以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
本発明の実施形態の理解を容易にするため、まず、遊技機の機械的構成および電気的構成を簡単に説明し、その後、各基板における具体的な処理を説明する。
図1は、本実施形態の遊技機100の斜視図であり、扉が開放された状態を示している。図示のように、遊技機100は、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成される外枠102と、この外枠102にヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた中枠104と、この中枠104に、ヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた前枠106と、を備えている。
中枠104は、外枠102と同様に、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成されており、この囲繞空間に遊技盤108が保持されている。また、前枠106には、ガラス製または樹脂製の透過板110が保持されている。そして、これら中枠104および前枠106を外枠102に対して閉じると、遊技盤108と透過板110とが所定の間隔を維持して略平行に対面するとともに、遊技機100の正面側から、透過板110を介して遊技盤108が視認可能となる。
図2は、遊技機100の正面図である。この図に示すように、前枠106の下部には、遊技機100の正面側に突出する操作ハンドル112が設けられている。この操作ハンドル112は、遊技者が回転操作可能に設けられており、遊技者が操作ハンドル112を回転させて発射操作を行うと、当該操作ハンドル112の回転角度に応じた強度で、不図示の発射機構によって遊技球が発射される。このようにして発射された遊技球は、遊技盤108に設けられたレール114a、114b間を上昇して遊技領域116に導かれることとなる。
遊技領域116は、遊技盤108と透過板110との間隔に形成される空間であって、遊技球が流下または転動可能な領域である。遊技盤108には、多数の釘や風車が設けられており、遊技領域116に導かれた遊技球が釘や風車に衝突して、不規則な方向に流下、転動するようにしている。
遊技領域116は、発射機構の発射強度に応じて遊技球の進入度合いを互いに異にする第1遊技領域116aおよび第2遊技領域116bを備えている。第1遊技領域116aは、遊技機100に正対した遊技者から見て遊技領域116の左側に位置し、第2遊技領域116bは、遊技機100に正対した遊技者から見て遊技領域116の右側に位置している。レール114a、114bが遊技領域116の左側にあることから、発射機構によって所定の強度未満の発射強度で発射された遊技球は第1遊技領域116aに進入し、所定の強度以上の発射強度で発射された遊技球は第2遊技領域116bに進入することとなる。
また、遊技領域116には、遊技球が入球可能な一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122が設けられており、これら一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122に遊技球が入球すると、それぞれ所定の賞球が遊技者に払い出される。なお、賞球数は1個以上であれば何個でもよく、また、一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122のそれぞれで払い出す賞球数を異ならせてもよいし、同じ賞球数に設定してもよい。このとき、第1始動口120に遊技球が入球して払い出す賞球数を、第2始動口122に遊技球が入球して払い出す賞球数よりも少なく設定することも可能である。
なお、第1始動口120内には第1始動領域が設けられ、また、第2始動口122内には第2始動領域が設けられている。そして、第1始動口120または第2始動口122に遊技球が入球して第1始動領域または第2始動領域に遊技球が進入すると、予め設けられた複数の特別図柄の中からいずれか1の特別図柄を決定するための抽選が行われる。各特別図柄には、遊技者にとって有利な大役遊技の実行可否や、以後の遊技状態をどのような遊技状態にするかといった種々の遊技利益が対応付けられている。したがって、遊技者は、第1始動口120または第2始動口122に遊技球が入球すると、所定の賞球を獲得するのと同時に、種々の遊技利益を受ける権利獲得の機会を獲得することとなる。
また、第2始動口122には、可動片122bが開閉可能に設けられており、この可動片122bの状態に応じて、第2始動口122への遊技球の進入容易性が変化するようになっている。具体的には、可動片122bが閉状態にあるときには、第2始動口122への遊技球の入球が不可能となっている。これに対して、遊技領域116に設けられたゲート124内の進入領域を遊技球が通過すると、普通図柄の抽選が行われ、この抽選によって当たりに当選すると、可動片122bが所定時間、開状態に制御される。このように、可動片122bが開状態になると、当該可動片122bが遊技球を第2始動口122に導く受け皿として機能し、第2始動口122への遊技球の入球が容易となる。なお、ここでは、第2始動口122が閉状態にあるときに、当該第2始動口122への遊技球の入球が不可能であることとしたが、第2始動口122が閉状態にある場合にも一定の頻度で遊技球が入球可能となるように構成してもよい。
さらに、遊技領域116には、遊技球が入球可能な大入賞口128が設けられている。この大入賞口128には、開閉扉128bが開閉可能に設けられており、通常、開閉扉128bが大入賞口128を閉鎖して、大入賞口128への遊技球の入球が不可能となっている。これに対して、前述の大役遊技が実行されると、開閉扉128bが開放されて、大入賞口128への遊技球の入球が可能となる。そして、大入賞口128に遊技球が入球すると、所定の賞球が遊技者に払い出される。
なお、遊技領域116の最下部には、一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122、大入賞口128のいずれにも入球しなかった遊技球を、遊技領域116から遊技盤108の背面側に排出する排出口130が設けられている。
そして、遊技機100には、遊技の進行中等に演出を行う演出装置として、液晶表示装置からなる演出表示装置200、駆動装置からなる演出役物装置202、さまざまな点灯態様や発光色に制御されるランプからなる演出照明装置204、スピーカからなる楽曲出力装置206、遊技者の操作を受け付ける演出操作装置208が設けられている。
演出表示装置200は、画像を表示する画像表示部からなる演出表示部200aを備えており、この演出表示部200aを、遊技盤108の略中央部分において、遊技機100の正面側から視認可能に配置している。この演出表示部200aには、図示のように演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、これら各演出図柄210a、210b、210cの停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行されることとなる。
演出役物装置202は、演出表示部200aよりも前方に配置され、遊技者が視認できる領域において移動や回転を行うことで、遊技者に大当たりの期待感を付与するものである。例えば、図2における演出役物装置202としての回転役物202aは、上記の演出図柄210a、210b、210cの変動表示中などに、駆動源であるモータ(パルスモータやギヤードモータ)の回転に連動し、前後方向の軸を中心に回転する。また、図2における演出役物装置202としての移動役物202bは、通常、遊技盤108における退避領域に退避しているが、上記の演出図柄210a、210b、210cの変動表示中などには、演出表示部200aの前方まで移動する。
演出照明装置204は、例えばLED(Light Emitting Diode)でなり、演出役物装置202や遊技盤108等に設けられており、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、さまざまに点灯制御される。
楽曲出力装置206は、前枠106の上部位置や外枠102の最下部位置に設けられ、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて、遊技機100の正面側に向けてさまざまな楽曲を出力する。
演出操作装置208は、遊技者の押下操作を受け付けるボタンと、遊技者の回転操作を受け付ける回転操作部(例えば、ジョグダイヤル)で構成され、遊技機100の幅方向略中央位置であって、かつ、透過板110よりも下方位置に設けられている。この演出操作装置208は、演出表示部200aに表示される画像等に合わせて有効化され、操作有効期間内に遊技者の操作を受け付けると、当該操作に応じて、さまざまな演出が実行される。
また、演出操作装置208の後方には、遊技機100から払い出される賞球や、遊技球貸出装置から貸し出される遊技球が導かれる上皿132があり、この上皿132が遊技球で一杯になると、遊技球は下皿134に導かれることとなる。また、この下皿134の底面には、当該下皿134から遊技球を排出するための球抜き孔(不図示)が形成されている。この球抜き孔は、通常、開閉板(不図示)によって閉じられているが、球抜きつまみ134aを図中左右方向にスライドさせることにより、当該球抜きつまみ134aと一体となって開閉板がスライドし、球抜き孔から下皿134の下方に遊技球を排出することが可能となっている。
また、遊技盤108には、遊技領域116の外方であって、かつ、遊技者が視認可能な位置に、第1特別図柄表示器160、第2特別図柄表示器162、第1特別図柄保留表示器164、第2特別図柄保留表示器166、普通図柄表示器168、普通図柄保留表示器170、右打ち報知表示器172が設けられている。これら各表示器160~172は、遊技に係る種々の状況を表示するための装置である。
(制御手段の内部構成)
