図1および図2はそれぞれ、本発明の一の実施の形態に係る使い捨て吸収性物品1の正面図および背面図(すなわち、着用者の腹側および背側に位置する部位の図)である。以下の説明では、使い捨て吸収性物品1を、単に「吸収性物品1」と呼ぶ。図1および図2に示すように、吸収性物品1は、上端(すなわち、図1および図2中の上側の端部)に胴部開口11を有し、下部に一対の脚部開口12を有するパンツタイプの使い捨ておむつである。吸収性物品1は、着用者からの排泄物を受ける。
図3は、吸収性物品1を展開した状態で着用者側から見た平面図である。吸収性物品1は、外装シート4と、吸収体20とを備える。図3に示す例では、吸収体20の平面視における形状は略矩形である。外装シート4には、胴部開口11および一対の脚部開口12(図1および図2参照)が設けられる。吸収体20は、外装シート4の内面(すなわち、着用者側の面)上に取り付けられ、着用者からの排泄物を吸収する略シート状の部材である。
吸収性物品1では、図3中の上側の部位が着用者の前側(すなわち、腹側の肌)を覆い、図3中の下側の部位が着用者の後側(すなわち、背側の肌)を覆う。以下の説明では、吸収性物品1のうち、着用者の腹側および背側に位置する部位をそれぞれ、「前方部401」および「後方部403」と呼ぶ。また、吸収性物品1のうち、前方部401と後方部403との間の部位を「股下部402」と呼ぶ。股下部402は、前方部401および後方部403から連続する。股下部402は、着用者の股間部を覆う。吸収性物品1の前方部401、股下部402および後方部403は、外装シート4の前方部、股下部および後方部でもある。換言すれば、外装シート4は、前方部401、股下部402および後方部403を備える。吸収体20は、外装シート4の前方部401から股下部402を経由して後方部403へと至る。
吸収性物品1が製造される際には、外装シート4が、吸収体20と共に股下部402にて折り曲げられる。そして、股下部402を下側に向けた状態で、外装シート4の前方部401の左右方向の両端部の内面と、後方部403の左右方向の両端部の内面とが、加熱および押圧による熱圧着接合等により接合される。これにより、図1および図2に示すように、前方部401および後方部403の上端に胴部開口11が形成される。また、前方部401および後方部403の下側において、股下部402の左右に一対の脚部開口12が形成される。さらに、胴部開口11と一対の脚部開口12とのそれぞれの間において上下方向に伸びる一対の帯状接合部13が形成される。各帯状接合部13は、外装シート4の前方部401と後方部403とが接続される接続線から側方へと突出する帯状の突出部である。
図4は、吸収性物品1を図3中に示すIV-IVの位置(すなわち、股下部402)で切断した断面図である。図4では、図示の都合上、吸収性物品1の各構成を離して描いている。後述する図5においても同様である。図3および図4に示すように、吸収体20は、本体部2と、一対のサイドシート3とを備える。一対のサイドシート3は、本体部2の両側部上(すなわち、上下方向に垂直な左右方向の両側)に配置される。各サイドシート3は、本体部2の長手方向(すなわち、着用時における上下方向に平行な方向)のおよそ全長に亘る略シート状の部材である。
本体部2は、略シート状の部材であり、トップシート21と、バックシート23と、吸収コア22とを備える。トップシート21は、透液性のシート部材である。バックシート23は、不透液性または撥液性のシート部材である。吸収コア22は、トップシート21とバックシート23との間に配置される略シート状の部材である。トップシート21は、吸収コア22の着用者側の面を覆う。バックシート23は、吸収コア22の着用者とは反対側の面を覆う。
トップシート21は、着用者からの排泄物の水分を捕捉し、当該水分を吸収コア22へと移動させる。吸収コア22は、トップシート21を透過した水分(すなわち、着用者からの排泄物の水分)を吸収して固定する。バックシート23は、バックシート23に到達した排泄物の水分等が、本体部2の外部にしみ出すことを防止する。
図3では、図の理解を容易にするために、吸収体20の吸収コア22の輪郭を太破線にて描いている。図1および図2においても同様である。図3に示すように、吸収コア22の長手方向の両端部における幅は、吸収コア22の長手方向の中央部における幅よりも大きい。換言すれば、吸収コア22は、いわゆる砂時計型である。図4に示すバックシート23は、ホットメルト接着剤等により外装シート4上に接合される。これにより、吸収体20が外装シート4に固定される。
一対のサイドシート3はそれぞれ、接合部33と、側壁部34とを備える。接合部33は、サイドシート3のうち、長手方向の全長に亘って設けられた折り曲げ線39の一方側の帯状の部位である。接合部33は、本体部2の側方エッジ近傍において、長手方向のおよそ全長に亘って本体部2の上側(すなわち、着用者側)にホットメルト接着剤等を用いて接合される。側壁部34は、サイドシート3のうち、折り曲げ線39の他方側の帯状の部位である。側壁部34は、折り曲げ線39(すなわち、接合部33の左右方向の外側のエッジ)にて一対の接合部33から連続する部位である。側壁部34は、本体部2の両側部上において、本体部2の長手方向のおよそ全長に亘って伸びる。
