JP6939614B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6939614B2
JP6939614B2 JP2018017414A JP2018017414A JP6939614B2 JP 6939614 B2 JP6939614 B2 JP 6939614B2 JP 2018017414 A JP2018017414 A JP 2018017414A JP 2018017414 A JP2018017414 A JP 2018017414A JP 6939614 B2 JP6939614 B2 JP 6939614B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
rolling
roll
hot
dip galvanized
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018017414A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019131879A (ja
Inventor
松本 優
優 松本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2018017414A priority Critical patent/JP6939614B2/ja
Publication of JP2019131879A publication Critical patent/JP2019131879A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6939614B2 publication Critical patent/JP6939614B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Coating With Molten Metal (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
近年、地球規模で二酸化炭素の排出量を削減することが求められている。特に、化石燃料を多量に消費する自動車分野では、排ガス量を削減し、燃費を向上させるために、車体重量を軽量化することが求められている。一方で、従来から自動車分野では、自動車の安全性を向上させることが求められている。
これらの要請を満たすために、自動車分野では、車体の軽量化及び安全性の向上を両立させる軽量かつ高強度な鋼板に対する需要が高まっている。
例えば、自動車のクロスメンバー及びサイドメンバー等の構造部材において、薄肉化しても強度を確保することが可能な高張力鋼板を採用することが増加している。このような高張力鋼板として、例えば、安価な元素であるSiの含有量を高めることで強度及び延性を増加させた鋼板が注目されている。
一方、自動車の車体では、耐食性及び外観を向上させるために、合金化溶融亜鉛めっきなどを施しためっき鋼板を用いることが多い。しかしながら、Siは、Feと比較して易酸化性の元素であるため、焼純工程にて鋼板の表面に濃化し易い。そのため、Si含有量が高い高張力鋼板に対してめっきを施した場合、濃化したSiによって、めっき密着性が低下したり、プレス成形等の後加工工程にてめっきの剥離が発生したりすることがあった。
そこで、Si含有鋼板などを母材とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき密着性及びめっき効率を向上させる冷間圧延に関する技術が種々検開発されている。
例えば、下記特許文献1には、ロール軸方向に研磨筋を付与したワークロールを用いてSi含有鋼板を冷間圧延し、Si含有鋼板の表面に残留応力を付与することで、溶融亜鉛めっきと、Si含有鋼板との密着性を向上させる技術が開示されている。
下記特許文献2には、冷間圧延された鋼板を焼鈍した後、溶融亜鉛めっきを施す前に、再度、圧延を行い、結晶構造中に転位を導入することによって、鋼板と、溶融亜鉛めっき層との合金化反応の均一性を向上させる技術が開示されている。
下記特許文献3には、Si含有鋼板において、鋼板中のSi含有量に応じて、冷間圧延を行う圧延ロールの表面粗さ及び圧延油を制御することで、圧延によって鋼板表面に導入される歪み量を小さくする技術が開示されている。特許文献3によれば、鋼板表層へのSiの濃化を抑制することができるため、Si含有鋼板と各種表面処理との密着性及び均一性を向上させることができる。
特開平7−90529号公報 特開平7−126822号公報 特開2003−251401号公報
ここで、Siは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程において、Feの拡散及びFe−Zn反応に関与することで、溶融亜鉛めっきと鋼板との合金化を遅延させる作用をも有する。そのため、Si含有量が高い高張力鋼板を母材とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、合金化速度が低下することで、生産効率が低下していた。
しかしながら、上記の特許文献1〜3では、鋼板と、溶融亜鉛めっき層との合金化反応の進行速度を加速させる冷間圧延の条件については、十分な検討がされていなかった。そこで、本発明は、亜鉛めっきと、鋼板との合金化速度をより向上させることが可能な、新規かつ改良された合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、質量%で、C:0.001%以上0.35%以下、Si:0.001%以上2.5%以下を含有し、残部がFe及び不純物である熱延酸洗後の鋼板を、下記式1及び式2を満たす圧延ロールにて少なくとも1回以上冷間圧延する工程と、冷間圧延後の前記鋼板を還元焼鈍する工程と、0.10質量%以上0.20質量%以下のAlを含有し、残部がZn及び任意元素である溶融亜鉛めっき浴に前記鋼板を浸漬し、前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を付着させる工程と、前記溶融亜鉛めっき層を付着させた前記鋼板を加熱し、前記鋼板と前記溶融亜鉛めっき層とを合金化処理する工程と、を含む、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提供される。
Figure 0006939614
前記熱延酸洗後の鋼板を冷間圧延する工程は、前記式1及び式2を満たす圧延ロール以外の圧延ロールによる圧延をさらに含んでもよい。
前記式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延は、さらに下記式3を満たしてもよい。
Figure 0006939614
