この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の車両1の車体構造は、押出成形されたアルミ合金製の複数のフレームを連結して車体骨格をなす、所謂、スペースフレーム構造である。このような車両1の車体構造について、図1から図8を用いて説明する。
また、図示を明確にするため、図1中において車両右側、図2〜図4、図6および図7において車両左右両側、図5において車両左側のフロントサスペンション3の図示を夫々省略している。さらに図5ではフレーム部材5の図示を省略している。
また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rtは車両右側を示し、矢印Ltは車両左側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示し、矢印INは車幅方向内側を示すものとする。
本実施形態における車両1の車体構造は、図3に示すように、乗員が乗り込む車室部2と、車室部2よりも車両前方のエンジンルームに略相当する位置に配置されたフロントサスペンション3(以下、「サスペンション3」と略記する)を支持するサスペンション支持構造体4と、車室部2とサスペンション支持構造体4とを連結する複数のフレーム部材5と、サスペンション支持構造体4の前端に連結されるとともに、車両前方からの衝撃荷重を吸収する衝撃吸収構造体6とを備えている。
車室部2は、図6に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル21と、サイドシル21の車両上方に配設された左右一対のフロントピラー22と、サイドシル21の前端、及びフロントピラー22の前端を車両上下方向に連結する左右一対のヒンジピラー23と、車幅方向略中央の位置において、車両前後方向に延びるセンタトンネルフレーム26およびトンネルサイドフレーム27(図7参照)と、衝撃吸収部材28と、左右のヒンジピラー23を車幅方向に連結して、車室内外を隔てる隔壁をなす隔壁部25としてのダッシュパネル251およびカウルパネル252とを備えている。
衝撃吸収部材28は、図2に示すように、オフセット衝突時に後退する前輪(図示略)を受け止めてその衝撃エネルギーを吸収するメンバであって、アーチ状のフロントホイルハウスの後壁(図示略)とヒンジピラー23との間において、サイドシル21の前部に対して上方で隣接して車両前後方向に配設されている。
センタトンネルフレーム26は、図4、図6に示すように、フロアパネル201(図7参照)の車幅方向中央部から車室部2内方へ突出して車両の前後方向に延びるトンネル部200(フロアトンネル)(同図参照)の頂部に左右一対並設され、夫々頂部との間に車両前後方向に延びる閉断面を構成する。
トンネルサイドフレーム27は、図7に示すように、左右各側のフロアパネル201とトンネル部200との間に跨るようにして左右一対備え、これらフロアパネル201とトンネル部200との間に車両前後方向に延びる閉断面を構成する。
また、サスペンション3は、図1に示すように、ダブルウィッシュボーン式サスペンション構造であって、車両1の前輪を回転自在に支持するナックル31と、車幅方向外側がナックル31の下部に連結され、車幅方向内側が車体に連結されたロアアーム32と、車幅方向外側がナックル31の上部に連結され、車幅方向内側が車体に連結されたアッパアーム33と、上端が車体に連結され、下端がロアアーム32に連結された伸縮可能なフロントサスダンパ34(以下、「ダンパ34」と称する)とで構成されている。
また、サスペンション支持構造体4は、図1に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てて配置された左右一対の骨格メンバ41と、左右の骨格メンバ41の下端近傍を連結するサスクロス42と、サスクロス42よりも僅かに車両上方の位置で、左右の骨格メンバ41の下部を連結する下側クロスメンバ43と、左右の骨格メンバ41の上部を連結する上側クロスメンバ44と、上側クロスメンバ44に接合された左右一対のボックス部材45と、骨格メンバ41およびサスクロス42を連結する左右一対の傾斜フレーム46とで構成されている。
また、衝撃吸収構造体6は、図2、図4に示すように、左右の骨格メンバ41の前端に連結された左右一対の衝撃吸収部材61と、衝撃吸収部材61の前端を車幅方向に連結する不図示のフロントバンパービームとを備えている。
