JP6945854B2 - コンクリート中性化促進試験法およびこれに用いる試験装置 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント、モルタル又はコンクリートの内部のコンクリート中性化促進を加速させるコンクリート中性化促進試験法およびこれに用いる試験装置に関する。
高速道路や鉄道高架橋などの大型で高耐荷重が要求される構造物には鉄筋コンクリートが不可欠である。しかし、建設後長期間が経過したコンクリート構造物では、経年劣化により稀にコンクリートの剥離や崩落が生じる。コンクリート構造物の主な劣化原因は、コンクリート内部に埋設された鉄筋の腐食である。鉄筋の腐食で発生した鉄さびが膨張し、コンクリートにひび割れや剥離を生じさせる。経年劣化したコンクリート構造物の補修や維持管理、または安心・安全な構造物の建設のためには、鉄筋の腐食挙動の理解に基づいた対策が必要である。そこで、特許文献1に示すような中性化深さ予測装置や、特許文献2に示すような防錆効果事前予測方法が提案されている。また、非特許文献1に示すようなコンクリートの中性化進行予測モデルが提案されている。
良く知られているように、コンクリート内部はセメントと水の反応により高アルカリに保たれている。このような環境では、鉄は保護性の高い酸化皮膜(不働態皮膜)に覆われるため、腐食は極めて緩やかである。このため、実環境への曝露で、コンクリートにひび割れや剥離が生じるほどの腐食が進行するには数十年以上を要する。このようにコンクリート構造物が長寿命であることもあり、コンクリート中鉄筋の腐食に及ぼす各環境因子は完全に解明されているとは言い難く、コンクリートの使用環境から鉄筋の腐食発生・進行を予測することは困難である。また、鉄筋が耐食鋼や耐候性鋼の場合や、補修剤を使用したコンクリートの場合は、腐食の進行にはさらに長い期間がかかる。したがって、実環境曝露により、ひび割れなどの欠陥のないコンクリート内部の鉄筋の腐食を短時間で再現することはほぼ不可能である。
そこで、鉄筋の腐食因子解明や新開発材料の効果の検討のため、実験室規模で短期間に実環境と同様の鉄さびを生成させる腐食促進試験が必要である。コンクリート内部の鉄筋腐食促進試験として、電食試験法、乾湿繰返し試験法、オートクレーブ法などが提案されている(例えば非特許文献2参照)。しかし、例えば、電食試験では過剰に塩化物イオンを含む化合物が生成する場合がある、乾湿繰り返し試験では他の促進試験法と比較して多くの時間と手間がかかる、オートクレーブ法では高温高圧に試験体をさらすためコンクリートの組織が変化するなどのおそれがあり、鉄筋腐食評価を十分に行えないことが懸念される。よって、可能な限り簡便かつ短時間で、実環境で起こるコンクリートの変化を再現しつつ、実環境と同様の膨張率(組成と構造)の鉄さびを生成できる新規腐食促進試験法が求められる。
コンクリート中鉄筋の腐食因子として挙げられる代表的な物に塩害と中性化がある。鉄の腐食反応は、鉄の酸化溶解反応であるアノード反応と、アノード反応で生じた電子を消費するカソード反応のカップリングにより進行するが、塩害にはコンクリート中に侵入し鉄筋表面に到達した塩化物イオンが鉄筋表面の不働態皮膜を破壊する働きがある。これにより鉄の溶解がスタートするため、塩害はアノード反応の促進と言い換えることができる。また、コンクリート内部の鉄表面でのカソード反応は酸素還元反応であり、コンクリート中の鉄の腐食は酸素拡散律速と報告されている(例えば非特許文献3参照)。
中性化が生じたコンクリート中では、セメントと二酸化炭素の反応により炭酸カルシウムが生成され、コンクリート内のpHが低下する。中性化環境では鉄筋表面の不働態皮膜は破壊され、またその後の不働態皮膜の自己再生(再不働態化)も妨げられるため、腐食は促進される。このように中性化が生じ、鉄筋コンクリートの劣化が加速する環境を再現し、腐食促進試験として取り入れる方法として、塩害と中性化の促進、さらに酸素還元反応の促進の融合が効果的であると考えられる。
特開2011−257212号公報 特開2014−035240号公報
コンクリートの中性化進行予測モデル 桝田佳寛・棚野博之、コンクリート工学論文集第2巻第1号125頁〜133頁(1991年1月) JCI規準集(2004) コンクリート構造物の腐食・防食に関する試験方法ならびに規準 日本コンクリート工業会 鋼材腐食から見たコンクリート中での酸素透過性の検討 宮川豊章・松村卓郎・小林和夫・藤井学、土木学会論文集第408号/V−11 111頁〜120頁(1989年8月)
