以下、実施の形態に係る有軌道搬送車システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、情報処理の内容及び順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態に係る構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
まず、図1を用いて、実施の形態に係る有軌道搬送車システム10の構成概要を説明する。図1は、実施の形態に係る有軌道搬送車システム10の構成概要を示す平面図である。
本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10は、軌道20に沿って移動するスタッカクレーン100と、それぞれが複数の物品を収容可能な複数のラック(ラック群50)とを備える。ラック群50は、複数の物品を保管するための第一ラック51、第二ラック52、及び第三ラック53を含む。これらラック(51、52、53)は、第一方向(X軸方向)に並んで配置されており、第三ラック53は、X軸方向において第一ラック51及び第二ラック52の間に位置している。
第一ラック51、第二ラック52、及び第三ラック53のそれぞれは、複数の棚55を有し、スタッカクレーン100は、複数の棚55のそれぞれのとの間で物品の移載が可能である。なお、図1では表されていないが、第一ラック51、第二ラック52、及び第三ラック53のそれぞれでは、高さ方向(Z軸方向)にも、複数の棚55が並んで配置されている。
本実施の形態では、有軌道搬送車システム10は複数のスタッカクレーン100を備えており、複数のスタッカクレーン100のそれぞれは、当該スタッカクレーン100を制御するコントローラ150を有している。各スタッカクレーン100のコントローラ150は、システム制御装置300との間で、例えば無線通信を介して情報のやり取りを行う。例えば、システム制御装置300から、移動先を含む指示情報を受け取ったコントローラ150は、当該指示情報に基づいて移動ルートを決定し、決定した移動ルートで、そのコントローラ150を有するスタッカクレーン100を移動させる。また、スタッカクレーン100からシステム制御装置300へは、指示された作業の完了報告等が無線通信を介してなされる。
なお、システム制御装置300は、有軌道搬送車システム10の制御及び管理を行う上位コンピュータであり、例えば、複数のスタッカクレーン100と情報のやり取りを行うことで、ラック群50に対する物品の入出庫作業等を制御する。
また、スタッカクレーン100の移動をガイドする軌道20は、第一ラック51に沿って配置された第一軌道21と、第二ラック52に沿って配置された第二軌道22と、第一軌道21及び第二軌道22を接続するショートカット軌道とを含む。本実施の形態では、図1に示すように、第一軌道21及び第二軌道22は、2つのショートカット軌道(25a、25b)で接続されている。
より詳細には、第一軌道21は、平面視(高さ方向(Z軸方向)から見た場合)において第一ラック51を囲むループ状に形成されており、第二軌道22は、平面視において第二ラック52を囲むループ状に形成されている。また、軌道20はさらに、第三ラック53に沿って配置された第三軌道23を含んでおり、第三軌道23は、平面視において第三ラック53を囲むループ状に形成されている。なお、図1に示すように、第一軌道21と第三軌道23とは一部が重複しており、第二軌道22と第三軌道23とは一部が重複している。つまり、軌道20における第一ラック51と第三ラック53との間に位置する直線部分は、第一軌道21及び第三軌道23に共用の部分である。また、軌道20における第二ラック52と第三ラック53との間に位置する直線部分は、第二軌道22及び第三軌道23に共用の部分である。
また、軌道20は図1に示す矢印の方向のみに移動可能(つまり一方通行)である。具体的には、第一軌道21及び第二軌道22は反時計回りの一方通行であり、第三軌道23は、時計回りの一方通行である。
本実施の形態において、複数のスタッカクレーン100のそれぞれは、第三軌道23を介して、第一軌道21及び第二軌道22の一方から他方に移動することができる。また、複数のスタッカクレーン100のそれぞれは、ショートカット軌道(25a、25b)を通過して、第一軌道21及び第二軌道22の一方から他方への移動を行うこともできる。
