以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17と、インナーライナ18とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、所定の有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上90[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有する。なお、図1の構成では、カーカス層13が単一のカーカスプライから成る単層構造を有するが、これに限らず、カーカス層13が複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有しても良い(図示省略)。なお、カーカスプライの詳細については、後述する。
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143および一対のベルトエッジカバー144とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。なお、交差ベルト141、142のベルト角度は、上記範囲に限定されず、任意に設定され得る。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。ベルトカバー143および一対のベルトエッジカバー144は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143および一対のベルトエッジカバー144は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成される。なお、ベルトカバー143および一対のベルトエッジカバー144が省略されても良い(図示省略)。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、ビード部のリム嵌合面を構成する。
インナーライナ18は、タイヤ内腔面に配置されてカーカス層13を覆う空気透過防止層であり、カーカス層13の露出による酸化を抑制し、また、タイヤに充填された空気の洩れを防止する。また、インナーライナ18は、例えば、ブチルゴムを主成分とするゴム組成物、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂中にエラストマー成分をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物などから構成される。また、インナーライナ18は、タイゴム(図示省略)を介してカーカス層13に接着される。
[ビードフィラーレス構造]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのビード部を示す断面図である。同図は、タイヤのリム組み前の状態におけるビード部のタイヤ子午線方向の断面図を示している。
図2に示すように、カーカス層13は、ビードコア11を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。このとき、カーカス層13の巻き返し部132が本体部131に接触することにより、ビードコア11を囲む閉鎖領域Xが形成される。また、閉鎖領域Xがタイヤ全周に渡って連続することにより、ビードコア11を囲む環状の閉鎖空間が形成される。
閉鎖領域Xは、タイヤ子午線方向の断面視にて、カーカス層13のカーカスプライにより囲まれた領域として定義される。具体的には、カーカスプライのコートゴムの表面により囲まれた領域が、閉鎖領域Xの境界線となる。
また、図2の構成では、カーカス層13が単層のカーカスプライから成り、このカーカスプライの自己接触により、閉鎖領域Xが形成されている。一方、カーカス層13が積層された複数のカーカスプライから成る構成(図示省略)では、異なるカーカスプライの相互接触により、閉鎖領域Xが形成され得る。例えば、カーカス層13が第一および第二のカーカスプライを積層して成る二層構造を有し、第一のカーカスプライの巻き返し部が本体部に接触することなくビードコア11の径方向高さH1(図2参照)の途中で終端し、第二のカーカスプライの巻き返し部がビードコア11の径方向外側まで延在して第一のカーカスプライの本体部に接触する構成(図示省略)が想定される。
このとき、閉鎖領域Xにおけるゴム占有率が、15[%]以下の範囲にあることが好ましく、10[%]以下の範囲にあることがより好ましく、5[%]以下の範囲にあることがさらに好ましい。したがって、カーカス層13の本体部131および巻き返し部132に囲まれた閉鎖領域Xにおけるゴム占有率、すなわちビードコア11の周囲のゴムボリュームが、非常に低く設定される。これにより、ビードフィラーを省略したことによるタイヤの軽量化の目的が達成される。なお、ゴム占有率の下限は、特に限定がないが、0.1[%]以上であることが好ましい。
ゴム占有率は、タイヤ子午線方向の断面視にて、閉鎖領域Xの全体の断面積に対する閉鎖領域X内のゴム材料の断面積の比率[%]として算出される。
例えば、図2の構成では、カーカス層13の巻き返し部132が、閉鎖領域Xにビードフィラーを含まずに巻き返されて本体部131に接触している。また、カーカス層13のカーカスプライが、ビードコア11の外周面に沿って巻き上げられている。このため、ビードコア11の構成部材のみが、閉鎖領域Xに存在している。ビードコア11の構成部材は、ビードワイヤ111、インシュレーションゴム、ビードカバーおよびラッピング糸を含む。
なお、ビードフィラーは、カーカス層の本体部と巻き返し部との間に挟み込まれて配置される補強ゴムであり、ビード部の剛性を高めるために配置される。また、ビードフィラーは、一般に、三角形断面を有し、65以上99以下のゴム硬さを有する。
ゴム硬さは、JIS K6253に準拠して測定される。
また、上記したビードフィラーを省略した構成では、図2に示すように、カーカス層13の巻き返し部132が、カーカス層13の本体部131に面接触して係止されることが好ましい。また、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触部の径方向高さH2が、ビードコア11の径方向高さH1に対して、0.80≦H2/H1≦3.00の関係を有することが好ましく、1.20≦H2/H1≦2.50の関係を有することがより好ましい。これにより、カーカス層13の自己接触部の径方向高さH2が適正化される。すなわち、上記下限により、巻き返し部132が本体部131に安定的に接触して、タイヤ加硫成形工程におけるカーカスプライの変形が抑制されて、ビードコア11に作用する応力が低減される。これにより、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制されて、タイヤのリム嵌合性が向上する。また、上記上限により、巻き返し部132が過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制される。
ビードコアの径方向高さH1は、ビードコアのワイヤ配列構造におけるタイヤ径方向の最内層かつタイヤ幅方向の最外側のワイヤ断面のタイヤ径方向の内側端から、タイヤ径方向の最外層かつタイヤ幅方向の最外側のワイヤ断面のタイヤ径方向の外側端までのタイヤ径方向の最大高さとして測定される。
カーカス層の自己接触部の径方向高さH2は、カーカス層の本体部と巻き返し部との接触部のタイヤ径方向の最大長さとして測定される。
また、上記の構成では、図2に示すように、カーカス層13の巻き返し部132の端部(図中の符号省略)が、カーカス層13の本体部131に接触することが好ましい。かかる構成では、巻き返し部132の端部が本体部131から離間する構成(図示省略)と比較して、巻き返し部132の端部における応力集中が緩和される。これにより、巻き返し部132の端部を起点とする周辺ゴムのセパレーションが抑制される。
また、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触部の実長さLa2(図中の寸法記号省略)が、閉鎖領域Xの周長La1(図中の寸法記号省略)に対して、0.30≦La2/La1≦2.00の関係を有することが好ましく、0.37≦La2/La1≦1.80の関係を有することがより好ましい。これにより、カーカス層13の自己接触部の実長さLa2が適正化される。すなわち、上記下限により、カーカス層13のバネ特性が適正に確保されて、ドライ路面での操縦安定性が確保される。また、カーカス層13の自己接触部の実長さLa2が確保され、タイヤ加硫成形工程におけるカーカスプライの変形が抑制されて、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制される。また、上記上限により、巻き返し部132が過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制される。
閉鎖領域Xの周長La1は、タイヤ子午線方向の断面視にて、閉鎖領域Xの境界線を構成するカーカスプライの表面のペリフェリ長さとして測定される。
接触部の実長さLa2は、タイヤ子午線方向の断面視にて、カーカス層の本体部と巻き返し部との自己接触部におけるペリフェリ長さとして測定される。
[カーカスコードの熱収縮率]
上記したようなビードフィラーを省略した構成では、タイヤ加硫成形工程にてビードコアが崩れ易くなることが懸念される。ビードコアのコア崩れが発生すると、ビードコアの機能が低下して、タイヤのリム嵌合性が悪化する。そこで、この空気入りタイヤ1では、タイヤ加硫成形工程でのビードコアのコア崩れの発生を抑制するために、以下の構成を採用している。
