以下、紙葉類処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は、紙葉類処理装置の一例である。図1は、紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1の外観を示している。図2は、紙幣処理装置1の内部の構成を示している。紙幣処理装置1は、紙幣を識別及び計数し、種類別に分類をした上で、所定枚数の紙幣が帯封された帯封紙幣を作成する装置である。紙幣処理装置1は、紙幣整理機とも呼ばれる。紙幣処理装置1は、例えば入金取引において使用される場合がある。尚、以下においては、説明の便宜上、図1における紙面左手前を前、紙面右奥を後と呼ぶ場合がある。これに従うと、「前」は、図2における紙面左、「後」は、図2における紙面右である。
(紙幣処理装置の構成)
紙幣処理装置1には、帯封対象外の紙幣を集積する第1外部集積部11及び第2外部集積部12と、バラ紙幣が投入される投入部13、リジェクト券を集積するリジェクト部14、帯封された紙幣を出金するための投出部15、及び、後述する端数紙幣を返却する返却部16がそれぞれ設けられている。
投入部13は、筐体10の前面の上部に設けられている。投入部13の前面は筐体10の外部に開口している。操作者は投入部13の内部にバラ紙幣を、横長の向きで投入することができる。図3は、投入部13の構成を拡大して示している。投入部13は、複数枚の紙幣BNを、積み重なった状態で保持することができる。投入部13には、例えば、様々な金種を含む紙幣BNが投入される。投入部13は、保持している紙幣BNを、繰り出しローラ131によって一枚一枚、筐体10の内部へ繰り出す。投入部13の構成の詳細は、後述する。
第1外部集積部11及び第2外部集積部12は、紙幣処理装置1の筐体10の上部に、前後に並んで設けられている。第1外部集積部11は、第2外部集積部12よりも後側に配設されている。第1外部集積部11及び第2外部集積部12はそれぞれ、紙幣BNの取出口が筐体10の外部に開口している。第1外部集積部11及び第2外部集積部12はそれぞれ、複数枚の紙幣BNを集積することができる。操作者は、第1外部集積部11及び第2外部集積部12に集積されている紙幣BNを、手で取り出すことができる。
リジェクト部14は 筐体10の前面において、投入部13の下側に設けられている。リジェクト部14の前面は筐体10の外部に開口している。リジェクト部14は、複数枚の紙幣BNを集積することができる。操作者は、リジェクト部14に集積されている紙幣BNを、手で取り出すことができる。
投出部15は、筐体10の前面の下部に開口している。帯封紙幣は、投出部15のスロープを通って筐体10の外に投出される。投出部15から投出された帯封紙幣は、予め置かれた容器等に入る。
返却部16は、筐体10の上部に設けられている。返却部16は、紙幣が載るトレイ161を有している。トレイ161は、図2に実線及び一点鎖線で示すように、前後方向に移動する。紙幣を載せたトレイ161が、一点鎖線に示すように前進すると、操作者は、トレイ161から紙幣を、手で取り出すことができる。
紙幣処理装置1の上部には、表示部17が設けられている。表示部17は、返却部16の上側に配設されている。表示部17は、タッチパネルからなる。表示部17は、操作者が操作を行うための操作部を兼用する。表示部17は、紙幣処理装置1が行っている紙幣の処理状況等の情報を表示する。操作者が表示部17に表示されている画面に応じて操作を行うことにより、紙幣処理装置1に関する各種の設定を行ったり、紙幣処理装置1に各種の処理を実行させたりすることができる。
図2に示すように、紙幣処理装置1は、筐体10の内部に、識別部18、第1反転部21、第2反転部22、搬送部3、第1~第5集積部51~55、運搬部6、帯封部7、制御部41、及び、記憶部42を備えている。
搬送部3は、紙幣の搬送方向の順に、投入部13から、識別部18、第1反転部21、リジェクト部14、第2反転部22、第1~第5集積部51~55、第1外部集積部11及び第2外部集積部12までの間において、バラ紙幣の搬送を行う。搬送部3は、筐体10の内部に配設された搬送路を有している。搬送路は、詳細な図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、搬送される紙幣を検出する通過センサ及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。搬送部3は、所定の間隔を設けて、紙幣を一枚一枚、搬送路に沿って搬送する。搬送部3はまた、紙幣BNの長手の縁を前にして、紙幣BNを搬送する。
識別部18は、紙幣BNの搬送方向について、投入部13の下流に設けられている。より詳細に、投入部13の後側には、紙幣BNを水平方向に搬送する搬送路が設けられており、識別部18は、当該搬送路に配設されている。識別部18は、筐体10の内部において、投入部13の後側でかつ、第1外部集積部11及び第2外部集積部12の下側に位置している。識別部18は、搬送路に沿って搬送される紙幣BNの金種、真偽、表裏、向き、正損、新旧、搬送状態等を識別する。
ここで、識別部18が識別を行う紙幣BNの方向について説明をする。紙幣BNの方向は、紙幣BNの表裏と向きとの組み合わせによって、図16に示すように、A方向、B方向、C方向及びD方向の四つの方向に定まる。紙幣BNに描かれた肖像画を基準とした上下の方向を、紙幣BNの天地方向と呼ぶ。天地方向に直交する方向を、紙幣BNの左右方向と呼ぶ。長手の縁を前にして搬送される紙幣BNにおいて、天地方向は、搬送方向に一致する。左右方向は、搬送方向に直交する。尚、以下の説明において、搬送方向に直交する方向を、搬送幅方向と呼ぶ場合がある。
具体的に、A方向は、紙幣BNが表向きでかつ、搬送方向に対して紙幣BNの天地方向が従う方向である。B方向は、紙幣BNが表向きでかつ、搬送方向に対して紙幣BNの天地方向が逆らう方向である。C方向は、紙幣BNが裏向きでかつ、搬送方向に対して紙幣BNの天地方向が逆らう方向である。D方向は、紙幣BNが裏向きでかつ、搬送方向に対して紙幣BNの天地方向が従う方向である。
第1反転部21は、識別部18の識別結果に応じて、紙幣BNの表裏及び天地方向の両方を、選択的に反転するよう構成されている。第1反転部21は、図4に拡大して示すように、紙幣BNの表裏及び天地方向を反転させるスイッチバック方式の反転パス211と、紙幣BNの表裏及び天地方向を反転することなく通過させるバイパス212と、紙幣BNを、反転パス211又はバイパス212に選択的に送る分岐爪213と、を有している。第1反転部21は、搬送幅方向の向きを変えずに、紙幣BNの表裏と搬送方向の向き(つまり、天地方向の向き)との両方を反転することができる。
制御部41は、識別部18の識別結果に応じて第1反転部21の分岐爪213を動かす。このことによって、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がある紙幣BNは、反転パス211を通過し、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がない紙幣BNは、バイパス212を通過する。反転パス211を通過した紙幣BNは、表裏及び天地方向の向きが反転する。バイパス212を通過した紙幣BNは、表裏も天地方向の向きも反転しない。第1反転部21は、紙幣BNの少なくとも表裏を揃えることができる。
第1反転部21は、図2に示すように、識別部18の下側に配設されている。紙幣BNは、第1反転部21を、紙幣処理装置1の後方から前方に向かう略水平方向に通過する。第1反転部21の前側には、リジェクト部14が配設されている。リジェクト部14につながる搬送路141は、紙幣BNの搬送方向について第1反転部21の下流から分岐している。第1反転部21は、図4に示すように、紙幣BNを、バイパス212又はリジェクト部14に選択的に送る分岐爪214を有している。制御部41は、識別部18の識別結果に応じて、分岐爪214を動かす。このことによって、リジェクト券と識別された紙幣BNは、実質的には第1反転部21を通らないで、リジェクト部14に搬送される。
