(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置を前記図1ないし図11に基づいて説明する。本実施形態では、ホテルの客室等、室内空間の下がり天井部に設けられる吹出口装置の例について説明する。
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、矩形開口断面の内部流路を取囲んだ略筒状体として形成される吹出口本体10と、この吹出口本体10の内部に設けられ、内部流路の下側所定範囲を開閉可能とするシャッター部20と、吹出口本体10の内部における前記他方の開口近傍部分に傾動可能として配置される複数の案内羽根30と、吹出口本体10内部に配設されて内部流路を上下に分ける仕切り部40と、吹出口本体10の内部流路におけるシャッター部20より上側の流路部分に設けられる抵抗体50とを備える構成である。
前記吹出口本体10は、調和空気の通過可能な矩形開口断面の内部流路を取囲む、金属等の強度の高い材質製の略筒状体として形成され、空気調和対象となる室内空間の天井に内部流路両端の開口を横向きとして設けられる構成である。
この吹出口本体10は、その矩形状開口断面が横長となるようにして、天井60のうち、一段下がった下がり天井部65内側に配設され(図1参照)、天井60内でダクト61に接続される一方の開口11に調和空気を供給され、下がり天井部65の側面部に露出状態として配置される他方の開口12から、調和空気を室内空間70に吹出す仕組みである。
吹出口本体10の室内空間側の端部には、この端部から開口12の周囲に突出する額縁部13が形成される構成である。
この額縁部13は、吹出口本体10側端部から開口12に対し外方へ所定幅突出する部分を周方向へ連続させて略鍔状とした形状とされる構成である。そして、額縁部13が、天井60の下がり天井部側面の開口縁部分に接する状態とされることで、吹出口本体10と下がり天井部65との隙間からの調和空気の漏れを防止可能な構成である。
この他、吹出口本体10の内部には、一方の開口11寄りにシャッター部20が設けられると共に、他方の開口12近傍に複数の案内羽根30が設けられ、これらシャッター部20と案内羽根30の間に仕切り部40が設けられることとなる。
前記シャッター部20は、固定部21に対し可動部22を動かして、それぞれに設けられた開口部同士が重なり合って調和空気が通過可能な開放状態と、開口部同士が互いにずれて重なり合わず調和空気を通過させない閉止状態とを切替可能とする公知のスライドシャッターであり、吹出口本体10内で内部流路下部を横断する配置として設けられ、この内部流路の下側所定範囲を開閉可能とするものである。
このシャッター部20は、所定の制御部(図示を省略)で制御される駆動部23を有し、使用者の操作に基づいて前記制御部で制御された駆動部23の駆動で作動して、開閉切替を実行する構成である。
詳細には、リニアモータである駆動部23が、使用者の操作に基づく制御指令を受けて、この駆動部23と連結する突出片24を動かし、この突出片24が取り付けられたシャッター部20の可動部22を固定部21に対しスライド移動させて、開口部同士が重なり合って調和空気を通過させる開放部分25を生じさせる開放状態と、開口部同士が互いにずれて重なり合わない閉止状態とを切替える仕組みである。
なお、このシャッター部20が存在する、吹出口本体10の内部流路における下側所定範囲部分の流路断面積は、シャッター部20より上側の流路部分の流路断面積より大きくされており、シャッター部20の開閉切替で吹出口本体10の内部流路の状態は大きく変化する。
この他、シャッター部20は、開放時の有効開口面積を大きく確保するために、吹出口本体10の内周面に対し斜めに傾斜させて設置される構成である。
前記案内羽根30は、吹出口本体10の内部における他方の開口12近傍部分に、内部流路を横断する傾動中心軸周りに傾動可能として、上下に所定間隔で複数配設される構成である。
この案内羽根30は、表面を曲面とされる略薄板状で、且つ傾動中心軸から離れるほど厚さが小さくなる、傾動中心軸を中心とした点対称形状の断面形状として形成される。
また、案内羽根30は、その羽根横断面形状のうち、傾動中心軸から離れた端部における形状を、案内羽根30が傾動して斜め向きとなった状態で、他方の開口12寄りの端部において案内羽根30に沿う気流を下方へ案内するように下向きに湾曲した形状をなすよう形成される。
この案内羽根30の傾動用として、所定の制御部(図示を省略)で制御される駆動部31が吹出口本体10内に配設される。駆動部31は、使用者の操作に基づく前記制御部の制御で各案内羽根30に駆動力を与えて、各案内羽根30を一様に傾動させる。
詳細には、駆動部31と共に、各案内羽根30の端部と連結される連結板33が、吹出口本体10内に上下移動可能に配設され、この連結板33にギアードモータである駆動部31の出力軸に取り付けられて傾動するアーム32の端部が連結される。
駆動部31が、使用者の操作に基づく制御指令を受けて、アーム32を傾動させると、アーム32に連結された連結板33が上又は下に移動し、この連結板33の移動に伴って、連結板33に端部を連結された各案内羽根30がそれぞれの傾動中心軸周りに傾動して、向きを変化させる仕組みである。連結板33が下に移動すると、案内羽根30はその他方の開口12側の端部が上方に向かうよう傾動し、連結板33が上に移動すると、案内羽根30の同じ端部が下方に向かうよう傾動する。連結板33が移動可能範囲の最も下側の位置に移動すると、案内羽根30はその他方の開口12側の端部が側方を向いて、羽根全体がほぼ水平となる横向き状態となる。連結板33がそこからさらに上に移動すると、案内羽根30は、他方の開口12側の端部が下方を向いて、羽根全体が傾いた斜め向き状態となる。
こうして、駆動部31が制御部の制御によりアーム32及び連結板33を介して各案内羽根30を傾動させることで、案内羽根30を横向きと斜め向きのいずれかに切替可能となっている。
前記仕切り部40は、略板状体で形成され、吹出口本体10内部におけるシャッター部20の上縁から他方の開口12側に所定長さ連続し、且つ内部流路を横断して配設される構成であり、内部流路を所定長さにわたって上下に分けるものである。
この仕切り部40が、内部流路のうちシャッター部20より気流進行方向下流側の領域を、シャッター部20より上側の流路部分から分けて隔離することで、シャッター部20の閉塞時に、仕切り部40で上側の流路部分と分けられたシャッター部20の気流進行方向下流側の領域における圧力を上側の流路部分に対し相対的に低下させた状態とすることができる。
前記抵抗体50は、貫通孔51を複数設けられた板状体で形成され、吹出口本体10の内部流路におけるシャッター部20より上側の流路部分に、これを横断するように設けられ、この上側の流路部分を一部閉塞するものである。この抵抗体50では、上側の流路部分の開口率、すなわち、上側の流路部分における抵抗体50で閉塞されない、各貫通孔51からなる開放部分の、上側の流路部分全体に対する大きさの割合を、シャッター部20を開放した際のシャッター部20の開口率、すなわち、シャッター部20における開放部分のシャッター部20全体に対する大きさの割合と一致させるように、各貫通孔51を穿設される。
また、抵抗体50は、シャッター部20と同様に、有効開口面積をできるだけ大きく確保するために、吹出口本体10の内周面に対し斜めに傾斜させて設置される。
この抵抗体50を設けることで、シャッター部20の開放状態で、シャッター部20と抵抗体50の開口率が同じとなり、調和空気はシャッター部20と抵抗体50の各開放部分をそれぞれ通過して内部流路全体に流通することとなり、開口率が大きく通過抵抗の少ない側に気流が偏って流通する事態を防いで、吹出口本体10の他方の開口12側で各案内羽根30による吹出方向の設定を適切に行える。
次に、前記構成に基づく吹出口装置における調和空気吹出状態について説明する。前提として、ダクト61を通じて吹出口装置1に対し調和空気が継続的に供給される状況にあるものとする。
使用者の操作により吹出口装置1の吹出状態が設定されると、この設定された吹出状態に対応して、シャッター部20の開閉状態をそれまでの状態から切替える必要がある場合は、制御に基づいてシャッター部20の駆動部23が作動し、シャッター部20の開閉状態を切替える。