図3および図4は、図1に記載したカーカス層のカーカスコードを示す説明図である。これらの図において、図3は、単体部品であるカーカスコード130の径方向断面図を示し、図4は、カーカスコード130の強伸度曲線を示している。
上記のように、カーカス層13は、単層あるいは複数層のカーカスプライから成り、カーカスプライが、所定の有機繊維材から成る複数のカーカスコード130(図3参照)をコートゴム(図示省略)で被覆して圧延加工して構成される。
このとき、カーカスコード130の熱収縮率が、0.1[%]以上1.5[%]以下の範囲にあることが好ましく、0.2[%]以上1.2[%]以下の範囲にあることがより好ましく、0.4[%]以上1.0[%]以下の範囲にあることがさらに好ましい。すなわち、カーカスコード130の熱収縮率が、一般的なナイロン繊維あるいはポリエステル繊維から成るカーカスコードと比較して、非常に低く設定される。
例えば、従来のカーカスコードのサンプルでは、繊度940[dtex]のナイロン66繊維束から成る2本のナイロン下撚糸を上撚りした場合の熱収縮率が、2.5[%]であり、繊度1400[dtex]のナイロン66繊維束から成る2本のナイロン下撚糸を上撚りしたした場合の熱収縮率が、2.4[%]であった。また、繊度1100[dtex]のポリエチレンテレフタラート繊維束から成る2本のポリエステル下撚糸を上撚りした場合の熱収縮率が、2.3[%]であり、繊度1670[dtex]のポリエチレンテレフタラート繊維束から成る2本のポリエステル下撚糸を上撚りしたした場合の熱収縮率が、2.2[%]であった。
カーカスコードの熱収縮率は、JIS L1017における乾熱収縮率の試験方法に準拠して測定される。
上記の構成では、カーカスコード130の熱収縮率が適正化される。すなわち、上記上限により、カーカスコード130の熱収縮率が低く設定されるので、タイヤ加硫成形工程にて、加硫熱によるカーカスプライの変形が抑制されて、ビードコア11に作用する応力が低減される。これにより、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制されて、タイヤのリム嵌合性が向上する。また、上記下限により、カーカスコード130のフィブリル化が抑制されて、カーカスプライの耐久性が確保される。
上記した熱収縮率を有するカーカスコード130として、例えば、アラミド繊維およびポリエステル繊維から成る複合糸(いわゆるハイブリットカーカスコード)を採用できる。具体的には、カーカスコード130が、アラミド繊維束から成る複数本のアラミド下撚糸と、ポリエステル繊維束から成る少なくとも1本のポリエステル下撚糸とを上撚りして構成された複合糸であることが好ましい。また、アラミド繊維としては、例えば、芳香族ポリアミド繊維を採用できる。ポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維を採用できる。
かかる構成では、例えば、ポリエステル繊維のみから成るカーカスコードと比較して、糸量を低減できるので、カーカスコード130のコード径を細くできる。これにより、カーカスコード130の熱収縮率を低減しつつ、カーカスプライのゲージを薄肉化できる。また、例えば、アラミド繊維のみから成るカーカスコードと比較して、カーカスコード130のフィブリル化が抑制されて、カーカスプライの耐久性が確保される。
なお、上記に限らず、例えば、カーカスコード130が、3本以上のアラミド下撚糸1301と1本あるいは2本のポリエステル下撚糸1302とを上撚りして構成されても良い(図示省略)。これらの下撚糸の本数の上限は、特に限定がないが、後述するコード径などとの関係で制約を受ける。
また、カーカスコード130がアラミド繊維およびポリエステル繊維から成る複合糸である場合には、アラミド下撚糸の繊度が、400[dtex]以上1200[dtex]以下の範囲にあり、ポリエステル下撚糸の繊度が、500[dtex]以上1200[dtex]以下の範囲にあり、且つ、複合糸の総繊度Dが、1000[dtex]以上2400[dtex]以下の範囲にあることが好ましい。これにより、カーカスコード130を構成する各下撚糸の総繊度および複合糸の総繊度Dが適正化される。すなわち、上記下限により、カーカスコードの強度が確保され、上記上限により、カーカスプライの軽量化が確保される。
下撚糸の総繊度および複合糸の総繊度Dは、各撚糸の繊度の合計として算出される。単体の下撚糸については、その繊度が総繊度となる。
また、複合糸の撚り係数Kが、2000以上2400以下の範囲にあることが好ましい。これにより、カーカスコードを構成する複合糸の撚り係数Kが適正化される。すなわち、上記下限により、カーカスコードの耐疲労性が確保される。また、上記上限により、カーカスプライの損傷が抑制される。
複合糸の撚り係数Kは、以下の数式(2)により算出される。同式において、Tは複合糸の上撚り数[回/10cm]であり、D1は第一の下撚糸の総繊度[dtex]であり、ρ1は第一の下撚糸の比重であり、D2は第二の下撚糸の総繊度[dtex]であり、ρ2は第二の下撚糸の比重である。
K=T・(D1/ρ1+D2/ρ2)1/2・・・(2)
また、カーカスコード130のコード径が、0.30[mm]以上0.55[mm]以下の範囲にあることが好ましく、0.33[mm]以上0.52[mm]以下の範囲にあることがより好ましく、0.40[mm]以上0.50[mm]以下の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、カーカスコード130の機能が確保されて、カーカスプライの薄肉化および耐圧性が両立する。
コード径は、コードが複合糸成る場合には、コードの径方向断面視における外接円の直径として測定される。
また、カーカスコード130の中間伸度が、1.0[%]以上10[%]以下の範囲にあることが好ましく、1.3[%]以上6[%]以下の範囲にあることがより好ましく、2.0[%]以上5[%]以下の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、カーカスコード130の機能が確保されて、カーカスプライの薄肉化および耐圧性が両立する。
中間伸度は、JIS L1017における一定荷重時伸び率の試験方法に準拠して測定される。
また、カーカスコード130のエンド数が、35[本/50mm]以上85[本/50mm]以下の範囲にあることが好ましく、45[本/50mm]以上80[本/50mm]以下の範囲にあることがより好ましく、60[本/50mm]以上77[本/50mm]以下の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、カーカスコード130の機能が確保されて、カーカスプライの薄肉化および耐圧性が両立する。
例えば、図3および図4において、図3に示す複合糸Y(カーカスコード130)は、繊度440[dtex]の芳香族ポリアミド繊維束から成る2本のアラミド下撚糸1301、1301と、繊度560[dtex]のポリエチレンテレフタラート繊維束から成る1本のポリエステル下撚糸1302とを、これら下撚糸1301、1302の撚り方向に対して逆方向に上撚りして構成される。また、複合糸Yの総繊度Dが1440[dtex]であり、撚り係数Kが2300である。また、カーカスコード130のコード径が0.46[mm]であり、中間伸度が2.0[%]である。また、図4において、実施例A、Bのカーカスコード130は、上記した複合糸Yから構成される。また、実施例Aでは、中間伸度2.9[%]かつエンド数70[本/50mm]であり、実施例Bでは、中間伸度2.0[%]かつエンド数77[本/50mm]でありである。
一方で、図4の従来例のカーカスコードは、繊度1670[dtex]のポリエチレンテレフタラート繊維束から成る2本のポリエステル下撚糸を上撚りして構成される。また、カーカスコードのコード径が0.69[mm]であり、中間伸度が5.0[%]である。
図4に示すように、実施例A、Bのカーカスコードは、従来例と比較して、伸度が低く強度が高いことが分かる。
なお、カーカス層13のコードコーティングゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)から選ばれた1種類または複数種類のゴムを使用できる。また、これらのゴムを窒素、酸素、フッ素、塩素、ケイ素、リンまたは硫黄などの元素を含む官能基、例えば、アミン、アミド、ヒドロキシル、エステル、ケトン、シロキシもしくはアルキルシリルなどにより末端変性したもの、または、エポキシにより末端変性したものを使用できる。これらゴムに配合するカーボンブラックとしては、例えば、ヨウ素吸着量が20~100[g/kg]、好ましくは20~50[g/kg]であり、DBP吸収量が50~135[cm3/100g]、好ましくは50~100[cm3/100g]であり、かつCTAB吸着比表面積が30~90[m2/g]、好ましくは30~45[m2/g]であるものを使用できる。また、使用する硫黄の量は、例えば、ゴム100質量部に対して1.5~4.0質量部であり、好ましくは2.0~3.0質量部である。
[外側補強ゴム]
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、上記したサイドウォールゴム16およびリムクッションゴム17に加えて、外側補強ゴム19を備える。
サイドウォールゴム16は、上記のように、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されてタイヤのサイドウォール部を構成する。また、サイドウォールゴム16のゴム硬さが、40以上70以下の範囲にある。また、サイドウォールゴム16の破断伸びが、400[%]以上650[%]以下の範囲にある。