図3は、遊技の進行を制御する制御手段の内部構成を示すブロック図である。主制御基板300は遊技の基本動作を制御する。この主制御基板300は、メインCPU300a、メインROM300b、メインRAM300cを備えている。メインCPU300aは、各検出スイッチやタイマからの入力信号に基づいて、メインROM300bに格納されたプログラムを読み出して演算処理を行うとともに、各装置や表示器を直接制御したり、あるいは演算処理の結果に応じて他の基板にコマンドを送信したりする。メインRAM300cは、メインCPU300aの演算処理時におけるデータのワークエリアとして機能する。
上記主制御基板300には、一般入賞口118に遊技球が入球したことを検出する一般入賞口検出スイッチ118s、第1始動口120に遊技球が入球したことを検出する第1始動口検出スイッチ120s、第2始動口122に遊技球が入球したことを検出する第2始動口検出スイッチ122s、ゲート124を遊技球が通過したことを検出するゲート検出スイッチ124s、大入賞口128に遊技球が入球したことを検出する大入賞口検出スイッチ128sが接続されており、これら各検出スイッチから主制御基板300に検出信号が入力されるようになっている。
また、主制御基板300には、第2始動口122の可動片122bを作動する普通電動役物ソレノイド122cと、大入賞口128を開閉する開閉扉128bを作動する大入賞口ソレノイド128cと、が接続されており、主制御基板300によって、第2始動口122および大入賞口128の開閉制御がなされるようになっている。
さらに、主制御基板300には、第1特別図柄表示器160、第2特別図柄表示器162、第1特別図柄保留表示器164、第2特別図柄保留表示器166、普通図柄表示器168、普通図柄保留表示器170、右打ち報知表示器172が接続されており、主制御基板300によって、これら各表示器の表示制御がなされるようになっている。
また、本実施形態の遊技機100は、主に第1始動口120または第2始動口122への遊技球の入球によって開始される特別遊技と、ゲート124を遊技球が通過することによって開始される普通遊技とに大別される。そして、主制御基板300のメインROM300bには、特別遊技および普通遊技を進行するための種々のプログラムや、各種の遊技に必要なデータ、テーブルが記憶されている。
また、主制御基板300には、払出制御基板310および副制御基板330が接続されている。
払出制御基板310は、遊技球を発射させるための制御、および、賞球を払い出すための制御を行う。この払出制御基板310も、CPU、ROM、RAMを備えており、主制御基板300に対して双方向に通信可能に接続されている。この払出制御基板310には遊技情報出力端子板312が接続されており、主制御基板300から出力される遊技進行上の種々の情報が、払出制御基板310および遊技情報出力端子板312を介して、遊技店のホールコンピュータ等に出力されることとなる。
また、払出制御基板310には、貯留部に貯留された遊技球を賞球として遊技者に払い出すための払出モータ314が接続されている。払出制御基板310は、主制御基板300から送信された払出個数指定コマンドに基づいて払出モータ314を制御して所定の賞球を遊技者に払い出すように制御する。このとき、払い出された遊技球数が払出球計数スイッチ316sによって検出され、払い出すべき賞球が遊技者に払い出されたかが把握されるようになっている。
また、払出制御基板310には、下皿134の満タン状態を検出する皿満タン検出スイッチ318sが接続されている。この皿満タン検出スイッチ318sは、賞球として払い出される遊技球を下皿134に導く通路に設けられており、当該通路を遊技球が通過するたびに、遊技球検出信号が払出制御基板310に入力されるようになっている。
そして、下皿134に所定量以上の遊技球が貯留されて満タン状態になると、下皿134に向かう通路内に遊技球が滞留し、皿満タン検出スイッチ318sから払出制御基板310に向けて、遊技球検出信号が連続的に入力される。払出制御基板310は、遊技球検出信号が所定時間連続して入力された場合に、下皿134が満タン状態であると判断し、皿満タンコマンドを主制御基板300に送信する。一方、皿満タンコマンドを送信した後、遊技球検出信号の連続入力が途絶えた場合には、満タン状態が解除されたと判断し、皿満タン解除コマンドを主制御基板300に送信する。
また、払出制御基板310には、遊技球の発射制御を行う発射制御回路320が設けられている。払出制御基板310には、操作ハンドル112に設けられ、当該操作ハンドル112に遊技者が触れたことを検出するタッチセンサ112sと、操作ハンドル112の操作角度を検出する操作ボリューム112aと、が接続されている。そして、タッチセンサ112sおよび操作ボリューム112aから信号が入力されると、発射制御回路320において、遊技球発射装置に設けられた発射用ソレノイド112cを通電して遊技球を発射させる制御がなされる。
副制御基板330は、主に遊技中や待機中等の各演出を制御する。この副制御基板330は、サブCPU330a、サブROM330b、サブRAM330cを備えており、主制御基板300に対して、不正防止の観点により、当該主制御基板300から副制御基板330への一方向に通信可能に接続されている。サブCPU330aは、主制御基板300から送信されたコマンドやタイマからの入力信号等に基づいて、サブROM330bに格納されたプログラムを読み出して演算処理を行うとともに、演出を実行制御する。このとき、サブRAM330cは、サブCPU330aの演算処理時におけるデータのワークエリアとして機能する。
具体的には、副制御基板330は、上記演出表示部200aに画像を表示させる画像表示制御を行う。サブROM330bには、演出表示部200aに表示される図柄や背景等の画像データが多数格納されており、サブCPU330aが、画像データをサブROM330bから不図示のVRAMに読み出して、演出表示部200aの画像表示を制御する。また、副制御基板330は、演出役物装置202を駆動制御したり、演出照明装置204を点灯制御したり、楽曲出力装置206から楽曲を出力させる楽曲出力制御を行う。
図4は、副制御基板330における、演出表示部200a、演出役物装置202、演出照明装置204、楽曲出力装置206の制御態様を説明するためのブロック図であり、図5は、それらに共通する制御態様を示すフローチャートである。副制御基板330に設けられたサブCPU(CPU)330aは、サブROM330bに格納されたプログラムおよびサブRAM330cと協働して、演出決定手段332、演出実行手段334として機能する。演出決定手段332は、主制御基板300から送信されたコマンドを解読し、そのコマンドに対応する演出パターン(演出の一連の流れを示す内容)を決定する。演出実行手段334は、決定された演出パターンに基づいて画像IC340a、役物コントローラ342、照明コントローラ344、楽曲IC346a等の各デバイスにコマンドを送信して演出を実行させる。かかる演出決定手段332および演出実行手段334は、いずれも割込に応じた処理(割込処理)であり、デバイスそれぞれに対応付けられた割込タイミングで実行される。
例えば、演出決定手段332は、図5に示すように、所定の割込周期(例えば33.3msec)の到来を待ち(S10におけるNO)、所定の割込周期が到来すると(S10におけるYES)、演出パターンに基づいた画像データ(演出パターンが示す演出のうち、演出表示部200aに表示する画像に相当するデータ)を決定する(S11)。そして、演出実行手段334は、画像IC340aに対して、画像データを特定可能な画像コマンドを送信し(S12)、ステップS10からの処理を繰り返す。画像IC340aは、VDP(Video Display Processor)とも呼ばれ、画像コマンドによって特定される画像データを画像ROM340bから画像RAM(VRAM)340cに読み出し、画像データを、順次、演出表示部200aに出力する。なお、演出表示部200aには、常に、何かしらの画像が表示される。したがって、演出決定手段332は、割込周期毎に、常に、画像データを決定していることとなる。なお、画像RAM340cは、それぞれ異なるレイヤを有し、各レイヤに異なる画像データを保持させることができる。そして、画像IC340aは、複数のレイヤに保持された画像データを重畳し、その重畳された画像データが演出表示部200aに出力される。
また、演出決定手段332は、上記の画像IC340aに対する制御と並行して、演出パターンの決定に伴い、所定の割込周期(例えば2msec)が到来すると(S10におけるYES)、演出パターンに基づいた役物パターン(演出パターンが示す演出のうち、演出役物装置202の一連の動作を示す内容)を決定する(S11)。そして、演出実行手段334は、その役物パターンに従って、役物コントローラ342に所定時間間隔で、進行方向(回転方向)、進行量(回転量)、進行速度(回転速度)の少なくともいずれかを示すコマンドを送信し(S12)、ステップS10からの処理を繰り返す。役物コントローラ342は、かかるコマンドに従い、演出役物装置202を駆動する。ここで、演出役物装置202は、役物パターンが決定されたときのみ動作している。なお、演出役物装置202は、遊技者に対し、大当たりの期待感を高める、物理的な動作を伴う一時的な演出なので、画像データや、後述する照明パターン、楽曲データと比較して、役物パターンが決定される頻度が低い。
また、演出決定手段332は、上記の画像IC340a、役物コントローラ342に対する制御と並行して、演出パターンの決定に伴い、所定の割込周期(例えば100msec)が到来すると(S10におけるYES)、演出パターンに基づいた照明パターン(演出パターンが示す演出のうち、演出照明装置204の一連の点灯態様を示す内容)を決定する(S11)。そして、演出実行手段334は、その照明パターンに従って、照明コントローラ(LEDコントローラ)344に所定時間間隔で1(ON)または0(OFF)のコマンドを送信し(S12)、ステップS10からの処理を繰り返す。照明コントローラ344は、かかるコマンドに従い、演出照明装置204を駆動するFETをONまたはOFFにする。こうして、演出照明装置204であるランプが点灯制御される。なお、演出照明装置204は、常に、点灯または消灯を繰り返している。したがって、演出決定手段332は、割込周期毎に、常に、演出パターンを決定していることとなる。