さらに、衝撃吸収構造体6は、左右一対の衝撃吸収部材61の下方において、左右の骨格メンバ41の後述する下側骨格部412の前面から前方へ延びるサブ衝撃吸収部材65(図2参照)と、左右各側のサブ衝撃吸収部材65の前端部を連結するように車幅方向に延びるサブフロントバンパービーム(図示略)とを備えている。
衝撃吸収部材61は、車両前後方向に延設されており、その車両前後方向の後端を除く全長に亘って、幅方向外側が開口した断面略M字状の開断面空間を有して繊維強化樹脂(当例では炭素繊維強化プラスチック)で形成されている。
衝撃吸収部材61の後端には、図2に示すように、骨格メンバ41の前面と連結する後端連結部613が略平板状に形成されている。後端連結部613は、衝撃吸収部材61の後方に開口する開断面空間を後端側から閉塞するように該衝撃吸収部材61の後端において車幅方向外側へ延設されている。
また図1、図2、図4、図6、図7に示すように、フレーム部材5は、サイド側アッパフレーム51と、センタ側フレーム52と、サイド側フレーム53と、サイド側ロアフレーム54と、センタ側ロアフレーム55と、補強フレーム56とを夫々左右一対備えている。
これらフレーム部材5(51〜56)は、いずれも押出成形された中空状に構成されており、補強フレーム56は、前方程上方に延在する一方で、該補強フレーム56以外のフレーム部材5(51〜55)は直線状に延在しており、左右各側において車室部2と骨格メンバ41とを連結する。
引き続き、上述したサスペンション3、サスペンション支持構造体4、及びフレーム部材5の各構成要素について、さらに詳述する。
まず、サスペンション3は、上述したように、ナックル31、ロアアーム32、アッパアーム33、及びダンパ34で構成されている。
ナックル31は、アルミダイキャスト製であって、フロントハブを介して、車両1の前輪を回転自在に支持している。
ロアアーム32は、アルミダイキャスト製のアーム部材であって、ナックル31の下部に連結される部分を頂部とする平面視略A字状に形成されている。このロアアーム32は、車両前後方向を回動中心として揺動可能な状態で、骨格メンバ41に連結されている。
具体的には、ロアアーム32は、図1に示すように、ダンパ34よりも車両前方の位置で、骨格メンバ41に連結される前方連結部32aと、ダンパ34よりも車両後方の位置で、骨格メンバ41に連結される後方連結部32bとを、車幅方向内側端部に備えている。
アッパアーム33は、アルミダイキャスト製のアーム部材であって、ナックル31の上部に連結される部分を頂部とする平面視略A字状に形成されている。このアッパアーム33は、車両前後方向を回動中心として揺動可能な状態で、骨格メンバ41に連結されている。
具体的には、アッパアーム33は、図1に示すように、ダンパ34よりも車両前方の位置で、骨格メンバ41に連結される前方連結部33aと、ダンパ34よりも車両後方の位置で、骨格メンバ41に連結される後方連結部33bとを、車幅方向内側端部に備えている。
ダンパ34は、図1に示すように、略車両上下方向に伸縮可能なダンパ本体部と、ダンパ本体部の伸縮に応じて伸縮するばね部とで一体構成されている。このダンパ34は、同図に示すように、その上端に位置する上方連結部34aが、骨格メンバ41に連結され、下端である下方連結部(図示省略)がロアアーム32に連結されている。
また、サスペンション支持構造体4は、上述したように、左右一対の骨格メンバ41、サスクロス42、下側クロスメンバ43、上側クロスメンバ44、左右一対のボックス部材45、及び左右一対の傾斜フレーム46で構成されている。
骨格メンバ41は、図2、図6に示すように、車両1における前部車体を構成する車体骨格部材として車両1の前面衝突(前突)時に衝撃吸収構造体6から伝達される衝突荷重をフレーム部材5を介して車室部2側(車体後方)へ伝達するロードパスの一部を成す機能と、サスペンション3を揺動可能に支持する機能とを有するアルミダイキャスト製の部材である。
この骨格メンバ41は、図2、図4に示すように、車幅方向に所定の厚みを有する板状部分構成された骨格本体部41Aと、骨格本体部41Aの縁端に対して車幅方向の内外各側に突出して車幅方向の長さが骨格本体部41Aの厚みよりも幅広な略平板状に形成するとともに、骨格本体部41Aの縁端を囲繞した輪郭部41Bとで側面視で中央に開口41s(以下、「中央開口41s」と称する)(図2、図4参照)を有する枠状(略ロ字形状)に一体形成されている。