本発明は上述した課題を解決するもので、実環境で生成する鉄さびと同じ組成の鉄さびを可能な限り簡便かつ短時間で生成できる新規なコンクリート中性化促進試験法を提供することを目的とする。
本発明者はセメントペーストやモルタル、コンクリートにCOガスを加圧供給することで中性化を促進できるのではないかと考え、高圧ガスチャンバーを用いて、加圧COガスによるモルタルの中性化促進を試みた。さらに、加圧COガスによる中性化促進と高酸素腐食促進試験を組み合わせることでさらなる腐食加速を試みた。
[1]本発明のコンクリート中性化促進試験装置は、図2に示すように、COガス供給量増加のために用いる加圧チャンバーと、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させるCOガス供給装置又はCOガス加圧装置とを備え、当該加圧チャンバー内にセメント試験体、モルタル試験体若しくはコンクリート試験体又は鉄埋設のセメント試験体、鉄埋設のモルタル試験体若しくは鉄埋設のコンクリート試験体の少なくとも何れか一つの試験体を設置すると共に、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させて前記試験体の内部へのCOガス供給量を増加させることを特徴とする。
[2]本発明のコンクリート中性化促進試験装置において、好ましくは、加圧チャンバー内に溜まるNaCl水溶液または湿度保持用の水溶液を有し、前記水溶液がNaCl水溶液の際には、当該NaCl水溶液に前記試験体を浸漬させるとよく、湿度保持用の水溶液の際には前記試験体は当該水溶液の外部に設置されるとよい。
[3]本発明のコンクリート中性化促進試験装置において、好ましくは、前記NaCl水溶液での塩化物イオン濃度は、単位体積当たりのコンクリート換算で8.2×10−5kg/m以上、50kg/m以下であるとよい。
[4]本発明のコンクリート中性化促進試験装置において、好ましくは、前記NaCl水溶液の濃度は前記試験体のモルタル、セメント又はコンクリートの練り混ぜに用いた水のNaCl濃度と同じになるように調製されているとよい。
[5]本発明のコンクリート中性化促進試験装置において、好ましくは、さらに、前記加圧チャンバー内の湿度を制御する湿度制御部と、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させるCOガス圧力制御部とを備え、前記CO2ガス圧力制御部によって、前記試験体の内部へのCOガス供給量を増加させるとよい。
[6]本発明のコンクリート中性化促進試験装置において、好ましくは、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力の上昇は、大気のCOガス分圧を基準として2倍以上50000倍以下であるとよい。2倍未満では、前記試験体の内部へのCOガス供給量の増加が充分でなく、コンクリート中性化促進の促進が充分でない。50000倍を超す場合は、加圧チャンバーに過度な耐圧性が必要となり、設備価格が高騰する。現在の大気のCOガス分圧は約400ppm(0.04%)であるため、5%CO混合ガスを大気圧で使用すると125倍、100%COガスを2MPaで使用すると50000倍になる点を考慮している。
さらに好ましくは、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力の上昇は、大気のCOガス分圧を基準として125倍以上2500倍以下であるとよい。5%CO混合ガスを大気圧から2MPaまでで使用する場合を考慮している。
[7]本発明のコンクリート中性化促進試験法は、加圧チャンバー内にセメント試験体、モルタル試験体又はコンクリート試験体の少なくとも何れか一つを設置し、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させて前記試験体の内部へのCOガス供給量を増加させ、前記試験体のコンクリート中性化を促進する試験法である。
[8]本発明のコンクリート中性化促進試験法は、加圧チャンバー内に鉄埋設のセメント試験体、鉄埋設のモルタル試験体又は鉄埋設のコンクリート試験体の少なくとも何れか一つの試験体を設置し、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させて前記試験体の内部へのCOガス供給量を増加させ、前記試験体に埋設された鉄筋の腐食をコンクリート中性化により促進する試験法である。
