JP6915429B2 - フッ素樹脂ペレットおよびその製造方法、ならびに電線の製造方法 - Google Patents
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Description
耐ストレスクラック性に優れる成形品を製造できるフッ素樹脂材料としては、特定のETFEと、0.2〜10ppmの酸化銅とを含むものが提案されている(特許文献1)。
<1>フッ素樹脂を含むフッ素樹脂材料を二軸押出機によって溶融混練した後、ペレット化してフッ素樹脂ペレットを得る方法であり;前記二軸押出機は、複数のスクリューエレメントをシャフトに装着したスクリューと、2本の前記スクリューを内蔵したバレルとを備え;前記二軸押出機は、前記スクリューエレメントのうちミキシングエレメントおよびニーディングエレメントのいずれか一方または両方が2個以上連続して配置された溶融ゾーンの1個または2個を有し;前記溶融ゾーンの合計の長さKDと前記スクリューの長さLとが、下式Iを満足する、フッ素樹脂ペレットの製造方法。
0.05≦KD/L≦0.3 式I
<2>下式IIから求めた、前記溶融ゾーンにおいて前記フッ素樹脂材料に作用するせん断応力τが、0.55MPa以下である、前記<1>のフッ素樹脂ペレットの製造方法。
τ=γ×η 式II
ただし、γは、下式IIIから求めた、前記溶融ゾーンにおけるせん断速度(s−1)であり、ηは、前記フッ素樹脂材料が投入されるバレルブロックの1つ下流側のバレルブロックから最も下流側にある溶融ゾーンを有するバレルブロックまでの各バレルブロックの設定温度を平均した平均設定温度および前記せん断速度γにおける前記フッ素樹脂材料の粘度(Pa・s)である。
γ=π×(D−2h)×N/(60×h) 式III
ただし、πは、3.14であり、Dは、前記バレルの内径(mm)であり、Nは、前記スクリューの回転数(rpm)であり、hは、前記溶融ゾーンにおけるスクリューエレメンと前記バレル内壁との間の最小チップクリアランス(mm)である。
<3>前記フッ素樹脂材料が投入されるバレルブロックの1つ下流側のバレルブロックから最も下流側にある溶融ゾーンを有するバレルブロックまでの各バレルブロックの設定温度を平均した平均設定温度が、前記フッ素樹脂の融点以上、前記フッ素樹脂の融点+140℃以下である、前記<1>または<2>のフッ素樹脂ペレットの製造方法。
<4>温度297℃、予熱時間5分間および荷重49Nにおける前記フッ素樹脂材料の溶融流速α1(g/10min)と、温度297℃、予熱時間5分間および荷重49Nにおける前記フッ素樹脂ペレットの溶融流速α2(g/10min)とが、下式IVを満足する、前記<1>〜<3>のいずれかのフッ素樹脂ペレットの製造方法。
α2−α1≦5 式IV
<5>下式Vから求めた混練度が、0.1〜8である、前記<1>〜<4>のいずれかのフッ素樹脂ペレットの製造方法。
混練度=(60×D3×N×10−7)/Q 式V
ただし、Dは、前記バレルの内径(mm)であり、Nは、前記スクリューの回転数(rpm)であり、Qは、前記二軸押出機からの前記フッ素樹脂材料の吐出量(kg/h)である。
<6>前記フッ素樹脂が、エチレンに基づく単位およびテトラフルオロエチレンに基づく単位を有する共重合体である、前記<1>〜<5>のいずれかのフッ素樹脂ペレットの製造方法。
<7>前記フッ素樹脂が、エチレンに基づく単位と、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、エチレンおよびテトラフルオロエチレンと共重合可能な、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを除くその他の単量体に基づく単位とを有する共重合体であり;前記テトラフルオロエチレンに基づく単位に対する前記エチレンに基づく単位のモル比が、30/70〜60/40であり;前記共重合体を構成する全単位のうちの前記その他の単量体に基づく単位の割合が、0.7〜2.4モル%である、前記<1>〜<6>のいずれかのフッ素樹脂ペレットの製造方法。
<8>前記<1>〜<7>のいずれかのフッ素樹脂ペレットの製造方法によってフッ素樹脂ペレットを得て、前記フッ素樹脂ペレットを溶融して芯線のまわりに押し出すことによって被覆層を形成する、電線の製造方法。
