以下、本発明の実施の形態におけるインペラを用いたファン装置について説明する。
ファン装置は、例えば、回転軸を中心に回転するインペラと、回転軸方向においてインペラと並ぶように配置されているモータとを有する軸流ファンである。ファン装置は、インペラの側周部の全部を全周にわたって囲むような風洞部は有していないものであり、モータを支持するモータベース部が周囲のフレームに複数のスポーク部を介して接合された板状の支持構造を有している。ファン装置は、例えば、支持構造が他の装置の筐体等に取り付けられて、その装置において送風等の用途に用いられる。
以下の説明において、回転軸周りの方向を周方向ということがあり、回転軸に対して垂直な方向(回転軸に近づいたり離れたりする方向)を径方向ということがある。また、回転軸方向を上下方向ということがあり、このうち、モータに対してインペラが設けられているほうを上(上方)といい、その逆の方向を下(下方)ということがある。なお、ここで上下とはファン装置それ自体に着目した表現であり、他の装置に取り付けられた状態のファン装置の姿勢について何らの限定を行うものではない。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるファン装置1を示す斜視図である。図2は、ファン装置1を上面側から見た図である。図3は、図2のA−A線断面図である。図4は、ファン装置1を下面側から見た図である。
説明の効率化のため、図2においては、支持部材2のスポーク部10の図示は省略されている。図4においては、インペラ3の図示は省略されている。
図1に示されるように、ファン装置1は、軸流ファンである。ファン装置1は、モータ100と、支持部材2と、インペラ3とを有している。
インペラ3は、ハブ4と、複数の翼5とを有している。ハブ4は、略円筒状である。ハブ4は、モータ100に接続されている。複数の翼5のそれぞれは、ハブ4の外周面に取り付けられている。ハブ4と翼5とは、例えば、樹脂の射出成型にて一体成形される。なお、これに限られず、各部の全部や一部が、他の部位とは別々に成形されているものであってもよい。また、ハブ4又は翼5は、樹脂製でなく、他の素材を用いて構成されていてもよい。翼5の枚数は、例えば9枚であるが、これに限られるものではない。
ファン装置1は、例えば、モータ100によりインペラ3を回転させて、空気等の気体を下から上へ流すことができるように構成されている。以下の図に示される矢印Dは、インペラ3の回転方向を示す。なお、インペラ3の回転方向はこれに限られるものではない。
図2に示されるように、翼5は、周方向に略等しい間隔で並んでいる。複数の翼5は、互いに同じ形状である。
支持部材2は、フレーム9と、モータベース部6と、2箇所の取付部7,8と、スポーク部10(10aから10d)とを有している。
フレーム9と、モータベース部6と、取付部7,8と、スポーク部10とは、樹脂の射出成型にて一体成形されて構成された、一体成形品である。なお、これに限られず、各部の全部や一部が、他の部位とは別々に成形されているものであってもよい。また、樹脂製でなく、他の素材を用いて構成されていてもよい。
支持部材2は、全体として、板状に形成されている。本実施の形態において、支持部材2の各部の上下方向の寸法(厚み)は、フレーム9の厚みと同じか、それより薄くなるように構成されている。支持部材2は、板状の樹脂板から削り出されることにより形成されていてもよい。
図4に示されるように、モータベース部6の外周面には、4本のスポーク部10が接続されている。各スポーク部10は、一方端がモータベース部6と接合し、他方端がフレーム9に接合するように、径方向が長手方向となるようにして配置されている。スポーク部10は、フレーム9とモータベース部6とを接続することにより、フレーム9に対して、モータベース部6を支持している。スポーク部10の数や形状はこれに限られず、例えばスポーク部10が湾曲していてもよい。
図2に示されるように、フレーム9は、上面視では、インペラ3の側周部を全周にわたって囲む(囲繞する)ように、円環状に形成されている。すなわち、フレーム9は、回転軸方向から見てインペラ3の周囲を囲む、環状の内周壁9aを有している。フレーム9のほとんどの部分は、インペラ3の下方に位置している。そのため、実際には、インペラ3の側周部の上下方向中央部辺りは、フレーム9により囲まれていない。すなわち、インペラ3の側周部の上下方向中央部辺りは、側方(回転軸に対して垂直な方向)から見て露出している(径方向に露出している)。