なお、ショートカット軌道25a及び25bのそれぞれは、軌道20の一部であって、第一軌道21及び第二軌道22を接続する複数の経路のうちの、他の経路よりも短い経路を形成する軌道である。本実施の形態では、ショートカット軌道25a及び25bのそれぞれは、軌道20の一部であって、当該複数の経路のうちの最も短い経路を形成する部分である。言い換えれば、ショートカット軌道25a及び25bの配置位置は、第一ラック51及び第二ラック52の間ではない位置であり、有軌道搬送車システム10が備える軌道20の全体のうちの外周側の部分である。すなわち、スタッカクレーン100が、第一軌道21及び第二軌道22の一方から他方に移動する場合、第三軌道23を経由するよりも、ショートカット軌道25aまたは25bを経由した方が早く移動することができる。
つまり、第三軌道23は、第一軌道21及び第二軌道22を、ショートカット軌道(25a、25b)よりも長い距離で接続している、と表現することができる。また、ショートカット軌道(25a、25b)は、第一軌道21及び第二軌道22を、第三軌道23よりも短い距離で接続している、と表現することができる。
2つのショートカット軌道25a及び25bのそれぞれの途中には、メンテナンスエリア80aまたは80bが設けられている。メンテナンスエリア80a及び80bのそれぞれには、作業員が、スタッカクレーン100のメンテナンスを行うための作業台82が配置されている。メンテナンスエリアに関する各種の事項については、図3〜図7を用いて後述する。
本実施の形態における軌道20は、例えば天井から吊り下げられたまたは天井に固定されたレールであり、スタッカクレーン100は、軌道20に吊り下げられた状態で、軌道20に沿って移動する懸垂式のスタッカクレーンである。また、スタッカクレーン100は、移動方向を前方とした場合に、左右両側から物品400を受け取ることができ、かつ、左右両側へ荷物を送りだすことができる。スタッカクレーン100の構造については、図2を用いて後述する。
有軌道搬送車システム10はさらに、ラック群50のX軸方向の両側に、ラック群50への物品400の入庫、及び、ラック群50からの物品400の出庫のための一時的な物品400の置き場所である入出庫用ラック61及び62が配置されている。
本実施の形態において、入出庫用ラック61及び62のそれぞれは、Y軸方向及びZ軸方向に並べられた複数の棚65を有する。外側から棚65に置かれた物品400は、スタッカクレーン100に引き取られ、ラック群50が有するいずれかの棚55に載置される。また、ラック群50が有するいずれかの棚55に載置された物品400は、スタッカクレーン100に引き取られ、入出庫用ラック61または62が有するいずれかの棚65に載置される。棚65に載置された物品400は、作業員によって当該ラックの外側に取り出され、宛先への配送のための作業がなされる。
具体的には、例えば、図1において入出庫用ラック61の外側(X軸プラス側)に存在する作業員Aは、カート200を移動させながら入出庫用ラック61から複数の物品400を取りだしてカート200に積み、仕分用ラック90まで移動する。また、作業員Aは、例えば、カート200に積んだ物品400が載置されていた棚65の位置を示す情報を、カート200が備える端末装置を介して、システム制御装置300に送信する。これにより、システム制御装置300は、作業員Aが収集した1以上の物品400を示す情報を記憶することができる。
なお、本実施の形態において、物品400は、例えば複数の同一製品が収容された箱体(段ボール箱、または、折り畳みコンテナ等)である。作業員Aは、例えば、カート200が備える表示装置に表示される指示に従って、物品400から取り出した複数の製品のそれぞれを、仕分用ラック90が有する棚95に置く。仕分用ラック90が有する複数の棚95のそれぞれには、宛先が割り当てられており、宛先には、当該宛先に送付すべき1以上の製品が対応付けられている。これら宛先及び、宛先と製品との対応付け等の各種の情報は、例えばシステム制御装置300に記憶されており、システム制御装置300は、カート200と通信することで、カート200(作業員A)に、どの棚95に、どの製品を置くべきかを指示することができる。
また、ある棚95に、当該棚95に割り当てられた宛先に必要な製品群(例えば、製品aを2個、製品bを1個、製品cを3個など)が揃えられると、仕分用ラック90の外側に存在する作業員Bが、当該製品群を箱詰めし、当該宛先が記されたシールを箱に貼付する。シールが貼付された箱は、所定の搬送手段(コンベアまたは台車等)で、出荷場所まで移動され、その後、当該宛先まで輸送される。
