以下、本発明に係る光検出装置及びレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ装置の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態のレーザ装置1は、光検出装置2、光源5、及び制御部CPを主な構成として備える。
光源5は、励起光源50、光コンバイナ53、増幅用光ファイバ55、増幅用光ファイバ55の一方側に接続される光ファイバ54、光ファイバ54に設けられる第1FBG57、増幅用光ファイバ55の他方側に接続される光ファイバ56、及び光ファイバ56に設けられる第2FBG58を主な構成として備える。また、増幅用光ファイバ55と第1FBG57と第2FBG58とで共振器を構成している。
励起光源50は、複数のレーザダイオード51から構成され、レーザダイオード51は、本実施形態においては、例えば、GaAs系半導体を材料としたファブリペロー型半導体レーザであり中心波長が915nmの励起光を出射する。また、励起光源50のそれぞれのレーザダイオード51は光ファイバ52に接続されており、レーザダイオード51から出射する励起光は光ファイバ52を伝播する。
増幅用光ファイバ55は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲む内側クラッドと、内側クラッドの外周面を被覆する外側クラッドと、外側クラッドを被覆する被覆層とを主な構成として備え、いわゆるダブルクラッド構造とされている。内側クラッドの屈折率はコアの屈折率よりも低く、外側クラッドの屈折率は内側クラッドの屈折率よりも低くされている。増幅用光ファイバ55のコアを構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等の元素、及び、励起光源50から出射される励起光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素が添加された石英が挙げられる。増幅用光ファイバ55の内側クラッドを構成する材料としては、例えば、ドーパントが添加されていない純粋石英を挙げることができる。なお、内側クラッドの材料には、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素が添加されてもよい。外側クラッドは、樹脂または石英から成り、樹脂としては例えば紫外線硬化性樹脂が挙げられ、石英としては例えば内側クラッドよりもさらに屈折率が低くなるように屈折率を低下させるフッ素(F)等のドーパントが添加された石英が挙げられる。増幅用光ファイバ55の被覆層を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂が挙げられ、外側クラッドが樹脂の場合、外側クラッドを構成する樹脂とは異なる紫外線硬化性樹脂とされる。
増幅用光ファイバ55の一方側に接続される光ファイバ54は、活性元素が添加されていないコアと、このコアの外周面を隙間なく囲む内側クラッドと、この内側クラッドの外周面を被覆する外側クラッドと、外側クラッドを被覆する被覆層とを主な構成として備える。光ファイバ54のコアは、活性元素が添加されていないことを除いて増幅用光ファイバ55のコアと略同様の構成とされる。光ファイバ54のコアは増幅用光ファイバ55のコアと接続され、光ファイバ54の内側クラッドは増幅用光ファイバ55の内側クラッドと接続されている。また、光ファイバ54のコアには、第1ミラーとしての第1FBG57が設けられている。こうして第1FBG57は、増幅用光ファイバ55の一方側に設けられている。第1FBG57は、光ファイバ54の長手方向に沿って周期的に屈折率が高くなる部分が繰り返されており、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ55の活性元素が放出する光うち少なくとも一部の波長の光を反射するように構成されている。第1FBG57の反射率は、後述の第2FBG58の反射率よりも高く、活性元素が放出する光うち所望の波長の光を90%以上で反射することが好ましく、99%以上で反射することがより好ましい。また第1FBG57が反射する光の波長は、上述のように活性元素がイッテルビウムである場合、例えば1090nmとされる。