上記構成によれば、還元焼鈍前の鋼板の表層に、より強いせん断歪みを導入することができるため、鋼板表層の結晶粒を合金化速度が速い超微細結晶粒に変換することができる。
以上説明したように本発明によれば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、溶融亜鉛めっき層と、鋼板との合金化をより促進させることが可能である。
本開示の一実施形態に係る製造方法にて製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼板を厚み方向に切断した断面の一部を示す模式図である。 冷延工程における圧延機の圧延ロールの配置の一例を説明する模式図である。 冷延工程における圧延機の圧延ロールの配置の一例を説明する模式図である。 冷延工程における圧延機の圧延ロールの配置の一例を説明する模式図である。 冷延工程における圧延機の圧延ロールの配置の一例を説明する模式図である。 冷延工程における圧延機の圧延ロールの配置の一例を説明する模式図である。 冷延工程における圧延機の圧延ロールの配置の一例を説明する模式図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.本発明の概要>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る方法にて製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼板を厚み方向に切断した断面の一部を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る方法にて製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼板1は、Si(ケイ素)又はP(リン)を高含有量で含有する鋼板10と、Zn(亜鉛)を主成分とするめっき層20と、を備える。めっき層20は、鋼板10の表面に設けられ、めっき層20及び鋼板10の界面では、鋼板10のFe(鉄)と、めっき層20のZn(亜鉛)とが合金化している。
ここで、鋼板10は、鋼板10の強度及び延性を向上させる元素であるSi又はPを高濃度で含有する。ただし、Si及びPは、鋼板10の表面及び結晶粒の粒界等に濃縮され易い元素であり、鋼板10の結晶粒の粒界等に濃縮されることで、鋼板10中の原子の拡散を抑制する。そのため、Si又はPを高濃度で含有する鋼板10を母材とする場合、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1では、鋼板10中のFeとめっき層20中のZnとの相互拡散が遅延することによって、鋼板10とめっき層20との合金化速度が低下していた。このような場合、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の合金化処理にかかる時間が長くなるため、めっき工程の生産効率が大幅に低下していた。
そこで、鋼板10の表面の結晶粒を微細化し、原子が拡散しやすい結晶粒界を鋼板10の表面に多数形成することで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の合金化速度を向上させることが検討されている。これによれば、合金化処理時に、結晶粒界を介して鋼板10中のFe及びめっき層20中のZnの拡散を促進させることができるため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の合金化速度を向上させることができる。
鋼板10の表面の結晶粒を微細化するためには、転移などの格子欠陥を結晶組織に導入する塑性歪みを鋼板10の表面に導入することが検討されている。例えば、相当塑性歪み7程度の巨大な歪みを鋼板10に導入した場合、鋼板10では、導入された歪みを受け止めるために「grain subdivision」と呼ばれる機構が作用することで結晶粒が分断され、ナノレベルの微細な結晶粒が生成される。
このような巨大な塑性歪みを鋼板10に付与するには、例えば、熱延酸洗後(すなわち、冷間圧延前)の鋼板10の表層に、より強いせん断歪みが導入されるように制御された冷間圧延を行うことが考えられる。本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の製造方法は、熱延酸洗後の鋼板10を下記の式1及び式2を満たす圧延ロールにて少なくとも1回以上冷間圧延することによって、鋼板10の表層により強いせん断歪みを導入するものである。
Figure 0006939614
なお、上記式1及び式2において、Tは、該圧延ロールによる圧延前の鋼板10の板厚(mm)であり、tは、該圧延ロールによる圧延後の鋼板10の板厚(mm)であり、Dは、該圧延ロールのロール径(mm)である。
上記の式1及び式2を満たす場合、比較的ロール径が小さい圧延ロールにて、板厚が厚い鋼板10を圧延することになるため、該圧延ロールによる圧延前後で鋼板10の板形状が急激に変化する。これにより、鋼板10の表層に強いせん断歪みを導入することができるため、鋼板10の表層の結晶粒をより微細化することができる。したがって、本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の製造方法によれば、結晶粒の微細化によってFe及びZnの相互拡散を促進させる結晶粒界をより多く形成することができるため、めっき層20と鋼板10との合金化速度を向上させることができる。
特に、本実施形態では、圧延ロールによる冷間圧延を用いて、鋼板10の表層に強いせん断歪みを導入することができるため、鋼板10の表層の結晶粒を面内で均一に微細化することができる。これによれば、鋼板10と、めっき層20との合金化を鋼板10の面内方向でより均一に進行させることができるため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の面内均一性を向上させることができる。
なお、本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の製造方法では、上述した式1及び式2を満たす圧延ロール以外の圧延ロールを用いた冷間圧延がさらに行われてもよく、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延が複数回行われてもよい。すなわち、熱延酸洗後の鋼板10に対する冷間圧延は、鋼板10が所望の厚さとなるまで複数回行われてもよい。このような冷間圧延のうち、少なくとも1回以上が上記式1及び式2を満たす圧延ロールにて行われ得る。
以下では、上記で概要を説明した本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の構成及び製造方法について、具体的に説明する。