また、本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10はさらに、ラック群50の、Y軸方向の側方に、複数の単品用ラック70が配置されている。スタッカクレーン100によって、ラック群50から取り出されて単品用ラック70に載置された物品400からは、例えば、他の有軌道搬送車システムから要求された製品が取り出されて、当該他の有軌道搬送車システムまで、所定の搬送手段(コンベアまたは台車等)によって搬送される。
また、本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10はさらに、平面視において、軌道20及びラック群50を囲むように配置された安全柵170を備える。安全柵170は、人の通過が可能な開口170aを、メンテナンスエリア80a及び80bそれぞれの側方に有している。これら開口170aのそれぞれには扉部160が配置されている。扉部160は、通常はロックされた状態であり、例えば、システム制御装置300からの指示によってスタッカクレーン100がメンテナンスエリア80aに移動してきた場合、メンテナンスエリア80aの側方の扉部160のロックが解除される。これにより、作業員が扉部160を開けてメンテナンスエリア80aに入ることが可能となる。
なお、扉部160のロックの解除は作業員が行ってもよい。例えば、扉部160にロック解除のためのスイッチを配置し、作業員がスタッカクレーン100の停止を確認した上でスイッチを操作し、これにより扉部160のロックが解除されてもよい。この場合、扉部160からシステム制御装置300に、扉部160のロックが解除されたことが通知される。これにより、システム制御装置300は、例えば、メンテナンスエリア80aが使用中であることを認識することができる。
次に、スタッカクレーン100について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、実施の形態に係るスタッカクレーン100の構成概要を示す斜視図である。なお、図2では、スタッカクレーン100の基本的な構成が簡易的に図示されており、軌道20の構造を示すために、軌道20は切断して図示されている。図3は、実施の形態に係るコントローラ150の機能的な構成を示すブロック図である。
本実施の形態に係るスタッカクレーン100は、軌道20に沿って移動する搬送車の一例である。スタッカクレーン100は、上部台車101と、上部台車101から下方に延設された一対のマスト110と、一対のマスト110の下端と接続された下部台車107と、一対のマスト110に沿って昇降する昇降台120と、スタッカクレーン100を制御するコントローラ150とを備える。
上部台車101は、スタッカクレーン100の移動を駆動する台車であり、ベース部101aと、ベース部101aに対してZ軸周りに回動可能に軸支された2つのボギー台車とを備える。2つのボギー台車102のそれぞれは、リニアモータによって移動が駆動される台車であり、軌道20の内面によって形成される走行面20a上で転動する複数のローラを備える。例えば、天井側(軌道20)に磁石が固定され、かつ、ボギー台車102に電磁石が配置された車上一次式リニアモータが、2つのボギー台車102それぞれの駆動源として採用される。また、2つのボギー台車102のそれぞれが、軌道20の走行面20aを走行することで、2つのボギー台車102を有する上部台車101、及び、上部台車101に上端が接続された一対のマスト110等が移動する。つまり、スタッカクレーン100が軌道20に沿って移動する。また、2つのボギー台車102のそれぞれは、分岐切り替え動作(走行する軌道の切り替え)が可能な分岐ローラを有している。これにより、2つのボギー台車102のそれぞれは、第二軌道22からショートカット軌道25aへの乗り換え等の、軌道の乗り換えを行うことができる。
一対のマスト110の下端に接続された下部台車107は、下部レール30に沿って移動する台車であり、例えば、図示しない1以上のローラが下部レール30に接触した状態で、下部レール30に案内されながら移動する。下部レール30は、例えば、床面における、軌道20に対向する位置に配置されたレールであり、懸垂式のスタッカクレーン100の、軌道20を軸とする、軌道20に直交する方向の揺動を抑制する役目を有している。
昇降台120は、例えば図示しない複数のワイヤによって上部台車101から吊り下げられた状態で配置されており、これらワイヤの巻き上げ及び送り出しによって、昇降台120が、一対のマスト110に沿って昇降する。
昇降台120は、物品400の移載を行う移載装置130と、物品400が載置される載置面部121とを有する。本実施の形態では、移載装置130は、互いに同期して伸縮する一対のアーム131を有する。移載装置130は、一対のアーム131で物品400を挟んだ状態、または、一対のアーム131に設けられた爪(図示せず)を物品400に引っ掛けた状態で、一対のアーム131を伸縮させることで、物品400の移載を行う。