各側壁部34は、長手方向における両端部において、接合部33上に重ねられて接合部33に固定される。側壁部34と接合部33との固定は、例えば、熱圧着接合、超音波接合、または、ホットメルト接着剤等による接着により行われる。各側壁部34の長手方向の両端部を除く部位(すなわち、長手方向の中央部)は、接合部33とは非接合であり、接合部33から離間可能である。各側壁部34の自由端には、側壁部弾性部材35が接合されている。側壁部弾性部材35が収縮することにより、側壁部34の長手方向の中央部が起立し、立体ギャザーが形成される。これにより、一対の側壁部34の間において吸収体20により受けられた排泄物が、一対の側壁部34よりも外側に漏出することを抑制することができる。
トップシート21は、例えば、透液性の不織布(エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布またはスパンレース不織布等)により形成される。当該不織布は、例えば、表面を界面活性剤により親水処理された疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)により形成される。当該不織布は、セルロース、レーヨンまたはコットン等の親水性繊維により形成されてもよい。
吸収コア22は、例えば、粒状または繊維状の高吸収性材料、および、親水性繊維の集合体のうち、少なくとも一方を吸収材として含む。当該高吸収性材料としては、例えば、粒状の高吸収性ポリマー(SAP(Super Absorbent Polymer))、または、繊維状の高吸収性ファイバー(SAF(Super Absorbent Fiber))が利用される。当該親水性繊維の集合体は、例えば、粉砕されたパルプ繊維またはセルロース繊維により形成される。
図4に示す例では、吸収コア22は、上述の親水性繊維の集合体に粒状のSAPを混合したものを、ティッシュペーパーまたは透液性不織布等により包み込むことにより形成される。これにより、親水性繊維の集合体の型崩れ、および、SAPの脱落(特に、吸液後における脱落)を防止することができる。
バックシート23は、例えば、疎水性繊維により形成された不透液性または撥液性の不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布もしくはSMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布等)により形成される。あるいは、バックシート23は、不透液性または撥液性のプラスチックフィルムにより形成される。バックシート23は、当該不織布と当該プラスチックフィルムとの積層体であってもよい。バックシート23にプラスチックフィルムが利用される場合、吸収性物品1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(すなわち、通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
サイドシート3のシート本体は、疎水性繊維にて形成された不透液性または撥液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS不織布)により形成される。側壁部弾性部材35としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、または、糸状もしくは帯状の天然ゴム等が利用される。本実施の形態では、ポリウレタン糸が側壁部弾性部材35として利用される。
図5は、吸収性物品1を図3中に示すV-Vの位置で切断した部分断面図である。図5では、吸収性物品1の前側を示す。吸収性物品1の後側の構造は、図5に示す前側の構造と略同様である。外装シート4は、外装シート本体40と、脚部弾性部材43と、上部弾性部材44とを備える。脚部弾性部材43および上部弾性部材44は、外装シート本体40に接合される。図1ないし図3では、図の理解を容易にするために、上部弾性部材44に平行斜線を付す。
外装シート本体40は、第1外装シート41と、第2外装シート42と、エンドシート5とを備える。第2外装シート42は、第1外装シート41の内面上(すなわち、着用者側)に積層され、ホットメルト接着剤による接着、または、熱エンボス加工による熱圧着接合等により第1外装シート41に接合される。エンドシート5は、第2外装シート42の内面に積層され、ホットメルト接着剤による接着、または、熱エンボス加工による熱圧着接合等により第2外装シート42に接合される。エンドシート5の下端部と第2外装シート42との間には、吸収体20の上端部が挟まれる。吸収体20の上端部は、ホットメルト接着剤等により第2外装シート42およびエンドシート5に固定される。図5に示す例では、エンドシート5の上端縁は、第1外装シート41の上端縁(すなわち、胴部開口11のエッジ111)、および、第2外装シート42の上端縁よりも下側に位置する。また、エンドシート5は、外装シート4の左右方向の略全長に亘って設けられる。
図5に示すように、第1外装シート41は、胴部開口11のエッジ111にて着用者側に折り返される折り返し部46を備える。折り返し部46の下端は、第2外装シート42の上端縁、および、エンドシート5の上端縁よりも下側、かつ、吸収体20の上端縁よりも上側に位置する。第2外装シート42の上端部およびエンドシート5の上端部は、第1外装シート41のうち、折り返し部46に対向する部位である対向部47と、折り返し部46との間に挟まれる。折り返し部46は、エンドシート5の上端部、および、第2外装シート42の上端部に、ホットメルト接着剤等により接合される。