<9>エチレンに基づく単位と、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、エチレンおよびテトラフルオロエチレンと共重合可能な、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを除くその他の単量体に基づく単位とを有する共重合体を含むフッ素樹脂ペレットであり;前記共重合体における前記テトラフルオロエチレンに基づく単位に対する前記エチレンに基づく単位のモル比が、30/70〜60/40であり;前記共重合体を構成する全単位のうちの前記その他の単量体に基づく単位の割合が、0.7〜2.4モル%であり;温度297℃、予熱時間5分間および荷重49Nにおける前記フッ素樹脂ペレットの溶融流速α3(g/10min)と、温度297℃、予熱時間5分間および荷重49Nにおける下記被覆層の溶融流速α4(g/10min)とが、下式VIを満足する、フッ素樹脂ペレット。
α4−α3≧2 式VI
被覆層:バレルの内径が30mmであり、スクリューの長さLとバレルの内径Dとの比(L/D)が24である単軸押出機を用い、バレルの上流側温度280℃、バレルの下流側温度320℃、ダイスの温度320℃、スクリュー回転数40rpmの条件下で前記フッ素樹脂ペレットを溶融して芯線のまわりに押し出すことによって厚さが0.5mmである被覆層を形成して得られた直径2.8±0.02mmの電線における被覆層。
本発明の電線の製造方法によれば、高温での耐ストレスクラック性に優れる被覆層を有する電線を製造できる。
本発明のフッ素樹脂ペレットによれば、高温での耐ストレスクラック性に優れる成形品を得ることができる。
「フッ素樹脂材料」とは、フッ素樹脂のみからなる材料、またはフッ素樹脂と他の成分とを含む組成物をいう。
「融点」とは、結晶構造を有する樹脂において、固体が融解し、液体化する温度のことをいう。具体的には、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことをいう。
「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流速が0.1〜1000g/10分となる温度が存在することをいう。
「溶融流速」は、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定されるメルトマスフローレート(MFR)である。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。
「単量体」とは、重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物をいう。
「溶融ゾーン」とは、スクリューエレメントのうちミキシングエレメントおよびニーディングエレメントのいずれか一方または両方が2個以上連続して配置されたスクリューゾーンをいう。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
本発明におけるフッ素樹脂材料は、フッ素樹脂を含む材料である。フッ素樹脂材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてフッ素樹脂以外の他の成分をさらに含んでもよい。
フッ素樹脂は、非フッ素単量体に基づく単位をさらに有していてもよい。非フッ素単量体としては、エチレン、プロピレン、無水イタコン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。フッ素樹脂が非フッ素単量体に基づく単位を有する場合、非フッ素単量体に基づく単位は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
溶融成形可能なフッ素樹脂としては、ETFE、TFE−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、TFE−ペルフルオロアルキルビニルエーテル−HFP共重合体、FEP、ポリクロロトリフルオロエチレン、CTFE−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
ETFEは、エチレンに基づく単位およびTFEに基づく単位を有する共重合体である。
ETFEとしては、ETFEを含む成形品の耐熱性、機械物性、耐薬品性がさらに優れる点から、エチレンに基づく単位(以下、「E単位」とも記す。)と、TFEに基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)と、エチレンおよびTFEと共重合可能な、エチレンおよびTFEを除くその他の単量体に基づく単位(以下、「その他の単量体単位」とも記す。)とを有する共重合体が好ましい。ETFEは、主鎖末端に水酸基を有していてもよい。
CH2=CX(CF2)nZ 式VII
ただし、XおよびZは、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは、1〜10の整数である。)
