JP6945288B2 - シノリン含水結晶並びにその組成物、製法及び用途 - Google Patents

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Description

本発明は、シノリン含水結晶及びシノリン含水結晶含有組成物並びにそれらの製造方法及び用途に関する。
シノリンは、化学名がN−[3−(カルボキシメチルアミノ)−5−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−2−シクロヘキセン−1−イリデン]−L−セリンである式:
Figure 0006945288
で表わされるマイコスポリン様アミノ酸の1種である。シノリンは、海藻、海産動物、微細藻、カビ類などが生産する天然の紫外線吸収物質であり、波長334nm付近に強い吸収帯を有することが知られている。
特許文献1には、ミクロコッカス sp. AK334株の菌体から80%メタノールを用いて抽出した抽出物を精製することにより得た白色の紫外線吸収物質のシノリンが開示されている。ここでのシノリン精製の最終工程は0.05%酢酸水溶液を溶媒として用いた逆相HPLCであるが、粉末化の工程については記載がなく、生成物としては「白色の紫外線吸収物質」と記載されているのみである。
これまで、シノリンの結晶としては、水性メタノール溶液から晶析して得られる無水結晶が知られており、広く用いられてきた。例えば非特許文献1〜4には、シノリン含有シラップ(シノリン高濃度溶液)をメタノール中で結晶化して得られた結晶が開示されており、当該結晶の融点(分解点)が152〜154℃ないし154〜156℃であることが開示されている。結晶の分解温度(融点)からこれらの結晶はシノリンの無水結晶であると同定できる。しかしながら、これらの無水結晶は、高湿下で容易に吸湿して固結するため、その保存安定性に問題があった。
特開平6−62878号公報
Botanica Marina, Vol.XXIII, pp.65-68 (1980) 北海道教育大学紀要, Vol.30, No.2, pp.271-278 (1980) 北海道教育大学紀要, Vol.38, No.1, pp.11-15 (1987) Photomedicine Photobiology, Vol.24, pp.39-42 (2002)
本発明が解決しようとする課題は、高湿下でも吸湿し難く、保存安定性の高いシノリンの結晶を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべくシノリンの結晶化条件を種々検討する中で、特定の晶析条件下、シノリンをその水溶液から晶析することにより、シノリンの2分子あたり約4分子の水分子を含有する結晶単位で、その結晶水の位置が結晶単位の中でゆらぎを有する特殊なシノリン含水結晶が得られることを見出し、意外にも当該含水結晶が高湿下においても吸湿し難く、保存安定性に優れることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、シノリン含水結晶及びシノリン含水結晶含有組成物並びにそれらの製造方法及び用途を提供する。
本明細書におけるシノリン含水結晶は、高湿下でも吸湿し難く、保存安定性が高い。シノリン含水結晶はまた、その結晶単位中に水分子を含有した結晶構造を有することにより、吸湿性の高いシノリン無水結晶に比べて、吸湿しにくいという有利な効果を奏し得る。そのため、本明細書におけるシノリン含水結晶又はシノリン含水結晶含有組成物は、良好かつ安定な紫外線吸収効果を有する化粧品素材、医薬部外品素材、又は医薬品素材として利用することができる。
図1は、水溶液から晶析して得たシノリンの結晶写真を示す。 図2は、水溶液から晶析して得たシノリンの結晶の粉末X線回折パターン(A)、及びシノリン無水結晶の粉末X線回折パターンを示す(B)。 図3は、水溶液から晶析して得たシノリンの結晶のORTEP図を示す。
本発明は、以下に例示する態様を含む。
項1.X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)6.8°±0.2°、7.9°±0.2°、11.8°±0.2°及び15.8°±0.2°に回折ピークを示し、結晶水を含有することを特徴とするシノリン含水結晶。
項2.さらに回折角(2θ)13.7°±0.2°、16.5°±0.2°、17.7°±0.2°、20.6°±0.2°、22.8°±0.2°、23.8°±0.2°、26.4°±0.2°、27.6°±0.2°、40.3°±0.2°及び48.7°±0.2°から選択される少なくとも1つの回折角に回折ピークを示す、項1記載のシノリン含水結晶。