第2反転部22は、紙幣BNの搬送幅方向の向きを、選択的に反転するよう構成されている。第2反転部22は、図4に拡大して示すように、紙幣BNの搬送幅方向の向きを反転させる反転パス221と、紙幣BNの搬送幅方向の向きを反転することなく通過させるバイパス222と、紙幣BNを、反転パス221又はバイパス222に選択的に送る分岐爪223と、を有している。反転パス221には、紙幣BNを反転する反転機構224が配設されている。反転機構224は、この構成例では、紙幣BNの搬送幅方向の向きと表裏との両方を反転するよう構成されている。反転機構224は、紙幣BNの搬送方向に直交する搬送幅方向(つまり、紙幣BNの左右方向)の向きと、紙幣BNの表裏との両方を反転することができる。第2反転部22は、スイッチバック方式の第1反転部21とは機能が相違する。反転機構224の構成の詳細は省略するが、反転機構224は、様々な公知の構成を採用することができる。
制御部41は、識別部18の識別結果に応じて、分岐爪223を動かす。このことによって、左右方向の向きを反転する必要がある紙幣BNは、反転パス221を通過し、左右方向の向きを反転する必要がない紙幣BNは、バイパス222を通過する。反転パス221を通過した紙幣は、紙幣BNの左右方向の向き及び表裏が反転する。バイパス222を通過した紙幣は、紙幣BNの左右方向の向きも、表裏も反転しない。反転機構224の下流において、反転パス221とバイパス222とは合流する。この紙幣処理装置1は、反転部として、第1反転部21と第2反転部22との二種類の反転部を備えることにより、第1反転部21及び第2反転部22を通過した紙幣BNの表裏及び天地方向の向きの両方を揃えることができる。
図5は、第2反転部22の反転機構224の構成を模式的に描いている。図5の紙面左側が、反転機構224に紙幣BNが入る入口側であり、紙面右側が、反転機構224から紙幣BNが出る出口側である。反転機構224は、紙幣BNを捻りながら搬送するよう構成されているため、反転機構224内に、紙幣BNを検知するセンサを配設することが難しい。そのため、反転機構224の入口部と、出口部とのそれぞれに、紙幣BNを検知するセンサ2241、2242、2243、2244を配設している。より詳細に、反転機構224の入口部には、一つのセンサ2241が配設されている。センサ2241は、紙幣BNの搬送路における搬送幅方向の中央、又は、略中央に配設されている。反転機構224の出口側には、図5の構成例では、三つのセンサ2242、2243、2244が配設されている。センサ2242、2243、2244は、紙幣BNの搬送路における搬送幅方向に対して、所定の間隔を空けて配設されている。反転機構224の出口部に複数の通過センサ2242、2243、2244を配設することによって、反転機構224に、紙幣BN又は紙幣BNの一部が残留したことを検知することが可能になる。反転機構224内における紙幣BNの残留検知に関しては、後で詳述する。
第2反転部22は、第1反転部21及びリジェクト部14の下側に配設されている。従って、識別部18、第1反転部21及び第2反転部22は、上下方向に並んでいる。紙幣BNは、第2反転部22を、紙幣処理装置1の前方から後方に向かう略水平方向に通過する。紙幣BNは、識別部18から、第1反転部21を通って第2反転部22に至るまでの間において、紙幣処理装置1の前後方向に蛇行するように搬送される。
第2反転部22は、構造が複雑になるため、第1反転部21と比較して、紙幣BNの搬送方向の長さが長くなる。紙幣BNが水平方向に搬送されるように第2反転部22を設けることによって、紙幣処理装置1を高さ方向に小型化することができる。
また、第1反転部21と第2反転部22とのそれぞれにおいて紙幣BNは水平方向に紙幣が搬送されるが、これら第1反転部21及び第2反転部22を上下方向に並べて配設することによって、第1反転部21の前側にリジェクト部14を配置することができる。紙幣処理装置1の内部のスペース効率が向上する結果、紙幣処理装置1の小型化に有利になる。
第2反転部22はまた、ユニット化している。第2反転部22のユニットは、図2に一点鎖線で示すように、紙幣処理装置1の前方に向かって引き出し可能に構成されている。操作者は、手で第2反転部22のユニットを、筐体10の前方に引き出すことができる。第2反転部22において紙幣BNの詰まり等が生じたときに、操作者は、第2反転部22を前方に引き出して、詰まっている紙幣BNを、第2反転部22から容易に取り出すことができる。このときに、紙幣処理装置1は、表示部17に、第2反転部22のユニットの引き出しを操作者に指示する誘導画面を表示する。紙幣処理装置1のメンテナンス性が向上する。
第2反転部22のユニットの引き出しに関し、紙幣処理装置1にロック機構を設けてもよい。第2反転部22において紙幣BNの詰まりが発生し、紙幣処理装置1を停止したときにロックを解除することによって、第2反転部22のユニットを、引き出すことができるようにしてもよい。尚、ロック機構は、機械式のロック機構としてもよいし、ソレノイドを含む電気式のロック機構としてもよい。
前述したように、第2反転部22において、紙幣BNは水平方向に搬送されるよう構成されているため、前方に向かって引き出される第2反転部22のユニットは、上下方向にコンパクトになる。第2反転部22を前方に向かって引き出しやすくなると共に、詰まっている紙幣BNも取り出しやすくなる。このこともまた、紙幣処理装置1のメンテナンス性の向上に有利になる。
第1~第5集積部51~55は、識別部18、第1反転部21及び第2反転部22の後側に配設されている。第1~第5集積部51~55は、上下方向に並んで配設されている。第1~第5集積部51~55は、帯封対象の紙幣BNを、例えば金種毎に集積する。後述するように、操作者は、第1~第5集積部51~55に集積する紙幣の種類を、予め設定することができる。
第2反転部22の下流において紙幣BNを搬送する搬送路は、第1~第5集積部51~55の前側でかつ、識別部18、第1反転部21及び第2反転部22の後側において、第1~第5集積部51~55に沿うように上下方向に伸びて配設されている。上下方向に伸びる搬送路から分岐した五つの分岐路が、第1~第5集積部51~55のそれぞれに接続されている。紙幣BNは、第1~第5集積部51~55のそれぞれに対し、前側から投入される。第1~第5集積部51~55はそれぞれ、前側に紙幣BNの入口を有している。入口から投入された紙幣BNは、第1~第5集積部51~55のそれぞれにおいて集積される。
図示は省略するが、各分岐路の分岐箇所には、紙幣BNの搬送方向を切り替える分岐爪が設けられている。制御部41は、識別部18の識別結果に応じて、各分岐爪を動かす。このことによって、紙幣BNは、第1~第5集積部51~55に、選択的に投入される。
上下方向に伸びる搬送路の下流側は、途中で二つに分岐して、第1外部集積部11及び第2外部集積部12のそれぞれに接続されている。第1外部集積部11及び第2外部集積部12は、第2反転部22の下流につながっている。分岐箇所には、図示は省略するが、分岐爪が配設されている。制御部41は、識別部18の識別結果に応じて、分岐爪を動かすことにより、紙幣BNは、第1外部集積部11及び第2外部集積部12に、選択的に投入される。
運搬部6は、上下方向に並んだ第1~第5集積部51~55の後側に配設されている。運搬部6は、紙幣を掴むアーム部61と、アーム部61を上下方向に往復移動させるガイド部62とを備えている。ガイド部62は、上下方向に伸びている。アーム部61は、ガイド部62に沿って上下方向に移動をする。アーム部61は、第1~第5集積部51~55それぞれの高さ位置に位置づけられ、第1~第5集積部51~55に集積されている紙幣を、後方に向かって取り出す。第1~第5集積部51~55はそれぞれ、後側に紙幣BNの出口を有している。集積部から紙幣を取り出したアーム部61は、返却部16あるいは帯封部7の後方へ移動し、掴んでいる紙幣を返却部16あるいは帯封部7へ受け渡す。
帯封部7は、第2反転部22の下側に配設されている。帯封部7は、運搬部6の下端部に位置している。運搬部6は、第1~第5集積部51~55から取り出した紙幣BNを、帯封部7に運搬する。帯封部7の構成の詳細な図示は省略するが、帯封部7は、公知の様々な構成を採用することができる。帯封部7は、例えば紙幣BNの束の外周囲に帯封紙を巻き付けることによって帯封を行うようにしてもよい。帯封部7はまた、帯封紙によって形成した輪の中に紙幣BNの束を挿入することによって帯封を行うようにしてもよい。