[9]本発明のコンクリート中性化促進試験法は、供試体であるコンクリート換算で所定の塩化物イオン濃度となるようなNaCl水溶液を調製し、当該NaCl水溶液を加圧チャンバー内に設置し、当該加圧チャンバー内のNaCl水溶液に鉄埋設のセメント試験体、鉄埋設のモルタル試験体又は鉄埋設のコンクリート試験体の少なくとも何れか一つを浸漬し、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させて前記試験体の内部へのCOガス供給量を増加させ、前記試験体に埋設された鉄筋の腐食をコンクリート中性化により促進する試験法である。
[10]本発明のコンクリート中性化促進試験法は、湿度保持用の水溶液を加圧チャンバー内に設置し、当該加圧チャンバー内の湿度保持用の水溶液外部に鉄埋設のセメント試験体、鉄埋設のモルタル試験体又は鉄埋設のコンクリート試験体の少なくとも何れか一つの試験体を設置し、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させて前記試験体の内部へのCOガス供給量を増加させ、前記試験体に埋設された鉄筋の腐食をコンクリート中性化により促進する試験法である
本発明の一態様によれば、コンクリート、モルタル又はセメント試験体の内部へのCOガス供給量を増加することで、コンクリートの中性化を促進する試験が行える。また、本発明の他の態様によれば、鉄埋設のセメント試験体、鉄埋設のモルタル試験体又は鉄埋設のコンクリート試験体を試料として用いる場合には、コンクリートの中性化促進によって該試験体に埋設した鉄試料の腐食反応を促進することができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかるセメント試験体又は鉄埋設モルタル試験体の説明図である。 図2は、本発明の一実施形態にかかる加圧チャンバーの概念的構成図である。 図3は、中性化促進試験を行ったモルタル試験体のフェノールフタレイン溶液による着色を示す図である。 図4は、中性化促進試験を行ったモルタル試験体に押し当てたpH試験紙の呈色を示す図である。 図5は、中性化促進試験後の健全部、一部中性化域、中性化域の長さを示す図である。 図6は、中性化促進試験後に腐食加速試験を行った鉄試料表面観察結果である。 図7は、中性化していないモルタル試験体に高酸素腐食促進条件を適用した鉄試料表面観察結果を示す図である。
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかるセメント試験体又はモルタル試験体の説明図で、(a)はモルタル試験体の外観図、(b)は鉄埋設モルタル試験体の断面図である。図1(a)において、セメント試験体又はモルタル試験体10Aは、例えば外径Dが30mm、高さHが25mmの円筒体よりなるセメント又はモルタル11Aで構成されている。また、図1(b)において、鉄埋設のセメント試験体又はモルタル試験体10Bは、例えば外径Dが30mm、高さHが25mmの円筒体よりなるセメント又はモルタル11と、この内部に収容された鉄試料12で構成されている。
ここで、セメントとは、セメント材料を水で練混ぜたセメントペーストを固化させたものをいう。モルタルとは、セメントペーストに砂(細骨材)を練混ぜたものをいう。セメント材料は、ポルトランドセメントの場合は、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料、せっこうである。これらの原料を調合し、原料ミルで粉砕し、ロータリーキルンで1450℃以上の高温で焼成され、水硬性をもった化合物の集まりであるクリンカとなり、このクリンカを粉砕してポルトランドセメントが製造される。セメント材料には、ポルトランドセメントに加えて、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、超速硬セメント、アルミナセメント等がある。
セメント試験体又はモルタル試験体10Aに代えて、コンクリート試験体を用いても良い。同様に、鉄埋設のセメント試験体又はモルタル試験体10Bに代えて、鉄埋設のコンクリート試験体を用いても良い。コンクリートとは、セメントペーストに砂(細骨材)、砂利(粗骨材)、並びに必要に応じて他の混和材料を練混ぜたものをいう。混和材料には、独立気泡を連行するAE材、セメントを分散する減水材、硬化促進剤、防錆剤、付着モルタル安定剤、凝結遅延剤、促進剤、急結剤、収縮低減剤、分離低減剤、起泡剤、発泡剤、防凍剤、耐寒促進剤等がある。