その他の単量体としては、ETFEを含む成形品の機械物性および熱安定性がさらに優れる点から、FAEが好ましい。
式VIIにおけるZは、ETFEを含む成形品の耐熱性および耐薬品性がさらに優れる点から、フッ素原子が好ましい。
式VIIにおけるnは、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2、4または6がさらに好ましい。nが前記範囲の下限値以上であれば、ETFEを含む成形品の機械物性および熱安定性がさらに優れる。nが前記範囲の上限値以下であれば、FAEは重合反応性を充分に有する。
FAEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ETFEの融点は、TFE単位に対するE単位のモル比、ETFEを構成する全単位のうちのその他の単量体単位の割合等を調整する方法等で制御できる。
他の成分としては、金属酸化物(酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト等)、顔料・染料、摺動性付与剤、導電性付与物質、繊維強化剤、熱伝導性付与剤、フィラー、フッ素樹脂以外の樹脂、改質剤、結晶核剤、発泡剤、発泡核剤、架橋剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。他の成分の含有量は、成形品に付与する特性に応じて適宜設定される。
フッ素樹脂材料の溶融流速は、フッ素樹脂の分子量の尺度であり、フッ素樹脂を製造する際の連鎖移動剤の量を調整する方法等で制御できる。また、溶融流速が異なる2種以上のフッ素樹脂を併用することによっても調整できる。
本発明における二軸押出機は、2本のスクリューと、2本のスクリューを内蔵したバレルと、バレルに設けられた原料供給口と、バレルの下流端に設けられたダイとを備える。二軸押出機は、必要に応じてバレルに設けられた真空ベントをさらに備えてもよい。
ニーディングエレメントは、捩れ角がない複数の板状のディスクで構成されるスクリューエレメントである。
ミキシングエレメントは、正ねじのフルフライトエレメントに切り欠きを形成したスクリューエレメント、または逆ねじのフルフライトエレメントに切り欠きを形成したスクリューエレメントである。ミキシングエレメントは、セルフクリーニング性を有していてもよく、セルフクリーニング性を有していなくてもよい。
本発明における二軸押出機のスクリューとしては、ロータリーエレメント、ニーディングエレメントおよびミキシングエレメントで構成されているものが好適に用いられる。
0.05≦KD/L≦0.3 式I
KD/Lは、0.05〜0.27が好ましく、0.06〜0.25がより好ましい。KD/Lが前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂材料が溶融混練される。KD/Lが前記範囲の上限値以下であれば、スクリューによるフッ素樹脂材料への過度のせん断発熱および変形圧縮による内部発熱が抑制され、フッ素樹脂の必要以上の分解が抑えられる。そのため、高温での耐ストレスクラック性に優れる成形品を得ることができる。
バレルブロックには、スクリューの断面形状に対応した貫通孔が形成されている。
真空ベントは、たとえば、真空ベントが付属したバレルブロックを用いることによって二軸押出機に設置できる。真空ベントは、複数のバレルブロックに設けてもよい。
原料供給口が複数ある場合、原料供給口のうち最も上流側にある第1の原料供給口は、最も上流側にある溶融ゾーンよりも上流側に設けられ、他の原料供給口は、最も上流側にある溶融ゾーンよりも下流側に設けられていてもよい。フッ素樹脂は、第1の原料供給口から供給されることが好ましく、他の成分は、第2の原料供給口以降から供給してもよい。
ダイにおける吐出口の数は、1個であってもよく、複数個であってもよい。ダイとしては、複数本のストランドが形成され、生産性がよい点から、数個〜数十個の吐出口を有するものが好ましい。
本発明の一態様であるフッ素樹脂ペレットの製造方法は、フッ素樹脂を含むフッ素樹脂材料を二軸押出機によって溶融混練した後、ペレット化してフッ素樹脂ペレットを得る方法である。
ただし、γは、下式IIIから求めた、溶融ゾーンにおけるせん断速度(s−1)であり、ηは、フッ素樹脂材料が投入されるバレルブロック(原料供給口が2個以上の場合は、最も下流側にある原料供給口が設けられたバレルブロック)の1つ下流側のバレルブロックから最も下流側にある溶融ゾーンを有するバレルブロックまでの各バレルブロックの設定温度を平均した平均設定温度およびせん断速度γにおけるフッ素樹脂材料の粘度(Pa・s)である。