移載装置130は、コントローラ150からの指示により、例えば、第一ラック51の1つの棚55の前方で一対のアーム131を伸縮させることで、棚55に載置された物品400を載置面部121に引き込むことができる。また、移載装置130は、例えば、第一ラック51の1つの棚55の前方で一対のアーム131を伸縮させることで、載置面部121に載置された物品400を、棚55に送り出すことができる。
なお、移載装置130の種類(物品400の移載方法)に特に限定はなく、例えば、フォークの出退及び昇降によって、物品400の移載を行うフォーク式の移載装置が、昇降台120に備えられてもよい。
本実施の形態に係るコントローラ150は、図3に示すように、メンテナンスエリア(80a、80b)の使用状況を取得する取得部152と、取得部152に取得された使用状況に基づいて、スタッカクレーン100の移動ルートを決定する決定部154とを有する。本実施の形態では、取得部152は、システム制御装置300から、メンテナンスエリア(80a及び80b)それぞれの使用状況を示すメンテナンス情報を取得(受信)する。例えば、取得部152が取得したメンテナンス情報が、メンテナンスエリア80aが使用中であることを示す場合、ショートカット軌道25aの通行が不可であるため、決定部154は、ショートカット軌道25aを選択肢から除外して、スタッカクレーン100の移動ルートを決定する。移動ルートの具体例は図5〜図7を用いて後述する。また、コントローラ150は、上記の取得部152及び決定部154によって発揮される機能の他、2つのボギー台車102の駆動、昇降台120の昇降、及び、移載装置130の動作等を制御する機能を有している。
なお、コントローラ150が実行する各種の情報処理は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等の記憶装置、および情報の入出力のためのインタフェース等を備えたコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。
上記構成を有するスタッカクレーン100に対し、清掃、点検、調整または修理等のメンテナンスが行われる場合、例えば、システム制御装置300からの指示に従って、スタッカクレーン100がメンテナンスエリア80aまたは80bまで移動される。
図4は、実施の形態に係るメンテナンスエリア80aの構成概要を示す側面図である。なお、図4では、軌道20、下部レール30、及び扉部160については断面で図示されている。また、メンテナンスエリア80a及びメンテナンスエリア80bの構成は実質的に同一であるため、以下では、メンテナンスエリア80aに関する事項について説明し、メンテナンスエリア80bについての説明は適宜省略する。
メンテナンスエリア80aは、ショートカット軌道25aの途中(図1参照)に配置され、かつ、スタッカクレーン100のメンテナンスのための設備が設置された領域である。具体的には、作業員が上部台車101にアクセスするための作業台82がメンテナンスエリア80aに配置されている。
作業台82は、所定の高さ位置に配置された作業床部83と、作業床部83及び床面の間で作業員が移動するための梯子部84とを有する。なお、作業床部83には、作業員の安全を確保するための手すりまたは囲い等を有しているが、図4では、これらの図示は省略されている。
スタッカクレーン100のメンテナンスが行われるタイミングとしては、例えば、予めスケジューリングされている場合、及び、作業員からの要求によって生じる場合などがある。
例えば、作業員が、システム制御装置300と通信可能な端末装置を操作することで、1つのスタッカクレーン100についてのメンテナンス要求をシステム制御装置300に送信する。システム制御装置300はこのメンテナンス要求に応じ、そのスタッカクレーン100のコントローラ150に、メンテナンスエリア80aに移動する指示を行う。また、このとき、メンテナンスエリア80aが使用中であることを示すメンテナンス情報を複数のスタッカクレーン100のそれぞれに送信する。
