図1に、第1の実施形態に係る接合ユニット1を側面図により示している。
接合ユニット1は、隣り合うように配置された一組の第1の部材(被接合部材)10と、一組の被接合部材10に締結される一組の第2の部材(接合部材)20と、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とを締結する第1の締結ユニット60とを含む。一組の接合部材20は、隣り合う一組の被接合部材10を、締結する方向(締結方向)111の両側から挟むように配置されている。第1の締結ユニット60は、ボルト61と、ナット62とを含む。
一組の被接合部材10のそれぞれは、鋳鉄製の板状部材であり、隣り合う被接合部材10に対向する対向面11と、一組の接合部材20にそれぞれ嵌合して接合される嵌合接合部12と、嵌合接合部12を板厚方向にそれぞれ貫通するボルト61挿入用の締結孔13とを含む。
一組の接合部材20のそれぞれは、鋳鉄製の板状部材であり、被接合部材10の嵌合接合部12に対して嵌合して接合される嵌合接合部21と、嵌合接合部21を板厚方向に貫通するボルト61挿入用の2つの締結孔22とを含む。
被接合部材10の嵌合接合部12は、対向面11に直交する方向(第1の方向)101に沿って一列に並ぶ複数の第1の部分(凸部)31を含む。複数の凸部31は、締結方向111の両側に配置されている。接合部材20の嵌合接合部21は、嵌合接合部12の複数の凸部31に対して、それぞれ互い違いに噛み合うように配置された複数の第2の部分(凸部)41を含む。
本例では、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とが締結される前(たとえば仮締め状態)において、一方の被接合部材10aの対向面11と他方の被接合部材10bの対向面11とが接触した状態で、隙間を隔てることなく配置されており、一組の被接合部材10同士が近付く方向112への変位が拘束(規制)される。したがって、一組の被接合部材10の対向面11同士が接触した状態で、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束される。
本例では、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束された状態で、接合部材(第2の部材)20の複数の凸部(第2の部分)41は、被接合部材(第1の部材)10の複数の凸部(第1の部分)31に対してそれぞれ隙間52を隔てて配置される。
被接合部材10の凸部31は、第1の方向101に対して板厚方向視90度傾いた方向(紙面を垂直に貫く方向)に延びる頂部31cと、対向面11の側を向き頂部31cに繋がる第1の面31aと、第1の面31aの逆側を向き頂部31cに繋がる第2の面31bとを含む。凸部31の第2の面31bは、第1の方向101に対する仰角θが約60度で頂部31cに繋がるように設計されている。
接合部材20の凸部41は、被接合部材10の凸部31の第1の面31aに対して隙間52を隔てて対向する第1の面(対向面)41aと、対向面41aの逆側を向き凸部31の第2の面31bに面接触する第2の面(接触面)41bとを含む。
接合ユニット1は、さらに、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束された状態から、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とを締結する際(本締めする際)に、締結方向111とは異なる方向(隣り合う被接合部材10同士が近付く方向)112に、凸部31の対向面(第1の面)31aと凸部41の対向面(第1の面)41aとを相対的に近付けるガイド部55を備えている。本例では、接触面(第2の面)41bがガイド部55を兼ねており、接触面41bが接触面(第2の面)31bを滑動させるガイド部55として機能し、対向面31aが隙間52を埋めるように対向面41aに近付く。
この接合ユニット1によれば、一組の被接合部材(第1の部材)10の複数の凸部(第1の部分)31のそれぞれと、一組の接合部材(第2の部材)20の複数の凸部(第2の部分)41のそれぞれとが、交互に噛み合うように配置されている。このため、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とは、被接合部材10の凸部31が、接合部材20の隣り合う凸部41の間に形成される凹部42に嵌り込み、接合部材20の凸部41が、被接合部材10の隣り合う凸部31の間に形成される凹部32に嵌り込み、複数の凸部31、41同士が交互に噛み合い嵌合された状態で、締結方向111に締結される。したがって、両部材の嵌合接合部12、21の剛性を向上できる。さらに、被接合部材10に発生した引張力に対して嵌合接合部12、21のすべりも抑制できる。なお、凹部42は、凸部31よりも僅かに大きく、凹部32は、凸部41よりも僅かに大きい。