増幅用光ファイバ55の他方側に接続される光ファイバ56は、活性元素が添加されていないコアと、このコアの外周面を隙間なく囲むクラッドと、このクラッドの外周面を被覆する被覆層とを主な構成として備える。光ファイバ56のコアは増幅用光ファイバ55のコアと接続され、光ファイバ56のクラッドは増幅用光ファイバ55の内側クラッドと接続されている。また、光ファイバ56のコアには、第2ミラーとしての第2FBG58が設けられている。こうして第2FBG58は、増幅用光ファイバ55の他方側に設けられている。第2FBG58は、光ファイバ56の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG57が反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を第1FBG57よりも低い反射率で反射するように構成される。第2FBG58は、第1FBG57が反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を5%〜50%の反射率で反射することが好ましく、5%〜10%の反射率で反射することがより好ましい。
光コンバイナ53では、それぞれの光ファイバ52のコアと光ファイバ54の内側クラッドとが接続されている。従って、それぞれのレーザダイオード51から出射する励起光が伝播する光ファイバ52と増幅用光ファイバ55の内側クラッドとは、光ファイバ54の内側クラッドを介して光学的に結合されている。
図2は、図1に示す光検出装置2の一部を概略的に示す断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の光検出装置2は、第1光ファイバ10、第2光ファイバ20、低屈折率樹脂層31、第1クラッドモードストリッパ16、第2クラッドモードストリッパ26、第1光検出部17、第2光検出部27、第1AD変換部18、第2AD変換部28、及び計算部40を主な構成として備える。
第1光ファイバ10は、上記光ファイバ56の一部であってもよく、光ファイバ56に接続される他の光ファイバであってもよい。第1光ファイバ10は、第1コア11、第1コア11の外周面を囲む第1クラッド14、及び第1クラッド14の外周面を囲む第1被覆層15を有する。本実施形態の第1光ファイバ10はシングルモードファイバであり、第1コア11はシングルモードで光を伝搬する。第1コア11を構成する材料としては、例えば屈折率を高くするゲルマニウム等のドーパントが添加された石英を挙げることができる。第1クラッド14は第1コア11より屈折率が低い材料からなる。第1クラッド14を構成する材料としては、例えば純粋な石英が挙げられる。第1被覆層15は第1クラッド14より屈折率が低い材料からなる。第1被覆層15を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
第1クラッドモードストリッパ16は、第1光ファイバ10の第1クラッド14の外側に設けられている。第1クラッドモードストリッパ16は、第1クラッド14を伝搬するクラッドモード光を第1光ファイバ10の外側に放出できるように構成されるものであれば特に限定されない。本実施形態の第1クラッドモードストリッパ16は、第1クラッド14よりも屈折率が高い樹脂からなる高屈折率部16hが第1光ファイバ10の第1クラッド14の外側に断続的に複数設けられることによって構成される。
第2光ファイバ20は、第1光ファイバ10よりも光源5からの光の伝搬方向の下流側に配置される。第2光ファイバ20は、第2コア21、第2コア21の外周面を囲む内側クラッド22、内側クラッド22の外周面を囲む低屈折率層23、低屈折率層23の外周面を囲む外側クラッド24、外側クラッド24の外周面を囲む第2被覆層25を有する。本実施形態の第2光ファイバ20はシングルモードファイバであり、第2コア21はシングルモードで光を伝搬する。第2コア21を構成する材料としては、例えば屈折率を高くするゲルマニウム等のドーパントが添加された石英を挙げることができる。本実施形態の第2コア21は、第1コア11を構成する材料と同じ材料で構成される。内側クラッド22は第2コア21より屈折率が低い材料からなる。内側クラッド22を構成する材料としては、例えば純粋な石英が挙げられる。本実施形態の内側クラッド22は、第1クラッド14を構成する材料と同じ材料で構成される。低屈折率層23は内側クラッド22より屈折率が低い材料からなる。低屈折率層23を構成する材料としては、例えば屈折率を低くするフッ素等のドーパントが添加された石英を挙げることができる。外側クラッド24は低屈折率層23より屈折率が高い材料からなる。外側クラッド24を構成する材料としては、例えば純粋な石英が挙げられる。本実施形態の外側クラッド24は、第1クラッド14を構成する材料と同じ材料で構成される。第2被覆層25は外側クラッド24より屈折率が低い材料からなる。第2被覆層25を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂が挙げられる。また、本実施形態の第2光ファイバ20において、第2コア21の直径と第1コアの直径とは互いに等しく、外側クラッド24の外径と第1クラッド14の外径とは互いに等しい。第1クラッド14の外径と外側クラッド24の外径とが等しいことによって、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とを融着接続させる際に、接続部30において不均一な段差が形成されることが抑制され、接続部30において曲げが生じることが抑制され得る。よって、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30における光の損失が抑制され得る。