鉄試料12は、鉄試料12の底面がセメント又はモルタル11Bと接触していると共に、鉄試料12の表面はエポキシ樹脂の鉄被覆層14で覆われている。鉄試料12の表面には、さらに塩化ビニル製等の絶縁性棒材13が大略垂直状態で固定されている。鉄被覆層14は、モルタル11の内部に位置するもので、例えばエポキシ樹脂等の樹脂製材料よりなり、鉄試料12の表面を被覆している。モルタル被覆層15は、モルタル11の表面であって、絶縁性棒材13が挿入される面を被覆するもので、例えばエポキシ樹脂等の樹脂製材料よりなる。絶縁性棒材13は、モルタル被覆層15と鉄被覆層14によって、モルタル11の内部に固定されている。鉄試料12の底面でのセメント又はモルタル11のかぶり16は、1〜50mmの範囲で適宜に選定されている。
図2は、本発明の一実施形態にかかる加圧チャンバーの概念的構成図である。
図において、加圧チャンバーとしてのコンクリート中性化促進試験装置20は、筐体21、フランジ22、蓋部23、観察窓24、COガス供給弁25、COガス放出弁26、圧力ゲージ27、NaCl水溶液28、並びに試験体支持板29を有している。
筐体21は、耐圧容器としての仕様として2MPa以上がよく、好ましくは5MPa以上であるとよい。大気圧は約0.1MPaであるため、耐圧容器材料としては鋼製やチタン製、Ni合金製が好ましい。チタン製は、鋼製と比較すると、塩による局部腐食に強い。筐体21の頂部開口部にはフランジ22が設けられていると共に、蓋部23とシール材(図示せず)によって筐体21内部の密封状態を保持する。観察窓24は、蓋部23に設けられたもので、筐体21内部の状態を目視するために、透明なガラス等で構成されている。COガス供給弁25は、筐体21内部にCOガスを供給するための弁であり、例えばCOガスボンベと接続されている。COガス放出弁26は、筐体21内部からCOガスを外部に放出するための弁であり、例えばCOガス循環用の配管系に接続されている。圧力ゲージ27は、筐体21内部のCOガス圧力を測定する為の圧力計である。
NaCl水溶液28は、筐体21内部に蓄えられるもので、セメント試験体又はモルタル試験体10を浸した状態でも良く、またセメント試験体又はモルタル試験体10が露出した状態の水量でも良い。試験体支持板29は、筐体21内部に設けられたセメント試験体又はモルタル試験体10を支持する板材である。加圧チャンバー内の湿度の範囲は、相対湿度30%(MgCl飽和水溶液による)以上98%(KSO飽和水溶液による)以下がよい。この湿度範囲は、通常屋外にコンクリートを設置した際の乾湿変化に対応しているので実験条件として妥当である。
次に、実施例におけるセメント試験体又はモルタル試験体10の各構成要素について、さらに詳細に説明する。
鉄試料12には、99.5%鉄板(株式会社ニラコ)、厚さ1mmの材質・形状とした。この鉄板を試料面積7×7mmとなるように切断した後、SiC耐水研磨紙(丸本ストルアス株式会社)で#800まで研磨し、エタノールで5分間超音波洗浄した。その後、鉄試料12の表面をエポキシ樹脂(ショーボンド建設株式会社)で絶縁被覆した。
続いて、上記で作製した鉄試料12を、セメント又はモルタルに埋設し、セメント試験体又はモルタル試験体10Bとした。図1(b)に示した通り、鉄埋設のセメント試験体又はモルタル試験体10Bでは、かぶり16を1〜50mmに変化させた。ただし、かぶり20mm以上の試験体に関しては側面や上面から鉄試料表面までの距離がかぶりよりも小さくならないよう試験体を大きくした。COガス供給増加による腐食加速試験に供した試験体には、NaCl水溶液を含まない純水を練り込んだものと、[Cl]=10kg/m(コンクリート換算)となるように2.06MのNaCl水溶液を練り込んだものとがある。セメント又はモルタルを打設する際にはセメント協会が提供している力学試験用標準セメントと標準砂を用い、水セメント比は60%、セメント細骨材比は1:3とした。それぞれの養生期間は28日とし、室温、相対湿度95%以上のデシケータ内で封かん養生した。
モルタル試験体を用いて、中性化促進試験を行った。中性化条件は、次の二通りである。
