JP6950648B2 - 連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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本発明は、凝固シェルの不均一冷却に起因する鋳片表面割れを防止するとともに、鋳型寿命が従来技術よりも向上した連続鋳造用鋳型及び該連続鋳造用鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法に関する。
鋼の連続鋳造では、鋳型内に注入された溶鋼は水冷式鋳型によって冷却され、鋳型との接触面で溶鋼が凝固して凝固層(「凝固シェル」という)が生成される。凝固シェルが、鋳型下流側に設置した水スプレーや気水スプレーによって冷却されながら、内部の未凝固層とともに鋳型下方に連続的に引き抜かれ、水スプレーや気水スプレーによる冷却によって中心部まで凝固して鋳片が製造されている。
鋳型での溶鋼の冷却が不均一になると、凝固シェルの厚みが鋳片の鋳造方向及び鋳片幅方向で不均一となる。凝固シェルには、その収縮や変形に起因する応力が作用する。凝固初期においては、応力が凝固シェルの薄肉部に集中し、応力によって凝固シェルの表面に割れが発生する。この割れは、その後の熱応力や連続鋳造機のロールによる曲げ応力及び矯正応力などの外力により拡大し、大きな表面割れとなる。表面割れは、次工程の圧延工程において鋼製品の表面欠陥となる。従って、鋼製品の表面欠陥の発生を防止するためには、鋳片表面を溶削するまたは研削して、鋳片段階でその表面割れを除去することが必要となる。
鋳型内の不均一凝固は、特に、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の鋼(「中炭素鋼」という)で発生しやすい。中炭素鋼では凝固時に包晶反応が起こる。鋳型内の不均一凝固は、包晶反応によるδ鉄(フェライト)からγ鉄(オーステナイト)への変態時の体積収縮による変態応力に起因すると考えられている。つまり、変態応力に起因する歪みによって凝固シェルが変形し、この変形により凝固シェルが鋳型内壁面から離れる。鋳型内壁面から離れた部位は鋳型による冷却が低下し、この鋳型内壁面から離れた部位の凝固シェル厚みが薄くなる。凝固シェル厚みが薄くなると、この部分に上記応力が集中し、表面割れが発生すると考えられている。
包晶反応を伴う鋼種の鋳片の表面割れを防止する目的として、特許文献1には、鋳型本体の内壁面に、鋳型本体の銅合金よりも熱伝導率が異なる部位であって、それぞれが独立して複数形成されている異種物質充填部を有する連続鋳造用鋳型が提案されている。特許文献1によれば、この鋳型を用いることで、凝固初期の凝固シェルの不均一冷却による表面割れ及び包晶反応を伴う中炭素鋼でのδ鉄からγ鉄への変態に起因する凝固シェル厚みが不均一であることによる表面割れを効果的に防止できる旨が記載されている。
特許文献1では、連続鋳造用鋳型に、熱履歴による鋳型表面の割れを抑制することを目的として異種物質充填部を覆う鍍金層を鋳型の内壁面に設けることが好ましいとされている。これにより、鋳型の長寿命化を図っている。
特開2017−39165号公報
特許文献1に記載されているように異種物質充填部を覆う鍍金層を鋳型の内壁面に設けることで、異種物質充填部を有する連続鋳造用鋳型の寿命は向上する。但し、鍍金層で覆ったとしても、異種物質充填部を有する鋳型は、それを有しない通常の鋳型よりも鋳型表面の割れが生じ易い。異種物質が鋳型内壁に埋め込まれた部位を複数有する型の鋳型であっても、使用寿命を通常の鋳型に近づける技術が希求されるところである。
本発明は、上記の事情を鑑みて完成されたもので、異種物質が装入された部位を鋳型の内壁に複数形成して、包晶反応を伴う鋼種の鋳片の表面割れを防止可能とし、且つ、より長寿命化が図られた連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。更に、本発明は、この連続鋳造用鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法を提供することも目的とする。
