以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装装置、検査装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図2における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図2における上下方向)が示される。図3、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図3における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向である。図4、及び後述する一部では、Z方向の軸(Z軸)を回転軸とする回転の方向であるθ方向が示される。
まず図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、基板に部品を実装して実装基板を製造する機能を有するものであり、半田印刷装置M1、部品実装装置M2,M3および検査装置M4を備えている。これらの装置は通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。なお、部品実装システム1が備える部品実装装置M2,M3は2台に限定されることはなく、1台でも3台以上でも良い。
半田印刷装置M1は、実装対象の基板に部品接合用のクリーム半田をスクリーン印刷する。部品実装装置M2,M3は、部品実装部12(図2参照)によって部品接合用のクリーム半田が印刷された基板に部品供給部から取り出した部品を移送搭載する部品実装動作を行う。検査装置M4は、部品実装装置M2,M3によって部品が実装された基板における部品の実装状態を検査して、部品の正規位置からの位置ずれ状態などを検出する。管理コンピュータ3は、ライン管理機能と、検査装置M4によって取得された部品の位置ずれ量を含む検査情報に基づいて、部品実装装置M2,M3にフィードバックする実装動作を補正するフィードバック補正値Vcを算出する機能を併せて有している。
次に図2、図3を参照して、部品実装装置M2,M3の構成を説明する。なお図3は、図2におけるA-A断面を部分的に示している。部品実装装置M2,M3は、部品供給部から供給された部品を基板に実装する実装動作を実行する機能を有する。図2において、基台4の中央には、基板搬送機構5がX方向に配設されている。基板搬送機構5は、上流側から搬送された基板6を、実装作業位置に搬入して位置決め保持する。また、基板搬送機構5は、部品実装作業が完了した基板6を下流側に搬出する。
基板搬送機構5の両側方(フロント側、リア側)には、部品供給部7が配置されている。それぞれの部品供給部7には、複数のテープフィーダ8が並列に装着されている。テープフィーダ8は、部品を収納するポケットが形成されたキャリヤテープを部品供給部7の外側から基板搬送機構5に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、部品実装部12の実装ヘッドが部品を吸着する部品吸着位置に部品を供給する。
基台4上面においてX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸ビーム9がY方向に沿って配設されている。Y軸ビーム9には、同様にリニア駆動機構を備えた2基(フロント側、リア側)のX軸ビーム10が、Y方向に移動自在に結合されている。X軸ビーム10はX方向に沿って配設されている。2基のX軸ビーム10には、それぞれ実装ヘッド11がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド11は、部品を吸着保持して昇降可能な複数の吸着ユニット11aを備える。吸着ユニット11aのそれぞれの下端部には、部品を吸着保持する吸着ノズル11b(図3参照)が装着されている。
図2において、Y軸ビーム9、X軸ビーム10を駆動することにより、実装ヘッド11はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド11は、それぞれ対応した部品供給部7に配置されたテープフィーダ8の部品吸着位置から部品を吸着ノズル11bによって吸着して取り出して、基板搬送機構5に位置決めされた基板6の実装点に装着する。すなわち、Y軸ビーム9、X軸ビーム10および実装ヘッド11は、部品を基板6に実装する部品実装部12を構成する。このように、部品実装装置M2,M3は、フロント側とリア側の2基の部品実装部12を備えている。
部品供給部7と基板搬送機構5との間には、部品認識カメラ13が配設されている。部品供給部7から部品を取り出した実装ヘッド11が部品認識カメラ13の上方を移動する際に、部品認識カメラ13は実装ヘッド11に保持された状態の部品を撮像して部品の保持姿勢を認識する。実装ヘッド11が取り付けられたプレート10aには基板認識カメラ14が取り付けられている。基板認識カメラ14は、実装ヘッド11と一体的に移動する。
