本発明に係る共振器及びフィルタについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態による共振器について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態による共振器を示す斜視図である。図2A及び図2Bは、本実施形態による共振器を示す断面図である。図2Aは、図1のIIA−IIA線に対応している。図2Bは、図1のIIB−IIB線に対応している。
図1に示すように、本実施形態による共振器10は、誘電体基板14を有する。誘電体基板14は、例えば直方体状に形成されている。誘電体基板14は、誘電体層15Aと、誘電体層(第1誘電体層)15Aより比誘電率が高い誘電体層(第2誘電体層)15Bとを含む。誘電体層15Aは、比誘電率が比較的低い複数の誘電体材料を積層することにより構成されている。より具体的には、誘電体層15Aは、比誘電率が比較的低い複数のセラミックスシート(誘電体セラミックスシート)を積層することにより構成されている。誘電体層15Bは、比誘電率が比較的高い複数の誘電体材料を積層することにより構成されている。より具体的には、誘電体層15Bは、比誘電率が比較的高い複数のセラミックスシートを積層することにより構成されている。各々のセラミックスシートの厚さは、例えば、30μm〜60μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体層15Aの厚さは、例えば200μm〜250μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体基板14の厚さは、例えば1.5mm〜2.0mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
誘電体基板14のうちの誘電体層15Aが位置する側である一方の主面側、即ち、図1における誘電体基板14の上側には、上部遮蔽導体(遮蔽導体、第1遮蔽導体)12Aが形成されている。誘電体基板14のうちの他方の主面側、即ち、図1における誘電体基板14の下側には、下部遮蔽導体(遮蔽導体、第2遮蔽導体)12Bが形成されている。
共振器10は、上部遮蔽導体12Aに対向するストリップ線路(第1ストリップ線路)18Aを更に有する。ストリップ線路18Aは、上部遮蔽導体12Aとストリップ線路18Aとの間に誘電体層15Aの一部が挟まれるように、誘電体基板14内に形成されている。ストリップ線路18Aは、誘電体層15A内に埋め込まれている。ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間隔は、例えば100μm前後とすることができるが、これに限定されるものではない。
共振器10は、誘電体基板14内に形成されたビア電極部20を更に有する。ビア電極部20は、隣接して形成された第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとを有する。ビア電極部20は、少なくとも誘電体層15B内に形成されている。ビア電極部20の一端は、ストリップ線路18Aに接続されている。より具体的には、ビア電極部20の一端は、誘電体層15A内においてストリップ線路18Aに接続されている。ビア電極部20の他端は、下部遮蔽導体12Bに接続されている。このように、ビア電極部20は、ストリップ線路18Aから下部遮蔽導体12Bにかけて形成されている。ビア電極部20とストリップ線路18Aとにより、構造体16が構成されている。
誘電体基板14の4つの側面のうちの第1側面14aには、第1入出力端子22Aが形成されている。第1側面14aに対向する第2側面14bには、第2入出力端子22Bが形成されている。誘電体基板14の4つの側面のうちの第3側面14cには、第1側面遮蔽導体(遮蔽導体)12Caが形成されている。第3側面14cに対向する第4側面14dには、第2側面遮蔽導体(遮蔽導体)12Cbが形成されている。誘電体基板14内において、第1ビア電極部20Aは第1側面遮蔽導体12Ca側に位置し、第2ビア電極部20Bは第2側面遮蔽導体12Cb側に位置している。
第1ビア電極部20Aは、複数の第1ビア電極24aから構成されている。第2ビア電極部20Bは、複数の第2ビア電極24bから構成されている。第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bは、誘電体基板14に形成されたビアホールにそれぞれ埋め込まれている。第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間に他のビア電極部は存在しない。
図3A及び図3Bは、第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bの配置の例を示す平面図である。図3Aは、仮想の楕円37の輪郭線の一部に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bが配置されている例を示している。図3Bは、仮想のトラック形状38の輪郭線の一部に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bが配置されている例を示している。
図3Aに示す例においては、複数の第1ビア電極24aは、上面から見たとき、仮想の楕円37の輪郭線の一部を構成する仮想の第1湾曲線28aに沿って配置されている。また、図3Aに示す例においては、複数の第2ビア電極24bは、上面から見たとき、仮想の楕円37の輪郭線の一部を構成する仮想の第2湾曲線28bに沿って配置されている。図3Bに示す例においては、複数の第1ビア電極24aは、上面から見たとき、仮想のトラック形状38の輪郭線の一部を構成する仮想の第1湾曲線28aに沿って配置されている。また、図3Bに示す例においては、複数の第2ビア電極24bは、上面から見たとき、仮想のトラック形状38の輪郭線の一部を構成する仮想の第2湾曲線28bに沿って配置されている。
仮想の楕円37の輪郭線又は仮想のトラック形状38の輪郭線に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bを配置しているのは、以下のような理由によるものである。即ち、共振器10を多段化してフィルタを構成する場合において、ビア電極部20の径を単に大きくすると、共振器10間に発生する電気壁と共振器10との間の距離が小さくなるため、Q値の劣化を招く。これに対し、ビア電極部20を楕円形にし、当該楕円形の短軸方向に共振器10を多段化すれば、ビア電極部20間の距離が互いに長くなるため、Q値の劣化を抑制することができる。また、ビア電極部20をトラック形状38にし、当該トラック形状38の直線部の長手方向に垂直な方向に共振器10を多段化すれば、ビア電極部20間の距離が互いに長くなるため、Q値の劣化を抑制することができる。このような理由により、本実施形態では、仮想の楕円37の輪郭線又は仮想のトラック形状38の輪郭線に沿うように第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bを配置している。