外装シート本体40の第1外装シート41、第2外装シート42およびエンドシート5は、バックシート23と同様に、疎水性繊維により形成された不透液性または撥液性の不織布により形成される。あるいは、第1外装シート41、第2外装シート42およびエンドシート5は、当該不織布と不透液性もしくは撥液性のプラスチックフィルムとの積層体であってもよい。プラスチックフィルムとしては、透湿性を有するものが利用されることが好ましい。また、第1外装シート41、第2外装シート42およびエンドシート5として、トップシート21と同様に、透液性の不織布が利用されてもよい。図5に示す例では、第1外装シート41、第2外装シート42およびエンドシート5はそれぞれ、不織布シートである。
図1および図2に示すように、脚部弾性部材43は、一対の脚部開口12のエッジ121に沿って配置される。脚部弾性部材43は、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、または、糸状もしくは帯状の天然ゴムである。図1および図2に示す例では、脚部弾性部材43は、それぞれがポリウレタン糸である複数の脚部弾性要素431を備える。複数の脚部弾性要素431は、互いに略平行に配置される。
脚部弾性部材43は、例えば、外装シート本体40の第1外装シート41と第2外装シート42との間にホットメルト接着剤等により接合される。各脚部弾性部材43の上端部は、外装シート4の前方部401および後方部403に位置する。また、各脚部弾性部材43の上端部以外の部位は、外装シート4の股下部402に位置する。吸収性物品1では、脚部弾性部材43が収縮することにより、一対の脚部開口12近傍において外装シート本体40が収縮し、着用者の脚周りに接するレッグギャザーが形成される。
上部弾性部材44は、胴部開口11の端縁であるエッジ111に沿って外装シート4の前方部401および後方部403に配置される。上部弾性部材44は、樹脂(例えば、ポリプロピレンまたはポリウレタン)により形成された伸縮性を有するフィルム部材である。すなわち、上部弾性部材44は、弾性伸縮可能な伸縮性樹脂フィルムである。上部弾性部材44は、前方部401および後方部403の略全幅に亘って広がる略矩形状の部材である。
上部弾性部材44は、例えば、外装シート本体40の第1外装シート41と第2外装シート42との間に接合される。換言すれば、第1外装シート41は、上部弾性部材44を間に挟んで第2外装シート42に接合される。上部弾性部材44と第1外装シート41および第2外装シート42との接合は、上部弾性部材44に対する熱接合(すなわち、加熱を伴う接合)により行われる。例えば、上部弾性部材44と第1外装シート41および第2外装シート42との熱接合は、熱エンボス加工により行われる。上部弾性部材44は、エンドシート5と第2外装シート42との間に接合されてもよい。この場合、上部弾性部材44と第2外装シート42およびエンドシート5との接合は、例えば、熱エンボス加工等の熱接合により行われる。
上部弾性部材44の上端縁441は、胴部開口11のエッジ111と上下方向の略同じ位置に位置する。上部弾性部材44の上端縁441は、胴部開口11のエッジ111よりも僅かに下方に位置していてもよい。この場合、上部弾性部材44の上端縁441は、例えば、胴部開口11のエッジ111に略平行に左右方向に延びる。図5に示す例では、上部弾性部材44の上端縁441は、第2外装シート42の上端縁と上下方向の略同じ位置に位置する。したがって、上部弾性部材44の上端部は、第2外装シート42の上端部と同様に、第1外装シート41の折り返し部46と対向部47との間に挟まれる。
上部弾性部材44の下端縁442は、上端縁441と略平行に左右方向に延びる。上部弾性部材44の上端縁441と下端縁442との間の上下方向の距離は、例えば、25mm以上かつ500mm以下であり、好ましくは、50mm以上かつ400mm以下である。図1および図2に示す例では、上部弾性部材44の下端縁442は、前方部401および後方部403において、吸収体20の上端縁よりも上側に位置する。換言すれば、図3に示すように、吸収性物品1を展開した状態において、上部弾性部材44と吸収体20とは重なっていない。
吸収性物品1が製造される際には、上部弾性部材44は左右方向に伸張された状態で、外装シート本体40に接合される。したがって、吸収性物品1において、上部弾性部材44は、左右方向(すなわち、胴部開口11のエッジ111に平行な方向)に伸縮可能である。吸収性物品1では、上部弾性部材44が左右方向に収縮することにより、胴部開口11近傍において外装シート本体40が左右方向に収縮し、着用者の胴回りに接するウエストギャザーが形成される。換言すれば、外装シート4のうち胴部開口11のエッジ111近傍の領域において、上部弾性部材44が設けられる領域が左右方向に伸縮し、ウエストギャザーが形成される。また、外装シート4のうち、上下方向に関してウエストギャザーが形成される領域と一対の脚部開口12との間の領域も左右方向に収縮し、着用者の下腹部および臀部に接する中間ギャザー(すなわち、ボディフィットギャザー)が形成される。