実装ヘッド11が移動することにより、基板認識カメラ14は基板搬送機構5に位置決めされた基板6の上方に移動し、基板6に設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板6の位置を認識する。また、基板認識カメラ14はテープフィーダ8の部品吸着位置の上方に移動し、部品吸着位置付近のキャリヤテープの状態を認識する。実装ヘッド11による基板6への部品実装動作においては、部品認識カメラ13による部品の認識結果と、基板認識カメラ14による基板位置の認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
図3に示すように、部品供給部7にはフィーダベース15aに予め複数のテープフィーダ8が装着された状態の台車15がセットされる。基台4に設けられた固定ベース(図示省略)に対して、フィーダベース15aをクランプ機構15bによってクランプすることにより、部品供給部7において台車15の位置が固定される。台車15には、部品Dを保持したキャリヤテープ16を巻回状態で収納するテープリール17が保持されている。テープリール17から引き出されたキャリヤテープ16は、テープフィーダ8によって吸着ノズル11bによる部品吸着位置までピッチ送りされる。
次に図4を参照して、実装ヘッド11の構成を説明する。実装ヘッド11は複数の吸着ユニット11aを備えており、各吸着ユニット11aは駆動機構を備えている。駆動機構を駆動することにより、各吸着ユニット11aの下端部に装着された吸着ノズル11bを昇降させる(矢印b)とともに、ノズル軸ANを回転軸として吸着ノズル11bをθ方向に回転させる(矢印c)ことが可能となっている。
すなわち、実装ヘッド11は、部品Dを吸着し、部品Dを基板6の実装面と平行な回転方向(θ方向)に所定の角度で回転させて、部品Dを実装する部品吸着部となる。そして、部品実装部12は、部品吸着部を含み、複数の吸着ノズル11bを備え、吸着ノズル11bにより部品Dを基板6の実装面と平行な回転方向に回転させて基板6に部品Dを実装する部品実装手段となる。
次に図5を参照して、部品実装システム1の制御系の構成を説明する。管理コンピュータ3、部品実装装置M2、M3および検査装置M4は、通信ネットワーク2を介して接続されている。部品実装装置M2、M3は、実装制御部20、実装記憶部21、部品実装部12、表示部22、入力部23、認識処理部24、通信部25を備えている。実装記憶部21には前述の部品実装作業を実行するための実装プログラムの他、実装データ21a、補正値データ21bが記憶されている。
実装データ21aには、部品Dを基板6に実装する際に参照されるデータであって、基板6における部品Dの実装位置(正規位置)の座標、実装する際の部品Dの回転角度、実装される部品Dの種類などの情報が含まれている。補正値データ21bには、後述する管理コンピュータ3から送信されたフィードバック補正値Vcが含まれる。
実装制御部20はCPUなどの演算装置であり、実装記憶部21に記憶されたプログラムやデータに基づいて各部を制御することにより、部品実装部12による基板6に部品Dを実装する実装動作を制御する。認識処理部24は、基板認識カメラ14による撮像結果を認識処理することにより、基板6の位置を検出する。また、認識処理部24は、部品認識カメラ13による撮像結果を認識処理することにより、実装ヘッド11に保持された状態における部品Dの位置を検出する。
そして、実装制御部20は、実装データ21a、補正値データ21b、基板6の位置、部品実装部12に保持された部品Dの位置、フィードバック補正値Vcに基づいて、部品実装部12による実装動作を補正して基板6に部品Dを実装する。また、実装制御部20は、実装ヘッド11(部品吸着部)が保持する部品Dを実装データ21aにおいて指定された回転角度だけ回転させて基板6に実装する。このように、実装制御部20は、部品実装部12(部品実装手段)による基板6に部品Dを実装する実装動作を制御する実装制御手段となる。
入力部23は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部22は液晶パネルなどの表示装置であり、入力部23による操作のための操作画面などの各種画面などの各種情報を表示する。通信部25は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して他の部品実装装置M2,M3、管理コンピュータ3、検査装置M4との間で信号、データの授受を行う。
図5において、検査装置M4は、検査制御部30、検査記憶部31、検査用カメラ32、表示部33、入力部34、通信部35を備えている。検査制御部30はCPUなどの演算装置であり、内部処理機能として位置ずれ量算出部30aを備えている。検査記憶部31は記憶装置であり、実装データ31a、位置ずれ量データ31b、などを記憶する。実装データ31aには、部品Dが実装された基板6に関するデータであって、基板6における部品Dの実装位置(正規位置)の座標、実装する際の部品Dの回転角度、実装された部品Dの種類などの情報が含まれている。