破断伸びは、JIS K6251規定に準拠して測定される。
リムクッションゴム17は、上記のように、ビードコア11およびカーカス層13の巻き返し部132のタイヤ径方向内側に配置されてビード部のリム嵌合面を構成する。また、リムクッションゴム17のゴム硬さが、50以上80以下の範囲にある。また、リムクッションゴム17の破断伸びが、150[%]以上450[%]以下の範囲にある。
外側補強ゴム19は、カーカス層13の巻き返し部132とリムクッションゴム17との間に挟み込まれて配置される(図2参照)。かかる構成では、特に、上記したビードフィラーを省略した構成にて、ビード部のバネ特性が外側補強ゴム19により補強されて、ドライ路面での操縦安定性が確保される。
また、外側補強ゴム19のゴム硬さが、65以上105以下の範囲にあることが好ましく、70以上100以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、外側補強ゴム19の上記作用が適正に確保される。
また、外側補強ゴム19のゴム硬さが、サイドウォールゴム16およびリムクッションゴム17のゴム硬さよりも高い。具体的には、サイドウォールゴム16のゴム硬さと外側補強ゴム19のゴム硬さとの差ΔHs_SWが7以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。また、リムクッションゴム17のゴム硬さと外側補強ゴム19のゴム硬さとの差ΔHs_RCが3以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。これにより、外側補強ゴム19によるビード部のバネ特性の補強作用が適正に発揮される。なお、上記ゴム硬さの差ΔHs_SWの下限は、上記した外側補強ゴム19のゴム硬さの下限により制約を受ける。
また、外側補強ゴム19の破断伸びが、50[%]以上400[%]以下の範囲にあることが好ましく、70[%]以上350[%]以下の範囲にあることがより好ましい。
例えば、図2の構成では、リムクッションゴム17が、ビード・トゥBtからビード・ベースBbの全域に渡って延在してリム10のビードシート101に対するリム嵌合面を形成している。また、リムクッションゴム17が、ビード・ベースBbからカーカス層13の巻き返し部132に沿ってタイヤ径方向外側に延在して、リム10のフランジ102に対する嵌合面を形成している。また、リムクッションゴム17のタイヤ径方向外側の端部が、カーカス層13とサイドウォールゴム16との間に挿入され、また、カーカス層13の巻き返し部132の端部およびリム10のフランジ102よりもタイヤ径方向外側まで延在している。また、ビード部が、チェーファー(図示省略)を備えても良い。
なお、リムクッションゴム17は、少なくとも、ビード・ヒールBhからビードコア11のタイヤ径方向の最内層の中央部(後述する中点Cm)までの領域に延在することが好ましい。これにより、ビード部のリム嵌合部の耐久性が適正に確保される。
また、図2の構成では、外側補強ゴム19が、タイヤ径方向に長尺な形状を有し、カーカス層13の巻き返し部132とリムクッションゴム17との間に挟み込まれている。また、外側補強ゴム19のタイヤ径方向内側の端部が、ビードコア11に対してタイヤ径方向にオーバーラップしている。また、外側補強ゴム19が、カーカス層13の巻き返し部132の端部よりもタイヤ径方向外側まで延在して、カーカス層13の本体部131とサイドウォールゴム16との間に挟み込まれている。また、外側補強ゴム19が、カーカス層13の巻き返し部132の端部をタイヤ幅方向外側から覆っている。また、外側補強ゴム19が、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触部の全域に渡って、カーカス層13の巻き返し部132に隣接している。これにより、ビード部のバネ特性が外側補強ゴム19により適正に補強されて、ドライ路面での操縦安定性が向上し、また、ビード部の耐久性が向上する。また、外側補強ゴム19のゴム硬さがサイドウォールゴム16およびリムクッションゴム17のゴム硬さよりも高いので、カーカス層13の巻き返し部132の端部付近におけるゴム硬さの分布が、カーカス層13の端部からタイヤサイド部の表面に向かって減少する。これにより、カーカス層13の端部付近に発生する応力が緩和されて、周辺ゴムのセパレーションが抑制される。
また、タイヤ内径RDの測定点から外側補強ゴム19のタイヤ径方向外側の端部までの径方向高さH3と、タイヤ断面高さSH(図1参照)とが、0.10≦H3/SH≦0.60の関係を有することが好ましく、0.15≦H3/SH≦0.50の関係を有することがより好ましい。これにより、外側補強ゴム19の径方向高さH3が適正化される。すなわち、上記下限により、ビード部のバネ特性が外側補強ゴム19により適正に補強されて、ドライ路面での操縦安定性が向上し、また、ビード部の耐久性が向上する。また、上記上限により、外側補強ゴム19が過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制される。
タイヤ内径RDは、規定リムのリム径に等しい。
径方向高さH3は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。具体的には、外側補強ゴム19のタイヤ径方向外側の端部の直径と、タイヤ内径RDとの差として算出される。
タイヤ断面高さSHは、タイヤ外径とリム径との差の1/2の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
また、カーカス層13の巻き返し部132の端部から外側補強ゴム19のタイヤ径方向外側の端部までの径方向高さH4が、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触部の径方向高さH2に対して、0.10≦H4/H2の関係を有することが好ましく、0.30≦H4/H2の関係を有することがより好ましい。これにより、ドライ路面での操縦安定性が向上し、また、ビード部の耐久性が向上する。なお、比H4/H2の上限は、上記した比H3/SHの上限により制約を受ける。
また、外側補強ゴム19とビードコア11とのタイヤ径方向のオーバーラップ量H5が、ビードコア11の径方向高さH1に対して、0.05≦H5/H1≦1.00の関係を有することが好ましく、0.10≦H5/H1≦1.00の関係を有することがより好ましい。また、オーバーラップ量H5が、5.0[mm]≦H5の範囲にあることが好ましい。これにより、外側補強ゴム19とビードコア11とのオーバーラップ量H5が適正化される。特に、上記下限により、オーバーラップ量H5が確保されて、外側補強ゴム19のタイヤ径方向の内側端部におけるゴムのセパレーションが抑制される。しかし、これに限らず、外側補強ゴム19が、ビードコア11よりもタイヤ径方向外側に配置されても良い(図示省略)。
オーバーラップ量H5は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
また、カーカス層13の巻き返し部132の端部からタイヤサイド部の外表面に引いた垂線の長さT1と、前記垂線上における外側補強ゴム19の厚さT2とが、0.10≦T2/T1≦0.90の関係を有することが好ましく、0.20≦T2/T1≦0.80の関係を有することがより好ましい。これにより、外側補強ゴム19の厚さT2が適正化される。すなわち、上記下限により、ビード部のバネ特性が外側補強ゴム19により適正に補強されて、ドライ路面での操縦安定性が向上し、また、ビード部の耐久性が向上する。また、上記上限により、外側補強ゴム19が過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制される。
また、上記のようなビードフィラーに代えて外側補強ゴム19を備える構成では、下記の数式(1)により定義される数値Kが、0.17≦Kであることが好ましく、0.20≦Kであることがより好ましい。これにより、外側補強ゴム19の機能が適正に確保される。数式(1)において、Wはタイヤ呼び幅[mm]であり、Iはタイヤ呼び内径[inch]であり、Bはビードコアにおけるビードワイヤの総断面積[mm2]である。
なお、図2の構成では、上記のように、外側補強ゴム19がビード部に配置されている。しかし、これに限らず、上記した数値Kが0.40未満である場合には、外側補強ゴム19が省略されても良い。例えば、リムクッションゴム17が、厚肉構造を有して、図2における外側補強ゴム19の配置領域を埋めて配置されても良い(図示省略)。
[リム嵌合部の変化率]
上記したようなビードフィラーを省略した構成では、ビード部の剛性が低下して、ビード部のリム嵌合圧が低下する傾向にある。そこで、図2の構成では、タイヤのリム嵌合性を確保するために、ビードコア11が以下の構成を有している。
図5は、図2に記載したビード部のリム嵌合部を示す拡大図である。図6は、図5に記載したビードコアのワイヤ配列構造を示す説明図である。図7は、タイヤのリム組み状態におけるビード部のリム嵌合部を示す説明図である。これらの図において、図5は、リム組み前の状態におけるリム嵌合部を示し、図7は、リム組み後の状態におけるリム嵌合部を示している。また、図6は、部品単体時における未加硫のビードコア11の径方向の断面図を示している。
図2において、ビード部のリム嵌合面は、ビード・ベースBbと、ビード・トゥBtと、ビード・ヒールBhとを含み、タイヤ周方向に一様な輪郭形状を有する。ビード・ベースBbは、ビード部のタイヤ径方向内側に形成されたフラットな領域であり、リムのビードシート101に対する接触面を構成する。ビード・トゥBtは、タイヤ子午線方向の断面視にてL字形状ないしはV字形状を有するビード部の先端であり、リム嵌合面のタイヤ幅方向の最も内側に位置する。ビード・ヒールBhは、タイヤサイド部の壁面とビード・ベースBbとを接続する屈曲部である。