具体的には、シャッター部20の駆動部23が、使用者の操作に対応した制御に基づいて作動し、この駆動部23と連結する突出片24を直線移動させ、この突出片24と一体のシャッター部20の可動部22を固定部21に対しスライド移動させることで、シャッター部20を室内空間への新たな空気調和の内容に対応した、それまでと異なる所定の開閉状態に切替える。
また、案内羽根30の向きについても、設定された吹出状態に対応してそれまでの向きから切替える必要がある場合は、制御に基づいて、駆動部31が作動し、案内羽根30の向きを切替えることとなる。
具体的には、駆動部31が、使用者の操作に対応した制御に基づいて作動してアーム32を傾動させ、この駆動部31のアーム32と連結する連結板33を上又は下に移動させ、この連結板33に端部を連結された各案内羽根30をその傾動中心軸周りにそれぞれ傾動させることで、案内羽根30を室内空間への新たな空気調和の内容に対応した、それまでと異なる所定の向きに切替える。
吹出状態の設定に応じて、シャッター部20が開放状態とされ、案内羽根30が横向きとされた状態(図4、図5参照)では、ダクト61から送られた調和空気は、吹出口本体10の一方の開口11から吹出口本体10内に進入する。この調和空気は、吹出口本体10内のシャッター部20と抵抗体50に達する。
調和空気は、開放状態のシャッター部20と抵抗体50の両方を通過し、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40を挟む上側の流路部分と下側の流路部分の両方を通って、室内空間寄りに位置する案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、上下に並んだ各案内羽根30の間を進み、横向きとされた各案内羽根30に案内され、進行方向を水平として、他方の開口12のほぼ全域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が開放状態とされ、且つ案内羽根30が横向きとされて、他方の開口12のほぼ全域から調和空気を水平に吹出す状態は、冷房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から冷気を水平に吹出すことで、室内空気より重い冷気をすぐには下降させずに室内空間を遠方まで到達させることができる。
また、調和空気の流路を絞り込まず、吹出速度を過度に大きくしないことで、室内空間が狭い場合に冷気の気流が速度を低下させずに居住域に達してドラフトとなるのを防止できる。
続いて、吹出状態の他の設定に応じて、シャッター部20が閉止状態とされ、案内羽根30が横向きとされた状態について説明する(図6、図7参照)。この状態では、ダクト61から送られた調和空気が、吹出口本体10の一方の開口11を経てシャッター部20と抵抗体50に達するが、調和空気は閉止状態のシャッター部20を通過できないことから、抵抗体50のみを通過する。
このため、調和空気は抵抗体50を通過して、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40より上側の流路部分を通ることとなり、調和空気の通過する流路の断面積が、内部流路全体を通る場合より狭くなっていることで、調和空気の流速は大きくなり、この流速を大きくした調和空気が案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、横向きとされた各案内羽根30により進行方向をそのまま水平として進行していく。この時、調和空気は、内部流路のうち仕切り部40上側の流路部分のみを流速を大きくして通過する一方、仕切り部40下側の流路部分を通らない状態にあることで、仕切り部40下側の流路部分では、上側の流路部分に対し圧力が相対的に低下しており、この圧力を低くした領域に、進行する調和空気の気流が誘引され、結果として調和空気の気流にわずかながら下向きの速度成分が加わることとなる。
しかし、調和空気は横向きとされた各案内羽根30に案内されることで、進行方向を大きく変えることはなく、気流は仕切り部40上側の流路部分の通過時より少し下側に広がるのみとなり、調和空気は他方の開口12の上部から中央部にかけての領域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が閉止状態とされ、且つ案内羽根30が横向きとされて、他方の開口12の一部領域から調和空気を水平に吹出す状態も、冷房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から、冷気をその吹出速度を大きくした上で水平に吹出すことで、室内空気より重い冷気を下降させることなく天井に沿わせて室内空間の遠方まで到達させることができ、室内空間が広い場合でも冷気を室内空間全体に拡散させて効率よく冷房を行え、冷房効果を確実に得られる。
また、吹出状態のさらに他の設定に応じて、シャッター部20が閉止状態とされ、案内羽根30が斜め向きとされた状態について説明する(図8、図9参照)。この状態では、ダクト61から送られた調和空気が、吹出口本体10の一方の開口11を経てシャッター部20と抵抗体50に達するが、調和空気は閉止状態のシャッター部20を通過できないことから、抵抗体50のみを通過する。
このため、調和空気は抵抗体50を通過して、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40より上側の流路部分を通ることとなり、調和空気の通過する流路の断面積が、内部流路全体を通る場合より狭くなっていることで、調和空気の流速は大きくなり、この流速を大きくした調和空気が案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、斜め向きとされた各案内羽根30により進行方向を斜め下向きに変えていく。加えて、この時、調和空気は、内部流路のうち仕切り部40上側の流路部分のみを流速を大きくして通過する一方、仕切り部40下側の流路部分を通らない状態にある。このため、仕切り部40下側の流路部分では、上側の流路部分に対し圧力が相対的に低下しており、この圧力を低くした領域に、進行する調和空気の気流が誘引され、結果として調和空気の気流の斜め下向きの進行が促されることとなる。
こうして、調和空気は内部流路の仕切り部40上側の流路部分から斜め下向きに進み、斜め向きとされた各案内羽根30の間を通って、進行方向を斜め下向きとして、他方の開口12の上部から中央部にかけての領域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が閉止状態とされ、且つ案内羽根30が斜め向きとされて、他方の開口12の一部領域から調和空気を斜め下向きに吹出す状態は、暖房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から、暖気をその吹出速度を大きくした上で斜め下向きに吹出すことで、室内空気より軽い暖気をすぐに上昇させることなく室内空間の遠方まで到達させることができ、室内空間が広い場合でも暖気を室内空間全体に拡散させて効率よく暖房を行え、暖房効果を確実に得られる。
さらに、吹出状態の別の他の設定に応じて、シャッター部20が開放状態とされ、案内羽根30が斜め向きとされた状態について説明する(図10、図11参照)。この状態では、ダクト61から送られた調和空気が、吹出口本体10の一方の開口11を経てシャッター部20と抵抗体50に達し、開放状態のシャッター部20と抵抗体50の両方を通過し、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40を挟む上側の流路部分と下側の流路部分の両方を通って、室内空間寄りに位置する案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、上下に並んだ各案内羽根30の間を進み、斜め向きとされた各案内羽根30に案内され、進行方向を斜め下向きとして、他方の開口12のほぼ全域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が開放状態とされ、且つ案内羽根30が斜め向きとされて、他方の開口12のほぼ全域から調和空気を斜め下向きに吹出す状態も、暖房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から、暖気を斜め下向きに吹出すことで、室内空気より軽い暖気をすぐに上昇させることなく室内空間の遠方まで到達させられ、効率よく暖房を行える。