さらに、この接合ユニット1によれば、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束された状態で、複数の凸部41が、複数の凸部31に対してそれぞれ隙間52を隔てて配置されており、上記変位が拘束された状態から、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とを締結(本締め)することにより、接触面41bが接触面31bを滑動させるガイド部55として機能し、対向面31aが隙間52を埋めるように対向面41aに近付く。すなわち、対向面31aと対向面41aとは、上記変位が拘束された状態を脱して、隣り合う被接合部材10同士が近付く方向112に引き寄せられる。このため、被接合部材10同士が接触する対向面11に向けて、被接合部材10同士が圧縮されることにより、上記変位の拘束に逆らう力(プレストレス)を発生させることができる。したがって、隣り合う一組の被接合部材(第1の部材)10と一組の接合部材(第2の部材)20とを締結する際に、部材間にプレストレスが導入されるため、部材同士の接合強度および剛性を向上できる。
さらに、この接合ユニット1によれば、ボルト61およびナット62により本締めする際に、ボルト61に張力が導入されると、接触面41bをガイドに、くさび効果により接触面31b、41bの接合部50を介して、両部材10、20にプレストレスが導入される。このため、接触面31b、41b同士の接触角(仰角)θと、接触面31b、41bの静止摩擦係数とを制御することにより、締結方向111に働くボルト61のボルト張力と、被接合部材10同士が近付く方向(締結方向111に直交する方向)112に働くプレストレス(接触力)とを調整できる。たとえば、接合部50に同じ大きさのプレストレスが作用した場合、ボルト張力は、接触面31b、41b同士の接触角θを大きくすると小さくなり、接触面31b、41bの静止摩擦係数を大きくすると小さくなる。また、接合部50に同じ大きさのボルト張力が作用した場合、プレストレスは、接触面31b、41b同士の接触角θを大きくすると大きくなり、接触面31b、41bの静止摩擦係数を大きくすると小さくなる。したがって、接合部50の接触角θおよび静止摩擦係数を制御することにより、所望のボルト張力およびプレストレスを発現させることができる。
図2に、第2の実施形態に係る接合ユニット2を側面図により示している。
接合ユニット2は、隙間51を隔てて隣り合うように配置された一組の第1の部材(被接合部材)10と、一組の被接合部材10に締結される一組の第2の部材(接合部材)20と、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とを締結する第1の締結ユニット60とを含む。なお、以降の実施形態において、第1の実施形態と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する。
本例では、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とが締結される前において、一方の被接合部材10aの対向面11と他方の被接合部材10bの対向面11とが隙間51を隔てて配置されており、一組の被接合部材10が接合対象物80に拘束されることにより、一組の被接合部材10同士が近付く方向112への変位が拘束される。したがって、一組の被接合部材10が接合対象物80に拘束された状態で、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束される。
この接合ユニット2によれば、上記変位が拘束された状態から、隣り合う一組の被接合部材10と一組の接合部材20とを締結することにより、対向面31aと対向面41aとが、上記変位が拘束された状態を脱して、隣り合う被接合部材10同士が近付く方向112に引き寄せられる。このため、被接合部材10同士が近付く方向112に向けて、被接合部材10同士が引延ばされることにより、プレストレスを発生させることができる。したがって、隣り合う一組の被接合部材(第1の部材)10と一組の接合部材(第2の部材)20とを締結する際に、部材間にプレストレスが導入されるため、部材同士の接合強度および剛性を向上できる。
図3に、第3の実施形態に係る接合ユニット3を備えた建設物100を斜視図により示している。
