する。算出部425は、各パワーコンディショナ22の各個別出力電力の値を合計することで、蓄電池PCS総出力値を算出する。算出部425は、算出した接続点電力推算値、太陽電池PCS群総出力値および蓄電池PCS群総出力値を導出部426に出力する。
導出部426は、各パワーコンディショナ12,22がそれぞれ個別目標値を算出するための制御指令値を導出する。導出部426は、下記(7)式および下記(8)式に示す演算式による演算結果を制御指令値として導出する場合と、制御モードに対する所定値を制御指令値として導出する場合とを、設定されている制御モードに応じて適宜切り分ける。下記(7)式および下記(8)式において、λはラグランジュ乗数、εは勾配係数、Pc(t)は調整対象電力、Pt(t)は調整目標値を示している。以下の説明において、下記(7)式および下記(8)式に示す演算を「制御指令値演算」という場合もある。導出部426は、制御指令値演算を行うとき、設定されている制御モードに応じて、調整対象電力Pc(t)として、接続点電力検出値、接続点電力推算値、太陽電池PCS群総出力値、あるいは、蓄電池PCS群総出力値のいずれかを用いる。
導出部426は、通常モードが設定されている場合、各パワーコンディショナ12に太陽電池11が発電した電力を最大限出力させ、かつ、各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充電も放電もさせないために、制御指令値prPV,prBとして固定値「0」を導出する。なお、通常モードが設定されている場合には、制御指令値の導出を行わないようにしてもよい。
導出部426は、スケジュールモードが設定されている場合、上記(7)式および上記(8)式を演算し、その演算結果を制御指令値prPV,prBとして導出する。導出部426は、スケジュールモード時の制御指令値演算において、調整対象電力として接続点電力推算値を用い、調整目標値としてスケジュール目標値を用いる。
導出部426は、出力抑制モードが設定されている場合、上記(7)式および上記(8)式の演算結果を、制御指令値prPV,prBとして導出する。導出部426は、出力抑制モード時の制御指令値演算において、調整対象電力として接続点電力検出値を用い、調整目標値として抑制目標値を用いる。
導出部426は、ピークカットモードが設定されている場合、各パワーコンディショナ12に太陽電池11が発電した電力を最大限出力させるために固定値「0」を、制御指令値prPVとして導出し、上記(7)式および上記(8)式の演算結果を、制御指令値prBとして導出する。導出部426は、ピークカットモード時の制御指令値演算において、調整対象電力として接続点電力検出値を用い、調整目標値としてピークカット目標値を用いる。
導出部426は、ピークカット補助モードが設定されている場合、各パワーコンディショナ12に太陽電池11が発電した電力を最大限出力させるために、固定値「0」を制御指令値prPVとして導出し、上記(7)式および上記(8)式の演算結果を、制御指令値prBとして導出する。導出部426は、ピークカット補助モード時の制御指令値演算において、調整対象電力として蓄電池PCS群総出力値を用い、調整目標値として放電量目標値を用いる。当該放電量目標値は、警報信号の警報レベルごとに設定されており、利用者によって適宜設定変更可能である。
導出部426は、逆潮流回避モードが設定されている場合、上記(7)式および上記(8)式の演算結果を制御指令値prPV,prBとして導出する。導出部426は、逆潮流回避モード時の制御指令値演算において、調整対象電力として接続点電力検出値を用い、調整目標値として逆潮流回避目標値を用いる。
導出部426は、逆潮流緊急回避モードが設定されている場合、各パワーコンディショナ12に出力電力を抑制させるために、制御指令値prPVとして上記制御指令値限界prPV
lmtを導出し、各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充電も放電もさせないために、制御指令値prBとして固定値「0」を導出する。
導出部426は、緊急モードが設定されている場合、各パワーコンディショナ12に太陽電池11が発電した電力を最大限出力させ、かつ、各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充電も放電もさせないために、制御指令値prPV,prBとして固定値「0」を導出する。
導出部426は、以上のようにして、設定されている制御モードに応じて、制御指令値を導出する。そして、導出した制御指令値を第2通信部422に出力する。
処理装置42において、第2通信部422は、受信部422aによって、受電設備3から接続点電力検出値を受信すると、受信した接続点電力検出値を導出部426に出力する。導出部426は、制御モードとして出力抑制モード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードが設定されている場合、入力される接続点電力検出値と設定されている制御モードに対する調整目標値とを用いて、制御指令値演算を行う。
処理装置42において、第2通信部422は、受信部422aによって、各パワーコンディショナ12,22からそれぞれ個別出力電力の値を受信すると、受信した個別出力電力を算出部425に出力する。算出部425は、入力された個別出力電力を用いて、接続点電力推算値、太陽電池PCS群総出力値および蓄電池PCS群総出力値を算出し、算出したこれらの値を導出部426に出力する。導出部426は、制御モードとしてスケジュールモードが設定されている場合、入力された接続点電力推算値を用いて、制御指令値演算を行い、制御指令値(制御指令値prPV,prB)を導出する。また、導出部426は、ピークカット補助モードが設定されている場合、入力された蓄電池PCS群総出力値を用いて、制御指令値演算を行い、制御指令値(制御指令値prB)を導出する。
処理装置42において、導出部426は、制御指令値を導出すると、導出した制御指令値を第2通信部422に出力する。第2通信部422は、入力された制御指令値を、送信部422bによって各パワーコンディショナ12,22にそれぞれ送信する。このとき、送信部422bは、入力された制御指令値prPVを各パワーコンディショナ12に送信し、入力された制御指令値prBを各パワーコンディショナ12に送信する。なお、送信部422bは、制御指令値を送信する際、片方向一斉通信(たとえばUDP通信)を行う。
処理装置42において、第1通信部421は、受信部421aによって、端末装置41から調整目標値設定指令を受信すると、受信した調整目標値設定指令を記憶部423に出力する。記憶部423は、入力された調整目標値設定指令に基づいて、調整目標値を記憶する。なお、記憶部423は、すでに調整目標値を記憶している場合、新たに入力された調整目標値に更新(上書き)する。
処理装置42において、第1通信部421は、受信部421aによって、端末装置41から制御モード設定指令を受信すると、受信した制御モード設定指令を設定部424に出力する。設定部424は、入力される制御モード設定指令に基づいて、制御モードの設定を行う。
