JP7067683B1 - 紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤、並びに該コーティング剤のコーティング層を有する紙基材、プラスチック基材、容器及び包装材 - Google Patents

紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤、並びに該コーティング剤のコーティング層を有する紙基材、プラスチック基材、容器及び包装材 Download PDF

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Abstract

バインダー樹脂(A)と、光触媒(B)及び水性媒体(C)を含有し、光触媒(B)が、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有し、結晶性ルチル型酸化チタンが、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンであり、酸化チタン中における結晶性ルチル型酸化チタンの含有量が50モル%以上、アナターゼ型酸化チタンの含有量が50モル%未満である光触媒であり、コーティング剤固形分全量に対し、光触媒(B)0.5~80質量%含有することを特徴とする、紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤を提供する。

Description

本発明は、紙基材用又はプラスチック基材用の水性コーティング剤、並びに該水性コーティング剤を用いたコーティング層を有する紙基材、プラスチック基材、容器及び包装材に関する。
近年、様々な基材表面への機能性付与が求められており、プラスチック材料、紙材料、成形品、フィルム基材、容器、包装材等の表面特性の改良に必要とされている。これらの機能を基材表面に付与する方法として、表面に各種機能を有する高分子フィルム等を貼り付けるという方法が、広く知られている。しかし、この方法は、フィルム張り付けに手間がかかり、基材との密着性、加工性も不充分な場合が多く、またコスト的にも高価であった。
一方、これらの基材表面への機能性付与として、コーティングによりこれらの機能を発現させる方法も知られている。コーティング法は成形や加工前の基材はもとより、成型後や加工後の基材へ、所望する部分のみへの付与も可能であることから利便性が高い、一方でフィルムに比べて機能性、耐性が劣る場合も多い。
基材として、特に食品包装や生活コーティング消費材にはポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム等のフィルム基材が多用されている。また、近年では、マイクロプラスチックを始めとする海洋プラスチックごみ問題がクローズアップされる中で、「再利用可能」「生分解性を有する」などの機能を持つ素材の一つとして、再生可能な資源である「木」を原料とする「紙」の利用が増加しているる。これらの基材には、撥水、撥油、防汚、帯電防止、反射防止、擦り傷防止等といった物理的機能性の他、最近では衛生的機能、例えば抗菌性、抗ウイルス性といった機能も所望され、特に新型インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)、ノロウイルスなど、ウイルス感染対策として抗ウイルス性(ウイルス不活化性)対策は急務となっている。
抗ウイルス性能を有するコーティング剤としては、例えば銀、亜鉛及び銅から選ばれる一種以上の酸化物と、モリブデン酸化物の複塩を含有する抗ウイルス性コーティング剤が知られている(例えば特許文献1参照)。
抗ウイルス性を有する材料としては、例えば光触媒が知られており、例えば光触媒等の抗ウイルス性を有する材料を固着させた布帛が知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら光触媒を使用した紙基材用又はプラスチック基材用のコーティング剤はまだ知られていない。
一方、近年では、環境問題、省資源、労働安全性、及び防災等の見地から、できるだけ有機溶剤を使用しない水性タイプのコーティング剤が求められている。しかし、水性タイプのコーティング剤を、布帛に比べて浸透性の低いプラスチック又は紙にコーティングした場合、密着性や耐摩擦性に劣る傾向がある。特に、特許文献1や特許文献2に記載のような抗ウイルス剤を含有する場合は、密着性及び耐摩擦性がより低下しやすくなる。そのため、プラスチック基材や紙基材に対する密着性及び耐摩擦性に優れ、抗ウイルス性を有する水性のコーティング剤が求められている。
特開2018-172306号公報 特開2017-155368号公報
本発明の課題は、紙基材又はプラスチック基材に対して容易に抗ウイルス性を付与可能な、水性媒体を使用した紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤、並びに該コーティング剤のコーティング層を有する紙基材、プラスチック基材、容器及び包装材を提供することにある。
即ち、本発明は、バインダー樹脂(A)と、光触媒(B)及び水性媒体(C)を含有し、
前記光触媒(B)が、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有し、
前記結晶性ルチル型酸化チタンが、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンであり、
前記酸化チタン中における前記結晶性ルチル型酸化チタンの含有量が50モル%以上、アナターゼ型酸化チタンの含有量が50モル%未満である光触媒であり、
コーティング剤固形分全量に対し、前記光触媒(B)0.5~80質量%含有することを特徴とする、紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤を提供する。
また本発明は、前記記載のコーティング剤を紙基材及びフィルムにコーティングした紙基材又はプラスチック基材を提供する。
また本発明は、前記記載の紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材を提供する。
本発明により、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、紙基材、包装材等の基材に、コーティングによって容易に抗ウイルス性を付与できる。本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は水性媒体を用いるので、環境に優しく安全性に優れている。また、本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤はレベリング性に優れ、また、泡立ちが抑制されていることから、生産性を向上できる。
本発明について詳細に説明する。
(言葉の定義)
本発明において「部」とは全て「質量部」を示し、「%」とは全て「質量%」を示す。また、「コーティング剤全量」とは、水性媒体、有機溶剤等の揮発性成分をすべて含んだコーティング剤の全量を示し、「コーティング剤固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
(バインダー樹脂(A))
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤に使用するバインダー樹脂(A)としては、特に限定なく一般の水性リキッド印刷インキに使用される、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム-アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル共重合体;スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン-アクリル酸樹脂;スチレン-マレイン酸;スチレン-無水マレイン酸;ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体;酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びこれらの塩を使用することができる。これらは所望の物性に応じて適宜併用することもできる。
なかでも、前記バインダー樹脂として、アクリル樹脂またはウレタン樹脂の少なくとも一種を使用することが、入手しやすく好ましい。
(アクリル樹脂)
前記アクリル樹脂としては、特に制限はなく、(メタ)アクリレートの単独重合または共重合、及び(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーとを共重合させたコポリマーがあげられる。また水分散性や水溶性を付与する目的から酸価を有するコポリマーであることが好ましい。
尚本発明において「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方または両方を指し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれか一方または両方を指す。
(メタ)アクリレートや(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-ヒドロドキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキルポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素系(メタ)アクリレート;スチレン、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチレン、(p-ビニルフェニル)メチルスルフィド、p-ヘキシニルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ナフチルビニルピリジン等のビニルピリジン化合物;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン等の共役ジエンなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
