以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、各実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は、例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素については、図示を省略する。さらに、以下の各図では、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内において、X軸、及び、X軸に垂直なY軸を取る。
図1は、本実施形態に係る柱構造体10の構成を示す斜視図である。図2は、図1におけるII−II断面を示す図である。図3は、図2における各断面、及び、柱構造体10の上面を示す図である。特に、図3(a)は、図2におけるIIIA−IIIA断面を示す図である。図3(b)は、図2におけるIIIB−IIIB断面を示す図である。図3(c)は、柱構造体10をZ方向プラス側から見た上面図である。
柱構造体10は、Z方向を延伸方向とする柱状の構造体である。柱構造体10は、船舶上部工、橋梁、運搬機、海洋構造物等の構造物に対して、延伸方向の上端及び下端が固定されることで設置され、構造物からの荷重を受ける。
柱構造体10は、それぞれZ方向に延伸する、複数の壁部12と、複数の支持部14とを有する。ここで、本実施形態では、柱構造体10のXY断面が中空の矩形(正方形)となるように、柱構造体10は、4つの壁部12、すなわち、第1壁部12a〜第4壁部12dを含むものとする。また、柱構造体10は、4つの支持部14、すなわち、第1支持部14a〜第4支持部14dを含むものとする。
第1壁部12a〜第4壁部12dは、それぞれ、同一形状であり、Z方向を延伸方向とする平板である。なお、壁部12が取り得る具体的形状については、以下で詳説する。
壁部12は、強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂複合材料(FRP)で形成される。強化繊維には、例えば、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、ガラス繊維等を用いることができる。マトリックス樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
壁部12は、一般的な繊維強化樹脂複合材料の成形方法で成形することができる。この成形方法としては、例えば、プリプレグを積層した後にオートクレーブ等で樹脂硬化して成形する方法が適用可能である。又は、織物で形成したプリフォームを金型に入れ、このプリフォームに樹脂含浸して硬化するRTM(Resin Transfer Molding)法等も適用可能である。
第1支持部14a〜第4支持部14dは、それぞれ、同一形状であり、Z方向を延伸方向とし、XY平面で切断した断面形状がL形となる部材である。なお、支持部14が取り得る具体的形状については、以下で詳説する。
支持部14は、炭素鋼やステンレス鋼等の鋼材で形成される。支持部14は、一般的な鋼材の機械加工で形成することができる。ただし、支持部14を形成する材料は、このような鋼材(鉄系合金)に限られず、アルミニウム材料(アルミニウム合金等)、チタン材料(チタン合金等)、ニッケル材料(ニッケル合金等)等の金属材料であってもよい。
ここで、柱構造体10は、壁部12及び支持部14の組み合わせを基本構造とする。そして、以下で詳説するが、柱構造体10が構造物に設置されるときは、第1支持部14a〜第4支持部14dのそれぞれの延伸方向の両端部が構造物に接合される。ここでの接合は、例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂からなる接着剤を用いた接着により行うことができる。また、構造物(支持部14が接合される被設置部)が金属材料である場合などは、溶接により接合することもできる。そして、柱構造体10を設置する構造物側の被設置部の形状や材質は、その時々によって異なる。そこで、以下の説明では、構造物側から直接的に荷重が伝達される荷重伝達部として、構造物側の被設置部を想定した2つの基板を例示する。