『第1の中性化促進試験の条件』では、75%N−20%O−5%CO混合ガス(以下、5%COガス)を大気圧で供給する(従来法、JIS A 1153:2012を一部改変)。
『第2の中性化促進試験の条件』では、5%COガスを0.5MPaで加圧供給である。
両条件ともに室温、相対湿度95%以上で行い、試験期間は1、7、14日間とした。試験終了後、モルタル試験体を割裂して断面にフェノールフタレイン溶液を噴霧した。フェノールフタレイン溶液は、95%エタノール90mLにフェノールフタレイン粉末1gを溶かし、水を加えて100mLとした。
続いて、腐食加速評価について説明する。
本発明のCOガス加圧供給による中性化促進の効果を検討するため、モルタル内に埋設した鉄の腐食加速評価を行った。試料には純度99.5%、厚さ1mmの鉄板を用いた。この鉄板を7×7mmに切断した後、片面をSiC耐水研磨紙で#800まで研磨して試料面とし、アセトンおよびエタノールで5分間超音波洗浄した。鉄試料12として、試料面以外をエポキシ樹脂で絶縁被覆した。この鉄試料を、かぶり5mmとなるようモルタルに埋設して鉄埋設モルタル試験体10Bとした(図1(b))。鉄埋設モルタル試験体10Bの直径は30mmφ、試験体高さは25mmで、図1(a)で示したモルタル試験体10Aと同様である。モルタルを打設する際には、蒸留水または、鉄表面の不働態皮膜破壊を促すため[Cl−]=10kg/m(コンクリート換算)となるように2.06MのNaCl水溶液を練り混ぜ水として使用した。モルタル試験体同様、養生期間は28日以上とし、室温、相対湿度95%以上のデシケータ内で封かん養生した。
ここで、コンクリート換算とは、コンクリート1[m ]当たりに換算したときの[Cl−]の重量[kg]をいう。
鉄埋設モルタル試験体10Bを用いて、中性化促進を行った後に腐食加速評価を行った。中性化促進条件は、前述の第1及び第2の中性化促進試験の条件とし、中性化期間を14日間とした。中性化促進後、室温、相対湿度95%以上とした耐圧チャンバー内に鉄埋設モルタル試験体を設置し、0.5MPaおよび2.0MPaの加圧酸素を供給した。加圧酸素による腐食加速試験(高酸素腐食促進試験)は著者らが開発した試験法であり、鉄表面のカソード反応を促進させることで鉄の腐食反応を加速させることができる。
比較例として、中性化促進後、室温、相対湿度95%以上の大気圧下(酸素分圧0.02MPa)に設置した試料も用意した。モルタル練り混ぜ水の塩化物イオン濃度、中性化促進条件および高酸素腐食促進試験条件を表1に示す。腐食評価に用いた試験体および試験条件により、それぞれの条件を比較例1から比較例4及び実施例1から実施例8とした。
腐食加速試験後、鉄埋設モルタル試験体を割裂して鉄試料を取り出し、光学顕微鏡を用いて表面観察を行った。
Figure 0006945854
(COガスの加圧供給による中性化促進)
モルタル試験体を用いた中性化促進試験の結果を図3に示す。フェノールフタレイン溶液により鮮明な赤紫色に着色した部分、薄赤紫色に着色した部分、着色が認められなかった部分の3領域が認められた。割裂した試料のうち、フェノールフタレイン溶液を噴霧しなかった面に蒸留水を含ませたpH試験紙を押し当てると、フェノールフタレイン溶液により鮮明な赤紫色に着色した部分は茶色から紫色、薄赤紫色に着色した部分は濃い緑色、着色が認められなかった部分は黄緑から緑色に呈色した(図4)。
この結果より、鮮明な赤紫色に着色した部分ではpH12以上で中性化が進行しておらず、薄赤紫色に着色した部分ではpH9〜12であり健全部よりpHが低下していることがわかる。さらに、着色が認められなかった部分ではpH9以下で中性化が進行していると考えられる。よって、以降ではそれぞれの領域を健全部、一部中性化域、中性化域と記述する。
図3(a)−(c)には5%COガスを大気圧で供給したモルタル試験体の断面写真およびフェノールフタレイン溶液による着色を示した。図3(a)より試験後1日ではほとんど中性化域は認められずほとんどが健全部であったが、試験時間の増加とともに中性化域、一部中性化域の増加が認められ、試験後14日ではそれぞれ約1.5mmに達していた(図3(c))。図3(d)−(f)には5%COガスを0.5MPaで供給したモルタル試験体の断面写真およびフェノールフタレイン溶液による着色を示した。図3(d)より試験後1日で大気圧のガスを同期間供給した試験体よりも中性化域は広く、試験後7日では試料全体が一部中性化域もしくは中性化域となった(図3(e))。さらに、図3(f)より、試験後14日ではさらに中性化域が広がり、約5mmに達した。
