以下に、図面を参照して本発明に係る融着接続機及び光ファイバの回転調心方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
(融着接続機の構成)
本発明の実施形態に係る融着接続機の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る融着接続機の一構成例を示す図である。本実施形態に係る融着接続機1は、横断面構造について互いに同種の回転対称性を有する一対の光ファイバF1、F2同士を融着接続するものであり、図1に示すような各構成部を備える。
詳細には、図1に示すように、融着接続機1は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2を位置合わせ等ができるように融着接続機1にセットするためのホルダ2a、2b、可動ステージ3a、3b及び光ファイバクランプ4a、4bと、これらの光ファイバF1、F2同士を融着接続するための放電部5a、5b及び放電制御部6と、を備える。また、融着接続機1の装置本体18には、開閉可能な風防カバー(図示せず)が設けられており、ホルダ2a、2b、可動ステージ3a、3b、光ファイバクランプ4a、4b、及び放電部5a、5bは、この風防カバーに覆われるように装置本体18に配置されている。
また、図1に示すように、融着接続機1は、これらの光ファイバF1、F2の位置合わせ等に必要な画像を撮像するための第1撮像部7a及び第2撮像部7bと、得られた画像を処理する画像処理部8とを備える。また、融着接続機1は、光ファイバF1、F2の長手方向の位置を調整するための搬送駆動部9a、9bと、光ファイバF1、F2の径方向の位置を調整(調心)するための第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11と、光ファイバF1、F2の周方向における回転位置を調整(回転調心)するための回転駆動部12a、12bと、第1撮像部7a及び第2撮像部7bのフォーカスを調整するための第1フォーカス駆動部13a及び第2フォーカス駆動部13bとを備える。さらに、融着接続機1は、表示部としての機能と操作部としての機能とを兼ね備えるタッチパネル14と、光ファイバF1、F2の回転調心に必要な判断処理を行う判断処理部15と、融着接続機1の各構成部を制御するための制御部16とを備える。
本実施形態において、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2は、横断面構造について互いに同種の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバである。N回回転対称光ファイバは、Nを2以上の整数とした場合、N回の回転対称性を有する光ファイバである。例えば、N回回転対称光ファイバとして、偏波保持光ファイバ、マルチコア光ファイバ及び多角形光ファイバ等が挙げられる。偏波保持光ファイバの種類としては、PANDA型、楕円ジャケット型及びBow−tie型等が挙げられる。マルチコア光ファイバや多角形光ファイバの種類としては、コアの外形が楕円形のもの、クラッドの外形が多角形のもの、これらを組み合わせたもの等が挙げられる。
なお、ここでいう「同種」とは、横断面構造及び回転対称の回数の双方について互いに同じ分類に分けられるN回回転対称光ファイバ同士を意味する。例えば、PANDA型の偏波保持光ファイバ同士は、互いに同種の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバの一例である。すなわち、たとえ偏波保持光ファイバ同士であっても、偏波保持光ファイバの種類が異なれば、互いに種類が異なるN回回転対称光ファイバである。
また、本実施形態では、一対の光ファイバF1、F2の位置合わせとして、例えば、各光ファイバF1、F2の長手方向の端面位置を調整する端面位置調整、各光ファイバF1、F2の径方向の位置を調整する調心、各光ファイバF1、F2の周方向における回転位置を調整する回転調心、各光ファイバF1、F2の径方向からの撮像のフォーカスを調整するフォーカス調整等が挙げられる。
ホルダ2a、2bは、融着接続機1にセットする一対の光ファイバF1、F2を各々把持するものである。特に詳細な構造は図示しないが、ホルダ2a、2bは、例えば、V溝等を備える土台部、この土台部に対して開閉可能な蓋部等によって各々構成される。本実施形態において、ホルダ2aは、先端側の被覆が剥がされてガラス部分を露出させた状態の光ファイバF1を、一端からガラス部分を延出させ且つ他端から被覆部分を延出させた状態で蓋部と土台部のV溝とによって挟むようにして、把持する。ホルダ2bは、このホルダ2aと同様に、先端側の被覆が剥がされてガラス部分を露出させた状態の光ファイバF2を把持する。
なお、光ファイバF1、F2において、先端側は、互いに融着接続されるガラス部分の端面側である。この先端側とは反対の端面(被覆部分の端面)側は、基端側とする。また、光ファイバF1、F2のガラス部分(先端部分とも適宜いう)は、被覆が剥がされた光ファイバ部分である。
可動ステージ3a、3bは、光ファイバF1、F2の位置合わせのために移動及び回転させる可動なステージである。本実施形態において、可動ステージ3aには、例えば図1に示すように、光ファイバF1を保持した状態のホルダ2aが、光ファイバF1の先端側のガラス部分を放電部5a、5b側へ向けるように取り付けられる。可動ステージ3aは、後述する搬送駆動部9a、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11又は回転駆動部12aの作用により、光ファイバF1の長手方向又は径方向に移動し、或いは、光ファイバF1の長手方向の中心軸回りに回転する。一方、可動ステージ3bには、例えば図1に示すように、光ファイバF2を保持した状態のホルダ2bが、光ファイバF2の先端側のガラス部分を放電部5a、5b側へ向けるように取り付けられる。可動ステージ3bは、後述する搬送駆動部9b又は回転駆動部12bの作用により、光ファイバF2の長手方向に移動し、或いは、光ファイバF2の長手方向の中心軸回りに回転する。