以上のようにして、電力システムS1は、設定されている制御モードに応じて、制御指令値を用いた電力制御を行う。
次に、電力システムS1において、各機器の間や各機器内部における各要素の間で、通信が正常に行われなかった場合について、説明する。本実施形態においては、通信が正常に行われない状況として、たとえば、各機器の間や各機器内部における各要素の間において、通信断が発生した場合、あるいは、各機器の間や各機器内部における各要素の間の信号異常が発生した場合などを想定して説明する。
<ケース1:端末装置41と処理装置42との間の通信断>
まず、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生した場合について説明する。本実施形態においては、利用者が操作部412を操作して、抑制目標値、ピークカット目標値あるいは逆潮流回避目標値の設定操作を行うと、端末装置41は、当該設定操作を受け付けたときに、これらの調整目標値に対する調整目標値設定指令を処理装置42に送信している。また、利用者が操作部412を操作して、スケジュール目標値の設定操作を行うと、端末装置41は、一定期間分ずつのスケジュール目標値に対する調整目標値設定指令を定期的に処理装置42に送信している。しかしながら、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生した場合、処理装置42は、端末装置41から調整目標値設定指令を受信できない。その結果、処理装置42は、利用者によって設定された調整目標値を正しく認識することができないため、適切な制御指令値を導出できない。よって、電力システムS1は制御指令値を用いた電力制御が行えなくなる。
そこで、端末装置41は、処理装置42に調整目標値設定指令を送信できない場合、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生していることを報知する。具体的には、端末装置41において、通信部411は、制御部414から調整目標値設定指令が入力されると、これをWAN81およびネットワークハブH1を介して、処理装置42に送信する。このとき、処理装置42は、調整目標値設定指令を正常に受信できた場合、正常に受信できたことを示す応答信号を、端末装置41に送信する。したがって、端末装置41(通信部411)は、調整目標値設定指令を処理装置42に正常に送信できた場合、当該応答信号を受信するが、通信断によって調整目標値設定指令を正常に送信できなかった場合、当該応答信号を受信しない。よって、通信部411は、応答信号を受信しなかった場合、調整目標値設定指令を処理装置42に正常に送信できなかったと判断して、その旨を制御部414に通知する。制御部414は、この通知に応じて、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生している旨を報知部413によって報知する。これにより、利用者は、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生していることを認識できるので、電力システムS1の電力制御を停止させたり、端末装置41と処理装置42との通信断を補修したりすることができる。
また、スケジュール目標値に対する調整目標値設定指令は、上記するように端末装置41から処理装置42に定期的に送信されているため、処理装置42は、前回スケジュール目標値に対する調整目標値設定指令を受信してから、所定時間経過しても、次のスケジュール目標値に対する調整目標値設定指令を受信しなかった場合に、端末装置41との間で通信断が発生していると判断できる。
そこで、処理装置42は、端末装置41からスケジュール目標値に対する調整目標値設定指令を受信できなった場合、制御モードとして緊急モードを設定する。具体的には、第1通信部421は、スケジュールモードが設定されているときに、端末装置41からスケジュール目標値に対する調整目標値設定指令を受信しなければ、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生していると判断する。そして、第1通信部421は、当該通信断が発生している旨を設定部424に通知する。設定部424は、第1通信部421からの通知に応じて、制御モードとして緊急モードを設定する。すなわち、設定部424は、スケジュールモードから緊急モードに切り替える。なお、処理装置42は、既に受信したスケジュール目標値に対する調整目標値設定指令によって、一定期間分のスケジュール目標値が記憶部423に記憶されている。そのため、端末装置41からスケジュール目標値に対する調整目標値設定指令を受信できなくなった場合でも、現時点の時間帯におけるスケジュール目標値が記憶部423に記憶されている間は、当該スケジュール目標値を用いて制御指令値演算を行う。その後、その時点の時間帯におけるスケジュール目標値が記憶部423に記憶されていない場合に、設定部424は、緊急モードに切り替えるようにしてもよい。
これにより、電力システムS1は、処理装置42が端末装置41からスケジュール目標値の調整目標値設定指令を正常に受信できなくても、緊急モードによる電力制御を行うため、制御指令値を用いた電力制御を、停止させることなく継続して行うことができる。
さらに、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生した場合、端末装置41から処理装置42に制御モード設定指令を送信できない。よって、端末装置41は、処理装置42に制御モード設定指令を送信できなかった場合、端末装置41と処理装置42との間で通信断が発生している旨を報知部413によって報知する。
<ケース2:端末装置41と各パワーコンディショナ12,22との間の通信断>
次いで、端末装置41と各パワーコンディショナ12,22との間で通信断が発生した場合について説明する。端末装置41と各パワーコンディショナ12,22との間で通信断が発生した場合、これらの間での信号の送受信ができなくなる。しかしながら、これらの間の通信によって、制御指令値を用いた電力制御に関わる情報の送受信は行っていない。たとえば、各パワーコンディショナ12,22から端末装置41に個別出力電力がそれぞれ送信されるが、端末装置41は、受信した各個別出力電力を報知するだけであり、制御指令値を用いた電力制御に用いていない。よって、電力システムS1は、端末装置41と各パワーコンディショナ12,22との間で通信断が発生しても、制御指令値を用いた電力制御を継続して行う。なお、端末装置41は、各パワーコンディショナ12,22との間で通信断が発生していることを検出した場合、当該通信断である旨を報知部413に報知させる。
これにより、端末装置41と各パワーコンディショナ12,22との間で通信断が発生しても、継続して制御指令値を用いた電力制御を行うことができる。また、通信断が発生していることが端末装置41から報知されるので、利用者は通信断が発生していることを認識できる。
<ケース3:受電設備3と処理装置42との間の通信断>