図5にそれぞれの条件における健全部、一部中性化域、中性化域の長さを示す。なお、モルタル試験体の高さが25mmであり、モルタル試験体の両側からCOガスが侵入すると考えられるため、モルタル試験体の表面から12.5mmまでを評価長さとした。COガスを加圧して供給することで大気圧条件よりも中性化が促進されることが明らかとなった。14日間の試験ではCOガス加圧供給でCOガス大気圧供給の約5倍の中性化深さを達成できた。
(中性化促進によるモルタル埋設鉄の腐食加速)
図6に各条件で中性化促進試験後に腐食加速試験を行った鉄試料表面の光学顕微鏡像を示す。練り混ぜ水に蒸留水を使用したモルタルでは、いずれの鉄試料にも腐食はほとんど認められなかった。この結果より、コンクリートの中性化が進行しても塩化物イオンによる不働態皮膜破壊がなければ腐食は進行しないことが明らかとなった。一方、練り混ぜ水に塩化物イオンを添加したモルタルでは、いずれの条件においても腐食が認められた。その中でも、実施例5、比較例4、実施例7、8において激しい腐食が認められ、最も腐食が激しかったのは実施例8であった。実施例5においては、中性化が十分進行したとは言えないものの、塩化物イオンによる不働態皮膜の破壊と加圧Oによるカソード反応の促進が鉄試料の腐食を促進したといえる。
比較例4、実施例7、8においては、加圧COガスによる中性化の促進と、塩化物イオンによる不働態皮膜の破壊、さらには加圧Oによる腐食の加速が相乗的に作用した結果、腐食が著しく促進されたと考えられる。中性化を進行させたモルタル中においてもO圧の上昇に伴い腐食が促進されていることから、加圧COガスによる中性化の促進と高酸素腐食促進試験は組み合わせて使用でき、コンクリート(およびモルタル)中の鉄の腐食促進試験として有用であることが示された。比較例3では、不働態皮膜を破壊する塩化物イオン量は十分であったが、中性化が十分ではなく酸素供給量も不足していたため、実施例5、比較例4、実施例7、8と比較して腐食が進行しなかったと考えられる。実施例6では比較例3同様不働態皮膜は破壊されたが中性化が足りないために過剰酸素により不働態皮膜が成長し腐食が進行しなかったと考えられる。
図7では、図6との比較の為に、中性化していないモルタル試験体に、高酸素腐食促進条件を適用した鉄試料表面観察結果を示す図である。練り混ぜ水に蒸留水を使用したモルタルでは、いずれの鉄試料にも腐食はほとんど認められなかった。この結果より、コンクリートの中性化がない場合には、塩化物イオンによる不働態皮膜破壊がない条件であれば、鉄試料表面での腐食は進行しないことが明らかとなった。一方、練り混ぜ水に塩化物イオンを添加したモルタル試験体では、大気開放と0.5MPaの加圧酸素を供給した場合には、鉄試料表面での腐食が認められた。他方、2.0MPaの加圧酸素を供給した場合には、鉄試料表面での腐食が認められなかった。
本発明では、鉄を埋設したモルタルに、例えば加圧5%COガスを供給することで従来の中性化促進試験よりもより効率的な新中性化促進試験法を開発した。以下に得られた効果を示す。
(A)加圧5%COガスを供給した新中性化促進試験において、従来法よりも効率的に中性化を促進させることができた。14日間の加圧5%COガス中性化促進試験でモルタルの中性化深さは約5mmに達した。
(B)NaClを練り込んだモルタルを加圧5%COガス中性化促進試験に供することで、モルタル中の鉄の腐食は従来の中性化促進試験のみに供した場合と比較して促進された。
(C)NaClを練り込んだモルタルを加圧5%COガス中性化促進試験に供し、その後高酸素腐食促進試験に供することでさらに鉄の腐食は促進された。この結果より、加圧5%COガス中性化促進試験法はNaCl練り込みおよび高酸素腐食促進試験と組み合わせて使用することができ、コンクリート中鉄筋の腐食促進試験法として極めて効果的であることが示された。
なお、本発明の実施の形態においては、コンクリート中性化促進試験装置として、図2に掲げるものを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、加圧チャンバー内の湿度を制御する湿度制御部や、加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させるCOガス圧力制御部を備えていても良い。
