JP7032945B2 - 皮膚外用剤又は化粧料 - Google Patents
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Description
化粧品においては、肌や髪への水分による保湿効果と油分によるエモリエント効果の両立が求められるため、水系と油系をバランスよく供給する必要がある。そのため化粧品製剤としては水分と油分を様々な界面活性剤を使用して、安定かつ優れた官能を与える処方が検討されている。特に化粧水は一般的にみずみずしい感触と保湿感が求められており、それらをかなえる界面活性剤の一つとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが汎用されている。特にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルはエタノールを含有する系において、優れた保存安定性を有し、さらさら感および清涼感に優れることが知られている(特許文献4)。
また、特許文献4の技術では、荒れ肌改善効果などの肌効果が不十分であり、さらに、特にエタノールが多い場合において、水性成分の揮発が早いために、製剤の渇き際のべたつき感に優れないなどの使用性が望ましくない場合があった。
さらに発明者は、エモリエント効果向上のために、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ニコチン酸アミド 1~10質量%、エタノール 5質量%以上、水と、さらに油剤を配合することを試みたところ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れない場合があった。特に、経時での結晶析出抑制が優れない場合として、組成物を瓶などの容器から吐出した後、室温に一週間程度、放置した際、その瓶口において、水性成分などの揮発に起因して、ニコチン酸アミド由来と思われる結晶が経時で析出するなど、著しく使用性が悪い場合があった。
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ニコチン酸アミド 1~10質量%、エタノール 5質量%以上、水を含有する組成物に、さらに、IOBが0~0.5である油剤を含有した際に、渇き際のべたつき感の無さがより改善され、さらに、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
(B)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(C)エタノール 5質量%以上
(D)IOBが0~0.5である油剤
(E)水
を含有する皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
本発明で用いられる成分(A)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、アルコールにオキシエチレン(酸化エチレン)とオキシプロピレン(酸化プロピレン)を付加重合等することで得られるものであり、医薬、食品、化粧料または皮膚外用剤又は化粧料への添加物として許容されるものであれば特に制限なく使用できる。
べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性に優れる点から、好ましくは、POE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(1)POP(8)セチルエーテル、POE(20)POP(8)セチルエーテル、POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(15)ブチルエーテルから選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくはPOE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテルから選ばれる1種または2種以上であり、さらにより好ましくはPOE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテルから選ばれる1種または2種以上である。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性)×10・・・(式1)
ここで、Σ無機性値/Σ有機性は、IOB(Inorganic-Organicbalance)と呼ばれ、各種原子及び官能基毎に設定された「無機性値」、「有機性値」に基づいて、界面活性剤等の有機化合物を構成する原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することにより算出することができる(甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、11~17頁、三共出版、1984年発行参照)。
本発明における成分(B)ニコチン酸アミドは、ニコチン酸(ビタミンB3/ナイアシン)のアミド化合物である。ニコチン酸アミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである公知の物質であり、天然物(米ぬかなど)から抽出されたり、あるいは公知の方法によって合成することができる。具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているものを用いることが出来る。
本発明に用いられる成分(C)は、エタノールである。本発明においては、通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば95度未変性エタノール、種々の変性エタノール等の市販されているものでよい。
本発明の皮膚外用剤又は化粧料中の成分(D)はIOBが0~0.5である油剤である。通常、化粧料等に用いることができるものであれば、特に限定されるものではないが、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。皮膚外用剤又は化粧料全量中、成分(D)を含有しないと、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れない場合がある。
本発明に用いる成分(E)の水は、化粧料に一般に用いられるものであれば、特に制限されないが、具体的には、精製水、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水を用いることができ、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択することもできる。また含有量は、特に限定されず、適宜、他の成分量に応じて含有することができ、皮膚外用剤又は化粧料全量中、30~95%が好ましく、60~90%がより好ましい。
下記表1~3に示す処方の化粧水を調製し、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1~3に示す。
A:成分(1)~(6)、成分(10)~(15)を均一に混合溶解する。
B:成分(7)~(9)、成分(16)~(19)を均一に混合溶解する。
C:BにAを添加混合することで化粧水を得た。
(イ)べたつき感の無さ
(ロ)経時での油滴粒子の安定性
(ハ)経時での結晶析出抑制
((イ)べたつき感の無さ(官能評価))
20代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを10名選定した。各試料について専門パネルが皮膚に塗布した後の渇き際のべたつき感の無さを下記絶対評価基準にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
(評点):(評価)
5点:べたつきを感じない
4点:ほとんどべたつきを感じない
3点:ややべたつきを感じる
2点:べたつきを感じる
1点:非常にべたつきを感じる
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