従来の鋳型では、鋳型本体の内壁面に形成された複数の溝に、熱伝導率が鋳型本体より低い異種物質を充填することで異種物質充填部が形成されている。本発明者らは、異種物質を溝全体に入れなくても、包晶反応を伴う鋼種の鋳片表面割れを防止することが可能ではないかと考えた。更に、長寿命化を図ることが可能な鋳型の構成を鋭意検討し、本発明の完成に至った。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)鋼の連続鋳造用鋳型であって、銅合金製の鋳型本体と、該鋳型本体の内壁面のメニスカスを含む領域に形成された溝に、前記鋳型本体とは異なる熱伝導率の異種物質が装入された複数の異種物質装入部と、該複数の異種物質装入部を覆うとともに前記溝に装入されている保護材と、該保護材を覆う保護層と、を有する連続鋳造用鋳型。
(2)前記鋳型本体の内壁面における前記複数の異種物質装入部が設けられた上端から下端までの領域で、鋳型の内壁から外壁に向かう前記内壁面での熱流束が周期的に変化する(1)に記載の連続鋳造用鋳型。
(3)前記溝は円形凹溝または擬似円形凹溝である(1)または(2)に記載の連続鋳造用鋳型。
(4)前記複数の異種物質装入部は互いに独立している(1)〜(3)のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型。
(5)前記保護層は、前記鋳型本体の内壁面に溶射あるいは鍍金処理で形成される(1)〜(4)のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用いて鋳片を鋳造する鋼の連続鋳造方法。
本発明に係る連続鋳造用鋳型は、鋳型本体の内壁に形成された溝の一部に異種物質を装入して異種物質装入部を形成し、該異種物質装入部を覆う保護材を溝の残部に装入した構成となっている。この構成により、鋳型本体の部位である溝の周縁は、異種物質ではなく保護材と直接的に接触し、異種物質と溝の周縁とは直接的に接触していないことになる。保護材と鋳型本体との熱膨張率が近ければ、高温状況下で生じる保護材と鋳型本体との膨張の差に起因した熱応力が溝の周縁部位に集中することを防ぐことができる。結果的に、包晶反応を伴う鋼種の鋳片表面割れを防止し且つ鋳型の長寿命化を図ることが可能となる。
本発明の連続鋳造用鋳型の一部を構成する鋳型長辺を内壁面側から視た図である。 図1に示す異種物質装入部が形成された鋳型長辺の部位を示す図である。 図1に示す鋳型長辺の三つの断面における熱抵抗の変化を概念的に示す図である。 従来の連続鋳造用鋳型の一部を構成する鋳型長辺を内壁面側から視た図である。 図4に示す異種物質充填部が形成された鋳型長辺の部位を示す図である。
従来の連続鋳造用鋳型では、鋳型本体の内壁面に形成された複数の溝に、熱伝導率が鋳型本体とは異なる異種物質を充填することで異種物質充填部を形成し、該異種物質充填部を覆う鍍金層を鋳型本体の内壁面に設ける構成となっている。一方で、本発明の連続鋳造用鋳型では、鋳型本体の内壁に形成された複数の溝に異種物質を充填せずに、各溝の一部に異種物質を装入し、該異種物質を覆うように、鋳型本体の材料に類似した保護材を溝の残部に装入して、保護材を覆う保護層を鋳型本体の内壁面に設けた構成となっている。
本発明の鋳型を説明する前に、従来の鋳型の構成を説明する。鋳型本体は、通常、冷却水による冷却効果を高めるべく熱伝導度が高い銅合金製である。また、スラブ鋳片を鋳造するための鋳型本体は一対の鋳型長辺と一対の鋳型短辺とを組み合わせて構成される。
図4は、鋳型長辺を内壁面側から視た図であり、「メニスカス」とは、定常鋳造時の「鋳型内溶鋼湯面」を意味する。従来の連続鋳造用鋳型100において、鋳型長辺101の内壁面のメニスカスを含む領域に略円形の凹溝が複数設けられている。溝の各々には、鋳型本体とは熱伝導率が異なる異種物質が充填されて異種物質充填部103が複数形成されている。鋳型長辺101の内壁面には、異種物質充填部103を覆う鍍金層104を設けている。鍍金層104は、ニッケルまたはニッケルを含有する合金、例えば、ニッケル−コバルト合金(Ni−Co合金)やニッケル−クロム合金(Ni−Cr合金)などを鍍金処理や溶射処理することで形成され、これにより鋳型表面の割れを防止している。