以下の説明では、外装シート4のうち上部弾性部材44が配置されている部位を、「積層シート部6」と呼ぶ。図1ないし図3に示す例では、積層シート部6は、前方部401および後方部403に配置される。積層シート部6では、上述のように、伸縮性樹脂フィルムである上部弾性部材44と、不織布シートである第1外装シート41および第2外装シート42とが、積層されて熱接合されている。詳細には、積層シート部6は、伸縮性樹脂フィルムである上部弾性部材44と、不織布シートである第1外装シート41(または、第2外装シート42)と、上部弾性部材44を間に挟んで当該不織布シートに接合される他の不織布シートである第2外装シート42(または、第1外装シート41)とを備える。
積層シート部6は、伸縮性が異なる複数の領域を備える。図1ないし図3に示す例では、積層シート部6は、伸縮性を有する第1領域61と、第1領域61よりも伸縮性が小さい第2領域62とを備える。図1ないし図3では、図の理解を容易にするために、第2領域62に第1領域61とは異なる平行斜線を付し、第1領域61と第2領域62との境界を二点鎖線にて示す。第2領域62は、上部弾性部材44の上端部と重なる領域である。第1領域61は、上部弾性部材44の上端部以外の部位と重なる領域である。第1領域61および第2領域62の形成については後述する。
第2領域62は、胴部開口11のエッジ111に沿う略帯状の領域である。第2領域62の上端縁は、例えば、胴部開口11のエッジ111と上下方向の略同じ位置に位置する。第1領域61は、第2領域62の下端から下方に広がる略矩形状の領域である。換言すれば、第1領域61は、胴部開口11のエッジ111から下方に離間した位置に位置する略矩形状の領域であり、第2領域62は、第1領域61の上端に連続する。第1領域61および第2領域62は、前方部401および後方部403に位置する。第1領域61および第2領域62はそれぞれ、前方部401および後方部403において、左右方向の略全幅に亘って広がる。
第2領域62の上下方向の高さは、左右方向の全長に亘っておよそ同じである。換言すれば、第1領域61と第2領域62との境界は、胴部開口11のエッジ111と略平行である。第2領域62の上下方向の高さは、例えば、10mm以上かつ50mm以下であり、好ましくは、20mm以上かつ30mm以下である。第1領域61の上下方向の高さも、左右方向の全長に亘っておよそ同じである。第1領域61の上下方向の高さは、第2領域62の上下方向の高さよりも大きい。第1領域61の上下方向の高さは、例えば、25mm以上かつ300mm以下であり、好ましくは、50mm以上かつ250mm以下である。図1ないし図3に示す例では、第1領域61は、少なくとも左右方向において比較的大きい伸縮性を有し、第2領域62は、左右方向において実質的に伸縮性を有しない非伸縮領域である。当該非伸縮領域は、僅かな伸縮性を有していてもよいが、非伸縮領域の伸縮性は、外装シート4において第1外装シート41と第2外装シート42との間に上述の弾性部材(ポリウレタン糸や伸縮性樹脂フィルム等)が存在しない弾性部材非存在領域の伸縮性と略同じである。
次に、図6および図7を参照しつつ積層シート部6の製造方法について説明する。図6は、積層シート部6の製造装置7の一例を示す平面図である。実際の製造装置7は、図示した構造よりも複雑な構造を有しており、例えば、吸収性物品1の製造装置に含まれる。図7は、製造装置7による積層シート部6の製造の流れを示す図である。
製造装置7は、第1エンボスロール71と、第1フラットロール73と、一対の第2エンボスロール72と、一対の第2フラットロール74とを備える。第1エンボスロール71は、第1フラットロール73と上下方向(すなわち、紙面に略垂直な方向)に対向する。各第2エンボスロール72は、第2フラットロール74と上下方向に対向する。第1エンボスロール71、第1フラットロール73、第2エンボスロール72および第2フラットロール74はそれぞれ、紙面の上下方向に平行な回転軸を中心として回転可能な略円筒状の部材である。
第1エンボスロール71および第2エンボスロール72の外周面には、複数の凸部(図示省略)が規則的に配列されている。第1フラットロール73および第2フラットロール74の外周面は、平滑な円筒面である。第1エンボスロール71、第1フラットロール73、第2エンボスロール72および第2フラットロール74の内部には、各ロールの外周面を加熱するヒータ(図示省略)が設けられている。第1エンボスロール71、第1フラットロール73、第2エンボスロール72および第2フラットロール74は、例えば、同じ温度に加熱される。また、各ロールの外周面は、回転軸が伸びる軸方向の略全長に亘っておよそ均等に加熱される。なお、各ロールの外周面の温度は、一部のロールのみが同じ温度であってもよく、互いに異なっていてもよい。
製造装置7では、紙面の左右方向に延びる長尺状の積層シート80に対して熱エンボス加工が行われる。第1エンボスロール71および第1フラットロール73は、積層シート80の幅方向(すなわち、紙面の上下方向)の全長に亘って設けられる。一対の第2エンボスロール72、および、一対の第2フラットロール74は、積層シート80の幅方向の両端部に配置される。
積層シート80は、複数の外装シート4となる予定の元部材である。積層シート80は、最も下側に位置する第1不織布シート81と、最も上側に位置する第2不織布シート82と、第1不織布シート81と第2不織布シート82との間に配置された一対の樹脂フィルム84とを備える。第1不織布シート81、第2不織布シート82および一対の樹脂フィルム84はそれぞれ、第1外装シート41、第2外装シート42および上部弾性部材44となる予定の元部材である。