また、演出決定手段332は、上記の画像IC340a、役物コントローラ342、照明コントローラ344に対する制御と並行して、演出パターンの決定に伴い、所定の割込周期(例えば50msec)が到来すると(S10におけるYES)、演出パターンに基づいた楽曲データ(演出パターンが示す演出のうち、楽曲出力装置206に出力する楽曲に相当するデータ)を決定する(S11)。そして、演出実行手段334は、楽曲IC346aに対して、楽曲データを特定可能な楽曲コマンドを送信し(S12)、ステップS10からの処理を繰り返す。楽曲IC346aは、楽曲コマンドによって特定される楽曲データを楽曲ROM346bから楽曲IC346aに読み出し、楽曲データを、順次、楽曲出力装置206であるスピーカに出力する。なお、楽曲出力装置206には、常に、何かしらの楽曲が出力されている。したがって、演出決定手段332は、割込周期毎に、常に、楽曲データを決定していることとなる。なお、楽曲IC346aは、複数の楽曲バッファ(バッファ)を有し、各楽曲バッファに異なる楽曲データを保持させることができる。そして、楽曲IC346aは、複数の楽曲バッファに保持された楽曲データを重畳し、その重畳された楽曲データが楽曲出力装置206に出力される。
ここでは、サブCPU330a、サブRAM330c、画像IC340a、画像ROM340b、画像RAM340c、役物コントローラ342、照明コントローラ344、楽曲IC346a、楽曲ROM346b等の一連の機能部が、SoC(System-on-a-Chip)として1個の集積回路に集積されている。ただし、かかるSoCにいずれの機能部を集積するかは任意に設定することができる。また、サブCPU330a、サブRAM330c、画像IC340a、画像ROM340b、画像RAM340c、役物コントローラ342、照明コントローラ344、楽曲IC346a、楽曲ROM346b等の各機能部がそれぞれ異なる集積回路として集積され、電気的に接続されているとしてもよい。
さらには、副制御基板330には、演出操作装置208が押下操作されたことを検出する押下検出スイッチ208s、および、演出操作装置208が回転操作されたことを検出する回転検出スイッチ209sから検出信号が入力される。これら押下検出スイッチ208sまたは回転検出スイッチ209sから検出信号が入力されると、演出表示部200aに画像が表示される等、さまざまな演出が実行される。
なお、各基板には、不図示の電源基板が接続されており、電源基板を介して商用電源から各基板に電力供給がなされている。
(演出役物装置202の駆動処理)
図6は、演出役物装置202の駆動処理を説明するための説明図である。上述したように、副制御基板330において、演出決定手段332は、演出パターンに基づいた役物パターンを決定し、演出実行手段334は、その役物パターンに従ってコマンドを生成する。ここでは、演出役物装置202として回転役物202aを挙げ、その回転役物202aを構成するモータを駆動する例を説明する。したがって、モータの駆動(回転)に連動して回転役物202aが回転する。
具体的に、演出実行手段334は、プログラムおよびサブRAM330cと協働して、制御命令解析部334a、タイマ処理部334b、センサ処理部334cとしても機能する。制御命令解析部334aは、サブROM330bから、役物パターンに対応する制御命令テーブルを読み出す。制御命令テーブル(制御命令プログラム)は、演出パターンに基づいて実行される一連の役物パターンを構成する複数の制御命令が時系列にリスト化されたものであり、規定された処理順(順次、分岐、反復)に処理が行われる。制御命令は、モータ202dを駆動する駆動条件を示す命令であり、例えば、回転方向、回転量、回転速度が記述される。かかる制御命令に関しては、後程詳述する。
制御命令解析部334aは、所定の時間間隔で、読み出した制御命令テーブルの先頭から制御命令を抽出し、抽出した制御命令を解析し、その解析内容に基づいてコマンドを生成して役物コントローラ342に送信する。ここで、制御命令にタイマに関する処理が含まれている場合、制御命令解析部334aは、タイマ処理部334bにタイマに関する処理を行わせ、タイマ処理部334bは、タイマに関する処理を実行後、その結果を制御命令解析部334aに伝達する。また、タイマ処理部334bは、センサ信号の受信を契機に計時処理を実行する場合、センサ処理部334cにセンサ信号の判定処理を実行させる。センサ処理部334cは、役物コントローラ342からセンサ信号を受信すると、センサ信号を解析し、その解析結果をタイマ処理部334bに伝達し、タイマ処理部334bは、センサ信号の受信を契機にタイマに関する処理、例えば、計時を開始または終了し、その結果を制御命令解析部334aに伝達する。また、制御命令にセンサ信号に関する処理が含まれている場合、制御命令解析部334aは、センサ処理部334cに、センサ信号の判定処理を実行させ、センサ処理部334cは、センサ信号の判定処理を実行後、その結果を制御命令解析部334aに伝達する。
役物コントローラ342は、制御命令解析部334aから受信したコマンドに従ってモータ202dを駆動するための励磁パターンを自動的に生成し、演出役物装置202のドライバ202cに、パルス信号を通じて励磁パターンを伝達する。こうして、ドライバ202cは、生成された励磁パターンでモータ202dを駆動することが可能となる。また、役物コントローラ342は、ドライバ202cからリミットセンサ等のセンサ情報を受信すると、センサ処理部334cにそのセンサ信号を出力するとともに、かかるセンサ情報や、モータ202dの回転位置(ステップ数)に基づいて、制御命令解析部334aにコマンドの完了通知を出力する。コマンドの完了通知を受けた制御命令解析部334aは、完了通知に基づき当該制御命令の実行結果を反映して当該制御命令に対する処理を完了し、次の処理順の制御命令を抽出する。
図7は、比較例としての制御命令を示した説明図であり、図8は、比較例としての制御命令解析部334aの処理の流れを示したフローチャートである。ここでは、回転役物202aを構成する任意のモータ202dに対し、演出役物装置202が原点(退避位置)から所定の回転を行うためのモータ202dの回転方向を基本回転方向とし(移動役物202bの場合、原点から移動する方向)、正方向は基本回転方向と等しい回転方向、負方向は基本回転方向と逆の回転方向とする。したがって、基本回転方向をCWとすると、正方向は基本回転方向と等しいCW、負方向は基本回転方向と逆回転となるCCWとなり、基本回転方向をCCWとすると、正方向は基本回転方向と等しいCCW、負方向は基本回転方向と逆回転となるCWとなる。以下では、前者である基本回転方向をCWとした場合を説明する。
制御命令解析部334aは、制御命令テーブルから制御命令を規定された処理順に従って抽出し、その制御命令を解析する。例えば、図7に示すように、制御命令が「ADV」であれば、役物コントローラ342に対し、モータ202dを正方向に回転するコマンドを送信する。したがって、図7中、破線の円矢印で示したように、直前(現時点)の回転方向(以下、単に「直前回転方向」という。)がCWであるかCCWであるかに拘わらず、モータ202dは、図7中、実線の円矢印で示したように、CWに回転することとなる。また、制御命令が「BACK」であれば、役物コントローラ342に対し、モータ202dを負方向に回転するコマンドを送信する。したがって、図7中、破線の円矢印で示したように、直前回転方向がCWであるかCCWであるかに拘わらず、モータ202dは、図7中、実線の円矢印で示したように、CCWに回転することとなる。
このとき、コマンドには、回転方向の他に付加情報として、例えば、回転量および回転速度を付すことができる。ここで、回転量は、ステッピングモータのステップ数(p)で表すことができ、回転速度は、単位時間当たりのステップ数(p/s)で表すことができる。
ここで、制御命令「ADV」および制御命令「BACK」を用いてモータ202dの加減速を行う手順を示す。加減速は、現在のモータ202dの回転方向である直前回転方向に加速または減速を行う動作であり、直前回転方向と等しい回転方向のコマンドを生成しなければならない。したがって、図8のように、制御命令解析部334aは、モータ202dの加減速を行う旨の制御命令を解析すると(S20におけるYES)、まず、役物コントローラ342から、役物コントローラ342内で保持されている直前回転方向を取得する(S21)。そして、制御命令解析部334aは、直前回転方向と等しい回転方向を設定すべく、直前回転方向がCWであるか否か判定し(S22)、直前回転方向がCWであれば(S22におけるYES)、回転方向がCWとなる制御命令「ADV」を付加情報とともに制御命令テーブルとして設定し(S23)、また、直前回転方向がCCWであれば(S22におけるNO)、回転方向がCCWとなる制御命令「BACK」を付加情報とともに制御命令テーブルとして設定する(S24)。かかる制御命令テーブルの設定は、ステップS20で解析した、直前回転方向に加速または減速を行う制御命令を、制御命令「ADV」や制御命令「BACK」に置換することで実現できる。
続いて、制御命令解析部334aは、改めて、制御命令「ADV」または制御命令「BACK」を解析し(S25)、その制御命令に従ったコマンドを役物コントローラ342に送信する(S26)。こうして、直前回転方向と等しい回転方向への加減速が実現される。
しかし、かかる手順によると、モータ202dの直前回転方向の取得および制御命令の設定といった煩雑な処理を伴い、制御命令テーブルが複雑になるだけでなく、処理負荷や処理時間の増加を招くことになる。また、例えば、回転方向を考慮する必要のない加減速といった単純な動作であっても直前回転方向を考慮しなければならないので、その設計も煩雑になり、設計者に負担を強いることになる。