また、カルボキシル基及びカルボキシル基が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基を導入することを目的として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、酸価を有するコポリマーを得ることができる。
酸性基を導入する場合は、後述で詳細に述べるが酸価が所望の範囲となるようにモノマー量を適宜調整することが好ましい。
前記コポリマーは、例えば、重合開始剤の存在下、50℃~180℃の温度領域で各種モノマーを重合させることにより製造することができ、80℃~150℃の温度領域であればより好ましい。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。
本発明で使用するコポリマーはコアシェル型であってもよい。本発明においてコアシェル型樹脂は、重合体(a2)が重合体(a1)によって水性媒体中に分散された状態を指し、通常、重合体(a1)が樹脂粒子の最外部に存在することでシェル部を形成し、重合体(a2)の一部または全部がコア部を形成したものであることが多い。以後本発明において、シェル部を形成する樹脂を重合体(a1)とし、コア部を形成する樹脂を重合体(a2)と称す。
〔シェル部を構成する重合体(a1)〕
本発明で使用するコアシェル型樹脂は、シェル部を構成する重合体(a1)について、カルボキシル基及びそれを中和して形成されるカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の親水性基を有するアクリル樹脂を含むものによって構成されていることが好ましい。その際、シェル部の酸価は40mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、120mgKOH/g以下がなお好ましい。
前記、シェル部を構成する重合体(a1)のカルボキシル基は、塩基性化合物によって中和されカルボキシレート基を形成することが好ましい。
前記、中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等を使用することができ、アンモニア、トリエチルアミンを使用することが、塗膜の耐温水性、耐食性及び耐薬品性をより一層向上するうえで好ましい。
前記塩基性化合物の使用量は、得られるコアシェル型樹脂の水分散安定性をより一層向上するうえで、前記重合体(a1)が有するカルボキシル基の全量に対して[塩基性化合物/カルボキシル基]=0.2~2(モル比)となる範囲で使用することが好ましい。
前記、重合性不飽和二重結合を有するモノマーのうち、カルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルモノマーを重合して得られるものを使用することが好ましい。特に、前記重合体(a1)としては、前記重合体(a1)のガラス転移温度(Tg1)を20℃~100℃の範囲に調整するうえで、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を組み合わせ重合して得られるものを使用することが、造膜性に優れ、かつ、耐温水性、耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成するうえでより好ましい。
〔コア部を構成する重合体(a2)〕
前記、コア部を構成する重合体(a2)は、前述のアクリル樹脂と同様のアクリルモノマー等のコポリマーを使用することができる。
この際、コア部の重量平均分子量は200,000~3,000,000の範囲であることが好ましく、800,000以上がなお好ましい。Tgは-30℃~30℃の範囲であることが好ましい。
前記、コア部を構成する重合体(a2)は、前述のアクリル樹脂と同様のアクリルモノマー等のコポリマーを使用することができるが、中でも、水性媒体で製造することが好ましい。具体的には、前記、モノマーと重合開始剤等とを、水性媒体を含有する反応容器に一括供給または逐次供給し重合することによって製造することができる。その際、予め前記モノマーと水性媒体と必要に応じて反応性界面活性剤等とを混合することでプレエマルジョンを製造し、それと重合開始剤等とを、水性媒体を含有する反応容器に供給し重合してもよい。
前記、重合体(a2)を製造する際に使用可能な重合開始剤としては、例えば過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等のラジカル重合開始剤、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤は、後述する還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用しても良い。
前記過硫酸塩としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等を使用することができる。前記、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
また、前記還元剤としては、例えば、アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩(ナトリウム塩等)、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等を使用することができる。
重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、得られる塗膜の優れた耐食性を維持する観点から、少ない方が好ましく、ビニル重合体(a2)の製造に使用するモノマーの全量に対して、0.01質量%~0.5質量%とすることが好ましい。また、前記重合開始剤を前記還元剤と併用する場合には、それらの合計量の使用量も前記した範囲内であることが好ましい。
また、前記プレエマルジョンを製造する際には、反応性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等を使用してもよい。
前記コポリマーの酸価は、酸価20mgKOH/g以上、120mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは酸価25mgKOH以上である。酸価が20mgKOH/g以上であれば、硬化剤添加時、積層体の耐摩擦性、耐水摩擦性、及び耐スクラッチ性を向上する事が出来る。
尚、ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示す。
前記コポリマーの重量平均分子量は、5,000~100,000の範囲のものが好ましい。重量平均分子量5,000以上であれば、樹脂皮膜の耐熱性が低下することなく、積層体の耐摩擦性、及び耐水摩擦性を保持できる傾向にある。100,000以下であれば、積層体の基材密着性、耐スクラッチ性が兼備できる傾向にある。
前記コポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃~55℃の範囲である事が好ましい。前記コポリマーのTgが0℃以上であれば、皮膜強度が保たれ、積層体の耐水摩擦性が低下することなく、また55℃以下であれば、他の印刷層との相溶性が低下する事なく、積層体の耐摩擦性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性が良好に保たれる傾向にある。
尚、前記ガラス転移温度(Tg1)は、いわゆる計算ガラス転移温度を指し、下記の方法で算出された値を指す。
(式1) 1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・(Wn/Tn)
(式2) Tg(℃)=Tg(K)-273
式1中のW1、W2、・・・Wnは、重合体の製造に使用したモノマーの合計質量に対する各モノマーの質量%を表し、T1、T2、・・・Tnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。なお、T1、T2、・・Tnの値は、Polymer Handbook(Fourth Edition,J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke 編)に記載された値を用いる。
また、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が前記Polymer Hand Bookに記載されていないもののガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC Q-100」(TA Instrument社製)を用い、JIS K7121に準拠した方法で測定した。具体的には、真空吸引して完全に溶剤を除去した重合体を、20℃/分の昇温速度で-100℃~+200℃の範囲で熱量変化を測定し、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点をガラス転移温度とした。
(ウレタン樹脂)