次いで、受電設備3と処理装置42との間で通信断が発生した場合について説明する。受電設備3と処理装置42との間で通信断が発生した場合、処理装置42は、受電設備3から接続点電力検出値を受信できない。そのため、処理装置42は、接続点電力検出値を用いた制御指令値演算(上記(7)式および上記(8)式の演算)ができない。よって、処理装置42は、接続点電力検出値を用いた制御指令値演算によって制御指令値を導出する制御モードが設定されている場合、すなわち、出力抑制モード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードが設定されている場合、当該通信断によって制御指令値を導出できなくなる。したがって、電力システムS1は、制御指令値を用いた電力制御を行うことができなくなる。
そこで、処理装置42は、接続点電力検出値を正常に受信できなかった場合、設定されている制御モードに応じた設定値(異常時設定値)を、制御指令値として、送信する。なお、受電設備3は、処理装置42に定期的に接続点電力検出値を送信しているので、処理装置42は、前回接続点電力検出値を受信してから、所定時間経過しても、新たに接続点電力検出値を受信しなかった場合に、正常に受信できなかった(通信断)と判断する。異常時設定値は、上記するように、記憶部423に記憶されている。本実施形態においては、出力抑制モード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードが設定されているときに制御指令値を導出できなくなるので、少なくとも、これらの制御モードに応じた異常時設定値が記憶部423に記憶されている。なお、各制御モードに応じた異常時設定値についての詳細は、後述する。そして、各パワーコンディショナ12,22は、通常通り、制御指令値(異常時設定値)を受信して、電力制御を行う。なお、上記した制御モード以外(たとえば、スケジュールモードなど)が設定されている場合は、正常時と同様に制御指令値の導出が可能であるので、設定されている制御モードに応じた電力制御を継続して行う。
出力抑制モードに対する異常時設定値は、各パワーコンディショナ12に送信する制御指令値prPVとして、各パワーコンディショナ12の出力電力を抑制させるための値であり、各パワーコンディショナ22に送信する制御指令値prBとして、各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充電も放電もさせないための値である。よって、本実施形態においては、出力抑制モードが設定されているときに、第2通信部422が接続点電力検出値を正常に受信できなかった場合、導出部426は、制御指令値prPVとして上記制御指令値限界prPV
lmtを導出し、制御指令値prBとして「0」を導出する。なお、出力抑制モードに対する異常時設定値は、各パワーコンディショナ22に送信する制御指令値prBに対しては、各パワーコンディショナ22に蓄電池21を充電させるための値であってもよい。よって、出力抑制モードに対する異常時設定値として、制御指令値prPVに対しては、各パワーコンディショナ12の出力電力を抑制させるための値を、制御指令値prBに対しては、各パワーコンディショナ22に蓄電池21を放電させないための値を用いればよい。
ピークカットモードに対する異常時設定値は、各パワーコンディショナ12に送信する制御指令値prPVとして、各パワーコンディショナ12に太陽電池11が発電した電力を最大限出力させる(出力電力を抑制させない)ための値であり、各パワーコンディショナ22に送信する制御指令値prBとして、各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充電も放電もさせないための値である。よって、本実施形態において、ピークカットモードが設定されているときに、第2通信部422が接続点電力検出値を正常に受信できなかった場合、導出部426は、制御指令値prPV,prBとして「0」を導出する。なお、ピークカットモードに対する異常時設定値は、各パワーコンディショナ22に送信する制御指令値prBに対しては、各パワーコンディショナ22に蓄電池21を放電させるための値であってもよい。よって、ピークカットモードに対する異常時設定値として、制御指令値prPVに対しては、各パワーコンディショナ12の出力電力を抑制させないための値を、制御指令値prBに対しては、各パワーコンディショナ22に蓄電池21を充電させないための値を用いればよい。
逆潮流回避モードに対する異常時設定値は、各パワーコンディショナ12に送信する制御指令値prPVとして、各パワーコンディショナ12に出力電力を抑制させるための値であり、各パワーコンディショナ22に送信する制御指令値prBとして、各パワーコンディショナ22に蓄電池21を充電させる値である。よって、本実施形態において、逆潮流回避モードが設定されているときに、第2通信部422が接続点電力検出値を正常に受信できなかった場合、導出部426は、制御指令値prPVとして上記制御指令値限界prPV
lmtを導出し、制御指令値prBとして上記制御指令値限界prB
lmtを負の値にした値(-prB
lmt)を導出する。なお、逆潮流回避モードに対する異常時設定値は、各パワーコンディショナ22に送信する制御指令値prBに対しては、各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充放電をさせないための値であってもよい。よって、逆潮流回避モードに対する異常時設定値として、制御指令値prPVに対しては、各パワーコンディショナ12に出力電力を抑制させるための値を、制御指令値prBに対しては、各パワーコンディショナ22に蓄電池21を放電させないための値を用いればよい。
また、処理装置42は、接続点電力検出値を受信できなかった場合に、第1通信部421(送信部421b)によって、当該接続点電力値を受信できなかった旨を端末装置41に通知する。そして、端末装置41は、その通知に基づいて、受電設備3と処理装置42との間で通信断が発生している旨の警告を報知する。なお、当該警告の報知は、接続点電力検出値を用いた制御指令値演算によって制御指令値を導出する制御モードが設定されている場合、すなわち、出力抑制モード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードのいずれかが設定されている場合にのみ行ってもよいし、これら以外の制御モードが設定されている場合でも行ってもよい。
これにより、電力システムS1は、受電設備3と処理装置42との間の通信断によって、処理装置42が受電設備3から接続点電力検出値を受信できず、制御指令値演算を行えない状況であっても、設定されている制御モードに応じた異常時設定値を制御指令値として用いることで、制御指令値を用いた電力制御を継続して行うことができる。
また、上記するように、出力抑制モードに対する異常時設定値は、制御指令値prPVとして各パワーコンディショナ12の出力電力を抑制させるための値が、制御指令値prBとして各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充電も放電もさせないための値がそれぞれ記憶部423に記憶されている。よって、出力抑制モードが設定されているときに、受電設備3と処理装置42とが通信断となった場合、出力抑制モードに対する異常時設定値を制御指令値として用いることで、電力システムS1から電力系統Kに出力する電力を小さくすることができる。これにより、電力システムS1において、接続点電力検出値が抑制目標値を超える可能性を低下させることができる。