γ=π×(D−2h)×N/(60×h) 式III
ただし、πは、3.14であり、Dは、バレルの内径(mm)であり、Nは、前記スクリューの回転数(rpm)であり、hは、溶融ゾーンにおけるスクリューエレメンと前記バレル内壁との間の最小チップクリアランス(mm)である。
α2−α1≦5 式IV
α2−α1は、3.5以下がより好ましい。また、α2−α1は、−5以上が好ましく、−3以上がより好ましい。α2−α1が前記範囲の下限値以上であれば、スクリューによるフッ素樹脂材料の混練度が小さくなりすぎず、フッ素樹脂材料が充分に溶融混練されていることを示している。α2−α1が前記範囲の上限値以下であれば、スクリューによるフッ素樹脂材料の混練度が大きくなりすぎず、スクリューのせん断によるせん断発熱が低減されるため、フッ素樹脂の熱分解が抑制されていることを示している。そのため、高温での耐ストレスクラック性がさらに優れる成形品を得ることができる。
混練度=(60×D3×N×10−7)/Q 式V
ただし、Dは、バレルの内径(mm)であり、Nは、スクリューの回転数(rpm)であり、Qは、二軸押出機からのフッ素樹脂材料の吐出量(kg/h)である。
混練度が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂材料が充分に溶融混練される。混練度が前記範囲の上限値以下であれば、スクリューのせん断によるせん断発熱が低減されるため、フッ素樹脂の熱分解が抑制される。そのため、高温での耐ストレスクラック性がさらに優れる成形品を得ることができる。
溶融状態のフッ素樹脂材料を押し出す条件は、特に制限はなく、公知の条件を適宜採用できる。
ストランドカッタは、たとえば、固定刃および回転刃を備える。ストランドが固定刃と回転刃とに挟まれることによって所定の長さに切断され、ペレットが得られる。
回転刃が備える刃の数は、複数であればよく、特に制限はない。
回転刃が備える刃の材質としては、WC−Co系合金、TiN−Ni系合金、TiC−Ni系合金、Feを主成分とする合金属類等が挙げられる。
回転刃の周速度は、10〜30m/秒が好ましく、12〜25m/秒がより好ましく、13〜20m/秒がさらに好ましい。
本発明の製造方法によって得られたフッ素樹脂ペレットは、各種成形品の材料として用いてもよい。成形品としては、国際公開第2015/182702号の段落[0041]〜[0044]に記載されたものが挙げられる。成形品は、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、静電塗装等の従来公知の成形方法によって製造できる。
本発明の一態様である電線の製造方法は、本発明のフッ素樹脂ペレットの製造方法によってフッ素樹脂ペレットを得て、フッ素樹脂ペレットを溶融して芯線のまわりに押し出すことによって被覆層を形成する方法である。
電線の製造に用いる装置としては、電線ダイスクロスヘッドが設けられた押出機等が挙げられる。
(1)ロボット、電動機、発電機、変圧器等の電気機械、家庭用電気機器の電線。
(2)電話、無線機等の通信用伝送機器の電線。
(3)コンピュータ、データ通信機器、端末機器等の電子機器の電線。
(4)鉄道車両用電線。
(5)自動車用電線。
(6)航空機用電線。
(7)船舶用電線。
(8)ビル、工場幹線、発電所、石油化学、製鉄プラント等のシステム構成用電線。
(9)石油掘削向け電力、通信ケーブル等、各種機器類の電線。
本発明の一態様であるフッ素樹脂ペレットは、上述したE単位と、TFE単位と、その他の単量体単位とを有する共重合体を含むフッ素樹脂ペレットである。共重合体は、主鎖末端に水酸基を有していてもよい。
共重合体を構成する全単位のうちのその他の単量体単位の割合は、0.7〜2.4モル%であり、0.9〜2.2モル%が好ましい。
α4−α3≧2 式VI
被覆層:バレルの内径が30mmであり、スクリューの長さLとバレルの内径Dとの比(L/D)が24である単軸押出機を用い、バレルの上流側温度280℃、バレルの下流側温度320℃、ダイスの温度320℃、スクリュー回転数40rpmの条件下でフッ素樹脂ペレットを溶融して芯線のまわりに押し出すことによって厚さが0.5mmである被覆層を形成して得られた直径2.8±0.02mmの電線における被覆層。
例1〜4は実施例であり、例5〜7は比較例である。
フッ素樹脂における各単位の割合は、溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析によって測定したデータから算出した。