積層シート80のうち紙面の上側の端部は、外装シート4の前方部401の上端部に対応する。また、積層シート80のうち紙面の下側の端部は、外装シート4の後方部403の上端部に対応する。第1不織布シート81のうち、第2不織布シート82から紙面の上側および下側に延在している部位86は、折り返される前の折り返し部46に対応する。積層シート80において一対の樹脂フィルム84が配置されている領域は、上述の積層シート部6となる領域である。積層シート部6は、外装シート4の製造工程において製造される。
外装シート4が製造される際には、まず、第1不織布シート81と樹脂フィルム84とが積層され、さらに、第2不織布シート82が樹脂フィルム84を間に挟んで第1不織布シート81に積層される。これにより、積層シート80が形成される。積層シート80のうち一の積層シート部6に対応する部位に注目すると、当該積層工程では、第1外装シート41と上部弾性部材44とが積層され、さらに、第2外装シート42が上部弾性部材44を間に挟んで第1外装シート41に積層される(ステップS11)。
続いて、紙面の左側から右側へと搬送される積層シート80が、第1エンボスロール71と第1フラットロール73との間を通過することにより、幅方向の全長に亘って積層シート80に熱エンボス加工が行われる。これにより、第1不織布シート81と一対の樹脂フィルム84と第2不織布シート82とが、積層シート80の幅方向の略全長に亘って熱接合される。次に、積層シート80が、一対の第2エンボスロール72と一対の第2フラットロール74との間を通過することにより、積層シート80のうち、一対の樹脂フィルム84の幅方向外端部に対応する領域に対してのみ熱エンボス加工が行われる。これにより、一対の樹脂フィルム84の幅方向外端部が、第1不織布シート81および第2不織布シート82にさらに熱接合される。
上記と同様に、積層シート80のうち一の積層シート部6に対応する部位に注目すると、当該熱接合工程では、積層シート部6の第1領域61および第2領域62に対して、同条件(すなわち、同じ熱エンボス加工温度および同じ熱エンボス加工時間)にて熱エンボス加工が行われる(ステップS12)。その後、第2領域62のみに対して他の熱エンボス加工(すなわち、2回目の熱エンボス加工)が行われる(ステップS13)。これにより、第2領域62に対する熱エンボス加工時間が、第1領域61に対する熱エンボス加工時間よりも長くなる。したがって、第2領域62に付与される単位面積当たりの熱量が、第1領域61に付与される単位面積当たりの熱量よりも大きくなる。その結果、第2領域62の伸縮性が低減され、第1領域61の伸縮性よりも小さくなる。上述の例では、第2領域62は実質的に伸縮性を有しない非伸縮領域となる。なお、ステップS13は、ステップS12よりも前に行われてもよい。
製造装置7では、一対の第2エンボスロール72および一対の第2フラットロール74の外周面の温度が、第1エンボスロール71および第1フラットロール73の外周面の温度よりも高くてもよい。この場合、第2領域62に対する熱エンボス加工温度が、第1領域61に対する熱エンボス加工温度よりも高くなる。したがって、第2領域62に付与される単位面積当たりの熱量が、第1領域61に付与される単位面積当たりの熱量よりも大きくなる。その結果、第2領域62の伸縮性が低減され、第1領域61の伸縮性よりも小さくなる。
図8は、積層シート部6の他の製造装置7aを示す平面図である。製造装置7aでは、第1エンボスロール71および第1フラットロール73に代えて、積層シート80の幅方向(すなわち、紙面の上下方向)に関して、一対の第2エンボスロール72および一対の第2フラットロール74の間に配置される第1エンボスロール71aおよび第1フラットロール73aを備える。製造装置7aでは、一対の第2エンボスロール72および一対の第2フラットロール74の外周面の温度が、第1エンボスロール71および第1フラットロール73の外周面の温度よりも高い。図9は、製造装置7aによる積層シート部6の製造の流れを示す図である。
製造装置7aでは、一対の第2エンボスロール72および一対の第2フラットロール74により、製造装置7と同様に、積層シート80のうち、一対の樹脂フィルム84の幅方向外端部に対応する領域に対してのみ熱エンボス加工が行われる。また、第1エンボスロール71aおよび第1フラットロール73aにより、積層シート80のうち、一対の樹脂フィルム84の幅方向外端部の間の領域に対してのみ熱エンボス加工が行われる。これにより、第1不織布シート81と一対の樹脂フィルム84と第2不織布シート82とが熱接合される。
上記と同様に、積層シート80のうち一の積層シート部6に対応する部位に注目すると、上述のステップS11と同様の積層工程(ステップS21)が終了した後、当該熱接合工程では、積層シート部6の第1領域61および第2領域62に対して、1回ずつ熱エンボス加工が行われる(ステップS22)。製造装置7aでは、第2領域62に対する熱エンボス加工温度が、第1領域61に対する熱エンボス加工温度よりも高いため、第2領域62に付与される単位面積当たりの熱量が、第1領域61に付与される単位面積当たりの熱量よりも大きくなる。その結果、第2領域62の伸縮性が低減され、第1領域61の伸縮性よりも小さくなる。上述の例では、第2領域62は実質的に伸縮性を有しない非伸縮領域となる。