第1基板16は、柱構造体10のZ方向プラス側の端部が設置される構造物側の被設置部を想定した部材である。一方、第2基板18は、柱構造体10のZ方向マイナス側の端部が設置される構造物側の被設置部を想定した部材である。第1基板16及び第2基板18は、ともに、全体形状としては、おおよそ柱構造体10の断面形状に合わせた矩形(正方形)となる平板であり、中央領域には貫通穴を有していてもよい。第1基板16及び第2基板18は、支持部14と同様に、炭素鋼やステンレス鋼等の鋼材等の金属材料で形成されていてもよい。
次に、壁部12及び支持部14の組み合わせと、それらが組み合わされた柱構造体10が好適な効果を奏するための壁部12及び支持部14の具体的形状とについて説明する。
第1壁部12a〜第4壁部12dは、それぞれ、Z方向に延伸方向を合わせつつ、内部に空間を形成するように、XY平面内で周方向に並列されている。例えば、第1壁部12aについて、第1壁部12aのZ方向の端部は、X方向に沿って配置されている。このとき、第1壁部12aのX方向プラス側でZ方向に沿って延びる一方の端辺は、端部がY方向に沿って配置されている第2壁部12bのY方向マイナス側でZ方向に沿って延びる一方の端辺に近接する。一方、第1壁部12aのX方向マイナス側でZ方向に沿って延びる他方の端辺は、端部がY方向に沿って配置されている第4壁部12dのY方向マイナス側でZ方向に沿って延びる一方の端辺に近接する。同様に、第2壁部12b〜第4壁部12dも、それぞれ、互いに隣り合う壁部12同士で並んで配置される。この配置関係により、第1壁部12a〜第4壁部12dは、図3に示すように、全体として、XY平面において正方形の断面形状となる矩形管状となる。ただし、隣り合う壁部12同士は、直接的に接合されていない。また、第1壁部12a〜第4壁部12dは、第1基板16及び第2基板18にも接合されていない。
第1支持部14a〜第4支持部14dは、それぞれ、周方向に同一の間隔を空けて並列され、互いに隣り合う2つの壁部12を接合して固定するとともに、延伸方向の両端部が第1基板16又は第2基板18のいずれかに接合される。ここでの接合は、例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂からなる接着剤を用いた接着により行うことができる。例えば、第1支持部14aのX方向に沿った一方の外面は、第1壁部12aの内面の一部に接合される。一方、第1支持部14aのY方向に沿った他方の外面は、第2壁部12bの内面の一部に接合される。また、第1支持部14aのZ方向プラス側のL形の端面は、第1基板16の平面上に接合される。一方、第1支持部14aのZ方向マイナス側のL形の端面は、第2基板18の平面上に接合される。同様に、第2支持部14b〜第4支持部14dも、それぞれ2つの隣り合う壁部の一部に接合されるとともに、2つの基板16,18に接合される。この接合関係により、第1支持部14a〜第4支持部14dは、第1壁部12a〜第4壁部12dを直接的に支持することになり、第1基板16及び第2基板18に直接的に支持されることになる。すなわち、第1壁部12a〜第4壁部12dは、それぞれ、第1支持部14a〜第4支持部14dを介して2つの基板16,18に支持されることになる。
また、第1支持部14a〜第4支持部14dは、それぞれ、XY平面において互いに接触しない。すなわち、図2に示すように、X方向又はY方向で互いに隣り合う2つの支持部14の間には、互いに接合する壁部12の壁面に沿って、間隔bFRPが存在する。結果として、柱構造体10全体では、壁部12のみの単層部と、壁部12と支持部14とが接合により重なっている複層部とが存在することになる。
このような構造によれば、支持部14は、まず、延伸方向の端部で、第1基板16又は第2基板18から伝達される荷重を受ける。その後、伝達された荷重は、壁部12において、支持部14と接合されている複層部から、支持部14と接合されていない単層部へと伝達される。したがって、第1の視点として、壁部12は、支持部14からの荷重の伝達なしに、第1基板16又は第2基板18から直接伝達した荷重だけを受けるということがない。一方、第2の視点として、支持部14は、壁部12に接合されているので、支持部14だけで、柱構造体10に負荷された荷重を受けるということもない。