また、上記するように、ピークカットモードに対する異常時設定値は、制御指令値prPVとして各パワーコンディショナ12に太陽電池11が発電した電力を最大限出力させる(出力電力を抑制させない)ための値が、制御指令値prBとして各パワーコンディショナ22に蓄電池21の充電も放電もさせないための値がそれぞれ記憶部423に記憶されている。よって、ピークカットモードが設定されているときに、受電設備3と処理装置42とが通信断となった場合、ピークカットモードに対する異常時設定値を制御指令値として用いることで、電力系統Kから電力システムS1に入力される電力を小さくする(買電電力を小さくする)ことができる。これにより、電力システムS1において、電力ピークが上昇する可能性を低下させることができる。
また、上記するように、逆潮流回避モードに対する異常時設定値は、制御指令値prPVとして各パワーコンディショナ12に出力電力を抑制させるための値が、制御指令値prBとして各パワーコンディショナ22に蓄電池21を充電させるための値が記憶部423に記憶されている。よって、逆潮流回避モードが設定されているときに、受電設備3と処理装置42とが通信断となった場合、逆潮流回避モードに対する異常時設定値を制御指令値として用いることで、電力系統Kから電力システムS1に入力される電力を大きくする(買電電力を大きくする)ことができる。これにより、電力システムS1において、逆潮流が発生する可能性を低下させることができる。さらに、受電設備3と処理装置42との間で通信断が発生した場合には、処理装置42は、補助継電器33からの接点信号も受信できなくなる。しかしながら、この逆潮流回避モードに対する異常時設定値を用いることで、逆潮流が発生する可能性を低下させることができるので、補助継電器33からの接点信号を受信できないことによる逆潮流の発生を抑制できる。
<ケース4:処理装置42と各パワーコンディショナ12,22との間の通信断>
次いで、処理装置42と各パワーコンディショナ12,22との間で通信断が発生した場合について説明する。本実施形態においては、処理装置42と各パワーコンディショナ12,22との間で、片方向通信(UDP通信)において通信断が発生する場合と、双方向通信(Modbus通信)において通信断が発生する場合とがある。以下にそれぞれの場合について説明する。
<ケース4-1:片方向通信において通信断が発生した場合>
本実施形態においては、処理装置42は、各パワーコンディショナ12,22に制御指令値を送信する際、片方向通信(UDP通信)によって送信している。したがって、処理装置42から各パワーコンディショナ12,22への片方向通信において通信断が発生した場合、各パワーコンディショナ12,22の第2通信部122,222は、制御指令値を受信できない。その結果、各パワーコンディショナ12,22は、情報処理部124,224によって、個別目標値を算出できなくなるので、電力システムS1は、適切に電力制御できなくなる。
そこで、各パワーコンディショナ12,22は、処理装置42から制御指令値を受信できない場合、自装置からの電力の出力を待機状態にする。具体的には、各パワーコンディショナ12,22において、受信部122a,222aは、処理装置42から制御指令値prPV,prBを受信できない場合、その旨を情報処理部124,224に通知する。そして、情報処理部124,224は、当該通知に応じて、出力制御部125,225に電力の出力を停止するように指示する。出力制御部125,225は、当該指示に従い、インバータ回路125a,225aを停止させ、電力の出力を停止する。なお、処理装置42から制御指令値を受信できたパワーコンディショナ12,22は、通常通り、受信した制御指令値に基づいて、個別出力電力の制御を行う。
また、各パワーコンディショナ12,22は、処理装置42から制御指令値を受信できない場合、第1通信部121,221(送信部121b,221b)によって、制御指令値を受信できなかった旨を端末装置41に通知する。そして、端末装置41は、その通知に基づいて、処理装置42と各パワーコンディショナ12,22との片方向通信において通信断が発生している旨の警告を報知する。
これにより、電力システムS1は、各パワーコンディショナ12,22と処理装置42との間の通信断によって、各パワーコンディショナ12,22が制御指令値を受信できず、個別目標値を算出できない状況であっても、不適切な電力制御が行われてしまうことを抑制できる。たとえば、逆潮流回避モードで動作中に、逆潮流が発生する可能性を抑制できる。なお、処理装置42は、各パワーコンディショナ12,22に制御指令値を正常に送信できたか否かに応じて制御指令値の導出方法を変えないので、各パワーコンディショナ12,22に制御指令値を送信できなくても、通常通りの処理を行う。
<ケース4-2:双方向通信において通信断が発生した場合>
本実施形態においては、各パワーコンディショナ12,22はそれぞれ、処理装置42に個別出力電力の値を送信する際、双方向通信(Modbus通信)によって送信している。したがって、各パワーコンディショナ12,22と処理装置42との双方通信において通信断が発生した場合、各パワーコンディショナ12,22の第2通信部122,222(送信部122b,222b)はそれぞれ、個別出力電力の値を送信できない。したがって、処理装置42は、受信できなかった個別出力電力の値を除いて、受信できた個別出力電力の値しか用いることができない。
このような状況において、処理装置42は、制御モードとしてスケジュールモードあるいはピークカット補助モードが設定されている場合には、各パワーコンディショナ12,22から個別出力電力を受信できなくても、受信できた各個別出力電力の値を用いて制御指令値の導出を継続する。よって、処理装置42は当該通信断に対して特別な動作を行わないので、各パワーコンディショナ12,22の電力の出力状況に沿わない不適切な制御指令値が算出される。また、各パワーコンディショナ12,22は、そのような不適切な制御指令値に基づいて、個別出力電力を制御することになるので、電力システムS1は、不適切な電力制御となる可能性がある。
そこで、各パワーコンディショナ12,22は、処理装置42に個別出力電力の値を送信できない場合、自装置(パワーコンディショナ12,22)を待機状態にする。なお、各パワーコンディショナ12,22は、どの制御モードを設定しているか確認していないため、処理装置42にいずれの制御モードが設定されていても、個別出力電力の値を送信できなければ、自装置(パワーコンディショナ12,22)を待機状態にする。具体的には、各パワーコンディショナ12,22において、第2通信部122,222は、送信部122b,222bによって処理装置42に個別出力電力の値を送信できない場合、その旨を情報処理部124,224に通知する。そして、情報処理部124,224は、当該通知に応じて、出力制御部125,225に電力の出力を停止するように指示する。出力制御部125,225は、当該指示に従い、インバータ回路125a,225aを停止させ、電力の出力を停止する。本実施形態においては、第2通信部122,222は、個別出力電力の値を処理装置42に送信できた場合、処理装置42から受信確認信号を受信するが、個別出力電力の値を処理装置42に送信できなかった場合、当該受信確認信号を受信しない。よって、第2通信部122,222は、当該受信確認信号を受信できなかった場合に、個別出力電力の値を送信できなかったと判断できる。