また、仮想の楕円37の端部、即ち、仮想の楕円37のうちの曲率の大きい両端部に第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bをそれぞれ配置しているのは、以下のような理由によるものである。また、仮想のトラック形状38の半円部に第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bをそれぞれ配置しているのは、以下のような理由によるものである。即ち、高周波電流は、仮想の楕円37の端部、即ち、仮想の楕円37のうちの曲率の大きい両端部に集中する。また、高周波電流は、仮想のトラック形状38の両端部、即ち、仮想のトラック形状38の半円部に集中する。このため、仮想の楕円37又は仮想のトラック形状38の両端部以外の部分にビア電極24a、24bを配置しないようにしても、Q値の大幅な低下を招くことはない。また、ビア電極24a、24bの数を減らせば、ビアを形成するために要する時間を短縮することができるため、スループットの向上を実現することができる。また、ビア電極24a、24bの数を減らせば、ビアに埋め込まれる銀等の材料を減らし得るため、コストダウンを実現することもできる。また、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20B間には、電磁界が比較的疎である領域が形成されるため、当該領域に結合調整等のためのストリップ線路を形成することも可能である。このような観点から、本実施形態では、仮想の楕円37又は仮想のトラック形状38の両端部に第1ビア電極24a及び第2ビア電極24bを配置している。
共振器10は、誘電体基板14内に形成された第1入出力線路26A及び第2入出力線路26Bを更に有する。第1入出力線路26Aは、第1入出力端子22Aに接続されている。第2入出力線路26Bは、第2入出力端子22Bに接続されている。第1入出力線路26A及び第2入出力線路26Bは、例えば誘電体層15A内に埋め込まれている。第1入出力線路26Aは、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間におけるストリップ線路18Aの下方の位置から第1入出力端子22Aに延在している。第2入出力線路26Bは、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間におけるストリップ線路18Aの下方の位置から第2入出力端子22Bに延在している。
ビア電極部20と、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbとは、半同軸共振器のように振る舞う。ビア電極部20に流れる電流の向きと第1側面遮蔽導体12Caに流れる電流の向きとは逆となり、また、ビア電極部20に流れる電流の向きと第2側面遮蔽導体12Cbに流れる電流の向きとは逆となる。このため、遮蔽導体12A、12B、12Ca、12Cbによって囲まれた部分に電磁界を閉じ込めることができ、放射による損失を小さくすることができ、且つ、外部への影響を小さくすることができる。共振時のあるタイミングにおいては、上部遮蔽導体12Aの中心から上部遮蔽導体12Aの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、下部遮蔽導体12Bには、下部遮蔽導体12Bの面全体から下部遮蔽導体12Bの中心に向かって集中するように電流が流れる。また、共振時の他のタイミングにおいては、下部遮蔽導体12Bの中心から下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、上部遮蔽導体12Aには、上部遮蔽導体12Aの面全体から上部遮蔽導体12Aの中心に向かって集中するように電流が流れる。上部遮蔽導体12A又は下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように流れる電流は、そのまま第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbにも同様に流れる。即ち、線幅の広い導体に電流が流れる。線幅の広い導体は抵抗成分が少ないため、Q値の劣化は小さい。第1ビア電極部20A及び第2ビア電極部20Bは、遮蔽導体12A、12B、12Ca、12Cbとともに、TEM波の共振器を実現する。即ち、第1ビア電極部20A及び第2ビア電極部20Bは、遮蔽導体12A、12B、12Ca、12Cbを参照したTEM波の共振器を実現する。ストリップ線路18Aは、開放端容量を形成する役割を果たす。本実施形態による共振器10は、λ/4共振器として動作し得る。
図4A及び図4Bは、本実施形態による共振器10の等価回路を示す図である。図4Aに示すように、第1ビア電極部20Aからストリップ線路18Aの入出力部分(I/O)にかけて第1λ/4共振器34Aが構成されている。また、第2ビア電極部20Bからストリップ線路18Aの入出力部分(I/O)にかけて第2λ/4共振器34Bが構成されている。このため、図4Bに示すように、第1λ/4共振器34Aと第2λ/4共振器34Bには常に同相の電流iが流れることとなる。第1λ/4共振器34Aと第2λ/4共振器34Bとに流れる電流iが同相であるため、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間の領域は電磁界が疎の状態となる。このため、本実施形態では、不要な結合を抑制しつつ、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間にストリップ線路を配置することが可能となる。
ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の距離は、製造プロセスに起因して、ばらつき得る。また、ストリップ線路18Aの線幅も、製造プロセスに起因して、ばらつき得る。ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的高い誘電体層を存在させた場合、以下のようになる。即ち、このような場合、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の距離のばらつきに応じて、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量が大きく変化する。また、このような場合、ストリップ線路18の線幅のばらつきに応じて、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量が大きく変化する。これに対し、本実施形態では、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Aが存在している。ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Aが存在しているため、本実施形態では、以下のようになる。即ち、本実施形態では、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の距離がある程度ばらついたとしても、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。また、本実施形態では、ストリップ線路18の線幅がばらついたとしても、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。従って、本実施形態によれば、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的高い誘電体層を存在させた場合と比較して、電気的特性のばらつきを低減することが可能となる。
本実施形態のような構造の共振器10においては、ビア電極部20の長さと、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量とによって、共振周波数がほぼ決定される。ビア電極部20の長さが長くなるほど、共振周波数は低下する傾向にある。また、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量が大きくなるほど、共振周波数は低下する傾向にある。共振周波数が同じ場合、ビア電極部20の長さがより長い方が共振器10のQ値が高い。ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的高い誘電体層を存在させた場合には、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量が増加する。ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量が増加した場合において、所望の共振周波数を得るためには、例えばビア電極部20の長さを短くすることが考えられる。しかし、ビア電極部20の長さを短くした場合には、Q値が低下してしまう。ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量の増加を防止すべく、ストリップ線路18の面積を小さくすることも考えられる。しかし、ストリップ線路18の面積を小さくした場合には、共振器10間に備えられる結合容量電極等のパターンのレイアウトに制限が生じる場合がある。また、複数のビア電極24a、24bを用いて共振器10を構成する場合には、十分に大きい面積のストリップ線路18が必要であり、このような場合には、ストリップ線路18の面積を小さくすることは困難である。これに対し、本実施形態によれば、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Aが存在しているため、上記のような問題を回避し得る。
また、本実施形態では、ビア電極部20が比誘電率の比較的高い誘電体層15Bに埋め込まれているため、当該部分において波長短縮効果が得られる。このため、本実施形態によれば、伝送線路を短縮することができ、共振器10の小型化に寄与することができる。また、波長短縮効果によってビア電極部20の長さを短くすることが可能となるため、共振器10のサイズを変更しない場合には、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすることができる。ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすると、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間における静電容量を小さくすることができるため、共振器10のQ値を向上することができる。
本実施形態による共振器10の評価結果について以下に説明する。
参考例1による共振器では、誘電体基板14を比誘電率が比較的低い誘電体材料のみによって構成した。参考例1による共振器の無負荷Q値を測定したところ、約412であった。
参考例2による共振器では、誘電体基板14を比誘電率が比較的高い誘電体材料のみによって構成した。参考例2による共振器の無負荷Q値を測定したところ、約404であった。
参考例3による共振器では、比誘電率が比較的高い誘電体材料によって誘電体層15Aを構成し、比誘電率が比較的低い誘電体材料によって誘電体層15Bを構成した。即ち、参考例3では、特許文献1に対応する構成とした。参考例3による共振器の無負荷Q値を測定したところ、約415であった。
実施例、即ち、本実施形態による共振器10の無負荷Q値を測定したところ、約449であった。このことから、本実施形態によれば、参考例1〜3と比較して、無負荷Q値を向上させ得ることが分かる。
このように、本実施形態によれば、比誘電率が比較的低い誘電体層15Aの一部が上部遮蔽導体12Aとストリップ線路18Aとの間に挟まれている。このため、本実施形態によれば、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の距離がある程度ばらついたとしても、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。また、本実施形態によれば、ストリップ線路18Aの線幅がある程度ばらついたとしても、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。このため、本実施形態によれば、電気的特性のばらつきを低減することができる。
また、本実施形態によれば、ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Aが存在しているため、ストリップ線路18の面積を大きく確保することができる。このため、本実施形態によれば、共振器10間に備えられる結合容量電極等のパターンのレイアウトの自由度を高くすることができる。また、ストリップ線路18の面積を大きく確保することにより、複数のビア電極24a、24bを用いた共振器10を実現することができる。このため、本実施形態によれば、Q値の高い良好な共振器10を得ることができる。