図4に示されるように、環状のフレーム9の外側において、相対向する2つの部分のそれぞれに、取付部7,8が形成されている。取付部7,8は、フレーム9から部分的に径方向に突出する部位である。各取付部7,8のそれぞれには、貫通孔7a,8aが形成されている。取付部7,8は、ファン装置1を機器の筺体や、ヒートシンクなどに取り付けるためのものである。すなわち、貫通孔7a,8aにボルトやねじを差し込んで通し、締結することにより、取付部7,8を機器の筐体等に固定できる。
なお、4本のスポーク部10のうち、1つのスポーク部10dには、スポーク部10dに沿うようにリード線25が配線されている。リード線25は、外部からモータ100に電力を供給するためのものである。
図4に示されるように、フレーム9とスポーク部10とは、回転軸方向から見て(下方から見て)、各取付部7,8に形成された貫通孔7a,8aの中心を通る線Bを対称軸として、略線対称となる形状を有している。なお、リード線25が配線されるスポーク部10dのみ、他のスポーク部10a,10b,10cとは形状が異なっている。
リード線25は、後述するモータ100の回路基板20の端子部に電気的に接続されている。リード線25には、チューブ26が被せられて保護されている。リード線25は、フレーム9と一体成形にて形成されたフック27に掛けられて、ファン装置1の外部に引き出されている。
ファン装置1は、気体を下から上に流す。すなわち、環状のフレーム9の下部には、気体を吸い込む吸い込み口9vが設けられているといえる。換言すると、気体の吸い込み口9vは、フレーム9の内周壁9aとスポーク部10とで囲まれた部分となっている。
モータ100は、アウターロータ型のブラシレスDCモータである。図3に示されるように、モータ100は、モータベース部6に装着されている。モータ100は、ロータ12と、ステータ部102とを有している。
ステータ部102は、軸受ホルダ16と、軸受21,22と、ステータ11とを有している。ステータ11は、ステータコア17と、インシュレータ18(上側インシュレータ18a、下側インシュレータ18b)と、コイル19とを有している。
軸受ホルダ16は、モータベース部6の中央に上方に突出するように形成された突出部6bの開口にはめられた状態で、モータベース部6に固定されている。ステータ11は、軸受ホルダ16の外周面に取り付けられている。
ステータ11は、ステータコア17と、ステータコア17に上方から装着された上側インシュレータ18aと、ステータコア17に下方から装着された下側インシュレータ18bと、コイル19とを有している。ステータコア17は、軸受ホルダ16の外周にはめられた状態で、軸受ホルダ16に装着されている。
ステータコア17は、環状のヨーク部から径外方に延在する複数の突極を有したコアを所定枚数、軸方向に積層して構成されている。ステータコア17に上側インシュレータ18aと下側インシュレータ18bからなるインシュレータ18が装着されている。コイル19は、インシュレータ18を介してステータコア17の突極のそれぞれに巻かれた状態で、ステータコア17の突極のそれぞれに取り付けられている。
なお、下側インシュレータ18bの下側で、軸受ホルダ16の外周部には、電子部品が実装された回路基板20が装着されている。回路基板20は、リード線25に接続されている。
ロータ12は、ロータヨーク13と、マグネット14と、シャフト(回転軸の一例)15とを有している。
ロータヨーク13は、例えば鉄等の軟磁性材からなる、下方に開口するカップ状の部材である。マグネット14は、リング状である。マグネット14は、ロータヨーク13の内周面に固着されている。シャフト15は、例えば鉄製である。シャフト15は、ロータヨーク13の上面に、下方に突出するように取り付けられている。シャフト15は、ロータヨーク13の中央に形成された突出部13bにシャフト15の上方の端部が圧入された状態で、ロータヨーク13に結合されている。突出部13bは、例えば、絞り加工、バーリング加工等により形成されている。