ここで、光ファイバF1、F2の各ホルダ2a、2bが上述したように可動ステージ3a、3bに各々取り付けられることにより、融着接続機1における光ファイバF1、F2の長手方向及び径方向が設定される。図2は、本実施形態に係る融着接続機における一対の光ファイバの長手方向及び径方向の一例を示す図である。本実施形態では、図2に示すように、光ファイバF1、F2の長手方向としてZ軸方向が設定される。Z軸は、XYZの3軸直交座標系の一軸であり、光ファイバF1、F2の各長手方向中心軸に対して平行な軸である。また、光ファイバF1、F2については、互いに異なる複数(本実施形態では2つ)の径方向が設定される。例えば、図2に示すように、光ファイバF1、F2の径方向としてX軸方向及びY軸方向が設定される。X軸及びY軸は、各々、XYZの3軸直交座標系の一軸である。X軸は、光ファイバF1、F2の互いに異なる第1径方向及び第2径方向のうち、第1径方向に対して平行な軸であり、Y軸は、第2径方向に対して平行な軸である。すなわち、本実施形態において、光ファイバF1、F2の第1径方向及び第2径方向は、互いに垂直な径方向である。
また、本実施形態では、説明の便宜上、図1に示すように放電部5a、5bを境にして、右側に設けられた可動ステージ3a上のホルダ2aの光ファイバF1は「右側の光ファイバ」とし、左側に設けられた可動ステージ3b上のホルダ2bの光ファイバF2は「左側の光ファイバ」とする。
一方、光ファイバクランプ4a、4bは、光ファイバF1、F2の各ガラス部分の位置を可動ステージ3a、3bに対して各々相対的に固定するためのものである。図1に示すように、光ファイバクランプ4aは、右側の可動ステージ3a上に取り付けられたホルダ2aから先端側に延出する光ファイバF1のガラス部分を、可動ステージ3aに対して解除可能に留める。これにより、光ファイバクランプ4aは、右側の光ファイバF1のガラス部分の位置を可動ステージ3aに対して相対的に固定する。また、光ファイバクランプ4bは、左側の可動ステージ3b上に取り付けられたホルダ2bから先端側に延出する光ファイバF2のガラス部分を、可動ステージ3bに対して解除可能に留める。これにより、光ファイバクランプ4bは、左側の光ファイバF2のガラス部分の位置を可動ステージ3bに対して相対的に固定する。ここで、光ファイバクランプ4a、4bによって光ファイバF1、F2をクランプした状態で光ファイバF1、F2をZ軸中心に回転させてしまうと、光ファイバF1、F2のガラス部分が傷つく等のダメージを受け、この結果、光ファイバF1、F2同士の融着接続の強度が低下する恐れがある。この事態を回避するために、光ファイバクランプ4a、4bは、制御部16の制御に基づき、光ファイバF1、F2の回転調心が行われるに際して光ファイバF1、F2のクランプを各々解除する。
放電部5a、5bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の各ガラス部分に対して放電するためのものである。図1に示すように、放電部5a、5bは、右側の可動ステージ3a上のホルダ2aと左側の可動ステージ3b上のホルダ2bとが対向する方向に対して垂直な方向に対向するように、これらの可動ステージ3a、3b間に配置される。放電部5a、5bは、可動ステージ3a、3b上のホルダ2a、2bから各々延出する光ファイバF1、F2の各ガラス部分に対して、光ファイバF1、F2の径方向から放電する。この放電の強さの違いにより、光ファイバF1、F2の各ガラス部分(先端部分)は、クリーニング又は融着接続される。
放電制御部6は、放電部5a、5bによる放電の電流量等を制御するものである。放電制御部6は、後述する制御部16の制御に基づいて、放電部5a、5bに給電する放電電流及び印加する放電電圧の少なくとも一つの値を変化させ、これにより、放電部5a、5bから光ファイバF1、F2の各ガラス部分に加えられる放電のエネルギー量を制御する。例えば、放電制御部6は、光ファイバF1、F2の各ガラス部分を放電によってクリーニングする場合、このクリーニングに適したエネルギー量の放電(以下、クリーニング放電と適宜いう)を放電部5a、5bに行わせる。また、放電制御部6は、光ファイバF1、F2の各ガラス部分の端面同士を放電によって融着接続する場合、この融着接続に必要なエネルギー量の放電(以下、本放電と適宜いう)を放電部5a、5bに行わせる。
第1撮像部7a及び第2撮像部7bは、融着接続機1における調整空間領域19内に位置する光ファイバ(例えば一対の光ファイバF1、F2)を、当該光ファイバの径方向から撮像するものである。なお、調整空間領域19は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の位置合わせが行われる所定空間領域である。
詳細には、第1撮像部7aは、例えば図2に示すY軸方向を光軸方向とする光源及び撮像素子等によって構成され、可動ステージ3a、3b間の調整空間領域19を撮像領域とするように配置される。第1撮像部7aは、調整空間領域19内に位置する光ファイバF1、F2を、光ファイバF1、F2の一径方向であるY軸方向から撮像する。これにより、第1撮像部7aは、光ファイバF1、F2のY軸方向に対して垂直な径方向であるX軸方向について、光ファイバF1、F2の各々の状態を示す第1径方向画像を撮像する。第1撮像部7aは、光ファイバF1、F2の第1径方向画像を撮像する都度、この第1径方向画像の画像データを画像処理部8に送信する。
第2撮像部7bは、例えば図2に示すX軸方向を光軸方向とする光源及び撮像素子等によって構成され、可動ステージ3a、3b間の調整空間領域19を撮像領域とするように配置される。第2撮像部7bは、調整空間領域19内に位置する光ファイバF1、F2を、光ファイバF1、F2の一径方向であるX軸方向から撮像する。X軸方向は、上述したように、光ファイバF1、F2のY軸方向に対して垂直な径方向である。これにより、第2撮像部7bは、光ファイバF1、F2の径方向(Y軸方向)について、光ファイバF1、F2の各々の状態を示す第2径方向画像を撮像する。第2撮像部7bは、光ファイバF1、F2の第2径方向画像を撮像する都度、この第2径方向画像の画像データを画像処理部8に送信する。