さらに、第1支持部14a〜第4支持部14dでは、それぞれ、延伸方向に対して垂直な断面方向における複層部の長さbLが一定ではない。具体的には、図2及び図3に示すように、第1基板16及び第2基板18との接合部である両端部の長さの方が、延伸方向の中間部よりも長い。例えば、図2におけるIIIA−IIIA断面では、第1支持部14aにおける複層部の長さは、bL1である。これに対して、第1基板16及び第2基板18の近傍である図2におけるIIIB−IIIB断面では、第1支持部14aにおける複層部の長さは、bL1よりも長いbL2である。さらに、第1基板16及び第2基板18との接合部である両端部では、第1支持部14aにおける複層部の長さは、bL2よりも長いbL3である。このように、複層部の長さbLは、延伸方向で中間部から両端部に向けて、徐々に長くなる。したがって、第1支持部14aのXY平面内の断面積は、板厚tMeが一定であるとすれば、Z方向の中間部よりも端部の方が大きくなる。それに伴い、例えば、第2基板18の位置を基準とすると、Z方向に沿って第2基板18から第1基板16に向けて進むにつれて、単層部の長さbFRPも変化する。
このような構成のもと、壁部12及び支持部14の各寸法は、以下のような条件を満たすことにより決定される。特に、柱構造体10では、壁部12が繊維強化樹脂複合材料で形成されることに関連して、壁部12及び支持部14における局部座屈を抑止する必要がある。
まず、壁部12では、局部座屈を抑止するため、幅厚比を規定する。ここで、幅厚比RFRPは、簡易式である式(1)から算出され得る。
また、bFRPは、壁部12における単層部の幅である。tFRPは、壁部12の板厚である。EFは、壁部12を形成する繊維強化樹脂複合材料の縦弾性係数である。μFは、壁部12を形成する繊維強化樹脂複合材料のポアソン比である。
さらに、kは座屈係数であり、例えば、k=4である。
一方、幅厚比RFRPは、厳密解である式(2)からも算出され得る。
ここで、FYは、設計計算上の相当降伏断面力であり、式(3)で表される。
ただし、AMeは、支持部14の断面積である。AFRPは、壁部12の断面積である。nEは、支持部14を形成する鋼材の縦弾性係数ESと、壁部12を形成する繊維強化樹脂複合材料の縦弾性係数EFとの比(ES/EF)である。σYは、支持部14を形成する鋼材の降伏応力である。
図4は、本実施形態において採用し得る支持部の断面形状を示す図である。特に、図4(a)は、支持部14の断面形状を示す。ここで、延伸方向に垂直な断面方向において、接合面となる外面141上で壁部12と接合されて生じる複層部の長さをbLとし、支持部14の板厚をtMeとする。このとき、局部座屈を抑止するために、支持部14の形状は、(bL/tMe)≦13の条件を満たすものとする。
次に、本実施形態による効果について説明する。
まず、本実施形態に係る柱構造体10は、繊維強化樹脂複合材料で形成され、第1方向に延伸し、かつ、第1方向に垂直となる第1平面内で周方向に並列する複数の壁部12を有する。また、柱構造体10は、金属材料で形成され、第1方向に延伸し、かつ、第1平面内で周方向に同一の間隔を空けて並列する複数の支持部14を有する。支持部14は、互いに隣り合う第1の壁部12と第2の壁部12との面に接合される。また、支持部14の第1平面内の断面積は、第1方向の中間部よりも端部の方が大きい。
ここで、第1方向は、例えばZ方向に相当する。この場合、第1平面は、XY平面に相当する。また、支持部14が例えば第1支持部14aに相当する場合には、第1の壁部12は、第1壁部12aに相当し、第2の壁部12は、第2壁部12bに相当する。
上記構成の柱構造体10によれば、まず、壁部12は、繊維強化樹脂複合材料で形成されている。繊維強化樹脂複合材料は、鋼材等の金属材料よりも比重が小さく、比強度が大きい。したがって、柱構造体10は、その一部に繊維強化樹脂複合材料で形成される複合材料部材を採用することで、全体が鋼材で形成されている柱構造体よりも、軽量化が実現できる。
さらに、鋼材で形成されている支持部14の断面積は、端部で最大であり、端部から中間部に行くにつれて小さくなり、繊維強化樹脂複合材料で形成されている壁部12で支える荷重の割合が増加する。支持部14の端部における断面積は、局部座屈を抑止するのに必要な大きさに規定されており、それ以上に小さく規定することは望ましくない。したがって、例えば、支持部14の断面積が、第1方向での位置にかかわらず、端部の断面積で一定である場合と比較して、柱構造体10では、支持部14の中間部での断面積が端部での断面積よりも小さいので、より軽量化を実現できる。