インペラ3のハブ4は、リング状である。ハブ4は、ロータヨーク13の外周面に固定されている。ハブ4は、例えば、接着剤を用いてロータヨーク13の外周面に接着されている。なお、ロータヨーク13をインサート成形して、ロータヨーク13を含むインペラ3を製造するようにしてもよい。なお、金属製のロータヨーク13の上面(天面)は上方に露出しているが、これに限られるものではない。
図5は、ファン装置1のインペラ3を示す斜視図である。図6は、インペラ3の上面図である。図7は、インペラ3の側面図である。
図7において、矢印で示されるように、紙面の上方がインペラ3の下に対応する。
図5に示されるように、インペラ3のそれぞれの翼5は、矢印Dで示される回転方向に向かって下方に傾斜する曲面板形状を有している。翼5の前縁部5aが下方に位置し、翼5の後縁部5bが上方に位置している。前縁部5aから後縁部5bにかけて、翼5の上面が圧力面5cとなり、下面が負圧面5dとなる。
本実施の形態において、複数の翼5の前縁部5aの少なくとも一部は、フレーム9の内側に入り込んでいる。すなわち、図3に示されるように、各翼5の一部は、フレーム9の内側に収容されて(フレーム9の内周壁9aの内側に収容されて)いる。換言すると、フレーム9の上下方向の寸法Zは、翼5の下方の端部がフレーム9の中に収容されうる程度の大きさに設定されている。
図3に示される寸法Xは、翼5の下方の端部と、環状のフレーム9の上方の端部(すなわち内周壁9aの上方の端部)とが回転軸方向において同じ位置にある場合をゼロとしたとき、翼5の下方の端部が環状のフレーム9の上方の端部よりも下方(環状のフレーム9の中に入り込む位置)にある場合をプラス、翼5の下方の端部が環状のフレーム9の上方の端部よりも上方(環状のフレーム9から突出した位置)にある場合をマイナス(−)として、翼5の下方の端部の位置を表す。寸法Zは、フレーム9の幅を表す。風量特性(P−Q特性;風量静圧特性ということもある)を鑑み、寸法X/寸法Zの値(フレーム9の幅に対する翼5の前縁部5aの回転軸方向における位置)は、例えば、約0.35に設定されている。これにより、特に中域で風量特性が低下する傾向が改善される。なお、寸法X/寸法Zの値はこれに限られるものではない。
上述の通り、ファン装置1は、インペラ3の周囲を、インペラ3の上下方向の長さ全体にわたって周方向に囲むような風洞部は備えていないものである。換言すると、ファン装置1において、インペラ3は、その下方の端部の一部の部分のみが側面視でフレーム9に隠れているだけで、インペラ3の上下方向の長さの半分以上の部分は、側面視で、径方向に露出している。すなわち、スポーク部10の上下方向の寸法(図3に示される寸法Y)を大きくすることができるので、下方から見たスポーク部10の幅寸法を小さくしても、高い剛性及び強度が確保される。スポーク部10の幅寸法が同じ条件下であれば、より高い剛性及び強度を有する。したがって、インペラ3とモータ100とを支持する支持部材2を、より高強度で壊れにくいものにすることができる。
図6に示されるように、本実施の形態において、周方向に隣接する翼5同士は、回転軸方向から見て、互いに離れている。すなわち、インペラ3は、例えば、回転軸方向の両側(上側及び下側)に2分割される簡素な構成の金型を用いて成型することができる形状を有している。
図6に示されるように、翼5の前縁部5aは、回転軸方向から見て、径方向外側に近づくにつれて回転方向側に位置するように湾曲している。より具体的には、回転軸方向から見て、回転軸と前縁部5aの径方向内側の部位とを通る直線よりも前縁部5aの径方向外側の部位が回転方向側に位置するように、前縁部5aが緩やかに回転方向に湾曲している。また、翼5の後縁部5bは、回転軸方向から見て、径方向外側に近づくにつれて回転方向とは逆方向に位置するように湾曲している。より具体的には、回転軸と後縁部5bの径方向内側の部位とを通る直線よりも後縁部5bの径方向外側の部位が回転方向側とは逆方向に位置するように、後縁部5bが緩やかに回転方向とは逆方向に湾曲している。回転軸方向から見て、前縁部5aの方が後縁部5bよりも大きく湾曲している。
翼5の全体的な形状としては、翼5の径方向外側の面積が内側よりも大きく取られるように設計されており、より大きな風量が得られるようになっている。