図5は、図4に示す鋳型長辺の異種物質充填部が形成された部位の拡大図で、(A)は内壁面側から見た部位の図であり、(B)は(A)のBB線断面図である。異種物質充填部103は、鋳型長辺101の内壁面側にそれぞれ独立して加工された溝102に、鍍金手段や溶射手段などによって異種物質が充填されて形成されている。符号105は冷却水流路、符号106はバックプレートであり、これらは鋼の連続鋳造用鋳型でよく知られた部材である。
図5(B)に示すように、従来の鋳型本体では、溝102の周縁が異種物質充填部103及び鍍金層104に接触している。通常、周縁を構成する銅合金は、熱膨張率が異種物質及び鍍金層104とは相違するので、鋼の連続鋳造を行っている際の高温状況下で生じる鍍金層104や異種物質と銅合金との膨張の差に起因する熱応力が溝の周縁部位に集中しやすい。よって、鍍金層104を内壁に設けたとしても、特に周縁部位を起点とした鋳型の表面割れが発生し易い可能性があると推察される。
次に、本発明の連続鋳造用鋳型の構成の一例を説明する。本発明の鋳型は、銅合金製の鋳型本体と、該鋳型本体の内壁面のメニスカスを含む領域に形成された溝に、鋳型本体とは異なる熱伝導率の異種物質が装入された複数の異種物質装入部と、該複数の異種物質装入部を覆うとともに溝に装入されている保護材と、該保護材を覆う保護層と、を有する。
従来の鋳型本体と同様に、本発明に係る鋳型本体もまた一対の鋳型長辺と一対の鋳型短辺とを組み合わせて構成される。図1は鋳型長辺を内壁面側から視た図であり、図2は、図1に示す鋳型長辺の異種物質装入部が形成された部位の拡大図、(A)は内壁面側から見た部位の図であり、(B)は(A)のBB線断面図である。本発明の連続鋳造用鋳型10においても、図4及び5の場合と同様に、鋳型長辺1の内壁面のメニスカスを含む領域に、鋳型長辺1の内壁面側にそれぞれ独立して加工される溝2が複数設けられている。溝2が独立しているとは、複数の溝2の各々が連結しておらず互いに熱影響を受けないことを意味する。鋳型10の場合には異種物質を溝2に充填するのではなく、溝2の一部に異種物質を装入して異種物質装入部3を形成してあり、該異種物質装入部3を覆うように保護材7を溝2の残部に装入してある。次いで、鋳型の内壁面に、保護材7を覆う保護層4を設けている。保護層4は、鍍金層104と同様に、ニッケルまたはニッケルを含有する合金を鍍金処理や溶射処理することで形成できる。
図2(B)に示す通り、本発明に係る鋳型本体では溝2の周縁部位は保護材7に接触している。よって、保護材7が、鋳型本体の銅合金あるいはそれに熱膨張率が近い材料であれば、鋼の連続鋳造での高温状況下であっても、保護材7と銅合金との膨張差を抑え、従来の構成の鋳型本体では発生し易いと推察される、溝の周縁部位への熱応力の集中を抑えることができる。よって、保護材7は線膨張率が、鋳型本体の銅合金と10%の差の範囲内であることが好ましく、保護材7は鋳型本体の銅合金と同じであることが最も好ましい。この保護材7によって、周縁部位を起点とした鋳型の表面割れを抑えることができる。更には、保護層4による鋳型の表面割れの防止をより一層効果的に実現できる。
初期凝固への影響を勘案して、定常鋳造時のメニスカスの位置よりも距離Q離れた上方の位置から、メニスカスよりも距離R離れた下方の位置までの内壁面の領域には溝2を複数設けることが好ましい。距離Qは任意の値である。距離R(mm)は下記の[1]式から算出できる。
R=2×Vc×1000/60 [1]
ここで、Vcは、凝固シェルの引き抜き速度(m/分)である。
すなわち、距離Rは、凝固開始した後の鋳片(凝固シェル)が、異種物質装入部3が形成された領域を通過する時間に関係する。凝固開始後から少なくとも2秒間、鋳片は、異種物質装入部3が設置された領域内に滞在することが好ましく、鋳片が凝固開始後から少なくとも2秒間、異種物質装入部3が設置された領域に存在するためには、メニスカスよりも(1)式で求まる距離R以上下方に異種物質装入部3が設置されていることが好ましい。
凝固開始した後の鋳片が異種物質装入部3の設置された上端から下端までの領域内に滞在する時間を2秒以上確保することで、異種物質装入部3による、鋳型の内壁から外壁に向かう熱流束の周期的な変化による効果が十分に得られ、表面割れの発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時でも、鋳片表面割れの防止効果が得られる。但し、異種物質装入部3による熱流束の周期的な変化の効果を安定して得る上では、鋳片が異種物質装入部3の設置された領域を通過する時間として4秒以上を確保することがより好ましい。