詳しくは、骨格メンバ41は、図2、図4に示すように、該骨格メンバ41の上枠を構成するように車両前後方向に延びる上側骨格部411、該骨格メンバ41の下枠を構成するように車両前後方向に延びる下側骨格部412、該骨格メンバ41の前枠を構成するように上側骨格部411と下側骨格部412との略前端同士を車両上下方向に連結する前側骨格部413、および該骨格メンバ41の後枠を構成するように上側骨格部411と下側骨格部412との略後端同士を車両上下方向に連結する後側骨格部414を備えて一体形成されている。
より詳しくは、上側骨格部411は、図2、図4に示すように、側面視において、車両上下方向の長さよりも車両前後方向の長さが長い側面視略矩形に形成され、さらにその前上コーナー部および後上コーナー部を側面視で面取り状に傾斜した形状で形成されている。
下側骨格部412も同様に、側面視において、車両上下方向の長さよりも車両前後方向の長さが長い側面視略矩形状に形成されている。一方、前側骨格部413および後側骨格部414は、側面視において、車両前後方向の長さよりも車両上下方向の長さが長い側面視略矩形状に形成されている。
さらに、上側骨格部411と前側骨格部413とのコーナー部の内角側には、側面視三角形状に中央開口41sに向けて突出する前上内角側突片部41caが形成されている。同様に、上側骨格部411と後側骨格部414とのコーナー部の内角側には、側面視三角形状に中央開口41sに向けて突出する前上内角側突片部41cbが形成され、前側骨格部413と下側骨格部412とのコーナー部の内角側には、側面視三角形状に中央開口41sに向けて突出する前下内角側突片部41ccが形成されている。
さらにまた図1、図3に示すように、上側骨格部411および前側骨格部413の各前面は、共に輪郭部41Bが形成されることによって、上下方向および車幅方向に連続して延びる縦壁状に形成されている。また、下側骨格部412は、その前端にサブ衝撃吸収部材65(図2参照)を取付け可能に、前側骨格部413の前面に対して前方へ延設されている。
このような骨格メンバ41のうち上側骨格部411には、図1、図2に示すように、その車幅方向外側の面であって、アッパアーム33を前後各側で支持するアッパアーム支持部82が設けられるとともに、ダンパ34の上端(ダンパトップ)を前後方向の中央部で支持するダンパ支持部83が設けられている。
具体的には図1、図2に示すように、アッパアーム支持部82は、アッパアーム33の前方連結部33a(図1参照)を、該前方連結部33aに挿通された車両前後方向に延びる軸部材(図示省略)を介して軸支されるアッパアーム前側支持部82fと、アッパアーム33の後方連結部33b(図1参照)を、該後方連結部33bに挿通された車両前後方向に延びる軸部材(図示省略)を介して軸支されるアッパアーム後側支持部82rとで構成されている。
図2に示すように、アッパアーム前側支持部82fは、アッパアーム33の前方連結部33a(図1参照)に対して前側の前側締結部82faと後側の後側締結部82fbとによって骨格メンバ41の車幅方向外面に締結されている。
同様に図2に示すように、アッパアーム後側支持部82rは、アッパアーム33の後方連結部33b(図1参照)に対して前側の前側締結部82raと後側の後側締結部82rbとによって骨格メンバ41の車幅方向外面に締結されている。
アッパアーム前側支持部82fとアッパアーム後側支持部82rとは、略同じ高さで設けられている(図1、図2参照)。
ダンパ支持部83は、図1、図2に示すように、ダンパ34の上方連結部34a(図1参照)を、該上方連結部34aに挿通された車両前後方向に延びる軸部材(図示省略)を介して軸支している。
ダンパ支持部83は、図2に示すように、ダンパ34の上方連結部34a(図1参照)に対して前側の前側締結部83aと後側の後側締結部83bとによって骨格メンバ41の車幅方向外面に締結されている。
ダンパ支持部83は、図2に示すように、上側骨格部411の前後各側のアッパアーム支持部82f,82rの車両前後方向の間であって、前後各側のアッパアーム支持部82f,82rおよび被後端連結部41fの上端に対して上方へオフセットした位置に設けられている。
また上述した骨格メンバ41のうち下側骨格部412は、図1、図2に示すように、その車幅方向外側の面にロアアーム32を前後各側で支持するロアアーム支持部81が設けられている。