<2.鋼板の組成>
まず、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の母材である鋼板10の組成について説明する。以下では特に断りがない限り、「%」とは、「質量%」を示し、鋼板10の各成分の割合は、鋼板10の総質量に対する割合で示す。なお、鋼板10において、以下で説明する各成分を除いた残部は、鉄(Fe)及び不純物である。
(C:0.001%以上0.35%以下)
C(炭素)は、鋼中に必然的に含有される元素である。Ti(チタン)及びNb(ニオブ)等が添加された極低炭素鋼板では、加工性を重視するため、C含有量は少ないほどよい。ただし、C含有量を過度に少なくした場合、鋼中の介在物が増加することで、鋼板10の伸び性に悪影響を及ぼすため、鋼板10中のC含有量の下限は0.001%とする。また、Cは、鋼板10の強度の増加に寄与する元素である。例えば、鋼板の引張強度を340MPa以上にするためには、C含有量は、0.01%以上とすることが好ましい。しかし、C含有量が0.35%を超える場合、鋼板10の溶接性が劣化するため、C含有量の上限は、0.35%とする。したがって、鋼板10中のC含有量は、0.001%以上0.35%以下であり、0.01%以上0.35%以下が好ましく、0.01%以上0.25%以下がより好ましい。
(Si:0.001%以上2.5%以下)
Si(ケイ素)は、鋼板10の延性を維持又は増加させつつ、かつ鋼板10の強度を向上させる元素である。Si含有量が0.001%未満である場合、鋼板10に対して要求される引張強度を実現することが困難になるため、鋼板10中のSi含有量の下限は、0.001%とする。また、Si含有量が2.5%を超える場合、本発明を適用しても十分な合金化速度の向上が得られなくなるため、鋼板中のSi含有量の上限は、2.5%とする。さらに、TRIP(Transformation Induced Plasticity)効果によって延性をさらに増加させるためには、鋼板10中のSi含有量は、0.3%以上とすることが好ましく、0.6%以上とすることがより好ましい。したがって、鋼板10中のSi含有量は、0.001%%以上2.5%以下であり、0.3%以上2.5%以下が好ましく、0.6%以上2.5%以下がより好ましい。
(P:0.020%以上0.1%以下)
P(リン)は、固溶強化元素であり、鋼板10の強度の増加に有効であるものの、Siと同様に、溶融亜鉛めっきと鋼板10との合金化を遅延させる元素である。鋼板10中のP含有量が0.020%未満である場合、鋼板10に対して要求される引張強度を実現することが困難になるため、好ましくない。また、鋼板10中のP含有量が0.1%を超える場合、本発明を適用しても十分な合金化速度の向上が得られなくなるため、好ましくない。したがって、鋼板10中のP含有量は、0.020%以上0.1%以下であることが好ましい。
(Mn:0.3%以上3.0%以下)
Mn(マンガン)は、鋼板10の強度増加に寄与する元素である。例えば、鋼板10の引張強度を340MPa以上にするためには、鋼板10中のMn含有量は、0.3%以上とすることが好ましい。ただし、Mn含有量が3.0%を超える場合、転炉における鋼の溶解及び精錬が困難になり、かつ鋼板10の溶接性が劣化する可能性があるため、鋼板10中のMn含有量は、3.0%以下とすることが好ましい。したがって、鋼板10の曲げ性の低下を抑制し、かつ鋼板10の強度を増加させるためには、鋼板10中のMn含有量は、0.3%以上3.0%以下とすることが好ましい。なお、鋼板10の引張強度を980MPa以上にするためには、鋼板10中のMn含有量は、例えば、1.8%以上3.0%以下とすることが好ましい。
(S:0.010%以下)
S(硫黄)は、鋼中に含有される不純物元素である。鋼板10の曲げ性及び溶接性を維持する観点から、鋼板10中のS含有量は少ないほど好ましい。鋼板10中のS含有量は、0.010%以下が好ましく、0.005%以下がより好ましく、0.003%以下がさらに好ましい。
(N:0.0060%以下)
N(窒素)は、鋼中に含有される不純物元素である。鋼板10の曲げ性を維持する観点から、鋼板10中のN含有量は少ないほど好ましい。鋼板10中のN含有量は、0.0060%以下が好ましく、0.004%以下がより好ましい。
(sol.Al:0.8%以下)
Al(アルミニウム)は、鋼の脱酸工程で添加される元素であり、鋼板10中にはsol.Al(酸可溶性アルミニウム)として含有される。Alは、炭窒化物を形成するTi等の元素の歩留まりを向上させるために有効な元素であるが、鋼板10中のSi含有量が0.2%以上である場合、必ずしも含有しなくともよい。これは、鋼板10中のSiを十分に内部酸化させるためには、酸素を消費するsol.Al含有量は少ない方が好ましいためである。鋼板10中のsol.Al含有量は、0.8%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.01%未満がさらに好ましい。
(任意元素)
Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Mo(モリブデン)及びB(ホウ素)は、必要に応じて、鋼板10中に1種又は2種以上含有される任意元素である。これらの元素を鋼板10中に含有させることにより、例えば、強度、穴広げ性又は伸び性等の鋼板10の諸特性を向上させることができる。
ただし、これらの元素は、所定量にて特性向上の効果が飽和してしまうため、所定量を超えて鋼板10に含有させることは、鋼板10の製造コストを増加させることになる。そのため、Cr含有量は、0.5%以下が好ましく、Ti含有量は、0.1%以下が好ましく、V含有量は、0.1%以下が好ましく、Nb含有量は、0.1%以下が好ましく、Ni含有量は、1%以下が好ましく、Cu含有量は、1%以下が好ましく、Mo含有量は、1%以下が好ましく、B含有量は、0.050%以下が好ましい。また、上述した強度、穴広げ性又は伸び性等の鋼板10の諸特性を向上させる効果を確実に得るためには、Cr含有量は、0.001%以上が好ましく、Ti含有量は、0.001%以上が好ましく、V含有量は、0.001%以上が好ましく、Nb含有量は、0.001%以上が好ましく、Ni含有量は、0.001%以上が好ましく、Cu含有量は、0.001%以上が好ましく、Mo含有量は、0.001%以上が好ましく、B含有量は、0.0003%以上が好ましい。
<3.めっき層の組成>
続いて、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1のめっき層20の組成について説明する。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板1のめっき層20は、Zn(亜鉛)及びAl(アルミニウム)を含有し、鋼板10から拡散したFeをさらに含有する。また、めっき層20と鋼板10との界面では、めっき層20中のZn及びAlと、鋼板10中から拡散したFeとが合金化している。