項3.結晶が三斜晶であることを特徴とする項1又は2記載のシノリン含水結晶。
項4.結晶の空間群がPであり、その格子定数がa=5.4±0.2Å、b=11.7±0.2Å、c=13.6±0.2Å、α=105.7±0.2°、β=99.3±0.2°、γ=94.3±0.2°であることを特徴とする項1乃至3のいずれかに記載のシノリン含水結晶。
項5.融点が117±0.5℃以上125±0.5℃以下であることを特徴とする項1乃至4のいずれかに記載のシノリン含水結晶。
項6.結晶水を7質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする項1乃至5のいずれかに記載のシノリン含水結晶。
項7.項1乃至6のいずれかに記載のシノリン含水結晶を含むことを特徴とするシノリン含水結晶含有組成物。
項8.シノリン純度が90%以上のシノリンの水溶液を調製する工程、前記水溶液に有機溶媒を添加することなく、前記水溶液からシノリンを晶析する工程、及び、得られた結晶を回収する工程を含むことを特徴とする項1乃至6のいずれかに記載のシノリン含水結晶の製造方法。
項9.項1乃至6のいずれかに記載のシノリン含水結晶を種晶として用いることにより、シノリン溶液からシノリン含水結晶を晶出させ、これを採取することを特徴とする、シノリン含水結晶の製造方法。
項10.項1乃至6のいずれかに記載のシノリン含水結晶又は項7記載のシノリン含水結晶含有組成物を含有する化粧品素材、医薬部外品素材、又は医薬品素材。
本明細書におけるシノリン含水結晶は、X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)6.8°±0.2°、7.9°±0.2°、11.8°±0.2°及び15.8°±0.2°に回折ピークを示しうる。これらの回折ピークは、シノリン無水結晶の粉末X線回折図では認められないため、シノリン含水結晶はシノリン無水結晶と異なる。シノリン含水結晶は、さらに回折角(2θ)13.7°±0.2°、16.5°±0.2°、17.7°±0.2°、20.6°±0.2°、22.8°±0.2°、23.8°±0.2°、26.4°±0.2°、27.6°±0.2°、40.3°±0.2°及び48.7°±0.2°から選択される少なくとも1つの回折角に回折ピークを示し得る。
本明細書におけるシノリン含水結晶は、結晶水を含有する結晶である。シノリン含水結晶は、好ましくはシノリン二含水結晶であり得る。本明細書におけるシノリン含水結晶はまた、結晶水を7質量%以上10質量%以下含み得る。
本明細書における結晶水とは、結晶中に一定の化合比(モル比)で含まれている水であって、結晶内で一定の位置をしめ、結晶格子の安定化に寄与している当該結晶の構成要素を指す。結晶水は、好ましくは結晶格子の空所を満たすために一定の割合で存在する格子水であってもよい。結晶水は、好ましくはシノリンの2分子あたり約4分子の水であり得、その結晶水の位置が結晶単位の中で一定の「ゆらぎ」を有していてもよい。
本明細書におけるシノリン含水結晶の結晶は、好ましくは三斜晶系であり得る。シノリン含水結晶の空間群は、好ましくはPであり得、その格子定数は、例えばa=5.4±0.2Å、b=11.7±0.2Å、c=13.6±0.2Å、α=105.7±0.2°、β=99.3±0.2°、γ=94.3±0.2°であり得る。
本明細書におけるシノリン含水結晶の融点は、117±0.5℃以上125±0.5℃以下の範囲であり得る。
本明細書におけるシノリン含水結晶は、例えば微生物等を用いた生物学的合成法又は有機合成等の化学的合成法によって得られたシノリンを特定条件下において晶析することにより製造することができる。シノリンの生物学的合成法としては、例えば国際公開第2015/174427号パンフレットに記載の方法等が挙げられる。シノリンの化学的合成法としては、例えば国際公開第2002/039974号パンフレットに記載の方法等が挙げられる。これらの合成法に従って得られたシノリン溶液は、常法により精製を行い、シノリン純度を高めた後、晶析に供することができる。シノリン含水結晶の晶析は、例えばシノリンの飽和水溶液(例えばシノリン純度が90%以上、好ましくは95%以上のシノリン水溶液)を一定の温度(例えば室温)下で静置することにより行うことができる。斯くして得られた含水結晶は、メタノール溶液、エタノール溶液等の有機溶媒からの晶析で得られる従来のシノリン無水結晶とは結晶学的に異なる結晶である。