具体的に、ロアアーム支持部81は、図1、図2に示すように、ロアアーム32の前方連結部32a(図1参照)を、該前方連結部32aに挿通された車両前後方向に延びる軸部材(図示省略)を介して軸支されるロアアーム前側支持部81fと、ロアアーム32の後方連結部32b(図1参照)を、該後方連結部32bに挿通された車両前後方向に延びる軸部材(図示省略)を介して軸支されるロアアーム後側支持部81rとで構成されている。
図2に示すように、ロアアーム前側支持部81fは、ロアアーム32の前方連結部32a(図1参照)に対して前側の前側締結部81faと後側の後側締結部81fbとによって骨格メンバ41の車幅方向外面に締結されている。
同様に図2に示すように、ロアアーム後側支持部81rは、ロアアーム32の後方連結部32b(図1参照)に対して前側の前側締結部81raと後側の後側締結部81rbとによって骨格メンバ41の車幅方向外面に締結されている。
ロアアーム前側支持部81fとロアアーム後側支持部81rとは、略同じ高さで設けられている(図1、図2参照)。
また図2〜図5に示すように、上側骨格部411の上面、後上コーナー部の前上後下状の傾斜面、および後面は、フレーム部材5としてのサイド側アッパフレーム51、センタ側フレーム52およびサイド側フレーム53の各前端を接続するサイド側アッパフレーム被接合部41a(図2〜図4参照)、センタ側フレーム被接合部41b(図2、図3、図5参照)、サイド側フレーム被接合部41c(同図参照)として夫々形成されている。図2、図4、図5に示すように、後側骨格部414の下部後面は、フレーム部材5としてのサイド側ロアフレーム54の前端を接続するサイド側ロアフレーム被接合部41dとして形成され、また同図に示すように、下側骨格部412の後端はフレーム部材5としてのセンタ側ロアフレーム55の前端を接続するセンタ側ロアフレーム被接合部41eとして形成されている。
これら被接合部41a〜41eは、各フレーム部材51〜55の前端を当接可能な当接面、または、嵌め込み可能な凹部が形成され、溶接等により接続している。
具体的に、サイド側アッパフレーム51は、前端が骨格メンバ41のサイド側アッパフレーム被接合部41aに接合され、後端がヒンジピラー23の上面前部に接合される(図2、図6参照)。センタ側フレーム52は、前端が骨格メンバ41のセンタ側フレーム被接合部41bに接合され、後端が車両前後方向の隔壁部25にてセンタトンネルフレーム26の前端に接合されている(図4、図6参照)。
サイド側フレーム53は、前端が骨格メンバ41のサイド側フレーム被接合部41cに接合され、後端が衝撃吸収部材28の前部に車幅方向内側から接合される(図2、図4参照)。サイド側ロアフレーム54は、前端が骨格メンバ41のサイド側ロアフレーム被接合部41dに接合され、後端がサイドシル21の前面に接合される(図2、図7参照)。センタ側ロアフレーム55は、前端が骨格メンバ41のセンタ側ロアフレーム被接合部41eに接合され、後端がトンネルサイドフレーム27の前端に接合される(図7参照)。
なお、左右一対のセンタ側ロアフレーム55の後部は、この間に車幅方向に延びるクロスメンバ29によって橋渡しされている(図7参照)。
また図2、図7に示すように、補強フレーム56は、前端(上端)がサイド側アッパフレーム51の車両前後方向の中間部にその下面側から接合され、後端(下端)が衝撃吸収部材28の前面に接合される。さらに、図2に示すように、サイド側アッパフレーム被接合部41aは、上側骨格部411の上面における、ダンパ支持部83の直上部分に形成されている。
なお、図2等の符号58は、サイド側フレーム53とサイド側ロアフレーム54とを車幅方向外側から連結する補強パネルである。
このような構成の骨格メンバ41の前面は、図1〜図4に示すように、上側骨格部411における車両上下方向略中央近傍から、前側骨格部413における車両上下方向略中央近傍に至る範囲を、衝撃吸収構造体6の衝撃吸収部材61(衝撃吸収部材61の後端連結部613)が連結される縦壁状の被後端連結部41fとして構成している。
すなわち図4に示すように、衝撃吸収部材61の被後端連結部41fは、上側骨格部411と前側骨格部413とに上下方向に跨った位置に構成されており、上側骨格部411の後部に設けたセンタ側フレーム被接合部41bに対して少なくとも一部が下方へオフセットした位置(すなわち、低い位置)に構成されている。
上記センタ側フレーム52は、その長手方向の前方へと延びる延長線52xが衝撃吸収部材61の後端に位置する被後端連結部41fと交差するように前下後上状に傾斜した姿勢で配設されている。