また、調和空気の流路を絞り込まず、吹出速度を過度に大きくしないことで、室内空間が狭い場合に暖気の気流が速度を低下させずに居住域に達してドラフトとなるのを防止できる。
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、室内空間側の開口12が横向きとなるようにして天井60の下がり天井部65に設けられる吹出口本体10の内部に、この吹出口本体10の内部流路の下部を開閉するシャッター部20を設けると共に、吹出口本体10の他方の開口12近傍に複数の案内羽根30を傾動可能として配設し、さらにシャッター部20上端の他方の開口12寄り位置で吹出口本体10の内部流路を上下に分ける仕切り部40を設けて、シャッター部20を閉止すると、内部流路における流路断面積の減少で気流の速度を大きくすると共に、仕切り部40の案内作用でシャッター部20の気流進行方向下流側に相対的に圧力の低い領域を生じさせて、他方の開口12からの気流の吹出方向を下方にずらしやすい状態が得られることから、各案内羽根30を下に傾ける調整と合わせて、吹出口本体10内部のシャッター部20を閉じるようにすると、流速を大きくした調和空気の気流を無理なく斜め下向きに吹出せることとなり、暖房の場合にこの斜め下向きの吹出しを行うようにすれば、暖気が室内空間を斜め下向きに進みながら周囲の室内空気と強力に混合して、室内に拡散する状態とすることができ、吹出された暖気の上昇や天井60に沿って暖気が進むのを防ぎ、暖気と室内空気との混合を効率よく進行させて室内の暖房効果を高められる。
また、本実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10の内部流路のうち、シャッター部20の上側の流路部分に抵抗体50を設けると共に、シャッター部20を開放した際には、内部流路における上側の流路部分の開口率、すなわち、上側の流路部分における抵抗体50で閉塞されない開放部分の、上側の流路部分全体に対する大きさの割合を、シャッター部20の開口率、すなわち、シャッター部20における開放部分の、シャッター部20全体に対する大きさの割合、と一致するように、抵抗体50の閉塞状態を設定することにより、開放状態でもその構造上100%の開口率とはなり得ないシャッター部20に対し、シャッター部上側の流路部分を抵抗体50で同様の開口率として、シャッター部20の開放状態ではシャッター部20の開放部分と内部流路における上側の流路部分とで調和空気の気流に均等に通過抵抗を与えられ、内部流路上下で気流を偏らせず一様に流通させることができ、シャッター部20を開放して吹出口本体10の他方の開口12全体から吹出を行う場合に、案内羽根30で案内する所望の方向へ開口全体から一様に吹出を行うことができ、室内空間70に適切に調和空気の気流を進行させて空気調和を進められる。
また、本実施形態に係る吹出口装置においては、案内羽根30端部を所定の湾曲形状として、案内羽根30を斜め向きとして気流を斜め下向きに吹き出す場合に、気流が案内羽根30端部の湾曲部分に沿わせて斜め下方に向かいやすくすることにより、暖房の際に気流を斜め下向きに向かわせようとする場合に、上昇しやすい暖気を案内羽根30による案内でスムーズに室内空間70の下方に向かわせて効率よく室内空気と混合、拡散させることができ、暖房の効率を高められる。
また、本実施形態に係る吹出口装置においては、内部流路のうち、シャッター部20のある下側部分の流路断面積を、上側の流路部分の流路断面積より大きくして、シャッター部20の開閉が内部流路に大きな影響を与えるようにすることにより、シャッター部20を閉じた際に開放状態を維持している上側流路部分を絞り込んで気流の速度を大きくし、気流の室内空間における到達距離を増大させて調和空気を室内空間70各部に確実に送り込めるようにすると共に、シャッター部20の気流進行方向下流側に生じる低い圧力の領域が大きくなるのに伴い、この領域の吹出気流に与える影響もより大きくなり、吹出気流の下向きの偏移を無理なく適切に生じさせ、速度を大きくした気流を確実に斜め下向きに吹き出して、そのまま室内空間を進行させることができ、暖房の場合に暖気と室内空気との混合をより一層促せる。
なお、前記実施形態に係る吹出口装置において、案内羽根30を5つ配設する構成としているが、これに限られるものではなく、吹出口から吹き出す調和空気の風量や温度等の条件に基づいて選定される吹出口装置の大きさ、特に他方の開口12の大きさ、に対応させて、適切な数の案内羽根を配設することができる。
また、前記実施形態に係る吹出口装置においては、シャッター部20に、固定部21に対し可動部22が移動するスライドシャッターを用いる構成としているが、これに限らず、こうしたシャッター部としては、スライドシャッターのような、開閉に関わりなく内部流路に所定の機構部分が常に存在して、それが気流への抵抗体となるもの以外に、気流の通過を許容する開放状態では通過抵抗をほとんど発生させないもの、例えば、バタフライ型ダンパーのような閉止部分が傾動するもの、を採用する構成とすることもできる。
また、前記実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10の横向きの内部流路に通じる、一方の開口11と他方の開口12を共に横向きとしているが、これに限られるものではなく、調和空気の供給側となる一方の開口11は、設置条件や調和空気供給用のダクト等、上流側の機器に対応させて他の向きとすることもできる。
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10内に設ける仕切り部40を平板状に形成する構成としているが、この他、第2の実施形態として、図12に示すように、仕切り部40における前記他方の開口12寄りの所定範囲部分を、傾斜部分41として、仕切り部40の他部分に対し傾斜する形状として形成する構成とすることもできる。
この仕切り部40の傾斜部分41の傾斜角度については、この傾斜部分41の先端を他方の開口12の下端部側に向ける所定角度となるよう設定する。例えば、仕切り部40の他部分を他方の開口12寄り側へ延長したものに相当する仮想水平面に対し、傾斜部分41のなす角が約7.5°となるように設定するのが好ましい。この場合、仕切り部40に沿って内部流路を進んだ気流が、そのまま傾斜部分41に沿って斜め下向きに進行方向を変えて、吹出口本体10の他方の開口12の下端部に達し、この開口下端部を経て室内空間70に進むこととなる。
この仕切り部傾斜部分41から開口下端部に達する気流が、吹出口本体10の内部流路のうち仕切り部40より下側部分を室内空間から隔離する状態として、室内空気が他方の開口12からシャッター部20より気流進行方向下流側の低い圧力となる領域に向かうのを阻止でき、冷房の場合に吹出気流との接触で冷えた仕切り部40やシャッター部20、吹出口本体10の内周面に温かい室内空気が接して結露が発生するのを確実に防止できる。
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る吹出口装置を、前記図13ないし図25に基づいて説明する。本実施形態では、ホテルの客室の下がり天井部に設けられる吹出口装置の例について説明する。
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、前記第1の実施形態と同様、吹出口本体10と、シャッター部20と、案内羽根30と、仕切り部40と、抵抗体50とを備える一方、異なる点として、シャッター部20の開放度合いを二段階にさらに切替可能とすると共に、案内羽根30の斜め向き状態の傾斜角度を二段階にさらに切替可能として、制御部80の制御により、シャッター部20と案内羽根30とを、各々選択可能な三つの状態のいずれかに切替調整して、使用者により設定された吹出状態に対応させることに加えて、使用者が入室する前の室内空間に先行して空気調和を行う場合に対応した吹出状態を得る構成を有するものである。
特に、シャッター部20と案内羽根30の各状態の切替を制御する制御部80は、吹出口装置の空気調和対象となる室内空間(客室)ごとに配設されて、他の室内空間に対応する吹出口装置の制御部と共に、前記外部制御手段としての中央制御部90と通信可能に接続されて一システムを形成しており(図13参照)、使用者入室前の室内空間への先行空気調和に係る制御の可否や、先行空気調和の実行タイミングの指令等の制御情報を受け取るものである。