帯封部7の前側には、ベルト式の第2運搬部72が設けられている。第2運搬部72は、帯封部7が帯封をした帯封紙幣を、前方に向かって投出部15まで搬送する。帯封紙幣は、投出部15のスロープを通って筐体10の外に投出される。
後述するように紙幣処理装置1が分類処理を行った際、帯封枚数に至らずに第1~第5集積部51~55に紙幣BNが残ってしまう場合がある。運搬部6は、第1~第5集積部51~55に残った端数紙幣を返却部16へ運搬する。
尚、紙幣処理装置1は、その運用の一つとして残置運用が可能に構成されている。残置運用は、帯封枚数に至らずに第1~第5集積部51~55に残った端数紙幣を、返却部16に返却せずに、そのまま第1~第5集積部51~55に残しておき、次回の分類処理の際に、第1~第5集積部51~55に新たに集積された紙幣BNと共に、紙幣BNの帯封等を行う運用である。残置運用は、紙幣を、複数の取引にまたがって取り扱う運用である。
制御部41は、図示は省略するが、第1外部集積部11、第2外部集積部12、投入部13、リジェクト部14、返却部16、識別部18、第1反転部21、第2反転部22、搬送部3、第1~第5集積部51~55、運搬部6、帯封部7、及び、記憶部42が、信号の授受可能に接続されている。制御部41は、前述した第1外部集積部11、第2外部集積部12、投入部13、リジェクト部14、返却部16、識別部18、第1反転部21、第2反転部22、搬送部3、第1~第5集積部51~55、運搬部6、及び、帯封部7に、記憶部42に記憶している各種の情報やプログラムに基づいて制御信号を出力する。このことにより、紙幣処理装置1は、紙幣BNを識別及び計数し、種類別に分類をした上で、所定枚数毎の帯封紙幣を作成する分類処理を行う。
記憶部42はまた、第1~第5集積部51~55のそれぞれに現時点で集積されている紙幣BNの枚数を記憶する。尚、紙幣BNの枚数には、残置運用時に、前回及び前回よりも前の分類処理において、第1~第5集積部51~55のそれぞれに集積された紙幣BNの枚数も含まれる。
(投入部の構成)
図3にのみ示すが、投入部13は、紙幣を押さえる札押さえ132を有している。札押さえ132は、実線及び一点鎖線で示すように、投入部13内を上下方向に移動するよう構成されている。札押さえ132は、投入部13において積み重なった紙幣BNが所定量以下になれば、紙幣BNを押さえる。投入部13は、紙幣BNが所定量以下になったことを検知するセンサ133を有している。センサ133は、投入部13において積み重なっている紙幣BNの高さを検知するセンサとしてもよい。センサ133は、例えば、投入部13の側壁における所定高さ位置に配設されかつ、積み重なった紙幣BNによって遮光されるよう構成された透遮光センサとしてもよい。
操作者が、空の投入部13に紙幣を投入するときには、札押さえ132は、最上位位置に位置している(図3の一点鎖線参照)。札押さえ132が最上位位置に退避しているため、操作者は投入部13に紙幣BNを投入しやすい。尚、札押さえ132は、紙幣処理装置1の処理が終了して待機するときには、自動的に上昇をして、最上位位置に位置する。
繰り出しローラ131が紙幣BNの繰り出しを開始し、投入部13内において積み重なっている紙幣が、所定量以下に減ると、札押さえ132は、最上位位置から下降し、積み重なった紙幣BNを、上から押さえる。札押さえ132は、積み重なっている紙幣BNの量に応じて下降する。紙幣BNが下向きに押さえられることによって、積み重なった紙幣BNの量が減って自重が軽くなったときでも、繰り出しローラ131は、紙幣BNを安定して繰り出すことができる。
投入部13に紙幣BNが積み重なっているときに、操作者は、投入部13に紙幣BNを追加投入することができる。札押さえ132は、紙幣BNを押さえているときでも、手動によって上昇させることが可能に構成されている。操作者は、札押さえ132を最上位位置に位置づけた後に、追加する紙幣BNを、積み重なっている紙幣BNの上に、積み重ねる。
前述したように、札押さえ132は、センサ133の検知結果に基づいて自動的に、最上位位置から下降するよう構成されている。一方、紙幣BNの追加投入をしようとする操作者は、札押さえ132が、いつ下降を開始するかわからない。また、紙幣BNの追加投入をしようとしているときに、札押さえ132が最上位位置から下降を開始してしまうと、紙幣BNの追加投入がしにくくなる。また、下降している札押さえ132と、操作者の手や指が干渉してしまう恐れもある。そこで、この紙幣処理装置1では、札押さえ132が下降を開始するときには、操作者に対して、そのことを知らせるように構成されている。
札押さえ132の動作の事前通知は、具体的には、以下のように構成してもよい。つまり、札押さえ132が下降を開始するときに、少しだけ(例えば1cm程度)下降をして止まるプレ動作を行い、その後、積み重なった紙幣BNに当たるまで下降をしてもよい。
また、札押さえ132が下降を開始する直前に、警告音又は音声を発してもよい。さらに、投入部13の付近に設けた照明(例えばLED)を、札押さえ132が下降を開始する直前に、点灯又は点滅してもよい。加えて、これから札押さえ132が下降を開始することを、表示部17に表示してもよい。表示部17の表示内容としては、例えば札押さえ132の下降を意味する下向きの矢印を表示すると共に、下降を開始するまでのカウントダウンを表すように、矢印の長さを変化させてもよい(例えば矢印の長さを長くしてもよい)。
また、札押さえ132の動作前の事前通知から札押さえ132が下降を開始するまでの間に、センサ133が遮光を検知したときには、制御部41は、紙幣BNが追加投入されたと判断して、札押さえ132の下降をキャンセルしてもよい。また、表示部17に、札押さえ132の下降を行わないための操作ボタンを設け、操作者が当該操作ボタンを操作したときには、札押さえ132の下降を行わないようにしてもよい。
さらに、前述したように、紙幣処理装置1の処理が終了して待機するときに、札押さえ132は、自動的に上昇をして最上位位置に位置するが、札押さえ132が上昇を開始するときにも、前述した、事前通知を行うようにしてもよい。つまり、札押さえ132が上昇を開始するときに、少しだけ(例えば1cm程度)上昇をして止まるプレ動作を行い、その後、最上位位置まで、札押さえ132が上昇をしてもよい。また、札押さえ132が上昇を開始する直前に、警告音や音声を発したり、照明を、点灯又は点滅したりしてもよい。さらに、これから札押さえ132が上昇を開始することを、表示部17に表示してもよい。表示部17の表示内容としては、例えば札押さえ132の上昇を意味する上向きの矢印を表示すると共に、上昇を開始するまでのカウントダウンを表すように、矢印の長さを変化させてもよい(例えば矢印の長さを長くしてもよい)。
札押さえ132の動作の事前通知を行うことによって、紙幣処理装置1の操作者の操作性を向上させることができる。
(紙幣処理装置の分類処理)
図6は、紙幣処理装置1における紙幣BNの搬送経路を示している。操作者は、表示部17に表示される設定画面において操作を行うことにより、所望の分類パターンを設定することができる。
分類パターンの一例として、帯封対象の紙幣を、一万円、五千円、千円、及び二千円の新券かつ正券としてもよい。そのときに、第1集積部51及び第2集積部52は、一万円の新券かつ正券を集積し、第3集積部53は、五千円の新券かつ正券を集積し、第4集積部54は、千円の新券かつ正券を集積し、第5集積部55は、二千円の正券を集積するとしてもよい。
ここで、「新券」とは、現時点で発行されているタイプの紙幣であり、「旧券」とは、現時点で発行されていない古いタイプの紙幣である。また、「正券」とは、破れや汚れが少なくて、市場に流通させても問題のない紙幣であり、「損券」とは、破れや汚れがあって、市場に流通させることが好ましくない紙幣である。