しかも、本実施形態によれば、ビア電極部20が比誘電率の比較的高い誘電体層15Bに埋め込まれているため、当該部分において波長短縮効果が得られる。このため、本実施形態によれば、伝送線路を短縮することができ、共振器10の小型化に寄与することができる。また、波長短縮効果によってビア電極部20の長さを短くすることが可能となるため、共振器10のサイズを変更しない場合には、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすることができる。ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすると、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間における静電容量を小さくすることができるため、共振器10のQ値の向上に寄与することができる。
(変形例)
本実施形態の変形例による共振器について図5A及び図5Bを用いて説明する。図5A及び図5Bは、本変形例による共振器を示す断面図である。
本変形例では、比誘電率が比較的高い誘電体層15Bの上面側と下面側の両方に比誘電率が比較的低い誘電体層15Au、15Adがそれぞれ備えられている。誘電体基板14のうちの誘電体層15Auが位置する側である一方の主面側、即ち、図5A及び図5Bにおける誘電体基板14の上側には、上部遮蔽導体12Aが位置している。誘電体基板14のうちの誘電体層15Adが位置する側である他方の主面側、即ち、図5A及び図5Bにおける誘電体基板14の下側には、下部遮蔽導体12Bが位置している。誘電体層15Auの厚さは、図1〜図2Bを用いて上述した誘電体層15Aと同様に、例えば200μm〜250μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体基板14の厚さは、図1〜図2Bを用いて上述した誘電体基板14と同様に、例えば1.5mm〜2.0mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体層15Adの厚さは、例えば200μm〜300μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
本変形例では、比誘電率が比較的低い誘電体層15Adが、比誘電率が比較的高い誘電体層15Bと下部遮蔽導体12Bとの間に存在しているため、下部遮蔽導体12Bの周囲の部材のインピーダンスを高くすることができる。本変形例では、短絡端側のインピーダンスが高くなり、開放端側のインピーダンスが低くなるような、ステップ状のインピーダンス変化が得られる。このため、本変形例によれば、共振器10の小型化に寄与することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態による共振器について図面を用いて説明する。図6は、本実施形態による共振器を示す斜視図である。図7A及び図7Bは、本実施形態による共振器を示す断面図である。図7Aは、図6のVIIA−VIIA線に対応している。図7Bは、図6のVIIB−VIIB線に対応している。第1実施形態による共振器と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し又は簡略にする。
本実施形態による共振器10Aでは、上部遮蔽導体12Aに対向するストリップ線路18A(図1参照)は形成されていない一方、下部遮蔽導体12Bに対向する下部ストリップ線路18Bが形成されている。そして、本実施形態では、誘電体基板14のうちの上部遮蔽導体12Aが形成されている一方の主面側、即ち、図6における上面側に比誘電率が比較的高い誘電体層15Bが備えられている。また、本実施形態では、誘電体基板14のうちの下部遮蔽導体12Bが形成されている他方の主面側、即ち、図6における下面側に比誘電率が比較的低い誘電体層15Aが備えられている。下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間には、比誘電率が比較的低い誘電体層15Aの一部が存在している。下部ストリップ線路18Bは、誘電体層15A内に埋め込まれている。誘電体層15Aの厚さは、第1実施形態と同様に、例えば200μm〜250μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体基板14の厚さは、第1実施形態と同様に、例えば1.5mm〜2.0mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間隔は、例えば100μm前後とすることができるが、これに限定されるものではない。
本実施形態では、ビア電極部20の一端は、下部ストリップ線路18Bに接続されている。より具体的には、ビア電極部20の一端は、誘電体層15A内において下部ストリップ線路18Bに接続されている。ビア電極部20の他端は、上部遮蔽導体12Aに接続されている。このように、ビア電極部20は、下部ストリップ線路18Bから上部遮蔽導体12Aにかけて形成されている。ビア電極部20と下部ストリップ線路18Bとにより、構造体16が構成されている。
本実施形態では、第1入出力端子22Aが、第1接続線路32aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されている。また、本実施形態では、第2入出力端子22Bが、第2接続線路32bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されている。
第1実施形態による共振器10の場合と同様に、ビア電極部20と、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbとは、半同軸共振器のように振る舞う。ビア電極部20に流れる電流の向きと第1側面遮蔽導体12Caに流れる電流の向きとは逆となり、また、ビア電極部20に流れる電流の向きと第2側面遮蔽導体12Cbに流れる電流の向きとは逆となる。このため、遮蔽導体12A、12B、12Ca、12Cbによって囲まれた部分に電磁界を閉じ込めることができ、放射による損失を小さくすることができ、且つ、外部への影響を小さくすることができる。共振時のあるタイミングにおいては、上部遮蔽導体12Aの中心から上部遮蔽導体12Aの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、下部遮蔽導体12Bには、下部遮蔽導体12Bの面全体から下部遮蔽導体12Bの中心に向かって集中するように電流が流れる。また、共振時の他のタイミングにおいては、下部遮蔽導体12Bの中心から下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、上部遮蔽導体12Aには、上部遮蔽導体12Aの面全体から上部遮蔽導体12Aの中心に向かって集中するように電流が流れる。上部遮蔽導体12A又は下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように流れる電流は、そのまま第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbにも同様に流れる。即ち、線幅の広い導体に電流が流れる。線幅の広い導体は抵抗成分が少ないため、Q値の劣化は小さい。ストリップ線路18Bは、開放端容量を形成する役割を果たす。ビア電極部20は、下部ストリップ線路18Bとともに、λ/4共振器を構成する。従って、本実施形態による共振器10Aは、λ/4共振器として動作し得る。
