JP6843817B2 - 質量分析装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置及び焼き出し電流制御装置 - Google Patents

質量分析装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置及び焼き出し電流制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、質量分析装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置及び焼き出し電流制御装置に関する。
質量分析装置では、電界イオン化(FI:Field Ionization)法によって試料をイオン化するものがある。FI法は、エミッタに強い電界を付与し、トンネル効果を利用して試料をイオン化する方法であり、フラグメンテーションが起こりにくいソフトなイオン化を行うことができる。FI法では、イオン源内に、気化した試料が導入される。例えば、気化された試料をガスクロマトグラフ(GC:Gas Chromatograph)で分離した後に、分離成分をイオン源に導入してイオン化することができる。また、エミッタの表面に付着した試料を離脱させるため、試料の注入期間中に、エミッタに短時間の通電を行ってエミッタを加熱する焼き出しが繰り返し行われる(例えば、下記特許文献1を参照)。
特開2015−68678号公報
FI法においては、エミッタが加熱された状態では、一般に、注入された試料をイオン化する効率が低下してしまう。しかしながら、イオン化効率の低下を防ぐためにエミッタの加熱を行わない場合には、試料がエミッタ表面に吸着することで分析感度が低下してしまう問題が生じる。
本発明の目的は、イオン化効率の向上と分析の感度の向上とを両立させたエミッタの焼き出しを行う質量分析装置を実現することにある。
本発明の質量分析装置は、注入される試料に電界を付与して、当該試料をイオン化させるエミッタと、前記エミッタを高温化させる焼き出し処理を、前記試料の注入期間中に短時間間隔で繰り返す焼き出し処理部と、前記エミッタによってイオン化された試料の質量分析を行う質量分析部と、を備え、前記焼き出し処理部は、前記高温化の際に前記エミッタが到達する焼き出し温度を前記注入期間中に長期的に上昇させる、ことを特徴とする。
本発明のガスクロマトグラフ質量分析装置は、前記質量分析装置と、温度制御したカラムを有し、当該カラムで分離した前記試料を順次前記質量分析装置に注入するガスクロマトグラフと、を備え、前記焼き出し処理部は、前記カラムの温度制御パターンに応じて、前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる、ことを特徴とする。
本発明の焼き出し電流制御装置は、注入される試料に電界を付与して当該試料をイオン化させるエミッタの制御装置であって、前記エミッタに焼き出し電流を通電することにより当該エミッタを高温化させる焼き出し処理を、前記試料の注入期間中に短時間間隔で繰り返す焼き出し処理部を備え、前記焼き出し処理部は、前記注入期間中に長期的に前記焼き出し電流の電力量を増大させる、ことを特徴とする。
本発明によれば、エミッタの焼き出し温度を一定にする場合に比べて、試料のイオン化の高効率化と分析の高感度化を達成することができる。
実施形態にかかるガスクロマトグラフ質量分析装置の概略的構成図である。 イオン源の概略的な構成を示す図である。 エミッタにおけるイオン化の過程を示す図である。 質量分析過程における焼き出し電流、焼き出し温度などの関係を示す模式的なタイムチャートである。 焼き出し電流の違いによるTICCの違いを示す図である。 焼き出し電流の設定画面の例である。 焼き出し電流の設定画面の例である。 焼き出し電流値を一定に維持する場合の設定例である。 焼き出し電流値を段階的に増大させる場合の設定例である。 焼き出し電流値を連続的に増大させる場合の設定例である。 焼き出し電流値を連続的に増大させる場合の別の設定例である。 焼き出し電流値を複合的に増大させる場合の設定例である。 焼き出し電流値を振動させながら長期的に増大させる場合の設定例である。 焼き出し電流値をガスクロマトグラフの温度制御と同様のパターンで増大させる場合の設定例である。 焼き出し時間を段階的に延長する場合の設定例である。 焼き出し電流値を変更した場合のTICCピーク強度を示す図である。 焼き出し時間を変更した場合のTICCピーク強度を示す図である。