帯封対象の紙幣を、一万円、五千円、千円、及び二千円の新券かつ正券とした場合、帯封対象ではない紙幣は、損券や旧券等である。第1外部集積部11又は第2外部集積部12は、損券及び旧券等を集積してもよい。第1外部集積部11又は第2外部集積部12は、全金種を集積してもよい。
以下、前述した分類パターンに従う紙幣の搬送経路について、図6を参照しながら説明をする。紙幣処理装置1は、分類処理の実行に際し、紙幣BNの表裏及び天地方向の向きの両方を揃える。尚、紙幣処理装置1は、分類処理の実行に際し、紙幣BNの表裏及び天地方向の向きの両方を揃えるモードと、紙幣BNの表裏のみを揃えるモードと、紙幣BNの表裏及び天地方向の向きを揃えないモードとを切り替えることが可能に構成してもよい。
投入部13は、投入された紙幣BNを一枚ずつ繰り出す。搬送部3は、図6に実線の矢印で示すように、投入部13から識別部18へ紙幣BNを搬送する。識別部18は、紙幣BNの識別を行う。
搬送部3は、識別部18を通過した紙幣を、実線の矢印で示すように、第1反転部21に搬送する。リジェクト券以外の紙幣BNは、第1反転部21の反転パス211、又は、バイパス212を通った後、実線の矢印で示すように、第2反転部22に搬送される。一方、リジェクト券は、第1反転部21を実質的にバイパスして、点線の矢印で示すように、リジェクト部14に搬送される。リジェクト券は、リジェクト部14に集積される。
このように、リジェクト部14につながる搬送路141は、第2反転部22よりも上流から分岐していると共に、リジェクト券は、第1反転部21の反転パス211及びバイパス212も通らない。リジェクト券を速やかにリジェクト部14に搬送することができる。また例えば、斜行や重送等の搬送異常紙幣や、折れや破れ等を有する状態の悪い紙幣を含むリジェクト券が、第1反転部21、又は、第2反転部22において詰まってしまうことを、未然に回避することができる。
紙幣BNは、第2反転部22の反転パス221、又は、バイパス222を通る。第2反転部22を通過して紙幣BNの表裏及び天地方向の向きは揃っている。第2反転部22を通過した紙幣BNの内、帯封対象の紙幣BNは、実線の矢印で示すように、金種毎に、第1~第5集積部51~55に搬送される。ここで、一万円の新券かつ正券は、第1集積部51及び第2集積部52の一方に搬送される。具体的には、帯封枚数(例えば100枚)に至るまでは、二つの集積部51、52の内の一方の集積部に紙幣BNが集積される。一方の集積部に帯封枚数の紙幣BNが集積されると、他方の集積部における紙幣BNの集積が開始する。帯封枚数に至った紙幣は、運搬部6が集積部から取り出して帯封部7へと運搬するが、第1集積部51及び第2集積部52の複数の集積部を用いると、紙幣BNを集積部から取り出している間にも、もう一つの集積部に紙幣を集積することができる。紙幣BNの分類処理を中断することなく、紙幣BNの集積を継続することができるため、処理時間を短縮することができる。
第1~第5集積部51~55の内、いずれかの集積部において帯封枚数(通常は、100枚)の紙幣BNが集積されると、運搬部6が、集積部から紙幣BNを取り出すと共に、取り出した紙幣BNを、帯封部7へと運搬する(図6の二点鎖線の矢印参照)。帯封部7は、紙幣BNの帯封を行い、帯封紙幣は、投出部15を通じて、紙幣処理装置1の筐体10から外に投出される。
また、第2反転部22を通過した紙幣BNの内、帯封対象外の紙幣BN(つまり、損券及び旧券等)は、図6に一点鎖線で示すように、第1外部集積部11又は第2外部集積部12に搬送される。損券及び旧券等は、第1外部集積部11又は第2外部集積部12に集積される。
ここで、第1~第5集積部51~55、及び、第1及び第2外部集積部11、12は各々、集積している紙幣BNの枚数をカウントするカウンタと、第1~第5集積部51~55、及び、第1及び第2外部集積部11、12に設けられた入口を紙幣BNが通過したことを検知するセンサとを有している。カウンタは、記憶部42によって構成されている。センサは、例えば、透遮光センサとしてもよい。第1~第5集積部51~55、及び、第1及び第2外部集積部11、12のセンサが、紙幣BNが入口を完全に通過したことを検知すれば、第1~第5集積部51~55、及び、第1及び第2外部集積部11、12のカウンタが加算される。
投入部13に投入された紙幣BNが全て紙幣処理装置1に取り込まれた後、帯封枚数に至らずに第1~第5集積部51~55に残った端数紙幣は、返却部16に返却される。具体的には、図6に破線の矢印で示すように、運搬部6が、端数紙幣を第1~第5集積部51~55から取り出すと共に、返却部16のトレイ161に搬送する。端数紙幣を載せたトレイ161が前進することによって、端数紙幣が、自動的に操作者に返却される。端数紙幣を、紙幣処理装置1の外に払い出すことによって、端数紙幣の取り忘れを防止することができる。
尚、残置運用を行う場合は、第1~第5集積部51~55に残った端数紙幣は、そのまま、第1~第5集積部51~55に残される。記憶部42は、第1~第5集積部51~55のそれぞれに集積している紙幣BNの枚数を記憶する。次回の分類処理の際には、新たな紙幣BNが、第1~第5集積部51~55に集積されている紙幣BNの上に集積される。
(搬送エラー発生時の制御)
紙幣処理装置1が紙幣BNの分類処理を行っている最中に、紙幣BNが搬送路において詰まる等のエラーが発生すると、制御部41は処理を停止する。紙幣処理装置1がエラーから復旧するには、その後、操作者がエラーの解除を行うエラー解除処理と、紙幣処理装置1の集積部等から紙幣BNを回収する回収処理と、回収した紙幣BNを、もとの集積部に戻すエラー現金戻し処理(以下、単に戻し処理という)とを行う必要がある。
エラー解除処理は、操作者が、紙幣処理装置1の筐体10を開けて、搬送路において詰まっている紙幣BNを手で取り除く処理である。制御部41は、紙幣BNが詰まっている箇所、及び、詰まっている紙幣を取り除くための手順を、表示部17に表示してもよい。操作者はまた、紙幣処理装置1が処理を停止したときに、搬送路において残っている紙幣BNを全て、手で取り除く。
尚、紙幣処理装置1が処理を停止したときに、集積部の入口において止まっている紙幣BNは、操作者が手で取り除いてもよいし、当該集積部に集積させてもよい。後述するように、集積部の入口において紙幣BNが止まっている集積部は、未確定の集積部であり、当該集積部に集積されている紙幣BNは、回収処理において回収される。
エラー解除処理が終わると、紙幣BNを回収する回収処理を行う。従来の紙幣処理装置においては、紙幣処理装置の全ての集積部について、集積されている紙幣BNを回収対象の紙幣としていた。回収した紙幣は、戻し処理において、投入部13に投入され、識別部18による識別の後、もとの集積部に集積される。紙幣処理装置内の全ての紙幣を回収対象の紙幣にしてしまうと、戻し処理時に紙幣処理装置に取り込んで識別及び集積を行う紙幣の数が増えてしまうため、戻し処理に要する時間が長くなってしまうという問題がある。
そこで、この紙幣処理装置1では、回収処理において回収する紙幣BNを必要最小限にすることによって、戻し処理の負担を軽減するようにしている。具体的にこの紙幣処理装置1では、集積している紙幣BNの数が確定していない未確定の集積部の紙幣BNのみを回収対象にする。未確定の集積部は、集積している紙幣BNの数が確定していないため、紙幣BNの計数をもう一度行う必要がある。未確定の集積部の紙幣BNのみを回収対象とすることにより、回収対象の紙幣BNの数が少なくなるから、戻し処理の負担が軽減する。
未確定の集積部とは、エラーの発生によって紙幣処理装置1の処理が停止したときに、集積部の入口において紙幣BNが止まっている集積部である。当該紙幣BNが、集積部に集積された紙幣としてカウントされたか否かが不明なためである。ここで、当該集積部に、前回及び前回よりも前の分類処理において集積された紙幣BNが存在しているか否かは問わない。集積部に、前回以前の分類処理において集積された紙幣BNが存在していても、存在していなくても、集積部の入口において紙幣BNが止まっている集積部は、未確定の集積部となる。