画像処理部8は、第1撮像部7a及び第2撮像部7bによって撮像された各画像の画像データに対する各種画像処理を行う。詳細には、画像処理部8は、第1撮像部7aから画像データを受信し、受信した画像データに対して所定の画像処理を行う。これにより、画像処理部8は、例えば、縦方向をX軸方向とし且つ横方向をZ軸方向とする光ファイバF1、F2の第1径方向画像を構築する。本実施形態において、第1径方向画像は、例えば、光ファイバF1、F2の各々についてX軸方向の位置に対する輝度分布を示す輝度画像であり、光ファイバF1、F2のコア部及びクラッド部等の各構成部をX軸方向の位置に対する輝度の違いによって視覚的に区別し得る画像である。また、画像処理部8は、第2撮像部7bから画像データを受信し、受信した画像データに対して所定の画像処理を行う。これにより、画像処理部8は、例えば、縦方向をY軸方向とし且つ横方向をZ軸方向とする光ファイバF1、F2の第2径方向画像を構築する。本実施形態において、第2径方向画像は、例えば、光ファイバF1、F2の各々についてY軸方向の位置に対する輝度分布を示す輝度画像であり、光ファイバF1、F2のコア部及びクラッド部等の各構成部をY軸方向の位置に対する輝度の違いによって視覚的に区別し得る画像である。画像処理部8は、上記のように構築した第1径方向画像及び第2径方向画像の各画像信号を時系列に沿ってタッチパネル14に順次送信する。
また、画像処理部8は、第1撮像部7aによって撮像された第1径方向画像をもとに、光ファイバF1のY軸方向から見た状態を示すデータと、光ファイバF2のY軸方向から見た状態を示すデータとを取得する。さらに、画像処理部8は、第2撮像部7bによって撮像された第2径方向画像をもとに、光ファイバF1のX軸方向から見た状態を示すデータと、光ファイバF2のX軸方向から見た状態を示すデータとを取得する。画像処理部8は、これらのデータを判断処理部15に順次送信する。
搬送駆動部9a、9bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整を行うための駆動部である。詳細には、搬送駆動部9aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをZ軸方向に移動(図2に示すZ軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。搬送駆動部9aは、Z軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の長手方向に搬送する。これにより、搬送駆動部9aは、右側の光ファイバF1の長手方向における端面位置を調整する。また、搬送駆動部9bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって左側の可動ステージ3bをZ軸方向に移動させ得るように設けられる。搬送駆動部9bは、Z軸方向への可動ステージ3bの移動を通じて、可動ステージ3b上の左側の光ファイバF2を、光ファイバF2の長手方向に搬送する。これにより、搬送駆動部9bは、左側の光ファイバF2の長手方向における端面位置を調整する。
第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の調心を行うための駆動部である。詳細には、第1径方向駆動部10は、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをX軸方向に移動(図2に示すX軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。第1径方向駆動部10は、X軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の第1径方向に移動させる。これにより、第1径方向駆動部10は、右側の光ファイバF1の第1径方向(X軸方向)の位置を左側の光ファイバF2に合わせる調心(第1径方向の調心)を行う。また、第2径方向駆動部11は、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをY軸方向に移動(図2に示すY軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。第2径方向駆動部11は、Y軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の第2径方向に移動させる。これにより、第2径方向駆動部11は、右側の光ファイバF1の第2径方向(Y軸方向)の位置を左側の光ファイバF2に合わせる調心(第2径方向の調心)を行う。
回転駆動部12a、12bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の第1光ファイバと第2光ファイバとの回転調心を行い、この回転調心後の第1光ファイバに対して相対的に、この回転調心後の第2光ファイバの単位回転角θ分の周方向回転を少なくとも1回を行う複数の駆動部の一例である。本実施形態において、回転駆動部12a、12bは、上記回転調心を基準径方向について行う。基準径方向は、一対の光ファイバF1、F2の基準とする径方向である。単位回転角θは、N回回転対称光ファイバ(Nは2以上の整数)の周方向回転の前後で当該N回回転対称光ファイバの横断面構造が同じ形状となる最小の回転角であり、360/N(°)によって算出される。
詳細には、回転駆動部12aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aを、Z軸を中心として時計回り又は反時計回りに回転(図2に示すZ軸の実線矢印参照)させ得るように設けられる。回転駆動部12aは、Z軸を中心とする可動ステージ3aの回転を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の長手方向の中心軸回りに回転(すなわち周方向回転)させる。このような回転駆動部12aは、基準径方向について光ファイバF1の回転調心を行う。また、回転駆動部12bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって左側の可動ステージ3bを、Z軸を中心として時計回り又は反時計回りに回転させ得るように設けられる。回転駆動部12bは、Z軸を中心とする可動ステージ3bの回転を通じて、可動ステージ3b上の左側の光ファイバF2を、光ファイバF2の長手方向の中心軸回りに回転(すなわち周方向回転)させる。このような回転駆動部12bは、基準径方向について光ファイバF2の回転調心を行う。以下、回転調心といえば、特に説明がない限り、一対の光ファイバF1、F2の基準径方向についての回転調心を意味する。