前記中央制御部90は、ホテルの客室ごとの各吹出口装置1の制御部80と接続され、各制御部80に対して、それらの室内空間への先行空気調和に係る制御を許可するか否かを決定し、制御許可の指令を送る制御を行うと共に、ホテルにおいてチェックインアウトの情報や予約情報を取り扱うホテルの客室管理システム100と接続されて、使用者のチェックインやチェックアウトの事実を取得して情報として制御部80に送信する制御や、使用者のチェックインの事実、すなわち、このチェックイン後の使用者が室内空間(客室)へ所定時間後には入室するという確定情報、に基づいて、先行空調指示情報を制御部80に送る制御、及び、使用者の予約情報に基づくチェックイン予定時刻などの各種情報を取得し、それらに基づく制御指令を制御部80に送る制御を行うものである。
なお、本実施形態における吹出口本体10、仕切り部40、及び抵抗体50は、前記第1の実施形態と同様の構成であり、詳細な説明を省略する。
前記シャッター部20は、前記第1の実施形態同様、吹出口本体10内で内部流路下部を横断する配置として設けられるスライドシャッターであり、固定部21に対し可動部22を駆動部23により動かして、内部流路の下側所定範囲を開閉可能とする構成である。
シャッター部20は、前記第1の実施形態と同様に、開放状態と閉止状態とを切替可能とされる一方、異なる点として、開放状態における開放度合いを全開放状態と半開放状態の二段階にさらに切替可能とされて、制御部80で制御された駆動部23の駆動で作動し、全開放状態と半開放状態と閉止状態との三つの状態のいずれかに切替調整される構成である。
詳細には、制御部80により制御される駆動部23が、制御指令を受けて突出片24を動かし、突出片24を取り付けた可動部22を固定部21に対しスライド移動させて、可動部22と固定部21の開口部同士が全て重なり合って開放部分25を最大面積で生じさせる全開放状態と、開口部同士が少しずれた状態で重なり合って開放部分25を前記全開放状態の半分の面積で生じさせる半開放状態(図14参照)と、開口部同士が互いにずれて全く重なり合わない閉止状態とを切替える仕組みである。
そして、このシャッター部20は、制御部80における使用者により設定された吹出状態に対応する制御に基づいて、全開放状態と半開放状態とを切替えられると共に、制御部80の使用者が入室する前の室内空間への先行空気調和を実行する制御に基づいて、開放状態と閉止状態とを切替えられることとなる。
調和空気の気流速度は、シャッター部20の全開放状態で最も小さくなり、シャッター部20を半開放状態、閉止状態と切り替えるごとに速度を大きくすることができる。
ただし、シャッター部20の閉止状態では、室内空間の居住域で気流がドラフトとして感じられる程度に過剰に大きい気流速度となることから、室内空間に使用者が存在する在室状態では、シャッター部20は全開放状態と半開放状態のいずれかとなるようにされ、使用者が入室する前に室内空間に対し先行空気調和を実行する場合にのみ、シャッター部20は閉止状態に切替えられる。
前記案内羽根30は、前記第1の実施形態同様、略薄板状とされ、吹出口本体10内における他方の開口12近傍部分に傾動可能として複数配設される構成であり、駆動部31でアーム32を介して連結板33を上又は下に移動させることで向きを調整可能とされる一方、異なる点として、斜め向き状態としての羽根傾斜角度を二段階にさらに切替可能とされて、制御部80で制御された駆動部31により、横向き状態と二つの斜め向き状態との計三つの状態のいずれかに切替調整される構成を有するものである。
詳細には、制御部80により制御される駆動部31が、制御指令を受けてアーム32を傾動させ、アーム32に連結された連結板33を上又は下に移動させ、この連結板33に端部を連結された各案内羽根30をそれぞれ傾動させて、羽根全体がほぼ水平となる横向き状態と、羽根全体が横向き状態の位置から約21°傾いた第一の斜め向き状態と、羽根全体が横向き状態の位置から約52°傾いた第二の斜め向き状態とを切替える仕組みである。
そして、この案内羽根30は、制御部80における使用者により設定された吹出状態に対応する制御に基づいて、横向き状態と第一の斜め向き状態とを切替えられると共に、制御部80の使用者が入室する前の室内空間への先行空気調和を実行する制御に基づいて、第二の斜め向き状態と他の二状態とを切替えられることとなる。
案内羽根30に案内された調和空気の吹出方向は、案内羽根30の横向き状態での水平方向から、案内羽根30を第一の斜め向き状態、第二の斜め向き状態と切替えるごとに、より下寄りとすることができる。
ただし、案内羽根30の第二の斜め向き状態では、案内羽根30に案内されて斜め下向きに吹出す調和空気の気流が主に室内空間下方の居住域に進行して、調和空気の気流が居住域でドラフトとして感じられる程度に過剰な下向きの速度成分を残留させる状態となることから、室内空間に使用者が存在する在室状態では、案内羽根30は横向き状態と第一の斜め向き状態のいずれかとなるようにされ、使用者が入室する前に室内空間に対し先行空気調和を実行する場合にのみ、案内羽根30は第二の斜め向き状態に切替えられる。
前記制御部80は、室内の使用者により操作スイッチ81の操作を経て設定された吹出状態に対応して、吹出口本体10内のシャッター部20を全開放状態と半開放状態との二状態のいずれかに切替調整すると共に、案内羽根30を横向き状態と第一の斜め向き状態との二状態のいずれかに切替調整するものである。また、制御部80は、使用者が入室する前に室内空間に先行して空気調和を行って、入室時の室内環境を整える、先行空気調和に係る制御も行うものである。
詳細には、制御部80は、室内空間に対する先行空気調和として、外部制御手段としての中央制御部90から先行空調指示情報を受け取ると、シャッター部20を閉止状態にすると共に、案内羽根30を第二の斜め向き状態として、開口12から斜め下向きに吹出される調和空気が室内空間における居住域に気流として直接到達する空気調和状態を得る制御を行う。
この制御部80による制御で、先行空気調和として、シャッター部20が閉止状態とされ、案内羽根30が横向き状態から大きく傾いた第二の斜め向き状態とされて、吹出口本体10の他方の開口12から気流速度を大きくされた調和空気が案内羽根30に案内されて下寄りの斜め下向きに吹出され、仮に室内空間に使用者が存在する在室状態の場合にはこの調和空気の気流が居住域でドラフトとして感じられる程度に相当する、大きな気流速度で室内空間下方の居住域に達するような吹出状態で空気調和が行われることとなる。
これによって、居住域での調和空気と室内空気との混合に伴う調和空気の拡散が急速に進行して、短時間で効率よく室内空気の温度を上昇又は低下させて空気調和の設定温度に移行させることができ、使用者の室内空間(客室)への入室時には、室内空気が設定温度に達した状態が得られ、室内空間の快適性を高めて使用者の満足度を向上させられる。
なお、制御部80に対し、中央制御部90が先行空調指示情報を送る制御は、使用者が室内空間(客室)へ所定時間後には入室するという確定情報に基づいてなされるが、この確定情報としては、例えば、ホテルのフロント等で得られる、使用者のチェックインの事実を用いることができる。詳細には、例えば使用者の予約の事実だけでは、使用者が予約のスケジュール通りに行動しない場合もあり、実際に使用者が室内空間に入室するとは限らないが、フロントでのチェックインを経た場合、チェックイン後の使用者は、少なくともフロントから客室に達する所定時間(例えば数分から十数分)後には室内空間(客室)へ入室するのが通例であることに基づいて、使用者のチェックインの事実を、使用者が室内空間へ入室することの確定情報として取り扱うことができる。
この他、制御部80は、使用者が室内空間(客室)に入室する前又は入室と同時に、より詳細には、室内空間に使用者が入室する直前の時点か、使用者の入室が検出された時点で、シャッター部20を閉止状態から開放状態(全開放状態又は半開放状態)に切替えると共に、案内羽根30を第二の斜め向き状態から第一の斜め向き状態又は横向き状態に切替えて、吹出された調和空気の気流が室内空間における居住域には直接到達しない状態とする制御を行う。
これによって、使用者の室内空間への入室後の在室状態で、先行空気調和の実行が誤って継続して、室内空間に吹出される調和空気の気流が居住域に達し、使用者にとってドラフトとなって不快感を与えることを防げる。