(A)実施形態の概要
実施形態にかかる質量分析装置は、エミッタと、焼き出し処理部と、質量分析部を備える。エミッタは、FI法により試料をイオン化するイオン源の構成要素であり、注入される試料に電界を付与して、試料をイオン化させる。
焼き出し処理部は、エミッタを高温化させる焼き出し処理を、試料の注入期間中に短時間間隔で繰り返すものである。ここで、注入期間とは、一連の測定のために試料が注入される全体的な期間をいう。注入期間内には、積算を行わない時間帯に試料の注入が一時的に停止されるなどの処理が行われてもよい。
FI法では、エミッタの表面が試料や不純物の吸着により汚れた場合、生成されるイオン量が減少するため、試料や不純物の吸着量を低減するためにエミッタの焼き出しを行っている。焼き出し処理では、通常は、(定電流電源により)数mA〜数十mA程度の電流を一定間隔でエミッタに流し、エミッタ表面を加熱して高温にすることで、エミッタ表面への物質吸着の抑制を図っている。ただし、エミッタにレーザーを照射して加熱を行うなど、他の加熱手段を用いてもよい。焼き出し処理では、エミッタは、例えば、10℃以上、30℃以上、100℃以上、あるいは300℃以上高温化される。エミッタは、サイズが小さく熱容量も小さいため、高温化された後には、不活性ガスへの熱伝導、温度に応じた熱放射などによって速やかに冷却されるが、冷却機構を設けて積極的に冷却されてもよい。焼き出しの時間間隔は、一般的な試料の注入期間(例えば、1分から1時間)に比べて短い時間に設定される。その具体的な時間間隔は、エミッタの特性、試料の注入量、試料の沸点などによって変更する余地があるが、例えば、0.05秒に1回から10秒に1回程度の短時間間隔で行われる。毎回の焼き出しの時間間隔は、等間隔であってもよいし、不等間隔であってもよい。なお、エミッタでは、定常的に微弱電流を流すなどして、その温度を適当な高さに維持するような制御が行われてもよい。
質量分析部は、エミッタによってイオン化された試料の質量分析を行う。質量分析の原理は特に限定されるものではなく、飛行時間型装置、磁場セクター型装置、リニア四重極型装置、三次元四重極イオントラップ装置、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴分析型装置など様々なものを用いることができる。質量分析により得られた信号はコンピュータで処理される。
焼き出し処理部は、高温化の際にエミッタが到達する焼き出し温度を、注入期間中に長期的に上昇させる。焼き出し温度とは、各回の焼き出し処理においてエミッタが到達する最高温度をいうものとする。焼き出し温度は、注入期間全体に渡る長期的な時間スケールでみた場合に温度上昇するように設定されている。このため、焼き出し温度は、時間平均的には、注入期間の初期段階に比べて後期段階の方が高温化されることになる。
一般に、焼き出し温度を高くした場合には、エミッタにおける試料のイオン化効率が低下する一方で、エミッタに付着した沸点の高い試料が離脱しやすくなり、分析の感度が向上する。したがって、試料の注入期間中に長期的に焼き出し温度を上昇させた場合には、試料の特性に適合化した分析環境が形成される可能性が高くなり、試料のイオン化効率の向上と、分析感度の向上を両立した分析結果を得ることが期待できる。
なお、FI法に類似したイオン化手法として、電界脱離(FD:Field Desorption)法が知られている。FD法では、予めエミッタに試料を塗布するなどして直接載せた上で、加熱して試料をイオンとして脱離させるか、もしくは、加熱して蒸発させ、その際に電界によって試料のイオン化を行う。FD法では、通常、イオン化の最中にエミッタの温度を上昇させて試料の離脱を促すが、この温度上昇はFI法のように短時間間隔で繰り返し行われるのではなく、恒常的に行われるものである。また、FD法では、試料中に混在する試料の検出を行うため、FI法のように試料の検出感度を高めるような必要がない。このように、FD法におけるエミッタの高温化は、その実施態様も実施目的も、FI法とは大きく異なるものである。