また、これらの回転駆動部12a、12bのうち、一方の回転駆動部は、回転調心後の第1光ファイバに対して相対的に、回転調心後の第2光ファイバの単位回転角θ分の周方向回転を少なくとも1回を行う。例えば、第1光ファイバが左側の光ファイバF2であり、第2光ファイバが右側の光ファイバF1である場合、回転駆動部12aが、回転調心後の光ファイバF2に対して相対的に、回転調心後の光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転を少なくとも1回を行う。一方、第1光ファイバが右側の光ファイバF1であり、第2光ファイバが左側の光ファイバF2である場合、回転駆動部12bが、回転調心後の光ファイバF1に対して相対的に、回転調心後の光ファイバF2の単位回転角θ分の周方向回転を少なくとも1回を行う。
ここで、本実施形態では、一例として、一対の光ファイバF1、F2の基準径方向をX軸方向とし、この基準径方向に対して垂直な垂直径方向をY軸方向とする。また、上記のように回転駆動部12a、12bによって周方向回転等が行われる第1光ファイバ及び第2光ファイバのうち、第1光ファイバを左側の光ファイバF2とし、第2光ファイバを右側の光ファイバF1とする。この場合、上述した第1撮像部7a及び第2撮像部7bのうち、第1撮像部7aは、回転調心後の光ファイバF1及び光ファイバF2と、少なくとも1回の周方向回転後の光ファイバF1とを、所定の径方向(具体的には垂直径方向の一例であるY軸方向)から撮像する第1の撮像部として機能する。上述した画像処理部8は、回転調心後の光ファイバF2の所定の径方向(Y軸方向)から撮像された画像(第1撮像部7aによる光ファイバF2の第1径方向画像)をもとに、光ファイバF2の基準とする回転位置にある状態を示す基準状態データを取得する。また、上述した画像処理部8は、回転調心後及び少なくとも1回の周方向回転後の光ファイバF1の所定の径方向(Y軸方向)から撮像された複数の画像(第1撮像部7aによる光ファイバF1の複数の第1径方向画像)をもとに、光ファイバF1の複数の候補状態データを取得する。一方、上述した第1撮像部7a及び第2撮像部7bのうち、第2撮像部7bは、光ファイバF1及び光ファイバF2をX軸方向(基準径方向の一例)から撮像する第2の撮像部として機能する。上述した回転駆動部12a、12bは、この第2撮像部7bによって撮像された画像(第2撮像部7bによる光ファイバF1、F2の第2径方向画像)をもとに、X軸方向について光ファイバF1と光ファイバF2との回転調心を行う。
第1フォーカス駆動部13a及び第2フォーカス駆動部13bは、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各フォーカス調整を各々行うための駆動部である。詳細には、第1フォーカス駆動部13aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって第1撮像部7aの撮像素子(図示せず)を調整空間領域19内の光ファイバF1、F2に対して近接または離間させる方向に移動させ得るように設けられる。第1フォーカス駆動部13aは、この撮像素子の移動を通じて、第1撮像部7aのフォーカスを調整する。第2フォーカス駆動部13bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって第2撮像部7bの撮像素子(図示せず)を調整空間領域19内の光ファイバF1、F2に対して近接または離間させる方向に移動させ得るように設けられる。第2フォーカス駆動部13bは、この撮像素子の移動を通じて、第2撮像部7bのフォーカスを調整する。
タッチパネル14は、アイコンや画像等を表示する機能と、表示画面の押下に応じて各種操作のための信号を出力する機能とを兼ね備えるものである。詳細には、タッチパネル14は、制御部16の制御に基づいて、融着接続機1を操作するための各種アイコンと、調整空間領域19内の光ファイバF1、F2の各画像とを表示画面内に表示する。この際、タッチパネル14は、画像処理部8から時系列に沿って画像信号を順次受信し、受信した画像信号をもとに、第1撮像部7a及び第2撮像部7bによる光ファイバF1、F2の第1径方向画像及び第2径方向画像を表示する。また、タッチパネル14は、アイコンや画像等を表示する表示画面の押下の位置及び長さに応じた信号を、制御部16に対して出力する。
判断処理部15は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2間で横断面構造をより揃えるために必要な判断処理を行うものである。詳細には、判断処理部15は、画像処理部8から、一対の光ファイバF1、F2のうちの第1光ファイバの基準状態データと、第2光ファイバの複数の候補状態データとを取得する。本実施形態において、基準状態データは、例えば、回転調心後の光ファイバF2の基準とする回転位置にある状態を示すデータである。複数の候補状態データは、例えば、回転調心後及び少なくとも1回の周方向回転後の光ファイバF1の回転位置別に弁別され得る複数の状態を各々示すデータである。判断処理部15は、画像処理部8から取得した基準状態データと複数の候補状態データとを比較し、これら複数の候補状態データのうち、この基準状態データに最も近い候補状態データ(以下、近似状態データと適宜いう)を判断する。判断処理部15は、この近似状態データの判断処理の結果を示す電気信号を制御部16に送信する。