めっき層20中の平均Al濃度は、めっき層20を形成する溶融亜鉛めっき浴のAl濃度とほぼ同じであり、おおよそ0.080%以上0.15%以下である。また、めっき層20には、任意元素として、Pb(鉛)、Cd(カドミウム)、Sb(アンチモン)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Mg(マグネシウム)又はSi(ケイ素)等がそれぞれ0.1%以下で含有されていてもよい。これらの任意元素は、本発明の効果に対して特に影響を及ぼさない。なお、上述した各成分を除いためっき層20の残部は、Znである。
めっき層20には、鋼板10から拡散したFeが含有され、めっき層20中の平均Fe濃度は、8%以上15%以下であることが好ましい。めっき層20中の平均Fe濃度が8%未満である場合、合金化処理の加熱温度によっては、めっき層20にη相が残存する可能性があるため、好ましくない。めっき層20中の平均Fe濃度は、9%以上がより好ましい。一方、めっき層20中の平均Fe濃度が15%を超える場合、めっき層20と鋼板10との界面にΓ相が厚く形成されることで、耐パウダリング性が著しく低下してしまうため、好ましくない。めっき層20中の平均Fe濃度は、14%以下が好ましく、13%以下がさらに好ましい。
なお、上述しためっき層20中の各成分の平均濃度は、めっき層20の総質量に対する各成分の割合である。各成分の平均濃度は、例えば、めっき層20を酸などで溶解した溶液をICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)等を用いて分析することで算出することができる。
なお、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1におけるめっき層20の付着量は、特に限定されないが、既存の設備で容易に調整可能な、片面あたり30g/m以上とすることが好ましい。また、めっき層20の付着量は、耐パウダリング性を大きく低下させないために、片面あたり70g/m以下とすることが好ましい。したがって、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1のめっき層20の付着量は、片面あたり30g/m以上70g/m以下が好ましく、片面あたり40g/m以上60g/m以下がより好ましい。
<4.製造方法>
次に、本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
まず、上述した組成を有する鋼スラブを用意し、用意した鋼スラブを熱間圧延によって鋼板10とする。続いて、熱間圧延した鋼板10を酸洗し、酸化物等を除去した熱延酸洗後の鋼板10に対して、以下の工程を順次施すことにより、本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板1を製造することができる。なお、熱間圧延及び酸洗の条件については、公知の一般的な条件を採用することができるため、ここでの説明は省略する。
冷延工程:鋼板10を冷間圧延する工程
焼鈍工程:冷間圧延した鋼板10を焼鈍する工程
めっき工程:焼鈍した鋼板10を溶融亜鉛めっき浴へ浸漬し、鋼板10の表面にめっき層20を形成する工程
合金化工程:めっき層20が形成された鋼板10を加熱し、鋼板10とめっき層20とを合金化する工程
(冷延工程)
冷延工程では、鋼板10の表層に強いせん断歪みを導入しつつ、鋼板10を所望の厚さまで冷間圧延する。具体的には、冷延工程では、熱間圧延よりも低い温度下で、鋼板10を圧延することで、鋼板10をさらに薄板化する。ただし、鋼板10の表層に強いせん断歪みを導入するために、冷延工程における圧延の少なくとも1回以上は、下記の式1及び式2を満たす圧延ロールによって行われる。下記の式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延によれば、圧延前後で鋼板10の板形状を急激に変化させることができるため、鋼板10の表層に強いせん断歪みを導入することができる。
Figure 0006939614
なお、上記式1及び式2において、Tは、該圧延ロールによる圧延前の鋼板10の板厚(mm)であり、tは、該圧延ロールによる圧延後の鋼板10の板厚(mm)であり、Dは、該圧延ロールのロール直径(mm)である。
より詳細には、式1は、圧延ロール及び鋼板10の接触弧長L≒(D/2*(T−t))1/2と、平均板厚TAve=(T+t)/2との比が閾値以下である場合に、合金化を促進するせん断歪みを鋼板10の表層に導入できることを表す。なお、式1中の定数1.28は、実験的に算出した定数である。式1は、定性的には、ロール径が小さい圧延ロールにて、板厚が大きい鋼板10を圧延することを表す。式1を満たす圧延ロールによれば、圧延ロールの下に鋼板10が潜り込む際に生じる圧延ロールと鋼板10との摩擦によって、大きなせん断歪みを鋼板10の表層に導入することができる。
ここで、ロール径が小さい圧延ロールは、一般的に、鋼板10の圧延によって摩耗しやすく、使用寿命が短い。しかしながら、式1によれば、合金化促進の効果を得つつ、圧延による摩耗に耐え、使用寿命が短くなりにくい圧延ロールのロール径を設定することが可能である。すなわち、本実施形態に係る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法によれば、圧延ロールの摩耗速度、及び圧延後の鋼板10の板形状に悪影響を与えずに、合金化促進の効果を得ることが可能な冷延工程の条件を設定することが可能である。
また、式2は、圧延ロール単体での圧延率が閾値以上である場合に、合金化を促進するせん断歪みを鋼板10の表層に導入できることを表す。なお、式2中の定数0.95は、実験的に算出した定数である。圧延ロール単体における圧延率が小さい場合、鋼板10の表層に導入されるせん断歪みの大きさも小さくなる。したがって、式2は、式1を満たす圧延ロールにて、閾値以上の圧延率の圧延をすることで、合金化を促進するせん断歪みを鋼板10の表層に導入することができることを表す。
なお、上記の式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延は、さらに下記の式3を満たしてもよい。
Figure 0006939614