入力部34は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部33は液晶パネルなどの表示装置であり、入力部34による操作のための操作画面などの各種画面などの各種情報を表示する。通信部35は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M2,M3、管理コンピュータ3との間で信号、データの授受を行う。
検査用カメラ32は、基板6に実装された部品Dを上方から撮像する。位置ずれ量算出部30aは、検査用カメラ32により撮像された画像から、基板6に実装された部品Dの正規位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ(図6参照)を算出する位置ずれ量算出処理を実行する。算出された位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθは、位置ずれ量データ31bとして検査記憶部31に記憶されるとともに、通信部35を介して管理コンピュータ3に送信される。
このように、検査装置M4は、部品Dを撮像する検査用カメラ32(撮像部)と、検査用カメラ32により撮像された画像から部品Dの正規位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθを算出する位置ずれ量算出部30aとを備え、部品実装部12(部品実装手段)により基板6に実装された部品Dの正規位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθを取得する位置ずれ量取得手段となる。
ここで図6を参照して、位置ずれ量データ31bに含まれる、基板6に実装された部品Dの正規位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθの一例について説明する。部品実装部12による実装動作では、部品供給部7のテープフィーダ8から実装ヘッド11の吸着ノズル11bによって取り出された部品Dが、基板6に設定された実装位置である正規位置Nを目標として移送搭載される。このとき部品Dの部品中心Cが必ずしも正規位置Nに対して正しく一致するとは限らず、X方向に位置ずれ量ΔX,Y方向に位置ずれ量ΔY、θ方向(実装面と平行な回転方向)に位置ずれ量Δθだけ位置ずれした状態にある。
この位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθは、基板6に実装された部品Dを検査用カメラ32によって撮像した結果を位置ずれ量算出部30aによって位置ずれ量算出処理することにより取得される。位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθは、1つの基板6に実装される複数の部品Dについてそれぞれ取得されて位置ずれ量データ31bとして記憶される。
図5において、管理コンピュータ3は、管理制御部40、管理記憶部41、表示部42、入力部43、通信部44を備えている。入力部43は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部42は液晶パネルなどの表示装置であり、入力部43による操作のための操作画面などの各種画面などの各種情報を表示する。通信部44は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M2,M3、検査装置M4との間で信号、データの授受を行う。
管理制御部40はCPUなどの演算装置であり、内部処理機能として補正値算出部40a、補正値送信部40b、部品選択部40cを備えている。管理記憶部41は記憶装置であり、実装データ41a、部品情報41b、位置ずれ量データ41c、補正値データ41dなどを記憶する。
実装データ41aには、部品Dを基板6に実装する際に参照されるデータであって、基板6における部品Dの実装位置(正規位置)の座標、実装する際の部品Dの回転角度、実装される部品Dの種類などの情報が含まれている。部品情報41bには、基板6に実装される部品Dの形状、サイズ、部品Dが格納されるキャリヤテープ16のポケット16bと格納される部品DとのギャップGx,Gy(図8参照)などの情報が、部品Dの種類に紐付けられて記憶されている。
ここで図7を参照して、部品情報41bに含まれる部品Dの形状について説明する。2種類の部品D(1)、部品D(2)の平面図を図7(a)に、側面図を図7(b)に示す。部品D(1)と部品D(2)は、本体部DaのX方向の両端に電極Dbを有する抵抗、コンデンサなどの2端子素子である。部品D(1)と部品D(2)は、平面視したX方向、Y方向のサイズは同じであるが、電極Dbの間隔が部品D(1)の方が広い形状をしている。そのため、部品D(1)の方が、吸着ノズル11bの下端が当接する吸着面Dc(本体部DaのXY面)が広く、部品吸着時に吸着ノズル11bと部品Dの位置がずれた場合でも正常に吸着可能な吸着位置ずれに対する許容範囲が広い。