制御部16は、融着接続機1の各構成部を制御するものである。例えば、制御部16は、タッチパネル14から出力された信号に基づいて、タッチパネル14の表示と、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整から融着接続までの一連の処理とを制御する。本実施形態において、制御部16は、放電制御部6、搬送駆動部9a、9b、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11、回転駆動部12a、12b、第1フォーカス駆動部13a、及び第2フォーカス駆動部13b等を制御し、これにより、上記一連の処理を制御する。
特に、制御部16は、X軸方向について一対の光ファイバF1、F2の回転調心を行うように、回転駆動部12a、12bを制御する。また、制御部16は、判断処理部15による近似状態データの判断処理の結果に基づいて、回転調心後の第1光ファイバ(本実施形態では左側の光ファイバF2)に対して相対的に第2光ファイバ(本実施形態では右側の光ファイバF1)を上記近似状態データに対応する回転位置まで周方向回転するように、回転駆動部12a、12bを制御する。
(光ファイバの単位回転角分の周方向回転)
つぎに、本実施形態における第2光ファイバの単位回転角分の周方向回転について説明する。図3は、本実施形態における回転駆動部による第2光ファイバの単位回転角分の周方向回転を具体的に説明するための図である。図3には、光ファイバF1、F2の一例として、PANDA型の偏波保持光ファイバの横断面構造が図示されている。図3に示す例において、光ファイバF1は、コア部F1aと、コア部F1aの外周に形成されたクラッド部F1bと、コア部F1aに応力を付与する応力付与部F1c、F1dと、クラッド部F1bの外周を覆う被覆部(図示せず)とを備える。コア部F1aは、クラッド部F1bに比べて屈折率が高い石英ガラスからなり、光ファイバF1の横断面において、クラッド部F1bの径方向の中心部分に配置されている。2つの応力付与部F1c、F1dは、光ファイバF1の一径方向からコア部F1aを挟むように、クラッド部F1bのうちコア部F1aを中心として対称となる部分に配置されている。この光ファイバF1と同様に、光ファイバF2は、コア部F2aと、コア部F2aの外周に形成されたクラッド部F2bと、コア部F2aに応力を付与する応力付与部F2c、F2dと、クラッド部F2bの外周を覆う被覆部(図示せず)とを備える。すなわち、これらの光ファイバF1、F2は、横断面構造について互いに同種の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバ(図3では2回回転対称光ファイバ)である。
図3に例示する光ファイバF1、F2は、上述した回転駆動部12a、12bによって回転調心される。この場合、回転駆動部12aは、光ファイバF1の回転位置をコア部F1aと応力付与部F1c、F1dとがX軸方向に整列する回転位置にするように、X軸方向について光ファイバF1の回転調心を行う。これと同様に、回転駆動部12bは、光ファイバF2の回転位置をコア部F2aと応力付与部F2c、F2dとがX軸方向に整列する回転位置にするように、X軸方向について光ファイバF2の回転調心を行う。
ここで、一対の光ファイバF1、F2のうち、右側の光ファイバF1が回転調心後に単位回転角θの周方向回転の対象とされる第2光ファイバである場合、左側の光ファイバF2は、第2光ファイバの単位回転角θ分の周方向回転において基準とされる第1光ファイバである。すなわち、回転調心後の光ファイバF2の回転位置は、回転調心後に光ファイバF1に対して行われる単位回転角θ分の周方向回転の基準とする回転位置である。光ファイバF1の単位回転角θは、この基準とする回転位置に対して相対的に周方向回転する光ファイバF1の回転角であって、光ファイバF1の周方向回転の前後で光ファイバF1の横断面構造が同じ形状となる最小の回転角である。図3に示す例では、光ファイバF1、F2は、回転対称の回数が2回(N=2)のPANDA型の偏波保持光ファイバ(2回回転対称光ファイバの一例)である。このため、光ファイバF1の単位回転角θは、図3に示すように、180°(=360°/2)である。単位回転角θが180°である場合、光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転は、回転角が0°の場合と360°の場合とでは光ファイバF1の回転位置が同じであるから、光ファイバF2の基準とする回転位置に対する相対的な回転角が180°になる1回のみ行われる。
なお、光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転は、光ファイバF1がN≧3のN回回転対称光ファイバである場合も、上記と同様に、単位回転角θに応じて、回転角が0°の場合と360°の場合とを除く最大(N−1)回のうち少なくとも1回、行われる。例えば、光ファイバF1が3回回転対称光ファイバである場合、光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転は、単位回転角θが120°(=360°/3)であることから、光ファイバF2の基準とする回転位置に対する相対的な回転角が120°になる場合及び240°になる場合の最大2回のうち少なくとも1回、行われる。光ファイバF1が4回回転対称光ファイバである場合、光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転は、単位回転角θが90°(=360°/4)であることから、光ファイバF2の基準とする回転位置に対する相対的な回転角が90°になる場合、180°になる場合及び270°になる場合の最大3回のうち少なくとも1回、行われる。
(光ファイバの回転調心方法)
つぎに、本発明の実施形態に係る光ファイバの回転調心方法について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る融着接続機による光ファイバの回転調心方法の一例を示すフローチャートである。図5は、本実施形態に係る光ファイバの回転調心に用いられる基準状態データを具体的に説明するための図である。図6は、本実施形態に係る光ファイバの回転調心に用いられる複数の候補状態データを具体的に説明するための図である。図7は、本実施形態に係る光ファイバの回転調心を具体的に説明するための図である。