また、集積部の入口において紙幣BNが止まっていない集積部であっても、エラー解除処理中や回収処理中に、操作者が集積部の中にアクセスをした、又は、アクセスをしようとした集積部は、未確定の集積部である。操作者がアクセスをすると、集積部に集積している紙幣BNの数が変わってしまう可能性があるためである。ここにおいても、当該集積部に、前回以前の分類処理において集積された紙幣BNが存在しているか否かは問わない。従って、今回の分類処理においては、(エラーが発生するまでに)紙幣BNが集積されておらず、前回以前の分類処理において集積された紙幣BNのみが集積されている集積部であっても、操作者がアクセスをすることにより、未確定の集積部になる。
次に、図7に示す具体例を参照しながら、エラー発生後のエラー解除処理、及び、回収処理について説明する。図7は、紙幣処理装置1において、紙幣BNが詰まるエラーが発生したときの、紙幣処理装置1の内部の状態を模式的に示している。図7において紙幣BN1は、搬送路において詰まった紙幣である。紙幣BN2は、エラーの発生によって紙幣処理装置1が処理を停止したときに、搬送路において残っている紙幣である。紙幣BN3は、紙幣処理装置1が処理を停止したときに、第3集積部53の入口において止まった紙幣である。
図7の例において、操作者はエラーの原因である紙幣BN1を、手で取り出す。操作者はまた、搬送路に残っている紙幣BN2も、手で取り出す。紙幣BN3は、操作者が手で取りだしてもよいし、リセット操作後に紙幣処理装置1が初期動作を行う際に第3集積部53に集積させてもよい。
図7の例においては、第3集積部53が未確定の集積部である。ここで、第1~第5集積部51~55の前側には、紙幣BNが入口を通過することを検出するセンサ511、521、531、541、551が配設されている。センサ511、521、531、541、551は、入口を通過する紙幣BNによって遮光する透遮光センサとしてもよい。制御部41は、紙幣処理装置1が処理を停止した時点で集積部の入口に紙幣が止まっているか否かを、センサ511、521、531、541、551の検出信号に基づいて判断する。また、エラー解除処理中や回収処理中に、操作者が集積部にアクセスしたか否かも、センサ511、521、531、541、551の検出信号に基づいて判断するようにしてもよい。
第1~第5集積部51~55の後側には、扉512、522、532、542、552が設けられている。扉512、522、532、542、552は、アーム部61が紙幣を取り出すために、実線及び一点鎖線で示すように開閉可能に構成されている。扉512、522、532、542、552が開いたことを検知するセンサ(例えばリミットスイッチ等)を取り付ければ、エラー解除処理のとき等において、操作者が扉512、522、532、542、552を開けた集積部51~55を特定することができる。扉が開いた集積部51~55は、操作者がアクセスをした、又は、アクセスをしようとした集積部と判断することができるため、未確定の集積部となる。例えば図7の例では、第2集積部52の扉522が開いたことを示している。第2集積部52は、未確定の集積部となる。
操作者が紙幣処理装置1の筐体10を閉じると、エラー解除処理が完了する。操作者は、紙幣処理装置1のリセット操作を行う。紙幣処理装置1は、初期動作を行うことにより、動作可能な状態に戻る。
エラー解除処理が終わると、制御部41は、未確定の集積部を特定する。図7の例においては、センサの検知結果に基づいて、制御部41は、第2集積部52及び第3集積部を未確定の集積部と特定することになる。
未確定の集積部を特定すれば、制御部41は、当該集積部に集積されている紙幣BNを回収対象に設定する。この紙幣処理装置1では、運搬部6が、第1~第5集積部51~55に集積されている紙幣BNのうち、回収対象の紙幣BNを、返却部16に運搬することによって、回収処理が行われる。紙幣処理装置1が、回収対象の紙幣BNを自動的に筐体10の外へと運搬するため、回収が必要な紙幣BNを漏れなく回収することができる。また、回収が不要な紙幣BNを誤って回収してしまうことを防止することができる。
運搬部6が回収対象の紙幣BNを返却部16に運搬しているときに、制御部41は、図8に例示するように、回収対象の紙幣BNに関する情報を含む画面D1を、表示部17に表示させる。画面D1には、回収対象の紙幣BNの金種(図例では、一万円札と、五千円札)、及び、回収する紙幣の枚数が記載されている。画面D1においてはまた、返却部16に返却される紙幣BNを、返却部16から抜き取ることが指示される。さらに、画面D1には、未確定の集積部を特定する情報も記載されている。具体的には、第1~第5集積部51~55を表す、「第1」「第2」「第3」「第4」「第5」の五つのボックスが示されており、未確定の集積部は、そのボックスが強調表示されている。図8の画面D1の例は、図7の例に対応しており、「第2」のボックスと「第3」のボックスとが、それぞれ強調表示されている。操作者は、画面D1を見ることによって、返却部16から返却される紙幣BNに関する情報を得ることができる。
尚、未確定の集積部が複数存在しているときには、運搬部6は、複数の集積部に集積されている紙幣を、順次、返却部16に返却する。表示部17に表示する画面D1においては、運搬部6が返却をする順番に従って、回収対象の紙幣BNに関する情報や、集積部の情報を表示するようにしてもよい。
回収処理によって、回収対象の紙幣BNが筐体10の外に回収されれば、操作者は、回収対象の紙幣BNを、投入部13に投入する。紙幣処理装置1は、投入部13に投入された紙幣BNの識別を行って、もとの集積部に集積をする戻し処理を行う。戻し処理が終わると、紙幣処理装置1は、エラーの発生直前の状態に戻る。
このように、紙幣処理装置1においてエラーが発生した後、未確定の集積部を特定すると共に、未確定の集積部に集積されている紙幣BNを回収対象にするため、回収対象の紙幣BNの数が、必要最小限になる。その結果、戻し処理の負担を軽減することが可能になる。
また、エラーが発生した後、エラーの解除処理が終わるまでの間の、操作者による集積部へのアクセスを監視することによって、未確定の集積部を、適切に判断することができる。
さらに、紙幣処理装置1では、回収対象の紙幣BNは、運搬部6によって自動的に、集積部から返却部16へと運搬され、筐体10の外に払い出されるから、回収対象の紙幣BNを正確に回収することができると共に、操作者自らが、集積部から回収対象の紙幣BNを取り出す必要がないため、操作者の負担が軽減する。
(パトロール券による搬送路の検査)
紙幣処理装置1において発生したエラーを解除して、紙幣処理装置1をリセットした後、従来の紙幣処理装置1では、いわゆるパトロール券と呼ばれる、紙幣又は紙幣とは異なる検査券を、紙幣処理装置1の搬送部3において搬送をすることにより、搬送路に詰まった紙幣が残っていないかを検査したり、紙幣の一部が残留していないかを検査したりしている。
しかしながら、エラーを解除した後に、必ずパトロール券を搬送させなければならないと、操作者の手間が煩雑になってしまうという問題がある。また、パトロール券を搬送させて検査が終了した後に、従来の紙幣処理装置では、装置をエラーダウンさせており、操作者は、パトロール券による検査後に、紙幣処理装置を再度リセットしなければならず、このこともまた、操作者の手間を煩雑にしている。
この紙幣処理装置1は、前記の問題に鑑みて、エラー解除処理が終わった時点で、制御部41がパトロール券による搬送路の検査が必要か否かを判断し、パトロール券の搬送が必要なときに限って、パトロール券の搬送を行うよう構成されている。パトロール券による検査の要否は、搬送路の各所に設けた通過センサの検知結果に基づいて行う。
詳細な図示は省略するが、紙幣処理装置1の搬送路の各所には、紙幣BNの通過を検出する通過センサ(例えば、透遮光センサ)が配置されている。前述したように、操作者がエラー解除処理を行って搬送路に残っている紙幣BNを取り除いた上で、紙幣処理装置1をリセットすれば、紙幣処理装置1が初期動作を行ったときに、搬送路に残っていた紙幣BNが搬送されるため、いずれかの通過センサにより、紙幣BNを検知することができる。
しかしながら、この紙幣処理装置1において、第2反転部22のユニットと、紙幣処理装置1の筐体10とのつなぎ目Cにおける搬送路に紙幣が残っていると、紙幣処理装置1が初期動作を行っても、当該残留紙幣が動かないため、通過センサによって検知することができない。第2反転部22のユニットと、筐体10とのつなぎ目Cは、図2又は図4において破線で囲んだ二箇所が、存在している。