式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延率が大きいほど、鋼板10の表層により大きなせん断歪みを導入することが可能になる。しかしながら、圧延率が過度に大きい場合、圧延ロールの摩耗速度、圧延後の鋼板10の板形状に悪影響が生じる可能性がある。また、このような場合、高剛性の圧延機が必要となるため、鋼板の製造ラインへの投資コストが増加してしまう。そのため、上記の式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延は、圧延率の下限を規定する上記式3をさらに満たすことが好ましい。すなわち、圧延ロールによる圧延前の鋼板10の板厚Tと、圧延ロールによる圧延後の鋼板10の板厚tとの比t/Tは、0.7より大きいことが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
ここで、図2A〜図4Bを参照して、鋼板10を冷間圧延する圧延ロールを備える圧延機の構成についてより具体的に説明する。図2A〜図4Bは、冷延工程における圧延機の圧延ロールの配置の一例を説明する模式図である。
例えば、図2Aに示すように、供給ロール310から送出された鋼板10は、通板方向に配列された複数の圧延ロール101、102によって圧延された後、巻取ロール320に巻き取られてもよい。圧延ロール101、102は、鋼板10を挟んで対向するように複数設けられ、供給ロール310から巻取ロール320へ一方向に搬送される鋼板10を挟み込むことで圧延する。例えば、圧延ロール101、102は、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールであってもよい。このように、通板方向に配列された複数の圧延ロール101、102にて、供給ロール310から巻取ロール320へ一方向に搬送される鋼板10を圧延する方法は、例えば、タンデム式とも称される。
例えば、図2Bに示すように、供給ロール310から送出された鋼板10は、供給ロール310及び巻取ロール320の間に配置された圧延ロール101、102によって圧延された後、巻取ロール320に巻き取られてもよい。圧延ロール101、102は、鋼板10を挟んで対向するように1つ設けられ、供給ロール310と巻取ロール320との間を往復する鋼板10を挟み込むことで圧延する。例えば、圧延ロール101、102は、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールであってもよい。このように、供給ロール310と巻取ロール320との間に設けられた圧延ロール101、102にて、供給ロール310と巻取ロール320との間を往復する鋼板10を圧延する方法は、例えば、リバース式とも称される。
また、図3A及び図3Bに示すように、冷延工程では、上述した式1及び式2を満たす圧延ロール以外の圧延ロールにて、さらに圧延が行われてもよい。
例えば、図3Aに示すように、供給ロール310から送出された鋼板10は、通板方向に配列された圧延ロール101、102と、圧延ロール201、202とによって圧延された後、巻取ロール320に巻き取られてもよい。圧延ロール101、102、及び圧延ロール201、202は、鋼板10を挟んで対向するように設けられ、供給ロール310から巻取ロール320へ一方向に搬送される鋼板10を挟み込むことで圧延する。ここで、圧延ロール101、102は、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールであってもよく、圧延ロール201、202は、上述した式1及び式2を満たさない圧延ロールであってもよい。このように、通板方向に配列された圧延ロール101、102、及び圧延ロール201、202にて、供給ロール310から巻取ロール320へ一方向に搬送される鋼板10を圧延する方法は、例えば、図2Aと同様に、タンデム式とも称される。
例えば、図3Bに示すように、供給ロール310から送出された鋼板10は、供給ロール310及び巻取ロール320の間に配置された圧延ロール101、102と、圧延ロール201、202とによって圧延された後、巻取ロール320に巻き取られてもよい。圧延ロール101、102、及び圧延ロール201、202は、鋼板10を挟んで対向するように1つずつ設けられ、供給ロール310と巻取ロール320との間を往復する鋼板10を挟み込むことで圧延する。ここで、圧延ロール101、102は、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールであってもよく、圧延ロール201、202は、上述した式1及び式2を満たさない圧延ロールであってもよい。このように、供給ロール310と巻取ロール320との間に設けられた圧延ロール101、102、及び圧延ロール201、202にて、供給ロール310と巻取ロール320との間を往復する鋼板10を圧延する方法は、図2Bと同様に、例えば、リバース式とも称される。
さらに、図4A及び図4Bに示すように、冷延工程では、複数の圧延機を用いて圧延が行われてもよい。
例えば、図4Aに示すように、鋼板10は、圧延機401、402によって圧延されてもよい。具体的には、圧延機401では、鋼板10は、供給ロール310から送出された後、圧延ロール101、102にて圧延され、巻取ロール320に巻き取られる。その後、圧延機402では、鋼板10は、供給ロール330から送出された後、圧延ロール201、202にて圧延され、巻取ロール340に巻き取られる。圧延機401の圧延ロール101、102は、鋼板10を挟んで対向するように設けられ、供給ロール310から巻取ロール320へ一方向に搬送される鋼板10を挟み込むことで圧延する。圧延機402の圧延ロール201、202は、鋼板10を挟んで対向するように複数設けられ、供給ロール330から巻取ロール340へ一方向に搬送される鋼板10を挟み込むことで圧延する。ここで、圧延ロール101、102は、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールであってもよく、圧延ロール201、202は、上述した式1及び式2を満たさない圧延ロールであってもよい。
例えば、図4Bに示すように、鋼板10は、圧延機401、403によって圧延されてもよい。具体的には、圧延機401では、鋼板10は、供給ロール310から送出された後、圧延ロール101、102にて圧延され、巻取ロール320に巻き取られる。その後、圧延機403では、鋼板10は、供給ロール330から送出された後、圧延ロール201、202にて圧延され、巻取ロール340に巻き取られる。圧延機401の圧延ロール101、102は、鋼板10を挟んで対向するように設けられ、供給ロール310から巻取ロール320へ一方向に搬送される鋼板10を挟み込むことで圧延する。圧延機403の圧延ロール201、202は、鋼板10を挟んで対向するように1つ設けられ、供給ロール310と巻取ロール320との間を往復する鋼板10を挟み込むことで圧延する。ここで、圧延ロール101、102は、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールであってもよく、圧延ロール201、202は、上述した式1及び式2を満たさない圧延ロールであってもよい。