そこで、ここでは、制御命令として、直前回転方向と等しい回転方向である「順方向」と、直前回転方向とは逆の回転方向である「逆方向」という概念を採用し、処理負荷や処理時間、ならびに、設計者の負担の軽減を図る。
図9は、本実施形態の制御命令を示した説明図であり、図10は、本実施形態の制御命令解析部334aの処理の流れを示したフローチャートである。かかる図9においても、図7同様に、基本回転方向、正方向、負方向が定義される。ただし、ここでは、基本回転方向、正方向、負方向に加え、直前回転方向と等しい回転方向である順方向と、直前回転方向とは逆の回転方向である逆方向が定義される。
制御命令解析部334aは、制御命令テーブルから制御命令を規定された処理順に従って抽出し、その制御命令を解析する。例えば、図9に示すように、制御命令が「CONT」であれば、役物コントローラ342に対し、モータ202dを順方向に回転するコマンドを送信する。したがって、図9中、破線の円矢印で示したように、直前回転方向がCWであれば、モータ202dは、図9中、実線の円矢印で示したようにCWに回転し、また、破線の円矢印で示したように、直前回転方向がCCWであれば、モータ202dは実線の円矢印で示したようにCCWに回転する。また、制御命令が「REV」であれば、役物コントローラ342に対し、モータ202dを逆方向に回転するコマンドを送信する。したがって、破線の円矢印で示したように、直前回転方向がCWであれば、モータ202dは、実線の円矢印で示したようにCCWに回転し、また、破線の円矢印で示したように、直前回転方向がCCWであれば、モータ202dは、実線の円矢印で示したようにCWに回転する。このとき、コマンドには、制御命令「ADV」や制御命令「BACK」と同様に、回転方向の他に付加情報として回転量および回転速度を付すことができる。
ここで、制御命令「CONT」や制御命令「REV」を用いてモータ202dの加減速を行う手順を示す。ここでは、順方向に加減速を行う例を挙げる。したがって、加減速を行う旨の制御命令として、制御命令「CONT」が用いられる。図10のように、制御命令解析部334aは、制御命令テーブルから、モータ202dの加減速を行う旨の制御命令、すなわち、制御命令「CONT」を抽出、解析すると(S20におけるYES)、その制御命令に従ったコマンドを役物コントローラ342に送信する(S26)。
そして、役物コントローラ342は、受信したコマンドと、役物コントローラ342内で保持する直前回転方向とに基づいて、モータ202dが順方向に加減速する励磁パターンを生成し、すなわち、直前回転方向がCWであれば回転方向がCWとなる励磁パターンを生成し、直前回転方向がCCWであれば回転方向がCCWとなる励磁パターンを生成し、演出役物装置202のドライバ202cに、パルス信号を通じて励磁パターンを伝達する。こうして、直前回転方向と等しい回転方向への加減速が実現される。
ここで、役物コントローラ342は、前回のコマンド対応時の回転結果を内部的に保持しておいて、それを直前回転方向としてもよいし、その時点の実際の回転方向を検出し、それを直前回転方向としてもよい。なお、その時点で、モータ202dが回転していない、または、既に回転が完了して停止状態にある場合には、直前回転方向は、過去における回転動作のうち最も近い回転動作時の回転方向とする。したがって、役物コントローラ342内では、回転動作の終了後も、停止状態にある間は直前の回転動作時の回転方向を維持することとなる。また、演出役物装置202の初期化後の初回動作時は、基本回転方向を直前回転方向として定める。
ここでは、演出実行手段334の制御命令解析部334aが、順方向を示す制御命令に基づいて順方向を示すコマンドを生成し、役物コントローラ342が、順方向を示すコマンドと、モータ202dの直前回転方向とに基づいてモータ202dを順方向に駆動する例を挙げて説明したが、順方向に限らず、演出実行手段334の制御命令解析部334aが、逆方向を示す制御命令に基づいて逆方向を示すコマンドを生成し、役物コントローラ342が、逆方向を示すコマンドと、モータ202dの直前回転方向とに基づいてモータ202dを逆方向に駆動することもできる。
ここで、図8と図10とを比較すると、制御命令「CONT」を用いることで、ステップS21~S25を省略できることが解る。これは、制御命令解析部334aと、役物コントローラとが協働して実行していた複雑な情報交換処理を、下位層(デバイス制御層)である役物コントローラ342に担わせることで実現している。したがって、直前回転方向の取得(S21)および制御命令の設定(S23、S24)というような煩雑な処理を伴うことなく、簡素な制御命令テーブルにより、処理負荷や処理時間の削減を図ることが可能となる。
また、設計者は、例えば、回転方向の指示を要さない加減速といった単純な動作を、制御命令「CONT」や制御命令「REV」といった簡易な制御命令で実現できるので、設計が容易になり、設計負担が軽減される。以下、制御命令「CONT」や制御命令「REV」を適用した具体的な例を示す。
(実施例1)
実施例1として、例えば、演出操作装置208が遊技者の操作を受け付け、それに伴ってモータ202dを減速して停止する(順方向に10ステップ移動して停止する)場合の制御命令を挙げる。仮に、制御命令「ADV」や制御命令「BACK」を用いてモータ202dの停止を実現しようとすると、図8で説明したように、制御命令解析部334aは、役物コントローラ342から直前回転方向を取得して(S21)、さらに、その直前回転方向に基づき制御命令を設定しなければならない(S23、S24)。したがって、設定する制御命令として、制御命令「ADV」でCWに減速することと、制御命令「BACK」でCCWに減速することの2つの制御命令を選択的に準備しておかなければならない。
しかし、制御命令「CONT」や制御命令「REV」を用いると、例えば、順方向に10ステップ移動して停止する場合、制御命令「CONT」を制御命令テーブルに設定しさえすれば足りる。図10で説明したように、制御命令解析部334aは、かかる制御命令「CONT」を解析し(S20)、その制御命令「CONT」に従ったコマンドを役物コントローラ342に送信する(S26)だけで、当該モータ202dの停止を実現できる。
なお、モータ202dの停止には、「逆方向に10ステップ移動して停止」といった制御命令を考慮する必要がなく順方向のみ考慮すればよいので、設計者は、制御命令「CONT」のみを用いて容易に停止処理を設計することが可能となる。
(実施例2)
実施例2として、モータ202dをCWとCCWに交互に同一回転量(ステップ数)、所定の回転速度で移動させる、所謂、振動演出が行われているときに、大当たりであるか否かを報知するタイミングでモータ202dを逆方向に加速させ、振動演出の回転速度を高める制御命令を挙げる。ここで、逆方向の加速を挙げているのは、逆方向に反転した方が速度の変化を表現し易いからであり、順方向の加速を排他しているものではない。
仮に、制御命令「ADV」や制御命令「BACK」を用いてモータ202dの逆方向の加速を実現しようとすると、図8で説明したように、制御命令解析部334aは、役物コントローラ342から直前回転方向を取得して(S21)、さらに、その直前回転方向に基づき、直前回転方向と逆に回転させる制御命令を設定しなければならない(S23、S24)。したがって、設定する制御命令として、制御命令「BACK」でCCWに加速することと、制御命令「ADV」でCWに加速することの2つの制御命令を選択的に準備しておかなければならない。
しかし、制御命令「CONT」や制御命令「REV」を用いると、例えば、逆方向に加速する場合、制御命令「REV」を制御命令テーブルに設定しさえすれば足りる。図10で説明したように、制御命令解析部334aは、かかる制御命令「REV」を解析し(S20)、その制御命令「REV」と回転速度に従ったコマンドを役物コントローラ342に送信する(S26)だけで、当該モータ202dの逆方向の加速を実現できる。
なお、モータ202dの逆方向の加速には、「順方向に加速」といった制御命令を考慮する必要がなく、逆方向のみ考慮すればよいので、設計者は、制御命令「REV」のみを用いて容易に加速処理を設計することが可能となる。
このように、順方向や逆方向への回転といった動作に対し、その動作を直接実行可能な制御命令「CONT」および制御命令「REV」を追加することで、設計の自由度が高まる。また、直前回転方向に拘わらず正方向や負方向といった絶対的な方向への回転を要する場合には、制御命令「ADV」や制御命令「BACK」を用い、直前回転方向の参照が必要な、順方向や逆方向といった相対的な方向への回転を要する場合には、制御命令「CONT」や制御命令「REV」を用いるといったように、制御命令を使い分けることもできる。このような簡易な制御命令により、容易な設計が可能となり、設計負担の大幅な削減を図ることが可能となる。
また、順方向や逆方向への回転を実行することに対し、設計者は直前回転方向が正方向であるか負方向であるかを考慮する必要がなくなり、直感的に順方向か逆方向かを把握できるので、制御命令テーブルを見直す労力を軽減でき、また、プログラムの誤表記を回避することができる。
さらに、順方向や逆方向といった概念を採用することで、上述した、モータ202dの停止や、モータ202dの逆方向への加速といった順方向か逆方向のいずれか一方のみを考慮すればよい場合に、正方向および負方向のいずれもの制御命令を準備する必要がないので、制御テーブルを簡素化することができる。
(モータ202dの回転に関する制御命令)
図11は、モータ202dの回転に関する制御命令を例示した説明図である。ここでは、演出役物装置202として、制限なく回転自在な回転役物202aを挙げて説明する。なお、ここでは、説明の便宜上、モータ202dの回転方向と回転役物202aの回転方向とは等しいものとする。したがって、モータ202dを正方向に回転することは回転役物202aを正方向に回転することと同義になる。
上述した制御命令「ADV」、制御命令「BACK」、制御命令「CONT」、制御命令「REV」は、いずれも、現在のモータ202dの回転位置から相対的に回転する量(回転量)を指定する相対的制御命令であり、回転量が等しい制御命令であっても、駆動前の演出役物装置202の回転位置(回転角度)によっては、駆動後の回転役物202aの回転位置が異なることとなる。