建設物(建築構造物)100は、接合対象物(柱)80と、柱80を囲むように柱80に対して平面視十字型に配置された4つの梁90と、柱80と4つの梁90とを接合する上下一組の接合ユニット(外ダイヤフラム)3とを備えている。なお、上下とは、柱80の軸方向(柱80の延びる方向)89における上下方向をいう。以降の実施形態においても同様である。
柱80は、四角形鋼管柱(角柱)であり、4つの角部81と、隣り合う角部81同士を繋ぐ4つの側面(柱側面)82とを含む。梁90は、4つの柱側面82a〜82dのそれぞれに対して外ダイヤフラム3を介して接合されたH形鋼梁であり、平行に配置された上下一組のフランジ部91と、上側のフランジ部91aと下側のフランジ部91bとを繋ぐウェブ部92とを含む。
外ダイヤフラム(接合ユニット)3は、4つの柱側面82a〜82dに対して4つの梁90a〜90dをそれぞれ接続する4つの第1の部材(分割ダイヤフラム)10と、隣り合う分割ダイヤフラム10同士をそれぞれ接合する上下一組の4つの第2の部材(接合部材)20とを含む。上下一組の接合部材20は、隣り合う一組の梁90の入隅部99で、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10を、角柱80の軸方向89に沿う方向(角柱80に沿う方向)111の両側(上下)から挟むように配置されている。
外ダイヤフラム3は、さらに、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とを締結する第1の締結ユニット60と、分割ダイヤフラム10と梁90とを締結する第2の締結ユニット70とを含む。第1の締結ユニット60は、ボルト61と、ナット62とを含む。第2の締結ユニット70は、ボルト71と、ナット72とを含む。
分割ダイヤフラム(第1の部材)10は、鋳鉄製の板状部材であり、1つの柱側面82に接触可能な平面状の接触可能面(柱接触面)11と、隣り合う入隅部99にそれぞれ配置され、上下一組の接合部材20にそれぞれ嵌合して接合される嵌合接合部12と、嵌合接合部12を板厚方向にそれぞれ貫通するボルト61挿入用の2つの締結孔13と、梁90のフランジ部91を接続する梁フランジ接続部14と、梁フランジ接続部14を板厚方向に貫通するボルト71挿入用の6つの締結孔15とを含む。
接合部材(第2の部材)20は、全体が平面視十字型(クロス型)に形成された鋳鉄製の板状部材であり、隣り合う入隅部99のそれぞれで分割ダイヤフラム10の嵌合接合部12に対して嵌合して接合される嵌合接合部21と、嵌合接合部21を板厚方向に貫通するボルト61挿入用の4つの締結孔22とを含む。
たとえば、特開2000−110236号公報に開示された接合構造においては、隣接する梁フランジ接合用金物同士が、梁に平行なフランジ固着用板部に対して垂直に立ち上がった延伸板部において柱の軸方向に直交する方向(柱に直交する方向)に接合されるため、梁に引張力が発生した場合に、梁に対して垂直な延伸板部に応力が集中しやすい。
これに対し、この外ダイヤフラム3によれば、各入隅部99において、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とが、分割ダイヤフラム10の締結孔13と接合部材20の締結孔22とを介して、ボルト61およびナット62により角柱80に沿う方向111に締結される。このため、特開2000−110236号公報のように、隣接する梁フランジ接合用金物同士を、延伸板部において柱に直交する方向に締結するために、フランジ固着用板部に対して垂直に立ち上がった延伸板部を設ける必要がない。したがって、応力集中の軽減に有効な外ダイヤフラム3を提供できる。
図4に、外ダイヤフラム3の分割ダイヤフラム10および接合部材20を分解した様子を斜視図により示している。
分割ダイヤフラム10の嵌合接合部12は、柱接触面11に平行な方向(第1の方向)101に配置される第1の嵌合接合部12aと、第1の方向101と入隅部99で直交する方向(第2の方向)102に配置される第2の嵌合接合部12bとを含む。嵌合接合部12は、平面視L字型に配置されており、ボルト61挿入用の2つの締結孔13は、嵌合接合部12a、12bのそれぞれに1つずつ配置されている。
第1の嵌合接合部12aは、第1の方向101に沿って一列に並ぶ複数の第1の部分(凸部)31を含む。第2の嵌合接合部12bは、第2の方向102に沿って一列に並ぶ複数の第1の部分(凸部)31を含む。複数の凸部31は、締結方向111の両側に配置されている。