制御部80における、室内空間に使用者が入室する直前の状況の取得は、例えば、中央制御部90で得た、使用者が室内空間へ所定時間後に入室する確定情報としての、使用者のチェックインの事実に係る情報に基づいて、チェックインの時刻からの経過時間をカウントすると共に、この制御部80又は中央制御部90で、使用者がチェックイン地点から室内空間の前に到達するまでの予想移動時間をあらかじめ移動距離や歩行速度等に基づいて算出して、カウントされた経過時間が前記予想移動時間に達した時を、使用者が入室する直前として取得する、という手順で行うことができる。
また、制御部80における、室内空間への使用者の入室の事実の取得は、例えば、室内空間やその近傍にあらかじめ設置された、室内空間(客室)への使用者の入室をドア開閉動作に基づき検出するドアセンサやスイッチ、室内での使用者の感知に基づき入室を検出する室内の人感センサ等の検出手段を制御部80と接続して、検出情報を制御部80で受け取ることにより可能である。
室内空間(客室)に対し、人感センサやモーションセンサ等による在室監視やドアロック等のセキュリティ管理を行うセキュリティシステム110が別途設けられている場合、制御部80は、こうしたセキュリティシステム110と直接又は中央制御部90を介して通信可能に接続して、在室検出情報や解錠に係る情報等から入室の事実を取得可能とすることもできる。この場合、使用者の入室に係る検出手段を別途設けずに済む。
制御部80はさらに、室内空間に設けられた使用者の入力操作を受け付ける操作スイッチ81とも接続されることで、使用者の設定した吹出状態に基づいて吹出口装置1のシャッター部20や案内羽根30の調整制御を行える仕組みである。
加えて、制御部80は、室内温度や外気温度の情報を取得可能とされ、得られた温度情報に基づいて適切な吹出状態となるように吹出口装置各部の制御を行うものである。一方、制御部80は、室内温度と外気温度との差異から、先行空気調和を暖房と冷房のいずれとして実行するか判定する機能を有する。制御部80で室内温度と外気温度の情報を取得する場合、室内温度を検出するセンサ82や外気温度を検出するセンサ83を設けて、これらセンサと制御部80を直接接続して情報を取得する構成とする以外に、こうした温度情報を取り扱う既設の他の装置から情報を取得するようにすることもできる。
そして、制御部80は、室内温度の情報を取得して、室内温度が空気調和の設定温度に達しているか否かを判別できることから、室内空間に使用者が入室する直前時点や、使用者の入室検出時よりも前に、室内温度が空気調和の設定温度に達したと認めた場合には、この設定温度到達時点で、先行空気調和から、調和空気の気流が居住域に直接到達しない、使用者の在室状態に対応した空気調和に切り替えるようにすることもできる。この場合、入室に先行して空気調和状態を確実に切り替えられることで、使用者の予想移動時間の誤った見積もりに基づいた、使用者の実際の入室より後での入室直前時点取得や、使用者入室時の入室検出の不調で、使用者が入室しているにも拘わらず先行空気調和が継続して、室内の使用者に不快感を与えるリスクを回避できることとなる。
また、制御部80は、吹出口装置1に調和空気を供給する空調機200が、室内空間(客室)ごとに対応するものである場合は、この空調機200の制御、例えば、調和空気の温度や風量の調整に係る制御、を行う空調機制御部を兼ねるものとすることもできる。
その場合、制御部80は、空調機制御用として設けられた、室内温度を検出するセンサや、外気温度を検出するセンサからの、室内温度や外気温度の情報を取得可能とされ、得られた室内温度と外気温度との差異から、空調機200の制御とは別に、先行空気調和として暖房と冷房のいずれを実行するかの判定も行うこととなる。なお、制御部80で空調機200の制御を行う場合、吹出口装置1におけるシャッター部20の開度調整制御に代えて、空調機側で吹出口装置における調和空気の吹出速度が変化するようにファン等の調整制御を行うようにすることもできる。
これとは逆に、空調機200が例えばホテル等建物側で集中管理されて、吹出口装置1とは別途に制御される場合であっても、制御部80は空調機200の制御情報から空気調和が暖房と冷房のいずれで行われているかを取得して、吹出口装置1の制御に利用するようにすることもできる。
前記中央制御部90は、そのハードウェア構成として、CPUや記憶部、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、記憶部に格納されるプログラムにより、コンピュータを中央制御部90として動作させる仕組みである。
前記客室管理システム100が、ホテルのフロントにおける情報管理用のデータベース等として機能する既設のコンピュータの場合、中央制御部90は、この客室管理システム100をなすコンピュータで付加的に実現される機能として設けることもできる。逆に、中央制御部90をなすコンピュータシステムが、客室管理システムを兼ねるものであってもよい。また、客室管理システム100の機能が、ネットワーク上のサーバにより提供される(いわゆるクラウドコンピューティングによりホテルに係る諸情報が管理運用されている)場合は、中央制御部90は、ネットワーク経由で予約情報等を参照して、予約情報に基づくチェックイン予定時刻などの情報を取得するようにすることができる。
この他、室内空間(客室)への使用者(利用客)の入室を、人感センサ等を通じて客室管理システム100で把握、管理している場合は、そうした入室に係る情報を中央制御部90で取得し、さらに制御部80での入室判定に利用可能とすることもでき、この場合も使用者の入室に係る検出手段を別途設けずに済むこととなる。
なお、中央制御部90は、使用者のチェックインの事実を入室の確定情報として、それが得られた時点で先行空調指示情報を制御部80に送って、吹出口装置で室内空間に対する先行空気調和が開始されるようにしているが、これに限らず、予約情報から取得したチェックイン予定時刻に基づいて、それより前となる所定の先行空調開始時、すなわち、先行空気調和で入室予定時刻の前に十分に設定温度に到達させられる時間を確保可能な開始時点、を設定し、先行空調指示情報を前記先行空調開始時に対象の吹出口装置の制御部80に送信して、実際のチェックインより前に先行空気調和が開始されるようにすることもでき、予約のスケジュール通りに、チェックイン予定時刻に使用者のチェックインがなされる場合には、室内空間を確実に設定温度に到達させた上で入室を待つ状態が得られ、使用者にとっての室内空間の快適性をより確かなものとすることができる。
次に、本実施形態に係る吹出口装置における吹出制御について、図15ないし図17のフローチャートを用いて説明する。
前提として、制御部80は、空調機200の制御とは独立して、吹出口装置1のみを対象として制御を行うものとする。そして、空調機200は、暖房や冷房が必要な室内温度条件の場合は、自動的に適切な温度の調和空気を吹出口装置1に送給しているものとする。また、制御部80は、室内温度と外気温度に係る情報を、これらを検出する室内外のセンサ82、83から直接得ているものとする。
さらに、制御部80は、室内空間への使用者の入室が検出された時点で、先行空気調和を終了して通常の使用者在室状態に対応する空気調和に切替える制御を行うものとし、室内空間への使用者の入室の事実の取得については、室内空間(客室)のドアに設けられたドアロックを利用したホテルの既存のセキュリティシステム110と制御部80とを中央制御部90を介して接続して、解錠に係る情報から入室の事実を取得できるものとする。
初めに、制御部80は、中央制御部90からの室内空間(客室)ごとの先行空気調和に係る制御の許可信号が入力されたか否か、すなわち、室内空間(客室)ごとの先行空気調和の実行が許容されたか否かを判定する(ステップS001)。
ここで制御許可信号が入力された場合、制御部80は、室内温度が、空気調和実行の目安となる、快適と見なせる設定温度の範囲から外れているか否かを判定する(ステップS002)。
室内温度が前記範囲から外れている場合、次に、制御部80は、室内温度は暖房の対象となる、設定温度範囲より低い温度となっているか否かを判定する(ステップS003)。
室内温度が前記範囲より低い暖房対象の温度の場合、制御部80は空気調和状態を暖房モードに設定して、空調機200から供給される調和空気が暖房用の温度に調整されているものとして取り扱う(ステップS004)。