また、上記構成の柱構造体10によれば、支持部14の第1方向の端部近傍では、鋼材で形成されている支持部14の断面積が相対的に大きくなり、専ら複層部が外部から負荷される荷重を支えることになる。すなわち、柱構造体10では、集中荷重に弱い繊維強化樹脂複合材料で形成されている壁部12のみに外部からの荷重を負荷させることがないので、柱構造体10の第1方向の端部強度が向上する。さらに、柱構造体10では、第1方向の端部のみならず中間部でも、壁部12も荷重を分担する。したがって、端部の荷重集中に起因した構造上の弱点を克服できる。
また、第1平面内で壁部12において単層部となる部分の幅をbFRPとし、壁部12の板厚をtFRPとし、繊維強化樹脂複合材料の縦弾性係数をEFとし、繊維強化樹脂複合材料のポアソン比をμFとし、座屈係数をkとする。このとき、本実施形態に係る柱構造体10では、壁部12の幅厚比RFRPは、式(1)から算出される。
上記構成の柱構造体10によれば、簡易式である式(1)を用いて、壁部12の単層部の板幅減による幅厚比RFRPを低下させ、結果的に局部座屈強度を向上させることができる。
また、支持部14の断面積をAMeとし、壁部12の第1平面内の断面積をAFRPとし、金属材料の縦弾性係数ESと繊維強化樹脂複合材料の縦弾性係数EFとの比(ES/EF)をnEとし、金属材料の降伏応力をσYとする。また、式(3)で表される設計計算上の相当降伏断面力をFYとする。このとき、本実施形態に係る柱構造体10では、壁部12の幅厚比RFRPは、式(2)から算出される。
上記構成の柱構造体10によれば、厳密解である式(2)を用いて、壁部12の単層部の板幅減による幅厚比RFRPを低下させ、結果的に局部座屈強度を向上させることができる。
また、支持部14において第1平面内で壁部12が接合されて複層部となる部分の長さをbLとし、支持部14の板厚をtMeとする。このとき、本実施形態に係る柱構造体10では、支持部14の形状は、(bL/tMe)≦13の条件を満たす。
上記構成の柱構造体10によれば、結果的に壁部12の単層部の局部座屈強度を増加させ、柱構造体10の局部座屈を抑止することができる。
また、本実施形態に係る柱構造体10では、壁部12及び支持部14は、それぞれ4つあり、支持部14の第1平面内の断面形状は、L形である。
上記構成の柱構造体10によれば、特に壁部12及び支持部14がそれぞれ4つある場合、断面形状がL形の支持部14は、柱構造体10全体の矩形断面の四隅に配置され、それぞれの壁部12の単層部の周辺を固定することになる。これにより、繊維強化樹脂複合材料で形成されている壁部12の局部座屈耐力を向上させることができるので、柱構造体10自体の座屈係数(局部座屈係数)を向上させることができる。
また、本実施形態に係る柱構造体10では、第1方向を圧縮方向として圧縮荷重が負荷される構造物内の被設置部に固定される場合、支持部14の第1方向の端部は、被設置部に接合される。
上記構成の柱構造体10によれば、柱構造体10の両端では、繊維強化樹脂複合材料で形成されている壁部12のみには荷重を支えさせず、鋼材で形成されている支持部14が荷重を支えることになるので、端部強度を向上させることができる。
なお、上記説明では、図4(a)に示したように、壁部12は、支持部14の外面141上に接合されるものとした。しかし、本発明は、これに限定されない。すなわち、壁部12は、支持部14の内面142上に接合されるものとしてもよい。
また、上記説明では、柱構造体10の延伸方向に対する概略としての断面形状が矩形(正方形)であるものとした。しかし、本発明は、これに限定されない。断面形状が四角形以外の多角形となるような柱構造体にも適用可能である。なお、この場合には、柱構造体に含まれる壁部12及び支持部14の個数は変更となるが、壁部12に関する上記の式(1)〜(3)の規定と、支持部14に関する(bL/tMe)≦13の規定については、そのまま適用され得る。
さらに、柱構造体10の断面形状は、多角形のみにも限定されず、例えば、円形や楕円であってもよい。図4(b)は、一例として、円形となる柱構造体20の断面形状と、その場合の支持部24の断面形状を示す図である。この場合、柱構造体20は、例えば、4つの壁部22、すなわち、第1壁部22a〜第4壁部22dを含む。そして、柱構造体20は、周方向に互いに隣り合う2つの壁部22を接合する、周方向に同一の間隔を空けて並列された4つの支持部24、すなわち、第1支持部24a〜第4支持部24dを含む。1つの支持部は、2つの壁部22と接合される外面241と、その反対側の内面242とを有する。
