JP6899687B2 - 医療用織物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
医療分野等で使用される織物には、生地の初期の引裂強力、通気性、耐水圧に加え、洗濯、滅菌処理後の各々の物性も要求される。織物に高引裂強力、低通気性、高耐水圧、および耐滅菌性の性能を持たせるために、原糸の強度を上げること、織物を高密度化することが知られている。なかでも、織物の耐水圧を高める手段としては、織物を高密度化することに加え、樹脂コーティング、防水フィルムのラミネート等が知られている。また、滅菌処理による物性低下を抑制する方法としては、樹脂に耐加水分解剤を添加したり、加水分解の無い樹脂を使用する等が数多く提案されている。
例えば、特許文献1では、熱可塑性合成繊維のマルチフィラメント糸からなる織物であって、該織物のカバーファクターが1600〜3800の範囲にあり、かつ、該織物の通気度が10cc/cm2/sec以下である高密度織物にシリコン系ポリマー樹脂を用いてコーティング加工することを特徴とするペンキ衣料用織物の製造法が開示されている。
特許文献2では、固有粘度〔η〕が0.62以上0.95以下の芳香族ポリエステル系マルチフィラメント糸が経糸及び緯糸に用いられてなる織物であって、前記経糸がフラットヤーンであり、前記緯糸が高圧流体攪乱処理を施された嵩高加工糸であり、経糸及び/又は緯糸の他の一部として制電性ポリエステルフィラメント糸条が5〜25mm間隔に配されてなり、織物一完全組織を構成する経糸浮き本数及び緯糸浮き本数の最大値が1本以上3本以下で、且つ経糸浮き本数の最大値が緯糸浮き本数の最大値以上であることを特徴とする織物が開示されている。
特許文献3では、3500m/分以上の紡糸引取速度で得られる複屈折率が0.035〜0.045、切断伸度が40〜70%、沸騰水収縮率が10%以下、最大熱応力値が0.1g/d以下の低収縮ナイロン6マルチフィラメントと、沸騰水収縮率が20%以上、最大熱応力値が0.4g/d以上の特性を有する共重合ポリエステルからなる高収縮ポリエステルマルチフィラメントとを、高収縮ポリエステルマルチフィラメントのトータル繊度を低収縮ナイロン6マルチフィラメントのトータル繊度の60%以下となるように混繊交絡および/または合撚した複合糸として用い、製織または製編して布帛とした後、熱処理することを特徴とする高密度布帛の製造方法が開示されている。
また特許文献2記載の織物は、引裂強力が十分でない。また、特許文献3記載の高密度織物は、引裂強力が十分でないうえ、洗濯・滅菌処理を繰り返すことにより、耐水圧や引裂強力が極端に低下する問題がある。
また樹脂コーティングや防水フィルムをラミネートした織物も、洗濯・滅菌処理を繰り返すと耐水性、引裂強力が低下し、低通気性も損なわれ、洗濯・滅菌処理を繰り返した後も、十分な物性が保てるものが得られていないのが現状である。
カバーファクター(CF) =T×(DT)1/2+W×(DW)1/2・・・式1
ここで、T及びWはそれぞれ織物の経密度及び緯密度(本/2.54cm)を示し、DT及びDWはそれぞれ織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。
また、上記医療用織物において、織物の引裂強力が40N以上、洗濯・滅菌処理75回後の織物の引裂強力が10N以上 、織物の耐水圧が7500kPa以上、洗濯・滅菌処理75回後の織物の耐水圧が4900kPa以上、通気性が、1cm3/cm2・sec以下、洗濯・滅菌処理75回後の織物の通気性が、4cm3/cm2・sec未満である上記医療用織物を第2の要旨とする。
織物組織が、平織又は綾織である上記医療用織物を第3の要旨とする。
また、経糸として、前記ポリエステル原糸とポリエステル系導電糸に前記ポリエステル原糸をカバリングしたカバリング糸とを用い、緯糸として、前記ポリエステル原糸の双糸を用いる上記医療用織物を第4の要旨とする。
ポリエステル原糸が生糸である上記医療用織物を第5の要旨とする。
単糸繊度2.0dtex以下、強度5.5cN/dtex以上のポリエステル原糸からなる糸を75質量%以上用いて製織した後、カレンダー加工を施して製造する上記医療用織物の製造方法を第6の要旨とする。