本実施形態に係る融着接続機1(図1参照)では、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の回転調心を開始するための操作が行われる。具体的には、図1に示すように、光ファイバF1を把持した状態のホルダ2aと光ファイバF2を把持した状態のホルダ2bとが、融着接続機1の装置本体18の可動ステージ3a、3bに各々セットされる。その後、装置本体18の風防カバー(図示せず)が閉じられる。この段階において、ホルダ2a、2bから各々延出する光ファイバF1、F2の各ガラス部分は、調整空間領域19の内部に位置している。融着接続機1では、一対の光ファイバF1、F2の回転調心を開始するための操作として、例えば、タッチパネル14のアイコンの押下又は上記風防カバーの閉鎖等の操作が行われる。融着接続機1は、この操作をトリガーとして、図4に示すステップS101〜S106の各処理を順次行い、これにより、一対の光ファイバF1、F2に対する真の回転調心を完了する。以下、一対の光ファイバF1、F2の基準径方向としてX軸方向(図2参照)を例示し、一対の光ファイバF1、F2の所定の径方向(本実施形態では上記基準径方向に対して垂直な垂直径方向)としてY軸方向(図2参照)を例示して、本実施形態に係る光ファイバの回転調心方法を説明する。
図4に示すように、融着接続機1は、横断面構造について互いに同種の回転対称性を有する一対の光ファイバF1、F2である第1光ファイバと第2光ファイバとの回転調心を行う(ステップS101)。
ステップS101において、第2撮像部7bは、光ファイバF1(第2光ファイバの一例)及び光ファイバF2(第1光ファイバの一例)を、一対の光ファイバF1、F2の基準とする基準径方向(本実施形態ではX軸方向)から撮像する。回転駆動部12a、12bは、第2撮像部7bによってX軸方向から撮像された光ファイバF1及び光ファイバF2の画像をもとに、X軸方向について光ファイバF1と光ファイバF2との回転調心を行う。この際、画像処理部8は、第2撮像部7bによって撮像された光ファイバF1、F2の第2径方向画像を構築し、この第2径方向画像によって示される光ファイバF1、F2の各輝度分布を抽出する。制御部16は、画像処理部8によって抽出された光ファイバF1の輝度分布をもとに、X軸方向について光ファイバF1の回転調心を行うよう回転駆動部12aを制御する。回転駆動部12aは、この制御部16の制御に基づいて、光ファイバF1の全回転位置のうちX軸方向から見た輝度分布が最も特徴的となる回転位置に光ファイバF1の回転位置を調整するように、光ファイバF1の回転調心を行う。また、制御部16は、画像処理部8によって抽出された光ファイバF2の輝度分布をもとに、X軸方向について光ファイバF2の回転調心を行うよう回転駆動部12bを制御する。回転駆動部12bは、この制御部16の制御に基づいて、光ファイバF2の全回転位置のうちX軸方向から見た輝度分布が最も特徴的となる回転位置に光ファイバF2の回転位置を調整するように、光ファイバF2の回転調心を行う。
ステップS101(回転調心ステップ)を実行後、融着接続機1は、回転調心後の第1光ファイバ及び第2光ファイバを、一対の光ファイバF1、F2の所定の径方向から撮像する(ステップS102)。ステップS102において、第1撮像部7aは、上述したステップS101による回転調心後の光ファイバF1、F2を、一対の光ファイバF1、F2の基準径方向に対して垂直な垂直径方向(本実施形態ではY軸方向)から撮像する。第1撮像部7aは、撮像した光ファイバF1、F2の画像データを画像処理部8に送信する。
ステップS102(第1の撮像ステップ)を実行後、融着接続機1は、回転調心後の第1光ファイバに対して相対的に、第2光ファイバの単位回転角θ分の周方向回転を行い、この周方向回転を行った後の第2光ファイバを上記所定の径方向から撮像するという一連の処理を少なくとも1回行う(ステップS103)。
ステップS103において、回転駆動部12bは、光ファイバF2の回転位置を回転調心後の回転位置に固定した状態となっている。回転駆動部12aは、この回転調心後の光ファイバF2に対して相対的に、光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転を行う。続いて、第1撮像部7aは、回転駆動部12aが単位回転角θ分の周方向回転を行った後の光ファイバF1を上記所定の径方向(本実施形態ではY軸方向)から撮像する。ステップS103においては、このような回転駆動部12aによる光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転から、第1撮像部7aによる光ファイバF1の上記所定の径方向(本実施形態ではY軸方向)からの撮像までの一連の処理が、少なくとも1回行われる。ここで、一対の光ファイバF1、F2の各々は、Nを2以上の整数とした場合、N回の回転対称性を有するN回回転対称光ファイバである。本実施形態において、当該N回回転対称光ファイバは、例えば、偏波保持光ファイバである。また、N回回転対称光ファイバである光ファイバF1の単位回転角θは、360°/N(°)によって算出される。回転駆動部12aは、このような光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転を、回転角が0°の場合と360°の場合とを除く最大(N−1)回のうち少なくとも1回、行う。例えば、光ファイバF1がPANDA型の偏波保持光ファイバに例示される2回回転対称光ファイバである場合、回転駆動部12aは、光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転を、回転角が180°になる1回のみ行う。また、第1撮像部7aは、回転駆動部12aが光ファイバF1の単位回転角θ分の周方向回転を1回行う都度、この単位回転角θ分の周方向回転後の光ファイバF1をY軸方向から撮像する。これにより、第1撮像部7aは、少なくとも1回の周方向回転後の光ファイバF1をY軸方向から撮像する。第1撮像部7aは、撮像した光ファイバF1の画像データを画像処理部8に送信する。