本明細書におけるシノリン含水結晶の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば以下の工程を含んでもよい:
(1)シノリン純度が90%以上、好ましくは95%以上のシノリンの水溶液(シノリン含有シラップ)を調製する工程、
(2)前記水溶液に有機溶媒を添加することなく、前記水溶液からシノリンを晶析する工程、及び
(3)得られた結晶を回収する工程。
シノリン含水結晶の製造方法は、さらに(2−1)工程(1)で得られたシノリン含有シラップを該シラップ当たりのシノリン含量が25質量%以上、好ましくは30質量%以上まで濃縮する工程を含んでもよい。シノリン含水結晶の製造方法はまた、さらに(2−2)工程(2−1)で得られた濃縮物を、一定の温度下、例えば室温下で静置する工程を含んでもよい。シノリン含水結晶の製造方法はまた、さらに(4)工程(3)で回収した結晶を自然乾燥する工程を含んでもよい。
本明細書におけるシノリン含水結晶は、後述する実施例の方法を少なくとも二回、好ましくは三回以上繰り返して得られたシノリン含水結晶を種晶として用いることにより、より効率良く製造し得る。シノリン溶液にシノリン含水結晶を種晶として添加することによりシノリン含水結晶を晶出させる場合には、当該シノリン溶液の溶媒は、シノリン含水結晶が得られる限り特に限定されるものではなく、例えば、水であってもよく、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコール等の有機溶媒であってもよく、あるいはそれらを混合したものであってもよい。
本明細書におけるシノリン含水結晶はまた、適切な担体と適切な割合で混合してシノリン含水結晶含有組成物を構成し得る。
当該組成物に配合し得る担体としては、これらに限定されるものではないが、例えば二亜硫酸ナトリウム等の二亜硫酸塩等が挙げられる。
シノリン含水結晶含有組成物は、シノリン含水結晶と上記担体を重量比で1:2〜1:20、好ましくは1:4〜1:6の割合で含み得る。
本明細書におけるシノリン含水結晶又はシノリン含水結晶含有組成物は、化粧品、医薬部外品または医薬品の素材として有用であり得る。
「化粧品」および「医薬部外品」の例としては、皮膚用、頭髪用、眼用、および爪用のものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、クリーム、日焼け止めクリーム、日焼け止めスプレー、紫外線吸収剤、パック、マスク、ファンデーション、おしろい、マニキュア(例えばベースコート、カラーポリッシュおよびトップコートなど)、浴用剤、制汗剤、ビタミン剤、ボディローション、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアカラー、整髪料、ヘアトニック、および育毛剤が挙げられるが、これらに限定されない。
「医薬品」の例としては、皮膚用、頭髪用、眼用、および爪用のものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、急性皮膚反応を予防または治療するための医薬品、皮膚老化を予防または改善するための医薬品、皮膚癌を予防または治療するための医薬品、育毛のための医薬品、眼病を予防または治療するための医薬品、および白癬を予防または治療するための医薬品が挙げられるが、これに限定されない。
「化粧品」、「医薬部外品」、または「医薬品」の形態としては、液体、クリーム、ローション、ペースト、軟膏、エマルジョン(例えば水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、多重エマルジョン、ミクロエマルジョン、PET−エマルジョン、ピッカリング・エマルジョン等)、ゲル(例えばヒドロゲル、アルコールゲル等)、懸濁液、フォーム、スプレー、錠剤、粉末、点眼剤、点鼻剤、眼軟膏、外皮用薬、塗布剤または貼付剤などの形態が挙げられるが、これらに限定されない。
「化粧品」、「医薬部外品」、または「医薬品」は、シノリン含水結晶又はシノリン含水結晶含有組成物に加え、これらに通常用いられる、保湿剤、界面活性剤、色素、香料、防腐剤、殺菌剤、および酸化防止剤などの、補助剤および添加剤を含んでもよい。