単糸繊度2.0dtex以下、強度5.5cN/dtex以上のポリエステル原糸からなる糸を75質量%以上用いて製織した後、撥水処理を施して製造する上記医療用織物の製造方法を第7の要旨とする。
本発明において、原糸とは、溶融紡糸して延伸して得られる延伸糸であり、いわゆる生糸を示す。
尚、ポリエステル原糸に用いるポリエステル樹脂としては、ホモポリエステル、第3成分を共重合した共重合ポリエステルのいずれでもよいが、好ましくは、ホモポリエステルである。
好適な共重合成分としては、5−スルホイソフタル酸塩やポリエチレングリコール、ビスフェノールA等が挙げられる。
本発明におけるポリエステル原糸の特に好適な樹脂としては、エチレンテレフタレート単位を95%以上繰り返すPETが挙げられる。
撥水加工を行う場合、フッ素系,シリコン系の撥水剤で低粘度(約100cps以下)の撥水剤を付与して、撥水処理することが好ましい。撥水処理としては、得られた生機を、浸漬法により撥水剤に含浸させた後、パディング,マングル絞り,ナイフしごき等を行う方法が挙げられる。
A.破断強度、破断伸度
JIS L 1013に準じ、島津製作所製のAGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張速度20cm/minの条件で測定する。荷重−伸び曲線での荷重の最高値を繊度で除した値を破断強度(cN/dtex)とし、そのときの伸び率を破断伸度(%)とする。
B.極限粘度(IV)
ウベローデ型粘度管を使用し、サンプルをフェノール:テトラクロロエタン=6:4の混合溶媒、溶解時間80℃×1時間で溶解し、測定温度20℃の下で測定し、極限粘度IV(dl/g)を得た。
B.引裂強力
織物の引裂き強力は、JIS L 1096 8.17.4に規定されている引裂強さD法(ペンジュラム法)に準拠して、経緯の両方向において測定した。
C.耐水圧
織物の耐水圧は、JIS L 1092 7.1.1に規定されている耐水度試験(静水圧)A法(低水圧法)に準拠して測定した。
D.通気性
織物の通気性は、JIS L 1096 8.26.1に規定されている通気性A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
E.洗濯・滅菌耐久性
洗濯・滅菌処理75回後の織物の通気性、耐水圧及び引裂強力を測定し耐久性を評価した。
洗濯・滅菌処理75回後とは、洗濯−脱水−撥水加工−脱水−滅菌処理−脱水−乾燥の工程を洗濯・滅菌処理の1サイクルとし、75サイクル実施後である。
尚、洗濯は、JIS L 1096 8.39.5に規定されているF−3法(高温ワッシャ法)に準拠して実施する。撥水加工は、4質量%フッ素系撥水剤(旭ガラス(株)製アサヒガードLS380K)、浸透剤無しで5分間浸漬し脱水する。滅菌処理は134℃、18分間のオートクレーブにより実施する。乾燥は130℃で、タンブラー乾燥機により実施する。
極限粘度IV=0.85dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を紡糸温度300℃にて、エクストルーダーにて溶融させ、72H×2の口金よりポリマーを押し出して、未延伸ボビンを採取し、延伸工程にて、予熱ヒーター78℃、熱セット温度172℃にて延伸し、84dtex/72fの延伸糸(原糸A)を得た。
経糸は、原糸Aと、22dtex/6fのポリエステル系導電糸に原糸Aをカバリングしたカバリング糸とを19本:1本の割合で使用し、緯糸は原糸Aの2本双糸を使用し、経密度185本/2.54cm、緯密度80本/2.54cmで、図1に示す組織で製織し、生機を得た。得られた生機を、精練、リラックス、プレセット、染色(分散染料)した。次いで、得られた生地に、フッ素の撥水剤4質量%(旭ガラス株式会社製アサヒガードLS380K)を、浸透剤としてイソプロピルアルコール3質量%を用いて、浸漬法にて撥水処理を行なった後、180℃、4.5MPaの条件で片面カレンダー加工を行い、医療用織物(経密度:200本/2.54cm、緯密度:86本/2.54cm、CF:2959)を得た。
緯糸に、実施例1で得られた原糸Aをピン仮撚にて加工した仮撚加工糸を2本双糸した糸を用いた以外は、実施例1と同様に医療用織物を得た。
原糸Aの繊度を84dtex/48fに変更以外は、実施例1と同様に医療用織物を得た。