異種物質装入部3が形成される領域の上端はメニスカスよりも上方である限り特に限定されない。従って、距離Qはゼロを超えた任意の値となる。但し、鋳造中にメニスカスは上下方向に変動するので、異種物質装入部3が形成される領域の上端が常にメニスカスよりも上方位置となるように、メニスカスよりも10mm程度上方位置まで、望ましくは20mm程度上方位置まで、異種物質装入部3を形成することが好ましい。なお、メニスカスの位置は、鋳型長辺1の上端から60〜150mm下方位置とするのが一般的であり、これに応じて異種物質装入部3の領域を決めればよい。
図1に示す通り、異種物質装入部3の鋳型長辺1の内壁面における形状は円形あるいは擬似円形であることが好ましく、よって、溝2は、円形凹溝または擬似円形凹溝であることが好ましい。擬似円形とは、例えば楕円形や、角部にRが形成された長方形など、角部を有していない形状を意味する。仮に、鋳型長辺1の表面に縦溝或いは格子溝を形成し、この溝に異種物質を装入する場合、異種物質と銅合金との境界面及び格子部の直交部において、異種物質と銅との熱歪差による応力が集中し、鋳型銅板表面に割れが発生し易くなるおそれがある。よって、溝2を円形凹溝または擬似円形凹溝とすることで、溝2に装入される異種物質と鋳型本体の銅合金との境界面を曲面状として、境界面に応力が集中しにくく、鋳型銅板表面に割れが発生しにくくできる。なお、図1及び図2に示す通り、異種物質装入部3の形状は円筒形であるが、円筒台形でもよいし、鋳型内壁側が平面で鋳型外壁側が球面となっているいわゆる半球型であってもよい。
次に、鋳型長辺の三箇所の位置における熱抵抗の変化を概念的に図3に示す。熱抵抗が鋳型よりも大きい異種物質装入部3を、メニスカスを含むメニスカス近傍の連続鋳造用鋳型の幅方向及び鋳造方向に複数設置することにより、メニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が規則的且つ周期的に増減する。これによって、メニスカス近傍、つまり、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型の内壁面への熱流束が規則的且つ周期的に増減する。この熱流束の規則的且つ周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態によって発生する応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなる。凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における表面割れの発生が防止される。なお、熱抵抗が鋳型長辺1よりも低くなる異種物質装入部3を設置しても、連続鋳造用鋳型の熱抵抗を規則的且つ周期的に増減させ得る。
異種物質は、鍍金手段や溶射手段などによって溝に装入することが好ましく、保護材7もまた鍍金処理や溶射処理で鋳型1の内壁面に形成する方が好ましい。異種物質装入部3や保護材7はこれらの形状をなす部材を溝2に嵌装することもできる。但しその場合、前記部材と鋳型1の境界や前記部材同士の境界に接触熱抵抗が生じ、前記の接触状態により熱抵抗が変動するので、異種物質を充填することで熱流束に与える周期的かつ規則的な変動量を見積もることが難しくなる。したがって異種物質装入部3や保護材7も鍍金処理や溶射処理で鋳型1の内壁面に形成する方が好ましい。
内壁面での熱流束の変化を確実に周期的なものとするべく、異種物質装入部3同士の間隔は同じであることが好ましい。また、鋳型本体の熱伝導率に対して熱伝導率が80%以下あるいは125%以上であることが好ましい。なお、物質の熱伝導率は雰囲気温度の変化に伴い変化する。よって、異種物質と鋳型本体と熱伝導率は、鋳型の製造時における室温(常温)時を基準とする。室温時において、異種物質の熱伝導率が鋳型本体に対して20%程度の差があれば、鋳型本体の内壁面での熱流束の規則的且つ周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態によって発生する応力や熱応力を低減させることが可能である。但し、前述の変態によって発生する応力などを低減させて、鋳片の表面割れを防ぐことが可能であればよいので、必ずしも、異種物質の熱伝導率が前述の範囲である必要はない。また、異種物質装入部3同士の間隔も必ずしも同じである必要はない。