第2クラッドモードストリッパ26は、第2光ファイバ20の外側クラッド24の外側に設けられている。第2クラッドモードストリッパ26は、外側クラッド24を伝搬するクラッドモード光を第2光ファイバ20の外側に放出できるように構成されるものであれば特に限定されない。本実施形態の第2クラッドモードストリッパ26は、外側クラッド24よりも屈折率が高い樹脂からなる高屈折率部26hが第2光ファイバ20の外側クラッド24の外側に断続的に複数設けられることによって構成される。
第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とは互いに一方の端面が接続されている。第1コアと第2コアとは互いに接続され、第1クラッド14は、内側クラッド22、低屈折率層23及び外側クラッド24に接続されている。第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続は、例えば互いの端面を酸水素バーナ等によって融着することによって行われる。また、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30の近傍では、第1被覆層15及び第2被覆層25が剥がされている。第1被覆層15及び第2被覆層25が剥がされている部位は、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とが接続された状態で、低屈折率樹脂層31により被覆される。低屈折率樹脂層31は、第1クラッド14の屈折率及び外側クラッド24の屈折率よりも屈折率が低い低屈折率樹脂で構成される。本実施形態の低屈折率樹脂層31は、第1クラッドモードストリッパ16から第2クラッドモードストリッパ26までの間に形成される。すなわち、接続部30から第1クラッドモードストリッパ16までの間及び接続部30から第2クラッドモードストリッパ26までの間では、第1クラッド14及び外側クラッド24が低屈折率樹脂層31に被覆される。このような低屈折率樹脂層31は、例えば、紫外線硬化性樹脂によって構成される。
第1光検出部17は、第1光ファイバ10の外側に配置され、第1光ファイバ10を伝搬する光のレイリー散乱を検出する。また、本実施形態の第2光検出部27は、第2光ファイバ20の外側に配置され、第2光ファイバ20を伝搬する光のレイリー散乱を検出する。なお、レイリー散乱は全方位に生じるため、ただ単にレイリー散乱を検出するだけでは、光ファイバのどちらの方向に伝搬する光のレイリー散乱であるかを判別することが難しい。例えば、金属加工等の高反射材加工にレーザ装置を用いる場合、光ファイバには、レーザの出力方向とは逆方向に伝搬する反射光も伝搬する場合がある。このような場合において、本実施形態の光検出装置2では、後に詳述するように、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。また、第1光検出部17は、第1クラッドモードストリッパ16よりも第2光ファイバ20側とは反対側に設けられ、第2光検出部27は、第2クラッドモードストリッパ26よりも第1光ファイバ10側とは反対側に設けられる。すなわち、第1光検出部17は、第1クラッドモードストリッパ16よりも光源5からの光の伝搬方向の上流側に配置され、第2光検出部27は、第2クラッドモードストリッパ26よりも光源5からの光の伝搬方向の下流側に配置される。第1光検出部17及び第2光検出部27は、それぞれ第1クラッドモードストリッパ16及び第2クラッドモードストリッパ26から離して配置されることが好ましい。第1光検出部17及び第2光検出部27が第1クラッドモードストリッパ16及び第2クラッドモードストリッパ26から離して配置されることによって、第1光検出部17及び第2光検出部27が第1クラッドモードストリッパ16及び第2クラッドモードストリッパ26で生じる熱の影響を受けることが抑制され得る。このような第1光検出部17及び第2光検出部27、それぞれ例えばフォトダイオードからなる。
第1AD変換部18は、第1光検出部17からの信号をAD変換して計算部40へと送るブロックである。また、第2AD変換部28は、第2光検出部27からの信号をAD変換して計算部40へと送るブロックである。