また、吸着面Dcと電極Db上面の段差Dhは、部品D(2)の方が大きい形状をしている。そのため、吸着ずれにより吸着ノズル11bが本体部Daと電極Dbの境界を含んで吸着した場合の吸着姿勢の傾き(水平面に対する部品の傾き)は、部品D(2)の方が大きい。これらの理由により、部品D(2)は、部品D(1)とサイズは同じであるが、吸着ばらつきに起因する実装位置のばらつき(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)が部品D(1)よりも大きくなる。
ここで図8を参照して、部品情報41bに含まれるキャリヤテープ16のポケット16bと格納される部品DとのギャップGx,Gyについて説明する。図8(a)において、キャリヤテープ16(1)のベーステープ16aには、部品D(3)を収納する凹形状のポケット16bと、キャリヤテープ16(1)をピッチ送りするテープフィーダ8のスプロケット(図示省略)が係合する送り穴16cが等間隔に形成されている。部品D(3)を収納したポケット16bの上面には、カバーテープ16dが貼着されている。
ポケット16bに収納された部品D(3)とポケット16bの内壁の間には、X方向にギャップGx1,Gx2、Y方向にギャップGy1,Gy2が発生している。これらのギャップGによって、ピッチ送り中に部品D(3)がポケット16b内を不規則に移動して、吸着ノズル11bが部品D(3)を吸着する際の吸着位置がばらつく。そのため、部品D(3)を基板6に実装する際の実装位置がばらつく。
図8(b)において、キャリヤテープ16(2)のポケット16bには、部品D(3)とサイズが同じ部品D(4)が収納されている。部品D(4)とポケット16bの内壁の間には、X方向にギャップGx3,Gx4、Y方向にギャップGy3,Gy4が発生している。キャリヤテープ16(2)のポケット16bは、キャリヤテープ16(1)のポケット16bより大きく、キャリヤテープ16(2)に発生するギャップG(Gx3+Gx4,Gy3+Gy4)は、キャリヤテープ16(1)に発生するギャップG(Gx1+Gx2,Gy1+Gy2)よりも大きい。そのため、部品D(4)は、部品D(3)とサイズは同じであるが、基板6に実装した際の実装位置のばらつきが部品D(3)より大きくなる。
図5において、位置ずれ量データ41cには、実装基板の生産中に継続して検査装置M4において取得される位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθを含む位置ずれ量データ31bが、検査装置M4から逐次送信されて記憶されている。すなわち、位置ずれ量データ41cを記憶する管理記憶部41は、位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθを生産中に継続して記憶する位置ずれ量記憶部となる。
補正値算出部40aは、検査装置M4(位置ずれ量取得手段)により取得されて位置ずれ量データ41cに記憶されている基板6に実装された部品Dの正規位置NからのX方向の位置ずれ量ΔXとY方向の位置ずれ量ΔY(以下、単に「位置ずれ量ΔX,ΔY」と称す)に基づき、部品実装部12(部品実装手段)の実装動作を補正するフィードバック補正値Vcを算出する。補正値算出部40aは、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に、基板6に実装された部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔYからフィードバック補正値Vcを算出する。フィードバック補正値Vcを、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に算出する意義は後述する。
また、補正値算出部40aは、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に所定数の位置ずれ量ΔX,ΔYが集まる毎にフィードバック補正値Vcを統計処理により算出する。統計処理としては、例えば、外れ値を除いた所定数の位置ずれ量ΔX,ΔYの平均値の算出が用いられる。その際の所定数は、統計処理によって算出されるフィードバック補正値Vcの許容誤差などに基づいて決められる。これによって、適正な精度のフィードバック補正値Vcを算出することができる。
吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に算出されたフィードバック補正値Vcは、部品実装部12によって実装される部品Dの実装動作の補正に使用される。補正値送信部40bは、基板6に実装される部品Dに対応するフィードバック補正値Vcを紐付して、その部品Dを実装する部品実装装置M2,M3に送信する。送信されたフィードバック補正値Vcは、部品実装装置M2,M3の実装記憶部21に補正値データ21bとして記憶される。これによって、部品Dの実装位置ずれを精度良く補正することができる。
ここで図9を参照して、フィードバック補正値Vcを吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に算出する意義について説明する。吸着ノズル11bは、図9(a)に2点鎖線で示すように、ノズル軸ANが鉛直(Z方向)となる姿勢で実装ヘッド11に装着される。しかし、吸着ノズル11bの装着具合や吸着ノズル11b自体の歪みに起因して、ノズル軸ANが鉛直方向から傾いて装着される場合がある。このノズル軸ANの傾きは、吸着ノズル11b毎に異なる。