タイヤのリム組み前の状態(図2および図5参照)は、タイヤ回転軸を水平にしてタイヤ単体を直立させた状態で、左右のビード部の位置が規定リムのリム幅およびリム径の測定点に一致するように固定したときの状態として定義される。かかるタイヤ形状は、タイヤ加硫成形金型内におけるタイヤ形状、すなわちインフレート前の自然なタイヤ形状に最も近い。
タイヤのリム組み後の状態(図7参照)は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの状態として定義される。タイヤのリム組み状態では、ビード部のリム嵌合面がホイールのリム10に嵌合して、タイヤが保持される。このとき、リム嵌合面のビード・ベースBbがリム10のビードシート101に押圧されて面接触することにより、ビード部とリム10との嵌合部が封止されて、タイヤ内部の気密性が確保される。また、ビード・ヒールBhがビードシート101とフランジ102との接続部に位置し、リム嵌合面のビード・ヒールBhから外側の領域がリム10のフランジ102に当接して、ビード部がタイヤ幅方向外側から保持される。
図6に示すように、ビードコア11は、タイヤ子午線方向の断面視にて、ビードワイヤ111のワイヤ断面を配列して成る所定のワイヤ配列構造を有する。このワイヤ配列構造については、後述する。
ここで、タイヤのリム組み前の状態(図5参照)におけるタイヤ子午線方向の断面視にて、ビードコア11のワイヤ配列構造におけるタイヤ径方向の最内層かつタイヤ幅方向の最内側および最外側のワイヤ断面に対してリム嵌合面側から接する接線L1を定義する。また、各ワイヤ断面に対する接線L1の接点C1およびC2と、これらの接点C1、C2の中点Cmとをそれぞれ定義する。また、接点C1、C2および中点Cmからリム嵌合面までのタイヤ径方向のゲージG1、G2およびGmを定義する。具体的には、タイヤ子午線方向の断面視にて、接点C1、C2および中点Cmを通りタイヤ軸方向に垂直な直線とビード・ベースBbとの交点P1、P2およびPmをそれぞれ作図し、接点C1、C2および中点Cmと交点P1、P2およびPmとの距離が、ゲージG1、G2およびGmとして測定される。
同様に、タイヤのリム組み後の状態(図7参照)におけるリム嵌合部のゲージG1’、G2’およびGm’を定義する。
このとき、リム組み前後の状態におけるリム嵌合部のゲージG1、G2、Gmの変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが、それぞれ10[%]以上60[%]以下の範囲にあることが好ましく、15[%]以上50[%]以下の範囲にあることがより好ましく、20[%]以上45[%]以下の範囲にあることがさらに好ましく、25[%]以上40[%]以下の範囲にあることが最も好ましい。したがって、ゲージG1、G2、Gmの変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが、ビードフィラーを有する一般的なタイヤ構造と比較して、大きく設定される。これにより、リム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが適正化される。すなわち、上記下限により、リム嵌合圧が確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、リム嵌合圧が過大となることに起因するタイヤのリム組み作業性の悪化が抑制される。
変化率ΔGiは、所定の測定点におけるリム組み前後のゲージGi、ゲージGi’を用いて、ΔGi=(Gi-Gi’)/Gi×100として定義される。例えば、変化率ΔG1が、リム組み前のゲージG1(図5参照)およびリム組み後のゲージG1’(図7参照)を用いて、ΔG1=(G1-G1’)/G1×100として算出される。
上記したリム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmは、例えば、後述するクッションゴム層20の構成(図8参照)やビード・ベースBbのテーパ角の構成(図9参照)により実現される。
また、リム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが、|ΔGm-ΔG2|<|ΔG1-ΔGm|の条件を満たすことが好ましい。したがって、ビード・トゥBt側の変化率差|ΔG1-ΔGm|が、ビード・ヒールBh側の変化率差|ΔGm-ΔG2|よりも大きく設定される。具体的には、変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが、20[%]≦|(ΔG1-ΔGm)/(ΔGm-ΔG2)|≦450[%]の条件を満たすことが好ましく、30[%]≦|(ΔG1-ΔGm)/(ΔGm-ΔG2)|≦300[%]の条件を満たすことがより好ましい。これにより、リム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmの関係が適正化される。すなわち、上記下限により、タイヤのリム嵌合性が向上する。また、上記上限により、タイヤのリム組み作業性が向上する。
また、リム嵌合部のゲージG1、G2およびGmの変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが、ΔG2<ΔGm<ΔG1の関係を有することが好ましい。すなわち、変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmがビード・トゥBt側に向かって増加する。これにより、タイヤのリム嵌合性が向上する。
また、図3の構成では、タイヤのリム組み前の状態におけるリム嵌合部のゲージG1、G2およびGmが、G2<Gm<G1の関係を有している。すなわち、リム嵌合部のゲージG1、G2およびGmがビード・トゥBt側に向かって増加している。これにより、変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmの相互関係が適正化されている。また、乗用車用タイヤでは、ゲージG1が、G1≦8.0[mm]の範囲にあることが好ましく、G1≦6.0[mm]の範囲にあることがより好ましい。また、ゲージG2が、1.0[mm]≦G2の範囲にあることが好ましく、2.0[mm]≦G2の範囲にあることがより好ましい。これにより、ビードコア11の径方向内側におけるリム嵌合部のゴムボリュームが適正化される。
また、ビードコア11のワイヤ配列構造の最内層の幅Wc2[mm](図4参照)と、中点Cmにおける変化率ΔGm[%]と、タイヤ内径RD[inch](図2参照)とが、1.0[%・mm/inch]≦Wc2×ΔGm/RD≦50[%・mm/inch]の関係を有することが好ましく、2.0[%・mm/inch]≦Wc2×ΔGm/RD≦40[%・mm/inch]の関係を有することがより好ましく、5.0[%・mm/inch]≦Wc2×ΔGm/RD≦30[%・mm/inch]の関係を有することがより好ましい。これにより、ビードコア11の最内層の幅Wc2と変化率ΔGmとの関係が適正化される。すなわち、上記下限により、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、タイヤのリム組み作業性が向上する。
ワイヤ配列構造の最内層の幅Wc2は、図6に示すように、タイヤ幅方向の最内側および最外側のワイヤ断面を含む最大幅として測定される。
また、ワイヤ配列構造の最内層の幅Wc2が、3.0[mm]≦Wc2≦10.0[mm]の範囲にあることが好ましく、4.5[mm]≦Wc2≦9.6[mm]の範囲にあることがより好ましい。
[ビードコアのワイヤ配列構造]
図6に示すように、ビードコア11は、ビードワイヤ111を環状かつ多重に巻き廻して成り、タイヤ子午線方向の断面視にて、所定のワイヤ配列構造を有する。ワイヤ配列構造は、ビードワイヤ111のワイヤ断面の配列により定義される。また、ワイヤ配列構造がタイヤ径方向に積層された複数の層から成り、これらの層がタイヤ幅方向に一列に配置された複数のワイヤ断面から成る。また、ワイヤ配列構造の最内層が、ビード部のリム嵌合面に対して略平行となり、また、タイヤのリム嵌合時にてリム10のビードシート101に対向する(図5参照)。
ビードコア11の製造工程では、コア成形治具(図示省略)が用いられ、1本あるいは複数本のビードワイヤ111が所定のワイヤ配列構造でコア成形治具に巻き付けられて、未加硫のビードコア11が成形される。そして、成形されたビードコア11がグリーンタイヤの加硫成形工程の前にプレ加硫される。なお、これに限らず、ビードコア11のプレ加硫が省略され、未加硫のビードコア11がグリーンタイヤに組み込まれて、グリーンタイヤの加硫成形工程が行われても良い。
また、ビードワイヤ111は、素線と、素線を覆うインシュレーションゴムとから成る(図示省略)。また、素線が、スチールから成る。また、インシュレーションゴムが、70[M]以上のムーニー粘度を有するゴム組成物から成ることが好ましい。ムーニー粘度は、JIS K6300-1:2013に準拠して算出される。
ここで、図2の構成では、上記のように、カーカス層13の巻き返し部132が、カーカス層13の本体部131に接触して、ビードコア11を囲む閉鎖領域Xを形成する。また、閉鎖領域Xにおけるゴム占有率が小さく設定されて、ビード部の軽量化が図られている。このとき、ビード部の耐久性を高めるために、閉鎖領域Xにおける空洞部の発生を抑制することが好ましい。