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC7020)を用い、フッ素樹脂材料を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、フッ素樹脂の融解ピークの最大値に対応する温度(℃)を融点とした。
キャピラリーレオメーター(東洋精機社製、キャピログラフ1C)を用い、温度:300℃、予熱時間:5分、キャピラリー径:1mm、キャピラリー長:10mmの条件でフッ素樹脂材料の溶融粘度を測定した。
テクノセブン社製のメルトフローテスタを用い、温度:297℃、予熱時間:5分間、荷重:49Nの条件で、直径:2.1mm、長さ:8mmのオリフィス中にフッ素樹脂材料(フッ素樹脂ペレットまたは被覆層)を押し出すときの押出速度(g/10分)を求め、これを溶融流速とした。
バレルの内径が30mmであり、スクリューの長さLとバレルの内径Dとの比(L/D)が24である単軸押出機を用い、バレルの上流側温度280℃、バレルの下流側温度320℃、スクリュー回転数40rpmの条件下でフッ素樹脂ペレットを溶融し、ダイスの温度320℃、DDR(Draw−Down Ratio)16、引き取り速度10m/分の条件下で1.8mmの芯線(スズメッキ銅撚線)のまわりに押し出すことによって厚さが0.5mmである被覆層を形成し、電線を得た。
電線を190℃で96時間アニール処理した。アニール処理後、電線を電線自体に8巻き以上巻きつけ(自己径巻きつけ)、サンプルを作製した。サンプルをギヤオーブンで200℃、1時間暴露し、クラックの有無を確認した。サンプル数は5個とした。5個のサンプル中のクラックが発生したサンプルの数を数え、クラック発生率を求めた。
内容積が430Lの撹拌機付き重合槽内を脱気した。重合槽内に、CF3(CF2)5Hの418.2kg、PFBEの2.12kg、メタノールの3.4kgを入れ、撹拌しながら66℃まで昇温した。重合槽内に、TFE/エチレン=84/16(モル比)の混合ガスを、重合槽内の圧力が1.5MPa[gauge]になるまで導入した。重合槽内に、50質量%のtert−ブチルペルオキシピバレートのCF3(CF2)5H溶液の26gおよびCF3(CF2)5Hの4974gを混合した溶液を注入し、重合を開始した。重合中は、重合槽内の圧力が1.5MPa[gauge]となるようにTFE/エチレン=54/46(モル比)の混合ガス、および混合ガスに対して1.4モル%に相当する量のPFBEを連続的に導入した。TFE/エチレン混合ガスの34kgを仕込んだ後、重合槽を冷却し、残留ガスをパージし、重合を終了させた。
フッ素樹脂材料に含まれる共重合体におけるE単位とTFE単位とのモル比(E単位/TFE単位)は、45.0/55.0(モル比)であり、その他の単量体単位の割合は、共重合体を構成する全単位のうち、1.7モル%であった。
フッ素樹脂材料に含まれる共重合体の融点は、261℃であった。
フッ素樹脂材料の溶融流速α1は、28.3g/10minであった。
二軸押出機として、完全噛合型同方向回転二軸押出機(Technovel社製、KZW15TW−45MG−NH)を用意した。
スクリューの全体の長さLとバレルの内径Dとの比L/D:26.2、
バレルの内径D:15mm、
ニーディングエレメントとバレル内壁との間の最小チップクリアランスh:1.0mm、
バレルブロックの数:5個、
ストランドダイヘッド:テクノベル社製、STD321(ダイにおける吐出口の口径:4mm、吐出口の数:4個)。
冷却水槽として、テクノベル社製のSCB250−2000(幅:250mm×深さ:250mm×長さ:2000mm)を用意した。
ペレタイザとして、テクノベル社製のSCP−302(回転刃の直径:100mm、回転刃の中心軸方向の長さ:100mm、回転刃が備える刃の数:10枚)を用意した。
図1は、例1で用いた二軸押出機を示す概略構成図である。
二軸押出機10は、2本のスクリュー(図示略)と、2本のスクリューを内蔵したバレル12と、バレル12に設けられた原料供給口16と、バレル12の下流端に設けられたストランドダイヘッド18とを備える。
バレル12は、上流側から第1のバレルブロックC1、第2のバレルブロックC2、第3のバレルブロックC3、第4のバレルブロックC4、第5のバレルブロックC5を順に備える。
原料供給口16は、第1のバレルブロックC1に設けられている。
二軸押出機10は、第4のバレルブロックC4の一部から第5のバレルブロックC5の一部にかけて溶融ゾーンZ1を有する。溶融ゾーン以外のスクリューエレメントは、すべてロータリーエレメントである。スクリューの長さL、バレルの内径D、L/D、溶融ゾーンの長さKD、KD/D、KD/Lを表1に示す。