ここで、図11で追加された制御命令「SHORT」は、回転役物202aを絶対的な回転位置に回転させるものであり、その回転方向として回転量が比較的短い180°未満となる制御命令を示す。また、制御命令「LONG」は、回転役物202aを絶対的な回転位置に回転させるものであり、その回転方向として回転量が比較的長い180°以上となる制御命令を示す。なお、回転量がちょうど180°となる場合、制御命令「LONG」を用いるようになっているが、予め定めておけば、制御命令「SHORT」と制御命令「LONG」のいずれが選択されてもよい。
かかる制御命令「SHORT」、制御命令「LONG」は、いずれも、現在のモータ202dの回転位置に拘わらず、絶対的な回転位置へ回転させる絶対的制御命令であり、回転位置が同一の制御命令であれば、駆動前の回転役物202aの回転位置(回転角度)が異なっていても、駆動後の演出役物装置202の回転位置は等しくなる。
なお、このような絶対的制御命令は、以下のようにして実現できる。すなわち、回転役物202aの直前(現在)の回転位置である直前回転位置を参照し、その直前回転位置を基準として、目標とする回転位置である目標回転位置との差分だけ回転役物202aを回転することで、回転役物202aを目標回転位置に到達させることが可能となる。
図12は、制御命令「SHORT」の処理概念を説明するためのフローチャートである。かかるフローチャートにおける「°」を付した表記は、説明の便宜上、全て、回転役物202aの絶対的な回転位置を、1回転の回転角度を360°とした場合の絶対的な回転角度に換算した換算値である。したがって、例えば、180°の表記は、180°に対応する(換算された)回転位置を示すこととなる。ここでは、まず、回転役物202aの直前回転位置(0以上の整数)が取得される(S30)。続いて、制御命令「SHORT」の付加情報に記述された、目標回転位置(0以上の整数)から直前回転位置を減算し、差分回転位置αを求める(S31)。
その差分回転位置αが、-360°以上、かつ、-180°未満であれば(S32におけるYES)、その差分回転位置αに360°を加えた回転量だけ正方向に回転する(S33)。また、その差分回転位置αが、-360°以上、かつ、-180°未満ではなく(S32におけるNO)、-180°以上、かつ、0°未満であれば(S34におけるYES)、その差分回転位置αの絶対値を回転量として負方向に回転する(S35)。その差分回転位置αが、-180°以上、かつ、0°未満ではなく(S34におけるNO)、0°以上、かつ、180°未満であれば(S36におけるYES)、その差分回転位置αをそのまま回転量として正方向に回転する(S37)。その差分回転位置αが、0°以上、かつ、180°未満でなければ、すなわち、180°以上、かつ、360°未満であれば(S36におけるNO)、360°から差分回転位置αを減算した回転量だけ負方向に回転する(S38)。
図13は、制御命令「LONG」の処理概念を説明するためのフローチャートである。かかるフローチャートにおける「°」を付した表記も、図12同様、説明の便宜上、全て、回転役物202aの絶対的な回転位置を、1回転の回転角度を360°とした場合の絶対的な回転角度に換算した換算値である。ここでは、まず、回転役物202aの直前回転位置(0以上の整数)が取得される(S40)。続いて、制御命令「LONG」の付加情報に記述された、目標回転位置(0以上の整数)から直前回転位置を減算し、差分回転位置αを求める(S41)。
その差分回転位置αが、-360°以上、かつ、-180°未満であれば(S42におけるYES)、その差分回転位置αの絶対値を回転量として負方向に回転する(S43)。また、その差分回転位置αが、-360°以上、かつ、-180°未満ではなく(S42におけるNO)、-180°以上、かつ、0°未満であれば(S44におけるYES)、その差分回転位置αに360°を加えた回転量だけ正方向に回転する(S45)。その差分回転位置αが、-180°以上、かつ、0°未満ではなく(S44におけるNO)、0°以上、かつ、180°未満であれば(S46におけるYES)、360°から差分回転位置αを減算した回転量だけ負方向に回転する(S47)。その差分回転位置αが、0°以上、かつ、180°未満でなければ、すなわち、180°以上、かつ、360°未満であれば(S46におけるNO)、その差分回転位置αをそのまま回転量として正方向に回転する(S48)。
図12、図13で示した、制御命令「SHORT」、制御命令「LONG」の具体的な処理を行う処理部位は、制御命令「CONT」、制御命令「REV」同様、役物コントローラ342であり、制御命令解析部334aは、かかる制御命令「SHORT」や制御命令「LONG」を解析し、その制御命令「SHORT」、制御命令「LONG」に従ったコマンドを役物コントローラ342に送信するだけで、回転役物202aを短距離または長距離に回転できる。
なお、かかる制御命令「SHORT」、制御命令「LONG」を、制御命令解析部334a自体で処理してもよい。ただし、この場合、制御命令解析部334aは、役物コントローラ342から直前回転位置を取得しなければならない。
(回転役物202a)
図14は、図11に示した制御命令を用いて、回転役物202aを回転させる例を示した図である。ここでは、回転役物202aの1回転の回転量(ステップ数)が「360」であったとする。したがって、回転役物202aの回転角度(°)と、絶対的な回転位置との数値が等しいこととなる。
ここで、例えば、現在、モータ202dは正回転しており(直前回転方向「正方向」)、回転役物202aがステップ数「0」の回転位置(直前回転位置「0」)にあるとする。ここで、回転役物202aをステップ数「120」の位置に回転、すなわち、目標回転位置を「120」とした場合、回転役物202aの回転方向としては正方向と負方向の2つが考えられ、それぞれの回転方向に対し、3種類の制御命令が考えられる。
まず、回転役物202aを正方向に回転する場合、直前回転位置が「0」なので、制御命令「ADV」によって、正方向に回転量「120」だけ回転することで、目標回転位置「120」に到達する。また、直前回転位置が「0」、直前回転方向が「正方向」なので、制御命令「CONT」によって、順方向に回転量「120」だけ回転することでも、正方向に回転しつつ目標回転位置「120」に到達することができる。また、直前回転位置が「0」なので、制御命令「SHORT」によって、回転位置「120」に短距離移動で回転することによっても、正方向に回転しつつ目標回転位置「120」に到達することができる。
一方、回転役物202aを負方向に回転する場合、直前回転位置が「0」なので、制御命令「BACK」によって、負方向に回転量「240」だけ回転することで、目標回転位置「120」に到達する。また、直前回転位置が「0」、直前回転方向が「正方向」なので、制御命令「REV」によって、逆方向に回転量「240」だけ回転することでも、負方向に回転しつつ目標回転位置「120」に到達することができる。また、直前回転位置が「0」なので、制御命令「LONG」によって、回転位置「120」に長距離移動で回転することによっても、負方向に回転しつつ目標回転位置「120」に到達することができる。
ところで、回転役物202aと異なり、移動役物202bの場合、その移動範囲には限界があり、移動役物202bの移動はその移動範囲内に制限される。したがって、例えば、移動範囲が移動位置「0」~移動位置「400」の間であれば、移動量もその範囲に制限され、管理が容易となる。しかし、回転役物202aの場合、その回転範囲に限界がなく、回転役物202aは、正回転または負回転に制限なく回転することが可能である。そうすると、以下の問題が生じる。
例えば、制御命令「ADV」によって正方向に回転量「720」回転するといった動作を試みた場合、制御命令解析部334aは、かかる制御命令「ADV」を解析し、正方向に回転量「720」だけ回転する。これは、1回転の回転量が「360」である回転役物202aが2回転することを示す。このように正方向に回転量「720」だけ回転(2回転)したことにより、直前回転位置が「720」となる。なお、回転役物202aは2回転しているものの、最終的な回転位置「720」は、回転開始したときの回転位置「0」と見た目上は等しくなっている。
ここで、仮に、絶対的な回転位置「1」への回転を試みるとする。ここでは、直前回転位置が「720」ではあるものの、その回転位置は見た目上「0」と等しいので、本来、回転位置「0」から回転位置「1」までの短距離回転となる。しかし、直前回転位置は実際には「720」となっているので、回転役物202aは、直前回転位置「720」から目標回転位置「1」に回転しようとし、結果的に、逆方向へ2回転することとなってしまう。したがって、設計者は、前回の制御命令の結果を踏まえて今回の制御命令を設計しなければならず、例えば、正方向に回転量「1」だけ回転する場合には、直前回転位置「720」を踏まえて目標回転位置を「721」とする等、その設計も煩雑になり、設計者に負担を強いることとなっていた。
また、制御命令「SHORT」を利用しようにも、直前回転位置は「720」であり、目標回転位置は「1」であるから、差分回転位置は、目標回転位置「1」-直前回転位置「720」により「-719」(-719°に対応)となり、図12に示したフローチャートでは回転制御できなくなる。したがって、このような差分回転位置にも対応できるように、制御命令「SHORT」の処理手順(フローチャート)を改良しなければならなくなる。
そこで、制御命令による回転役物202aの回転が完了すると、その度、その時点の回転位置を、1回転(0°~360°)に相当する回転範囲内の回転位置に補正(置換)して、次の制御命令を処理する。
図15は、回転位置の補正処理を説明するためのフローチャートである。役物コントローラ342は、モータ202dの回転駆動が完了すると、その時点の回転位置を直前回転位置として保持している。ここで、役物コントローラ342は、直前回転位置が360°(正確には、360°に相当する回転位置)以上であるか否か判定する(S50)。その結果、直前回転位置が360°以上であると判定されると(S50におけるYES)、直前回転位置から360°を減算して、その減算結果を直前回転位置として更新し(S51)、ステップS50からの処理を繰り返す。