計算部40は、第1AD変換部18を介して送られる第1光検出部17での検出結果及び第2AD変換部28を介して送られる第2光検出部27での検出結果に基づく計算を行うブロックである。計算部40は、後述するようにして第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を双方向に伝搬するそれぞれの光の強度を推定する。
図1に示す制御部CPは、計算部40からの信号に基づいて、後述するように光源5を制御するブロックである。
次に、本実施形態のレーザ装置1及び光検出装置2の動作および作用について説明する。
まず、励起光源50のそれぞれのレーザダイオード51から励起光が出射されると、この励起光が光ファイバ54の内側クラッドを介して、増幅用光ファイバ55の内側クラッドに入射する。増幅用光ファイバ55の内側クラッドに入射した励起光は主に増幅用光ファイバ55の内側クラッドを伝播して、増幅用光ファイバ55のコアを通過する際に当該コアに添加されている活性元素を励起する。励起状態とされた活性元素は、特定の波長の自然放出光を放出する。このときの自然放出光は、例えば活性元素がイッテルビウムである場合、1090nmの波長を含み一定の波長帯域を有する光である。この自然放出光は、増幅用光ファイバ55のコアを伝播して、一部の波長の光が第1FBG57により反射され、反射された光のうち第2FBG58が反射する波長の光が第2FBG58で反射されて、共振器内を往復する。そして、第1FBG57及び第2FBG58で反射される光が増幅用光ファイバ55のコアを伝播するときに、誘導放出が生じてこの光が増幅され、共振器内における利得と損失が等しくなったところでレーザ発振状態となる。そして、第1FBG57と第2FBG58との間を共振する光のうち一部の光が第2FBG58を透過し、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を介して出射する。第2光ファイバ20から出射した光は加工対象物等に照射される。また、加工対象物等に照射される光の一部は加工対象物等の表面で反射され、さらにその反射光の一部は第2光ファイバ20に戻ることがある。このようにして反射されて第2光ファイバ20に戻る光は、第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する。
光源5から出射されて第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を順方向に伝搬する光は、主に第1コア11及び第2コア21を伝搬する。このように順方向に伝搬する光は接続部30での損失が抑制されて第1光ファイバ10から第2光ファイバ20へと入射する。よって、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を順方向に伝搬する光の接続部30での損失を無視し、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を順方向で伝搬する光の強度をPf、第2光ファイバ20を逆方向で伝搬する光の強度をPrとすると、第2光検出部27で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M2は下記式(1)で表すことができる。
M2=Pf+Pr ・・・(1)
一方、第2光ファイバ20に戻る反射光はある程度結像点がぼけることにより、第2コア21だけでなく内側クラッド22にも入射すること傾向にある。内側クラッド22は低屈折率層23に囲まれるため、内側クラッド22の入射する反射光は主に低屈折率層23より内側を第1光ファイバ10側へ伝搬する。また、内側クラッド22は第1クラッド14に接続されるため、上記のように内側クラッド22を伝搬する光の少なくとも一部は第1クラッド14に入射する。さらに、このようにしてクラッドモード光となって第1クラッド14を伝搬する光の少なくとも一部は、第1クラッドモードストリッパ16において第1光ファイバ10の外側に放出される。よって、第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光のうち第1光検出部17で検出される位置まで伝搬する光の割合をαとすると、第1光検出部17で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M1は下記式(2)で表すことができる。すなわち、第1光検出部17で検出される位置を逆方向に伝搬する光の強度をαPrとすることができる。
M1=Pf+αPr ・・・(2)
第1光検出部17及び第2光検出部27での検出結果は第1AD変換部18及び第2AD変換部28を介して計算部40へと入力され、計算部40において上記式(1)、(2)の計算が行われる。さらに、上記式(1)、(2)から、第1光ファイバ10を順方向に伝搬する光の強度Pf及び第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光の強度Prが下記式(3)、(4)のように求められる。