組成物調製後、50℃で1ヶ月保存した際の外観性状を目視にて評価し、下記3段階判定基準により判定した。
3段階判定基準
(判定):(評価)
◎ : 初期状態から変化なし :非常に良好
○ : 初期状態から変化(透明性の低下)はあるが、分離はしていない :良好
× : 初期状態から変化(透明性の低下)があり、分離が発生している :不良
結晶析出抑制の評価については、ドクターブレードにて試料をガラス板の上に膜厚800μmで塗布し、20℃で15分風乾させ、各試料を光学顕微鏡観察40倍にて偏光フィルターで観察し、下記4段階判定基準により判定した。
4段階判定基準
(判定):(評価)
◎ :結晶の析出が全く見られない :非常に良好
○ :結晶の析出がほとんど見られない :良好
△ :結晶の析出がわずかに見られる :やや不良
× :結晶の析出が明らかに見られる :不良
成分(A)ではなく、他の界面活性剤を含有する比較例1~3は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。
成分(B)の量が10%を超える比較例4は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。成分(B)の量が1%未満である比較例5は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性が劣っていた。
成分(B)ではなく、他の極性物質を含有する比較例6は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性が劣っていた。成分(B)の量が1%未満であり、かつ、他の極性物質を含有する比較例7は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性が劣っていた。
成分(C)の量が5%未満である比較例8は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。
成分(D)ではなく、他の油剤を含有する比較例9、10は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。
(成分) (質量%)
1.ニコチン酸アミド 6.0
2.精製水 残量
3.POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル
0.1
4.POE(40)硬化ヒマシ油 0.2
5.イソステアリン酸POE(50)硬化ヒマシ油 0.5
6.エタノール 10.0
7.オレイルアルコール(IOB=0.26) 0.05
8.酢酸DL‐α‐トコフェロール (IOB=0.23) 0.05
9.アスタキサンチン 0.0001
10.セラミド2 0.0001
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.05
12.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(IOB=0.33) 0.05
13.カルボマー 0.15
14.水酸化ナトリウム 0.004
15.キサンタンガム 0.1
A:成分(1)と成分(2)の内の90%を均一に混合溶解する。
B:成分(3)~(12)を混合溶解する。
C:AにBを添加する。
D:Cに成分(13)~(15)と成分(2)の内の10%を添加混合し、皮膚外用剤(ローション剤)を得た。
(成分) (質量%)
1.トリイソステアリン酸POE(20)グリセリル 0.1
2.ジプロピレングリコール 12.0
3.1,3-ブチレングリコール 5.0
4.POP(10)メチルグルコシド 5.0
5.PEG-8(平均分子量400) 5.0
6.ニコチン酸アミド 6.0
7.クエン酸 0.001
8.クエン酸ナトリウム 0.1
9.POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル
0.1
10.カンファー(IOB=0.47) 0.02
11.ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18) 0.01
12.エタノール 7.0
13.精製水 残量
14.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
15.水酸化ナトリウム 0.03
16. ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.2
17.香料 0.001
A:成分(9)~(12)を均一に混合溶解する。
B:成分(13)の内の90%にAを添加し可溶化する。
C:Bに成分(1)~(8)を添加混合する。
D:Cに成分(13)の内の10%と成分(14)~(17)を添加混合してクレンジングローションを得た。
(成分) (質量%)
1.エタノール 40.0
2.ホホバ油(IOB=0.07) 0.1
3.POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル
0.2
4.オレイルアルコール(IOB=0.26) 0.01
5.リノール酸(IOB=0.43) 0.01
6.アスタキサンチン 0.0005
7.ビタミンEニコチネート 0.01
8.グリセリン 5.0
9.POE(26)グリセリン 2.0
10.ニコチン酸アミド 6.0
11.エデト酸二ナトリウム 0.4
12.精製水 残量
13.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.3
14.2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール 0.1
15.キサンタンガム 0.1
16.加水分解ヒアルロン酸 0.01
17.加水分解コラーゲン(注1) 0.01
18.加水分解エラスチン(注2) 0.005
19.ヒアルロン酸酵母発酵液 0.1
20.月桃葉エキス 0.01
21.水酸化ナトリウム 0.05
(注1)コラーゲンP-03(PF) 新田ゼラチン社製
(注2)SEALASTIN 寿ケミカル社製
A:成分(1)~(9)を均一に混合する。
B:成分(10)~(20)を均一に混合し、その後成分(21)を添加し、均一に混合溶解する。
C:BにAを添加し可溶化し、ジェル状保湿化粧水を得た。
Claims (6)
- 次の成分(A)~(E):
(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
(B)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(C)エタノール 5質量%以上
(D)IOBが0~0.5である油剤
(E)水
を含有し、前記成分(B)と、前記成分(A)の含有質量割合(B)/(A)が4~800であることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料。 - 前記成分(B)と、前記成分(D)の含有質量割合(B)/(D)が10~1200であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
- 前記成分(A)がポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
- 前記成分(C)の含有量が7~15質量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の皮膚外用剤又は化粧料。
- 15℃において粘度が3000~14000mPa・sであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の皮膚外用剤又は化粧料。
- 可溶化型であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の皮膚外用剤又は化粧料。
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