このように、ノズル軸ANが傾いた吸着ノズル11bによって実装動作が行われると、部品中心Cが正規位置Nから位置ずれして部品Dが基板6上に実装されてしまう。さらに、図9(b)に示すように、吸着ノズル11bを回転させると、回転角度に応じて部品Dの実装位置(部品中心C)が移動して基板6に実装される。これにより、図9(b)に示す例のように、0°、90°、180°、270°と回転角度毎に位置ずれ量ΔX,ΔYが異なることになる。
このように、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎によって位置ずれ量ΔX,ΔYが異なる状態では、基板6全体で一つのフィードバック補正値Vcを算出して実装動作を補正すると、吸着ノズル11bによって位置ずれが適正に補正されない場合がある。このような場合でも、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎にフィードバック補正値Vcを算出して実装動作を補正することで、吸着ノズル11bの装着具合や吸着ノズル11b自体の歪みの影響による部品Dの実装位置ずれを精度良く補正することができる。
図5において、部品選択部40cは、実装データ41a、部品情報41bに含まれる部品Dの形状と部品Dのサイズとのいずれか、部品Dの回転角度、目標となる実装精度に基づいて、フィードバック補正値Vcの算出に利用する部品Dを選択する。例えば、部品選択部40cは、部品Dを選択するにあたり、基板6に実装した際の実装位置のばらつきが大きな、図7に示す部品D(2)、図8に示す部品D(4)を選択対象から除外する。これによって、部品Dの実装位置ずれを精度良く補正することができる。このように、部品選択部40cは、フィードバック補正値Vcの算出に利用する部品Dを選択する部品選択手段となり、補正値算出部40aは、部品選択手段により選択された部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔYからフィードバック補正値Vcを算出する。
ここで図10を参照して、補正値算出部40aによるフィードバック補正値Vcの算出の具体例について説明する。図10(a)には、基板6上に実装された13個の部品D1*~D5*,D6%~D10%,D11#,D12~D13(実線で表示)とその部品中心C1~C13(黒丸で表示、C6~C13は符号省略)、実装目標である正規位置N1~N13(白丸で表示、N6~N13は符号省略)、正規位置Nに実装された場合の部品Dの位置(破線で表示)が表示されている。
12個の部品D1*~D5*,D6%~D10%,D11#,D12は、同じ吸着ノズル11bによって基板6に実装されている。部品D1*~D5*は回転角度が0°で、部品D6%~D10%は回転角度が90°で、部品D11#は回転角度が45°で、基板6上に実装されている。このうち、回転角度が45°の部品D11#、実装ばらつきが大きな傾向がある形状の部品D12は、部品選択部40cによってフィードバック補正値Vcの算出対象から除外されている。なお、部品D1*~D5*,D6%~D10%,D11#,D12を実装する吸着ノズル11bと異なる吸着ノズル11bによって基板6に実装される部品D13は、同じ吸着ノズル11bにより同じ回転角度で実装される図示省略する他の部品Dと合わせてフィードバック補正値Vcが算出される。
すなわち、この例で補正値算出部40aは、同じ吸着ノズル11bによって同じ回転角度で基板6に実装される部品D1*~D5*および部品D6%~D10%の位置ずれ量ΔX,ΔYからフィードバック補正値Vcをそれぞれ算出するとする。図10(b)には、検査装置M4によって取得された部品D1*~D5*および部品D6%~D10%の位置ずれ量ΔX,ΔYが、XYグラフで示されている。補正値算出部40aは、部品D1*~D5*および部品D6%~D10%の位置ずれ量ΔX,ΔYを統計処理(ここでは平均値を算出)することにより、X方向のフィードバック補正値Vcx(0°)およびフィードバック補正値Vcx(90°)、Y方向のフィードバック補正値Vcy(0°)およびフィードバック補正値Vcy(90°)をそれぞれ算出する。
さらに、補正値算出部40aは、回転角度が45°で実装される部品D11#のフィードバック補正値Vc(45°)を、回転角度が90°の部品D6%~D10%のフィードバック補正値Vc(90°)と回転角度が0°の部品D1*~D5*のフィードバック補正値Vc(0°)を補完して算出する。すなわち、補正値算出部40aは、所定の回転角度(0°および90°)以外の第1の回転角度(45°)で実装される部品D11#を実装する際のフィードバック補正値Vc(45°)を、第1の回転角度より大きな第2の回転角度(90°)のフィードバック補正値Vc(90°)と第1の回転角度より小さな第3の回転角度(0°)のフィードバック補正値Vc(0°)を補間して算出する。