また、本明細書におけるシノリン含水結晶又はシノリン含水結晶含有組成物は、塗料組成物やその他のコーティング剤などの紫外線吸収用組成物の活性成分としても有用である。塗料組成物やその他のコーティング剤は、スプレー法、ディッピング法、ローラーコート法、フローコーター法、流し塗り法などの当業者に公知の方法を用いて、基材(例えば金属、プラスチック、木材、セラミック、ガラス、繊維、紙等)に塗布またはコーティングされる。かかる紫外線吸収用組成物は、工業用途および医療機器等に適用することができる。例えば、かかる紫外線吸収用組成物を、コンタクトレンズおよび眼鏡レンズに適用してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<実施例1:シノリンの調製と精製>
シノリンの調製は、国際公開第2015/174427号パンフレットの実施例1記載の方法に従って行った。すなわち、ストレプトマイセス・エバメチルス(Streptomyces avermitilis) MA−4680株(NITE寄託番号:NBRC 14893)に、4種のマイコスポリン様アミノ酸生合成酵素遺伝子を従来公知の方法により相同組換えにより導入し、シノリンを生産する微生物を調製した。得られた微生物を20mLのAVM培地にて、28℃で48時間振盪培養し、前培養液とした。次いで、前培養液を3基のジャーファーメンター(容量10L)に入れた各6LのTSBt培地にそれぞれ6mL添加し、28℃で2週間通気撹拌培養した。培養終了後、得られた培養液をろ過することにより除菌し、14.4Lの培養上清を得た。得られた培養上清のシノリン濃度は2.0g/Lであった。培養上清にアセトン33Lを加えて生じた沈殿をろ別した後、ろ液を約1.4Lになるまで減圧濃縮した。陽イオン交換樹脂PK218(三菱化学社)10Lを充填し、予めナトリウムイオンを水素イオンに置換しておいたカラムに、前記濃縮ろ液をチャージし、脱イオン水300Lで溶出してシノリン画分を回収した。さらに回収したシノリン含有溶液を、活性炭「白鷺A−5」(大阪ガスケミカル社)を充填したカラム4.5Lにチャージしてシノリンを吸着させ、脱イオン水90Lでカラムを洗浄した後、50%エタノール30Lでシノリンを溶出させた。シノリン画分を回収し0.78Lまで減圧濃縮した。得られたシノリン水溶液のシノリン濃度は31g/L、シノリン純度は99.8%であった。
なお、シノリン濃度は、下記条件によるHPLC分析において保持時間約8.25分のシノリンのピーク面積を算出し検量線と比較する事により求めた。また、シノリン純度は、下記条件によるHPLC分析において全ピーク面積に対するシノリンのピーク面積の割合として求めた。
<HPLC分析条件>
カラム: YMC−Pack ODS−AQ S−5μM、12nm
250×4.6mmI.D.
流 速: 0.5mL/分
温 度: 30℃
溶離液: 0.1%ギ酸水溶液
検 出: 紫外可視吸光度検出器(波長334nm)
<実施例2:シノリンの結晶の調製>
従来のシノリン無水結晶とは異なるシノリンの結晶を見出すことを目的として、晶析温度、シノリン濃度などシノリンの結晶化条件の探索を行った。
その結果、実施例1で得たシノリン水溶液0.76Lを、エバポレーターを用いて、該シノリン水溶液当たりのシノリン含有濃度が35質量%まで濃縮し、室温で一晩静置することにより、水溶液からシノリンを晶析することに成功した。得られたシノリンの結晶を回収し、自然乾燥することにより、シノリンの結晶8.7gを得た。得られたシノリンの結晶の写真を図1に示す。
なお、前記方法で得られたシノリンの結晶と従来公知のシノリン無水結晶とを比較するため、実施例1で得たシノリン水溶液16mLを浴温40℃でエバポレーターを用いて1.3gになるまで濃縮し、エタノール0.8mLを添加して5℃に冷却することにより、シノリン無水結晶を析出させた後、得られた結晶を回収し、減圧乾燥することにより、0.22gのシノリン無水結晶を得た。
<実施例3:水溶液から晶析したシノリンの結晶の融点>
水溶液から晶析したシノリンの結晶とシノリン無水結晶との異同を確認することを目的として、融点の測定を行った。
実施例2で水溶液から晶析したシノリンの結晶を自動融点測定装置(商品名「MP70」、メトラー・トレド社販売)に供し、結晶の融点を測定した。また、対照として、別途調製したシノリン無水結晶についても同様に測定を行った。
その結果、水溶液から晶析したシノリンの結晶は、その融点が117〜125℃であり、シノリン無水結晶の融点である151〜154℃とは大きく異なっていたことから、従来のシノリン無水結晶とは異なる結晶であることが示唆された。
<実施例4:水溶液から晶析したシノリンの結晶の粉末X線回折パターンの測定>
水溶液から晶析したシノリンの結晶とシノリン無水結晶との異同を確認することを目的として、粉末X線回折パターンの測定を行った。