ステップS103(第2の撮像ステップ)を実行後、融着接続機1は、ステップS102で撮像された第1光ファイバの画像をもとに、第1光ファイバの基準状態データを取得し、ステップS102及びステップS103で撮像された第2光ファイバの複数の画像をもとに、第2光ファイバの複数の候補状態データを取得する(ステップS104)。
ステップS104において、画像処理部8は、第1撮像部7aから受信した光ファイバF2の画像データをもとに、回転調心後の光ファイバF2のY軸方向から撮像された第1径方向画像を構築する。画像処理部8は、この光ファイバF2の第1径方向画像をもとに、光ファイバF2の基準とする回転位置にある状態を示す基準状態データを取得する。例えば、基準状態データは、光ファイバF2の所定の径方向から取得される基準輝度プロファイルのデータである。また、画像処理部8は、第1撮像部7aから受信した光ファイバF1の画像データをもとに、回転調心後及び少なくとも1回の周方向回転後の光ファイバF1のY軸方向から撮像された複数の第1径方向画像を構築する。画像処理部8は、これら複数の第1径方向画像をもとに、光ファイバF1の複数の候補状態データを取得する。例えば、複数の候補状態データは、光ファイバF1の所定の径方向から取得される複数の候補輝度プロファイルのデータである。
具体的には、図5に示すように、画像処理部8は、回転調心後の光ファイバF2のY軸方向から撮像された第1径方向画像として、光ファイバF2のX軸方向に沿った輝度分布を示す輝度画像BP2を構築する。そして、画像処理部8は、この輝度画像BP2をもとに、光ファイバF2の基準状態データの一例として基準輝度プロファイルPf2を取得する。基準輝度プロファイルPf2は、光ファイバF2の基準とする回転位置にある状態として、回転調心後の光ファイバF2のX軸方向位置(基準径方向の位置の一例)に対する輝度値の変化を示すデータである。
また、図6に示すように、画像処理部8は、光ファイバF1のY軸方向から撮像された複数の第1径方向画像として、複数の輝度画像BP1を構築する。これら複数の輝度画像BP1には、回転調心後の光ファイバF1のY軸方向から撮像された輝度画像と、この輝度画像に対応する回転位置からZ軸方向回りに少なくとも1回の周方向回転が行われた後の光ファイバF1のY軸方向から撮像された少なくとも1つの輝度画像とが含まれる。画像処理部8は、これら複数の輝度画像BP1をもとに、光ファイバF1の複数の候補状態データを取得する。例えば、画像処理部8は、光ファイバF1の複数の候補状態データとして、複数(図6では2つ)の候補輝度プロファイルPf1、Pf11を取得する。候補輝度プロファイルPf1、Pf11は、回転調心後及び少なくとも1回の周方向回転後の光ファイバF1の回転位置別に弁別され得る複数の状態として、光ファイバF1の単位回転角θ毎の回転位置別に光ファイバF1のX軸方向位置に対する輝度値の変化を示すデータである。
ステップS104(データ取得ステップ)を実行後、融着接続機1は、第2光ファイバの複数の候補状態データのうち、第1光ファイバの基準状態データに最も近い候補状態データを判断する(ステップS105)。
ステップS105において、判断処理部15は、光ファイバF2の基準状態データと光ファイバF1の複数の候補状態データとを画像処理部8から受信する。判断処理部15は、受信した基準状態データと複数の候補状態データとを比較し、これら複数の候補状態データのうち、この基準状態データに最も近い候補状態データである近似状態データを判断する。
例えば、光ファイバF2の基準状態データは、図5に示すように、光ファイバF2のX軸方向位置に対する基準輝度プロファイルPf2のデータである。光ファイバF1の複数の候補状態データは、図6に示すように、光ファイバF1のX軸方向位置に対する複数の候補輝度プロファイルPf1、Pf11のデータである。判断処理部15は、これら複数の候補輝度プロファイルPf1、Pf11の間で基準輝度プロファイルPf2に対する対称性の近似の程度を比較し、これら複数の候補輝度プロファイルPf1、Pf11のうち基準輝度プロファイルPf2に最も近い対称性を有する候補輝度プロファイルを判断する。
具体的には、判断処理部15は、図5に示す基準輝度プロファイルPf2の上側の輝度ピーク位置PU2及び下側の輝度ピーク位置PL2を導出する。また、判断処理部15は、輝度画像BP2をもとに、光ファイバF2の径方向の中心位置CC2(具体的には図3に示すクラッド部F2bの径方向の中心位置)を導出する。ついで、判断処理部15は、輝度ピーク位置PU2と中心位置CC2との距離DU2と、輝度ピーク位置PL2と中心位置CC2との距離DL2とを算出する。判断処理部15は、算出した距離DU2、DL2をもとに、基準輝度プロファイルPf2における光ファイバF2の径方向(本実施形態では基準径方向)の中心位置CC2に対する輝度ピークの相対位置関係を把握する。一方、判断処理部15は、輝度画像BP1をもとに、光ファイバF1の径方向の中心位置CC1(具体的には図3に示すクラッド部F1bの径方向の中心位置)を導出する。また、判断処理部15は、図6に示す候補輝度プロファイルPf1の上側の輝度ピーク位置PU1及び下側の輝度ピーク位置PL1を導出する。ついで、判断処理部15は、輝度ピーク位置PU1と中心位置CC1との距離DU1と、輝度ピーク位置PL1と中心位置CC1との距離DL1とを算出する。判断処理部15は、算出した距離DU1、DL1をもとに、候補輝度プロファイルPf1における光ファイバF1の径方向(本実施形態では基準径方向)の中心位置CC1に対する輝度ピークの相対位置関係を把握する。これと同様に、判断処理部15は、図6に示す候補輝度プロファイルPf11の上側の輝度ピーク位置PU11及び下側の輝度ピーク位置PL11を導出し、輝度ピーク位置PU11と中心位置CC1との距離DU11と、輝度ピーク位置PL11と中心位置CC1との距離DL11とを算出する。判断処理部15は、算出した距離DU11、DL11をもとに、候補輝度プロファイルPf11における基準径方向の中心位置CC1に対する輝度ピークの相対位置関係を把握する。判断処理部15は、上述したように把握した光ファイバF2の基準輝度プロファイルPf2の、基準径方向の中心位置CC2に対する輝度ピークの相対位置関係と、光ファイバF1の複数の候補輝度プロファイルPf1、Pf11の、基準径方向の中心位置CC1に対する輝度ピークの相対位置関係とをもとに、これら複数の候補輝度プロファイルPf1、Pf11のうち、輝度ピークの相対位置関係が基準輝度プロファイルPf2に最も近い候補輝度プロファイルを判断する。