前記ウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオール等のポリオールと、アニオン性基、カチオン性基、ポリオキシエチレン基やポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン基である親水性基を有するポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂等が挙げられる。また前記ウレタン樹脂の重量平均分子量は特に限定ないが、一般に5000~200000であるものであればよく20000~150000であることがより好ましい。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ショ糖、アコニット糖、フェミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3-プロパントリチオール等の活性水素基を2個以上有する化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロフェキシレン等の環状エーテル化合物を付加重合したもの、又は、前記環状エーテル化合物をカチオン触媒、プロトン酸、ルイス酸等を触媒として開環重合したものが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールは、ジオール化合物、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸化合物等の脱水縮合反応、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応、及びこれらの反応によって得られるポリエステルを共重合させることによって得られる。このポリエステルポリオールの原料となるジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
また、前記ポリエステルポリオールの原料となるジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸等が挙げられる。
前記ポリエステルポリオールの原料となるヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルと、低分子量のポリオール、好ましくは直鎖脂肪族ジオールとを反応させて得られるものを使用することができる。
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ-ト等を使用することできる。
前記炭酸エステルと反応しうる低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、4,4’-ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
ポリカーボネート構造は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂の製造に使用するポリオール及び前記ポリイソシアネートの合計質量に対して、10質量%~90質量%の範囲で使用することが好ましい。
また、前記ウレタン樹脂は、コーティング剤中における分散安定性を付与するうえで親水性基を有する。前記親水性基としては、一般にアニオン性基やカチオン性基、ノニオン性基といわれるものを使用することができるが、なかでもアニオン性基やカチオン性基を使用することが好ましい。
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散性を維持するうえで好ましい。
前記アニオン性基としてのカルボキシル基やスルホン酸基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等が挙げられる。
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができる。前記3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸等を使用することができる。また、前記3級アミノ基の一部又は全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類を使用することができる。
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。なかでもオキシエチレン単位を有するポリオキシアルキレン基を使用することが、親水性をより一層向上させるうえで好ましい。
前記親水性基は、前記ウレタン樹脂全体に対して0.5質量%~30質量%存在することがより一層良好な水分散性を付与し、1質量%~20質量%の範囲であることがより好ましい。
また所望される物性によって後述する架橋剤を使用することができる。前記架橋剤を使用する場合、前記ウレタン樹脂としては、前記架橋剤の有する官能基と架橋反応しうる官能基を有するものを使用することが好ましい。
前記官能基としては、前記親水性基として使用可能なカルボキシル基やカルボキシレート基等が挙げられる。前記カルボキシル基等は、水性媒体中においてウレタン樹脂の水分散安定性に寄与し、それらが架橋反応する際には、前記官能基としても作用し、前記架橋剤の一部架橋反応しうる。
前記官能基としてカルボキシル基等を使用する場合、前記ウレタン樹脂としては、2~55の酸価を有するものであることが好ましく、15~50の酸価を有するものを使用することが、堅牢性を向上するうえで好ましい。なお、本発明でいう酸価は、前記ウレタン樹脂の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
前記ウレタン樹脂は、例えばポリオールとポリイソシアネートと、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって製造することができる。
前記鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジッド-プロピル-カルバジン酸エステル、セミカルバジッド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を使用することができる
前記鎖伸長剤は、例えば前記鎖伸長剤の有するアミノ基及び活性水素原子含有基の当量が、前記ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基の当量に対して、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.0~1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましく、より好ましくは0.5質量%が好ましい
前記鎖伸長剤は、前記ポリオールとポリイソシアネートを反応させる際、または、反応後に使用することができる。また、前記で得たウレタン樹脂を水性媒体中に分散させ水性化する際に、前記鎖伸長剤を使用することもできる。
また、上記以外のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の比較的低分子量のポリオールが挙げられる。これらの前記ポリオールは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記ポリオールと反応しウレタン樹脂を形成するポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等を、単独で使用または2種以上を併用して使用することができる。
前記バインダー樹脂は、本発明のコーティング剤の固形分換算で5~50質量%であることが好ましい。5質量%以上であれば、コーティング膜強度が低下することもなく、基材密着性、耐水摩擦性等も良好に保たれる。反対に50質量%を以下であれば、抗ウイルス性、抗菌性が低下する事が抑制でき、また高粘度となる事が避けられ、作業性が低下することもない。中でも5~40質量%であることがなお好ましく、5~20質量%であることが最も好ましい。
(光触媒(B))
光触媒(B)は、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する光触媒であって、前記結晶性ルチル型酸化チタンが、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンであり、前記酸化チタン中における前記結晶性ルチル型酸化チタンの含有量が50モル%以上、アナターゼ型酸化チタンの含有量が50モル%未満である光触媒である。
ルチル型でありかつ結晶性の高い結晶性ルチル型酸化チタンと2価銅化合物とを組み合せて用いることにより、明所及び暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性に優れる光触媒(可視光領域で抗ウイルス性等の光触媒活性を有する可視光応答型光触媒)を得ることができる。また、2価銅化合物は1価銅化合物のように酸化による変色のおそれが少ないため、経時的な変色も抑制することができる。
なお、本発明において、「明所」とは、可視光の存在する箇所のことをいい、「暗所」とは、光の存在しない箇所のことをいう。
ここで、光触媒活性とは、光誘起分解性及び光誘起親水化性から選ばれる少なくとも1種を意味する。光誘起分解性とは、酸化チタンで処理された表面に吸着している有機物を酸化分解する作用であり、光誘起親水化性とは、酸化チタンで処理された表面が水となじみ易い親水性になる作用である。この光誘起親水化性は、光励起によって生成し、拡散してきた正孔により、酸化チタン表面の水酸基が増加することによって起こると考えられる。
また、ウイルスとは、DNAウイルス及びRNAウイルスを意昧するが、細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ(以下、「ファージ」と略記することもある)も包含する。
次に、光触媒(B)の各成分について説明する。
(酸化チタン)
光触媒(B)に用いる酸化チタンは、結晶性ルチル型酸化チタンを含むものである。
本発明において、結晶性ルチル型酸化チタンとは、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンのことを意味する。
半値全幅が0.65度よりも大きいと、結晶性が悪くなり、暗所における抗ウイルス性が十分に発現しなくなる。この観点から、半値全幅は、好ましくは0.6度以下であり、より好ましくは0.5度以下であり、更に好ましくは0.4度以下であり、より更に好ましくは0.35度である。