ここで、インペラ3のそれぞれの翼5について、最も回転中心側の位置(以下、ハブ側部P1ということがある)と、径方向中央部(以下、単に中央部P2ということがある)と、最も径方向外側(以下、最外側部P3ということがある)との3つの箇所のそれぞれにおける形状について、以下に説明する。
以下の説明において、回転軸から翼5上の各位置までの距離(径方向の距離)を半径Rと呼ぶ。また、各翼5のハブ4の外周面から各位置までの径方向の距離を幅Wと呼ぶ。各位置について、幅Wは、ハブ4の外周面の半径R0を用いて半径Rから半径R0を減算した値として示される。図5に示されるように、ハブ側部P1は、半径R1、幅W1の位置であり、中央部P2は、半径R2、幅W2の位置であり、最外側部P3は、半径R3、幅W3の位置である。
図8は、翼5の形状について表される指標について説明する図である。
ハブ側部P1、中央部P2、及び最外側部P3のそれぞれにおいて、翼5の形状について表される指標を、図8を参照して説明する。図8において、各位置の翼断面の形状(平面状に展開した形状)が実線で示されている。
翼5の前縁部5aと後縁部5bとを結ぶ翼弦線CLと、回転軸に垂直な平面(水平面)とがなす角度が、迎角θとなる。翼弦長Lは、翼弦線CLの長さを示す。圧力面5cと負圧面5dとから等しい距離にある点を前縁部5aから後縁部5bまで繋いだ中央線Bと翼弦線CLとの距離CAを、翼弦長Lに対するパーセンテージで無次元量として表したものが、キャンバーCとして示される。キャンバーCは、距離CAを翼弦長Lで除して100を乗じた値(パーセント)である。翼弦に沿って求められるキャンバーCの値のうち、最大の値は最大キャンバーと呼ばれる。
なお、本実施の形態において、翼5の上端部は、略水平の端面を有している。また、本実施の形態において、中央線B及び翼弦線CLは、翼5の上端部の端面における圧力面5cと負圧面5dとの中間点を後縁部5b側の端点として示されている。
図9は、本実施の形態における翼5の形状について説明する表である。
図9においては、ハブ側部P1、中央部P2、及び最外側部P3の各位置における、半径R(回転軸からの距離R)、幅W(ハブ4からの距離)、ハブ4からの各位置の距離を全幅(径方向の幅)に対する割合で示したもの、迎角θ、及び翼型(翼断面形状)を、表形式で示したものである。
ハブ側部P1は、ハブ4の外周面近傍の位置である。すなわち、半径R1が12.825ミリメートルであって、幅W1が0.025ミリメートルとなる位置であり、翼5の全幅の0.20パーセントだけハブ4から離れた位置である。このハブ側部P1においては、迎角θが52度である。
中央部P2は、翼5の径方向中央の位置である。すなわち、半径R2が19.025ミリメートルであって、幅W2が6.225ミリメートルとなる位置であり、翼5の全幅の50.0パーセントだけハブ4から離れた位置である。この中央部P2においては、迎角θが45度である。
最外側部P3は、翼5のうちインペラ3の外周面の近傍部位となる位置である。すなわち、半径R3が25.25ミリメートルであって、幅W3が12.45ミリメートルとなる位置であり、翼5の全幅の100.0パーセントだけハブ4から離れた位置である。この最外側部P3においては、迎角θが36度である。
このように、本実施の形態においては、翼5の最も回転中心側におけるハブ側部P1の迎角θは翼5の径方向中央部における中央部P2の迎角θよりも大きく、翼5の径方向中央部における中央部P2の迎角θは翼5の最も径方向外側における最外側部P3の迎角θよりも大きい。翼5の迎角θは、ハブ側部P1から最外側部P3に近づくにつれて、徐々に小さくなっている。
また、本実施の形態においては、翼5の最も回転中心側におけるハブ側部P1の迎角θと翼5の径方向中央部における中央部P2の迎角θとの差(すなわち、7度(52度マイナス45度))は、翼5の最も径方向中央部における中央部P2の迎角θと翼5の最も径方向外側における最外側部P3の迎角θとの差(すなわち、9度(45度マイナス36度))よりも小さい。
なお、図9に示されるように、各位置の最大翼厚(圧力面5cと負圧面5dとの間隔)は、ハブ側部P1において最も大きく、次いで中央部P2が大きく、最外側部P3が一番小さい。翼5の最も径方向外側である最外側部P3における後縁部5bの翼厚T3は、翼5の最も回転中心側であるハブ側部P1における後縁部5bの翼厚T1及び翼5の径方向略中央である中央部P2における後縁部5bの翼厚T2よりも小さい。