なお、図2A〜図4Bに示す圧延機では、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールによって、冷延工程における1回目の圧延が行われる構成を示した。ただし、本実施形態は、かかる例示に限定されない。上述した式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延は、冷延工程のどの段階で行われてもよい。ただし、式1及び式2にて示した条件を満たすためには、式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延は、鋼板10の板厚が比較的厚い冷延工程の前半に行われることが好ましい。例えば、冷延工程が6回の冷間圧延で構成される場合、式1及び式2を満たす圧延ロールは、1回目〜3回目の冷間圧延に用いられることが好ましい。
(焼鈍工程)
焼鈍工程では、冷間圧延された鋼板10を還元雰囲気下で焼鈍する。焼鈍時の雰囲気は、例えば、水素濃度が3体積%以上12体積%以下であり、露点が−40℃以上20℃以下である窒素−水素混合の還元雰囲気としてもよい。焼鈍時の雰囲気の水素濃度を低くすることにより、露点の上昇を緩和することができるため、雰囲気の水素濃度は、3体積%以上12体積%以下とすることが好ましく、3体積%以上8体積%以下とすることがより好ましい。また、焼鈍時の雰囲気の露点は、−30℃以上10℃以下が好ましく、−20℃以上10℃以下がより好ましい。なお、焼鈍時の雰囲気には、さらに不純物ガスとして、HO、CO、CO、CH等が微量含まれてもよい。
焼鈍時の温度は、焼鈍工程で一般的な温度であればよく、例えば、700℃以上850℃以下の温度としてもよい。焼鈍の時間は、焼鈍工程で一般的な時間であればよく、例えば、10秒以上50秒以下としてもよい。このような焼鈍工程を経ることによって、せん断歪みが導入された鋼板10の表層の結晶粒を微細化し、原子の拡散速度が速い結晶粒界を多数形成することができる。これにより、後段の合金化工程において、鋼板10とめっき層20との界面におけるFe及びZnの拡散が促進されることができるため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の合金化速度を向上させることができる。
(めっき工程)
めっき工程では、めっき浴の総質量に対して0.10%以上0.20%以下のAlを少なくとも含有し、残部がZnである溶融亜鉛めっき浴へ、還元焼鈍後の鋼板10を浸漬することで、鋼板10の表面(例えば、両主面)にめっき層20を形成する。
ただし、めっき浴中のAl濃度が0.10%未満である場合、鋼板10がめっき浴に浸漬している間に、鋼板10とめっき層20との合金化が進行することで、めっき付着量の制御が困難になる可能性がある。また、めっき浴中のAl濃度が0.10%未満である場合、めっき浴を保持するポット底部にボトムドロス(例えば、FeZnなど)が形成され易くなる。このような場合、形成されたドロスが鋼板10に付着することで、めっき層20に欠陥が生じやすくなるため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の歩留まりが大きく低下してしまう。一方、めっき浴中のAl濃度が0.20%を超える場合、鋼板10とめっき層20との合金化速度が大幅に低下することで、めっき工程の操業効率が低下してしまう。よって、めっき浴中のAl濃度は、したがって、めっき浴中のAl濃度は、0.10%以上0.20%以下であり、0.15%以上0.20%以下が好ましい。
なお、Znを主成分とするめっき浴中には、上述したAl以外に、不純物であるFe並びに任意元素であるPb、Cd、Sb、Cr、Ni、W、Ti、Mg又はSiがそれぞれ0.1%以下で含有されていてもよい。なお、これら各成分は、本発明の効果には影響を及ぼさない。
めっき浴の浴温は、例えば、440℃以上470℃以下としてもよい。また、めっき浴に浸漬する鋼板10は、めっき浴の温度を安定させる観点から、浴温±20℃以内の温度になるようにあらかじめ加熱されてもよい。
(合金化工程)
合金化工程では、めっき層20が形成された鋼板10を、例えば、480℃以上600℃以下の温度で加熱することで、鋼板10とめっき層20との合金化を進行させる。ただし、鋼板10及びめっき層20を過度に高温で合金化させた場合、硬度が高いFeZn合金であるΓ相及びΓ相が形成され、耐パウダリング性が低下する可能性がある。したがって、鋼板10の加熱温度は、600℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましく、530℃以下がさらに好ましい。鋼板10の加熱温度の下限は、特に限定されないが、例えば、480℃としてもよい。合金化工程において、鋼板10を加熱する手段は、特に制限されず、輻射加熱、高周波誘導加熱又は通電加熱等のいずれを用いることも可能である。
以上の工程を経ることで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1を製造することができる。合金化溶融亜鉛めっき鋼板1では、原子の拡散速度が速い結晶粒界を鋼板10の表層に多数形成することで、Fe及びZnの拡散を促進させることができるため、鋼板10及びめっき層20の合金化速度を向上させることができる。
本実施形態によれば、鋼板10及びめっき層20の合金化速度を向上させることで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の生産性を向上させ、製造ラインにおける消費エネルギーを削減することも可能である。さらに、本実施形態によれば、鋼板10とめっき層20との間で未合金化の領域を低下させることができるため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の歩留まりを改善すると共に、鋼板10とめっき層20との密着性を向上させることも可能である。
なお、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1のめっき層20上には、クロム酸処理、リン酸塩処理、又は樹脂皮膜塗布などの公知の後処理が施されてもよい。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の最表面(すなわち、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1のめっき層20の表面、又は後処理被膜の表面)には、防錆油が塗付されてもよい。合金化溶融亜鉛めっき鋼板1の最表面に塗付される防錆油は、市販の一般的な防錆油を用いてもよいが、S又はCaを含有した高潤滑性防錆油を用いてもよい。