図9は、第2反転部22のユニットと、筐体10とのつなぎ目Cの構成を模式的に示している。第2反転部22のユニットは、前述したように、筐体10から前方に引き出し可能に構成されている。つなぎ目Cにおいては、紙幣BNの搬送方向に直交する方向に、第2反転部22のユニットが、筐体10に対して相対移動したり、紙幣BNの搬送方向に、第2反転部22のユニットが、筐体10に対して相対移動したりする。つなぎ目Cの近くには、紙幣BNを搬送する搬送ローラ31を配置することができずかつ、通過センサ32も配置することができない。そのため、つなぎ目Cにおいて、紙幣BNが何れの搬送ローラ31にもグリップされずかつ、通過センサ32にも検知されないことが起こり得る。
つなぎ目Cに紙幣BNが残留している可能性は、つなぎ目Cにおいて隣り合う二つの通過センサ32の検知信号に基づいて判断することができる。つまり、紙幣BNの搬送方向の上流の通過センサ32が紙幣を検知したのに対し、下流の通過センサ32が紙幣の検知しないまま、紙幣処理装置1が処理を停止したときには、図9に示すように、つなぎ目Cに紙幣BNが残留している可能性がある。制御部41は、パトロール券による搬送路の検査が必要であると判断することができる。
パトロール券による搬送路の検査が必要であると判断したとき、制御部41は、図10に例示するように、表示部17に、検査を促す画面D2を表示させてもよい。操作者は、パトロール券を用意して、パトロール券による搬送路の検査を行う。具体的に操作者は、パトロール券を投入部13に投入し、紙幣処理装置1は、パトロール券を投入部13から繰り出して、搬送路に沿って搬送する。これにより、搬送路において詰まっている紙幣BNや、搬送路に残留している紙幣BNを発見することができる。パトロール券は、例えば投入部13から、第2外部集積部12まで搬送してもよい。
例えば図11の(a)に示すように、搬送路33において紙幣又は紙幣の一部BN4が残留しているときには、一点鎖線で示すように、例えばパトロール券PCが残留紙幣BN4に当たって詰まることにより、紙幣の残留を発見することができる。パトロール券PCと残留紙幣BN4とが重なったまま搬送されたとしても、搬送路33の途中に設けているセンサによって重送を検知することができるため、残留紙幣を発見することができる。
例えば図11の(b)に示すように、パトロール券PCがスムースに搬送路33を通ったときには、残留紙幣が無かったと判定することができる。パトロール券PCがスムースに搬送されたか否かは、搬送路33において、紙幣BNの搬送方向に直交する方向に配設された、複数の通過センサ311、312、313によって検知することができる。つまり、複数の通過センサ311、312、313の全てがパトロール券PCの通過を検知したときには、制御部41は、残留紙幣が無かったと判断する。これに対し、例えば図11の(c)に示すように、複数の通過センサ311、312、313の一部のみがパトロール券PC(又は紙幣BN5)の通過を検知したときには、同図に例示するように、搬送路33に紙幣Bの一部BN4が残留している可能性があるため、残留紙幣が無かったという判断は行わない。
パトロール券PCによる搬送路の検査が正常に終了をしたときには、前述した回収処理を開始する。パトロール券PCによる搬送路の検査が不要なときには、紙幣処理装置1は、回収処理を自動的に開始する。一方、表示部17に画面D2が表示されて、パトロール券における搬送路の検査が促されているにも関わらず、検査を行わずに処理(つまり、取引)を終了しようとしたときには、制御部41は、表示部17にエラー表示をしたり、警告音を発したりして、操作者に、パトロール券による搬送路の検査を促すように構成してもよい。
(戻し処理と分類処理との一括処理)
前述したように、紙幣処理装置1の処理中に搬送エラーが発生したときには、操作者がエラー解除処理を行い、回収処理において回収した紙幣BNを紙幣処理装置1の中に戻す戻し処理を行う。
ここで、従来の紙幣処理装置では、戻し処理が完了して、紙幣処理装置1がエラーの発生直前の状態に戻った後に、続きの分類処理を行うことが可能に構成されていた。しかしながら、戻し処理中に、識別部18が、エラー発生前の当初の分類処理においては正券として識別していた紙幣BNを、損券と識別する場合がある。また、識別部18が、当初の分類処理においては損券として識別していた紙幣BNを、戻し処理においては、正券と識別する場合がある。このように当初の分類処理における識別結果と、戻し処理における識別結果とが異なってしまった紙幣は、戻し処理において、もとの集積部に戻すことができずに、リジェクト紙幣としてリジェクト部14に排出されてしまう。リジェクト部14に紙幣BNが排出されてしまうと、集積部に集積される紙幣BNの数が不足する。エラーの発生直前に集積された数だけ、集積部に紙幣が集積されなければ、戻し処理は完了しないから、操作者は、リジェクト部14に排出された紙幣BNを、もう一度、投入部13に投入し直したり、または、同一金種の別の紙幣BNを用意して投入部13に投入し直したりしなければならない。戻し処理が煩雑になってしまうという不都合がある。
そこで、この紙幣処理装置1では、戻し処理と、戻し処理後に行う分類処理とを続けて行うことができるよう構成されている。つまり、戻し処理を行うときには、回収処理において回収した紙幣BNだけでなく、分類処理(例えばエラーの発生によって中断した分類処理や、新たな分類処理)用の紙幣BNも併せて、投入部13に投入することが可能に構成されている。戻し処理と、分類処理とを一括して行うことになる。
前述した回収処理において、回収対象となった紙幣BNの枚数は、記憶部42に記憶されている。これは、戻し処理時に、第1~第5集積部51~55に戻すべき紙幣BNの枚数に相当する。
図12は、戻し処理と分類処理とを一括して行う処理において、紙幣BNの搬送先の例を説明する模式図である。前述したように、投入部13には、回収処理において回収した紙幣BNと、分類処理用の紙幣BNとが投入される。
投入部13から繰り出された紙幣BNは、識別部18による識別により、同券種であれば、第1~第5集積部51~55へ搬送される。一方、異券種であれば、第1又は第2外部集積部11、12へ搬送される。ここで、同券種とは、紙幣BNの正券又は損券を意味する。第1~第5集積部51~55に集積する紙幣BNが正券であるときには、識別部18による識別により正券と識別された紙幣は、同券種として第1~第5集積部51~55へ搬送され、損券と識別された紙幣は、リジェクト部14ではなく、異券種として第1又は第2外部集積部11、12へ搬送される。第1~第5集積部51~55に集積する紙幣BNが損券であるときには、同券種及び異券種は、前記とは逆である。尚、エラー現金戻し処理時にリジェクト券と識別された紙幣は、リジェクト部14へ搬送される。
戻し処理と分類処理とを一括して行うときには、戻し処理用のカウンタと、分類処理用のカウンタとを二つのカウンタを用いる。図13は、戻し処理用のカウンタと、分類処理用のカウンタとの遷移例を示している。カウンタは、処理が進むに従って、符号1301の状態から、符号1302の状態、及び、符号1303の状態へと変化する。
戻し処理用のカウンタは、回収対象となった紙幣BNの枚数から減算するカウンタである。図13の例では、戻し処理用のカウンタの初期状態1301は、一万円札が10枚、千円札が10枚と設定されて、合計は、-20枚と設定されている。つまり、回収処理において、10枚の一万円と、10枚の千円とが回収されており、戻し処理においては、集積部に、10枚の一万円札と、10枚の千円札とのそれぞれを集積させる。
戻し処理と分類処理との一括処理が開始すると先ず、戻し処理用のカウンタが減算される。10枚の一万円札と、10枚の千円札とのそれぞれが、同券種として集積部51~55に集積されれば、符号1302に示すように、戻し処理用のカウンタの残りがゼロになり、戻し処理が完了する。
それ以降に、投入部13から繰り出される紙幣は、分類処理に係る紙幣である。識別部18の識別結果に従って、第1~第5集積部51~55、又は、第1~第2外部集積部11、12に集積されると共に、分類処理用のカウンタが加算される。図13の例では、符号1303に示すように、40枚の一万円札と40枚の千円札とが、分類処理において計数されている。