そこで、図6に示すように、ビードコア11のワイヤ配列構造が、タイヤ径方向外側に向かって凸となる楔形状を有する。具体的には、ワイヤ配列構造におけるワイヤ断面の配列数が最大である層(図6では、最内層から2番目の層)を最大配列層として定義する。このとき、最大配列層よりもタイヤ径方向外側にあるワイヤ断面の層数(図6では、3層)が、最大配列層よりもタイヤ径方向内側にあるワイヤ断面の層数(図6では、1層)よりも多い。また、最大配列層よりもタイヤ径方向外側の各層におけるワイヤ断面の配列数が、最大配列層からタイヤ径方向外側に向かって単調減少する。また、ワイヤ断面の層数が4以上6以下の範囲にあることが好ましい。また、ワイヤ配列構造の最大配列層におけるワイヤ断面の配列数が4または5であり、タイヤ径方向の最外層のワイヤ断面の配列数が1または2であることが好ましい。
また、ワイヤ断面が、最大配列層からタイヤ径方向外側の領域にて、最密充填構造で配列されることが好ましい。最密充填構造とは、タイヤ子午線方向の断面視にて、隣り合う3つのワイヤ断面の中心が略正三角形となるように配列された状態をいう。かかる最密充填構造では、ワイヤ断面の列が縦横に直交する格子配列構造と比較して、ビードコア11のワイヤ断面の配置密度が高まり、ビードコア11の耐コア崩れ性が向上する。なお、上記最密状態において、隣り合うワイヤ断面のすべての組が相互に接触する必要はなく、一部の組が微少な隙間を空けて配置されても良い(図示省略)。
かかる構成では、図5に示すように、カーカス層13の本体部131および巻き返し部132が、ビードコア11のタイヤ幅方向の左右の側面に当接しつつワイヤ配列構造の楔形状に沿ってタイヤ径方向外側に延在し、Y字状に合流して相互に接触する。これにより、カーカス層13の本体部131および巻き返し部132の合流部とビードコア11のタイヤ径方向外側の頂部(いわゆるビードトップ)との間の隙間が小さくなり、ビード部の耐久性が向上する。特に、上記したビードフィラーを省略した構造にて、閉鎖領域Xのゴム占有率を低減できる点で好ましい。また、カーカス層13の巻き返し部132が本体部131に対して鈍角に屈曲して接触するので、巻き返し部132の屈曲量が小さい。これにより、タイヤ加硫成形工程におけるカーカスプライの変形が抑制され、ビードコア11に作用する応力が低減されて、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制される。
また、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向の最内層におけるワイヤ断面の配列数が、3または4であり、また、最大配列層のワイヤ断面の配列数に対して同一あるいは少ないことが好ましい。
また、図6に示すように、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向内側かつタイヤ幅方向内側および外側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ1、θ2をそれぞれ定義する。このとき、配列角度θ1、θ2が、80[deg]≦θ1および80[deg]≦θ2の範囲にある。すなわち、ワイヤ断面の配列角度θ1、θ2が略直角あるいは鈍角となる。また、図6に示すように、ワイヤ断面の配列角度θ1、θ2が100[deg]≦θ1≦150[deg]および100[deg]≦θ2≦150[deg]の範囲にあることが好ましい。かかる構成では、ワイヤ断面の配列角度θ2が略直角以上となり、タイヤ加硫時におけるワイヤ配列構造の乱れが抑制されて、ビードコア11のコア崩れが効果的に抑制される。また、ワイヤ断面の配列角度θ1、θ2が鈍角である場合には、カーカスプライをビードコア11のタイヤ径方向内側の角部に沿って巻き返し得るので、閉鎖領域Xにおけるゴム占有率を低減して、ビード部をより軽量化できる。
配列角度θ1、θ2は、ワイヤ配列構造の角部を構成する3つのワイヤ断面の中心を結ぶ線のなす角として測定される。
また、図6において、ビードコア11の最大幅Wc1および最大高さHc1と、ビードコア11におけるビードワイヤ111の総断面積Sとが、1.20≦Wc1×Hc1/S≦5.00の関係を有することが好ましく、1.50≦Wc1×Hc1/S≦4.50の関係を有することがより好ましく、1.80≦Wc1×Hc1/S≦4.00の関係を有することがより好ましい。これにより、ビードコア11のワイヤ配列構造が適正化される。すなわち、上記下限により、ワイヤ断面の配列数が確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、ビードコア11が軽量化される。
なお、ビードワイヤの総断面積Sは、インシュレーションゴムの断面積を含まない。
また、ビードワイヤ111の総断面積Sが、5[mm2]≦S≦35[mm2]の範囲にあることが好ましく、6[mm2]≦S≦32[mm2]の範囲にあることがより好ましく、7[mm2]≦S≦28[mm2]の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、ビードワイヤ111の総断面積Sが適正化される。すなわち、上記下限により、ビードワイヤ111の総断面積Sが確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、ビードコア11が軽量化される。
また、ビードワイヤ111の外径φ(図6参照)が、0.8[mm]≦φ≦1.5[mm]の範囲にあることが好ましく、0.9[mm]≦φ≦1.4[mm]の範囲にあることがより好ましく、1.0[mm]≦φ≦1.3[mm]の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、ビードワイヤ111の外径φが適正化される。すなわち、上記下限により、ビードワイヤ111の外径φが確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、ビードコア11が軽量化される。
また、図6において、ワイヤ配列構造の最内層の接線L1からビードコア11の最大幅位置までの高さHc2と、ビードコア11の最大高さHc1とが、1.10≦(Hc1-Hc2)/Hc2≦2.80の関係を有することが好ましく、1.30≦(Hc1-Hc2)/Hc2≦2.50の関係を有することが好ましく、1.50≦(Hc1-Hc2)/Hc2≦2.30の関係を有することがより好ましい。これにより、ビードコア11のワイヤ配列構造が適正化される。
ビードコアの最大高さHc1は、接線L1を基準としたビードコアの最大高さとして測定される。
ビードコアの最大幅位置の高さHc2は、接線L1と、最大配列層を構成するワイヤ断面の中心を結ぶ仮想線との距離として測定される。また、ワイヤ配列構造が複数の最大配列層を備える構成では、最もタイヤ径方向外側にある最大配列層が用いられて、最大幅位置の高さHc2が測定される。
例えば、図6の構成では、ワイヤ断面の層数が5であり、ワイヤ断面の配列数がタイヤ径方向の最内層から順に3-4-3-2-1に設定されている。したがって、最大配列層におけるワイヤ断面の配列数が4である。また、最大配列層よりもタイヤ径方向外側にあるワイヤ断面の層数が3であり、最大配列層よりもタイヤ径方向内側にあるワイヤ断面の層数が1である。したがって、最大配列層が、タイヤ径方向に非対称であり、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向の中心位置よりもタイヤ径方向内側に偏って配置されている。また、
ワイヤ配列構造が、最大配列層からタイヤ径方向外側で長尺構造を有している。また、各層におけるワイヤ断面の配列数が、最大配列層からタイヤ径方向外側に向かって1つずつ減少する。また、すべてのワイヤ断面が、最密充填構造で配列されている。このため、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向の左右の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ1、θ2が、いずれも約135[deg](具体的には130[deg]~140[deg]の範囲)である。また、ワイヤ断面の最大配列層が、タイヤ径方向の最内層ではない。また、各層におけるワイヤ断面の配列数が最内層から最大配列層に向かって1つずつ増加している。これにより、ワイヤ配列構造が最適化されている。
また、図5において、ビードコア11のタイヤ径方向外側の端部からカーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触部までのタイヤ径方向の距離Hgが、ビードワイヤ111の外径φに対して、Hg/φ≦7.0の関係を有することが好ましく、Hg/φ≦3.0の関係を有することがより好ましい。これにより、ビードコア11の周辺の剛性が向上する。なお、比Hg/φの下限は、Hg=0の場合で、0≦Hg/φである。
[リム嵌合部のゲージ]
図8は、図5に記載したリム嵌合部を示す説明図である。同図は、リム組み前の状態におけるリム嵌合部を示している。同図において、図5に記載した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図8において、上記のように、ワイヤ配列構造の最内層の接線L1とタイヤ幅方向の最外側のワイヤ断面との接点C2からリム嵌合面までのタイヤ径方向のゲージG2を定義する。このとき、ゲージG2とビードワイヤ111の外径φ(図6参照)とが、1.3≦G2/φ≦9.5の関係を有することが好ましく、1.8≦G2/φ≦5.5の関係を有することがより好ましい。これにより、リム嵌合部のゲージG2が適正化される。すなわち、上記下限により、リム嵌合部のゲージG2が確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、リム嵌合部のゲージG2が過大となることに起因するタイヤのリム組み作業性の悪化が抑制される。