以下では、実施例及び比較例を参照しながら、本発明の一実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について、より具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一条件例であり、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
まず、質量%で、C:0.002%、Si:0.1%、Mn:0.15%、及びP:0.09%を含有し、残部がFe及び不純物である鋼を鋳造し、スラブに加工した。続いて、作製したスラブを大気中にて1250℃で1時間保持した後、粗圧延及び仕上げ圧延を含む熱間圧延を行うことで、板厚2.3mm又は4.3mmの鋼板とした。なお、仕上げ圧延は950℃で行った。
続いて、熱間圧延した鋼板を酸洗した後、下記表1に示す圧延を含む冷間圧延を行うことで、最終的に板厚0.7mmの鋼板とした。なお、下記表1に示す圧延は、冷延工程の1回目に行った。冷延工程の2回目以降の圧延は、上述した式1及び式2を満たさない一般的な圧延ロール(例えば、ロール直径が400mmの圧延ロール)を用いた圧延とした。
その後、冷間圧延した鋼板を75℃のNaOH溶液で脱脂洗浄した後、N+3体積%〜8体積%H、かつ露点−40℃の還元雰囲気中で、800℃にて60秒間、還元焼鈍した。焼鈍後、溶融亜鉛めっき浴の浴温(455℃)近傍まで、15℃/sにて鋼板を冷却した後、0.135%のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴に鋼板を浸漬した。鋼板をめっき浴に3.0秒間浸漬した後、ワイピング方式によりめっき付着量を片面あたり50g/mに調整した。
次に、めっき鋼板に対して、通電加熱装置を用いて520℃にて合金化処理を行い、めっき層中のFe濃度が4g/mに達するまでの目安時間を計測することで、合金化時間を測定した。なお、冷却には、空冷方式を用いた。実施例及び比較例の各々における合金化時間の測定結果を表1に示す。
以下の表1にて実施例及び比較例の各々の冷間圧延条件、及び評価結果を示す。また、圧延ロールが式1又は式2を満たすことを「OK」で表し、圧延ロールが式1又は式2を満たさないことを「NG」で表した。
Figure 0006939614
表1に示す結果からわかるように、本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた実施例1〜4では、比較例1〜9と比較して、合金化時間が短縮しており、合金化速度が向上していることがわかる。具体的には、式1及び式2の両方を満たす圧延ロールにて圧延を行っている実施例1〜4では、合金化時間が短縮されており、式1又は式2のいずれかを満たさない圧延ロールにて圧延を行っている比較例1〜9では、合金化時間が短縮されていないことがわかる。
続いて、上述した式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延のタイミングについて検討した。具体的には、冷延工程において、以下の表2に示すように、圧延ロールのロール径及び圧延率を変更して、1回目〜6回目の圧延をそれぞれ行い、合金化時間を計測した。なお、冷延工程以外の工程、及び鋼板等の組成については、上記の実施例及び比較例と同様とした。
なお、以下の表2に示す実施例5では、1回目の圧延が式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延に対応する。また、実施例6では、2回目の圧延が式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延に対応する。
Figure 0006939614
表2に示す結果を参照すると、本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延を冷延工程のいずれのタイミングで行った場合でも、同様に、合金化速度を向上させ、合金化時間を短縮することができることがわかる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
10 鋼板
11 凹部
20 めっき層
101、102、201、202 圧延ロール
310、330 供給ロール
320、340 巻取ロール
401、402、403 圧延機

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.001%以上0.35%以下、Si:0.001%以上2.5%以下を含有し、残部がFe及び不純物である熱延酸洗後の鋼板を、下記式1及び式2を満たす圧延ロールにて少なくとも1回以上冷間圧延する工程と、
    冷間圧延後の前記鋼板を還元焼鈍する工程と、
    0.10質量%以上0.20質量%以下のAlを含有し、残部がZn及び任意元素である溶融亜鉛めっき浴に前記鋼板を浸漬し、前記鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を付着させる工程と、
    前記溶融亜鉛めっき層を付着させた前記鋼板を加熱し、前記鋼板と前記溶融亜鉛めっき層とを合金化処理する工程と、
    を含む、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    Figure 0006939614
  2. 前記熱延酸洗後の鋼板を冷間圧延する工程は、前記式1及び式2を満たす圧延ロール以外の圧延ロールによる圧延をさらに含む、請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記式1及び式2を満たす圧延ロールによる圧延は、さらに下記式3を満たす、請求項1または2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    Figure 0006939614
JP2018017414A 2018-02-02 2018-02-02 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Active JP6939614B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018017414A JP6939614B2 (ja) 2018-02-02 2018-02-02 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018017414A JP6939614B2 (ja) 2018-02-02 2018-02-02 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019131879A JP2019131879A (ja) 2019-08-08