上記の移動指示を受けたスタッカクレーン100は、メンテナンスエリア80aまで移動して停止する。その後、システム制御装置300は、メンテナンスエリア80aの側方(ラック群50とは反対側)に設けられた扉部160のロックを解除する。作業員は、ロックが解除された扉部160を開けてメンテナンスエリア80aに入り、作業台82の作業床部83に上がり、例えば、ボギー台車102の点検または調整等を行う。その後、作業員がメンテナンスエリア80aから退出し、扉部160が閉められた後に、システム制御装置300は、例えば作業員からのメンテナンス完了報告を受信し、かつ、扉部160が閉められていることを確認する。これにより、システム制御装置300は、メンテナンスエリア80aが不使用であることを確認する。このとき、メンテナンスエリア80aが不使用であること(使用中でないこと)を示すメンテナンス情報を複数のスタッカクレーン100のそれぞれに送信する。
有軌道搬送車システム10において、このような制御及び情報処理が行われることで、各スタッカクレーン100は、メンテナンスエリア80aが使用中であるか否かを知ることができ、これにより、移動ルートを適切に決定することができる。
次に、本実施の形態においてコントローラ150が実行する移動ルートの決定処理について、具体例をあげて説明する。
図5〜図7は、実施の形態に係るスタッカクレーン100の移動ルートの決定処理を説明するための第1〜第3の図である。
例えば図5に示すように、1つのスタッカクレーン100(図5に示すスタッカクレーン100A)が、第二軌道22に沿って移動または停止しているときに、第一ラック51の棚55Aからの物品400の取り出しを含む指示をシステム制御装置300から受けた場合を想定する。
この時点では、図5に示すように、メンテナンスエリア80aに他のスタッカクレーン100は存在していない。従って、スタッカクレーン100Aのコントローラ150が受信した最新のメンテナンス情報は、メンテナンスエリア80aが不使用であることを示している。
つまり、コントローラ150の取得部152が取得したメンテナンスエリア80aの使用状況は「不使用」である。そのため、コントローラ150の決定部154は、ショートカット軌道25aを選択肢に入れて、第二軌道22から第一軌道21に移動するための移動ルートを決定する。具体的には、決定部154は、スタッカクレーン100Aの現在位置から、目的位置Pまでの移動ルートを決定する。
本例では、現在位置から目的位置Pまでの最短の経路であるR1が、移動ルートとして決定される。コントローラ150は、ショートカット軌道25aを通過することを示す予定情報をシステム制御装置300に送信する。その後、スタッカクレーン100Aは、決定した移動ルートR1(太線の矢印)に沿って移動し、目的位置Pで停止する。スタッカクレーン100Aは、停止した後に、移動完了報告をシステム制御装置300に送信する。なお、システム制御装置300は、予定情報を受信してから、当該予定情報に対応する移動完了報告を受信するまでは、他のスタッカクレーン100に対してメンテナンスエリア80aの使用を許可しない。
また、例えば図6に示すように、メンテナンスエリア80aが使用中である場合を想定する。具体的には、図6に示す例では、1つのスタッカクレーン100(図5に示すスタッカクレーン100B)が、メンテナンスエリア80aで停止中である。また、メンテナンスエリア80aの側方の扉部160が開けられ、作業員Cが、メンテナンスエリア80aに入ろうとしている。
この時点では、システム制御装置300は、メンテナンスエリア80aが使用中であることを認識しており、既に、各スタッカクレーン100に、メンテナンスエリア80aが使用中であることを示すメンテナンス情報を送信済みである。
ここで、この時点で、例えば図7に示す位置に存在しているスタッカクレーン100Aが、第一ラック51の棚55Aからの物品400の取り出しを含む指示をシステム制御装置300から受けた場合を想定する。この場合、スタッカクレーン100Aのコントローラ150が受信した最新のメンテナンス情報は、メンテナンスエリア80aが使用中であることを示している。
つまり、コントローラ150の取得部152が取得したメンテナンスエリア80aの使用状況は「使用中」である。そのため、コントローラ150の決定部154は、ショートカット軌道25aを選択肢から除外して、第二軌道22から第一軌道21に移動するための移動ルートを決定する。具体的には、決定部154は、スタッカクレーン100Aの現在位置から、目的位置Pまでの移動ルートを決定する。