Pr=(M2−M1)/(1−α) ・・・(3)
Pf=(αM2−M1)/(α−1) ・・・(4)
また、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30における双方向に伝搬する光の接続損失を考慮する場合は、第1光検出部17で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M1及び第2光検出部27で検出されるレイリー散乱から求められる光の強度M2は、それぞれ下記式(5)、(6)で表すことができる。ここで、βは、第1光ファイバ10を順方向に伝搬する光のうち第2光検出部27で検出される位置まで達する光の割合であり、γは、第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光のうち第1光検出部17で検出される位置まで達する光の割合である。すなわち、第1光検出部17で検出される位置を逆方向に伝搬する光の強度をγPr、第2光検出部27で検出される位置を順方向に伝搬する光の強度をβPfとすることができる。
M1=Pf+γPr ・・・(5)
M2=βPf+Pr ・・・(6)
そして、上記式(5)、(6)から、第1光ファイバ10を順方向に伝搬する光の強度Pf及び第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光の強度Prが下記式(7)、(8)のように求められる。
Pr=(γM2−M1)/(γβ−1) ・・・(7)
Pf=(βM1−M2)/(γβ−1) ・・・(8)
なお、上記β及びγは、事前に第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20に順方向及び逆方向に光を伝搬させる試験を行うことによって求めることができる。具体的には、まず、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とを接続し、第2光ファイバ20の下流側の端面から出射する光のエネルギーを測定するカロリーメータを配置する。そして、第1光ファイバ10の上流側から順方向に光を伝搬させると、カロリーメータ、第1光検出部17及び第2光検出部27によって上記式(8)のPf、M1、M2が求められる。また、第1光ファイバ10の上流側の端面から出射する光のエネルギーを測定するカロリーメータを配置し、第2光ファイバ20の下流側から逆方向に光を伝搬させると、カロリーメータ、第1光検出部17及び第2光検出部27によって上記式(7)のPr、M1、M2が求められる。これらの結果から、βとγが求められる。
上記のようにして計算部40で順方向の光の強度Pf及び逆方向の光の強度Prを求めた後、この計算結果に基づいて制御部CPによってレーザ装置1に対して所定の制御を行うことができる。例えば、順方向の光の強度Pfに応じて光源5からの出力を調整する制御を行ったり、逆方向の光の強度Prが許容値を超える場合にレーザ装置1から出射されるレーザ光を止める制御を行ったりすることができる。光源5からの出力を調整する制御する方法としては、例えば、光源5に備えられる励起光源50から出射される光の強度を制御する方法が考えられる。なお、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20の双方向に伝搬する光の強度を推定せずに、第1光検出部17での検出結果と第2光検出部27での検出結果との差に基づいてレーザ装置1の制御が行われてもよい。上記のように、第1光検出部17での検出結果と第2光検出部27での検出結果との差は、第2光ファイバ20に入射する反射光の強度に依存し得る。当該差が大きい場合は反射光の強度が強いことが想定される。よって、当該差が所定値以上となる場合は、レーザ装置1からのレーザ光の出射を停止して光源5の損傷を抑制したり、レーザ装置1から出射されるレーザ光の出射方向を変えて反射光が第2光ファイバに入射することを抑制したりすることができる。