製造装置7aでは、例えば、一対の第2エンボスロール72および一対の第2フラットロール74の外径が、第1エンボスロール71および第1フラットロール73の外径よりも大きくされることにより、第2領域62に対する熱エンボス加工時間が、第1領域61に対する熱エンボス加工時間よりも長くされてもよい。この場合、一対の第2エンボスロール72および一対の第2フラットロール74の外周面の温度は、第1エンボスロール71および第1フラットロール73の外周面の温度よりも高くてもよく、略同じであってもよい。いずれの場合であっても、第2領域62に付与される単位面積当たりの熱量は、第1領域61に付与される単位面積当たりの熱量よりも大きくなる。その結果、第2領域62の伸縮性が低減され、第1領域61の伸縮性よりも小さくなる。
以上に説明したように、吸収性物品1は、前方部401と、股下部402と、後方部403とを備える。前方部401は、着用者の腹側に位置する。後方部403は、着用者の背側に位置する。股下部402は、前方部401および後方部403から連続する。前方部401および後方部403は、不織布シート(すなわち、第1外装シート41または第2外装シート42)と伸縮性樹脂フィルム(すなわち、上部弾性部材44)とが熱接合された積層シート部6を含む。積層シート部6は、伸縮性を有する第1領域61と、第1領域61よりも伸縮性が小さい第2領域62とを備える。第2領域62は、第1領域61に連続する。上記不織布シートと伸縮性樹脂フィルムとの熱接合時(ステップS12およびステップS13、または、ステップS22)において、第2領域62に付与される単位面積当たりの熱量が、第1領域61に付与される単位面積当たりの熱量よりも大きい。これにより、隣接領域(すなわち、第1領域61および第2領域62)における伸縮性の差を容易に実現することができる。
吸収性物品1では、上述の不織布シートと伸縮性樹脂フィルムとの熱接合が熱エンボス加工により行われる。当該熱エンボス加工では、第2領域62に対する熱エンボス加工時間が、第1領域61に対する熱エンボス加工時間よりも長い(ステップS12およびステップS13)。あるいは、当該熱エンボス加工では、第2領域62に対する熱エンボス加工温度が、第1領域61に対する熱エンボス加工温度よりも高い(ステップS22)。これにより、隣接領域における伸縮性の差をさらに容易に実現することができる。
上述のステップS12では、第1領域61および第2領域62に対して、同条件にて熱エンボス加工が行われる。そして、ステップS13において、第2領域62のみに対して他の熱エンボス加工が行われる。これにより、第1領域61および第2領域62に対する熱エンボス加工時間または熱エンボス加工温度を容易に異ならせることができる。その結果、隣接領域における伸縮性の差をより一層容易に実現することができる。
吸収性物品1では、前方部401の両端部と後方部403の両端部とが接合されることにより、胴部開口11および一対の脚部開口12が形成される。上述の例では、積層シート部6の第2領域62は、胴部開口11に沿う帯状の領域である。これにより、胴部開口11のエッジ111近傍の部位の伸縮性を、伸縮性樹脂フィルムを利用しつつ小さくすることができる。その結果、着用者の胴部に対する締め付けを軽減し、吸収性物品1の着用感を向上することができる。
吸収性物品1では、積層シート部6は、伸縮性樹脂フィルムである上部弾性部材44を間に挟んで上述の不織布シート(すなわち、第1外装シート41および第2外装シート42の一方)に接合される他の不織布シート(すなわち、第1外装シート41および第2外装シート42の他方)をさらに備える。これにより、上部弾性部材44が外装シート4の表面に露出することが防止される。その結果、外装シート4を形成する際に、伸張状態の上部弾性部材44と第1外装シート41および第2外装シート42との熱接合を、上部弾性部材44を損傷することなく好適に行うことができる。したがって、吸収性物品1の製造における歩留まりを向上することができる。
次に、図10および図11を参照しつつ本発明の関連技術に係る吸収性物品1aについて説明する。図10および図11はそれぞれ、吸収性物品1aの正面図および背面図である。吸収性物品1aでは、上述の上部弾性部材44に代えて、上部弾性部材44とは形状が異なる上部弾性部材44aが外装シート4に設けられる。吸収性物品1aの他の構造は、図1ないし図5に示す吸収性物品1と同様である。以下の説明では、吸収性物品1の構成に対応する吸収性物品1aの各構成に同符号を付す。
上部弾性部材44aは、外装シート本体40の略全面に亘って設けられる。上部弾性部材44aは、上部弾性部材44と同様に、外装シート本体40の第1外装シート41と第2外装シート42(図5参照)との間に配置され、第1外装シート41および第2外装シート42に接合される。
吸収性物品1の場合と同様に、以下の説明では、外装シート4のうち上部弾性部材44aが配置されている部位を、「積層シート部6a」と呼ぶ。図10および図11に示す例では、積層シート部6aは、前方部401、股下部402および後方部403に配置される。積層シート部6aでは、伸縮性樹脂フィルムである上部弾性部材44aと、不織布シートである第1外装シート41および第2外装シート42とが、積層されて熱接合されている。詳細には、積層シート部6aは、伸縮性樹脂フィルムである上部弾性部材44aと、不織布シートである第1外装シート41(または、第2外装シート42)と、上部弾性部材44aを間に挟んで当該不織布シートに接合される他の不織布シートである第2外装シート42(または、第1外装シート41)とを備える。