本例では、現在位置から目的位置Pまでの経路であって、第三軌道23を経由するR2(太線の矢印)が、移動ルートとして決定される。つまり、スタッカクレーン100Aは、ショートカット軌道25aの途中に配置されたメンテナンスエリア80aが使用中であることで、現在位置から目的位置Pまでの最短経路での移動は不可能である。しかし、第二軌道22と第一軌道21とを接続する経路であってショートカットではない経路(本実施の形態では、第三軌道23を通過する経路)が存在する。そのため、スタッカクレーン100Aは、システム制御装置300から与えられた指示(本例では、第一ラック51からの物品400の取り出しを含む作業)の実行を即座に開始することが可能である。すなわち、スタッカクレーン100Aは、当該指示が与えられた後に、決定した移動ルートR2に沿った移動を即座に開始することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10は、軌道20に沿って移動するスタッカクレーン100と、スタッカクレーン100を制御するコントローラ150と、それぞれが複数の物品400を収容可能な複数のラック(ラック群50)とを備える。軌道20は、ラック群50のうちの第一ラック51に沿って配置された第一軌道21と、ラック群50のうちの第二ラック52に沿って配置された第二軌道22と、第一軌道21及び前記第二軌道22を接続するショートカット軌道25a(25b)とを含む。ショートカット軌道25a(25b)の途中には、スタッカクレーン100のメンテナンスを行うためのメンテナンスエリア80a(80b)が設けられている。コントローラ150は、メンテナンスエリア80a(80b)の使用状況を取得する取得部152と、取得部152に取得された使用状況に基づいて、スタッカクレーン100が、第一軌道21及び第二軌道22の一方から他方に移動するための移動ルートを決定する決定部154とを有する。
この構成によれば、軌道20全体のうちの通常の搬送経路に使用される一部にメンテナンスエリア80a(80b)が配置されるため、メンテナンスエリア80a(80b)の存在に起因する面積効率の低下は抑制される。また、メンテナンスエリア80a(80b)が使用中であっても、コントローラ150は、例えばショートカット軌道25a(25b)を通らない経路で、第一軌道21及び第二軌道22の一方から他方への移動ルートを決定することができる。そのため、有軌道搬送車システム10における作業効率の低下が抑制される。
このように、本態様に係る有軌道搬送車システム10は、軌道20に沿って移動するスタッカクレーン100を備え、かつ、省スペース化が可能である。より具体的には、有軌道搬送車システム10によれば、物品400の搬送等の作業についての作業効率の低下を抑制し、かつ、スタッカクレーン100のメンテナンスを行う領域を含むシステム全体の配置面積を比較的に小さく抑えることができる。
また、本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10において、ラック群50は、第一ラック51及び第二ラック52の間に配置された第三ラック53を含む。第一ラック51、第二ラック52、及び第三ラック53は、第一方向(X軸方向)に並んで配置されており、第三ラック53の、X軸方向と直交する第二方向(Y軸方向)の長さは、第一ラック51及び第二ラック52のY軸方向の長さよりも短い。ショートカット軌道25a(25b)は、第三ラック53のY軸方向の側方の位置に配置されている。
この構成によれば、X軸方向に並んで配置された3つのラックのうちの、真ん中のラックであって、Y軸方向の長さが他のラックよりも短いラックである第三ラック53の側方に生じるスペースに、メンテナンスエリア80a(80b)が配置される。つまり、複数のラックを所定の領域内に効率よく配置する場合に生じるスペースであって、他のラック(第一ラック51及び第二ラック52)とサイズの異なる1つのラック(第三ラック53)の側方に生じるスペースを利用してショートカット軌道25a(25b)及びメンテナンスエリア80a(80b)が配置される。
これにより、例えば、ラック群50、軌道20、及びメンテナンスエリア80a(80b)を含む、有軌道搬送車システム10の配置面積を最小限に抑えることが可能となる。
また、本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10において、ショートカット軌道25a(25b)は、第一ラック51及び第二ラック52の間ではない位置に配置されており、メンテナンスエリア80a(80b)を挟んでラック群50とは反対側には、メンテナンスエリア80a(80b)に人が入るための扉部160が配置されている。