また、各パワーコンディショナ12,22は、処理装置42に個別出力電力の値を送信できなかった場合に、第1通信部421(送信部421b)によって、個別出力電力の値を送信できなかった旨を端末装置41に通知する。そして、端末装置41は、その通知に基づいて、処理装置42と各パワーコンディショナ12,22との双方向通信において通信断が発生している旨の警告を報知する。
これにより、電力システムS1は、各パワーコンディショナ12,22から個別出力電力の値を正常に送信できない状況であっても、不適切な電力制御が行われることを抑制できる。たとえば、図5~図8は、ケース4-2における電力制御の一例を説明するための図である。なお、図5~図8においては、電力システムS1が、3つのパワーコンディショナ22A,22B,22Cを備えている場合であって、スケジュールモードによって、電力システムS1から電力系統Kへの出力電力が300kWとなるように電力制御する場合を想定している。したがって、スケジュール目標値を300kWとしている。なお、図5~図8においては、電力システムS1を簡略化している。
図5は、処理装置42と各パワーコンディショナ22A,22B,22Cとが正常に通信できている場合を示している。なお、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cから、それぞれ100kWずつ電力が出力されているものとする。このとき、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cは、個別出力電力の値を処理装置42に送信し、処理装置42は、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cから各個別出力電力の値を受信する。処理装置42は、これらの個別出力電力の値に基づいて、接続点電力推算値を300kWと算出する。そして、当該接続点電力推算値とスケジュール目標値(300kW)とを用いた制御指令値演算によって、制御指令値を導出する。導出された制御指令値は、図5に示すように、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cに個別出力電力を100kWにするための値であって、制御指令値prB
100と表記する。そして、処理装置42は、導出した制御指令値prB
100を各パワーコンディショナ22A,22B,22Cに送信し、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cは、制御指令値prB
100を受信する。各パワーコンディショナ22A,22B,22Cは、受信した制御指令値prB
100に基づいて、個別目標値を算出し、個別出力電力が個別目標値となるように、出力制御を行う。これにより、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cからそれぞれ100kWずつ出力される。よって、図5に示す状況においては、制御指令値を用いた電力制御が適切に行われている。
図6は、図5における状況において、パワーコンディショナ22Cと処理装置42との間の双方向通信(Modbus通信)において通信断が発生した場合を示している。図6に示す状況においては、当該通信断によって、パワーコンディショナ22Cから処理装置42に個別出力電力の値が送信できない。よって、処理装置42は、パワーコンディショナ22Cの個別出力電力の値を受信できず、パワーコンディショナ22A,22Bから受信した個別出力電力の値を用いて接続点電力推算値を算出する。このとき算出される接続点電力推算値は200kWである。このとき、スケジュール目標値である300kWに対して、接続点電力推算値が200kWであるので、処理装置42は、当該接続点電力推算値を300kWに上昇させるために、各パワーコンディショナ22A,22Bの個別出力電力を100kWから150kWにするための制御指令値を導出する。当該導出された制御指令値は、各パワーコンディショナ22A,22Bの個別出力電力を150kWにするための値であって、制御指令値prB
150と表記する。
図7は、図6に示す通信断が発生した状況において、当該通信断が発生したときの対応を考慮していない場合の電力制御を示している。すなわち、従来の電力システムの電力制御が行われた場合を示している。処理装置42は、導出した制御指令値prB
150を片方向通信(UDP通信)によって送信しており、パワーコンディショナ22Cと処理装置42との間の片方向通信は正常に通信可能であるため、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cはすべて、この制御指令値prB
150を受信する。よって、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cが、受信した制御指令値prB
150に基づいて個別目標値を算出し、個別出力電力が個別目標値となるように出力制御を行ってしまう。その結果、各パワーコンディショナ22A,22B,22Cからそれぞれ150kWずつ出力され、電力システムS1から電力系統Kに450kWの電力が出力されることになる。また、処理装置42は、双方向通信の通信断の影響により、パワーコンディショナ22Cから個別出力電力の値を受信できないため、パワーコンディショナ22A,22Bからの個別出力電力の値に基づいて、接続点電力推算値を算出する。このとき算出される接続点電力推算値は300kWであるため、処理装置42は、図7に示す状況を継続する。したがって、従来の電力システムでは、適切に電力制御を行えていないことが分かる。
図8は、図6に示す通信断が発生した状況において、当該通信断が発生したときの対応を考慮した場合の電力制御を示している。すなわち、本開示の電力システムS1の電力制御が行われた場合を示している。本開示の電力システムS1においては、パワーコンディショナ22Cは、個別出力電力の値を正常に送信できない場合、自装置(パワーコンディショナ22C)を待機状態にする。すなわち、パワーコンディショナ22Cのインバータ回路225aを停止させ、電力の出力を停止させる。したがって、パワーコンディショナ22Cは、片方向通信(UDP通信)によって制御指令値prB
150を受信したとしても、個別出力電力の値を正常に送信できていないため、電力を出力しない。その結果、各パワーコンディショナ22A,22Bのそれぞれが150kWずつ出力するので、電力システムS1から電力系統Kに300kWの電力が出力されることになる。したがって、本開示の電力システムS1では、適切に電力制御を行えていることが分かる。