直前回転位置が360°以上ではない、すなわち、360°未満であると判定されると(S50におけるNO)、役物コントローラ342は、直前回転位置が0°(正確には、0°に相当する回転位置)未満であるか否か判定する(S52)。その結果、直前回転位置が0°未満であると判定されると(S52におけるYES)、直前回転位置に360°を加算して、その加算結果を直前回転位置として更新し(S53)、ステップS52からの処理を繰り返す。
こうして、直前回転位置が360°未満であり(S50におけるNO)、0°以上である(S52におけるNO)と判定された結果の直前回転位置は、0~360°の回転範囲に収まることとなる。
例えば、上述したように、直前回転位置が720(720°に相当)となった場合、当該回転位置の補正処理により、直前回転位置は0(0°に相当)に補正される。したがって、次に、絶対的な回転位置「1」への回転を試みたとしても、直前回転位置が「0」なので、回転位置「0」から回転位置「1」までの本来意図している回転となる。また、制御命令「SHORT」や制御命令「LONG」を利用する場合にも、直前回転位置は「0」であり、目標回転位置は「1」であるから、差分回転位置は、目標回転位置「1」-直前回転位置「0」により「1」(1°に対応)となり、図12や図13に示したフローチャートで回転制御することが可能となる。
このように、制御命令による駆動完了後、直前回転位置を、回転役物202aの1回転に相当する回転範囲内の回転位置に補正する構成により、設計者は、その前の制御命令が何であったか考慮することを要さず、回転役物202aが、設計者が意図した動作を行うことになる。したがって、設計者は、容易な設計が可能となり、設計負担の大幅な削減を図ることができる。
なお、ここでは、回転位置の補正処理を役物コントローラ342で実現する例を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、役物コントローラ342から直前回転位置を取得することで、回転位置の補正処理を、制御命令解析部334a自体で実現してもよい。
(移動役物202b)
上述した構成により、回転範囲が制限されない回転役物202aも、移動範囲が制限される移動役物202b同様、高効率かつ高精度に動作させることができる。一方、他の観点で両者を比較すると、回転役物202aは、その回転範囲を物理的に制限する必要はないが、移動役物202bは、移動範囲を超えると遊技機100を構成する他の部材と干渉してしまうため、ストッパ等を設けて物理的にも制限する必要がある。
図16は、移動役物202bの移動範囲を説明するための説明図である。図16(a)に示すように、移動役物202bには、物理的制限として、移動正負方向それぞれにストッパ202eが設けられている。したがって、移動役物202bには、かかるストッパ202eに挟まれた移動可能範囲内でのみ物理的に移動できる。また、移動役物202bには、モータ202dの回転位置を管理し、ソフト的に移動範囲を制限することで、移動役物202bを他の部材と干渉させないようにしている。ここでは、かかる移動範囲を特定するため、移動役物202bの駆動軌跡上において、移動役物202bを、移動範囲の基準となる物理的に定められた原点に位置決めすることが可能な原点センサ202fも設けられている。原点センサ202fは、例えば、フォトセンサで構成され、移動役物202bの一部がフォトセンサを遮ることで原点センサ202fの信号が反転するようになっている。ここでは、移動役物202bの移動を所定の移動範囲に制限することで、移動役物202bがストッパ202eと干渉してしまうのを回避している。
ここで、図16(a)を直線的に展開した図16(b)~図16(e)を用いて、原点センサ202fによって原点を特定する処理を説明する。ここでは、図16(b)のように、回転位置「0」と回転位置「400」とにストッパ202eが存在し、回転位置「50」に原点センサ202fが位置し、移動役物202bは回転位置「50」に位置しているとする。
まず、遊技機100の電源がONされると、演出実行手段334は、図16(c)のように、移動役物202bを所定の初期回転量だけ正方向に移動する。ここで、初期回転量だけ正方向(原点センサ202fと離れる方)に移動しているのは、移動役物202bを原点センサ202fに確実に検知させるためであり、初期回転量としては、負方向のストッパ202eと原点センサ202fとの距離以上の値、例えば、回転量「70」を採用する。なお、図16(c)の移動では、原点センサ202fの検出結果は参照しない。
次に、演出実行手段334は、図16(d)のように、移動役物202bを負方向に移動させ、移動役物202bが原点センサ202fに到達して原点センサ202fの検出結果が反転したら(原点センサ202fに到達したことを検出すると)、その位置で移動役物202bを停止する。このように停止した時点の回転位置を原点としての回転位置「50」に設定し、その回転位置を基準として、移動範囲を図16(e)のように回転位置「50」~回転位置「350」の間に設定する。こうして、移動役物202bが回転位置「0」や回転位置「400」に位置するストッパ202eと干渉することを回避しつつ、移動役物202bを自在に移動することが可能となる。
ただし、原点センサ202fが不具合等により機能しない場合、以下の問題が生じる。図16(d)のように、移動役物202bが負方向に移動する際、移動役物202bが原点センサ202fに到達したとしても、原点センサ202fの検出結果が反転しないので、移動役物202bは、負方向のストッパ202eと干渉することになる。この場合においても、演出実行手段334は、移動役物202bを負方向にさらに移動しようとするが、ストッパ202eにより、それ以上移動できないため、タイムアウトにより、移動役物202bが停止する。このとき、図16(e)同様、仮に、その停止した回転位置を「50」とすると、移動範囲を設定することはできるが、回転位置「50」~回転位置「350」とした移動範囲は、実際には、回転位置「0」~回転位置「300」であり、設定された回転位置「50」より負方向には移動することができないため、回転位置「50」近傍での移動が制限される。
そこで、原点センサ202fが不具合により機能しなかった場合であっても、その状況に応じた設定を行うことで、移動役物202bの移動範囲を確保する。
図17は、移動役物202bの移動範囲を説明するための他の説明図である。ここでも、図17(a)のように、回転位置「0」と回転位置「400」とにストッパ202eが存在し、回転位置「50」に原点センサ202fが位置し、移動役物202bは回転位置「50」に位置しているとする。
まず、遊技機100の電源がONされると、演出実行手段334は、図17(b)のように、移動役物202bを所定の初期回転量だけ正方向に移動する。なお、図17(b)の移動では、原点センサ202fの検出結果は参照しない。
次に、演出実行手段334は、図17(c)のように、移動役物202bを負方向に移動させる。しかし、移動役物202bが原点センサ202fの位置に到達したとしても、原点センサ202fの検出結果が反転しないので、移動役物202bが停止することはない。
そして、演出実行手段334は、移動役物202bを負方向に移動し続け、原点センサ202fに到達したことを検出することなく、負方向のストッパ202eまで移動すると、それ以上は物理的に移動できなくなる。そして、所定の完了条件として、所定時間の経過を待ってタイムアウトにより移動役物202bを停止する。ここで、演出実行手段334は、このように停止した回転位置を、ストッパ202eが存在する回転位置「0」に設定する。すなわち、ストッパ202eと原点センサ202fとの距離を予め推定しておき、タイムアウトにより、負方向のストッパ202eに位置していることを把握したら、その差分だけ、原点センサ202fより負方向に位置していると換算した回転位置を設定する。
例えば、ここでは、ストッパ202eと原点センサ202fとの距離が回転量「50」に相当するので、本来、原点センサ202fに設定する回転位置「50」から回転量「50」を減算した回転位置「0」を設定することとなる。このように、ストッパ202eによって停止した回転位置を、ストッパ202eが存在する回転位置「0」に設定し、その位置を基準とすることで、移動範囲を、移動範囲を図16(e)のように、回転位置「50」~回転位置「350」の間に設定することができる。
そして、演出実行手段334は、移動役物202bを適切に動作すべく、移動役物202bを回転位置「50」に移動する。ここでは、移動範囲(「50」~「350」)および移動可能範囲(「0」~「400」)が全て0以上の整数で表されるので、制御命令も0以上の整数で示すことができ、演算の処理負荷を軽減することができる。
こうして、原点センサ202fが不具合により機能しなかった場合であっても、移動範囲を適切に設定し、移動役物202bが回転位置「0」や回転位置「400」に位置するストッパ202eと干渉することを回避しつつ、継続的に、移動役物202bを自在に移動することが可能となる。
なお、ここでは、ストッパ202eの位置を回転位置「0」と回転位置「400」とし、原点センサ202fの位置を回転位置「50」として説明したが、位置関係さえ変化させなければ、その具体的な回転位置は任意に設定することができる。
また、ここでは、ストッパ202eの回転位置「50」から、ストッパ202eと原点センサ202fとの距離が回転量「50」を減算して、ストッパ202eによって停止した回転位置を「0」に設定する例を挙げたが、ストッパ202eの回転位置から、ストッパ202eと原点センサ202fとの距離を減算した値を設定しさえすれば、適切な移動範囲を設定することができる。
また、ここでは、遊技機100の電源がONしたときの原点の初期化タイミングにおける移動範囲の設定を説明したが、かかるタイミングに拘わらず、遊技中の任意のタイミングや、移動役物202bの移動前または移動後の任意のタイミングで移動範囲を設定してもよい。