酸化チタン中における、結晶性ルチル型酸化チタンの含有量(以下、「ルチル化率」ということがある)は、50モル%以上である。含有量が50モル%以上であると、得られる光触媒の、明所及び暗所における抗ウイルス性が十分なものとなり、また、明所における有機化合物分解性や、特に可視光応答性も十分なものとなる。この観点から、ルチル化率は、好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは94モル%以上である。このルチル化率は、後述するとおり、XRDによって測定した値である。
上記観点から、酸化チタン中におけるアナターゼ型酸化チタンの含有量(以下、「アナターゼ化率」ということがある)は少ないことが好ましく、アナターゼ化率は、50モル%未満であり、好ましくは10モル%未満であり、より好ましくは7モル%未満であり、更に好ましくは0モル%(すなわち、アナターゼ型酸化チタンを含まない)である。このアナターゼ化率もルチル化率と同様に、XRDによって測定した値である。
酸化チタンの比表面積は、好ましくは1~200m/gである。1m/g以上であると、比表面積が大きいためウイルス、菌及び有機化合物との接触頻度が大きくなり、得られる光触媒の、明所及び暗所における抗ウイルス性や、有機化合物分解性及び抗菌性が優れる。一方、200m/g以下であると、取扱性に優れている。これらの観点から、酸化チタンの比表面積は、より好ましくは3~100m/gであり、更に好ましくは4~70m/gであり、特に好ましくは8~50m/gである。ここで比表面積とは、窒素吸着によるBET法にて測定した値である。
酸化チタンには、気相法で製造されたものと液相法で製造されたものがあり、そのいずれを用いることもできるが、気相法で製造された酸化チタンがより好適である。
気相法は、四塩化チタンを原料として、酸素との気相反応により酸化チタンを得る方法である。気相法で得られた酸化チタンは、粒子径が均一であると同時に、製造時に高温プロセスを経由しているため、結晶性が高いものとなる。その結果、得られる光触媒の、明所及び暗所における抗ウイルス性や、有機化合物分解性及び抗菌性が良好なものとなる。
一方、液相法は、塩化チタン、硫酸チタニルなどの酸化チタン原料を溶解した液を、加水分解または中和して酸化チタンを得る方法である。液相法で製造された酸化チタンは、ルチルの結晶性が低く比表面積が大きくなる傾向にあり、この場合、焼成等を行って最適な結晶性及び比表面積を有する酸化チタンにすればよいが、手間がかかるため、気相法の方がより好適である。
酸化チタンとしては、市販されている酸化チタンをそのまま使用するほうが、触媒調製の工程を考えると有利である。
(2価銅化合物)
光触媒(B)は、2価銅化合物を含む。この2価銅化合物単独では、明所及び暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性、可視光応答性を有しないが、前述した結晶性ルチル型酸化チタンと組み合わせることにより、明所及び暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性、及び可視光応答性が十分に発現する。また、この2価銅化合物は、1価銅化合物と比べて酸化等による変色が少ないため、この2価銅化合物を用いた光触媒は、変色が抑制される。
2価銅化合物には、特に限定はなく、2価銅無機化合物及び2価銅有機化合物の1種又は2種が挙げられる。
2価銅無機化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、沃素酸銅、過塩素酸銅、シュウ酸銅、四ホウ酸銅、硫酸アンモニウム銅、アミド硫酸銅及び塩化アンモニウム銅、ピロリン酸銅、炭酸銅からなる2価銅の無機酸塩、塩化銅、フッ化銅及び臭化銅からなる2価銅のハロゲン化物、並びに酸化銅、硫化銅、アズライト、マラカイト及びアジ化銅からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
2価銅有機化合物としては、2価銅のカルボン酸塩が挙げられる。この2価銅のカルボン酸塩としては、蟻酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ペラルゴン酸銅、カプリン酸銅、ミスチン酸銅、パルミチン酸銅、マルガリン酸銅、ステアリン酸銅、オレイン酸銅、乳酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅、イソフタル酸銅、テレフタル酸銅、サリチル酸銅、メリト酸銅、シュウ酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、グルタル酸銅、アジピン酸銅、フマル酸銅、グリコール酸銅、グリセリン酸銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、イソ吉草酸銅、β‐レゾルシル酸銅、ジアセト酢酸銅、ホルミルコハク酸銅、サリチルアミン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅、セバシン酸銅及びナフテン酸銅からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。その他の2価銅有機化合物としては、オキシン銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅、フタロシアニン銅、銅エトキシド、銅イソプロポキシド、銅メトキシド、及びジメチルジチオカルバミン酸銅からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
上記2価銅化合物のうち、好ましくは酸化銅、2価銅のハロゲン化物、2価銅の無機酸塩及び2価銅のカルボン酸塩の1種又は2種以上であり、例えば2価銅のハロゲン化物、2価銅の無機酸塩及び2価銅のカルボン酸塩の1種又は2種以上である。
また、2価銅化合物としては、下記一般式(1)で表される2価銅化合物が挙げられる。
Cu(OH)X (1)

一般式(1)において、Xは陰イオンであり、好ましくはCl、Br、I等のハロゲン、CHCOO等のカルボン酸の共役塩基、NO、(SO1/2等の無機酸の共役塩基、又はOHである。
これらの2価銅化合物のうち、より不純物が少なく、経済的な観点から、2価銅無機化合物がより好ましく、酸化銅が更に好ましい。また、上記一般式(1)で表される2価銅化合物も好ましい。2価銅化合物は、無水物であっても水和物であってもよい。
2価銅化合物の銅換算含有量は、前記酸化チタン100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部である。0.01質量部以上であると、明所及び暗所における抗ウイルス性、有機化合物分解性及び抗菌性が良好なものとなる。また、20質量部以下であると、酸化チタン表面が被覆されてしまうことが防止されて光触媒としての機能(有機化合物分解性、抗菌性等)が良好に発現すると共に、少量で抗ウイルス性能を向上することができて経済的である。この観点から、2価銅化合物の銅換算含有量は、酸化チタン100質量部に対して、より好ましくは0.1~20質量部であり、更に好ましくは0.1~15質量部であり、より更に好ましくは0.3~10質量部である。
ここで、この酸化チタン100質量部に対する2価銅化合物の銅換算含有量は、2価銅化合物の原料と酸化チタンの原料との仕込み量から算出することができる。また、この銅換算含有量は、後述するICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析により光触媒を測定することで特定することもできる。
光触媒(B)は、前述のとおり、必須成分として、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有するが、本発明の目的を阻害しない範囲内において、他の任意成分を含有していてもよい。ただし、光触媒としての機能及び抗ウイルス性能の向上の観点から、光触媒(B)中における当該必須成分の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
光触媒(B)は、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと、2価銅化合物原料とを混合する混合工程を実施することにより、製造することができる。また、この混合工程によって得られた混合物を熱処理する熱処理工程を更に実施して、光触媒を得てもよい。また、銅化合物の水溶液中に酸化チタンを懸濁させて、吸着させることによって、光触媒を得ることもできる。具体的には、光触媒(B)は、特許第5343176号公報に記載の方法により製造できる。
光触媒(B)の一次粒子径は概ね200~400nmの範囲、2次粒子径は概ね3~10μ程度であると、コーティング剤に分散でき且つ抗ウイルス性等の光触媒活性に優れることから好ましい。
なお1次粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した値である。
光触媒(B)は、抗ウイルス性等の光触媒活性を発現するために、本発明のコーティング剤固形分全量に対し、0.5質量%以上含有することが好ましく、1質量%以上含有することが好ましく、5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することが好ましい。一方、密着性及び耐摩擦性の低下を防ぐために、光触媒(B)は本発明のコーティング剤固形分全量に対し、80質量%以下含有することが好ましく、60質量%以下含有することが好ましく、55質量%以下含有することが好ましく、50質量%以下含有することが好ましく、30質量%以下含有することが好ましく、20質量%以下含有することが最も好ましい。
(水性媒体(C))
本発明のコーティング剤に使用される水性媒体(C)は、水を主成分とする水性媒体であり、有機溶剤を含有してもよい。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び有機溶剤との混合物を用いても良いが、環境負荷低減と安全性向上の観点から、有機溶剤の使用量はできる限り少ないことが好ましい。
有機溶剤を含有する場合は、コーティング剤全量中、有機溶剤を30質量%以下で含有することが好ましく、5質量%以下で含有することが好ましい。