以上のように、本実施形態の光検出装置2では、順方向に伝搬する光は主に第1コア11から第2コア21へと概ね一定の強度で伝搬し得る。一方、第2光ファイバ20から出射された光の一部が反射光となって第2光ファイバ20に戻ってくる場合、当該反射光はある程度結像点がぼけることにより、第2コア21だけでなく第2コア21の周囲の内側クラッド22にも入射する傾向にある。内側クラッド22は低屈折率層23に囲まれるため、内側クラッド22に入射する反射光は主に低屈折率層23より内側、すなわち主に第2コア21と内側クラッド22とを第1光ファイバ10側へ伝搬する。また、内側クラッド22は第1クラッド14に接続されるため、上記のように内側クラッド22を伝搬する光の少なくとも一部は第1クラッド14に入射する。さらに、このようにしてクラッドモード光となって第1クラッド14を伝搬する光の少なくとも一部は、第1クラッドモードストリッパ16において第1光ファイバ10の外側に放出される。以上のように、第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光の少なくとも一部は第1クラッドモードストリッパ16において第1光ファイバ10の外側に放出される。ところで、第1光検出部17は第1クラッドモードストリッパ16の上流側において、第2光検出部27は第1クラッドモードストリッパ16の下流側において、光ファイバの双方向に伝搬する光のレイリー散乱を検出する。よって、第1光検出部17の検出結果と第2光検出部27の検出結果とでは、少なくとも第1クラッドモードストリッパ16で放出された光の分の差が生じる。この差の大きさは、少なくとも第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光の強度に依存する。このため、第1光検出部17での検出結果と第2光検出部27での検出結果との差を用いて、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光の強度を推定することができる。また、順方向に伝搬する光は、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20とで概ね同じ強さで伝搬し得る。よって、上記のように第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を逆方向に伝搬する光の強度を推定することによって、第1光検出部17または第2光検出部27での検出結果から、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を順方向に伝搬する光の強度も推定することもできる。さらに、本実施形態の光検出装置2では、第1光検出部17及び第2光検出部27はそれぞれレイリー散乱を検出している。このため、上記特許文献1に記載のファイバレーザ装置のように漏れ光を検出する場合に比べて、光ファイバを伝搬する光の強度が強い場合であっても検出結果と当該検出結果から推定される光ファイバを伝搬する光の強度との関係の線形性が保たれ得る。したがって、本実施形態の光検出装置2は、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。
また、本実施形態の光検出装置2では、第2光検出部27は、第2クラッドモードストリッパ26よりも光源5からの光の伝搬方向の下流側に配置される。このように第2光検出部27及び第2クラッドモードストリッパ26が配置されることによって、外側クラッド24を順方向に伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は第2光検出部27の手前で第2クラッドモードストリッパ26において第2光ファイバ20の外側に放出される。よって、第2光検出部27は第2コア21を順方向に伝搬する光の強度をより正確に検出し得る。
また、本実施形態の光検出装置2では、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30から第1クラッドモードストリッパ16まで、第1クラッド14は低屈折率樹脂層31により被覆されている。このように第1クラッド14が低屈折率樹脂層31に被覆されることによって、接続部30で生じる逆方向に伝搬するクラッドモード光は、接続部30近傍で漏れることが抑制され、第1クラッドモードストリッパ16まで伝搬し得る。また、本実施形態の光検出装置2では、接続部30から第2クラッドモードストリッパ26までも、外側クラッド24が低屈折率樹脂層31により被覆されている。このように外側クラッド24が低屈折率樹脂層31に被覆されることによって、接続部30で生じる順方向に伝搬するクラッドモード光は、接続部30近傍で漏れることが抑制され、第2クラッドモードストリッパ26まで伝搬し得る。このように接続部30近傍で光が漏れることが抑制されることによって、接続部30近傍での発熱が抑制され、接続部30での光の損失量の変化が抑制され得る。よって、第1光検出部17及び第2光検出部27においてより正確に光の強度が検出され得る。
また、本実施形態のレーザ装置1では、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20がそれぞれシングルモードファイバである。第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20が互いにシングルモードファイバとされることによって、レーザ装置1は高輝度な光を出射し得る。