実施形態では、エミッタを含むイオン源には、クロマトグラフによって分離された試料が順次注入される。この構成では、ガスクロマトグラフなどのクロマトグラフによって試料に含まれる複数の成分が適当な特性に応じて分離され、順次エミッタに注入される。例えば、沸点による分離が行われる場合には、沸点の低いものから高いものへと順次注入される成分が移り変わっていく。また、例えば、極性による分離が行われる場合には、極性の小さなものから大きなものへと順次注入される成分が移り変わっていくことが想定される。このような分離特性を考慮した場合、エミッタに付着する試料を離脱させるのに必要となる焼き出し温度は、試料の注入初期には低く、注入後期に高くなることが多いと考えられる。したがって、焼き出し温度を、試料の注入期間中に長期的に上昇させることで、試料に適した焼き出し処理が実施できるものと考えられる。
実施形態では、焼き出し処理部は、エミッタに焼き出し電流を通電することにより焼き出し処理を行い、焼き出し電流の電力量を長期的に増大させることで、焼き出し温度を長期的に上昇させる。エミッタの高温化は、エミッタに電流を流してそのジュール熱で加熱することで簡易に行うことができる。この場合、長期的な温度上昇はジュール熱を増大させることで実現される。ジュール熱は、エミッタに供給する電力量(電力の時間積分値)で与えられることから、焼き出し電流の電力量を長期的に増大させることになる。
実施形態では、焼き出し処理部は、焼き出し電流の電力量を長期的に段階的に増大させる。段階的な増大とは、短い時間に、ある値からある値へと急激に値を増大させるステップ関数的な増大をいう。この増大は、試料の注入期間中に、1度だけ行われてもよいし、複数回行われてもよい。この設定では、焼き出し電流の電力量を一定にして同一の条件でイオン化を行うことができる期間が確保されるとともに、長期的な焼き出し電流の電力量の増大も行うことが可能となる。
例えば、焼き出し処理部は、焼き出し電流の電力量を長期的に連続的に増大させることができる。連続的な増大とは、時間とともに徐々に値を増大させる連続関数的な増大をいう。増大は時間に対して線形的であってもよいし非線形的であってもよい。この設定では、焼き出し電流の電力量が徐々に変化するため、エミッタにおけるイオン化条件の急速な変化を回避することが可能となる。
実施形態では、焼き出し処理部は、上述の短時間間隔よりも長く、かつ、注入期間に比べて短い時間間隔で変動させながら、焼き出し電流の電力量を長期的に増大させるようにしてもよい。この設定では、焼き出し電流の電力量は、長期的には増大するが、途中の過程において中期的な時間スケールで1回あるいは複数回の温度減少を示すことになる。例えば、注入される試料が極性によって分離されていて、必ずしも沸点に応じた分離がなされていない場合に、焼き出し電流の電力量を中期的なスケールで変動させることで、試料のイオン化効率の向上と、分析感度の向上を両立できる可能性がある。
実施形態では、さらに、焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる複数の電力量増大パターンをユーザに提示する提示手段と、ユーザが選択した電力量増大パターンを受け付ける受付手段と、を備え、焼き出し処理部は、受付手段が受け付けた電力量増大パターンに従って、焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる。ユーザが質量分析装置の扱いに不慣れな場合には、焼き出し電流の電力量の増大設定を適切に実施できないことが考えられる。そこで、複数の電力量増大パターンをユーザに提示して、選択させることが有効となる。ユーザには、電力量増大パターンに加えて、電力量を一定に維持するパターンを提示してもよい。また、提示する複数の電力量増大パターンには、お勧めする優先順位をつけてもよい。優先順位付けは、例えば、注入する試料の特性、その前段階にあるクロマトグラフの特性などに基づいて行うことが考えられる。また、実際に同じまたは類似した試料を分析した結果に基づいて優先順位付けを行うようにしてもよい。