この構成によれば、例えば、有軌道搬送車システム10が備える軌道20の全体のうちの、第一ラック51及び第二ラック52の間ではない位置である外周側にショートカット軌道25a(25b)が配置される。また、ショートカット軌道25a(25b)の途中に設けられたメンテナンスエリア80a(80b)には、メンテナンスを行う作業員が、有軌道搬送車システム10の外側から容易にアクセスできる。従って、例えば、有軌道搬送車システム10の省スペース化を実現しつつ、作業効率を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10はさらに、平面視において、軌道20及びラック群50を囲むように配置された安全柵170を備える。扉部160は、安全柵170における、メンテナンスエリア80a(80b)の側方の位置に設けられた開口170aを開閉可能に塞ぐように配置されている。
この構成によれば、例えば、軌道20及びラック群50等が配置された領域への、人の容易な進入を防止しつつ、作業員によるスタッカクレーン100のメンテナンス作業を可能としている。つまり、有軌道搬送車システム10の安全性の向上と作業効率の向上との両立が図られる。
また、本実施の形態に係る有軌道搬送車システム10は、例えば以下のように表現することもできる。すなわち、有軌道搬送車システム10は、軌道20に沿って移動するスタッカクレーン100と、スタッカクレーン100を制御するコントローラ150と、それぞれが複数の物品400を収容可能な複数のラック(ラック群50)とを備える。ラック群50は、第一方向(X軸方向)に並んで配置された、第一ラック51及び第二ラック52、並びに、第一ラック51及び第二ラック52の間に位置する第三ラック53を含む。軌道20は、第一ラック51に沿って配置された第一軌道21と、第二ラック52に沿って配置された第二軌道22と、第一軌道21及び第二軌道22を接続するショートカット軌道25a(25b)とを含む。第三ラック53の、X軸方向と直交する第二方向(Y軸方向)の長さは、第一ラック51及び第二ラック52のYの長さよりも短い。ショートカット軌道25a(25b)は、第三ラック53のY軸方向の側方の位置に配置されており、ショートカット軌道25a(25b)の途中には、スタッカクレーン100のメンテナンスを行うためのメンテナンスエリア80a(80b)が設けられている。
この構成によれば、軌道20全体のうちの通常の搬送経路に使用される一部にメンテナンスエリア80a(80b)が配置されるため、メンテナンスエリア80a(80b)の存在に起因する、面積効率の低下は抑制される。また、メンテナンスエリア80a(80b)が使用中であっても、メンテナンスエリア80a以外の位置に存在するスタッカクレーン100は、例えばショートカット軌道25a(25b)を通らない経路で、第一軌道21及び第二軌道22の一方から他方に移動することができる。そのため、有軌道搬送車システム10における作業効率の低下が抑制される。
このように、本態様に係る有軌道搬送車システム10は、軌道20に沿って移動するスタッカクレーン100を備え、かつ、省スペース化が可能である。より具体的には、有軌道搬送車システム10によれば、物品400の搬送等の作業についての作業効率の低下を抑制し、かつ、スタッカクレーン100のメンテナンスを行う領域を含むシステム全体の配置面積を比較的に小さく抑えることができる。
(他の実施の形態)
以上、本発明の有軌道搬送車システムについて、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
例えば、有軌道搬送車システム10が備える搬送車は、スタッカクレーン100とは異なる種類の搬送車であってもよい。例えば、床面に配置されたレール上を走行する有軌道台車、または、天井に配置されたレールに沿って走行し、かつ、物品を保持するチャック機構部を昇降させることで物品の受け渡しを行う天井走行車が、搬送車として有軌道搬送車システム10に備えられてもよい。
また、コントローラ150は、スタッカクレーン100に備えられていなくてもよい。例えば、スタッカクレーン100の外部に配置されたコンピュータであって、取得部152及び決定部154としての機能を有するコンピュータが、スタッカクレーン100を制御するコントローラとして配置されてもよい。
また、システム制御装置300は、メンテナンスエリア80a(80b)が使用中であるか否かを示すメンテナンス情報を、メンテナンスエリア80a(80b)の使用状況が変更されたことをトリガとしてスタッカクレーン100に送信しなくてもよい。システム制御装置300は、例えば、スタッカクレーン100から、メンテナンス情報の送信要求を受信した場合に、当該送信要求の応答として、メンテナンス情報を送信してもよい。また、システム制御装置300は、例えば、スタッカクレーン100に、物品400の搬送等の指示を与える場合に、当該指示とともに、メンテナンスエリア80a(80b)についてのメンテナンス情報を与えてもよい。つまり、システム制御装置300は、メンテナンスエリア80a(80b)の最新の使用状況を記憶しているため、各スタッカクレーン100に、任意のタイミングで、メンテナンスエリア80a(80b)の最新の使用状況を知らせることができる。