このように、本実施形態では、第1入出力端子22Aが第1接続線路32aを介して上部遮蔽導体12Aに接続され、第2入出力端子22Bが第2接続線路32bを介して上部遮蔽導体12Aに接続されている。そして、本実施形態では、ビア電極部20の一端が下部ストリップ線路18Bに接続され、ビア電極部20の他端が上部遮蔽導体12Aに接続されている。そして、本実施形態では、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Aの一部が挟まれている。本実施形態では、比誘電率が比較的低い誘電体層15Aの一部が下部遮蔽導体12Bと下部ストリップ線路18Bとの間に挟まれているため、以下のようになる。即ち、本実施形態によれば、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間の距離がある程度ばらついたとしても、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。このため、本実施形態においても、電気的特性のばらつきを低減することができる。
また、本実施形態によれば、ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Aが存在しているため、ストリップ線路18の面積を大きく確保することができる。このため、本実施形態によれば、共振器10A間に備えられる結合容量電極等のパターンのレイアウトの自由度を高くすることができる。また、ストリップ線路18Bの面積を大きく確保することにより、複数のビア電極24a、24bを用いた共振器10Aを実現することができる。このため、本実施形態によれば、Q値の高い良好な共振器10Aを得ることができる。
また、本実施形態においても、ビア電極部20が比誘電率の比較的高い誘電体層15Bに埋め込まれているため、当該部分において波長短縮効果が得られる。このため、本実施形態においても、伝送線路を短縮することができ、共振器10Aの小型化に寄与することができる。また、波長短縮効果によってビア電極部20の長さを短くすることが可能となるため、共振器10Aのサイズを変更しない場合には、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすることができる。ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすると、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間における静電容量を小さくすることができるため、共振器10AのQ値の向上に寄与することができる。
(変形例)
本実施形態の変形例による共振器について図8A及び図8Bを用いて説明する。図8A及び図8Bは、本変形例による共振器を示す断面図である。
本変形例では、比誘電率が比較的高い誘電体層15Bの上面側と下面側の両方に比誘電率が比較的低い誘電体層15Au、15Adがそれぞれ備えられている。誘電体基板14のうちの誘電体層15Auが位置する側である一方の主面側、即ち、図8A及び図8Bにおける誘電体基板14の上側には、上部遮蔽導体12Aが位置している。誘電体基板14のうちの誘電体層15Adが位置する側である他方の主面側、即ち、図8A及び図8Bにおける誘電体基板14の下側には、下部遮蔽導体12Bが位置している。誘電体層15Adの厚さは、図1及び図2Bを用いて上述した誘電体層15Aと同様に、例えば200μm〜250μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体基板14の厚さは、図6〜図7Bを用いて上述した誘電体基板14と同様に、例えば1.5mm〜2.0mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体層15Auの厚さは、例えば200μm〜300μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
本変形例では、比誘電率が比較的低い誘電体層15Auが、比誘電率が比較的高い誘電体層15Bと上部遮蔽導体12Aとの間に存在しているため、上部遮蔽導体12Aの周囲の部材のインピーダンスを高くすることができる。本変形例では、短絡端側のインピーダンスが高くなり、開放端側のインピーダンスが低くなるような、ステップ状のインピーダンス変化が得られる。このため、本変形例によれば、共振器10Aの小型化に寄与することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態による共振器について図面を用いて説明する。図9は、本実施形態による共振器を示す斜視図である。図10A及び図10Bは、本実施形態による共振器を示す断面図である。図10Aは、図9のXA−XA線に対応している。図10Bは、図9のXB−XB線に対応している。第1又は第2実施形態による共振器と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し又は簡略にする。
本実施形態による共振器10Bでは、比誘電率が比較的高い誘電体層15Bの上面側と下面側の両方に比誘電率が比較的低い誘電体層15Au、15Adがそれぞれ備えられている。誘電体基板14のうちの誘電体層15Auが位置する側である一方の主面側、即ち、図9における誘電体基板14の上側には、上部遮蔽導体12Aが位置している。誘電体基板14のうちの誘電体層15Adが位置する側である他方の主面側、即ち、図9における誘電体基板14の下側には、下部遮蔽導体12Bが位置している。誘電体層15Au、15Adの厚さは、第1及び第2実施形態において上述した誘電体層15Aと同様に、例えば200μm〜250μm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。誘電体基板14の厚さは、第1及び第2実施形態において上述した誘電体基板14と同様に、例えば1.5mm〜2.0mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