また、骨格メンバ41の被後端連結部41fには、図1〜図4、図8に示すように、後述する衝撃吸収構造体6の衝撃吸収部材61が取付けられるセットプレート47が接合されており、取付けプレート63を介して衝撃吸収部材61の後端連結部613が締結固定されている。
続いて、サスペンション支持構造体4のうち骨格メンバ41以外の構成について説明する。
サスクロス42は、アルミダイキャスト製であって、図7に示すように、下側骨格部412の下部を車幅方向に連結する平面視略H字状に形成されている。
サスクロス42は、図4、図5に示すように、上壁部42aと、該上壁部42aの底面視外側縁部から下方へ延びて該サスクロス42の左右両側面、前面および後面を形成する縦壁部42bを有して内部に下方へ向けて開口する空間を有して車幅方向に延在している。
下側クロスメンバ43は、図1、図3、図4に示すように、押出し成型されたアルミ合金製の押出部材であって、特に図4に示すように、上下方向に間隔を隔てて対向する上壁部43aと下壁部43bとを有する略矩形の閉断面を車幅方向に延設した略筒状体に形成されている。この下側クロスメンバ43は、図1〜図5に示すように、骨格メンバ41の下側骨格部412の車幅方向内面側であって、図1に示すように、ロアアーム前側支持部81fと車幅方向で対向する部分に接合されている。
これにより、下側クロスメンバ43は、図1に示すように、サスクロス42の前部において該サスクロス42に対して上方に隣接配置されている。すなわち、図4に示すように、サスクロス42と下側クロスメンバ43とは、該下側クロスメンバ43の下壁部43bと該サスクロス42の上壁部42aとが当接するように上下各側に並設されている。
そして図1、図3、図4に示すように、サスクロス42と下側クロスメンバ43とは、車幅方向の中央部および両外側部の3箇所においてボルト等によって締結されており、それぞれ車幅方向の右側から左側へ右側締結部Ta、中央締結部Tb、左側締結部Tcに設定する。
中央締結部Tbについて詳述すると、図4、図5に示すように、サスクロス42の上壁部42aにおける前部の車幅方向中央部には、ボルト挿通孔42h(所謂バカ穴)が上下方向に貫通形成されている。
一方図4に示すように、下側クロスメンバ43の下壁部43bおよび上壁部43aにおける車幅方向の中央部(平面視でボルト挿通孔に対応する部位)には、それぞれボルト挿通孔43h、ナット挿通孔43iが貫通形成されている。
そして、下側クロスメンバ43の内部空間には、ボス状のナットNaがナット挿通孔43iに嵌挿された状態で、下壁部43bから上方向に延びる起立姿勢で下壁部43bのボルト挿通孔43hの周縁から立設されている。
これにより、サスクロス42および下側クロスメンバ43の夫々の車幅方向の中央部において、サスクロス42の上壁部42aに形成したボルト挿通孔42h、下側クロスメンバ43の下壁部43bに形成したボルト挿通孔43h、およびナットNa内部のボルト挿通孔Nahが上下方向に連通する(図4参照)。
そして、ボルトをこれらボルト挿通孔42h,43h,Nahに下方から挿通することでサスクロス42と下側クロスメンバ43とを一体に締結固定している。
なお、右側締結部Taおよび左側締結部Tcについても中央締結部Tbと同様の構成であるため、その説明は省略する。
上側クロスメンバ44は、図1、図3〜図6、図8の特に図4、図8に示すように、押出し成形されたアルミ合金製の押出部材であって、略矩形の閉断面を車幅方向に延設した略筒状体に形成されている。この上側クロスメンバ44は、図1、図8に示すように、骨格メンバ41における車幅方向の内面側であって、アッパアーム前側支持部82fと車幅方向内側で対向する部分に接合されている。
このように、上側クロスメンバ44をアッパアーム前側支持部82fに車幅方向内側で対向する部分に接合することで、アッパアーム前側支持部82fによるアッパアーム33の支持剛性を車幅方向内側から高めている。
ボックス部材45は、図8に示すように、押出し成型されたアルミ合金製の押出部材であって、前面が、車幅方向内側に対して、車幅方向外側が車両後方に位置する段付き形状に形成されている。
このような構成のボックス部材45は、その後面が上側クロスメンバ44の前面に接合され、前面のうち車幅方向外側の面452が骨格メンバ41における被後端連結部41fの後面に接合され、車幅方向内側の面451がセットプレート47の後面に接合されている。