また、メンテナンスエリア80a(80b)にスタッカクレーン100が停止している期間に、メンテナンスエリア80a(80b)への他のスタッカクレーン100の進入を機械的に防止するストッパが、例えば軌道20に配置されてもよい。
また、本実施の形態において、軌道20は、第一軌道21と第二軌道22との間を接続する2つのショートカット軌道25a及び25bを含んでいるが、第一軌道21と第二軌道22との間のショートカット軌道は少なくとも1つあればよい。
また、2つのショートカット軌道25a及び25bそれぞれの途中にメンテナンスエリアが配置されていなくてもよい。例えば、ショートカット軌道25aの途中にメンテナンスエリア80aが配置され、かつ、ショートカット軌道25bの途中にメンテナンスエリアが配置されていなくてもよい。この場合、スタッカクレーン100は、第一軌道21から第二軌道22へは、常に最短の経路(ショートカット軌道25bを経由する経路)で移動することができる。そのため、システム制御装置300は、例えば、第一ラック51に収容された物品400の、第二ラック52または入出庫用ラック62への移動を含む作業を、メンテナンスエリア80aが使用中である期間に、集中的に各スタッカクレーン100に割り当ててもよい。これにより、1つのショートカット軌道25aが通行不可であることに起因する作業効率の低下が抑制される。
また、第一軌道21と第二軌道22とを接続するショートカット軌道の数は3以上であってもよい。3以上のショートカット軌道が存在する場合、当該3以上のショートカット軌道のうちの少なくとも1つのショートカット軌道の途中にメンテナンスエリアが設けられればよい。
また、図1等に示す軌道20のレイアウトは一例であり、軌道20は、軌道20上の2つの地点を結ぶ経路が複数形成されるレイアウトであればよい。この場合、例えば、これら複数の経路のうちの最短の経路を形成する部分を、ショートカット軌道と規定することができる。
また、上記実施の形態では、軌道20には、第一軌道21及び第三軌道23に共用の部分、及び、第二軌道22及び第三軌道23に共用の部分が含まれている(図1参照)。しかし、軌道20は、これら共用の部分を含まなくてもよい。
図8は、隣り合うラック(第一ラック51及び第二ラック52)で共用する部分を含まない軌道20を有する有軌道搬送車システム10aの構成概要を示す図である。
図8に示す有軌道搬送車システム10aは、図1に示す有軌道搬送車システム10とは異なり、第一ラック51及び第二ラック52の間に、第三ラック53が配置されてない。そのため、軌道20には、隣り合うラック(図8では第一ラック51及び第二ラック52)で共用する部分を含まない。
この場合であっても、図1における第三軌道23に相当する部分が、内側の周回軌道23aとして存在することで、第一軌道21から第二軌道22に移動するための経路が2つ存在し、かつ、第二軌道22から第一軌道21に移動するための経路が2つ存在する。これにより、例えば、メンテナンスエリア80aが使用中である場合であっても、第二軌道22上のスタッカクレーン100は第一軌道21に移動することができる。また、メンテナンスエリア80bが使用中である場合であっても、第一軌道21上のスタッカクレーン100は第二軌道22に移動することができる。
また、ラック群50が有するラックの数は3には限定されない。ラック群50は少なくとも2つのラックを有すればよい。例えば、2つのラックの間に、搬送車が搬送する物品の加工等を行う1以上の産業機械が配置されている場合を想定する。この場合、2つのラックそれぞれに沿った軌道(第一軌道及び第二軌道)、当該1以上の産業機械に沿った軌道(第三軌道)、及び、第一軌道と第二軌道とを接続するショートカット軌道を配置することができる。さらに、このショートカット軌道の途中にメンテナンスエリアを配置することができる。つまり、上記実施の形態と同じく、搬送車は、第一軌道及び第二軌道の一方から他方に移動する場合、ショートカット軌道の途中に設けられたメンテナンスエリアの使用状況に応じて、移動ルートを適切に決定することができる。
また、上記実施の形態において、物品400は、複数の同一製品が収容された箱体(段ボール箱、または、折り畳みコンテナ等)であるとしたが、物品400の態様に特に限定はない。例えば、箱に収容されていない物体、宛先に届けられるまで開梱されない箱体、複数の箱体が載置されたパレット等が、有軌道搬送車システム10において搬送される物品として扱われてもよい。