本実施形態では、上部遮蔽導体12Aに対向する上部ストリップ線路(ストリップ線路)18Aと、下部遮蔽導体12Bに対向する下部ストリップ線路(ストリップ線路)18Bとが形成されている。上部ストリップ線路18Aは、上部遮蔽導体12Aと上部ストリップ線路18Aとの間に誘電体層15Auの一部が挟まれるように、誘電体基板14内に形成されている。下部ストリップ線路18Bは、下部遮蔽導体12Bと下部ストリップ線路18Bとの間に誘電体層15Adの一部が挟まれるように、誘電体基板14内に形成されている。上部ストリップ線路18Aは、誘電体層15Au内に埋め込まれている。下部ストリップ線路18Bは、誘電体層15Ad内に埋め込まれている。上部ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間隔は、例えば100μm前後とすることができるが、これに限定されるものではない。また、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間隔は、例えば100μm前後とすることができるが、これに限定されるものではない。
本実施形態では、ビア電極部20の一端は、上部ストリップ線路18Aに接続されており、ビア電極部20の他端は、下部ストリップ線路18Bに接続されている。より具体的には、ビア電極部20の一端は、誘電体層15Au内において上部ストリップ線路18Aに接続されており、ビア電極部20の他端は、誘電体層15Ad内において下部ストリップ線路18Bに接続されている。このように、ビア電極部20は、上部ストリップ線路18Aから下部ストリップ線路18Bにかけて形成されている。ビア電極部20とストリップ線路18A、18Bとにより、構造体16が構成されている。
本実施形態では、第1入出力端子22Aが第1接続線路32aを介して上部遮蔽導体12Aに結合されており、第2入出力端子22Bが第2接続線路32bを介して上部遮蔽導体12Aに結合されている。
第1及び第2実施形態による共振器10、10Aの場合と同様に、ビア電極部20と、第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbとは、半同軸共振器のように振る舞う。ビア電極部20に流れる電流の向きと第1側面遮蔽導体12Caに流れる電流の向きとは逆となり、また、ビア電極部20に流れる電流の向きと第2側面遮蔽導体12Cbに流れる電流の向きとは逆となる。このため、遮蔽導体12A、12B、12Ca、12Cbによって囲まれた部分に電磁界を閉じ込めることができ、放射による損失を小さくすることができ、且つ、外部への影響を小さくすることができる。共振時のあるタイミングにおいては、上部遮蔽導体12Aの中心から上部遮蔽導体12Aの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、下部遮蔽導体12Bには、下部遮蔽導体12Bの面全体から下部遮蔽導体12Bの中心に向かって集中するように電流が流れる。また、共振時の他のタイミングにおいては、下部遮蔽導体12Bの中心から下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように電流が流れる。この際、上部遮蔽導体12Aには、上部遮蔽導体12Aの面全体から上部遮蔽導体12Aの中心に向かって集中するように電流が流れる。上部遮蔽導体12A又は下部遮蔽導体12Bの面全体に拡散するように流れる電流は、そのまま第1側面遮蔽導体12Ca及び第2側面遮蔽導体12Cbにも同様に流れる。即ち、線幅の広い導体に電流が流れる。線幅の広い導体は抵抗成分が少ないため、Q値の劣化は小さい。
本実施形態では、ビア電極部20が上部遮蔽導体12Aにも下部遮蔽導体12Bにも導通していない。ビア電極部20に接続された上部ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間には、静電容量(開放端容量)が存在する。また、ビア電極部20に接続された下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間にも、静電容量が存在する。ビア電極部20は、上部ストリップ線路18A及び下部ストリップ線路18Bとともに、λ/2共振器を構成する。
第1及び第2実施形態のようなλ/4共振器においては、共振時に、ビア電極部20と遮蔽導体12A、12Bとが接している部分、即ち、短絡部に電流が集中する。ビア電極部20と遮蔽導体12A、12Bとが接している部分は、電流の経路が垂直に曲がる部分である。電流の経路が大きく曲がる箇所に電流が集中することは、Q値の低下をもたらし得る。短絡部への電流の集中を解消することによりQ値を向上すべく、電流経路の断面積を大きくすることも考えられる。例えば、ビア径を大きくすることや、ビアの本数を増やすことが考えられる。しかし、このようにした場合には、共振器の大きさが大きくなってしまい、共振器の小型化の要請を満たし得ない。これに対し、本実施形態では、ビア電極部20が上部遮蔽導体12Aにも下部遮蔽導体12Bにも接していない。即ち、本実施形態では、両端開放型のλ/2共振器が構成されている。このため、本実施形態では、局所的な電流の集中が上部遮蔽導体12A及び下部遮蔽導体12Bに生じることが防止される一方、ビア電極部20の中心付近に電流を集中させることができる。電流が集中する箇所がビア電極部20のみであるため、即ち、連続性(直線性)のある箇所に電流が集中するため、本実施形態によれば、Q値を向上させることができる。
図11は、本実施形態による共振器10Bの等価回路を示す図である。図11に示すように、下部ストリップ線路18Bの一部と第1ビア電極部20Aと上部ストリップ線路18Aの一部とを含む第1λ/2共振器35Aが構成される。また、図11に示すように、下部ストリップ線路18Bの他の一部と第2ビア電極部20Bと上部ストリップ線路18Aの他の一部とを含む第2λ/2共振器35Bが構成される。第1λ/2共振器35Aと第2λ/2共振器35Bには同相の電流が流れる。第1λ/2共振器35Aと第2λ/2共振器35Bとに流れる電流が同相であるため、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間の領域は電磁界が疎の状態となる。このため、本実施形態では、不要な結合を抑制しつつ、第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間にパターンを配置することが可能となる。