左右一対の傾斜フレーム46は、図1、図3〜図5、図8に示すように、押出し成型されたアルミ合金製の押出部材であって、略矩形の閉断面を所定方向に延設した略筒状体に形成されており、特に図1、図3、図5に示すように、下端部同士が車幅方向に近接状態で突き合うように配置されるとともに上方程互いの間隔が広がるように傾斜して正面視でV字状に配置されている。
そして、傾斜フレーム46は、図1、図4、図5、図6に示すように、骨格メンバ41の車幅方向内面側における、ダンパ支持部83と車幅方向で対向する部分に上端が取付ブラケット147を介して接合され、サスクロス42における車幅方向略中央、かつ下側クロスメンバ43後側近傍の位置に、取付ブラケット48を介して下端が接合されている。
このように、傾斜フレーム46の上端をダンパ支持部83に車幅方向内側で対向する部分に接合することで(図1参照)、ダンパ支持部83fによるダンパ34の支持剛性を車幅方向内側から高めている。
ここで、傾斜フレーム46の下端をサスクロス42の車幅方向略中央に接合する取付ブラケット48は、図4、図5のうち特に図5中のX部拡大部分に示すように、平面視矩形に形成した平板状のベース部481と、該ベース部481の車両前後方向の中央部に対して傾斜フレーム46の車両前後方向幅を隔てた各側から立設した前後一対のガイド部482とで一体に形成されている。
傾斜フレーム46は、その下部の前後各面が前後一対のガイド部482に当接するように、前後一対のガイド部482の間に嵌め込まれた状態で、これらガイド部482との各当接面において互いに溶接等によって接合されている。
さらに、取付ブラケット48のベース部481には、サスクロス42の上壁部42aにボルト等により締結する複数のボルト挿通孔48aが貫通形成されている(図5中のX部拡大部分参照)。
具体的には図4〜図7に示すように、ボルト挿通孔48aは、ベース部481の車両前後方向における前後一対のガイド部482よりも内側かつ車幅方向の中間側に位置する左右各側の箇所と、平面視で矩形のベース部481の4隅に位置する合計6箇所に形成されている。
一方図5、図7に示すように、サスクロス42の上壁部42aにおける、取付ブラケット48側の複数のボルト挿通孔48aと底面視で対応する部位には、ボルト挿通孔42iが形成され(図7参照)、それぞれボルト挿通孔48aと連通する。そして取付ブラケット48は、サスクロス42の上壁部42aにボルト等を用いて締結固定されている。
これにより図4に示すように、傾斜フレーム46の下端部は、取付ブラケット48を介して上述した中央締結部Tbの後側近傍位置(後側隣接位置)に取り付けられている。
さらに、傾斜フレーム46は、上側クロスメンバ44に対し後方で隣接する位置に配設されている。
詳しくは、傾斜フレーム46は、上側クロスメンバ44に対して上側に位置するダンパ支持部83と、下側に位置するサスクロス42とを連結するようにこれらの間に橋渡しされるため、車幅方向に延びる上側クロスメンバ44に対して後方で上下方向に横切る(交差する)ように延びる(図1、図3、図5参照)。
より詳しくは、ダンパ支持部83は、上述したアッパアーム前側支持部82fに対して上方かつ後方にオフセットした近傍位置(隣接位置)に備えている。このため、側面視でダンパ支持部83に対応する位置から下方へ延びる傾斜フレーム46は、左右一対のアッパアーム前側支持部82fを車幅方向に橋渡しする上側クロスメンバ44に対して後方の近傍位置にて上下方向に横切るように延びる。
当例では、傾斜フレーム46と上側クロスメンバ44とが正面視でラップ(交差)する位置においては、傾斜フレーム46の前壁部46aと上側クロスメンバ44の後壁部44aとが互いに当接し、正面視でラップする位置において互いに連結されている。
具体的には、図4、図8に示すように、傾斜フレーム46と上側クロスメンバ44とが正面視でラップ(交差)する位置においては、上側クロスメンバ44の後壁部44aと傾斜フレーム46の前壁部46aとには互いに前後方向に連通するボルト挿通孔44h,46hが夫々貫通形成されている。
図8に示すように、傾斜フレーム46の前壁部46aの後面における、該前壁部46aに形成したボルト挿通孔46hの周縁には、ウェルダナットNbが溶着されている。
さらに図1、図3、図8の特に図8に示すように、上側クロスメンバ44の前壁部44bにおける、後壁部44aに設けたボルト挿通孔44hに対向する部分及びその周辺部分には、ボルト締結等の作業用貫通孔44i(サービスホール)が車両前後方向に貫通形成されている。