隣り合う一組の分割ダイヤフラム10は、上下一組の接合部材20と締結される前(たとえば仮締め状態)において、一方の分割ダイヤフラム10aの柱接触面11が柱側面82aに接触し、他方の分割ダイヤフラム10bの柱接触面11が柱側面82bに接触した状態で、隙間51を隔てて配置される。このため、一方の分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12と他方の分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12とは、入隅部99において隙間51を隔てて対向配置される。したがって、分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12aと分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12bとが、隙間51を隔てて同方向に配置され、分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12bと分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12aとが、隙間51を隔てて同方向に配置される。
接合部材20の嵌合接合部21は、分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12aに対して嵌合可能に配置された第1の嵌合接合部21aと、分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12aに対して嵌合可能に配置された第2の嵌合接合部21bと、分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12bに対して嵌合可能に配置された第3の嵌合接合部21cと、分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12bとに対して嵌合可能に配置された第4の嵌合接合部21dとを含む。嵌合接合部21は、各嵌合接合部21a〜21dが四方に張り出すことにより平面視十字型に配置されており、ボルト61挿入用の4つの締結孔22は、嵌合接合部21a〜21dのそれぞれに1つずつ配置されている。
嵌合接合部21aは、分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12aに嵌合される際に、嵌合接合部12aの複数の凸部31に対して、それぞれ互い違いに噛み合うように配置された複数の第2の部分(凸部)41を含む。嵌合接合部21bは、分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12aに嵌合される際に、嵌合接合部12aの複数の凸部31に対して、それぞれ互い違いに噛み合うように配置された複数の第2の部分(凸部)41を含む。嵌合接合部21cは、分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12bに嵌合される際に、嵌合接合部12bの複数の凸部31に対して、それぞれ互い違いに噛み合うように配置された複数の第2の部分(凸部)41を含む。嵌合接合部21dは、分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12bに嵌合される際に、嵌合接合部12bの複数の凸部31に対して、それぞれ互い違いに噛み合うように配置された複数の第2の部分(凸部)41を含む。
図5に、外ダイヤフラム3を柱側面82に対向する方向から見た側面図により示している。なお、図5(a)は、外ダイヤフラム3を柱側面82aに対向する方向から見た側面図であり、図5(b)は、外ダイヤフラム3を柱側面82bに対向する方向から見た側面図である。
本例では、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とが締結される前(たとえば仮締め状態)において、一組の分割ダイヤフラム10同士が隙間51を隔てて配置されており、一組の分割ダイヤフラム10の複数の凸部31のそれぞれに対して、上下一組の接合部材20の複数の凸部41のそれぞれを交互に噛み合わせることにより、一組の分割ダイヤフラム10同士が近付く方向112への変位が拘束される。したがって、一方の分割ダイヤフラム10aの柱接触面11が柱側面82aに接触するとともに、他方の分割ダイヤフラム10bの柱接触面11が柱側面82bに接触し、一組の分割ダイヤフラム10の複数の凸部31と上下一組の接合部材20の複数の凸部41とがそれぞれ交互に噛み合わされた状態で、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束される。