使用可能な有機溶剤としては特に限定はないが、例えば、水と混和する有機溶剤が好ましく、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、メチルエチルケトン、
メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール(以下、NPAとも記載する)、イソプロピルアルコール(以下、IPAとも記載する)等の単官能アルコール、各種ジオール、グリセリン等の多価アルコール、
エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2ブタンジオール、3-メチル―1,3ブタンジオール、1、2ペンタンジオール、2-メチル―1,3プロパンジオール、1,2ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール、
ビスフェノールA、ビスフェノールAの炭素数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物である芳香族ジオール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオールポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、シクロヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチル3333エーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチルカルビトール、γ-ブチロラクトン、等が挙げられる。これらは1種で使用してもよく複数種混合して使用してもよく限定はない。
中でも、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール(以下、NPAとも記載する)、イソプロピルアルコール(以下、IPAとも記載する)、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ2-プロパノール)(PGMとも記載する)、エチレングリコールが好ましい。
(界面活性剤)
本発明においては、所望の物性に応じて、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤としては特に限定なく本技術分野において汎用の界面活性剤を使用することができるが、中でも、アセチレン系界面活性剤やアルコールアルコキシレート系界面活性剤が好ましい。
本発明で使用するアセチレン系界面活性剤として具体的には、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール等が挙げられる。又、市販品としては、サーフィノール61、82、104(いずれも、エアープロダクツ社製)等 のアルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤や、
サーフィノール420、440、465、485、TG、2502、ダイノール604、607、サーフィノールSE、MD-20、オルフィンE1004、E1010、PD-004、EXP4300、PD-501、PD-502、SPC(いずれも、日信化学工業(株)製)、アセチレノールEH、E40、E60、E81、E100、E200(いずれも、川研ファインケミカル(株)製)等のアルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。中でもアルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
また、本発明で使用するアルコールアルコキシレート系界面活性剤として具体的には、
DYNWET800(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
これらアセチレン系界面活性剤、アルコールアルコキシレート系界面活性剤は各々単独で使用してもよいし、2つ以上組み合わせて使用してもよい。
これらアセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量の総量がコーティング剤全量の0.1~1質量%である事が好ましい。これらのアセチレン系界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2つ以上組み合わせて使用しても良く、アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量の総量がコーティング剤全量の0.1質量%以上であれば、基材との塗れ性が向上し基材との密着性を保持する事ができる。アセチレン系界面活性剤及び/又はアルコールアルコキシレート系界面活性剤の添加量の総量がコーティング剤全量の1質量%以下であれば、耐摩耗性、耐水性摩耗性、及び耐スクラッチ性が低下する事もない。
更に必要に応じ、その他アクリルポリマー系界面活性剤(例えばポリフローWS-314共栄社化学(株)社製)や、変性シリコーン系界面活性剤(例えばポリフローKL-401共栄社化学(株)社製)を使用してもよい。
使用する界面活性剤の総量は前記理由からコーティング剤全量の0.1~1質量%である事が好ましい。
(ワックス)
本発明においては、所望の物性に応じて、ワックスを添加することもできる。ワックスとしては、炭素系ワックスが好ましく、炭素ワックスとしては流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、エチレン-プロピレン共重合体ワックス、4フッ化エチレン樹脂ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられる。これらのワックスは、単独で使用してもよいし、2つ以上組み合わせて使用しても良く、これらワックスの添加量の総量がコーティング剤全量の0.5~5質量%である事が好ましい。ワックスの添加量の総量がインキ全量の0.5質量%以上であれば、耐摩耗性、耐水性摩耗性、耐スクラッチ性を保持する事ができ、且つ、光触媒(B)の分散性を向上させることができる。ワックスの添加量の総量がコーティング剤全量の5質量%以下であれば、基材との密着性、耐摩耗性、耐水性摩耗性、及び耐スクラッチ性を保持する事ができる。
(硬化剤)
本発明においては、所望の物性に応じて、硬化剤を添加することもできる。 本発明で使用する酸と反応しうる硬化剤としては、特に限定されることはなく水性媒体中で使用可能な酸基と反応しうる公知の硬化剤を使用することができる。例えば、エポキシ系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。
前記エポキシ系硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
前記カルボジイミド系硬化剤は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
前記オキサゾリン系硬化剤は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン系硬化剤としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
前記エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
本発明で使用する硬化剤の添加量は、コーティング剤全量の固形分換算で0.1~10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~9.0質量%の範囲である。
添加量が0.1質量%以上であれば硬化剤としての効果が得られる一方、10.0質量%以下であれば、基材密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性が保持される傾向となる。
本発明においては、その他、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。中でも耐摩擦性、滑り性等を付与するためのオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド類及びコーティング時の発泡を抑制するためのシリコン系、非シリコン系消泡剤、及び光触媒(B)の分散性向上のために各種分散剤等が有用である。
また、本発明のコーティング剤は着色剤を含有してもよい。着色剤としては一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている染料、無機顔料、有機顔料を挙げることができる。中でも無機顔料や有機顔料等の顔料が好ましい。
(紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤の製造方法)
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は、前記バインダー樹脂(A)や光触媒(B)等を水性媒体(C)中に撹拌混合することにより得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は、一般的なコーティング方法によりプラスチック材料、紙、成形品、フィルム基材、包装材等の基材にコーティング可能である、具体的には、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。中でも工業的観点から、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)を使用することが好ましい。
また、基材を本発明のオーバーコーティング剤に含浸させることにより、基材上にコーティング層を設けてもよい。
本発明のコーティング剤を、フレキソコーターを用いてコーティングする場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#4を使用し25℃にて7~40秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。