本実施の形態において、翼5は、後縁部5b側が負圧面側に膨らんだ形状を有している。各位置の中央線Bは、下方に向かって凸となるように湾曲している。すなわち、翼5は、下方に向かって凸となるようにキャンバー(反り)を有している。
図10は、翼5のキャンバーについて示すグラフである。
図10において、ハブ側部P1(「△」印で表示)、中央部P2(「□」印で表示)、及び最外側部P3(「〇」印で表示)のそれぞれにおけるキャンバーが示されている。縦軸がキャンバーであり、横軸は、翼弦の各位置の前縁部5aからの距離を、翼弦長Lで除して全体の翼弦長が1となるように無次元量化して(いわば、正規化して)表した位置を示している。
図10に示されるように、本実施の形態において、翼5のキャンバーは、ハブ側部P1、中央部P2、及び最外側部P3のいずれの箇所でも、翼弦に沿ったほとんどの位置で1パーセントを超えており、翼5は全体として大きな反りを有する形状であるといえる。
本実施の形態において、翼5の最も径方向外側である最外側部P3の最大キャンバーは、翼5の最も回転中心側である中央部P2の最大キャンバー及び翼5の径方向中央部であるハブ側部P1の最大キャンバーよりも小さくなっている。
また、翼5の最も径方向外側である最外側部P3における、翼5の前縁部5aから最大キャンバーとなる位置までの距離が翼5の長さに占める割合は、翼5の最も回転中心側であるハブ側部P1における割合及び翼5の径方向中央部である中央部P2における割合よりも大きい。
具体的には、ハブ側部P1と、中央部P2とは、前縁部5aから後縁部5bまでの各位置で、大まかに略同様のキャンバーの大きさを有している。前縁部5aから後縁部5bまでの略全域で、ハブ側部P1のキャンバーのほうが、中央部P2のキャンバーよりもわずかに大きくなっている。ハブ側部P1と、中央部P2とのそれぞれにおいて、最大キャンバーは約9パーセントであり、前端部5aから最大キャンバーとなる位置までの距離が翼5の長さに占める割合は、略0.6である。
他方、最外側部P3では、前縁部5aから後縁部5bまでの略全域で、ハブ側部P1や中央部P2よりも、キャンバーが小さくなっている。最外側部P3において、最大キャンバーは約6パーセントであり、前端部5aから最大キャンバーとなる位置までの距離が翼5の長さに占める割合は、略0.65から0.7である。
このように、最外側部P3におけるキャンバーが最も小さく、中央部P2とハブ側部P1とのそれぞれのキャンバーは略等しく、ハブ側部P1のキャンバーの方が少しい大きくなっている。また、各位置における最大キャンバーは、翼5の翼弦の中央部分よりも後縁部5b側にシフトした位置に存在している。すなわち、翼5のハブ4側(根元側)の周速は先端側の周速よりも遅くなるところ、翼5のハブ4側での効率を上げることを目的として、翼5のキャンバーがハブ4に近づくほど比較的大きくなるように翼5が形成されている。
図11は、比較例に係るインペラ803の上面図である。図12は、比較例に係るインペラ803の側面図である。
上述のような本実施の形態におけるインペラ3と、比較例として、翼5とは形状が異なる翼805を有するインペラ803とを比較する。
図11及び図12に示されるように、比較例に係るインペラ803は、9枚の翼805を有している。翼805についても、前縁部5a、後縁部5b、圧力面5c、及び負圧面5dを有している。インペラ803においても、周方向に隣接する翼805同士は、回転軸方向から見て離れている。
図13は、比較例に係るインペラ803の翼805の形状について説明する表である。
図13においては、図9と同様に、比較例に係るインペラ803の翼805の寸法等が示されている。
図13に示されるように、ハブ側部P1は、半径R1が17.0165ミリメートルであって、幅W1が0.0165ミリメートルとなる位置であり、翼805の全幅の0.20パーセントだけハブ4から離れた位置である。このハブ側部P1においては、迎角θが44度である。
中央部P2は、半径R2が21.125ミリメートルであって、幅W2が4.125ミリメートルとなる位置であり、翼805の全幅の50.0パーセントだけハブ4から離れた位置である。この中央部P2においては、迎角θが39度である。
最外側部P3は、半径R3が25.25ミリメートルであって、幅W3が8.25ミリメートルとなる位置であり、翼805の全幅の100.0パーセントだけハブ4から離れた位置である。この最外側部P3においては、迎角θが35度である。