ただし、断面形状が円形である柱構造体20では、壁部22及び支持部24に関する規定が、断面形状が多角形である柱構造体10の場合と若干異なる。まず、壁部22に関して、式(1)に示す簡易式は不適用となり、式(2)及び(3)のみが適用される。一方、支持部24に関して、図4(b)に示すように、長さbLを、延伸方向に垂直な断面方向における2つの壁部22と接合されて生じる複層部の長さ、すなわち、外面241全面の長さとして、その形状が(bL/tMe)≦13で規定されることになる。なお、このような規定は、断面形状が楕円である柱構造体でも同様となる。
特に、柱構造体10の断面形状が、上記詳説した矩形の場合も含め、多角形となる場合には、そのときに適用される支持部は、各角部に沿った角度を有するものとすればよい。一方、柱構造体10の断面形状が円形や楕円形など、曲線を有する形状となる場合には、そのときに適用される支持部は、その曲線に沿った曲面(例えば、円弧状など)を有するものとすればよい。
また、上記説明では、構造物側の被設置部を想定した第1基板16及び第2基板18には、鋼材で形成された支持部14の端部のみが接合される場合を例示した。しかし、第1基板16及び第2基板18に支持部14が接合されていれば、同様に、壁部12の端部も第1基板16及び第2基板18に接合されていてもよい。
さらに、上記説明では、柱構造体10が、壁部12及び支持部14の組み合わせを基本構造とし、構造物に設置されるときには、第1支持部14a〜第4支持部14dのそれぞれの延伸方向の両端部が構造物に接合されるものとした。しかし、柱構造体10は、さらに、第1支持部14a〜第4支持部14dのそれぞれの延伸方向の両端部に、上記例示した第1基板16及び第2基板18のような端部部材を予め備えた1つのユニットとしてもよい。この場合、当該ユニットは、それ単体で流通することとなり、構造物に設置されるときには、第1基板16及び第2基板18が構造物に接合されることになる。このような構成によれば、柱構造体10の運搬や設置などの取り扱いが、より容易になるという利点がある。
上記実施形態に係る柱構造体10と、比較例としての従来の柱構造体とのそれぞれの試作モデルについて、載荷試験、及び、有限要素法(FEM)の非線形解析による圧縮荷重の負荷解析を行い、結果を比較した。
図5は、本実施形態に係る柱構造体10の試作モデルの寸法を示す図である。特に、図5(a)は、側面図である。図5(b)は、試作モデルをZ方向プラス側から見た上面図である。図5(c)は、図5(a)におけるVC−VC断面を示す図である。図5(d)は、図5(a)におけるVD−VD断面を示す図である。なお、各図中に示す寸法の単位はmmである。
図6は、図5に示す柱構造体10の試作モデルにおける支持部14の寸法を示す図である。特に、図6(a)は、側面図である。図6(b)は、図6(a)におけるVIB−VIB断面を示す図である。図6(c)は、支持部14をZ方向プラス側から見た上面図である。なお、各図中に示す寸法の単位はmmである。
図7は、柱構造体10の試作モデルについて、載荷試験及び非線形解析による荷重−変位曲線を示すグラフである。図7において、横軸は変位δ(mm)であり、縦軸は荷重F(kN)である。まず、柱構造体10の試作モデルに対して3回の載荷試験を行った。載荷試験では、試作モデルの第2基板18を載置した状態で、Z方向を荷重方向として第1基板16に対して圧縮荷重を負荷した。図7では、3回の載荷試験で得られた3つの試験値No.1〜3を描画している。次に、柱構造体10の試作モデルについて、同様の負荷条件で、有限要素法の非線形解析による圧縮荷重の負荷解析を行った。図7では、非線形解析の結果を実線で表している。図7からわかるように、実際の載荷試験で得られた結果と、非線形解析で得られた結果とは、概ね一致する。