本発明のCOガス加圧試験法は、従来のJIS A 1153に規定された試験法よりも迅速にコンクリート中性化促進試験が行え、コンクリート中性化促進の評価法として非常に有効である。
また、本発明のCOガス加圧試験法を鉄埋設のセメント試験体等に適用すると、セメント試験体等に埋設された鉄筋や鉄骨等の鉄試料の腐食に対するコンクリート中性化による影響の評価法として非常に有効である。
10A セメント試験体、モルタル試験体又はコンクリート試験体
10B 鉄埋設のセメント試験体、モルタル試験体又はコンクリート試験体
11A、11B セメント、モルタル又はコンクリート
12 鉄試料
13 絶縁性棒材
14 鉄被覆層
15 モルタル被覆層
16 かぶり
20 コンクリート中性化促進試験装置(加圧チャンバー)
21 筐体
22 フランジ
23 蓋部
24 観察窓
25 COガス供給弁(COガス供給装置、COガス加圧装置)
26 COガス放出弁
27 圧力ゲージ
28 NaCl水溶液
29 試験体支持板

Claims (6)

  1. COガス供給量増加のために用いる加圧チャンバーと、
    前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させるCOガス供給装置又はCOガス加圧装置とを備え、
    当該加圧チャンバー内にセメント試験体、モルタル試験体若しくはコンクリート試験体又は鉄埋設のセメント試験体、鉄埋設のモルタル試験体若しくは鉄埋設のコンクリート試験体の少なくとも何れか一つの試験体を設置すると共に、前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させて当該セメント試験体、モルタル試験体若しくはコンクリート試験体の内部へのCOガス供給量を増加させると共に、
    前記加圧チャンバー内に溜まるNaCl水溶液を有し、
    前記NaCl水溶液に前記試験体を浸漬させると共に、
    前記NaCl水溶液の濃度は前記試験体のモルタル、セメント又はコンクリートの練り混ぜに用いた水のNaCl濃度と同じになるように調製されていることを特徴とするコンクリート中性化促進試験装置。
  2. さらに、前記加圧チャンバー内に溜まる湿度保持用の水溶液を有し、
    前記試験体は当該水溶液の外部に設置されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート中性化促進試験装置。
  3. 前記NaCl水溶液での塩化物イオン濃度は、単位体積当たりのコンクリート換算で8.2×10−5kg/m以上、50kg/m以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート中性化促進試験装置。
  4. 請求項1乃至の何れか1項に記載のコンクリート中性化促進試験装置において、
    さらに、前記加圧チャンバー内の湿度を制御する湿度制御部と、
    前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させるCOガス圧力制御部とを備え、
    前記COガス圧力制御部によって、当該試験体の内部へのCOガス供給量を増加させることを特徴とするコンクリート中性化促進試験装置。
  5. 前記加圧チャンバー内のCOガス圧力の上昇は、大気のCOガス分圧を基準として2倍以上50000倍以下であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のコンクリート中性化促進試験装置。
  6. 供試体であるコンクリート換算で所定の塩化物イオン濃度となるようなNaCl水溶液を調製し、
    当該NaCl水溶液を加圧チャンバー内に設置し、
    当該加圧チャンバー内のNaCl水溶液に鉄埋設のセメント試験体、鉄埋設のモルタル試験体又は鉄埋設のコンクリート試験体の少なくとも何れか一つの試験体を浸漬し、
    前記加圧チャンバー内のCOガス圧力を上昇させて当該試験体の内部へのCOガス供給量を増加させると共に、
    前記NaCl水溶液の濃度は当該試験体モルタル、セメント又はコンクリートの練り混ぜに用いた水のNaCl濃度と同じになるように調製されていることを特徴とする、
    当該試験体に埋設された鉄筋の腐食をコンクリート中性化により促進する試験法。
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