このように、本実施形態では、ビア電極部20の一端が上部遮蔽導体12Aに対向する上部ストリップ線路18Aに接続され、ビア電極部20の他端が下部遮蔽導体12Bに対向する下部ストリップ線路18Bに接続されている。そして、本実施形態では、上部ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Auの一部が挟まれ、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Adの一部が挟まれている。本実施形態では、比誘電率が比較的低い誘電体層15Auの一部が上部遮蔽導体12Aと上部ストリップ線路18Aとの間に挟まれており、比誘電率が比較的低い誘電体層15Adの一部が下部遮蔽導体12Bと下部ストリップ線路18Bの間に挟まれている。このため、本実施形態によれば、上部ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の距離がある程度ばらついたとしても、上部ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。また、本実施形態によれば、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間の距離がある程度ばらついたとしても、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。また、本実施形態によれば、上部ストリップ線路18Aの線幅がある程度ばらついたとしても、上部ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。また、本実施形態によれば、下部ストリップ線路18Bの線幅がある程度ばらついたとしても、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間の静電容量の変化は小さくてすむ。このため、本実施形態においても、電気的特性のばらつきを低減することができる。
また、本実施形態によれば、上部ストリップ線路18Aと上部遮蔽導体12Aとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Auが存在しているため、上部ストリップ線路18Aの面積を大きく確保することができる。また、本実施形態によれば、下部ストリップ線路18Bと下部遮蔽導体12Bとの間に比誘電率が比較的低い誘電体層15Adが存在しているため、下部ストリップ線路18Bの面積を大きく確保することができる。このため、本実施形態によれば、共振器10B間に備えられる結合容量電極等のパターンのレイアウトの自由度を高くすることができる。また、ストリップ線路18A、18Bの面積を大きく確保することにより、複数のビア電極24a、24bを用いた共振器10Bを実現することができる。このため、本実施形態によれば、Q値の高い良好な共振器10Bを得ることができる。
また、本実施形態においても、ビア電極部20が比誘電率の比較的高い誘電体層15Bに埋め込まれているため、当該部分において波長短縮効果が得られる。このため、本実施形態においても、伝送線路を短縮することができ、共振器10Bの小型化に寄与することができる。また、波長短縮効果によってビア電極部20の長さを短くすることが可能となるため、共振器10Bのサイズを変更しない場合には、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすることができる。ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間隔を大きくすると、ストリップ線路18と上部遮蔽導体12Aとの間における静電容量を小さくすることができる。このため、本実施形態においても、共振器10BのQ値の向上に寄与することができる。しかも、本実施形態では、ビア電極部20が上部遮蔽導体12Aにも下部遮蔽導体12Bにも導通していない。このため、本実施形態では、局所的な電流の集中が上部遮蔽導体12A及び下部遮蔽導体12Bに生じることが防止される一方、ビア電極部20の中心付近に電流を集中させることができる。電流が集中する箇所がビア電極部20のみであるため、即ち、連続性(直線性)のある箇所に電流が集中するため、本実施形態によれば、Q値を向上させることができる。
[第4実施形態]
第4実施形態によるフィルタについて図12〜図14を用いて説明する。図12は、本実施形態によるフィルタを示す斜視図である。図13は、本実施形態によるフィルタを示す断面図である。図13は、図12のXIII−XIII線に対応している。
本実施形態によるフィルタ(誘電体フィルタ)50は、図1〜図4Bを用いて上述した第1実施形態による共振器10を多段化したものである。ここでは、共振器10を3段にする場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。
フィルタ50は、誘電体基板14内に、3つの共振器、即ち、第1共振器52A(共振器10)、第2共振器52B(共振器10)及び第3共振器52C(共振器10)を有する。
第1共振器52A、第2共振器52B及び第3共振器52Cは、それぞれ以下のような構成を有する。即ち、第1共振器52A〜第3共振器52Cは、上部の上部遮蔽導体12Aに対向するストリップ線路18Aと、ストリップ線路18Aから下部遮蔽導体12Bにかけて隣接して形成された第1ビア電極部20A及び第2ビア電極部20Bとを有する。第1ビア電極部20Aは、上述したように、複数の第1ビア電極24aから構成されている。また、第2ビア電極部20Bは、上述したように、複数の第2ビア電極24bから構成されている。
第1共振器52Aのストリップ線路18Aと第1入出力端子22Aとの間には、ストリップ線路18Aと第1入出力端子22Aとを接続する第3接続線路54Aが形成されている。また、第2共振器52Bのストリップ線路18Aから第1共振器52Aに向かって延在するとともに第1共振器52Aのストリップ線路18Aに容量結合する第1結合調整線路56Aが形成されている。第1結合調整線路56Aの端部は、第1共振器52Aの第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間におけるストリップ線路18Aの下方に位置している。
第3共振器52Cのストリップ線路18Aと第2入出力端子22Bとの間には、ストリップ線路18Aと第2入出力端子22Bとを接続する第4接続線路54Bが形成されている。また、第2共振器52Bのストリップ線路18Aから第3共振器52Cに向かって延在するとともに第3共振器52Cのストリップ線路18Aに容量結合する第2結合調整線路56Bが形成されている。第2結合調整線路56Bの端部は、第3共振器52Cの第1ビア電極部20Aと第2ビア電極部20Bとの間におけるストリップ線路18Aの下方に位置している。
図14は、本実施形態によるフィルタの等価回路を示す図である。図14に示すように、本実施形態によるフィルタ50では、第1共振器52Aと第2共振器52Bとが電磁界結合され、第2共振器52Bと第3共振器52Cとが電磁界結合される。
第1共振器52A〜第3共振器52Cにおいて、第1ビア電極部20Aは、ストリップ線路18Aとともに、第1λ/4共振器34Aを構成する。また、第1共振器52A〜第3共振器52Cにおいて、第2ビア電極部20Bは、ストリップ線路18Aとともに、第2λ/4共振器34Bを構成する。
本実施形態によれば、電気的特性のばらつきが小さくQ値の良好な共振器10がフィルタ50に備えられている。このため、本実施形態によれば、電気的特性のばらつきが小さく電気的特性の良好なフィルタ50を提供することができる。