実施形態では、さらに、質量分析部によって得られたイオン化された試料の時間的ピークを評価して、焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる電力量増大パターンを選択する選択手段を備える。試料の時間的ピークの評価とは、検出した時間軸上に現れるイオンの強度(イオン数)のピークについての定性的または定量的な評価である。具体的には、例えば、ピークの明瞭性(例えば、ピークのテーリング(ピークよりも後の時間における数値(強度値)の減少が遅く、ピークの後に尾を引くように裾野が続く現象をいう。以下、「ピークテーリング」という。)が存在するか、時間的に早いピークに現れるピークテーリングによって後のピークが検出できなくなっていないか)、あるいは、他の焼き出し電流の電力量と比較したピーク強度の評価(ある焼き出し電流の電力量において実験によりあるいは推測により得られたピークの高さに比べて、現在のピークが高いか低いかの評価)を行うことができる。時間的ピークの評価は、分析中にリアルタイムで行って、ただちにその分析に関して電力量増大パターンを選択するようにしてもよい。また、一連の試料の質量分析が終わった後に、トータルイオンカレントクロマトグラムなどによって時間的ピークの評価を行い、次回以降の質量分析の際に電力量増大パターンを選択するようにしてもよい。選択手段が選択した電力量増大パターンは、ユーザの許諾を受けることなく採用してもよいし、ユーザの許諾を受けた上で採用するようにしてもよい。この構成によれば、効率的なイオン化、あるいは、検出の高感度化をピーク評価に基づいて行うことが可能となる。
実施形態では、焼き出し処理部は、焼き出し電流の焼き出し時間(通電時間)の延長及び電流値の増大の一方または両方を行うことで焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる。
実施形態にかかるガスクロマトグラフ質量分析装置は、前述の質量分析装置と、温度制御したカラムを有し、当該カラムで分離した試料を順次質量分析装置に注入するガスクロマトグラフと、を備え、焼き出し処理部は、カラムの温度制御パターンに応じて、焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる。
この構成では、カラムの温度制御パターンに基づいて分離された試料が、それと対応づけられた焼き出し温度パターンで焼き出し処理されるエミッタによってイオン化されることになる。カラムにおける分離特性と、エミッタにおける離脱特性は関連する可能性が高いため、カラムの温度制御パターンと焼き出し電流の電力量増大パターンを対応づけることが有効となる。
なお、カラムの温度制御パターンと、焼き出し電流の電力量増大パターンとの対応付けの例としては、カラムの温度制御パターンを決めた場合に、焼き出し電流の電力量増大パターンが一つあるいは複数に絞り込まれるような関係を挙げることができる。焼き出し電流の電力量増大パターンを選んだ場合にカラムの温度制御パターンが絞り込まれるような対応関係であってもよい。また、別の要素(試料について推定される特性など)を選択した場合に、カラムの温度制御パターンと焼き出し電流の電力量増大パターンが一つあるいは複数に絞りこまれるようにしてもよい。さらに、カラムの温度制御パターンと焼き出し電流の電力量増大パターンとが互いに類似したパターンをもつように対応づけられていてもよい。ここで類似したパターンとは、温度変化・電力量変化のタイミング(例えば、段階的に上昇させる場合における上昇時刻や、連続的に上昇させる場合における上昇時刻)が適宜タイムラグを考慮した上で一致するものをいう。ただし、一般にカラムの温度と焼き出し電流の電力量の尺度は異なるため、上昇幅や上昇比率などは異なっていてもよい。
実施形態にかかるエミッタ焼き出し電流制御装置は、注入される試料に電界を付与して当該試料をイオン化させるエミッタの制御装置であって、焼き出し処理部を備えるものである。
(B)実施形態の詳細
(1)装置の構成
図1は、実施形態にかかるガスクロマトグラフ質量分析装置10の概略的な構成を示す図である。ガスクロマトグラフ質量分析装置10には、GC(ガスクロマトグラフ)ユニット20と、MS(質量分析)ユニット30と、PC(パーソナルコンピュータ)ユニット40が含まれる。ガスクロマトグラフ質量分析装置10は、GCユニット20及びPCユニット40からなるガスクロマトグラフと、MSユニット30及びPCユニット40からなる質量分析装置を組み合わせてシステム化した分析装置である。
GCユニット20は、気化しやすい化合物の同定・定量に用いられる装置である。GCユニット20には、オーブン22と、オーブン22内に設置されたカラム24と、温度制御部28が含まれる。オーブン22は、内部を加熱する機能を備えた装置である。カラム24は、チューブ内に吸着性のある物質を固定相として充填したものであり、オーブン22内に設置されている。カラム24の一端からは、キャリアガス(不活性ガス)とともに試料が注入される。試料に含まれる各成分は、吸着特性に応じた保持時間だけカラム24に保持された上で、カラム24の他端から出てくる。各成分では、吸着特性、そして保持時間が異なるため、カラム24を通過した後には、試料は成分毎に分離されることになる。固定相の選択によって、例えば、成分を沸点が高い順に分離することや、極性が小さい順に分離することが可能となる。カラム24を通過した試料は、MSユニット30のイオン源32に送られる。