二軸押出機における溶融ゾーンの数、溶融ゾーンの位置、溶融ゾーンの長さKDを表1に示すように変更し、溶融混練条件を表1に示すように変更した以外は、例1と同様にして、例2〜例7のフッ素樹脂ペレットを得た。結果を表1に示す。
例6、7は、KD/Lが0.3を超えたため、電線の被覆層としたときの高温での耐ストレスクラック性が劣った。
Claims (7)
- フッ素樹脂を含むフッ素樹脂材料を二軸押出機によって溶融混練した後、ペレット化してフッ素樹脂ペレットを得る方法であり、
前記二軸押出機は、複数のスクリューエレメントをシャフトに装着したスクリューと、2本の前記スクリューを内蔵したバレルとを備え、
前記二軸押出機は、前記スクリューエレメントのうちミキシングエレメントおよびニーディングエレメントのいずれか一方または両方が2個以上連続して配置された溶融ゾーンの1個または2個を有し、
前記溶融ゾーンの合計の長さKDと前記スクリューの長さLとが、下式Iを満足し、
下式IIから求めた、前記溶融ゾーンにおいて前記フッ素樹脂材料に作用するせん断応力τが、0.55MPa以下である、電線の被覆層用のフッ素樹脂ペレットの製造方法。
0.05≦KD/L≦0.3 式I
τ=γ×η 式II
ただし、γは、下式IIIから求めた、前記溶融ゾーンにおけるせん断速度(s−1)であり、ηは、前記フッ素樹脂材料が投入されるバレルブロックの1つ下流側のバレルブロックから最も下流側にある溶融ゾーンを有するバレルブロックまでの各バレルブロックの設定温度を平均した平均設定温度および前記せん断速度γにおける前記フッ素樹脂材料の粘度(Pa・s)である。
γ=π×(D−2h)×N/(60×h) 式III
ただし、πは、3.14であり、Dは、前記バレルの内径(mm)であり、Nは、前記スクリューの回転数(rpm)であり、hは、前記溶融ゾーンにおけるスクリューエレメントと前記バレル内壁との間の最小チップクリアランス(mm)である。 - 前記フッ素樹脂材料が投入されるバレルブロックの1つ下流側のバレルブロックから最も下流側にある溶融ゾーンを有するバレルブロックまでの各バレルブロックの設定温度を平均した平均設定温度が、前記フッ素樹脂の融点以上、前記フッ素樹脂の融点+140℃以下である、請求項1に記載の電線の被覆層用のフッ素樹脂ペレットの製造方法。
- 温度297℃、予熱時間5分間および荷重49Nにおける前記フッ素樹脂材料の溶融流速α1(g/10min)と、温度297℃、予熱時間5分間および荷重49Nにおける前記フッ素樹脂ペレットの溶融流速α2(g/10min)とが、下式IVを満足する、請求項1又は2に記載の電線の被覆層用のフッ素樹脂ペレットの製造方法。
α2−α1≦5 式IV - 下式Vから求めた混練度が、0.1〜8である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電線の被覆層用のフッ素樹脂ペレットの製造方法。
混練度=(60×D3×N×10−7)/Q 式V
ただし、Dは、前記バレルの内径(mm)であり、Nは、前記スクリューの回転数(rpm)であり、Qは、前記二軸押出機からの前記フッ素樹脂材料の吐出量(kg/h)である。 - 前記フッ素樹脂が、エチレンに基づく単位およびテトラフルオロエチレンに基づく単位を有する共重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電線の被覆層用のフッ素樹脂ペレットの製造方法。
- 前記フッ素樹脂が、エチレンに基づく単位と、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、エチレンおよびテトラフルオロエチレンと共重合可能な、エチレンおよびテトラフルオロエチレンを除くその他の単量体に基づく単位とを有する共重合体であり、
前記テトラフルオロエチレンに基づく単位に対する前記エチレンに基づく単位のモル比が、30/70〜60/40であり、
前記共重合体を構成する全単位のうちの前記その他の単量体に基づく単位の割合が、0.7〜2.4モル%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電線の被覆層用のフッ素樹脂ペレットの製造方法。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の電線の被覆層用のフッ素樹脂ペレットの製造方法によってフッ素樹脂ペレットを得て、
前記フッ素樹脂ペレットを溶融して芯線のまわりに押し出すことによって被覆層を形成する、電線の製造方法。
Priority Applications (1)
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