積層シート部6aは、伸縮性が異なる複数の領域を備える。図10および図11に示す例では、積層シート部6aは、伸縮性を有する第1領域61aと、第1領域61aよりも伸縮性が小さい第2領域62a,62b,62cとを備える。第2領域62a,62b,62cの伸縮性は同じであってもよく、異なっていてもよい。図10および図11に示す例では、第2領域62a,62b,62cは、実質的に伸縮性を有しない上述の非伸縮領域である。第1領域61aと第2領域62a,62b,62cとは連続する。図10および図11では、図の理解を容易にするために、第2領域62a,62b,62cに第1領域61aと異なる平行斜線を付し、第1領域61aと第2領域62a,62b,62cとの境界を二点鎖線にて示す。
第2領域62aは、上述の第2領域62と同様に、胴部開口11のエッジ111に沿う略帯状の領域である。第2領域62aは、前方部401および後方部403に位置する。第2領域62cは、吸収体20のおよそ全体と重なる略矩形状の領域である。第2領域62cは、前方部401から股下部402を経由して後方部403まで延びる。換言すれば、第2領域62cは、前方部401、股下部402および後方部403に位置する。第2領域62cは、吸収体20と略同じ大きさ、または、吸収体20よりも一回り大きい。
一対の第2領域62bは、一対の脚部開口12のエッジ121に沿う略帯状の領域である。各第2領域62bの上端部は、前方部401および後方部403に位置し、上端部以外の部位は、股下部402に位置する。各第2領域62bと第1領域61aとの境界線は、脚部開口12のエッジ121と略平行に延びる。当該境界線と脚部開口12のエッジ121との間の距離(すなわち、第2領域62bの幅)は、エッジ121に垂直な方向において、例えば、10mm以上かつ50mm以下であり、好ましくは、15mm以上かつ40mm以下である。
第1領域61aは、外装シート4の第2領域62a,62b,62cを除くおよそ全領域である。第1領域61aは、前方部401、股下部402および後方部403に亘って存在する。積層シート部6aの第1領域61aおよび第2領域62a,62b,62cの製造方法は、上述のステップS11~S13またはステップS21~S22と略同様である。
吸収性物品1aは、吸収性物品1と同様に、前方部401と、股下部402と、後方部403とを備える。前方部401は、着用者の腹側に位置する。後方部403は、着用者の背側に位置する。股下部402は、前方部401および後方部403から連続する。前方部401、股下部402および後方部403は、不織布シート(すなわち、第1外装シート41または第2外装シート42)と伸縮性樹脂フィルム(すなわち、上部弾性部材44a)とが熱接合された積層シート部6aを含む。積層シート部6aは、伸縮性を有する第1領域61aと、第1領域61aよりも伸縮性が小さ第2領域62a,62b,62cとを備える。第2領域62a,62b,62cは、第1領域61aに連続する。上記不織布シートと伸縮性樹脂フィルムとの熱接合時(ステップS12およびステップS13、または、ステップS22)において、第2領域62a,62b,62cに付与される単位面積当たりの熱量が、第1領域61aに付与される単位面積当たりの熱量よりも大きい。これにより、隣接領域(すなわち、第1領域61aおよび第2領域62a,62b,62c)における伸縮性の差を容易に実現することができる。
吸収性物品1aでは、吸収性物品1と同様に、前方部401の両端部と後方部403の両端部とが接合されることにより、胴部開口11および一対の脚部開口12が形成される。上述の例では、積層シート部6aの第2領域62aは、胴部開口11に沿う帯状の領域である。また、一対の第2領域62bは、一対の脚部開口12に沿う帯状の領域である。これにより、胴部開口11のエッジ111近傍の部位の伸縮性、および、一対の脚部開口12のエッジ121近傍の部位の伸縮性を、伸縮性樹脂フィルムを利用しつつ小さくすることができる。その結果、着用者の胴部および脚の付け根に対する締め付けを軽減し、吸収性物品1aの着用感を向上することができる。
吸収性物品1aでは、積層シート部6aの第2領域62cは、着用者からの排泄物を吸収する吸収体20と重なる位置に配置される。これにより、上部弾性部材44aの収縮による吸収体20の変形および吸収体20における皺の形成を抑制することができる。その結果、吸収体20による排泄物の吸収が好適に行われる。
吸収性物品1aでは、積層シート部6aは、伸縮性樹脂フィルムである上部弾性部材44aを間に挟んで上述の不織布シート(すなわち、第1外装シート41および第2外装シート42の一方)に接合される他の不織布シート(すなわち、第1外装シート41および第2外装シート42の他方)をさらに備える。これにより、上部弾性部材44aが外装シート4の表面に露出することが防止される。その結果、外装シート4を形成する際に、伸張状態の上部弾性部材44aと第1外装シート41および第2外装シート42との熱接合を、上部弾性部材44aを損傷することなく好適に行うことができる。したがって、吸収性物品1aの製造における歩留まりを向上することができる。
吸収性物品1aでは、第2領域62aおよび一対の第2領域62bのうち、いずれか一方のみが設けられていてもよい。換言すれば、第2領域は、胴部開口11または一対の脚部開口12に沿う帯状の領域であればよい。この場合であっても、吸収性物品1aの着用感を向上することができる。また、吸収性物品1aでは、第2領域62a,62b,62cのうち、いずれか1つのみが設けられてもよい。