判断処理部15は、上述したように、光ファイバF2に対する光ファイバF1の近似状態データの判断結果、具体的には、輝度ピークの相対位置関係が光ファイバF2の基準輝度プロファイルに最も近い光ファイバF1の候補輝度プロファイルの判断結果を、制御部16に送信する。
ステップS105(判断ステップ)を実行後、融着接続機1は、回転調心後の第1光ファイバに対して相対的に、第2光ファイバを近似状態データに対応する回転位置まで回転し(ステップS106)、本処理を終了する。
ステップS106において、制御部16は、判断処理部15から光ファイバF2に対する光ファイバF1の近似状態データの判断結果を取得する。制御部16は、取得した近似状態データの判断結果に基づいて、回転調心後の光ファイバF2に対して相対的に、光ファイバF1を近似状態データに対応する回転位置まで回転するように回転駆動部12a、12bを制御する。この制御部16の制御に基づいて、回転駆動部12bは、光ファイバF2の基準とする回転位置を固定し、回転駆動部12aは、この基準とする回転位置に対して相対的に、光ファイバF1を周方向回転する。これにより、回転駆動部12aは、光ファイバF1を近似状態データに対応する回転位置まで周方向回転する。この際、回転駆動部12aは、光ファイバF1の候補輝度プロファイルPf1、Pf11のうち、光ファイバF2の基準輝度プロファイルPf2の対称性(詳細には基準径方向の中心位置に対する輝度ピークの相対位置関係)に最も近い対称性を有する候補輝度プロファイルが得られる回転位置まで、光ファイバF1を周方向回転する。この結果、光ファイバF1の回転位置は、単位回転角θ毎の周方向回転によるN回の回転位置のうち、光ファイバF1の横断面構造と光ファイバF2の横断面構造とが最も揃う回転位置に調整される。
例えば、光ファイバF1の候補輝度プロファイルPf1、Pf11のうち、候補輝度プロファイルPf1が光ファイバF2の基準輝度プロファイルPf2により近い対称性を有する場合、光ファイバF1の回転位置は、図7に示すように、光ファイバF1の応力付与部F1cと光ファイバF2の応力付与部F2cとが対向するように、光ファイバF2に対して調整される。また、光ファイバF1の候補輝度プロファイルPf1、Pf11のうち、候補輝度プロファイルPf11が光ファイバF2の基準輝度プロファイルPf2により近い対称性を有する場合、光ファイバF1の回転位置は、図7に示すように、光ファイバF1の応力付与部F1dと光ファイバF2の応力付与部F2cとが対向するように、光ファイバF2に対して相対的に180°回転した回転位置に調整される。
なお、特に図示しないが、融着接続機1は、上述したステップS106の回転ステップを完了した後、一対の光ファイバF1、F2に対する融着接続等を行う。例えば、制御部16は、放電部5a、5bに本放電を行わせるように放電制御部6を制御し、光ファイバF1、F2の長手方向の端面同士を突き合せるように搬送駆動部9a、9bを制御する。この結果、光ファイバF1、F2同士の融着接続が完了する。これらの光ファイバF1、F2同士は、単位回転角θ毎の周方向回転によるN回の回転位置のうち、互いの各横断面構造を最も揃えた回転位置に調整された状態で融着接続されている。
以上、説明したように、本発明の実施形態では、横断面構造について互いに同種の回転対称性を有する一対の光ファイバ(Nが2以上の整数であるN回回転対称光ファイバ)である第1光ファイバと第2光ファイバとの回転調心を行い、前記回転調心後の前記第1光ファイバに対して相対的に、前記第2光ファイバの単位回転角分の周方向回転を少なくとも1回行い、前記回転調心後の前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバと、少なくとも1回の前記周方向回転後の前記第2光ファイバとを所定の径方向から撮像し、得られた各画像をもとに、前記第1光ファイバの基準とする回転位置にある状態を示す基準状態データと前記第2光ファイバの複数の候補状態データとを取得し、前記複数の候補状態データのうち、前記基準状態データに最も近い候補状態データを判断し、前記回転調心後の前記第1光ファイバに対して相対的に前記第2光ファイバを前記最も近い候補状態データに対応する回転位置まで回転するようにしている。
このため、上記回転調心が行われた第1光ファイバと第2光ファイバとの横断面構造の近さを、第1光ファイバに対する第2光ファイバの相対的な回転位置別に上記所定の径方向(例えば上述の垂直径方向)から確認することができる。これにより、上記回転調心及び少なくとも1回の単位回転角分の周方向回転による第2光ファイバの複数の回転位置の中から、上記回転調心後の第1光ファイバの横断面構造に最も近い横断面構造となる第2光ファイバの回転位置を選択することができ、この選択した回転位置に第2光ファイバの回転位置を再調整することができる。この結果、融着接続の対象とする一対のN回回転対称光ファイバ間で横断面構造をより揃えることができる。このように互いの各回転位置が調整されたN回回転対称光ファイバ同士を融着接続することにより、当該N回回転対称光ファイバ同士の融着接続損失を低減して、融着接続後のN回回転対称光ファイバのより良好な光伝送特性を得ることができる。
なお、上述した実施形態では、一対の光ファイバF1、F2のうち、左側の光ファイバF2を周方向回転の基準とする第1光ファイバにし、右側の光ファイバF1を、第1光ファイバに対して相対的に少なくとも1回の単位回転角θ分の周方向回転を行う対象にしているが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明においては、上記第1光ファイバを右側の光ファイバF1にし、上記第2光ファイバを左側の光ファイバF2にしてもよい。
また、上述した実施形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。