また、ここでは、所定の完了条件として、所定時間が経過することを挙げて説明したが、かかる場合に限らず、例えば、原点センサ202fと異なる他のセンサを負方向に配し、そのセンサの信号が反転するといったように、負方向の物理的な制限を示す様々な条件を適用することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態においては、遊技機として、大当たり図柄を含む複数種類の図柄の中からいずれかを決定する図柄決定手段と、図柄が決定されてから所定の変動時間が経過すると、図柄表示部に図柄を表示させる図柄表示手段と、図柄表示部に大当たり図柄が表示されると、複数回のラウンド遊技で構成される大役遊技を実行する大役遊技実行手段と、大役遊技におけるラウンド遊技のうち予め設定された特定ラウンド遊技中に、大入賞口に入球した遊技球が特定領域に進入すると、所定の遊技利益を付与する遊技利益付与手段と、大役遊技中の演出を実行する演出実行手段と、を備えるパチンコ機を例示したが、かかる場合に限らず、スタートスイッチの操作に基づき、複数種類の当選役のいずれかを当選役抽選により決定する当選役抽選手段と、スタートスイッチの操作に応じて、複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数の回転リールを回転制御し、回転している回転リールに対応するストップスイッチの操作に応じ、当選役抽選手段の抽選結果に基づいて、操作されたストップスイッチに対応する回転リールをそれぞれ停止制御するリール制御手段と、複数種類の演出のいずれかを実行する演出制御手段と、を備えるスロットマシンにも適用できる。以下、スロットマシン600について詳述する。
(スロットマシン600の機械的構成)
図18および図19の外観図に示すように、スロットマシン600は、略矩形状の箱体である筐体602と、筐体602の前面開口部に対して回動可能な連結部材により開閉可能に取り付けられた前面上扉604と、前面上扉604の下方に位置し、前面上扉604同様、筐体602の前面開口部に対して開閉可能に取り付けられた前面下扉606と、前面下扉606の下部に位置し、メダル排出口608aから払い出されたメダルを貯留するための受け皿部608とを備えている。
前面下扉606の上部には操作部設置台622が形成され、操作部設置台622には、メダル投入部624、ベットスイッチ626、スタートスイッチ628、ストップスイッチ630、演出スイッチ632等が配設されている。
操作部設置台622の右側に位置するメダル投入部624は、メダル投入口624aを通じて遊技媒体としてのメダルの投入を受け付け、前面下扉606の背面に設けられたメダルセレクタ(図示せず)にメダルを送る。メダルセレクタには、メダルの投入が可能な投入期間外に投入されたメダルや規格外のメダルをメダル排出口608aに導くブロッカー(図示せず)と、投入期間内に投入された規格内のメダルの通過を検出する投入メダル検出部624bとが設けられている。ここで、メダル排出口608aに導かれたメダルは受け皿部608に排出される。遊技者により、1遊技を開始するために必要なメダルの投入数である規定投入数を超えてメダルが投入されると、その規定投入数を超えた分のメダルが、所定枚数(例えば50枚)を上限としてスロットマシン600の内部に電気的に貯留(以下、単にクレジットという)される。上記1遊技については後程詳述する。
また、ここでは、規定投入数は「3」または「2」に設定されている。なお、1遊技を実行するために必要なメダル数を、複数の規定投入数から任意に選択できる場合、その複数の規定投入数の中の最大のものを最大規定投入数といい、最小のものを最小規定投入数という。仮に、規定投入数が1~3の間で選択可能な場合、最大規定投入数は「3」となり、最小規定投入数は「1」となる。
ベットスイッチ626は、クレジットされているメダルのうち規定投入数のメダルを投入(ベット)する、押圧式のボタンスイッチである。規定投入数以上のメダルがクレジットされている状態で、ベットスイッチ626を押圧すると、1遊技が開始可能となるとともに、クレジットされているメダルが規定投入数分だけ減枚される。
操作部設置台622の左側に位置するスタートスイッチ628は、傾倒操作を検出可能なレバーで構成され、遊技者による1遊技の開始操作を検出する。また、スタートスイッチ628は、押圧操作を検出可能なボタンスイッチによって構成することも可能である。
前面上扉604の下部略中央には、ガラス板や透明樹脂板等で構成された無色透明の図柄表示窓636が設けられ、筐体602内の図柄表示窓636に対応した位置には、リールユニット634が設けられている。リールユニット634には、図20のリールの図柄配列に示すように、21に等分された各領域に複数種類の図柄がそれぞれ配列された3つの回転リール(左リール634a、中リール634b、右リール634c)が、それぞれ独立して回動可能に設けられ、遊技者は、図柄表示窓636を通じて、左リール634a、中リール634b、右リール634cを視認することができる。リールユニット634は、スタートスイッチ628の操作を契機として、左リール634a、中リール634b、右リール634cの回転を開始する。
操作部設置台622の中央に位置するストップスイッチ630は、左リール634a、中リール634b、右リール634cそれぞれに対応して設けられた、遊技者の押圧操作を検出可能なボタンスイッチであり、左リール634a、中リール634b、右リール634cそれぞれを停止させようとする遊技者の停止操作を検出する。なお、ストップスイッチ630に係る3つのボタンスイッチを特にストップボタンスイッチとよび、その位置に応じて左から順にストップボタンスイッチ630a、ストップボタンスイッチ630b、ストップボタンスイッチ630cとする。
演出スイッチ632は、押圧式のボタンスイッチと、その周囲に回転自在に配されたジョグダイヤルスイッチとから構成され、遊技者の押圧操作や回転操作を検出する。かかる演出スイッチ632は、主として演出中に用いられ、遊技者の操作によって演出態様を異ならせることができる。
前面上扉604の上部略中央には、演出に伴う様々な映像を表示する液晶表示部638が設けられている。また、前面上扉604の上部や左右には、例えば高輝度の発光ダイオード(LED)によって構成される演出用ランプ642が設けられる。また、図柄表示窓636と操作部設置台622との間には、駆動装置からなる演出役物装置660が設けられている。
また、図19に示すように、前面上扉604の裏面における液晶表示部638の左右位置や前面下扉606の裏面における内面左右位置には、効果音や楽音等による聴覚的な演出を行うスピーカ640が設けられている。さらに、筐体602内におけるリールユニット634の下方には、メダル排出口608aからメダルを払い出すためのメダル払出装置(メダルホッパー)764が設けられている。メダル払出装置764は、メダルを貯留するメダル貯留部764aと、メダル貯留部764aに貯留されたメダルをメダル排出口608aから排出するための払出制御部764bと、メダル排出口608aから排出されるメダルを検出する払出メダル検出部764cとを備えている。具体的に払出制御部764bは、当該払出制御部764bの本体外装に回動可能に支持され、メダル貯留部764aから落下したメダルが上方より1枚ずつ嵌入するメダル嵌入孔を円周方向に複数配してなるディスク(図示せず)と、かかるディスクを回転するディスクモータ(図示せず)とを備え、このディスクを回転させて、メダル嵌入孔に嵌入したメダルを、押出機構を通じて1枚ずつ外部に排出するとともに、排出により空いたメダル嵌入孔に次のメダルを順次嵌入させることで、メダルを1枚ずつ連続排出する。
また、図18や図19では図示していないが、各回転リール634a、634b、634cの内側には、左リール634a、中リール634b、右リール634cそれぞれに施された図柄のうち、図柄表示窓636に対応する(払い出しの対象となるラインである有効ラインの対象となり得る)各回転リール634a、634b、634cの上段、中段、下段の図柄を背面から個々に独立して照射するリールバックライト644(図21参照)が設けられている。また、図柄表示窓636の裏面上部にも左リール634a、中リール634b、右リール634c全ての正面を直接照射するリール上方ライト646が設けられている。
また、図18に示すように、操作部設置台622において、図柄表示窓636とストップスイッチ630との間に設けられた段部622aの略水平面には、メインクレジット表示部652およびメイン払出表示部654が設けられている。また、図柄表示窓636と操作部設置台622との間には、サブクレジット表示部656およびサブ払出表示部658が設けられている。これらメインクレジット表示部652およびサブクレジット表示部656にはクレジット枚数が表示され、メイン払出表示部654およびサブ払出表示部658にはメダルの払出枚数が表示される。なお、サブクレジット表示部656およびサブ払出表示部658には、演出に伴う様々な数値を表示することもできる。
また、筐体602内の任意の位置には、電源スイッチ648が設けられている。電源スイッチ648は、ロッカースイッチ等、押圧操作を検出可能なスイッチで構成され、当該スロットマシン600を管理する管理者側が操作し、電源の切断状態と電源の投入状態の2つの状態を切り換えるために用いられる。
なお、本実施形態において、上記1遊技は、メダル投入部624を通じたメダルの投入、ベットスイッチ626の操作を通じたクレジットされているメダルの投入、または、リプレイ役が有効ライン上に表示されたことに基づくメダルの自動投入のいずれかが行われてから、遊技者によるスタートスイッチ628の操作に応じて、複数の回転リール634a、634b、634cが回転制御されるとともに当選役抽選が実行され、当選役抽選の抽選結果および遊技者による複数のストップボタンスイッチ630a、630b、630cの操作に応じて、操作されたストップボタンスイッチ630a、630b、630cに対応する回転リール634a、634b、634cがそれぞれ停止制御され、メダルの払い出しを受け得る当選役に入賞した場合、そのメダルの払い出しが実行されるまでの遊技をいう。また、メダルの払い出しを受け得る当選役に非当選であった場合または当選したが入賞しなかった場合、回転リール634a、634b、634cが全て停止したことをもって1遊技が終了する。ただし、1遊技の開始を、上記のメダルの投入、または、リプレイ役の当選の代わりに、遊技者によるスタートスイッチ628の操作と読み替えてもよい。また、かかる1遊技が繰り返される数を遊技数とする。