続いて、制御部80は、室内空間に対応する使用者のチェックイン手続等で入室確定となったことに基づいて中央制御部90から送られる、先行空調指示情報の制御部80への入力がなされたか否かを判定する(ステップS005)。
先行空調指示情報の入力がなされた場合、制御部80は吹出口装置の各機構を先行空気調和に対応した状態、詳細には、シャッター部20が閉止状態で、案内羽根30が第二の斜め向き状態、となるようにする(ステップS006)。
この時、空調機200は適切な温度の調和空気を送給しているので、先行空気調和が実行されることとなる。
そして、制御部80は、セキュリティシステム110からのドアロックの解錠に係る情報に基づいて、室内空間への使用者の入室があったか否かを判定する(ステップS007)。
使用者の入室があった場合、制御部80は、操作スイッチ81が使用者(利用客)による操作を受けたか否かを判定する(ステップS008)。
操作スイッチ81が操作を受けた場合には、制御部80は、吹出口装置の各機構を操作スイッチ81で設定された吹出状態となるようにする(ステップS009)。
その後、制御部80は、中央制御部90を介して得られる客室管理システム100の管理情報に基づいて、使用者(利用客)がチェックアウトしたか否かを判定する(ステップS010)。ここで使用者がチェックアウトしている場合は、一連の処理を終了する。
前記ステップS010で使用者がチェックアウトしていない場合は、ステップS001に戻って以降の処理を繰り返す。
前記ステップS008で操作スイッチ81が使用者の操作を受けていない場合は、制御部80は、吹出口装置の各機構を、使用者の在室時に対応した通常の暖房用の初期設定状態、詳細には、シャッター部20が全開放状態で、案内羽根30が第一の斜め向き状態、となるようにする(ステップS011)。その後、ステップS010の処理に移行する。
前記ステップS007で、使用者の入室がない場合、制御部80は、ステップS007の判定処理を繰り返す。また、前記ステップS005で、先行空調指示情報の入力がなされていない場合、前記ステップS008に移行し、以降の処理を繰り返す。
前記ステップS003で、室内温度が設定温度範囲より低い温度ではなく、逆に高い温度の場合、制御部80は空気調和状態を冷房モードに設定して、空調機200から供給される調和空気が冷房用の温度に調整されているものとして取り扱う(ステップS012)。
続いて、制御部80は、室内空間に対応する使用者のチェックイン手続等で入室確定となったことに基づいて、中央制御部90からの先行空調指示情報の制御部80への入力がなされたか否かを判定する(ステップS013)。
先行空調指示情報の入力がなされた場合、制御部80は吹出口装置の各機構を冷房の先行空気調和に対応した状態、詳細には、前記同様、シャッター部20が閉止状態で、案内羽根30が第二の斜め向き状態、となるようにする(ステップS014)。
この時、空調機200は適切な温度の調和空気を送給しているので、先行空気調和が冷房として実行されることとなる。
そして、制御部80は、セキュリティシステム110からのドアロックの解錠に係る情報に基づいて、室内空間への使用者の入室があったか否かを判定する(ステップS015)。
使用者の入室があった場合、制御部80は、操作スイッチ81が使用者による操作を受けたか否かを判定する(ステップS016)。操作スイッチ81が操作を受けた場合には、制御部80は、吹出口装置の各機構を操作スイッチ81で設定された吹出状態となるようにする(ステップS017)。
この後は、前記ステップS010に移行し、使用者がチェックアウトしたか否かを判定することとなる。
前記ステップS016で、操作スイッチ81が使用者の操作を受けていない場合は、制御部80は、吹出口装置の各機構を、使用者の在室時に対応した通常の冷房用の初期設定状態、詳細には、シャッター部20が全開放状態で、案内羽根30が横向き状態、となるようにする(ステップS018)。その後、ステップS010の処理に移行する。
前記ステップS015で、使用者の入室がない場合、制御部80は、ステップS015の判定処理を繰り返す。
前記ステップS013で、先行空調指示情報の入力がなされていない場合、前記ステップS016に移行し、以降の処理を繰り返す。
前記ステップS002で、室内温度が設定温度の範囲から外れていない場合、制御部80は、制御部80は空気調和状態を送風モードに設定して、空調機200から供給される調和空気が特に温度調整されていないものとして取り扱う(ステップS019)。
続いて、制御部80は、操作スイッチ81が使用者による操作を受けたか否かを判定する(ステップS020)。操作スイッチ81が操作を受けた場合には、制御部80は、吹出口装置の各機構を操作スイッチ81で設定された吹出状態となるようにする(ステップS021)。
そして、この後は、前記ステップS010に移行し、使用者がチェックアウトしたか否かを判定することとなる。
前記ステップS021で、操作スイッチ81が使用者の操作を受けていない場合は、制御部80は、吹出口装置の各機構を、使用者の在室時に対応した通常の送風用の初期設定状態、例えば、シャッター部20が全開放状態で、案内羽根30が横向き状態、となるようにする(ステップS022)。その後、ステップS010の処理に移行する。
前記ステップS001で、制御部80に先行空気調和に係る制御許可信号が入力されていない場合は、制御部80は、室内温度が、空気調和実行の目安となる、快適と見なせる設定温度の範囲から外れているか否かを判定する(ステップS023)。
室内温度が前記範囲から外れている場合、次に、制御部80は、室内温度は暖房の対象となる、設定温度範囲より低い温度となっているか否かを判定する(ステップS024)。
室内温度が前記範囲より低い暖房対象の温度の場合、制御部80は空気調和状態を暖房モードに設定して、空調機200から供給される調和空気が暖房用の温度に調整されているものとして取り扱う(ステップS025)。
そして、制御部80は、吹出口装置の各機構を、使用者の在室時に対応した通常の暖房用の初期設定状態、詳細には、シャッター部20が全開放状態で、案内羽根30が第一の斜め向き状態、となるようにする(ステップS026)。その後、ステップS010の処理に移行する。
前記ステップS024で、室内温度が設定温度範囲より低い温度ではなく、逆に高い温度の場合、制御部80は空気調和状態を冷房モードに設定して、空調機200から供給される調和空気が冷房用の温度に調整されているものとして取り扱う(ステップS027)。
そして、制御部80は、吹出口装置の各機構を、使用者の在室時に対応した通常の冷房用の初期設定状態、詳細には、シャッター部20が全開放状態で、案内羽根30が横向き状態、となるようにする(ステップS028)。その後、ステップS010の処理に移行する。
前記ステップS023で、室内温度が設定温度の範囲から外れていない場合、制御部80は、制御部80は空気調和状態を送風モードに設定して、空調機200から供給される調和空気が特に温度調整されていないものとして取り扱う(ステップS029)。
そして、制御部80は、吹出口装置の各機構を、使用者の在室時に対応した通常の送風用の初期設定状態、例えば、シャッター部20が全開放状態で、案内羽根30が横向き状態、となるようにする(ステップS030)。その後、ステップS010の処理に移行する。
なお、前記吹出口装置における吹出制御では、制御部80は室内空間への使用者の入室の検出に基づいて、先行空気調和から通常の使用者在室状態に対応する空気調和に切替えるようにし、使用者の入室は、セキュリティシステム110の解錠に係る情報から入室の事実を把握するものとしているが、これに限らず、制御部80は、室内空間に使用者が入室する直前の時点で、先行空気調和から通常の使用者在室状態に対応する空気調和状態に切替えるものとし、室内空間に使用者が入室する直前の状況の取得は、使用者のチェックインの事実に係る情報を得て、このチェックインの時刻からの経過時間を制御部80でカウントすると共に、使用者がチェックイン地点から室内空間の前に到達するまでの予想移動時間をあらかじめ移動距離や歩行速度等に基づいて中央制御部90で算出したものを制御部80で取得して、カウントされた経過時間が前記予想移動時間に達した時を、使用者が入室する直前の時として取り扱うものとすることもできる。
この他、制御部80は、室内空間への使用者の入室の検出前や、室内空間に使用者が入室する直前時点に達する前に、検出した室内温度が空気調和の設定温度に達した場合には、そのタイミングで先行空気調和から通常の使用者在室状態に対応する空気調和への切替を実行するようにしてもよい。