そして、上側クロスメンバ44の後壁部44aと傾斜フレーム46の前壁部46aとウェルダナットNbの各ボルト挿通孔46h,44h,Nbhに作業用貫通孔44iを通じて前方側からボルトを挿通することによって傾斜フレーム46は、上述したように上側クロスメンバ44の後面に締結固定されている。
以上のように、本実施形態の車両1の前部車体構造は、図1に示すように、サスペンション3のアッパアーム33を支持するアッパアーム支持部82(82f,82r)およびダンパ34を支持するダンパ支持部83を車幅方向外側に備えるとともに車両1の車幅方向に所定間隔を隔てて配設された左右一対の骨格メンバ41と、前後各側のアッパアーム支持部82(82f,82r)のうちアッパアーム前側支持部82fに車幅方向内側で対向するの位置にて骨格メンバ41に接続され、左右の骨格メンバ41間に橋渡しされる上側クロスメンバ44(クロスメンバ)と(図1〜図5参照)、上側クロスメンバ44の下方において左右の骨格メンバ41に接続され、これら骨格メンバ41の間に橋渡しされるサスクロス42とを備えた車両1の前部車体構造であって、ダンパ支持部83は、アッパアーム前側支持部82fに対して上方かつ前後方向にオフセットした隣接位置に備えており(図1、図2参照)、車両側面視で骨格メンバ41におけるダンパ支持部83に車幅方向内側で対向する位置に、上端(一端)が接続されるとともに、サスクロス42の車幅方向中央部に下端(他端)が接続される左右一対の傾斜フレーム46(ブレース部材)を備えたものである(図1、図3〜図5参照)。
上記構成によれば、上側クロスメンバ44と傾斜フレーム46を隣接して設けることでアッパアーム33とダンパ34の支持剛性を効率的に向上できる。
詳述すると、アッパアーム前側支持部82fに対して車幅方向内側で対向する位置に、上側クロスメンバ44が接続され、該アッパアーム前側支持部82fよりもさらに上方に位置するダンパ支持部83に対して車幅方向内側で対向する位置に、傾斜フレーム46の上端が接続される。
これにより、傾斜フレーム46の上端は、上側クロスメンバ44より上方に位置するように接続できる一方で、傾斜フレーム46の下端は、上側クロスメンバ44より下方に位置するサスクロス42に接続できる。
これにより、傾斜フレーム46は、車幅方向に延びる上側クロスメンバ44に正面視で上下方向に交差させるように備えることができる(図1、図3〜図5参照)。さらにダンパ支持部83は、アッパアーム前側支持部82fに対して前後方向にオフセットした隣接位置に備えているため、該ダンパ支持部83とサスクロス42との間に橋渡しされる傾斜フレーム46は、アッパアーム前側支持部82f間に橋渡しされる上側クロスメンバ44に対して前後方向に隣接する位置に備えることができる(図1、図4、図6、図8参照)。
従って、傾斜フレーム46は、上側クロスメンバ44に対して正面視でのラップ(交差)する位置において前後方向に隣接配置することで、互いの剛性を高め合うことができ、アッパアーム支持部82によるアッパアーム33の支持剛性を上側クロスメンバ44によって、ダンパ支持部83によるダンパ34の支持剛性をダンパ支持部83によって夫々別々に高めるよりもアッパアーム33とダンパ34の支持剛性を効果的に高めることができる。
この発明の態様として、傾斜フレーム46が上側クロスメンバ44に対し正面視でラップする位置において連結されたものである(図1、図4、図5、図8参照)。
上記構成によれば、上側クロスメンバ44は、上述したようにアッパアーム支持部82間を橋渡しすることで主にアッパアーム支持部82の車幅方向の支持剛性を高めることができる。一方、傾斜フレーム46は、上述したようにダンパ支持部83とサスクロス42との間に橋渡しすることで主に上下動するダンパ34の支持剛性を高めることができる。
そして、これら上側クロスメンバ44と傾斜フレーム46とを互いに連結することで、夫々のサスペンション支持剛性を相互的に高めることができる。
この発明の態様として、ダンパ支持部83は、前後各側に備えたアッパアーム支持部82f,82rのうちアッパアーム前側支持部82fの後方に隣接して形成されており(図1、図2参照)、上側クロスメンバ44は、その後方で隣接する傾斜フレーム46に対して正面視でラップする位置にて締結されており(図3〜図5、図8参照)、上側クロスメンバ44における、傾斜フレーム46と締結する締結箇所の前方部位には、前後方向に開口する作業用貫通孔44i(締結用開口部)が形成されたものである(図1、図3、図8参照)。