また、図8において、ビードコア11の接点C2を通りタイヤ幅方向に平行な直線とリム嵌合部のタイヤ幅方向外側の壁面との交点Qを定義する。また、ビードコア11の接点C2からリム嵌合面の点Qまでのタイヤ幅方向のゲージWhを定義する。このとき、ゲージWhとビードワイヤ111の外径φ(図6参照)とが、2.0≦Wh/φ≦15.0の関係を有することが好ましく、2.5≦Wh/φ≦10.0の関係を有することがより好ましい。これにより、リム嵌合部のゲージWhが適正化される。すなわち、上記下限により、リム嵌合部のゲージWhが確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保され、また、リム嵌合部の耐久性が確保される。また、上記上限により、リム嵌合部のゲージWhが過大となることに起因するタイヤのリム組み作業性の悪化が抑制される。
また、図8に示すように、クッションゴム層20が、ビードコア11の最内層とリムクッションゴム17との間に挿入される。クッションゴム層20は、リムクッションゴム17よりも低いゴム硬さを有する部材であり、例えば、インナーライナ18、インナーライナ18とカーカス層13とを接着するタイゴム(図示省略)などを含み、カーカスプライを含まない。また、クッションゴム層20は、インナーライナ18およびタイゴムに対して一体構造を有しても良いし、分離した構造を有しても良い(図示省略)。また、クッションゴム層20は、上記したインナーライナ18およびタイゴムと同一のゴム材料から構成されても良いし、異なるゴム材料から構成されても良い(図示省略)。また、クッションゴム層20が、ビードコア11の接点C1から中点Cmまでの範囲、好ましくは接点C1から接点C2までの範囲をタイヤ幅方向に横断することが好ましい。かかる構成では、クッションゴム層20がビードコア11の最内層とビード部のリム嵌合面との間に介在することにより、リム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが高まり、タイヤのリム嵌合性が向上する。また、リム10に対するリム嵌合面の接触圧が均一化される。
また、クッションゴム層20のゴム硬さが、リムクッションゴム17のゴム硬さよりも5以上低いことが好ましく、8以上低いことがより好ましい。これにより、リム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmを高める作用が適正に得られる。
例えば、図8の構成では、タイヤ子午線方向の断面視にて、クッションゴム層20が、タイヤ内腔面からカーカス層13の巻き返し部132に沿ってタイヤ幅方向外側に延在して、ビードコア11とリムクッションゴム17との間に介在している。また、クッションゴム層20が、ビードコア11の最内層の中点Cmを越えて最外側の接点C2まで延在している。また、クッションゴム層20のタイヤ幅方向外側の端部が、ビードコア11の接線L1よりもタイヤ径方向内側で終端している。したがって、クッションゴム層20の端部が、ビードコア11のタイヤ幅方向外側の側面まで延在していない。これにより、ビードコア11とリム嵌合面(特にビード・ベースBb)との間の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmが効果的に高められ、一方で、ビードコア11とリム10のフランジ102(図2参照)との間の剛性が適正に確保されている。しかし、これに限らず、クッションゴム層20のタイヤ幅方向外側の端部が、ビードコア11の接線L1よりもタイヤ径方向外側まで延在しても良い。
また、図8において、リム嵌合部のゲージG1、G2の測定点C1、P1;C2、P2間におけるクッションゴム層20の厚さTc1、Tc2が、Tc2<Tc1の関係を有することが好ましい。すなわち、ビード・トゥBt側におけるクッションゴム層20の厚さTc1が、ビード・ヒールBh側におけるクッションゴム層20の厚さTc2よりも厚いことが好ましい。これにより、ビード・トゥBt側におけるリム嵌合部の変化率ΔG1が、ビード・ヒールBh側におけるリム嵌合部の変化率ΔG2よりも大きく(ΔG2<ΔG1)なり、タイヤのリム嵌合性が向上する。
また、上記のように、リム嵌合部のゲージG1、G2、Gmの測定点C1、P1;C2、P2;Cm、Pm間におけるクッションゴム層20の厚さの関係を調整することにより、リム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmの関係を調整できる。
また、接点C1から接点C2までのタイヤ幅方向の領域におけるクッションゴム層20の厚さの平均値が、0.3[mm]以上3.0[mm]以下の範囲にあることが好ましい。これにより、クッションゴム層20の平均厚さが適正化される。すなわち、上記下限により、リム嵌合部の変化率ΔG1、ΔG2、ΔGmを高めるクッションゴム層20の作用が適正に得られる。また、上記上限により、クッションゴム層20が過大となることに起因するリム嵌合部の剛性の低下が抑制される。
また、図8において、ビード・トゥBt側におけるリム嵌合部のゲージG1とクッションゴム層20の厚さTc1とが、0.03≦Tc1/G1≦0.95の関係を有することが好ましく、0.05≦Tc1/G1≦0.85の関係を有することがより好ましい。これにより、クッションゴム層20の平均厚さが適正化される。すなわち、上記下限により、クッションゴム層20の作用が適正に確保されて、リム嵌合部の変化率ΔG1が増加する。また、上記上限により、リムクッションゴム17のゲージG1が確保されて、タイヤのリム嵌合性が適正に確保される。
また、タイヤ内腔部側にて、クッションゴム層20が、ビードコア11の高さH1(図2参照)のタイヤ径方向外側の測定点からタイヤ径方向外側に向かって、好ましくは5[mm]以上延在することが好ましい。
[リム嵌合面の形状]
図9は、図5に記載したリム嵌合部を示す説明図である。同図は、リム組み前の状態におけるリム嵌合部を示している。同図において、図5に記載した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示すように、リム組み前の状態におけるタイヤ子午線方向の断面視にて、交点P2におけるリム嵌合面の接線を、ビード・ベースBbの延長線L2として定義する。
このとき、ビードコア11の接線L1に対するビード・ベースBbの延長線L2の傾斜角αが、3[deg]≦α≦15[deg]の範囲にあることが好ましく、6[deg]≦α≦12[deg]の範囲にあることがより好ましい。
また、ビード・ベースBbの延長線L2の傾斜角α[deg]と、リム嵌合部の変化率ΔGm[%]と、タイヤ呼び幅WA[無次元]とが、0[%・deg]≦ΔGm×α/WA≦7[%・deg]の関係を有することが好ましく、0.5[%・deg]≦ΔGm×α/WA≦5.0[%・deg]の関係を有することがより好ましい。これにより、タイヤのリム嵌合性を示す比ΔGm×α/WAが適正化される。すなわち、一般に、タイヤ呼び幅WAが大きいほど、タイヤのリム嵌合性が低下する傾向にある。また、ビード・ベースBbの傾斜角αおよびリム嵌合部の変化率ΔGmが大きいほど、リムに対する嵌合圧が増加して、タイヤのリム嵌合性が向上する。したがって、上記下限により、比ΔGm×α/WAが大きくなり、タイヤのリム嵌合性が向上する。また、上記上限により、リムに対する嵌合圧が過大となることに起因するタイヤのリム組み作業性の悪化が抑制される。なお、傾斜角α=0[deg]のときに、ΔGm×α/WA=0となる。
また、図9に示すように、タイヤ子午線方向の断面視にて、ビード・ベースBbが相互に異なる傾斜角をもつ2種類の直線部を接続して成る形状(いわゆる二段テーパ形状)を有する場合に、リム嵌合面のビード・ベースBbのビード・ヒールBh側の直線部の延長線L2とビード・トゥBt側の直線部の延長線L3とを定義する。
このとき、ビードコア11の接線L1に対するビード・ベースBbの延長線L2およびL3の傾斜角α、βが、0≦β/α≦5.0の関係を有することが好ましく、1.8≦β/α≦4.0の関係を有することがより好ましい。これにより、ビード・ベースBbの二段テーパ形状が適正化される。すなわち、上記下限により、二段テーパ形状によるタイヤのリム嵌合性の向上作用が適正に得られる。また、上記上限により、ビード・ベースBbにおける加硫故障の発生が抑制される。
また、図9において、ビード・ベースBbの上記2種類の直線部の交点Rを定義する。
このとき、ビード・トゥBtから交点Rまでのタイヤ幅方向の距離Lrと、ビード・トゥBtから中点Cmまでのタイヤ幅方向の距離Lmとが、0.50≦Lr/Lm≦4.0の関係を有することが好ましく、0.70≦Lr/Lm≦3.3の関係を有することがより好ましい。これにより、交点Rの位置が適正化されて、二段テーパ形状によるタイヤのリム嵌合性の向上作用が適正に得られる。
例えば、図9の構成では、また、ビードコア11のワイヤ配列構造のタイヤ径方向内側かつタイヤ幅方向内側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ1(図6参照)が、130[deg]以上140[deg]以下の範囲にある。また、ビード・ベースBbの上記2種類の直線部が、タイヤ径方向外側に凸となる滑らかな円弧で接続されている。また、交点Rが、ビードコア11の接点C1と中点Cmとの間に位置している。