このように、戻し処理と分類処理とを一括して行うと、エラー発生時に回収した紙幣が異券種として識別されて第1~第5集積部51~55に集積されなかったとしても、分類処理用として投入部13に投入した紙幣を、戻し処理用の紙幣として補充することができて、第1~第5集積部51~55に戻すことができる。そのため、戻し処理を、適切かつ速やかに終了させることが可能になる。
ここで、戻し処理と分類処理とを一括して行うときに、戻し処理用の紙幣が異券種と識別されると、分類処理用の紙幣が、戻し処理用の紙幣として補充される結果、分類処理用の紙幣が、見かけ上、減ってしまうことになり、そのことが違算を招く恐れがある。
そこで、戻し処理と分類処理とを一括して行う処理において、分類処理に係る紙幣の明細を操作者に予め入力させるようにしてもよい。操作者は、紙幣処理装置1の表示部17において操作を行って、分類処理に係る紙幣の明細を入力してもよい。また、紙幣処理装置1は、有線又は無線の通信線を介して接続されている上位端末から、分類処理に係る紙幣の明細を入手してもよい。
図14は、分類処理に係る紙幣の明細を、操作者に予め入力させる構成における、戻し処理用のカウンタと、分類処理用のカウンタとの遷移の一例を示している。戻し処理用のカウンタは、前述したように、カウンタを減算する。また、分類処理用のカウンタも、予め入力した明細により、識別結果に応じて、カウンタを減算する。具体的に図14の符号1401に示す初期状態の例では、10枚の一万円札と10枚の千円札とが戻し処理用の紙幣であり、50枚の一万円札と50枚の千円札とが分類処理用の紙幣である。これらの紙幣が全て、投入部13に投入される。尚、投入部13に紙幣を一度に投入することができないときは、操作者は、前述したように、複数回に分けて、投入部13に、紙幣BNを投入することができる。
符号1402は、エラー現金戻し処理が完了したときの、エラー現金戻し処理用のカウンタ、及び、新たな整理処理用のカウンタを例示している。ここで、図では示さないが、戻し処理が完了するまでに、10枚の一万円札が異券種として識別されて、第1又は第2集積部51、52へ搬送されていると共に、10枚の千円札が異券種として識別されて、第1又は第2集積部51、52へ搬送されているとする。つまり、分類処理用として投入部13に投入した50枚の一万円札の内、10枚の一万円札が戻し処理用の紙幣として取り扱われ、同様に50枚の千円札の内、10枚の千円札が、戻し処理用の紙幣として取り扱われている。
戻し処理が終わった後に投入部13から繰り出される紙幣は、分類処理用の紙幣として取り扱われる。分類処理用のカウンタも、識別部18の識別結果に基づいて、減算を行う。符号1403の例では、40枚の一万円札が分類処理の紙幣としてカウントされ、40枚の千円札が分類処理の紙幣としてカウントされている。新たな整理処理用の紙幣として、一万円札が50枚と、千円札が50枚とが、予め入力されているため、分類処理用のカウンタは、残り-20枚を示している。
操作者は、第1及び/又は第2外部集積部11、12、又は、リジェクト部14に集積されている紙幣を、投入部13に再投入するか、別の紙幣を用意して投入部13に再投入するかして、分類処理用のカウンタが0枚になるまで、分類処理を継続する。戻し処理のカウンタと、分類処理用のカウンタとの両方の残りがゼロになれば、戻し処理と、分類処理との両方が終了する。
このように、戻し処理と分類処理とを一括して行うときに、分類処理に係る明細を予め入力しておくと、分類処理用の紙幣の一部を、戻し処理用の紙幣として補充したときに、分類処理に関して違算が発生してしまうことを未然に防止することができる。
尚、戻し処理を行った後、紙幣処理装置1は、戻し処理の明細を上位端末に送信するようにしてもよい。
(第2反転部における残留紙幣の検知)
前述したように、第2反転部22は、紙幣BNの搬送幅方向の向きを反転させるよう構成された反転機構224を有している。反転機構224は、その構成の詳細な図示は省略するが、紙幣BNを捻りながら搬送するよう構成されており、反転機構224内には、その構造上、紙幣BNを検知するための検知センサを配設することが難しい。そのため、反転機構224内に紙幣BN又は紙幣BNの一部が残留していることを、直接的に検知することが困難である。その一方で、反転機構224は、紙幣BNを捻ることから、傷んだ紙幣であれば、一部がちぎれて、反転機構224内に紙幣BNの一部が残留してしまう恐れがある。
そこで、第2反転部22は、反転機構224における入口側に配置したセンサ2241と、出口側に配置したセンサ2242、2243、2244との検知信号に基づいて、反転機構224内に紙幣BN又は紙幣BNの一部が残留していないか否かを判断する。
具体的には、図5の上図に示すように、反転機構224の入口側のセンサ2241が紙幣BNの通過を検知した後、図5の下図に実線で示すように、反転機構224の出口側の三つのセンサ2242、2243、2244の全てが紙幣BNの通過を検知すれば、制御部41は、反転機構224内に紙幣BN又は紙幣BNの一部は残留していないと判断する。
これに対し、図5の下図に一点鎖線で示すように、入口側のセンサ2241が紙幣BNの通過を検知した後、所定時間が経過しても、出口側の三つのセンサ2242、2243、2244の全てが、紙幣BNの通過を検知しないときには、制御部41は、反転機構224内に紙幣BN又は紙幣BNの一部は残留していると判断する。
さらに、図15に例示するように、破れかかった紙幣が反転機構224に入った後、紙幣の一部BN6が反転機構224内に残り、紙幣の残りBN7だけが、反転機構224を通過したときには、出口側の三つのセンサ2242、2243、2244の一部だけ(図15の下図の例では、センサ2243、2244)が紙幣BNの通過を検出する。この場合、制御部41は、紙幣BNの一部が、反転機構224内に残留していると判断する。
制御部41が、反転機構224のセンサ2241、2242、2243、2244の検知信号に基づいて、反転機構224内に紙幣BN又は紙幣BNの一部が残留していると判断したときには、制御部41は、紙幣処理装置1の処理を停止する。操作者は、第2反転部22のユニットを、紙幣処理装置1の筐体から引き出して、反転機構224内に残留している紙幣BN又は紙幣BNの一部を、反転機構224から取り除く。
(紙幣揃えの変形例)
紙幣処理装置1は、第1反転部21及び第2反転部22を備えていることにより、紙幣BNの表裏及び天地方向の向きの両方を揃えることができる。また、第1反転部21及び第2反転部22を用いると、紙幣の方向を、A方向、B方向、C方向及びD方向のいずれにも変更することができる。そこで、紙幣処理装置1は、全ての紙幣を同じ方向に揃えるのではなく、識別部18による識別結果に応じて、紙幣を揃える方向を変更してもよい。
例えば、第1外部集積部11又は第2外部集積部12に集積する紙幣BNは、正券であればA方向にし、損券であればB方向にするようにしてもよい。図16に示すように、A方向の正券は、第1反転部21及び第2反転部22を、それぞれ反転せずに通過することによってA方向のままになる一方、A方向の損券は、第1反転部21において反転した後、第2反転部22においても反転することにより、B方向に変更される。同様に、B方向の正券は、第1反転部21において反転した後、第2反転部22においても反転をすることによりA方向に変更される一方、B方向の損券の紙幣は、第1反転部21及び第2反転部22を、それぞれ反転せずに通過することによってB方向のままになる。C方向の正券は、第1反転部21において反転した後、第2反転部22を反転せずに通過することにより、A方向に変更される一方、C方向の損券は、第1反転部を反転せずに通過した後、第2反転部22において反転することにより、B方向に変更される。D方向の正券は、第1反転部21を反転せずに通過した後、第2反転部22において反転することによりA方向に変更される一方、D方向の損券は、第1反転部21において反転した後、第2反転部22を反転せずに通過してB方向に変更される。