極限粘度IVが0.68dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を紡糸温度285℃にて、エクストルーダーにて溶融させ、48H×2の口金よりポリマーを押し出して、未延伸ボビンを採取し、延伸工程にて、予熱ヒーター78℃、熱セット温度172℃にて延伸し、74dtex/48fの延伸糸(原糸B)を得た。経糸は、原糸Bと、22dtex/6fのポリエステル系導電糸に原糸Bをカバリングしたカバリング糸とを19本:1本の割合で使用し、緯糸は原糸Aの2本双糸を使用し、経密度192本/2.54cm、緯密度82本/2.54cmで、図1に示す組織で製織し、生機を得た。これ以降は実施例1と同様に加工を実施し、医療用織物(経密度:206本/2.54cm、緯密度:86本/2.54cm、CF:2831)を得た。
緯糸を、実施例4にて得られた原糸Bをピン仮撚にて加工した仮撚加工糸を2本双糸とした糸と変更する以外は、実施例4と同様に医療用織物を得た。
極限粘度IVが0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を紡糸温度280℃にて、エクストルーダーにて溶融させ、72H×2の口金よりポリマーを押し出して、未延伸ボビンを採取し、延伸工程にて、予熱ヒーター78℃、熱セット温度172℃にて延伸し、84dtex/72fの延伸糸(原糸C)を得た。
原糸Aを原糸Cとする以外は実施例1と同様に医療用織物を得た。
原糸Aに代えて、比較例1にて得られた原糸Cをピン仮撚にて加工した仮撚加工糸を用いる以外は、実施例1と同様に医療用織物を得た。
原糸Aの繊度を、84dtex/24fにする以外は、実施例1と同様に医療用織物を得た。
原糸Aの伸度を表1記載のようにする以外は、実施例1と同様に医療用織物を得た。
製織時の経糸密度を150本/2.54cm、緯糸密度を64本/2.54cmとする以外は、実施例1と同様に医療用織物(経密度163本/2.54cm、緯密度70本/2.54cm(CF:2410)の)を得た。
実施例及び比較例の織物の構成及び評価結果について、表1に示す。
Claims (7)
- 単糸繊度2.0dtex以下、強度5.5cN/dtex以上、伸度20〜40%のポリエステル原糸を75質量%以上用いて得た織物であり、ポリエステル原糸は極限粘度(IV)が0.65〜1.0のポリエチレンテレフタレートを用いてなり、式1に示すカバーファクターが2600以上である医療用織物。
カバーファクター(CF) =T×(DT)1/2+W×(DW)1/2・・・式1
ここで、T及びWはそれぞれ織物の経密度及び緯密度(本/2.54cm)を示し、DT及びDWはそれぞれ織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。 - 下記の(1)から(6)を満たす請求項1に記載の医療用織物。
(1)織物の引裂強力が40N以上
(2)洗濯・滅菌処理75回後の織物の引裂強力が10N以上
(3)織物の耐水圧が7500kPa以上
(4)洗濯・滅菌処理75回後の織物の耐水圧が4900kPa以上
(5)通気性が、1cm3/cm2・sec以下
(6)洗濯・滅菌処理75回後の織物の通気性が、4cm3/cm2・sec未満 - 織物が、平織又は綾織である請求項1又は2に記載の医療用織物。
- 経糸として、前記ポリエステル原糸とポリエステル系導電糸に前記ポリエステル原糸をカバリングしたカバリング糸とを用い、緯糸として、前記ポリエステル原糸の双糸を用いる請求項1〜3いずれか1項に記載の医療用織物。
- ポリエステル原糸が生糸である請求項1〜4いずれか1項に記載の医療用織物。
- 単糸繊度2.0dtex以下、強度5.5cN/dtex以上のポリエステル原糸からなる糸を75質量%以上用いて製織した後、カレンダー加工施すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の医療用織物を製造方法。
- 単糸繊度2.0dtex以下、強度5.5cN/dtex以上のポリエステル原糸からなる糸を75質量%以上用いて製織した後、撥水処理を施すことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の医療用織物の製造方法。
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