一方で本発明のコーティング剤を、グラビアコーターを用いてコーティングする場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて14~30秒であればよく、より好ましくは15~20秒である。
本発明のコーティング層の厚みは、用途や基材の材質により適宜調整できるが、例えば0.1μm~5μmの範囲が好ましく、0.3μm~3μmの範囲が好ましく、0.5~2μmの範囲が好ましい。
本発明のコーティング剤は分散性に優れていることから、該コーティング剤を用いて形成されたコーティング層において、光触媒(B)の一部が露出される構造となりやすい。そのため、本発明におけるコーティング層は抗ウイルス機能を最大限に発揮することができる。
(コーティング層を有する基材、容器、包装材)
本発明で使用する基材は、紙基材またはプラスチック基材である。
紙基材は、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
プラスチック基材としては、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材に使用される基材であればよいが、特に、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)を使用する場合には、グラビア・フレキソ印刷分野で通常使用されているフィルム基材をそのまま使用できる。
具体的には例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
基材フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
また基材は、前記紙基材やフィルム基材をドライラミネート法や無溶剤ラミネート法、あるいは押出ラミネート法により積層させた積層構造を有する積層体(積層フィルムと称される場合もある)であっても構わない。また該積層体の構成に、金属箔、金属蒸着膜層、無機蒸着膜層、酸素吸収層、アンカーコート層、印刷層、ニス層等があっても構わない。このような積層体は用途に応じて多種存在するが、現在食品包装用や生活用品に最も多く使用される構成は、紙基材やフィルム基材を(F)と表現し、印刷やニス層を(P)と表現し、金属箔や蒸着膜層の金属あるいは無機層を(M)と表現し、接着剤層を(AD)、ホットメルト接着剤やヒートシール剤やコールドシール剤を(AD2)と表現すると、積層フィルムの具体的態様として以下の構成が考えられるが、もちろんこれに限定されることはない。
(F)/(P)/(F)
(F)/(P)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)、
(F)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(M)/(P)/(AD)/(M)、
(M)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(P)/(F)
(P)/(F)/(P)
(P)/(F)/(AD)/(F)、
(P)/(F)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(F)/(AD2)
(F)/(P)/(AD2)
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD2)
前記単層の紙基材あるいはフィルム基材、積層構造を有する積層体は、業界や使用方法等により、機能性フィルム、軟包装フィルム、シュリンクフィルム、生活用品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、食品包装用フィルム、、カートン、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等様々な表現がなされているが、本発明の紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤は特に限定なく使用することができる。この際本発明の紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤は、これらを使用した容器や包装材とした際に最表層となる面にコーティングされることが好ましい。
前述の通り、積層構造を有する積層体として、紙基材やフィルム基材には印刷層が施された印刷層を有する積層体も多いが、本発明のコーティング剤は、該印刷インキ層を有する基材上にコーティングすることももちろんでき好ましい。
印刷インキ層に使用される印刷インキには特に限定はなく、オフセット平版インキ、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキ等の印刷層上にコーティングは可能である。特に、コーティング方法ついてグラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)を使用する場合には、インライン印刷が可能であり、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキと組み合わせることが、工業的に好ましい。
グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ(以後リキッド印刷インキと称する)は、バインダー樹脂、顔料、溶剤、必要に応じて添加剤からなる印刷インキから形成される。
(リキッド印刷インキ)
グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキとして使用されるリキッド印刷インキは、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別される。
(有機溶剤型リキッド印刷インキ)
有機溶剤型リキッド印刷インキは、本発明で使用する変性顔料の他、後述のバインダー樹脂、有機溶剤媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
有機溶剤型リキッド印刷インキのインキ粘度は、グラビアインキとして使用する場合であっても、フレキソインキとして使用する場合であっても、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
(印刷物の作成)
有機溶剤型リキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
本発明の有機溶剤型リキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
(バインダー樹脂)
有機溶剤型リキッド印刷インキ用のバインダー樹脂としては特に限定なく、一般の特に限定なく一般のリキッド印刷インキに使用される、ポリウレタン系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
上記の中でも、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ダンマル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂および環化ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むバインダー樹脂が好ましい。
バインダー樹脂の含有量は、本発明の水性リキッド印刷インキの固形分換算で固形分換算で1~50質量%の範囲であり、更に好ましくは2~40質量%である。
(有機溶剤)
有機溶剤型リキッド印刷インキ用の有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
有機溶剤型リキッド印刷インキでは更に必要に応じて、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
(着色剤)
有機溶剤型リキッド印刷インキは、着色剤として前記変性顔料を使用するが、そのほかに、一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている有機顔料及び/または無機顔料を併用してもよい。
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
前記顔料の平均粒子径は、10~200nmの範囲にあるものが好ましくより好ましくは50~150nm程度のものである。
前記顔料は、水性リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総質量に対して1~60質量%、インキ中の固形分質量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
(水性リキッド印刷インキ)
水性リキッド印刷インキは、本発明で使用する変性顔料の他、後述のバインダー樹脂、水性媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
水性リキッド印刷インキを、フレキソインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#4を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたフレキソインキの25℃における表面張力は、25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
一方で水性リキッド印刷インキを、グラビアインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたグラビアインキの25℃における表面張力は、フレキソインキと同様に25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
(印刷物の作成)