こうして、正券を所定の方向に揃え、損券を、正券とは別の方向に揃えるようにすると、操作者は、紙幣処理装置1の第1外部集積部11又は第2外部集積部12に集積されている紙幣BNの方向を見れば、当該紙幣BNが正券であるか、損券であるかを判断することが可能になる。
また、第1~第5集積部51~55に集積する紙幣BNについても同様に、識別結果に従って方向を揃えるようにしてもよい。例えば図17に示すように、正券をA方向に揃え、損券をB方向に揃えるようにすれば、操作者は、帯封紙幣の帯封紙Tの位置により、目視しただけで、正券の束であるか、損券の束であるかを判別することができる。
(紙幣処理装置の変形例)
図18は、紙幣処理装置の別の構成例を示している。この紙幣処理装置100は、図2に示す紙幣処理装置1と同様に、紙幣BNを識別及び計数し、種類別に分類をした上で、所定枚数毎の帯封紙幣を作成する装置である。紙幣処理装置100は、第1外部集積部11、第2外部集積部12、投入部13、リジェクト部14、投出部15、表示部17、識別部18、第1反転部21、搬送部3、制御部41、記憶部42、第1~第5集積部51~55、運搬部6、及び、帯封部7を備えている。
紙幣処理装置100において、図2に示す紙幣処理装置1と同じ構成要素について同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する場合がある。紙幣処理装置100は、主に、構成要素の配置が、紙幣処理装置1とは相違する。また、紙幣処理装置100は、紙幣処理装置1とは異なり、端数紙幣を返却するための返却部16を備えていない。さらに、紙幣処理装置100は、紙幣処理装置1とは異なり、第2反転部を備えていない。紙幣処理装置100は、紙幣の表裏のみを揃えることができる。尚、紙幣処理装置100は、第2反転部を備えて構成してもよい。
第1外部集積部11及び第2外部集積部12は、紙幣処理装置100の筐体10の上部に前後に並んで設けられている。第1外部集積部11は、第2外部集積部12よりも後側に配設されている。筐体10の上部において、第1外部集積部11よりも前側には、リジェクト部14が配設されている。
識別部18は、筐体10の前面の上部に設けられた投入部13の後側でかつ、第2外部集積部12及びリジェクト部14の下側に配設されている。識別部18は、紙幣BNを上下方向に搬送する搬送路に設けられている。リジェクト部14につながる搬送路141は、紙幣BNの搬送方向について識別部18の下流から分岐している。
第1反転部21は、筐体10の内部において、識別部18の後側でかつ、第1外部集積部11及び第2外部集積部12の下側に配設されている。紙幣BNは、第1反転部21を、上から下に向かう略上下方向に通過する。
第1外部集積部11及び第2外部集積部12につながる搬送路120は、紙幣BNの搬送方向について、第1反転部21の下流から分岐している。
第1~第5集積部51~55は、筐体10内の前部において、上下方向に並んで配設されている。紙幣BNを搬送する搬送路は、第1~第5集積部51~55の前側において、第1~第5集積部51~55に沿うように、上下方向に伸びて配設されている。この搬送路は、筐体10の前部に設けた扉101に対して一体に設けられている。図示は省略するが、扉101を開けることによって、第1~第5集積部51~55が、筐体10の外に開放される。
この紙幣処理装置100において、第1~第5集積部51~55に残った端数紙幣は、操作者が手で、第1~第5集積部51~55の前側から直接、取り出す。図示は省略するが、第1~第5集積部51~55の前側には、操作者が手で開閉可能な扉が取り付けられている。扉が開いたことを検出するセンサが、第1~第5集積部51~55のそれぞれに取り付けられている。
運搬部6は、第1~第5集積部51~55の後側に配設されている。運搬部6は、第1~第5集積部51~55から取り出した紙幣BNを、帯封部7に運搬する。
帯封部7は、第1~第5集積部51~55の下側に配設されている。帯封部7は、運搬部6によって運搬された紙幣BNを帯封する。生成された帯封紙幣は、第2運搬部72によって運搬されることにより、投出部15から投出される。
この紙幣処理装置100においても、前述したように、分類処理中にエラーが発生して紙幣処理装置100が停止したときに、操作者は、エラー解除処理を行う。例えば扉101を開けて、搬送路において詰まっている紙幣BNを手で取り除く。また、搬送路において残っている紙幣BNも、手で取り除く。
紙幣処理装置100は、返却部16を備えていないため、エラー解除処理が終わった後の回収処理において、操作者は、第1~第5集積部51~55に集積されている紙幣の内、未確定の集積部に集積されている紙幣を回収対象の紙幣として、集積部から手で取り出す。
図19に例示するように、回収処理に際して紙幣処理装置100の表示部17に、紙幣BNを取り出すべき集積部の情報が記載された画面D3を表示するようにしてもよい。図19の構成例では、上から2番目の第2集積部52が、他の集積部よりも強調して表示されることにより、紙幣BNを取り出すべき集積部として表示されている。尚、未確定の集積部が複数あり、複数の集積部のそれぞれから紙幣BNを取り出す必要があれば、画面D3に、複数の集積部を強調表示してもよい。こうすることで、操作者に対し、回収対象の紙幣を、指定された集積部から正確に取り出す一方で、回収対象でない紙幣を、集積部から取り出すことがないようにすることができる。
尚、操作者が、回収対象の紙幣を集積しない集積部に誤ってアクセスをしてしまったとき等には、当該集積部は、未確定の集積部になる。回収処理中に未確定になってしまったときには、図19に示す画面D3の情報を更新して、新たに未確定となった集積部の情報を表示するようにしてもよい。
ここで、紙幣処理装置100においては、回収対象の紙幣BNを集積しない集積部にアクセスをする誤操作を防止するために、各集積部の前側に個別の内扉を配置し、各内扉にロック機構を設けてもよい。つまり、回収対象の紙幣BNを集積している集積部は、内扉のロックを解除状態にして、扉101及び内扉を開けて第1~第5集積部51~55を、筐体10の外に開放したときに、紙幣の取り出しを許容する。一方、回収対象の紙幣BNを集積しない集積部は、内扉をロック状態にすることにより、操作者が当該集積部にアクセスすることができないようにしてもよい。
また、各集積部にロック機構を設ける代わりに、又は、ロック機構を設けると共に、各集積部に、操作者がアクセスしようとしたことを検知するセンサ(例えば透遮光センサ)を取り付け、センサの検知信号に基づいて、操作者が、回収対象の紙幣を集積しない集積部にアクセスしようとしたときには、警告音を発したり、表示部17の警告表示を行ったりすることにより、操作者による不要なアクセスを防止するようにしてもよい。
この紙幣処理装置100においても、エラーが発生した後、未確定の集積部を特定すると共に、未確定の集積部に集積されている紙幣BNを回収対象にするため、回収対象の紙幣BNの数が、必要最小限になる。その結果、戻し処理の負担を軽減することが可能になる。
また、この紙幣処理装置100においては、操作者が回収対象の紙幣BNを手で回収するが、未確定の集積部に関する情報を、操作者に提供することによって(図19参照)、操作者は、未確定の集積部を認識することができ、正しい集積部から回収対象の紙幣BNを回収することができる。
尚、紙幣処理装置100においても、紙幣処理装置1を例に説明した各種の構成を、適宜、適用することが可能である。
(他の実施形態)
尚、紙幣処理装置は、紙幣BNを長手の縁を前にして搬送する、いわゆる短手搬送に構成することに限らず、紙幣BNを短手の縁を前にして搬送する、いわゆる長手搬送に構成することも可能である。
また、紙幣処理装置は、複数の集積部を備えることに限らず、例えば集積部は一つであってもよい。
紙幣処理装置は、入金処理を行う入金機、出金処理を行う出金機、及び、入金処理と出金処理とを行う入出金機としてもよい。
尚、ここに開示する技術は、紙幣の処理を行う装置に限らず、小切手や商品券等の有価媒体を含む紙葉類を処理する装置に、広く適用することが可能である。
また、前述した様々な構成は、適宜、組み合わせたり、適宜、省略したりすることが可能である。