なお、接続点電力検出値を用いて制御指令値演算を行う制御モード(例えば、出力抑制モード、ピークカットモード、逆潮流回避モード)が設定されている場合には、処理装置42が行う制御指令値演算において、各パワーコンディショナ12,22からの個別出力電力の値を用いていない。そのため、上記した制御モードが設定されている場合に、処理装置42が各パワーコンディショナ12,22から個別出力電力の値を受信できなくても、制御指令値を用いた電力制御に特に影響はない。
<ケース5:各パワーコンディショナ12の内部における通信断>
次いで、各パワーコンディショナ12の内部において、通信断が発生した場合について説明する。
<ケース5-1:情報処理部124と出力制御部125との間の通信断>
各パワーコンディショナ12において、情報処理部124と出力制御部125との間で通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ12において、出力制御部125は、情報処理部124から個別目標値を入力されない(受信できない)。そのため、出力制御部125は、目標とする電力値(個別目標値)が分からず、個別出力電力の制御を適切に行えない。よって、電力システムS1は、適切な電力制御を行えない可能性がある。たとえば、意図せず、逆潮流が禁止されている電力システムS1において逆潮流を発生させたり、電力ピークを上昇させたりする可能性がある。そこで、出力制御部125は、情報処理部124から個別目標値を入力されなかった(受信できなかった)場合、自装置(パワーコンディショナ12)を待機状態にする。すなわち、出力制御部125は、インバータ回路125aを停止させ、自装置(パワーコンディショナ12)からの電力の出力を停止する。なお、通信断が発生していない他のパワーコンディショナ12において、出力制御部125は、通常通り、情報処理部124から入力された個別目標値に基づいて、個別出力電力を制御する。これにより、電力システムS1は、情報処理部124から出力制御部125に個別目標値を入力されないことによって、不適切な電力制御が行われてしまうことを抑制できる。よって、意図せぬ逆潮流の発生や電力ピークの上昇を抑制できる。
<ケース5-2:第1通信部121と出力制御部125との間の通信断>
各パワーコンディショナ12において、出力制御部125と第1通信部121との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ12において、第1通信部121は、出力制御部125から自装置(パワーコンディショナ12)の個別出力電力の値や動作異常信号を入力されない(受信できない)。よって、第1通信部121は、これらを端末装置41に送信できない。しかしながら、第1通信部121から端末装置41に送信する個別出力電力の値や動作異常信号は、電力システムS1の電力制御に関わる情報ではないため、電力システムS1は、制御指令値を用いた電力制御を継続して行う。
<ケース5-3:第1通信部121と情報処理部124との間の通信断>
各パワーコンディショナ12において、情報処理部124と第1通信部121との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ12において、第1通信部121と情報処理部124との間での信号の送受信ができなくなる。しかしながら、これらの間の通信によって、制御指令値を用いた電力制御に関わる情報の送受信は行っていない。よって、電力システムS1は、第1通信部121と情報処理部124との間で通信断が発生しても、制御指令値を用いた電力制御を継続して行う。
<ケース5-4:第2通信部122と出力制御部125との間の通信断>
各パワーコンディショナ12において、出力制御部125と第2通信部122との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ12において、第2通信部122は、出力制御部125から個別出力電力の値を入力されない(受信できない)。したがって、第2通信部122は、個別出力電力の値を処理装置42に送信できないので、上記した各パワーコンディショナ12,22と処理装置42との双方向通信における通信断と同じ状況が発生する。そこで、出力制御部125は、第2通信部122に個別出力電力の値を出力できない(送信できない)場合、自装置(パワーコンディショナ12)を待機状態にする。すなわち、出力制御部125は、インバータ回路125aを停止させ、自装置(パワーコンディショナ12)からの電力の出力を停止する。なお、通信断が発生していない他のパワーコンディショナ12において、第2通信部122は、通常通り、出力制御部125から入力された個別出力電力の値を処理装置42に送信する。これにより、上記双方向通信における通信断が発生したとき(ケース4-2参照)と同様に、電力システムS1は、不適切な電力制御が行われることを抑制できる。
<ケース5-5:第2通信部122と情報処理部124との間の通信断>
各パワーコンディショナ12において、情報処理部124と第2通信部122との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ12において、情報処理部124は、第2通信部122から制御指令値を入力されない。ゆえに、情報処理部124は、制御指令値が入力されず、個別目標値を算出できない。そこで、情報処理部124は、第2通信部122から制御指令値が入力されない場合、出力制御部125に対して、自装置(パワーコンディショナ12)を待機状態にするように指示する。これにより、上記片方向通信における通信断が発生したとき(ケース4-1参照)と同様に、電力システムS1は、不適切な電力制御が行われることを抑制できる。
上記ケース5で示したように、内部で通信断が発生したパワーコンディショナ12においては、必要に応じて、インバータ回路125aを停止させ、内部で通信断が発生していないパワーコンディショナ12においては、通常通り、電力制御を行う。すなわち、内部で通信断が発生していないパワーコンディショナ12は、継続して電力制御を行う。これにより、電力システムS1は、パワーコンディショナ12の内部において通信断が発生した場合でも、不適切な電力制御を抑制しつつ、制御指令値を用いた電力制御を継続することができる。
なお、各パワーコンディショナ12は、自装置(パワーコンディショナ12)内部の各要素間のいずれかで通信断が発生している場合、当該通信断が発生している旨を、第1通信部121(送信部121b)によって、端末装置41に通知する。そして、端末装置41は、当該通知に応じて、パワーコンディショナ12の内部で通信断が発生している旨の警告を報知する。
<ケース6:各パワーコンディショナ22の内部における通信断>
次いで、各パワーコンディショナ22の内部において、通信断が発生した場合について説明する。
<ケース6-1:情報処理部224と出力制御部225との間の通信断>