また、本実施形態のレーザ装置1は、光検出装置2と、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20を伝搬する光を出射する光源5と、を備える。上記のように、光検出装置2によれば、光ファイバの双方向に伝搬するそれぞれの光の強度の検出精度を向上し得る。よって、光検出装置2を備えるレーザ装置1によれば、光ファイバを伝搬する光の強度に基づく制御の正確性を向上し得る。
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第2光ファイバ20に第2クラッドモードストリッパ26が設けられる例を挙げて説明したが、第2クラッドモードストリッパ26は必須の構成ではない。ただし、第2光ファイバ20に第2クラッドモードストリッパ26が設けられることによって、以下に説明するように光ファイバを伝搬する光の強度をより正確に検出し得る。外側クラッド24を逆方向に伝搬するクラッドモード光が除去されない場合、外側クラッド24から第1クラッド14側に伝搬するクラッドモード光の少なくとも一部は第1クラッド14を伝搬し得る。よって、上記のように第2光ファイバ20に第2クラッドモードストリッパ26が設けられることによって、外側クラッド24を逆方向に伝搬するクラッドモード光が低減されると共に、第1クラッド14を逆方向に伝搬するクラッドモード光も低減され得る。このように第1クラッド14を逆方向に伝搬するクラッドモード光が低減されることによって、当該クラッドモード光が第1光検出部17に与える影響が抑制され、第1光検出部17によって第1光ファイバ10を伝搬する光の強度がより正確に検出され得る。また、クラッドモード光が第1クラッド14を順方向に伝搬する場合、当該クラッドモード光の少なくとも一部は外側クラッド24を順方向に伝搬し得る。第2クラッドモードストリッパ26が設けられることによって、このように外側クラッド24を順方向に伝搬するクラッドモード光も低減され得る。
また、図3に示すように、第2光検出部27の下流側に更に他のクラッドモードストリッパ26aが設けられてもよい。図3は、本発明の変形例に係る光検出装置2aの一部を概略的に示す断面図である。本変形例において、上記実施形態と同様の構成には同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。第2光ファイバ20から出射されて第2光ファイバ20に戻ってくる反射光の一部は外側クラッド24を伝搬するクラッドモード光となる場合がある。
また、上記実施形態では第1光検出部17が第1光ファイバ10の外側に設けられ、第2光検出部27が第2光ファイバ20の外側に設けられる例を挙げて説明したが、本発明は当該形態に限定されない。図4は、本発明の他の変形例に係る光検出装置2bの一部を概略的に示す断面図である。本変形例において、上記実施形態と同様の構成には同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。第1光検出部17及び第2光検出部27は第1クラッドモードストリッパ16を挟むように配置されていればよく、図4に示すように第1光検出部17及び第2光検出部27がともに第1光ファイバ10の外側に設けられもよい。
ただし、上記実施形態にように第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30を挟んで第1光検出部17及び第2光検出部27が配置されることが好ましい。
また、上記実施形態では、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20がそれぞれシングルモードファイバである例を挙げて説明したが、第1光ファイバ10及び第2光ファイバ20は、それぞれマルチモードファイバであってもよい。
また、上記実施形態では、第1クラッド14の外径と外側クラッド24の外径とが互いに等しい例を挙げて説明したが、第1クラッド14の外径と外側クラッド24の外径とは互いに異なっていてもよい。ただし、第1クラッド14の外径と外側クラッド24の外径とが互いに等しいことによって、第1光ファイバ10と第2光ファイバ20との接続部30における光の損失が抑制され得る。
また、上記実施形態では光源5が共振器型のファイバレーザ装置である例を挙げて説明したが、光源5は、他のファイバレーザ装置や固体レーザ装置であってもよい。光源5がファイバレーザ装置とされる場合、MO−PA(Master Oscillator Power Amplifier)型のファイバレーザ装置であってもよい。また、光源5の数は特に限定されず、少なくとも1つ備えられていればよい。