実施例2で水溶液から晶析したシノリンの結晶を乳鉢ですり潰し、粉末化した後、得られた結晶粉末約50mgをシリコン製無反射板に乗せ、市販の反射光方式による粉末X線回折装置(商品名「X’ Pert Pro MPD」、スペクトリス株式会社製)を用い、Cu対陰極から放射される特性X線であるCuKα線(波長:1.5405オングストローム)を照射し、粉末X線回折パターンを測定した。また、対照として、別途調製したシノリン無水結晶についても同様に測定を行った。水溶液から晶析したシノリンの結晶およびシノリン無水結晶の粉末X線回折パターンをそれぞれ図2の(A)および(B)に示す。
図2から明らかなように、水溶液から晶析したシノリンの結晶は、少なくとも回折角(2θ)6.8°、7.9°、11.8°、及び15.8°付近にシノリン無水結晶には認められない特徴的なピークを示し、シノリン無水結晶と全く異なる粉末X線回折パターンを示したことから、従来のシノリン無水結晶とは異なる結晶であることが示唆された。
<実施例5:水溶液から晶析したシノリンの結晶の元素分析>
水溶液から晶析したシノリンの結晶の元素組成を確認することを目的として、元素分析を行った。
実施例2で水溶液から晶析したシノリンの結晶を2mg秤取し、元素分析装置(商品名「2400 CHNS/O Series II System」、パーキン・エルマー社製)を用いて、反応温度980℃、還元温度650℃の条件下で炭素原子(C)、水素原子(H)、および窒素原子(N)について定量を行った。
その結果、水溶液から晶析したシノリンの結晶の元素組成は、C:42.65質量%、H:6.30質量%、およびN:7.59質量%であることが判明した。この結果は、当該結晶がシノリン二含水結晶(C1320・2HO)であると仮定した場合の元素組成の理論値であるC:42.39質量%、H:6.57質量%、およびN:7.61質量%とそれぞれよく一致することから、当該結晶はシノリン二含水結晶であることが示唆された。
<実施例6:水溶液から晶析したシノリンの結晶のX線結晶構造解析>
水溶液から晶析したシノリンの結晶の構造を決定することを目的として、X線結晶構造解析を行った。
実施例2で水溶液から晶析したシノリンの単結晶を単結晶X線回折装置(商品名「VariMax with Saturn」、株式会社リガク販売)に供し、液体窒素気流下において、Mo対陰極から放射される特性X線であるMoKα線(波長:0.70926オングストローム)を照射し、X線回折データの測定を行った。その後、得られたデータの構造解析を構造解析ソフトウェア(商品名「CrystalClear」、株式会社リガク販売)を用いて行った。得られたX線回折データの解析値を表1に、結晶構造の原子座標を表2に、ORTEP図を図3に示す。
Figure 0006945288

Figure 0006945288
Figure 0006945288

Figure 0006945288

Figure 0006945288
表1に示されるとおり、水溶液から晶析したシノリンの結晶は三斜晶であり、その空間群はPであり、その格子定数はa=5.4Å、b=11.7Å、c=13.6Å、α=105.7°、β=99.3°、γ=94.3°であることが判明した。得られた結晶構造は、構造の信頼性を示す指標であるR−factor及びweighted R−factorがそれぞれ3.53%及び8.09%と十分に低かったことから、信頼性の高いものであると判断した。表2および図3に示されるとおり、結晶の非対称単位には、2分子のシノリンと1分子の水に加え、さらに合計で3分子相当の水分子が結晶のa軸方向の空隙に沿って非化学量論的に存在することが確認され、水分子はシノリン2分子に対して合計で約4分子相当の量が存在することが判明した。すなわち、ここでa軸方向の空隙に沿って非化学量論的に存在する3つの水分子は、表2の占有率が1に満たない酸素を含む水分子で、図3ではO41〜O43、O51、O52、O61〜O65がそれにあたる。これらの結果により、ここでのシノリン含水結晶が一つの固定した結晶単位からなるのでなく、水分子の結晶単位における位置に僅かな「ゆらぎ」のある特殊な結晶構造を有することが示された。
以上のことから、水溶液から晶析したシノリンの結晶は含水結晶と同定した。
<実施例7:シノリン含水結晶の吸湿性の評価>
シノリン含水結晶について、種々の相対湿度雰囲気下における結晶の質量を測定し、吸湿性の評価を行った。