図5に示すように、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束された状態で、接合部材(第2の部材)20の複数の凸部(第2の部分)41は、分割ダイヤフラム(第1の部材)10の複数の凸部(第1の部分)31に対してそれぞれ隙間52を隔てて配置される。
分割ダイヤフラム10の凸部31は、柱接触面11に平行な第1の方向101に対して平面視90度傾いた方向(紙面を垂直に貫く方向)に延びる頂部31cと、隙間51の側を向き頂部31cに繋がる第1の面31aと、第1の面31aの逆側を向き頂部31cに繋がる第2の面31bとを含む。なお、凸部31の頂部31cは、第1の方向101に対して平面視90度傾いた方向に延びるものに限定されず、たとえば平面視45度傾いた方向に延びるものであってもよい。凸部31の第2の面31bは、第1の方向101に対する仰角θが約45度で頂部31cに繋がるように設計されている。
接合部材20の凸部41は、分割ダイヤフラム10の凸部31の第1の面31aに対して隙間52を隔てて対向する第1の面(対向面)41aと、対向面41aの逆側(隙間51の側)を向き凸部31の第2の面31bに面接触する第2の面(接触面)41bとを含む。
外ダイヤフラム3は、さらに、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束された状態から、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とを締結する際(本締めする際)に、締結方向(角柱80に沿う方向)111とは異なる方向(隣り合う分割ダイヤフラム10同士が近付く方向)112に、凸部31の対向面(第1の面)31aと凸部41の対向面(第1の面)41aとを相対的に近付けるガイド部55を備えている。本例では、接触面(第2の面)41bがガイド部55を兼ねており、接触面41bが接触面(第2の面)31bを滑動させるガイド部55として機能し、対向面31aが隙間52を埋めるように対向面41aに近付く。
この外ダイヤフラム3によれば、一組の分割ダイヤフラム(第1の部材)10の複数の凸部(第1の部分)31のそれぞれと、上下一組の接合部材(第2の部材)20の複数の凸部(第2の部分)41のそれぞれとが、交互に噛み合うように配置されている。このため、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とは、分割ダイヤフラム10の凸部31が、接合部材20の隣り合う凸部41の間に形成される凹部42に嵌り込み、接合部材20の凸部41が、分割ダイヤフラム10の隣り合う凸部31の間に形成される凹部32に嵌り込み、複数の凸部31、41同士が交互に噛み合い嵌合された状態で、角柱80に沿う方向111に締結される。したがって、両部材の嵌合接合部12、21の剛性を向上できる。さらに、梁90に発生した引張力に対して嵌合接合部12、21のすべりも抑制できる。
さらに、この外ダイヤフラム3によれば、複数の凸部31に対する複数の凸部41の相対的な変位が拘束された状態で、複数の凸部41が、複数の凸部31に対してそれぞれ隙間52を隔てて配置されており、上記変位が拘束された状態から、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とを締結(本締め)することにより、接触面41bが接触面31bを滑動させるガイド部55として機能し、対向面31aが隙間52を埋めるように対向面41aに近付く。すなわち、対向面31aと対向面41aとは、上記変位が拘束された状態を脱して、隣り合う分割ダイヤフラム10同士が近付く方向112に引き寄せられる。このため、分割ダイヤフラム10同士が近付く方向112に向けて、分割ダイヤフラム10同士が引延ばされることにより、上記変位の拘束に逆らう力(プレストレス)を発生させることができる。したがって、隣り合う一組の分割ダイヤフラム(第1の部材)10と上下一組の接合部材(第2の部材)20とを締結する際に、部材間にプレストレスが導入されるため、部材同士の接合強度および剛性を向上できる。
図6に、外ダイヤフラム3を備えた建築構造物100を平面図により示している。
この外ダイヤフラム3によれば、全ての入隅部99a〜99dにおいて、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とを締結することにより、一方の分割ダイヤフラム10aと他方の分割ダイヤフラム10bとが、隙間51を埋めるように引き寄せられる。このため、全ての分割ダイヤフラム10a〜10dの平面状の柱接触面11により四角形状に形成される外ダイヤフラム3の内径3aが縮小される。さらに、隣り合う分割ダイヤフラム10同士が引き寄せられる際に発生するプレストレスが、各柱接触面11を介して角柱80に伝達される。このため、各柱接触面11が各柱側面82に対して強く押し当てられることにより、外ダイヤフラム3が角柱80に対して強固に締め付けられる。したがって、角柱80と梁90との接合強度を向上させた建築構造物100を提供できる。