(スロットマシン600の電気的構成)
図21は、スロットマシン600の概略的な電気的構成を示したブロック図である。図21に示すように、スロットマシン600は、主として、制御基板によって制御されている。ここでは、制御基板の一例として、制御基板の機能を分担した、主制御基板700と、副制御基板702とを挙げて説明する。例えば、遊技の進行に関わるプログラムのうち、遊技に供する当選役の抽選やその入賞といったような、特に重要な処理を主制御基板700で実行し、それ以外の例えば演出に関する処理を副制御基板702で実行している。また、図21に示したように、主制御基板700と副制御基板702との間の電気的な信号の伝達は、不正防止等の観点から、主制御基板700から副制御基板702への一方向のみに制限される。ただし、このような制限がなければ、電気的に双方向通信も技術的に可能である。
(主制御基板700)
主制御基板700は、中央処理装置であるメインCPU700a、プログラム等が格納されたメインROM700b、ワークエリアとして機能するメインRAM700c等を含む各種半導体集積回路を有し、スロットマシン600全体を統括的に制御する。ただし、メインRAM700cには不図示のバックアップ電源が接続されており、電源が切断された場合においても、設定変更が行われてメインRAM700cの初期化処理を実行しない限り、データが消去されることなく保持される。
また、主制御基板700は、メインCPU700aが、メインROM700bに格納されたプログラムに基づきメインRAM700cと協働することで機能する、初期化手段800、ベット手段802、当選役抽選手段804、リール制御手段806、判定手段808、払出制御手段810、状態移行手段812、コマンド決定手段814、コマンド送信手段816等の機能部を有する。
初期化手段800は、主制御基板700における初期化処理を実行する。ベット手段802は、遊技に使用するためのメダルをベットする。ここで、ベットは、ベットスイッチ626の操作を通じてクレジットされているメダルを投入する場合と、メダル投入部624を通じてメダルを投入する場合と、リプレイ役が有効ライン上に表示されたことに基づいてメダルを自動投入する場合のいずれも含む。当選役抽選手段804は、メダルのベットおよびスタートスイッチ628の操作に基づき、小役、リプレイ役、および、ボーナス役を含む複数種類の当選役、ならびに、ハズレのうちいずれかを当選役抽選により決定する。
リール制御手段806は、スタートスイッチ628の操作に応じて、複数の回転リール634a、634b、634cを回転制御し、回転している回転リール634a、634b、634cにそれぞれ対応した複数のストップボタンスイッチ630a、630b、630cの操作に応じ、操作されたストップボタンスイッチ630a、630b、630cに対応する回転リール634a、634b、634cをそれぞれ停止制御する。また、リール制御手段806は、スタートスイッチ628の操作に応じて、前回の遊技においてストップスイッチ630の操作を有効化してから、当選役抽選の抽選結果を表示するために遊技者によるストップスイッチ630の操作を有効化するまで(前回の遊技におけるストップスイッチ630の操作完了により無効化されている)の時間を規定の時間より延長し、その間、回転リール634a、634b、634cを多彩な態様で回転させるリール演出(フリーズ演出)を行う場合がある。リール演出は、本来有効となるべき任意のスイッチを所定時間有効にしなかったり、本来実行されるべき処理を所定時間保留したり、本来送受信されるべき任意のスイッチの信号を所定時間送信または受信させなかったりすることで実現できる。
判定手段808は、当選役抽選で決定した当選役に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に表示されたか否か判定する。ここで、当選役抽選で決定した当選役に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に表示されることを単に入賞という場合がある。払出制御手段810は、当選役抽選で決定した当選役に対応する図柄組み合わせが有効ライン上に表示されたこと(入賞されたこと)に基づいて、当該当選役に対応する数だけメダルを払い出す。状態移行手段812は、ボーナス役の当選や入賞に基づいて遊技状態を遷移させる。
コマンド決定手段814は、ベット手段802、当選役抽選手段804、リール制御手段806、判定手段808、払出制御手段810、状態移行手段812等の動作に伴う、遊技に関するコマンドを順次決定する。コマンド送信手段816は、コマンド決定手段814が決定したコマンドを副制御基板702に順次送信する。
主制御基板700では、投入メダル検出部624b、ベットスイッチ626、スタートスイッチ628およびストップスイッチ630から各種の検出信号を受信しており、受信した検出信号に基づいて、ベット手段802、当選役抽選手段804、リール制御手段806、判定手段808が上述した種々の処理を実行する。また、主制御基板700には、メインクレジット表示部652およびメイン払出表示部654が接続されており、払出制御手段810が両表示部652、654に対してメダルのクレジット枚数や払出枚数の表示を制御する。
また、主制御基板700には、リール駆動制御部758が接続されている。このリール駆動制御部758は、スタートスイッチ628の操作信号に応じ、リール制御手段806から送信される各回転リール634a、634b、634cの回転開始信号に基づいて、ステッピングモータ762を駆動するとともに、ストップスイッチ630の操作信号に応じ、リール制御手段806から送信される、左リール634a、中リール634b、右リール634cそれぞれの停止信号および回転位置検出回路760の検出信号に基づいて、ステッピングモータ762の駆動を停止する。
また、主制御基板700には、メダル払出装置764が接続されている。主制御基板700には払出メダル検出部764cの検出信号が入力されるようになっており、払出制御手段810は、その検出信号に応じてメダルの払出枚数を計数しながら払出制御部764bからのメダルの排出を制御する。
また、主制御基板700には、乱数発生器700dが設けられる。乱数発生器700dは、計数値を順次インクリメントし、所定の総数(例えば65536)内でループさせ(0~65535)、所定の時点における計数値を抽出することで乱数を生成(取得)する。主制御基板700の乱数発生器700dによって生成される乱数(以下、当選役抽選乱数という)は、遊技者に付与する遊技利益、例えば、当選役抽選手段804が当選役抽選を実行するために用いられる。
(副制御基板702)
また、副制御基板702は、主制御基板700と同様に、中央処理装置であるサブCPU702a、プログラム等が格納されたサブROM702b、ワークエリアとして機能するサブRAM702c等を含む各種半導体集積回路を有し、主制御基板700からのコマンドに基づき、特に演出を制御する。また、サブRAM702cにもメインRAM700c同様、不図示のバックアップ電源が接続されており、電源が切断された場合においても、データが消去されることなく保持される。なお、副制御基板702にも、主制御基板700同様、乱数発生器702dが設けられており、乱数発生器702dによって生成される乱数(以下、演出抽選乱数という)は、主に演出の態様を決定するために用いられる。
また、副制御基板702は、サブCPU702aが、サブROM702bに格納されたプログラムに基づき、サブRAM702cと協働することで機能する、初期化決定手段830、コマンド受信手段832、演出制御手段834等の機能部を有する。
初期化決定手段830は、副制御基板702における初期化処理を実行する。コマンド受信手段832は、主制御基板700等、他の制御基板からのコマンドを受信し、コマンドに対する処理を行う。演出制御手段834は、演出スイッチ632から検出信号を受信するとともに、当選役コマンドに基づいて液晶表示部638、スピーカ640、演出用ランプ642の各デバイスで行われる遊技の演出を決定する。具体的に、演出制御手段834は、液晶表示部638に表示される画像データや、演出用ランプ642、リールバックライト644、リール上方ライト646、サブクレジット表示部656、サブ払出表示部658等の電飾機器を通じた演出のための電飾データを決定するとともに、スピーカ640から出力すべき音声を構成する音声データを決定する。そして、演出制御手段834は、決定した遊技の演出を実行する。
演出は、上述したリール演出のような主制御基板700によって実行される演出と、副制御基板702によって実行される演出がある。副制御基板702によって実行される演出は、遊技の進行に伴い、液晶表示部638、スピーカ640、演出用ランプ642、リールバックライト644、リール上方ライト646、サブクレジット表示部656、サブ払出表示部658等を通じて提供される視覚的および聴覚的な表現手段であり、当該遊技にストーリー性を与えたり、当選役抽選の結果をよりダイナミックな画像で示唆したりすることができる。このような演出では、例えば、ボーナス遊技の当選を示唆する演出を複数遊技に亘って行い、遊技者の期待感を高めることができる。また、たとえ、いずれの当選役にも当選していなかったとしても、恰も当選しているかのような演出を通じて遊技者に高配当の期待感を持たせ、遊技者を飽きさせないようにすることが可能となる。
なお、スロットマシン600においては、演出制御手段834が、上述した演出実行手段334として機能し、演出役物装置660が、上述した演出役物装置202として機能する。