温度制御部28は、演算処理機能を備えたハードウエアを用いて形成されており、PCユニット40からの指示を受信して、オーブン22の温度を制御する。一般的には、試料の分離過程でオーブン22の温度を上昇させた場合には、保持時間が短縮されることになる。温度制御部28の加熱制御は、試料中の各成分が、適当な時間内に十分に分離されるように行われる。
MSユニット30は、試料をイオン化してその質量分析を行う装置である。MSユニット30には、イオン源32と、質量分析部34と、信号処理部36と、焼き出し電流制御部38が含まれる。
イオン源32は、FI法によって試料のイオン化を行う装置である。イオン源32には、GCユニット20からあるいはガス導入可能な別途用意された装置から試料が注入される。イオン源32は、注入された試料に強い電界を付与することで、試料のイオン化を行う。イオン源32の詳細については後述する。
質量分析部34は、イオン化された試料の質量を計測する装置である。質量の計測は、例えば、四重極質量分析法によって行われる。信号処理部36は、演算処理機能を備えたハードウエアを用いて形成されており、質量分析部34が検出した信号の積算処理等を行う。信号処理部36による処理結果は、PCユニット40に送信される。
焼き出し電流制御部38は、演算処理機能を備えたハードウエアを用いて形成されており、PCユニット40から受信する指示信号に基づいてイオン源32のエミッタに流す焼き出し電流を制御する。具体的には、焼き出し電流の通電を行う時間間隔、電流値(焼き出し電流値)、通電時間(焼き出し時間)期間などを制御している。エミッタの温度は、焼き出し電流によるジュール熱に依存して変化するため、焼き出し電流制御部38は焼き出し温度を制御する焼き出し処理部として機能している。
PCユニット40は、汎用的なパーソナルコンピュータを利用した装置であり、演算処理機能を備えたハードウエアをソフトウエア(プログラム)で制御して動作する。ソフトウエアとしては、オペレーティングシステムなどの基本的なものに加えて、ガスクロマトグラフ質量分析装置10に特化した専用ソフトウエアがインストールされている。PCユニット40には、表示部42と、入力部44と、制御部46と、分析処理部48と、パターン設定部50が含まれている。これらは、PCユニット40のハードウエアを、専用ソフトウエアを利用して制御することで形成されたものであり、各種の設定、質量分析結果の解析などが実施できるように構成されている。
表示部42は、タッチパネル式のディスプレイを用いて構成されており、グラフィカルユーザインタフェースの表示を行うものである。表示部42には、各種の設定画面、分析結果画面などが表示される。入力部44は、タッチパネル、マウス、キーボードなどを用いて構成されており、グラフィカルユーザインタフェースを通じた入力を行うものである。ユーザは、表示部42の表示を見ながら、入力部44を通じて、各種の設定、実行指示などを行うことができる。制御部46は、PCユニット40内の各部の動作を制御するとともに、GCユニット20の制御やGCユニット20からのデータ取得、MSユニット30の制御やMSユニット30からのデータ取得などを行っている。分析処理部48は、MSユニット30の信号処理部36から取得したデータの分析などを行う。
パターン設定部50は、エミッタの焼き出し電流の通電パターンの設定を行うものである。エミッタは焼き出し電流によって温度制御されるため、パターン設定部50はエミッタの焼き出し温度のパターンを設定していることになる。パターン設定部50には、ピーク評価部52とパターンデータ格納部54が設けられている。