さらに、この外ダイヤフラム3によれば、全ての入隅部99a〜99dにおいて、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とを締結することにより、一方の分割ダイヤフラム10aと他方の分割ダイヤフラム10bとが、隙間51を埋めるように引き寄せられる結果、分割ダイヤフラム10同士の間隔(隙間51の距離)が変わる。このため、締結力を制御することにより、隣り合う分割ダイヤフラム10同士を所望の位置関係に配置できる。したがって、外ダイヤフラム3を介して梁90の位置決め精度も向上できる。
図7に、接合部材20の複数の凸部41の配列を模式図により示している。なお、図7(a)は、本例の複数の凸部41の配列を示す図であり、図7(b)は、変形例の複数の凸部41Aの配列を示す図である。
図7(a)に示すように、本例の複数の凸部41は、柱接触面11に平行な第1の方向101に対して平面視90度傾いた方向に延びる頂部31cを含むタイプの複数の凸部31(図4、図5参照)に対して、それぞれ互い違いに噛み合うように配置されているが、複数の凸部41の配列はこれに限定されず、たとえば、図7(b)に示すように、複数の凸部41Aは、柱接触面11に平行な第1の方向101に対して平面視45度傾いた方向に延びる頂部31cを含むタイプの複数の凸部31A(不図示)に対して、それぞれ互い違いに噛み合うように配置されていてもよい。
図8〜図10に、外ダイヤフラム3を角柱80に対して接合する様子を斜視図により示している。
まず、図8(a)に示す角柱80の隣り合う柱側面82a、82bに対して、図8(b)に示すように、分割ダイヤフラム10aの柱接触面11を柱側面82aに当て、分割ダイヤフラム10bの柱接触面11を柱側面82bに当てた状態で、一組の分割ダイヤフラム10が入隅部99aで隙間51を隔てて隣り合うように配置する。
次に、図9(a)に示すように、上下一組の接合部材20を、隣り合う分割ダイヤフラム10a、10bを上下から挟むように配置し、図9(b)に示すように、ボルト61およびナット62により、隣り合う分割ダイヤフラム10a、10bと上下一組の接合部材20とを仮締めする。
次に、図10(a)に示すように、分割ダイヤフラム10cの柱接触面11を柱側面82cに当てた状態で、分割ダイヤフラム10bと分割ダイヤフラム10cとが入隅部99bで隙間51を隔てて隣り合うように配置し、ボルト61およびナット62により、隣り合う分割ダイヤフラム10b、10cと上下一組の接合部材20とを仮締めする。次に、図10(b)に示すように、分割ダイヤフラム10dの柱接触面11を柱側面82dに当てた状態で、分割ダイヤフラム10dと分割ダイヤフラム10c(10a)とが入隅部99c(99d)で隙間51を隔てて隣り合うように配置し、ボルト61およびナット62により、隣り合う分割ダイヤフラム10c(10a)および10dと上下一組の接合部材20とを仮締めする。これにより、全ての入隅部99a〜99dにおいて、分割ダイヤフラム10の複数の凸部31に対する、接合部材20の複数の凸部41の相対的な変位が拘束される。
次に、全ての入隅部99a〜99dにおいて、上記変位が拘束された状態から、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とを角柱80に沿う方向111に本締め(締結)することにより、隣り合う分割ダイヤフラム10同士が隙間51を埋めるように引き寄せられる。このため、全ての分割ダイヤフラム10a〜10dの柱接触面11により形成される外ダイヤフラム3の内径3aが縮小される。さらに、隣り合う分割ダイヤフラム10同士が引き寄せられる際に発生するプレストレスが、各柱接触面11を介して角柱80に伝達される。このため、各柱接触面11が柱側面82に対して強く押し当てられることにより、外ダイヤフラム3が角柱80に対して強固に締め付けられる。
図11に、第1の変形例に係る外ダイヤフラム3Aを備えた建築構造物100Aを平面図により示している。
建築構造物100Aは、角柱(側柱)80と、側柱80に対して平面視T字型に配置された3つの梁90と、側柱80と3つの梁90とを接合する上下一組の外ダイヤフラム3Aとを備えている。外ダイヤフラム3Aは、3つの柱側面82a、82b、82dに対して3つの梁90a、90b、90dをそれぞれ接続する3つの分割ダイヤフラム10と、梁90を接続しない柱側面82cに対して配置される1つの分割ダイヤフラム10Aと、隣り合う分割ダイヤフラム10同士をそれぞれ接合する上下一組の2つの接合部材20と、隣り合う分割ダイヤフラム10、10A同士をそれぞれ接合する上下一組の2つの接合部材20Aとを含む。