吸収性物品1aでは、積層シート部6aは、前方部401、股下部402および後方部403の全てに設けられる必要はなく、前方部401、股下部402または後方部403に含まれていればよい。換言すれば、積層シート部6aは、前方部401、股下部402または後方部403の少なくとも一部であればよい。この場合であっても、上記と同様、積層シート部6aの隣接領域における伸縮性の差を容易に実現することができる。吸収性物品1においても同様である。
表1は、上述の積層シート部の製造条件と伸縮性との関係を実施例1~12について示す表である。実施例1~12では、2枚の不織布シートの間に伸張状態の伸縮性樹脂フィルムを挟んだ積層シートに対して、1組のエンボスロールおよびフラットロールにより一様に熱エンボス加工を行い、2枚の不織布シートと伸縮性樹脂フィルムとが好適に接合された(すなわち、吸収性物品1における使用に適切な接合強度にて接合された)シート部材を得た。
表1中の熱伝導率は、上述の積層シートの熱伝導率である。表1中の加工温度は、各シート部材の製造時におけるエンボスロールおよびフラットロールの外周面の温度である。エンボスロールおよびフラットロールの温度は同じである。表1中のライン速度は、各シート部材の製造において、エンボスロールとフラットロールとの間を通過する際の積層シートの移動速度である。
表1中の伝熱量は、エンボスロールおよびフラットロールから1秒間に積層シートに付与される単位面積当たりの熱量を示す。伝熱量は、積層シートの面積を積層シートの厚さにて除算した結果に、積層シートの熱伝導率、および、エンボスロールおよびフラットロールと積層シートとの温度差を乗算して求めた。なお、伝熱量は、加熱前の積層シートの温度を25℃として求めた。
表1中の熱量は、エンボスロールおよびフラットロールから積層シートに付与された単位面積当たりの熱量を示す。熱量は、上述の伝熱量に、エンボスロールおよびフラットロールによる積層シートの加熱時間を乗算して求めた。加熱時間は、上述のライン速度から求められる。表1では、熱量の小さい順に実施例を並べている。表1中の熱量割合は、実施例1の熱量に対する各実施例の熱量の割合を示す。実施例1の熱量は、2枚の不織布シートと伸縮性樹脂フィルムとを好適に接合するためのおよそ最小の熱量である。
熱量および熱量割合が比較的小さい実施例1~8では、熱エンボス加工後のシート部材は伸縮性を有しており、外力を加えない自然状態では収縮する。熱量および熱量割合が比較的大きい実施例9~12では、熱エンボス加工後のシート部材は、実質的に伸縮性を有しない非伸縮性のシート部材である。
以上の実施例から、積層シート部6の製造において、伸縮性を有する第1領域61と、非伸縮領域である第2領域62とを形成する場合、第2領域62に付与される単位面積当たりの熱量は、第1領域61に付与される単位面積当たりの熱量の2.1倍以上であることが好ましい。また、積層シート部6の過剰加熱の防止という観点からは、第2領域62に付与される単位面積当たりの熱量(以下、「付与熱量」とも呼ぶ。)は、第1領域61aの付与熱量の10倍以下であることが好ましい。より好ましくは、第2領域62の付与熱量は、第1領域61の付与熱量の2.1倍以上かつ5.2倍以下である。積層シート部6aの製造において、伸縮性を有する第1領域61aと、非伸縮領域である第2領域62a,62b,62cとを形成する場合においても同様である。
上述の吸収性物品1,1aでは、様々な変更が可能である。
例えば、積層シート部6の第2領域62は、実質的に伸縮性を有しない非伸縮領域である必要はなく、第1領域61の伸縮性よりも小さい伸縮性を有する伸縮領域であってもよい。積層シート部6aの第2領域62a,62b,62cにおいても同様である。
第1外装シート41および第2外装シート42と上部弾性部材44,44aとの熱接合は、必ずしも熱エンボス加工により行われる必要はなく、他の様々な方法(例えば、光等の電磁波の照射による非接触加熱)により行われてもよい。
上部弾性部材44,44aは、少なくとも1枚の不織布シートに熱接合されていればよく、必ずしも、当該不織布シートと他の不織布シートとの間に挟まれる必要はない。例えば、吸収性物品1,1aでは、上部弾性部材44,44aの一部または全体が、第1外装シート41と重なっておらず、第1外装シート41から露出していてもよい。
吸収性物品1,1aの平面視における形状は、必ずしも砂時計型には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、吸収性物品1,1aの平面視における形状は、略矩形または略長円形であってもよい。吸収体20の平面視における形状は、必ずしも矩形には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、吸収体20の平面視における形状は、砂時計型または略長円形であってもよい。
上述の吸収性物品1,1aの構造は、パンツタイプの使い捨ておむつ以外の吸収性物品に適用されてもよい。例えば、吸収性物品1,1aの上記構造は、テープタイプの使い捨ておむつ、または、尿パッド等の補助吸収具に適用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。