各パワーコンディショナ22において、情報処理部224と出力制御部225との間で通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ22において、出力制御部225は、情報処理部224から個別目標値を入力されない(受信できない)。そのため、出力制御部225は、目標とする電力値(個別目標値)が分からず、個別出力電力の制御を適切に行えない。よって、電力システムS1は、各パワーコンディショナ12において、情報処理部124と出力制御部125との間で通信断が発生したときと同様に、適切な電力制御を行えない可能性がある。そこで、出力制御部225は、情報処理部224から個別目標値を入力されなかった(受信できなかった)場合、自装置(パワーコンディショナ22)を待機状態にする。すなわち、出力制御部225は、インバータ回路225aを停止させ、自装置(パワーコンディショナ22)からの電力の出力を停止する。なお、通信断が発生していない他のパワーコンディショナ22において、出力制御部225は、通常通り、情報処理部224から入力された個別目標値に基づいて、個別出力電力を制御する。これにより、電力システムS1は、情報処理部224から出力制御部225に個別目標値を入力されないことによって、不適切な電力制御が行われてしまうことを抑制できる。
<ケース6-2:第1通信部221と出力制御部225との間の通信断>
各パワーコンディショナ22において、出力制御部225と第1通信部221との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ22において、第1通信部221は、出力制御部225から自装置(パワーコンディショナ22)の個別出力電力の値や動作異常信号を入力されない(受信できない)。よって、第1通信部221は、これらを端末装置41に送信できない。しかしながら、第1通信部221から端末装置41に送信する個別出力電力の値や動作異常信号は、電力システムS1の電力制御に関わる情報ではないため、電力システムS1は、制御指令値を用いた電力制御を継続して行う。
<ケース6-3:第1通信部221と情報処理部224との間の通信断>
各パワーコンディショナ22において、情報処理部224と第1通信部221との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ22において、第1通信部221と情報処理部224との間での信号の送受信ができなくなる。しかしながら、これらの間の通信によって、制御指令値を用いた電力制御に関わる情報の送受信は行っていない。よって、電力システムS1は、第1通信部221と情報処理部224との間で通信断が発生しても、制御指令値を用いた電力制御を継続して行う。
<ケース6-4:第2通信部222と出力制御部225との間の通信断>
各パワーコンディショナ22において、出力制御部225と第2通信部222との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ22において、第2通信部222は、出力制御部225から個別出力電力の値を入力されない(受信できない)。したがって、第2通信部222は、個別出力電力の値を処理装置42に送信できないので、上記した各パワーコンディショナ12,22と処理装置42との双方向通信における通信断と同じ状況が発生する。そこで、出力制御部225は、第2通信部222に個別出力電力の値を出力できない(送信できない)場合、自装置(パワーコンディショナ22)を待機状態にする。すなわち、出力制御部225は、インバータ回路225aを停止させ、自装置(パワーコンディショナ22)からの電力の出力を停止する。なお、通信断が発生していない他のパワーコンディショナ22において、第2通信部222は、通常通り、出力制御部225から入力された個別出力電力の値を処理装置42に送信する。これにより、上記双方向通信における通信断が発生したとき(ケース4-2参照)と同様に、電力システムS1は、不適切な電力制御が行われることを抑制できる。
<ケース6-5:第2通信部222と情報処理部224との間の通信断>
各パワーコンディショナ22において、情報処理部224と第2通信部222との間で、通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ22において、情報処理部224は、第2通信部222から制御指令値を入力されない。ゆえに、情報処理部224は、制御指令値が入力されず、個別目標値を算出できない。そこで、情報処理部224は、第2通信部222から制御指令値が入力されない場合、出力制御部225に対して、自装置(パワーコンディショナ22)を待機状態にするように指示する。これにより、上記片方向通信における通信断が発生したとき(ケース4-1参照)と同様に、電力システムS1は、不適切な電力制御が行われることを抑制できる。
<ケース6-6:状態取得部223と情報処理部224との間の通信断>
各パワーコンディショナ22において、状態取得部223と情報処理部224との間で通信断が発生することがある。このとき、当該通信断が発生したパワーコンディショナ22において、情報処理部224は、状態取得部223から蓄電池21の状態を入力されない(受信できない)。そのため、情報処理部224は、上記(3)式によって個別目標値を算出するときに、適切な個別目標値を算出できない。その結果、蓄電池21を過剰に充放電してしまい、蓄電池21を劣化あるいは損傷させる可能性がある。そこで、情報処理部224は、状態取得部223から蓄電池21の状態を入力されない(受信できない)場合、出力制御部225に対して、自装置(パワーコンディショナ22)からの電力の出力を待機状態にするように指示する。これにより、蓄電池21を過剰に充放電することが抑制され、蓄電池21を劣化あるいは損傷させることを抑制できる。
上記ケース6で示したように、内部で通信断が発生したパワーコンディショナ22においては、必要に応じて、インバータ回路225aを停止させ、内部で通信断が発生していないパワーコンディショナ22においては、通常通り、電力制御を行う。すなわち、内部で通信断が発生していないパワーコンディショナ22は、継続して電力制御を行う。これにより、電力システムS1は、パワーコンディショナ22の内部において通信断が発生した場合でも、不適切な電力制御を抑制しつつ、制御指令値を用いた電力制御を継続することができる。
なお、各パワーコンディショナ22は、自装置(パワーコンディショナ22)内部の各要素間のいずれかで通信断が発生している場合、当該通信断が発生している旨を、第1通信部221(送信部221b)によって、端末装置41に通知する。そして、端末装置41は、当該通知に応じて、パワーコンディショナ22の内部で通信断が発生している旨の警告を報知する。
<ケース7:通信断以外のその他の通信異常>
次いで、上記ケース1~ケース6で説明した通信断以外のその他の通信異常が発生した場合について説明する。
<ケース7-1:制御指令値の通信時の信号異常>