なお、補間の方法は、図10(b)に示す1次関数による線形補間に限定されることはない。2次関数や3次関数、第2の回転角度(90°)のフィードバック補正値Vc(90°)と第3の回転角度(0°)のフィードバック補正値Vc(0°)を円周上の2点とする円で補間して算出してもよい。これによって、第1の回転角度(45°)で実装される部品D11#が少ない場合でも、吸着ノズル11bに起因する変動の影響による部品Dの実装位置ずれを精度良く補正することができる。
また、補正値算出部40aは、回転角度が0°または90°のいずれか一方のみフィードバック補正値Vcが算出されている場合、所定の回転角度(0°または90°)以外の第1の回転角度(45°)で実装される部品D11#を実装する際のフィードバック補正値Vc(45°)を、第1の回転角度(45°)に最も近い所定の回転角度(0°または90°)のフィードバック補正値Vc(0°)またはフィードバック補正値Vc(90°)を用いて算出する。
なお、フィードバック補正値Vc(0°)算出の方法として、第1の回転角度(45°)に最も近い、回転角度(0°)のフィードバック補正値Vc(0°)または回転角度(90°)のフィードバック補正値Vc(90°)をそのまま流用しても、回転角度の差分(45°または-45°)だけ回転させて算出してもよい。これによって、第1の回転角度(45°)で実装される部品D11#が少ない場合でも、吸着ノズル11bに起因する変動の影響による部品Dの実装位置ずれを精度良く補正することができる。
上記説明したように、補正値算出部40aは、複数の吸着ノズル11bにより部品Dを基板6の実装面と平行な回転方向(θ方向)に回転させて基板6に実装する部品実装手段(部品実装部12)により基板6に実装された部品Dの正規位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔYに基づき、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に、部品実装手段の実装動作を補正するフィードバック補正値Vcを算出する補正値算出手段となる。
また、補正値算出部40aを備える管理コンピュータ3は、補正値算出装置となる。なお、補正値算出装置は、部品実装装置M2,M3、検査装置M4と通信ネットワーク2に接続される管理コンピュータ3に限定されることはない。補正値算出装置は、補正値算出部40aを備えるコンピュータであればよく、部品実装装置M2,M3、検査装置M4と接続されていなくてもよい。
次に図11、図12のフローに沿って、部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔYから算出されるフィードバック補正値Vcを用いて実装動作を補正する部品実装方法について説明する。図11において、まず、部品選択部40c(部品選択手段)は、フィードバック補正値Vcの算出に利用する部品Dを選択する(ST1:部品選択工程)。次いで実装制御部20は、実装データ21a、補正値データ21bに基づいて、部品Dを実装する吸着ノズル11bの所定の回転角度のフィードバック補正値Vcを用いて実装動作を補正して、吸着ノズル11bにより部品Dを基板6の実装面と平行な回転方向(θ方向)に回転させて基板6に部品Dを実装する(ST2:部品実装工程)。
次いで検査用カメラ32(撮像部)は、部品実装装置M2,M3で部品Dが実装されて検査装置M4に搬送された基板6上の部品Dを撮像する(ST3:撮像工程)。次いで位置ずれ量算出部30aは、撮像工程(ST3)において撮像された画像から部品Dの正規位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔYを算出する(ST4:位置ずれ量算出工程)。このように、撮像工程(ST3)と位置ずれ量算出工程(ST4)は、部品実装工程(ST2)において基板6に実装された部品Dの正規位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔYを取得する位置ずれ量取得工程(ST10)となる。
図11において、次いで管理記憶部41は、検査装置M4(位置ずれ量取得手段)より送信される位置ずれ量ΔX,ΔYを生産中に継続して記憶する(ST5:位置ずれ量記憶工程)。次いで補正値算出部40aは、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に所定数の位置ずれ量ΔX,ΔYが集まった否かを判断する(ST6:算出可否判断工程)。
所定数の位置ずれ量ΔX,ΔYが集まると(ST6においてYes)、補正値算出部40aは、位置ずれ量取得工程(ST10)において取得された位置ずれ量ΔX,ΔYに基づき、部品実装工程(ST2)における実装動作を補正するフィードバック補正値Vcを算出する(ST7:補正値算出工程)。すなわち、補正値算出工程(ST7)において、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に所定数の位置ずれ量ΔX,ΔYが集まる毎にフィードバック補正値Vcが算出される。