具体的には、上側クロスメンバ44の後壁部44aと傾斜フレーム46の前壁部46aは、傾斜フレーム46が上側クロスメンバ44に対し正面視でラップする位置において互いに締結されることで連結しており(図8参照)、上側クロスメンバ44の前壁部44bには、後壁部44aにおける、傾斜フレーム46との締結箇所に対して前方で対向する部位に前後方向に開口する作業用貫通孔44iが貫通形成されたものである(同図参照)。
上記構成によれば、サスペンション支持構造体4の組み立て性および車体への組み付け性を確保することができる。
詳述すると、サスペンション支持構造体4は、車両1の前部のエンジンルームに搭載されたエンジン(図示省略)の下方に、サスクロス42が車幅方向に延在するレイアウトで配設される。
このため、エンジンやサスペンション支持構造体4の車体への組み付け時には、一般にエンジンルームに対してエンジンを車体下方から搭載した後でサスペンション支持構造体4を車体下方から組み付ける。さらに、サスペンション支持構造体4の車体への上述した組み付け時には、傾斜フレーム46を取り付ける前の状態で先に車体に組み付けておき、その後で傾斜フレーム46を、サスペンション支持構造体4に備えた上側クロスメンバ44等に取り付ける。
ところが、このように傾斜フレーム46を上側クロスメンバ44に対してその後方側に隣接配置したレイアウトになるように後付けで締結固定する際に、その締結作業を傾斜フレーム46の後方側から行おうとしても、上述したように、上側クロスメンバ44の後方にはエンジンが既に搭載されているため、レイアウト上の制約を受け、ボルトの締結作業スペースを確保することが困難となり、組み付け性が著しく低下することが懸念される。
これに対して本実施形態のように、上側クロスメンバ44の前壁部44bに作業用貫通孔44iを設けることで、該作業用貫通孔44iを通じて上側クロスメンバ44に対して前方側から該上側クロスメンバ44と傾斜フレーム46との締結作業を行うことが可能となる。
従って、エンジンやサスペンション支持構造体4を車体への組み付けた後で、該サスペンション支持構造体4に備えた上側クロスメンバ44に対して、その後面に傾斜フレーム46を取り付ける構成においても、既にエンジンルームに搭載されたエンジンによるレイアウト上の制約を受けることなく、ボルト挿通等の締結作業スペースを確保でき、傾斜フレーム46も容易に組み付けることができる。
この発明の態様として、骨格メンバ41にロアアーム支持部81が形成され(図1、図2参照)、ロアアーム支持部81間に橋渡される下側クロスメンバ43(ロアクロスメンバ)を備え(図1、図3、図4、図5参照)、該下側クロスメンバ43は、サスクロス42の車幅方向中央にて接続されたものである(図1、図3、図4、図5、図7中の中央締結部Tb参照)。
上記構成によれば、傾斜フレーム46の下端は、サスクロス42の車幅方向中央にて接続されるので(図1、図4〜図6参照)、この傾斜フレーム46の下端の接続部(図5中のX部拡大部参照)と、同様にサスクロス42の車幅方向中央にて下側クロスメンバ43を接続した接続部(中央締結部Tb)とは互いに前後方向に近い位置に設けることができ(特に図4参照)、傾斜フレーム46が接続されるサスクロス42の車幅方向中央の剛性を向上できる。
この発明の態様として、傾斜フレーム46の骨格メンバ41への接続部は、該骨格メンバ41における、ダンパ支持部83に対して車幅方向内方側に設けられており(図1、図2、図4、図5参照)、骨格メンバ41の上面部におけるダンパ支持部83の直上部位とヒンジピラー23とを連結するフレーム部材5としてのサイド側アッパフレーム51を備えるとともに(図2、図4、図6参照)、該サイド側アッパフレーム51の下部と、ヒンジピラー23から前方へ延設する衝撃吸収部材28(延設メンバ)とを連結し(図2、図4参照)、サイド側アッパフレーム51を下方から補強する補強フレーム56(補強部材)を備えたものである(同図参照)。
上記構成によれば、ダンパ34の支持剛性を、傾斜フレーム46によってダンパ支持部83の内方側から高めることに加えて、骨格メンバ41の上面部を利用しサイド側アッパフレーム51および補強フレーム56とによってダンパ支持部83の上方側からも高めることができる。
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。