続いて、本実施形態に係る吹出口装置における調和空気吹出状態について説明する。前提として、ダクト61を通じて吹出口装置1に対し空調機200から調和空気が継続的に供給される状況にあるものとする。
先行空調指示情報が入力されると、制御部80は、シャッター部20の駆動部23や案内羽根30の駆動部31の作動を制御し、シャッター部20の開放度合いと案内羽根30の向きを先行空気調和に対応した状態に切替える。
具体的には、吹出口装置の吹出状態が先行空気調和に対応したものに設定されると、シャッター部20を開放状態から閉止状態に切替える必要がある場合は、制御部80の制御に基づいてシャッター部20の駆動部23が作動し、この駆動部23と連結する突出片24を直線移動させ、この突出片24と一体のシャッター部20の可動部22を固定部21に対しスライド移動させることで、シャッター部20を閉止状態に切替える。
また、案内羽根30の向きについても、それまでの向きから先行空気調和に対応する第二の斜め向き状態に切替える必要がある場合は、制御部80の制御に基づいて、駆動部31が作動してアーム32を傾動させ、この駆動部31のアーム32と連結する連結板33を上に移動させ、この連結板33に端部を連結された各案内羽根30をその傾動中心軸周りにそれぞれ傾動させることで、案内羽根30を第二の斜め向き状態に切替える。
この先行空気調和に対応して、シャッター部20が閉止状態とされ、案内羽根30が第二の斜め向き状態とされた場合の吹出状態について説明する(図18、図19参照)。この場合、ダクト61から送られた調和空気が、吹出口本体10の一方の開口11を経てシャッター部20と抵抗体50に達するが、調和空気は閉止状態のシャッター部20を通過できないことから、抵抗体50のみを通過する。
このため、調和空気は抵抗体50を通過して、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40より上側の流路部分を通ることとなり、調和空気の通過する流路の断面積が、内部流路全体を通る場合より狭くなっていることで、調和空気の流速は大きくなり、この流速を大きくした調和空気が案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、第二の斜め向き状態とされた各案内羽根30により進行方向を斜め下向きに変えていく。加えて、この時、調和空気は、内部流路のうち仕切り部40上側の流路部分のみを流速を大きくして通過する一方、仕切り部40下側の流路部分を通らない状態にある。このため、仕切り部40下側の流路部分では、上側の流路部分に対し圧力が相対的に低下しており、この圧力を低くした領域に、進行する調和空気の気流が誘引され、結果として調和空気の気流の斜め下向きの進行が促されることとなる。
こうして、調和空気は内部流路の仕切り部40上側の流路部分から斜め下向きに進み、斜め向きとされた各案内羽根30の間を通って、進行方向を斜め下向きとして、他方の開口12の上部から中央部にかけての領域(ほぼ全域)から室内空間70に吹出す。
また、吹出口本体10内における上下の案内羽根30を、第二の斜め向き状態で羽根端部が吹出口本体10の内周面に接するようにしていることで、案内羽根30と吹出口本体10との隙間を通じて調和空気の気流が抜けるのを防止でき、気流の下寄りの進行を促せることとなり、調和空気を水平方向から60°傾いた斜め下向きに吹出すことができる。
このシャッター部20が閉止状態とされ、且つ案内羽根30が第二の斜め向き状態とされた先行空気調和に係る吹出状態では、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から、暖かい調和空気をその吹出速度を大きくした上で下寄りの斜め下向きに吹出すことで、室内空気より軽い暖気である調和空気をすぐに上昇させることなく室内空間の居住域に到達させて、室内空間の居住域で調和空気を室内空気と混合させて急速に拡散させられ、短時間で効率よく居住域の温度を通常暖房時の設定温度に到達させることができる。
なお、この先行空気調和は暖房に限らず、冷房にも適用できるものであり、吹出速度を大きくした冷調和空気を居住域に到達させることで、暖房の場合同様、短時間で効率よく居住域の温度を通常の冷房時の設定温度に到達させることができる。
使用者が室内空間に入室する状態に至ったら、制御部80がシャッター部20の駆動部23や案内羽根30の駆動部31の作動を制御し、シャッター部20の開放度合いと案内羽根30の向きを先行空気調和の場合とは異なる通常在室状態相当の状態まで切替える。すなわち、シャッター部20を閉止状態から全開放状態又は半開放状態に切替えると共に、案内羽根30を第二の斜め向き状態から第一の斜め向き状態又は横向き状態に切替えて、吹出される調和空気の気流を居住域には直接到達させない状態として、調和空気の気流が使用者に対しドラフトとならないようにする。
そして、使用者が室内空間に入室してそのまま室内空間に居続ける在室状態では、前記第1の実施形態同様、使用者の操作により設定された吹出口装置の吹出状態に応じて、制御部80がシャッター部20の駆動部23や案内羽根30の駆動部31の作動を制御し、シャッター部20の開放度合いと案内羽根30の向きを切替える。
具体的には、使用者の操作により吹出口装置の吹出状態が設定されると、この設定された吹出状態に対応して、シャッター部20の開放度合いをそれまでの状態から切替える必要がある場合は、制御部80の制御に基づいてシャッター部20の駆動部23が作動し、この駆動部23と連結する突出片24を直線移動させ、この突出片24と一体のシャッター部20の可動部22を固定部21に対しスライド移動させることで、シャッター部20を室内空間への新たな空気調和の内容に対応した、それまでと異なる所定の開放状態に切替える。
また、案内羽根30の向きについても、設定された吹出状態に対応してそれまでの向きから切替える必要がある場合は、制御部80の制御に基づいて、駆動部31が作動してアーム32を傾動させ、この駆動部31のアーム32と連結する連結板33を上又は下に移動させ、この連結板33に端部を連結された各案内羽根30をその傾動中心軸周りにそれぞれ傾動させることで、案内羽根30を室内空間への新たな空気調和の内容に対応した、それまでと異なる所定の向きに切替える。
吹出状態の設定に応じて、シャッター部20が全開放状態とされ、案内羽根30が横向きとされた状態(図4、図5参照)では、ダクト61から送られた調和空気は、吹出口本体10の一方の開口11から吹出口本体10内に進入する。この調和空気は、吹出口本体10内のシャッター部20と抵抗体50に達する。
調和空気は、全開放状態のシャッター部20と抵抗体50の両方を通過し、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40を挟む上側の流路部分と下側の流路部分の両方を通って、室内空間寄りに位置する案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、上下に並んだ各案内羽根30の間を進み、横向きとされた各案内羽根30に案内され、進行方向を水平として、他方の開口12のほぼ全域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が全開放状態とされ、且つ案内羽根30が横向きとされて、他方の開口12のほぼ全域から調和空気を水平に吹出す状態は、冷房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から冷気を水平に吹出すことで、室内空気より重い冷気をすぐには下降させずに室内空間を遠方まで到達させることができる。
また、調和空気の流路を絞り込まず、吹出速度を過度に大きくしないことで、室内空間が狭い場合に冷気の気流が速度を低下させずに居住域に達してドラフトとなるのを確実に防止できる。
続いて、吹出状態の他の設定に応じて、シャッター部20が半開放状態とされ、案内羽根30が横向きとされた状態について説明する(図20、図21参照)。この状態では、ダクト61から送られた調和空気が、前記同様に吹出口本体10の一方の開口11を経てシャッター部20と抵抗体50に達する。