JP6939614B2 true JP6939614B2 (ja) 2021-09-22

Family

ID=67545688

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018017414A Active JP6939614B2 (ja) 2018-02-02 2018-02-02 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6939614B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS54142134A (en) * 1978-03-31 1979-11-06 Kobe Steel Ltd Manufacture of hot galvanized steel plate of good processability
JPH0790529A (ja) * 1993-09-24 1995-04-04 Sumitomo Metal Ind Ltd 珪素含有鋼溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP3520741B2 (ja) * 1997-11-05 2004-04-19 Jfeスチール株式会社 めっき密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP5499663B2 (ja) * 2009-11-30 2014-05-21 新日鐵住金株式会社 機械切断特性に優れた引張最大強度900MPa以上の高強度冷延鋼板及びその製造方法、並びに、高強度亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JP6398967B2 (ja) * 2015-12-25 2018-10-03 Jfeスチール株式会社 表面外観及びめっき密着性に優れた高強度溶融めっき熱延鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019131879A (ja) 2019-08-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5943156B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法
EP3647445B1 (en) Hot-pressed member and method for manufacturing same, and cold-rolled steel sheet for hot pressing and method for manufacturing same
JP5983895B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP5943157B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法
CN110291217B (zh) 高强度钢板及其制造方法
JP6879402B2 (ja) 高強度亜鉛めっき鋼板および高強度部材
JP5983896B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6673534B2 (ja) 高強度亜鉛めっき鋼板、高強度部材およびそれらの製造方法
JP2013237923A (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP2017186663A (ja) ホットスタンプ用合金化溶融亜鉛めっき鋼板
CN107849662B (zh) 冷轧钢板、镀覆钢板和它们的制造方法
JP6575724B1 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6939614B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6780804B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP6624352B1 (ja) 高強度亜鉛めっき鋼板、高強度部材およびそれらの製造方法
JP3951789B2 (ja) 歪み時効硬化特性に優れる溶融亜鉛めっき冷延鋼板の製造方法
JP7311068B1 (ja) 亜鉛めっき鋼板および部材、ならびに、それらの製造方法
WO2018211920A1 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
WO2023145146A1 (ja) 亜鉛めっき鋼板および部材、ならびに、それらの製造方法
WO2021002422A1 (ja) ホットスタンプ成形体
WO2024157551A1 (ja) 鋼板および部材、ならびに、それらの製造方法
JP2014043628A (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板および製造方法
JP2010222676A (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190208

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20190419

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190422

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190426

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201008

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210728

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210803

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210816

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6939614

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151