また、図9において、ビードコア11の接点C1からビード・トゥBtまでのタイヤ径方向の距離Dtおよびタイヤ幅方向の距離Wtをそれぞれ定義する。このとき、距離Dt、Wtと、接点C1からリム嵌合面までのタイヤ径方向のゲージG1とが、7[deg]≦arctan{(Dt-G1)/Wt}≦30[deg]の関係を有することが好ましく、9[deg]≦arctan{(Dt-G1)/Wt}≦25[deg]の関係を有することがより好ましい。これにより、ビードコア11からビード・トゥBtまでのタイヤ軸方向に対するリム嵌合面の勾配が適正化される。すなわち、上記下限により、リム嵌合面の勾配が確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、リム嵌合面の勾配が過大となることに起因するタイヤのリム組み作業性の低下が抑制される。
接点C1からビード・トゥBtまで距離Dt、Wtは、タイヤのリム組み前の状態にて測定される。
[変形例]
図10~図14は、図6に記載したビードコアの変形例を示す説明図である。これらの図は、部品単体時における未加硫のビードコア11の径方向の断面図を示している。
図6の構成では、ビードコア11の最内層に対する接線L1が、タイヤ幅方向に対して平行である。このため、タイヤ幅方向に対する接線L1の傾斜角XがX=0[deg]である。
しかし、これに限らず、図10に示すように、ビードコア11がタイヤ幅方向に対して傾斜しても良い。具体的には、ビードコア11がビード・トゥBt(図5参照)側でタイヤ径方向内側に傾斜しても良い。かかる構成では、ビードコア11の最内層の接線L1がリム嵌合面のビード・ベースBbに対して平行に近づく。このとき、タイヤ幅方向に対する接線L1の傾斜角Xが、-10[deg]≦X≦30[deg]の範囲にあることが好ましい。なお、ビードコア11の接線L1に対するビード・ベースBbの延長線L2の相対的な傾斜角αの範囲は、上記の通りである。
また、図6の構成では、上記のように、ワイヤ断面の配列数が、タイヤ径方向の最内層から順に3-4-3-2-1に設定されている。したがって、ワイヤ断面の層数が5であり、タイヤ径方向の最外層のワイヤ断面の配列数が1である。
これに対して、図11の構成では、ワイヤ断面の層数が4であり、ワイヤ断面の配列数がタイヤ径方向の最内層から順に3-4-3-2に設定されている。また、図12の構成では、ワイヤ断面の層数が6であり、ワイヤ断面の配列数がタイヤ径方向の最内層から順に3-4-5-4-3-2に設定されている。このように、ワイヤ断面の層数が4または6であっても良い。また、タイヤ径方向の最外層のワイヤ断面の配列数が2であっても良い。かかる場合においても、最大配列層よりもタイヤ径方向外側にあるワイヤ断面の層数(図11では2層、図12では3層)が、最大配列層よりもタイヤ径方向内側にあるワイヤ断面の層数(図11では1層、図12では2層)よりも多い。また、各層におけるワイヤ断面の配列数が、最大配列層からタイヤ径方向外側に向かって1つずつ減少する。
また、図6の構成では、タイヤ径方向の最内層におけるワイヤ断面の配列数が、最大配列層(最内層から2番目の層)におけるワイヤ断面の配列数よりも少ない。また、ワイヤ配列構造を構成するすべてのワイヤ断面が、最密充填構造により配列されている。このため、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向内側かつタイヤ幅方向内側および外側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ1、θ2が、いずれも130[deg]以上140[deg]以下の範囲にある。
これに対して、図13および図14の構成では、ワイヤ断面の層数が5であり、ワイヤ断面の配列数がタイヤ径方向の最内層から順に4-4-3-2-1に設定されている。このため、最内層におけるワイヤ断面の配列数が最大配列層におけるワイヤ断面の配列数と同じである。また、図13の構成では、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向内側かつタイヤ幅方向内側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ1が、鋭角であり、55[deg]以上65[deg]以下の範囲にある。一方で、タイヤ幅方向外側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ2が、鈍角であり、130[deg]以上140[deg]以下の範囲にある。また、図14の構成では、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向内側の左右の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ1、θ2が、いずれも略直角であり、85[deg]以上95[deg]以下の範囲にある。このように、少なくとも、タイヤ幅方向外側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ2が約直角あるいは鈍角であることが好ましい。また、図14の構成では、最大配列層からタイヤ径方向内側にて、ワイヤ断面が格子状に配列されている。このように、ワイヤ断面が、少なくとも最大配列層からタイヤ径方向外側の各層にて最密充填構造により配列されていれば良い。
[タイヤサイド部のゲージ]
図15は、図1に記載した空気入りタイヤのタイヤサイド部を示す拡大図である。同図は、タイヤ最大幅位置Aにおけるタイヤ子午線方向の拡大断面図を示している。
図15において、タイヤ最大幅位置Aにおけるタイヤサイド部の総厚さK1が、2.5[mm]≦K1≦6.5[mm]の範囲にあることが好ましく、3.0[mm]≦K1≦6.0[mm]の範囲にあることがより好ましい。これにより、タイヤサイド部の総厚さK1が適正化される。すなわち、上記下限により、タイヤサイド部の総厚さK1が確保されて、タイヤの転がり抵抗が確保される。また、上記上限により、タイヤの軽量化が確保される。
タイヤサイド部の総厚さK1は、タイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ最大幅位置Aにおけるタイヤ外表面とタイヤ外表面との距離として測定される。
また、タイヤ最大幅位置Aにおけるサイドウォールゴム16の厚さK2が、0.3[mm]≦K2≦3.0[mm]の範囲にあることが好ましく、0.5[mm]≦K2≦2.5[mm]の範囲にあることがより好ましい。これにより、サイドウォールゴム16の厚さK2が適正化される。すなわち、上記下限により、サイドウォールゴム16の厚さK2が確保されて、タイヤサイド部の耐カット性が確保される。また、上記上限により、タイヤの軽量化が確保される。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成るビードコア11と、単層あるいは複数層のカーカスプライから成ると共にビードコア11を包み込むように巻き返されてビードコア11に架け渡されるカーカス層13と、カーカス層13の巻き返し部に沿って配置されてビード部のリム嵌合面を構成するリムクッションゴム17とを備える(図1参照)。カーカス層13の巻き返し部132が、カーカス層13の本体部131に接触してビードコア11を囲む閉鎖領域Xを形成する(図2参照)。また、タイヤ子午線方向の断面視にて、閉鎖領域Xにおけるゴム占有率が、15[%]以下の範囲にある。また、カーカスプライを構成するカーカスコード130(図3参照)の熱収縮率が、0.1[%]以上1.5[%]以下の範囲にある。
かかる構成では、(1)カーカス層13の本体部131および巻き返し部132に囲まれた閉鎖領域Xにおけるゴム占有率、すなわちビードコア11の周囲のゴムボリュームが、非常に低く設定される。これにより、ビードフィラーを省略できるので、タイヤを軽量化できる利点がある。また、(2)カーカスコード130の熱収縮率が適正化される利点がある。すなわち、上記上限により、カーカスコード130の熱収縮率が低く設定されるので、タイヤ加硫成形工程にて、加硫熱によるカーカスプライの変形が抑制されて、ビードコア11に作用する応力が低減される。これにより、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制されて、タイヤのリム嵌合性が向上する。また、上記下限により、カーカスコード130のフィブリル化が抑制されて、カーカスプライの耐久性が確保される。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカスコード130(図3参照)が、アラミド繊維およびポリエステル繊維から成る複合糸である。かかる構成では、例えば、ポリエステル繊維のみから成るカーカスコード(図示省略)と比較して、糸量を低減できるので、カーカスコード130のコード径を細くできる。これにより、カーカスコード130の熱収縮率を低減しつつ、カーカスプライのゲージを薄肉化できる利点がある。また、例えば、アラミド繊維のみから成るカーカスコード(図示省略)と比較して、カーカスコード130のフィブリル化が抑制されて、カーカスプライの耐久性が確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカスコード130が、アラミド繊維束から成る複数本のアラミド下撚糸1301と、ポリエステル繊維束から成る少なくとも1本のポリエステル下撚糸1302とを上撚りして構成された複合糸Yである(図3参照)。かかる構成では、カーカスコード130の総強力を高めつつカーカスコード130の糸量を低減できるので、カーカスプライの耐圧性を高めつつカーカスプライを薄肉化できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、アラミド下撚糸1301の総繊度が、400[dtex]以上1200[dtex]以下の範囲にあり、ポリエステル下撚糸1302の総繊度が、500[dtex]以上1200[dtex]以下の範囲にあり、複合糸Yの総繊度Dが、1000[dtex]以上2400[dtex]以下の範囲にある。これにより、カーカスコード130を構成する各下撚糸の総繊度および複合糸の総繊度Dが適正化される利点がある。すなわち、上記下限により、カーカスコード130の強度が確保され、上記上限により、カーカスプライの軽量化が確保される。