水性リキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
本発明の水性リキッドインキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
(バインダー樹脂)
水性リキッド印刷インキ用のバインダー樹脂としては特に限定なく、一般の水性リキッド印刷インキに使用される、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル系重合体エマルジョン、ポリエステル系ウレタンディスパージョン、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル共重合体;スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン-アクリル酸樹脂;スチレン-マレイン酸;スチレン-無水マレイン酸;ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体;酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びこれらの塩を使用することができる。これらのバインダ―樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
なかでも、前記バインダー樹脂としては、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を使用することが、入手しやすく好ましく、特にアクリル酸エステル系重合体エマルジョン、ポリエステル系ウレタンディスパージョンが好ましい。
前記バインダー樹脂は、本発明の水性リキッド印刷インキの固形分換算で5~50質量%であることが好ましい。5質量%以上であれば、インキ塗膜強度が低下することもなく、基材密着性、耐水摩擦性等も良好に保たれる。反対に50質量%を以下であれば、着色力が低下する事が抑制でき、また高粘度となる事が避けられ、作業性が低下することもない。中でも5~40質量%であることがなお好ましく、5~20質量%であることが最も好ましい。
(水性媒体)
水性リキッド印刷インキ用の水性媒体としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤などが挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。また、水性媒体としては、安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
水性リキッド印刷インキは、その他、前述の着色剤、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。中でも耐摩擦性、滑り性等を付与するためのオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド類及び印刷時の発泡を抑制するためのシリコン系、非シリコン系消泡剤及び顔料の濡れを向上させる各種分散剤等が有用である。
以下実施例により、本発明をより詳しく説明する。尚、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
尚、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、アクリル樹脂の酸価は、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示すものであり、各々乾燥させた水溶性樹脂を、JIS K2501に準じた水酸化カリウム・エタノール溶液による電位差滴定から算出した。
また、ガラス転移温度(Tg)は、いわゆる計算ガラス転移温度を指し、下記の方法で算出された値を指す。
(式1) 1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・(Wn/Tn)
(式2) Tg(℃)=Tg(K)-273
式1中のW1、W2、・・・Wnは、重合体の製造に使用したモノマーの合計質量に対する各モノマーの質量%を表し、T1、T2、・・・Tnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。なお、T1、T2、・・Tnの値は、Polymer Handbook(Fourth Edition,J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke 編)に記載された値を用いる。
また、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が前記Polymer Hand Bookに記載されていないもののガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC Q-100」(TA Instrument社製)を用い、JIS K7121に準拠した方法で測定した。具体的には、真空吸引して完全に溶剤を除去した重合体を、20℃/分の昇温速度で-100℃~+200℃の範囲で熱量変化を測定し、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点をガラス転移温度とした。
〔合成例1:シェル部アクリル樹脂(重合体a1)の作製〕
反応容器に攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、酢酸n-プロピル60.0部を仕込む。窒素雰囲気下で攪拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方でメチルメタクリレート36.0部、エチルメタクリレート10.0部、n-ブチルメタクリレート20.0部、イソブチルメタクリレート10.0部、2-エチルヘキシルアクリレート10.0部、アクリル酸14.0部、アゾビスイソブチロニトリル1.0部を酢酸n-プロピル40.0部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応させた。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を8.0部加えて中和した。更にイオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分55%のアクリル樹脂の水溶液を得た。酸価は105 mgKOH/g、Tgは65℃、重量平均分子量は16,000であった。
〔合成例2:コア-シェル型アクリルエマルジョン(Ac1)の作製〕
合成例1で調製したアクリル樹脂水溶液121.2部を仕込んだ反応容器に、攪拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備え、イオン交換水195.5部を加える。窒素雰囲気下で攪拌を行いながら温度75℃まで昇温した。続いて滴下ロートを用いてメチルメタクリレート30.0部、エチルメタクリレート20.0部、n-ブチルアクリレート25.0部、2-エチルヘキシルアクリレート25.0部、30%過硫酸アンモニウム3.3部を4時間かけて滴下した。滴下完了後、更に6時間反応を行い、固形分40%のコア-シェル型アクリルエマルジョン水溶液を得た。酸価は42mgKOH/g、Tgは10℃、重量平均分子量は1,200,000であった。
〔合成例3:ポリウレタン樹脂溶液(Pu)の作製〕
PLACCEL 212(ダイセル化学工業(株)製、ポリカプロラクトンジオール、水酸基価90 mgKOH/g)の186.9部およびイソホロジイソシアネート(IPDIと略す)の100.0部を仕込んだ。これを攪拌しながら、110℃に加熱した。1時間後、80℃まで冷却し、ジメチロールプロピオン酸(DMPAと略す)の20.1部、ジブチル錫ジラウレートの0.3部および酢酸エチルの76.8部を加え、80℃で2時間反応させた。ここに、バーノック DN-980S(DIC社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量20%)の18.1部とメチルエチルケトン(MEKと略す)の408部を加えた。この時のNCO基含有量は固形分換算で4.9%であった。
これを30℃以下まで冷却し、トリエチルアミンの15.2部を加え、次いでイオン交換水の1293部を加えて水中油滴(O/W)型のエマルジョンを得た。続いてジエチレントリアミン5%水溶液の234部を徐々に加え、加え終わった後60℃に昇温して30分攪拌を続けた。
次いで、減圧下において、蒸留を行い、溶剤と水の一部を除去せしめた。
このものはやや乳白色を呈する半透明液体であり、少量を試験管に取ってテトラヒドロフラン(THFと略す)を加えると濁りを呈し、架橋して不溶解になっていることを示した。不揮発分39.6%で、粘度が160cpsで、pHが7.7で、平均粒子径が28.5nmであった。
<光触媒の調製>
まず、使用する酸化チタン原料(昭和電工セラミックス株式会社製)について、次のとおり性状を測定した。
(BET比表面積)
酸化チタン原料のBET比表面積は、株式会社マウンテック製の全自動BET比表面積測定装置「Macsorb,HM model-1208」を用いて測定した。
(酸化チタン原料中のルチル含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅))
酸化チタン原料中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅)は、粉末X線回折法により測定した。
すなわち、乾燥させた酸化チタン原料について、測定装置としてPANalytical社製「X’pertPRO」を用い、銅ターゲットを用い、Cu-Kα1線を用いて、管電圧45kV、管電流40mA、測定範囲2θ=20~100deg、サンプリング幅0.0167deg、走査速度3.3deg/minの条件でX線回折測定を行った。