図8は、柱構造体10の試作モデルについて、載荷試験、非線形解析及び設計計算による断面性能の比較を示すグラフである。図8において、横軸は計算値(kN)であり、縦軸は試験値(kN)である。図中、丸の白抜き記号は、設計計算で得られた相当降伏断面力の計算値と、載荷試験で得られた試験値との比較を示す。三角の白抜き記号は、非線形解析で得られた相当降伏断面力の計算値と、載荷試験で得られた試験値との比較を示す。四角の白抜き記号は、非線形解析で得られた最大荷重の計算値と、載荷試験で得られた試験値との比較を示す。図8からわかるように、降伏断面力は、設計計算値及び解析値と、試験値とが概ね一致し、特に試験値に関してはバラツキも小さい。これにより、本実施形態に係る柱構造体10においては、降伏断面力を設計基準強度として取り扱うことが可能であると判断し得る。
図9は、試作モデルの位置における荷重分担率を示すグラフである。特に、図9(a)は、圧縮荷重を受け、柱構造体10が弾性範囲内にある状態での荷重分担率を示す。図9(b)は、圧縮荷重を受け、柱構造体10が終局限界にある状態での荷重分担率を示す。図9において、横軸は、Z方向における第2基板18からの位置(mm)であり、縦軸は荷重分担率(%)である。図9(a)及び図9(b)では、支持部14の断面積がそれぞれ異なる第1例から第3例までの3つの場合の結果を描画している。また、図中の黒塗り記号は、積層部における値を示し、白抜き記号は、繊維強化樹脂複合材料の単層部における値を示す。図9からわかるように、Z方向において、第1基板16又は第2基板18に支持部14が接合されている柱構造体10の両端部では、複層部が100%荷重を分担している。そして、第1基板16側又は第2基板18側の双方からそれぞれ中間部に向かうに従い、繊維強化樹脂複合材料からなる単層部の荷重分担率が増加する。このような結果から、柱構造体10では、荷重が円滑に伝達され、かつ、複層部と繊維強化樹脂複合材料の単層部とが荷重を分担することで、鋼材から形成される支持部14の断面積を可能な限り小さくすることができると判断し得る。
図10は、比較例としての従来の柱構造体30の試作モデルの形状及び寸法を示す図である。図10では、柱構造体30の正面図、上面図及び側面図が描画されている。なお、各図中に示す寸法の単位はmmである。
柱構造体30の試作モデルは、本実施形態に係る柱構造体10の試作モデルとの比較を容易にするために、非特許文献1に記載の板厚6mmの鋼板で形成された供試体を参照して構成されている。柱構造体30は、4つの壁部32、すなわち、第1壁部32a〜第4壁部32dを含む。第1壁部32a〜第4壁部32dは、互い接合されることで、柱構造体30は、略矩形断面の管となる。柱構造体30の両端部には、本実施形態における第1基板16及び第2基板18と同様に、構造物の非設置部を想定した第1基板34及び第2基板36とが接合されている。そして、第1壁部32a〜第4壁部32d、並びに、第1基板34及び第2基板36は、すべて、本実施形態における支持部14、並びに、第1基板16及び第2基板18と同様に、鋼材で形成されている。
図11は、本実施形態に係る柱構造体10の試作モデルの耐荷力と、従来の柱構造体30の試作モデルの耐荷力とを比較するグラフである。図11において、横軸は、各柱構造体のZ方向の中間部における単位当たりの重量(kg/m)であり、縦軸は耐荷力(kN)である。図中、鋼FRP複合構造体とは、本実施形態に係る柱構造体10の試作モデルに相当する。一方、鋼構造体とは、従来の柱構造体30の試作モデルに相当する。丸の記号は、非線形解析で得られた鋼FRP複合構造体の相当降伏断面力の解析値を示す。クロスの記号は、載荷試験で得られた鋼FRP複合構造体の相当降伏断面力の試験値を示す。+の記号は、載荷試験で得られた鋼構造体の最高耐荷力の試験値である。なお、この鋼構造体の最高耐荷力の試験値は、非特許文献1を参照して得た。
図11からわかるように、第1に、本実施形態に係る柱構造体10の試作モデルの基準設計強度(降伏断面力)は、鋼のみで形成された、同等の外形寸法を有する従来の柱構造体30の試作モデルの基準設計強度(局部座屈強度)とほぼ同等である。第2に、柱構造体10の試作モデルの中間部における単位長さあたり重量は、従来の柱構造体30の試作モデルの中間部における単位長さあたり重量の約3/4である。したがって、本実施形態に係る柱構造体10によれば、従来の柱構造体30と比較して、相当降伏断面力以上の最高耐荷力が得つつ、局部座屈を同等に抑えることができ、その上で、より軽量化が実現できた。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。