分割ダイヤフラム10Aは、分割ダイヤフラム10から梁フランジ接続部14を省略するとともに、分割ダイヤフラム10の嵌合接合部12から第2の嵌合接合部12bを省略したものである。接合部材20Aは、接合部材20の嵌合接合部21から第3の嵌合接合部21cおよび第4の嵌合接合部21dのいずれか一方を省略し、嵌合接合部21を平面視T字型に配置したものである。
この外ダイヤフラム3Aによれば、側柱80と、側柱80に対して平面視T字型に配置された3つの梁90との接合強度を向上させた建築構造物100Aを提供できる。
図12に、第2の変形例に係る外ダイヤフラム3Bを備えた建築構造物100Bを平面図により示している。
建築構造物100Bは、角柱(隅柱)80と、隅柱80に対して平面視L字型に配置された2つの梁90a、90bと、隅柱80と2つの梁90a、90bとを接合する上下一組の外ダイヤフラム3Bとを備えている。外ダイヤフラム3Bは、2つの柱側面82a、82bに対して2つの梁90a、90bをそれぞれ接続する2つの分割ダイヤフラム10と、梁90を接続しない柱側面82c、82dに対してそれぞれ配置される2つの分割ダイヤフラム10Aと、隣り合う分割ダイヤフラム10同士を接合する上下一組の1つの接合部材20と、隣り合う分割ダイヤフラム10、10A同士をそれぞれ接合する上下一組の2つの接合部材20Aと、隣り合う分割ダイヤフラム10A同士を接合する上下一組の1つの接合部材20Bとを含む。
接合部材20Bは、接合部材20の嵌合接合部21から第3の嵌合接合部21cおよび第4の嵌合接合部21dを省略し、嵌合接合部21を平面視L字型に配置したものである。
この外ダイヤフラム3Bによれば、隅柱80と、隅柱80に対して平面視L字型に配置された2つの梁90との接合強度を向上させた建築構造物100Bを提供できる。
図13に、第3の変形例に係る外ダイヤフラム3Cを備えた建築構造物100Cを柱側面82aに対向する方向から見た側面図により示している。
建築構造物100Cは、角柱80と、角柱80に対して平面視I字型に配置された梁成(高さ)の異なる2つの梁90A、90Bと、角柱80と梁90A、90Bとを接合する外ダイヤフラム3Cとを備えている。
外ダイヤフラム3Cは、柱側面82bに対して高梁成の梁90Aを接続する分割ダイヤフラム10と、梁90Aを接続しない柱側面82a、82c、82dに対してそれぞれ配置される3つの分割ダイヤフラム10Aと、隣り合う分割ダイヤフラム10、10A同士をそれぞれ接合する上下一組の2つの接合部材20Aと、隣り合う分割ダイヤフラム10A同士をそれぞれ接合する上下一組の2つの接合部材20Bとを含み、さらに、柱側面82dに対して低梁成の梁90Bを接続する分割ダイヤフラム10と、梁90Bを接続しない柱側面82a、82b、82cに対してそれぞれ配置される3つの分割ダイヤフラム10Aと、隣り合う分割ダイヤフラム10、10A同士をそれぞれ接合する上下一組の2つの接合部材20Aと、隣り合う分割ダイヤフラム10A同士をそれぞれ接合する上下一組の2つの接合部材20Bとを含む。
この外ダイヤフラム3Cによれば、低梁成の梁90Bを柱側面82dに接続する際に、柱側面82dに対向する柱側面82bに対して分割ダイヤフラム10Aが配置される。分割ダイヤフラム10Aは、分割ダイヤフラム10から梁フランジ接続部14が省略されている。このため、分割ダイヤフラム10Aと高梁成の梁90Aとの干渉を防止できる。したがって、角柱80と、角柱80に対して平面視I字型に配置された梁成の異なる2つの梁90A、90Bとの接合強度を向上させた建築構造物100Cを提供できる。
図14に、第4の実施形態に係る接合ユニット4を備えた建設物200を斜視図により示している。
建設物(建築構造物)200は、接合対象物(角柱)80と、角柱80に対して平面視十字型に配置された4つの梁90(不図示)と、角柱80と4つの梁90とを接合する上下一組の接合ユニット(外ダイヤフラム)4とを備えている。外ダイヤフラム(接合ユニット)4は、4つの第1の部材(分割ダイヤフラム)10と、上下一組の4つの第2の部材(接合部材)20とを含む。
分割ダイヤフラム(第1の部材)10は、柱接触面11と、嵌合接合部12と、嵌合接合部12を板厚方向に半円状に貫通するボルト61挿入用の半締結孔13Aと、梁フランジ接続部14と、6つの締結孔15とを含む。本例では、一方の分割ダイヤフラム10aの嵌合接合部12と他方の分割ダイヤフラム10bの嵌合接合部12とが、入隅部99において隙間51を隔てて対向配置し、半円状の半締結孔13A同士が組み合わされることにより、1つの締結孔13が形成される。