ルチル型結晶に対応するピーク高さ(Hr)、ブルッカイト型結晶に対応するピーク高さ(Hb)、及びアナターゼ型結晶に対応するピーク高さ(Ha)を求め、以下の計算式により、酸化チタン中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)を求めた。
ルチル化率(モル%)={Hr/(Ha+Hb+Hr)}×100
また、酸化チタン中における、アナターゼ型酸化チタンの含有量(アナターゼ化率)及びブルッカイト型酸化チタンの含有量(ブルッカイト化率)を、それぞれ以下の計算式により求めた。
アナターゼ化率(モル%)={Ha/(Ha+Hb+Hr)}×100
ブルッカイト化率(モル%)={Hb/(Ha+Hb+Hr)}×100
上記X線回折測定によって得られたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークを選択し、半値全幅を測定した。
(一次粒子径)
平均1次粒子径(DBET)(nm)は、BET1点法により、酸化チタンの比表面積S(m/g)を測定し、下式
DBET=6000/(S×ρ)
より算出した。ここでρは酸化チタンの密度(g/cm)を示す。
使用した酸化チタン原料の測定結果を表1に示す。
Figure 0007067683000001
(製造例1)
蒸留水100mLに6g(100質量部)の酸化チタン原料(昭和電工セラミックス株式会社製)を懸濁させ、0.0805g(銅換算で0.5質量部)のCuCl・2HO(関東化学株式会社製)を添加して、10分攪拌した。pHが10になるように、1mol/Lの水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)水溶液を添加し、30分間攪拌混合を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過し、得られた粉体を純水で洗浄し、80℃で乾燥し、ミキサーで解砕し、試料(光触媒)を得た。
得られた試料(光触媒)をフッ酸溶液中で加熱して全溶解し、抽出液をICP発光分光分析により定量した。その結果、酸化チタン100質量部に対して、銅イオンが0.5質量部であった。すなわち、仕込みの銅イオン(CuCl・2HO由来)の全量が酸化チタン表面に担持されていた。
製造例1により得られた試料(光触媒)を以下の方法により分析した。
(ルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅))
製造例1により得られた試料(光触媒)について、酸化チタン中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅)を、粉末X線回折法により測定した。
すなわち、乾燥させた光触媒を、乳鉢で擦り潰した粉末を試料とした。この試料について、測定装置としてPANalytical社製「X’pertPRO」を用い、銅ターゲットを用い、Cu-Kα1線を用いて、管電圧45kV、管電流40mA、測定範囲2θ=20~100deg、サンプリング幅0.0167deg、走査速度3.3deg/minの条件でX線回折測定を行った。
ルチル型結晶に対応するピーク高さ(Hr)、ブルッカイト型結晶に対応するピーク高さ(Hb)、及びアナターゼ型結晶に対応するピーク高さ(Ha)を求め、以下の計算式により、酸化チタン中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)を求めた。
ルチル化率(モル%)={Hr/(Ha+Hb+Hr)}×100
上記X線回折測定によって得られたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークを選択し、半値全幅を測定した。
(2価銅化合物の同定)
製造例1により得られた試料(光触媒)中に存在する2価銅化合物を、上記の測定装置及び測定条件にて、X線回折測定で同定した。結果を表2に示した。
Figure 0007067683000002
〔実施例1〕
表3に示す配合のように、コア-シェル型アクリルエマルジョン(Ac1)80部、製造例1で得られた酸化チタン1部、水16部、ワックス分散液(ポリエチレン分散液)を2部、レベリング剤(サーフィノール420:日信化学工業(株)社製)1部を分散攪拌機(特殊機化工業製 TKホモディスパー)を用いて均一に混合してコーティング剤組成物(1)を得た。
〔実施例2~4〕
表3に示す配合に従い、コア-シェル型アクリルエマルジョン(Ac1)を用い、実施例1と同様の手順にてコーティング剤組成物を得た。
〔実施例5~8〕
表4に示す配合に従い、ポリウレタン樹脂溶液(Pu)を更に用い、実施例1と同様の手順にてコーティング剤組成物を得た。
〔比較例1~2〕
表3,4に示す配合に従い、製造例1で得られた酸化チタンを用いずにコア-シェル型アクリルエマルジョン(Ac1)を添加し、実施例1と同様の手順にて比較例のコーティング剤を得た。
Figure 0007067683000003
Figure 0007067683000004
<コーティング層を有する積層体の作製>
〔グラビアコーティング作成〕
得られた実施例1-6のコーティング剤の粘度を水/エタノール=80/20(質量比)の混合溶剤でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、実施例1-4はコートボール紙へ、実施例5-8はPETフィルムへ印刷した積層体を1日放置し、評価用積層体とした。
〔フレキソコーティング作成〕
得られた実施例1-6のコーティング剤の粘度を水にてザーンカップ#4(離合社製)で10秒(25℃)に調整し、120線/cmアニロックスロールを備えたフレキソ校正機により、コートボール紙及びPETフィルムへ印刷した積層体を1日放置し、評価用積層体とした。
得られた積層体(コーティング層を有する基材)を用い、密着性、耐摩擦性、抗ウイルス性の評価を行った。
〔評価項目1:密着性〕
印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、これを急速に剥がした
ときの印刷皮膜の外観の状態を次の5段階で目視判定した。
コートボール紙へ印刷した場合
5:紙が剥け、コート剤層間の剥離がない
4:紙が剥け、コート剤層間の剥離が25未満
3:紙が剥け、コート剤層間の剥離が25-75%
2:紙が剥け、コート剤層間の剥離が75%以上
1:紙が剥けない
フィルムへ印刷した場合
5:フィルムからコート剤が剥離しない
4:コート剤剥離が25%未満
3:コート剤剥離が25-50%
2:コート剤剥離が50-75%
1:コート剤剥離が75-100%
〔評価項目2:耐摩擦性〕
作成した印刷物を堅牢型学振試験機を用いて耐摩擦性を評価した。摩擦子はコピー用紙を使用し、500gの荷重、100往復させたあとの印刷物表面の状態を次の5段階で目視判定した。
5:印刷表面が変化していない
4:印刷物表面の傷が少ない
3:印刷物表面の傷が多い
2:コート剤の一部が剥がれ、基材が見えている
1:コート剤が剥がれ、基材のみになっている
(評価項目3 抗ウイルス性の評価)
上記で得られた評価用印刷物について、抗ファージウイルス試験(JIS R1756を参照)を実施した。
1)光照射条件は、白色蛍光灯の光をN113フィルターによって紫外線をカットし、照度1000ルクスとした。
2)5cm×5cmの評価用印刷物に濃度既知の100μLのQβファージ溶液を垂らした後、5cm×5cmのガラス板で挟んだ。
3)2時間光照射したサンプルを、SCDLP液で回収し、適度に希釈したものを大腸菌と感染させ、寒天培地に塗布し、培養後のコロニー数をカウントすることで評価した。抗ウイルス性はQβファージの不活化度で評価し、不活化度-2~-5を抗ウイルス性有と評価した。
不活化度が-1が90%、不活化度が-2が99%、不活化度が-3が99.9%不活化していることになり、抗ウイルス性が高いことを示す。検出限界は不活化度-5である。
実施例及び比較例の組成物を用いた積層体の評価結果を表5、6に示す。
Figure 0007067683000005
Figure 0007067683000006
以上の結果から、本発明のコーティング剤は、簡便な方法により、すなわち、紙基材又はプラスチック基材に塗布するだけで、これら基材に良好な抗ウイルス性を付与することができ、抗ウイルス性基材、包装材、容器等を提供できることが明らかとなった。また、本発明のコーティング剤は、水性溶媒を使用でき、且つ、密着性及び耐摩耗性を保持しつつ、十分な抗ウイルス性を発現することができる。

Claims (5)

  1. バインダー樹脂(A)と、光触媒(B)及び水性媒体(C)を含有し、
    前記光触媒(B)が、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有し、
    前記結晶性ルチル型酸化チタンが、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンであり、
    前記酸化チタン中における前記結晶性ルチル型酸化チタンの含有量が50モル%以上、アナターゼ型酸化チタンの含有量が50モル%未満である光触媒であり、
    コーティング剤固形分全量に対し、前記光触媒(B)0.5質量%以上含有し、
    コーティング剤固形分全量に対し、前記バインダー樹脂(A)を(28.4/39.2×100)質量%以上含有することを特徴とする、紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤。
  2. 前記バインダー樹脂(A)としてアクリル樹脂又はウレタン樹脂の少なくとも1種を含有する請求項1に記載のコーティング剤。
  3. 請求項1又は2に記載のコーティング剤のコーティング層を有する紙基材又はプラスチック基材。
  4. 前記紙基材又はプラスチック基材が、印刷インキ層を更に有する請求項3に記載の紙基材又はプラスチック基材。
  5. 請求項3又は4に記載の紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材。
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