ここで図12を参照して、補正値算出工程(ST7)の詳細、すなわち、フィードバック補正値算出方法について説明する。まず、補正値算出部40aは、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に、基板6に実装された部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔYからフィードバック補正値Vcを算出する(ST11)。次いで補正値算出部40aは、フィードバック補正値Vcを算出した所定の回転角度外の回転角度で基板6に実装される部品Dがあるか否かを判断する(ST12)。
所定の回転角度以外の部品Dがある場合(ST12においてYes)、補正値算出部40aは、所定の回転角度以外の前後の回転角度のフィードバック補正値Vcがあるか否かを判断する(ST13)。前後の回転角度のフィードバック補正値Vcがある場合(ST13においてYes)、補正値算出部40aは、所定の回転角度以外の第1の回転角度で実装される部品Dを実装する際のフィードバック補正値Vcを、第1の回転角度より大きな第2の回転角度のフィードバック補正値Vcと第1の回転角度より小さな第3の回転角度のフィードバック補正値Vcを補間して算出する(ST14:第1の算出工程)。
図12において、前後の回転角度のフィードバック補正値Vcがない場合(ST13においてNo)、補正値算出部40aは、所定の回転角度以外の第1の回転角度で実装される部品Dを実装する際のフィードバック補正値Vcを、第1の回転角度に最も近い所定の回転角度のフィードバック補正値Vcを用いて算出する(ST15:第2の算出工程)。第1の算出工程(ST14)または第2の算出工程(ST15)において所定の回転角度以外の第1の回転角度のフィードバック補正値Vcが算出されると、次いで補正値算出部40aは、全ての回転角度でフィードバック補正値Vcが算出されたか否かを判断する(ST16)。
全ての回転角度ではフィードバック補正値Vcが算出されていない場合(ST16においてNo)、(ST13)に戻って、他の回転角度のフィードバック補正値Vcが算出される。全ての回転角度でフィードバック補正値Vcが算出された場合(ST16においてYes)、または、所定の回転角度以外の部品Dがない場合(ST12においてNo)、フィードバック補正値Vcの算出が終了する。
図11において、次いで補正値送信部40bは、基板6に実装される部品Dに対応するフィードバック補正値Vcを紐付して、その部品Dを実装する部品実装装置M2,M3に送信する(ST8:補正値送信工程)。フィードバック補正値Vcが送信されると部品実装工程(ST2)に戻り、新たに送信されて記憶された補正値データ21bに含まれるフィードバック補正値Vcに基づいて、基板6に部品Dが実装される。算出可否判断工程(ST6)において、所定数の位置ずれ量ΔX,ΔYが集まっていないと判断された場合(No)、フィードバック補正値Vcは算出されずに部品実装工程(ST2)に戻り、既に記憶されている補正値データ21bに基づいて、基板6に部品Dが実装される。
このように、部品実装システム1では、実装基板の生産中に位置ずれ量ΔX,ΔYが取得され、生産中に算出されたフィードバック補正値Vcに基づいて、実装動作が補正される。すなわち、生産中に、位置ずれ量取得工程(ST10)において検査装置M4(位置ずれ量取得手段)が位置ずれ量ΔX,ΔYを取得し、生産中に、補正値算出工程(ST7)において補正値算出部40a(補正値算出手段)がフィードバック補正値Vcを算出する。
上記説明したように、本実施の形態の部品実装システム1は、吸着ノズル11bにより部品Dを実装面と平行な回転方向(θ方向)に回転させて基板6に部品Dを実装する部品実装手段(部品実装部12)と、部品実装手段による実装動作を制御する実装制御手段(実装制御部20)と、基板6に実装された部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔYを取得する位置ずれ量取得手段(検査装置M4)と、取得された位置ずれ量ΔX,ΔYに基づき、実装動作を補正するフィードバック補正値Vcを算出する補正値算出手段(補正値算出部40a)とを備えている。
そして、補正値算出手段は、吸着ノズル11b毎、かつ所定の回転角度毎に、基板6に実装された部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔYからフィードバック補正値Vcを算出し、実装制御手段は、部品Dを実装する吸着ノズル11bの所定の回転角度のフィードバック補正値Vcを用いて部品実装手段による実装動作を補正している。これによって、吸着ノズル11bに起因する変動の影響による部品Dの実装位置ずれを精度良く補正することができる。
なお、部品実装システム1において、位置ずれ量取得手段は、検査装置M4に限定されることはない。例えば、位置ずれ量取得手段は、検査用カメラ32と位置ずれ量算出部30aを備える部品実装装置M2,M3で構成してもよい。また、補正値算出手段は、管理コンピュータ3が備える補正値算出部40aに限定されることはない。例えば、補正値算出手段は、部品実装装置M2,M3に補正値算出部40aを備えさせる構成でもよい。