鋳型本体の熱伝導率に対して熱伝導率が80%以下となる異種物質の例としては、鍍金や溶射のしやすいNi(熱伝導率:約90W/(m・K))及びNi合金(熱伝導率:約40〜90W/(m・K))を用いることができるし、鋳型本体や保護材7には銅合金(熱伝導率:約100〜398W/(m・K))、例えば高熱伝導タイプの鋳型(熱伝導率:約318W/(m・K)や電磁攪拌用の低熱伝導鋳型(熱伝導率:約119〜239W/(m・K))を用いることができる。但し、異種物質及び保護層4と保護材7及び鋳型本体には、Ni合金や銅合金以外の金属を使用可能である。鋳型本体としては、純銅(熱伝導率が398W/(m・K)程度)や前述の銅合金を使用してもよい。特に、鋳型内電磁攪拌を行う場合には、コイルからの溶鋼中への磁場強度を減衰させないために、銅以外の成分が数%加えられ、導電率が低くなった銅合金からなる鋳型を使用することとなり、銅合金の熱伝導率も純銅に比べて低下する。鋳型の用途に応じて、異種物質及び/または鋳型の材料を適宜選択して、異種物質と鋳型本体との熱伝導率を調整することが望ましい。
図示及び言及を省略してある鋳型短辺に、鋳型長辺と同様に内壁面に異種物質装入部を形成してもよい。但し、スラブ鋳片においては、その形状に起因して長辺面側の凝固シェルに応力集中が起こりやすく、長辺面側で表面割れが発生しやすい。よって、スラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型の鋳型長辺には、異種物質装入部を設置することが必要であるが、鋳型短辺には必ずしも異種物質装入部を設置する必要はない。
以上の通りに説明した連続鋳造用鋳型を用いて鋳片を鋳造する鋼の連続鋳造を行うことで、特に、溶鋼が中炭素鋼の場合には、鋳片表面割れを効果的に防止し且つ従来よりも長期間連続鋳造の操業を行うことができる。
異種物質が鋳型本体に埋め込まれていない通常の連続鋳造用鋳型を準備し、該鋳型を用いて鋼の連続鋳造の操業を行った(参考例)。参考例では、中炭素鋼(化学成分、C:0.05〜0.20質量%、Si:0.10〜0.30質量%、Mn:0.50〜1.20質量%、P:0.010〜0.030質量%、S:0.002〜0.010質量%、Al:0.020〜0.050質量%、残部Fe及びその他不可避的不純物)を、準備した鋳型に注入しつつ、鋳型を鋳造方向に振動させながら鋳型を冷却して凝固シェルを形成し、該凝固シェルを引き抜いて鋳片を鋳造した。1回のチャージで300トンの溶鋼を鋳型に注入した。引き抜き速度Vcを2.0(m/分)とした。
準備した連続鋳造用鋳型は、鋳型長辺の長さ2.1m、鋳型短辺の長さ0.22mからなる内面空間を有する鋳型本体を有している。鋳型本体を、室温で熱伝導率が約380(W/(m・K))となる銅で作製した。鋼の連続鋳造では、溶鋼に鋳型を注入するとともに、鋳型内の溶鋼上にモールドパウダーを投入して、鋳型の溶鋼の焦げ付きを防止している。モールドパウダーとして、塩基度(質量%CaO)/(質量%SiO)が1.25、1300℃での粘度が0.1Pa・秒のものを使用した。
操業では3000回の鋼の連続鋳造を行うことを目標とし、100回毎に鋳型長辺における表面割れを調査した。鋳型長辺の表面に割れがあるかを目視にて調査し、割れを確認できた場合には、連続鋳造をそこで中止することとした。また、1回の連続鋳造毎に、鋳片の表面割れを調査した。表面割れは、カラーチェックによる目視で調査し、鋳造方向に沿った縦割れ、鋳片幅方向に沿った横割れを確認した。
更には、図4及び図5に示す異種物質充填部103を有する連続鋳造用鋳型を準備し、その鋳型を用いて鋼の連続鋳造の操業を行った(比較例)。比較例の鋳型では、鋳型長辺に円形凹溝を複数形成し、その内部に鍍金手段を用いて異種物質としてニッケル合金(室温で熱伝導率:80(W/(m・K)))を充填し、異種物質充填部103を形成してある。鍍金層104の材料も異種物質と同じニッケル合金を用いた。