接合部材(第2の部材)20は、嵌合接合部21と、嵌合接合部21の中央を板厚方向に貫通するボルト61挿入用の1つの締結孔22とを含む。
この外ダイヤフラム4によれば、各入隅部99において、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とが、分割ダイヤフラム10の1つの締結孔13と接合部材20の1つの締結孔22とを介して、ボルト61およびナット62により角柱80に沿う方向111に締結される。このため、隣り合う分割ダイヤフラム10同士を、締結孔13、22を介して1箇所で締結できる。したがって、部材同士を締結する際に施工性を向上できる。
図15に、第5の実施形態に係る接合ユニット5を備えた建設物300を斜視図により示している。図16に、入隅部99における接合ユニット5を側面図により示している。
建設物(建築構造物)300は、接合対象物(柱)80と、柱80に対して平面視十字型に配置された4つの梁90と、柱80と4つの梁90とを接合する上下一組の接合ユニット(外ダイヤフラム)5とを備えている。本例の柱80は、円形鋼管柱(円柱)である。外ダイヤフラム(接合ユニット)5は、4つの第1の部材(分割ダイヤフラム)10と、上下一組の4つの第2の部材(接合部材)20とを含む。
分割ダイヤフラム(第1の部材)10は、柱側面82に接触する曲面状の柱接触面11と、嵌合接合部12と、半締結孔13Aと、梁フランジ接続部14と、6つの締結孔15とを含む。本例の分割ダイヤフラム10は、第1の実施形態に係る分割ダイヤフラム10の嵌合接合部12から第2の嵌合接合部12bを省略したものである。
接合部材(第2の部材)20は、嵌合接合部21と、嵌合接合部21の中央を板厚方向に貫通するボルト61挿入用の1つの締結孔22とを含む。本例の接合部材20は、第1の実施形態に係る接合部材20の嵌合接合部21から第3の嵌合接合部21cおよび第4の嵌合接合部21dを省略し、嵌合接合部21を平面視I字型に配置したものである。
本例の凸部31の第2の面31bは、第1の方向101に対する仰角θが約60度で頂部31cに繋がるように設計されている。このため、第3の実施形態に係る外ダイヤフラム3と比較して、接触面31b、41bの接触角θが大きくなり、部材間に導入されるプレストレスが増強され、部材同士の接合強度および剛性を一層向上できるため、ボルト61のボルト張力を小さくでき、各入隅部99におけるボルト61の本数も4本から1本に減らすことができる。
この外ダイヤフラム5によれば、全ての入隅部99a〜99dにおいて、隣り合う一組の分割ダイヤフラム10と上下一組の接合部材20とを締結することにより、一方の分割ダイヤフラム10aと他方の分割ダイヤフラム10bとが、隙間51を埋めるように引き寄せられる。このため、全ての分割ダイヤフラム10a〜10dの曲面状の柱接触面11により円形状に形成される外ダイヤフラム5の内径5aが縮小される。さらに、隣り合う分割ダイヤフラム10同士が引き寄せられる際に発生するプレストレスが、各柱接触面11を介して円柱80に伝達される。このため、各柱接触面11が各柱側面82に対して強く押し当てられることにより、外ダイヤフラム5が円柱80に対して強固に締め付けられる。したがって、円柱80と梁90との接合強度を向上させた建築構造物300を提供できる。
なお、本発明はこれらの実施形態および変形例に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。第1の部材に対する第2の部分の相対的な変位は、第1の部材および第2の部材が互いに接触することにより拘束されていてもよく、第1の部材および第2の部材の少なくとも一方が接合対象物に接触すること(または拘束されること)により拘束されていてもよい。
また、接合対象物が柱の場合、凸部31に対する凸部41の相対的な変位は、複数の第1の部材(分割ダイヤフラム)10の柱接触面11の少なくともいずれかが柱側面82に接触することにより拘束されていてもよく、複数の第2の部材(接合部材)20の少なくともいずれかが柱側面82に接触することにより拘束されていてもよく、第1の部材10および第2の部材20の両方が柱側面82に接触することにより拘束されていてもよい。
また、接合対象物は、柱に限定されない。すなわち、接合ユニットは、柱と梁とを接合する外ダイヤフラムとしての用途に限定されない。たとえば、接合ユニットは、橋梁の主桁(第1の部材)同士を接合する用途や、トンネルの老朽化した覆工コンクリートの脱落防止用パネル(第1の部材)同士を接合する用途など、部材同士を接合する多種多様な用途に適用できる。