なお、ここでは、第1実施形態による共振器10を多段化する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第2実施形態による共振器10Aを多段化するようにしてもよいし、第3実施形態による共振器10Bを多段化するようにしてもよい。
上記実施形態をまとめると以下のようになる。
共振器(10)は、第1誘電体層(15A)と、前記第1誘電体層より比誘電率が高い第2誘電体層(15B)とを含む誘電体基板(14)と、前記誘電体基板のうちの前記第1誘電体層が位置する側である一方の主面側に形成された第1遮蔽導体(12A)と、前記第1遮蔽導体に対向する第1ストリップ線路(18A)であって、前記第1遮蔽導体と前記第1ストリップ線路との間に前記第1誘電体層の一部が挟まれるように前記誘電体基板内に形成された第1ストリップ線路と、少なくとも前記第2誘電体層内に形成され、一端が前記第1ストリップ線路に接続されたビア電極部(20)とを有する。このような構成によれば、比誘電率が比較的低い第1誘電体層の一部が第1遮蔽導体と第1ストリップ線路との間に挟まれている。このため、このような構成によれば、第1ストリップ線路と第1遮蔽導体との間の距離がある程度ばらついたとしても、第1ストリップ線路と第1遮蔽導体との間の静電容量の変化は小さくてすむ。また、このような構成によれば、ストリップ線路の線幅がある程度ばらついたとしても、ストリップ線路と第1遮蔽導体との間の静電容量の変化は小さくてすむ。このため、このような構成によれば、電気的特性のばらつきを低減することができる。また、このような構成によれば、ストリップ線路と第1遮蔽導体との間に比誘電率が比較的低い第1誘電体層が存在しているため、ストリップ線路の面積を大きく確保することができる。このため、このような構成によれば、共振器間に備えられる結合容量電極等のパターンのレイアウトの自由度を高くすることができる。また、ストリップ線路の面積を大きく確保することにより、複数のビア電極を用いた共振器を実現することができる。このため、このような構成によれば、Q値の高い良好な共振器を得ることができる。しかも、このような構成によれば、ビア電極部が比誘電率の比較的高い第2誘電体層に埋め込まれているため、当該部分において波長短縮効果が得られる。このため、このような構成によれば、伝送線路を短縮することができ、共振器の小型化に寄与することができる。また、波長短縮効果によってビア電極部の長さを短くすることが可能となるため、共振器のサイズを変更しない場合には、第1ストリップ線路と第1遮蔽導体との間隔を大きくすることができる。第1ストリップ線路と第1遮蔽導体との間隔を大きくすると、第1ストリップ線路と第1遮蔽導体との間における静電容量を小さくすることができるため、共振器のQ値の向上に寄与することができる。
前記第1ストリップ線路は、前記第1誘電体層内に埋め込まれているようにしてもよい。
前記誘電体基板の他方の主面側に形成された第2遮蔽導体(12B)を更に有し、前記ビア電極部の他端は、前記第2遮蔽導体に接続されているようにしてもよい。
前記誘電体基板は、第3誘電体層(15Ad)を更に含み、前記第3誘電体層は、前記第2誘電体層より比誘電率が低く、前記第2誘電体層と前記第2遮蔽導体との間に少なくとも位置し、前記ビア電極部は、前記第3誘電体層内に更に形成されているようにしてもよい。このような構成によれば、比誘電率が比較的低い第3誘電体層が、比誘電率が比較的高い第2誘電体層と第2遮蔽導体との間に存在しているため、第2遮蔽導体の周囲の部材のインピーダンスを高くすることができる。このため、短絡端側のインピーダンスが高くなり、開放端側のインピーダンスが低くなるような、ステップ状のインピーダンス変化が得られる。このため、このような構成によれば、共振器の小型化に寄与することができる。
前記誘電体基板の他方の主面側に形成された第2遮蔽導体を更に有し、前記誘電体基板は、第3誘電体層を更に含み、前記第3誘電体層は、前記第2誘電体層より比誘電率が低く、前記第2誘電体層と前記第2遮蔽導体との間に少なくとも位置し、前記誘電体基板内に形成され、前記第2遮蔽導体に対向する第2ストリップ線路(18B)を更に有し、前記第2遮蔽導体と前記第2ストリップ線路との間に前記第3誘電体層の一部が挟まれているようにしてもよい。このような構成によれば、ビア電極部が第1遮蔽導体にも第2遮蔽導体にも接していないため、局所的な電流の集中が第1遮蔽導体及び第2遮蔽導体に生じることが防止される一方、ビア電極部の中心付近に電流を集中させることができる。電流が集中する箇所がビア電極部のみであるため、即ち、連続性(直線性)のある箇所に電流が集中するため、このような構成によれば、Q値を向上させることができる。
前記第2ストリップ線路は、前記第3誘電体層内に埋め込まれているようにしてもよい。
前記第2遮蔽導体に第1入出力端子(22A)及び第2入出力端子(22B)が結合されているようにしてもよい。
前記ビア電極部は、複数のビア電極(24a、24b)から構成されているようにしてもよい。
前記ビア電極部は、隣接して形成された第1ビア電極部(20A)と第2ビア電極部(20B)とを有するようにしてもよい。
前記第1ビア電極部は、複数の第1ビア電極(24a)から構成され、前記第2ビア電極部は、複数の第2ビア電極(24b)から構成され、前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在しないようにしてもよい。このような構成によれば、第1ビア電極部と第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在しないため、ビアを形成するために要する時間を短縮することができ、ひいてはスループットの向上を実現することができる。また、このような構成によれば、第1ビア電極部と第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在しないため、ビアに埋め込まれる銀等の材料が少なくてすみ、ひいてはコストダウンを実現することもできる。また、第1ビア電極部と第2ビア電極部間に、電磁界が比較的疎である領域が形成されるため、当該領域に結合調整等のためのパターンを形成することもできる。
前記複数の第1ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第1湾曲線(28a)に沿って配置され、前記複数の第2ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第2湾曲線(28b)に沿って配置されているようにしてもよい。
前記第1湾曲線及び前記第2湾曲線は、1つの仮想の楕円(37)の輪郭線の一部又は1つの仮想のトラック形状(38)の輪郭線の一部を構成しているようにしてもよい。
フィルタ(50)は、上記のような共振器を備える。