また、図1及び2に示す異種物質装入部3を有する連続鋳造用鋳型を準備し、その鋳型を用いて鋼の連続鋳造の操業を行った(本発明例)。本発明例の鋳型では、異種物質及び保護層4の材料としてニッケル合金(室温で熱伝導率:80(W/(m・K)))を用い、保護材7の材料として鋳型本体の材料と同じく、室温で熱伝導率が約380(W/(m・K))となる銅を用いた。本発明例は、使用した連続鋳造用鋳型以外は参考例と同じ条件で鋼の連続鋳造を行った。
比較例及び本発明例の操業では、使用した連続鋳造用鋳型以外は参考例と同様に鋼の連続鋳造を行った。また、参考例と同様にして、連続鋳造を100回行う毎に鋳型長辺における表面割れを調査し、鋳型長辺の表面に割れが確認された場合には、連続鋳造をそこで中止することとした。加えて、1回の連続鋳造毎に鋳片の表面割れをも調査した。
比較例、本発明例、参考例における結果を表1に示す。
Figure 0006950648
表1における「チャージ回数」の項目における「3000」は、鋳型長辺に表面割れが生じずに連続鋳造を目標回数行えたことを意味する。3000以外の数字は、鋳型長辺の表面に割れが確認された時点で既に行っていた連続鋳造の回数を意味する。
「鋳片表面割れ」の項目における「あり(1回目)」は、1回目の連続鋳造後に鋳片の表面割れが確認されたことを意味する。「なし」は、「チャージ回数」の項目に記載している回数の連続鋳造であっても、鋳片に表面割れが確認されなかったことを意味する。
表1からすると、参考例では、鋳型の寿命に問題がないことが伺えるものの、中炭素鋼鋳造で生じるδ鉄からγ鉄への変態に起因する凝固シェル厚みが不均一であることにより生じる表面割れを効果的に防止できず、鋳片の表面割れが1回目の連続鋳造から生じたことがわかる。
比較例では、鋳型の寿命については400回連続鋳造した後の調査で、鋳型長辺における表面割れが生じたことがわかった。但し、それまでに鋳片の表面割れを確認できなかったので、中炭素鋼の鋳造工程で生じ得る表面割れを効果的に防げていたと予想できる。
本発明例では、鋳型の寿命については2500回連続鋳造した後の調査で、鋳型長辺における表面割れが生じたことがわかった。ここで連続鋳造の操業を停止したものの、それまでで鋳片における表面割れは確認されていない。すなわち、本発明例では、比較例よりも鋳型の使用寿命を格段に向上させつつ、中炭素鋼の鋳造工程で生じ得る表面割れを効果的に防げていたと予想できる。
1 鋳型長辺
2 溝
3 異種物質装入部
4 保護層
5 冷却水流路
6 バックプレート
7 保護材
10 連続鋳造用鋳型(本発明)
100 連続鋳造用鋳型(従来技術)
101 鋳型長辺
102 溝
103 異種物質充填部
104 鍍金層
105 冷却水流路
106 バックプレート

Claims (6)

  1. 鋼の連続鋳造用鋳型であって、
    銅合金製の鋳型本体と、
    該鋳型本体の内壁面のメニスカスを含む領域に形成された溝に、前記鋳型本体とは異なる熱伝導率の異種物質が装入された複数の異種物質装入部と、
    該複数の異種物質装入部を覆うとともに前記溝に装入されている保護材であって、線膨張率が前記鋳型本体の線膨張率の±10%以内である保護材と、
    該保護材を覆う保護層と、を有する連続鋳造用鋳型。
  2. 前記鋳型本体の内壁面における前記複数の異種物質装入部が設けられた上端から下端までの領域で、鋳型の内壁から外壁に向かう前記内壁面での熱流束が周期的に変化する請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。
  3. 前記溝は円形凹溝または擬似円形凹溝である請求項1または請求項2に記載の連続鋳造用鋳型。
  4. 前記複数の異種物質装入部は互いに独立している請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型。
  5. 前記保護層は、前記鋳型本体の内壁面に溶射あるいは鍍金処理で形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型を用いて鋳片を鋳造する鋼の連続鋳造方法。
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