このように、比較例に係るインペラ803においては、上述のインペラ3とは異なり、翼805のハブ側部P1の迎角θと中央部P2の迎角θとの差(すなわち、5度(44度マイナス39度))は、翼805の中央部P2の迎角θと最外側部P3の迎角θとの差(すなわち、4度(39度マイナス35度))よりもやや大きくなっている。
また、図13に示されるように、翼805の最外側部P3における後縁部5bの翼厚T3は、ハブ側部P1における後縁部5bの翼厚T1や、中央部P2における後縁部5bの翼厚T2と略同程度である。圧力面5cと負圧面5dとの間隔は、各位置において、略均一である。
図14は、比較例に係るインペラ803の翼805のキャンバーについて示すグラフである。
図14においては、図10と同様に、翼805についての、ハブ側部P1(「〇」印で表示)、中央部P2(「□」印で表示)、及び最外側部P3(「△」印で表示)のそれぞれにおけるキャンバーが示されている。縦軸がキャンバーであり、横軸は、翼弦の各位置の前縁部5aからの距離を、翼弦長Lで除して全体の翼弦長が1となるように無次元量化して表した位置を示している。
比較例に係るインペラ803の翼805では、ハブ側部P1のキャンバーは直線状に近い形状であって、ハブ側部P1から最外側部P3に向かうにつれて、キャンバーが大きくなっている(ハブ側部P1のキャンバー<中央部P2のキャンバー<最外側部P3のキャンバー)。ハブ側部P1、中央部P2、及び最外側部P3の各位置における最大キャンバーは、翼805の翼弦の略中央部分に存在しており、いずれも0.2パーセント未満である。すなわち、翼805は、翼5と比較して、反りが小さい形状を有している。
[ファン装置1の風量特性(P−Q特性)について]
図15は、本実施の形態に係るインペラ3を用いたファン装置1のP−Q特性と比較例に係るインペラ803を用いたファン装置のP−Q特性とを比較して示すグラフである。
図15においては、本実施の形態に係るファン装置1のP−Q特性は「〇」印と実線とで示されており、比較例に係るファン装置のP−Q特性は「□」印と実線とで示されている。フレーム9の幅に対する前縁部5aの回転軸方向における位置(寸法X/寸法Z)の値が、0.35から0.55の範囲、すなわち翼5の下端や翼805の下端がスポーク部10と接触しない範囲で同じ値になるように設定して、風量特性(P−Q特性)を測定した。
図15に示されるように、本実施の形態に係るファン装置1は、最大静圧(Pa)と最大風量(m^3/min(立方メートル毎分))との両方が、比較例に係るファン装置のそれよりも、グラフの全領域において大きくなっている。ファン装置1の風量特性は、比較例に係るファン装置よりもグラフの全領域において向上していることがわかる。すなわち、本実施の形態に係るファン装置1は、比較例に係るファン装置に比べて、静圧と風量とを共に増加させることができる。
以上説明したように、本実施の形態においては、インペラ3が、上述のような反りを有する翼5を有している。インペラ3を用いたファン装置1は、例えば比較例のようなインペラ803を用いたファン装置と比較して、高い風量特性を有している。インペラ3は、簡素な金型を用いるなどして容易に成型可能な形状であるため、製造コストが安く、かつ、良好な風量特性を有するインペラ3及びファン装置1を実現することができる。
[その他]
上記の実施の形態の特徴点が部分的に組み合わされてファン装置が構成されていてもよい。上記の実施の形態において、いくつかの構成要素が設けられていなかったり、いくつかの構成要素が他の態様で構成されていてもよい。
上述の翼について、具体的な翼型や、種々の指標の値や、キャンバーの大きさなどは、あくまで一例であり、これに限られるものではない。
支持部材の形状は、上述のものに限られない。例えば、取付部は2つに限られず、より多く設けられていてもよいし、1つのみが設けられていてもよい。フレームは、インペラの側周面の一部だけを囲むものでなくてもよく、例えばインペラの側周面の全部がフレームによって囲まれていてもよい。
モータは、インナーロータ型のものであってもよい。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。