本実施形態においては、各パワーコンディショナ12,22は、処理装置42から送信された制御指令値を受信する。各パワーコンディショナ12,22は、処理装置42から制御指令値を受信すると、情報処理部124,224によって、当該受信した制御指令値の誤り検出を行う。誤り検出の方法は、特に限定されず、周知の方法を用いればよい。そして、情報処理部124,224は、当該誤り検出によって、受信した信号の異常が検出された場合、出力制御部125,225に自装置(パワーコンディショナ12,22)からの電力の出力を待機状態にするように指示する。これにより、電力システムS1は、上記信号異常によって、不適切な電力制御が行われてしまうことを抑制できる。
また、各パワーコンディショナ12,22は、情報処理部124,224によって、受信した信号の異常が検出された場合、第1通信部121,221(送信部121b,221b)によってその旨を端末装置41に通知する。そして、端末装置41は、当該通知に基づいて、処理装置42から各パワーコンディショナ12,22に制御指令値が正常に送信できなかった旨を、報知部413によって報知する。
<ケース7-2:アドレス異常>
処理装置42から各パワーコンディショナ12,22に双方向通信(Modbus通信)を行うとき、処理装置42は、各パワーコンディショナ12,22の所定のIPアドレスにアクセスしている。しかしながら、処理装置42が上記所定のIPアドレスと異なるIPアドレスにアクセスしてくることも考えられる。よって、第2通信部122,222は、このような通常時とは異なるIPアドレスにアクセスしてきたことを検出すると、出力制御部125,225に自装置(パワーコンディショナ12,22)からの電力の出力を待機状態にするように指示する。これにより、電力システムS1は、上記アドレス異常によって、不適切な電力制御が行われてしまうことを抑制できる。
なお、上記したケース7(ケース7-1,7-2)は一例であって、これに限定されない。たとえば、上記したケース1~ケース6において、各機器の間あるいは各機器内部の各部の間の通信断ではなく、通信によって送受信する信号異常やアドレス異常によっても、正常に通信ができないこともある。このように信号異常やアドレス異常によって、正常に各種信号を送信あるいは受信できなかった場合も、上記したケース1~ケース6で示した電力制御と同様に動作することで、電力システムS1が不適切な電力制御を行ってしまうことを抑制できる。
本開示の電力システムS1は、各機器の間や各機器内部の各要素の間での通信が正常に行われなかった場合には、上記したように通常時とは異なる電力制御を行うように構成されている。これにより、電力システムS1は、通信異常が発生した場合であっても、制御指令値を用いた電力制御を停止させることなく、継続して動作することができる。
本開示の電力システムS1は、制御指令値を用いた電力制御に影響のある通信異常が発生した場合には、不適切な電力制御が行われない程度に、継続して電力制御を行い、制御指令値を用いた電力制御に影響のない通信異常が発生した場合には、通常通りに、継続して電力制御を行う。これにより、通信異常の発生箇所に応じて、制御指令値を用いた電力制御にとって適切な対応をとることができる。
上記実施形態では、電力システムS1が、複数のパワーコンディショナ22を備えている場合を示したが、これらを備えていなくてもよい。この場合、処理装置42は、上記実施形態と同様に、制御指令値(制御指令値pr
PV)を算出し、算出した制御指令値pr
PVを複数のパワーコンディショナ12のそれぞれに送信する。そして、複数のパワーコンディショナ12は、上記(1)式に示す最適化問題の代わりに下記(1’)式に示す最適化問題に基づいて、個別目標値P
PVi
refを算出する。なお、下記(1’)式において、P
i
SPは、i番目の太陽電池11の発電量を示している。これにより、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
上記実施形態では、電力システムS1において、端末装置41と処理装置42とが異なる装置である場合を示したが、これに限定されず、端末装置41と処理装置42とが一つのコンピュータで構成されていてもよい。この場合、端末装置41および処理装置42はそれぞれ、WAN81に接続する必要がない。
上記実施形態では、本開示の電力システムS1として、太陽電池11が接続されたパワーコンディショナ12を備えている場合、すなわち、電力システムS1が太陽光発電システムである場合を説明したが、これに限定されない。本開示の電力システムは、たとえば、他の再生可能エネルギー(風力、水力、バイオマス、地熱など)を利用した発電システム、燃料電池による発電システム、化石燃料を利用した発電システム、回転機形の発電機による発電システム、ネガワット取引を行うアグリゲータによる、需要家の負荷を管理する仮想的な発電システム、各種コジェネレーションシステム、あるいは、EV(Electric Vehicle)スタンドを利用した電力システムなどであってもよい。なお、アグリゲータは、実際に発電を行っているのではないが、ネガワット取引により、節約できた電力を発電した電力とみなしている。また、EVスタンドは、EVやPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの充放電を行う設備である。EVスタンドは、実際に発電を行っているのではないが、EVやPHEVに蓄積された電力を放電させて、この電力を発電した電力とみなしている。これらの電力システムの場合でも、処理装置42が、制御指令値を導出して、各電力制御装置に送信する。そして、各電力システムの電力制御装置は、受信した制御指令値を用いた最適化問題に基づいて、自装置の個別目標値を算出し、当該個別目標値となるように個別出力電力を制御する。再生可能エネルギーを利用した発電システムや燃料電池による発電システムの場合、電力制御装置は、電力システムS1と同様にパワーコンディショナである。また、回転機形の発電機による発電システムや各種コジェネレーションシステムの場合、電力制御装置は、発電機およびこれを制御する制御装置である。また、アグリゲータによる発電システムの場合、電力制御装置は、需要家の負荷およびこれを制御する制御装置である。なお、アグリゲータによる発電システムにおいては、節約できた電力を発電した電力とみなしているので、需要家の負荷の通常の消費電力から削減した電力が個別出力電力になる。また、EVスタンドを利用した電力システムの場合、電力制御装置は、EVやPHEVを接続したEVスタンドおよびこれを制御する制御装置である。なお、EVスタンドを利用した電力システムは、EVやPHEVに備えられたバッテリーが蓄電池21に相当し、EVスタンドおよびこれを制御する制御装置がパワーコンディショナ22に相当するようにも考えられる。また、本開示の電力システムは、上記した発電システムを併用したものとしてもよい。たとえば、太陽光発電システムに回転機形の発電機を追加して、処理装置42が太陽光発電システムの各パワーコンディショナおよび発電機の電力制御装置に制御指令値を送信して、電力システムの電力制御を行う構成としてもよい。
本開示にかかる電力システムおよび処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の内容を逸脱しなければ、各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。