また、この空気入りタイヤ1では、複合糸Yの撚り係数Kが、2000以上2400以下の範囲にある。これにより、カーカスコード130を構成する複合糸Yの撚り係数Kが適正化される利点がある。すなわち、上記下限により、カーカスコード130の強度が確保され、上記上限により、カーカスプライの軽量化が確保される。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカスコード130のコード径が、0.30[mm]以上0.55[mm]以下の範囲にある。これにより、カーカスコード130の機能が確保されて、カーカスプライの薄肉化および耐圧性が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカスコード130の中間伸度が、1.0[%]以上10[%]以下の範囲にある。これにより、カーカスコード130の機能が確保されて、カーカスプライの薄肉化および耐圧性が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカスコード130のエンド数が、35[本/50mm]以上85[本/50mm]以下の範囲にある。これにより、カーカスコード130の機能が確保されて、カーカスプライの薄肉化および耐圧性が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層13の巻き上げ部132の端部が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側にある(図2参照)。カーカス層13の巻き上げ高さが低い、いわゆるローターンナップ構造では、タイヤ加硫成形工程におけるカーカスプライの変形が大きくなり、ビードコア11のコア崩れが発生し易い傾向にある。したがって、かかるローターンナップ構造にて上記の構成を採用することにより、ビードコア11のコア崩れの抑制作用が顕著に得られる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触部の径方向高さH2が、ビードコア11の径方向高さH1に対して、0.80≦H2/H1≦3.00の関係を有する(図2参照)。これにより、カーカス層13の自己接触部の径方向高さH2が適正化される利点がある。すなわち、上記下限により、巻き返し部132が本体部131に安定的に接触して、タイヤ加硫成形工程におけるカーカスプライの変形が抑制される。これにより、ビードコア11に作用する応力が低減されて、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制される。また、上記上限により、巻き返し部132が過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制される。
また、この空気入りタイヤ1では、ビードコア11が、タイヤ子午線方向の断面視にて、ビードワイヤ111のワイヤ断面を配列して成る所定のワイヤ配列構造を有する(図6参照)。また、ワイヤ配列構造におけるワイヤ断面の配列数が最大である層(図6では、最内層から2番目の層)を最大配列層として定義する。このとき、最大配列層よりもタイヤ径方向外側にあるワイヤ断面の層数(図6では、3層)が、最大配列層よりもタイヤ径方向内側にあるワイヤ断面の層数(図6では、最内層の1層)よりも多い。また、最大配列層よりもタイヤ径方向外側の各層におけるワイヤ断面の配列数が、最大配列層からタイヤ径方向外側に向かって単調減少する(図6参照)。かかる構成では、カーカス層13の巻き返し部132が本体部131に対して鈍角に屈曲して接触するので、巻き返し部132の屈曲量が小さい。これにより、タイヤ加硫成形工程におけるカーカスプライの変形が抑制され、ビードコア11に作用する応力が低減されて、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ビードコア11が、タイヤ子午線方向の断面視にて、ビードワイヤ111のワイヤ断面を配列して成る所定のワイヤ配列構造を有する(図6参照)。また、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向内側かつタイヤ幅方向外側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ2が、80[deg]≦θ2の範囲にある(図6参照)。かかる構成では、ワイヤ断面の配列角度θ2が略直角以上となり、タイヤ加硫時におけるワイヤ配列構造の乱れが抑制されて、ビードコア11のコア崩れが効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ビードコア11が、タイヤ子午線方向の断面視にて、ビードワイヤ111のワイヤ断面を配列して成る所定のワイヤ配列構造を有する(図6参照)。また、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向内側かつタイヤ幅方向外側の角部におけるワイヤ断面の配列角度θ2が、100[deg]≦θ2≦150[deg]の範囲にある(図6参照)。これにより、タイヤ加硫時におけるワイヤ配列構造の乱れが抑制されて、ビードコア11のコア崩れが効果的に抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触部の実長さLa2が、閉鎖領域Xの周長La1に対して、0.30≦La2/La1≦2.00の関係を有する。これにより、カーカス層13の自己接触部の実長さLa2が適正化される。すなわち、上記下限により、カーカス層13の自己接触部の実長さLa2が確保され、タイヤ加硫成形工程におけるカーカスプライの変形が抑制されて、ビードコア11のコア崩れが適正に抑制される利点がある。また、上記上限により、巻き返し部132が過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制される。
また、この空気入りタイヤ1では、ビードコア11が、タイヤ子午線方向の断面視にて、ビードワイヤ111のワイヤ断面を配列して成る所定のワイヤ配列構造を有する(図6参照)。また、ワイヤ配列構造におけるタイヤ径方向の最内層かつタイヤ幅方向の最内側および最外側のワイヤ断面に対してリム嵌合面側から接する接線L1と、最外側のワイヤ断面に対する接線L1の接点C2とを定義する(図5参照)。また、接点C2からリム嵌合面までのタイヤ径方向のゲージG2と、ビードワイヤ111の外径φ(図6参照)とが、1.3≦G2/φ≦9.5の関係を有する。これにより、リム嵌合部のゲージG2が適正化される。すなわち、上記下限により、リム嵌合部のゲージG2が確保されて、タイヤのリム嵌合性が確保される。また、上記上限により、リム嵌合部のゲージG2が過大となることに起因するタイヤのリム組み作業性の悪化が抑制される。
図16は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。図17は、従来例の試験タイヤのビードコアを示す説明図である。
この性能試験では、タイヤサイズ205/55R16である複数種類の試験タイヤについて、(1)タイヤ質量、(2)耐コア崩れ性および(3)操縦安定性に関する評価が行われた。
(1)タイヤ質量は、同一構造を有する5つの試験タイヤの質量の平均値として算出される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価の数値が小さいほど試験タイヤが軽量であり、好ましい。また、指数が99以下であれば、ビードフィラーを備える既存のタイヤ構造と比較して、タイヤの軽量化が図られているといえる。
(2)耐コア崩れ性に関する評価では、加硫後のタイヤのビード部全周を非破壊試験(例えばX線CTシステム)にて観察し、コア崩れの発生有無を確認し、コア崩れが無ければ「OK」、コア崩れがあれば「NG」として判定記録した。観察本数は、実施例ごとに20本観察した。
(3)操縦安定性に関する評価では、試験車両が平坦な周回路を有するドライ路面のテストコースを60[km/h]~100[km/h]で走行する。そして、テストドライバーがレーンチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について官能評価を行う。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
実施例1~12の試験タイヤは、ビードフィラーを省略した構造(図1および図2参照)を備えることにより、タイヤの軽量化が図られている。また、ビードコア11が図2および図6に記載した構造を有している。また、カーカス層13のカーカスコード130が、アラミド繊維束から成る2本のアラミド下撚糸1301、1301と、ポリエステル繊維束から成る1本のポリエステル下撚糸1302とを上撚りして構成された複合糸Y(図3参照)により構成される。また、タイヤ断面高さSHが112[mm]であり、ビードコア11の高さH1が5.0[mm]である。
従来例の試験タイヤでは、実施例1の試験タイヤの構成において、ビードコア11が図17に記載したワイヤ配列構造を有している。比較例の試験タイヤでは、図1および図2の構成において、ビードコア11が図6のワイヤ配列構造を有している。
試験結果が示すように、実施例1~12の試験タイヤでは、タイヤを軽量化しつつビードコアの耐コア崩れ性およびタイヤの操縦安定性が向上することが分かる。