調和空気は、半開放状態のシャッター部20と抵抗体50の両方を通過するが、シャッター部20が半開放状態となって、調和空気の通過する開放部分25の開口面積が、前記全開放状態の場合より小さくなっていることで、シャッター部20と抵抗体50を通過する調和空気の流速は大きくなる。この流速を大きくした調和空気が、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40を挟む上側の流路部分と下側の流路部分の両方を通って、案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、横向きとされた各案内羽根30により進行方向をそのまま水平として進行していく。この時、調和空気は、シャッター部20が半開放状態となった分、流速を大きくした状態にあるものの、各案内羽根30による案内はシャッター部20が全開放状態の場合と特に変わりなく、調和空気は他方の開口12のほぼ全域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が半開放状態とされ、且つ案内羽根30が横向きとされて、他方の開口12から調和空気を水平に吹出す状態も、冷房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から、冷気をその吹出速度を大きくした上で水平に吹出すことで、室内空気より重い冷気を下降させることなく天井に沿わせて室内空間の遠方まで到達させることができ、室内空間が広い場合でも冷気を室内空間全体に拡散させて効率よく冷房を行え、冷房効果を確実に得られる。
また、吹出状態のさらに他の設定に応じて、シャッター部20が半開放状態とされ、案内羽根30が第一の斜め向きとされた状態について説明する(図22、図23参照)。この状態では、ダクト61から送られた調和空気が、吹出口本体10の一方の開口11を経てシャッター部20と抵抗体50に達して、半開放状態のシャッター部20と抵抗体50の両方を通過する。ただし、シャッター部20が半開放状態となって、調和空気の通過する開放部分25の開口面積が、全開放状態の場合より小さくなっていることで、シャッター部20と抵抗体50を通過する調和空気の流速は大きくなる。この流速を大きくした調和空気が、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40を挟む上側の流路部分と下側の流路部分の両方を通って、案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、流速を大きくした状態のままで、上下に並んだ各案内羽根30の間を進み、斜め向きとされた各案内羽根30に案内され、進行方向を斜め下向きに変えて、他方の開口12のほぼ全域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が半開放状態とされ、且つ案内羽根30が斜め下向きとされて、他方の開口12から調和空気を斜め下向きに吹出す状態は、暖房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から、暖気をその吹出速度を大きくした上で斜め下向きに吹出すことで、室内空気より軽い暖気をすぐに上昇させることなく室内空間の遠方まで到達させることができ、室内空間が広い場合でも暖気を室内空間全体に拡散させて効率よく暖房を行え、暖房効果を確実に得られる。
さらに、吹出状態の別の他の設定に応じて、シャッター部20が全開放状態とされ、案内羽根30が斜め向きとされた状態について説明する(図24、図25参照)。この状態では、ダクト61から送られた調和空気が、吹出口本体10の一方の開口11を経てシャッター部20と抵抗体50に達し、全開放状態のシャッター部20と抵抗体50の両方を通過し、吹出口本体10内の内部流路の、仕切り部40を挟む上側の流路部分と下側の流路部分の両方を通って、室内空間寄りに位置する案内羽根30に到達する。
案内羽根30に達した調和空気は、上下に並んだ各案内羽根30の間を進み、斜め向きとされた各案内羽根30に案内され、進行方向を斜め下向きとして、他方の開口12のほぼ全域から室内空間70に吹出す。
このシャッター部20が開放状態とされ、且つ案内羽根30が斜め下向きとされて、他方の開口12のほぼ全域から調和空気を斜め下向きに吹出す状態も、暖房時に主に利用されるものであり、下がり天井部65に設けられた吹出口装置から、暖気を斜め下向きに吹出すことで、室内空気より軽い暖気をすぐに上昇させることなく室内空間の遠方まで到達させられ、効率よく暖房を行える。
また、調和空気の流路をシャッター部20で絞り込まず、吹出速度を過度に大きくしないことで、室内空間が狭い場合に暖気の気流が速度を低下させずに居住域に達してドラフトとなるのを防止できる。
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、室内空間へ使用者が所定時間後に入室することがほぼ確定した状況に至ると、先行空気調和として、制御部80による制御に基づき、シャッター部20が閉止状態とされると共に、案内羽根30が調和空気を下寄りの吹出方向に案内する第二の斜め向き状態とされて、吹出口本体10の他方の開口12から気流速度を大きくされた調和空気が、案内羽根30に案内されて室内空間へ下寄りに吹出され、大きな気流速度で室内空間下方の居住域に達することから、居住域での調和空気と室内空気との混合に伴う調和空気の拡散が急速に進行して、短時間で効率よく室内空気の温度を上昇又は低下させて空気調和の設定温度に移行させられ、使用者の入室時における室内空間をより快適な状態とすることができる。
また、室内空間に使用者が入室した際には、制御部80がシャッター部20を開放状態にすると共に、案内羽根30を横向き状態又は第一の斜め向き状態として、開口12から吹出された調和空気の気流が居住域には直接到達しない状態とされることで、使用者の室内空間への在室状態で、室内空間に吹出される調和空気の気流が使用者にとってドラフトとなって不快感を与えるようなこともなく、空気調和による室内空間の快適な状態が確実に得られることとなる。
さらに、先行空気調和により短時間で室内空間を暖房又は冷房の設定温度に到達させる状態が得られることで、例えばホテル客室に適用した場合、チェックインを確認後に空気調和を開始しても十分快適な状態にでき、予約情報に基づいてあらかじめ空気調和を実行する場合のように、予約情報のチェックイン時刻より遅れたチェックインとなったり、チェックインがなかった場合に、結果的に無駄な空気調和エネルギーを費やすことがなくなり、空気調和を効率よく且つコストを抑えて実行できる。この他、予約情報のチェックイン時刻より早いチェックインとなった場合でも、先行空気調和により室内空間を短時間で快適な状態に移行させられ、入室時に使用者により快適な室内空間を提供でき、使用者の満足度を高められる。
なお、前記実施形態に係る吹出口装置における先行空気調和の実行を含む吹出制御は、室内空間をホテル客室としたホテルのシステムに適用した例として説明しているが、これに限られるものではなく、吹出口装置の空気調和対象となる室内空間への使用者の入室行動が所定時間後にほぼ確実になされることを事前に把握でき、且つこれを把握した時点から使用者の実際の入室までの時間を精度よく予測できるか、入室行動そのものを所定の検出手段で検出可能又は既設のシステムから入室の情報を取得可能であれば、本実施形態に係る吹出口装置による室内空間に対する入室前の先行空気調和は、ホテルの客室以外の室内空間にも問題なく適用可能である。
また、前記実施形態に係る吹出口装置における先行空気調和の実行のための制御では、ホテルフロントでの本人又はフロント係員を含む他人の入力操作(バーコード等のデータ読み取りも含む)を経て、チェックインが成立すると、このチェックインの事実を確定情報として利用して、中央制御部90から制御部80に先行空調指示情報を送信するようにしているが、この他、確定情報の生成に係り入力操作を必要としない手法でもかまわない。例えば、人が外から建物に入る(又は建物の検出可能領域内に入る)と同時に、無線タグや顔画像解析等による個人認識を経て、あらかじめデータベースに登録されたその人の建物内の特定の部屋に関連付けられた内容情報(予約済、宿泊中、一時又は長期の住居として契約中、部屋を使用する会員として登録済、など)を自動的に識別可能としていれば、この識別完了の事実を外部制御手段で確定情報として利用して、制御部に先行空調指示情報を送信し、部屋の室内空間への先行空気調和を実行することができる。