実施例2で得たシノリン含水結晶200mgを温度25℃、相対湿度20%の雰囲気下に24時間静置した後、24時間毎に相対湿度を40%、60%、80%と段階的に上昇させた。各相対湿度で24時間静置した後の結晶について、高精度分析天びんを用いて質量をそれぞれ測定し、相対湿度20%時からの質量の増加率を求めた。また、対照として、別途調製したシノリン無水結晶についても同様に測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 0006945288
表3に示されるとおり、シノリン無水結晶は、相対湿度が20〜60%の範囲においては、質量の増加率が0.24%以下であったが、相対湿度が80%の雰囲気下では吸湿し、質量の増加率が11.38%にまで上昇した。一方、シノリン含水結晶は、相対湿度が20〜80%の範囲において、質量の増加率が0.46%以下であったことから、高湿下においても実質的に吸湿することなく、保存安定性に優れていることが判明した。
<実施例8:シノリン含水結晶含有組成物の製造>
実施例2で得られたシノリン含水結晶と二亜硫酸ナトリウムを1:5の重量比で混合する事により、シノリン含水結晶含有組成物を得る。この組成物は化粧品素材として有用である。
本明細書におけるシノリン含水結晶は、シノリン無水結晶と比較して、高湿下においても吸湿し難く、保存安定性に優れることから、より取り扱いが容易な素材として、化粧品、医薬部外品、または医薬品に使用することができる。
図2中の各符号は以下の回折ピークを示す:
a:回折角(2θ)6.8°の回折ピーク
b:回折角(2θ)7.9°の回折ピーク
c:回折角(2θ)11.8°の回折ピーク
d:回折角(2θ)13.7°の回折ピーク
e:回折角(2θ)15.8°の回折ピーク
f:回折角(2θ)16.5°の回折ピーク
g:回折角(2θ)17.7°の回折ピーク
h:回折角(2θ)20.6°の回折ピーク
i:回折角(2θ)22.8°の回折ピーク
j:回折角(2θ)23.8°の回折ピーク
k:回折角(2θ)26.4°の回折ピーク
l:回折角(2θ)27.6°の回折ピーク
m:回折角(2θ)40.3°の回折ピーク
n:回折角(2θ)48.7°の回折ピーク

Claims (8)

  1. X線源としてCuKα線を用いて得られる粉末X線回折図において、回折角(2θ)6.8°±0.2°、7.9°±0.2°、11.8°±0.2°及び15.8°±0.2°に回折ピークを示し、結晶水を7質量%以上10質量%以下含有することを特徴とするシノリン含水結晶。
  2. さらに回折角(2θ)13.7°±0.2°、16.5°±0.2°、17.7°±0.2°、20.6°±0.2°、22.8°±0.2°、23.8°±0.2°、26.4°±0.2°、27.6°±0.2°、40.3°±0.2°及び48.7°±0.2°から選択される少なくとも1つの回折角に回折ピークを示す、請求項1記載のシノリン含水結晶。
  3. 結晶が三斜晶であることを特徴とする請求項1又は2記載のシノリン含水結晶。
  4. 結晶の空間群がPであり、その格子定数がa=5.4±0.2Å、b=11.7±0.2Å、c=13.6±0.2Å、α=105.7±0.2°、β=99.3±0.2°、γ=94.3±0.2°であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシノリン含水結晶。
  5. 融点が117±0.5℃以上125±0.5℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシノリン含水結晶。
  6. 請求項1乃至のいずれかに記載のシノリン含水結晶を結晶の形態で含むことを特徴とする、化粧品用、医薬部外品用又は医薬品用のシノリン含水結晶含有組成物。
  7. シノリン純度が90%以上のシノリンの水溶液を調製する工程、前記水溶液を、水溶液当たりのシノリン含量が25質量%以上35質量%以下になるよう濃縮し濃縮液を得る工程、前記濃縮液に有機溶媒を添加することなく、室温で静置し、前記濃縮液からシノリンを晶析する工程、及び、得られた結晶を回収する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のシノリン含水結晶の製造方法。
  8. 請求項1乃至のいずれかに記載のシノリン含水結晶を種晶として用いることにより、シノリン溶液からシノリン含水結晶を晶出させ、これを採取することを特徴とする、シノリン含水結晶の製造方法。
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