ピーク評価部52は、選択手段の例であり、分析処理部48が得た各時間の検出ピークの状態を評価する。具体的には、本来あるべきピークが存在するか否か、ピークが存在する場合にその強度(検出イオン数)は他の焼き出し温度で測定した結果などと比べて十分な強度をもつか否か、ピークが存在する場合に時間方向にのびるピークテーリングが発生しているか否かなどの評価を行う。そして、ピークテーリングが発生している場合、あるいは、ピークがピークテーリングの中に埋もれて検出されない場合には、その時間近辺でエミッタの焼き出し温度を上昇させるパターンデータを選択する。また、ピークテーリングが十分な強度を持たない場合、すなわち検出感度が悪いと判断される場合には、その時間近辺でエミッタの焼き出し温度を低下させるパターンデータを選択する。
パターンデータ格納部54は、エミッタの焼き出し電流について、複数の制御パターンデータを格納している。パターン設定部50では、こうしたパターンデータを表示部42に表示させてユーザに提示することができる。この点で、パターン設定部50及び表示部は、提示手段として機能する。また、ユーザは、入力部44を通じて、提示された複数のパターンデータからいずれかのパターンデータを選択することができる。パターン設定部50ではこのパターンデータを受け付けて、焼き出し電流制御部38にパターンデータに基づく制御を行わせる。この点で、入力部44及びパターン設定部50は、受付手段として機能する。
次に、図2を参照して、イオン源32について説明する。図2は、イオン源32の概略図である。イオン源32には、エミッタ60と、ピン62と、絶縁体64と、カソード66と、電界用電源68と、焼き出し電流電源70が含まれている。
エミッタ60は、タングステンなどの細い金属(例えば直径10μm程度)の周囲に炭素結晶などからなる細長い多数の突起(ウィスカーと呼ばれる)が設けられたものである。エミッタ60の両端には、両端には金属製のピン62が接続されており、ピン62は絶縁体64によって支持されている。エミッタ60の正面には、板状の金属で作られたカソード66が配置されている。カソード66の中央付近には、イオンを通過させるための貫通孔が形成されている。ピン62とカソード66との間には、電界用電源68が取り付けられており、8〜10kV程度の電圧が印加されている。これにより、エミッタ60はカソード66に比べて高電圧化されたアノードとして機能している。
二つのピン62には焼き出し電流電源70が取り付けられている。この焼き出し電流電源70は、焼き出し処理部の例であり、焼き出し電流制御部38の制御の下で、エミッタ60に焼き出し電流を流し、ジュール熱によってエミッタ60を加熱する。
図3は、エミッタ60によって、試料がイオン化される様子を示した図である。図3では、エミッタ60の表面のウィスカー60a付近に、GCユニット20から試料80が注入されている様子を示している。ここで、白丸はイオン化される前の試料80を示しており、陰影をつけた丸は、イオン化された試料イオン80aを示している。なお、GCユニット20からは、試料80とともに、キャリアガスも注入されるが、不活性ガスを用いたキャリアガスはイオン化されないため、図示を省略している。
カソード66とエミッタ60の間には、前述の通り、高電圧が印加されており、両者の間には強い電界が生じている。そして、特に、鋭利な形状を示すウィスカー60aの先端付近には、電界が集中している。注入された試料80がウィスカー60aの先端近傍に達した場合、トンネル効果によって、試料80の電子がウィスカー60aに通り抜けていく。これによって、試料80は試料イオン80aとなる。そして、試料イオン80aはカソード66に引き付けられ、その間の貫通孔を通って質量分析部34に向かう。
しかしながら、試料80の一部は、ウィスカー60aを含むエミッタ60の表面に吸着してしまう。そこで、エミッタ60では、適当な時間間隔で焼き出し電流電源70から電流が流され、ジュール熱による加熱が行われる。付着した試料80は、熱運動のエネルギーを得ることでエミッタ60の表面から離脱する。特に、試料80の沸点を超える温度では、気化した試料80は容易にエミッタ60の表面から離脱することになる。ただし、エミッタ60を加熱した場合には、試料80のイオン化効率が低下し、一般に質量分析部34で検出される試料イオン80aの数が少なくなる傾向がみられる。
(2)焼き出し電流一定の場合の動作
図4及び図5を参照しながら、焼き出し電流の電力量を一定とした場合におけるガスクロマトグラフ質量分析装置10の動作について説明する。
図4は、ガスクロマトグラフ質量分析装置10における動作タイミングを示すタイムチャートである。図4の横軸は共通の時間軸であり、この時間軸上で(a)エミッタ電流、(b)エミッタ温度、(c)注入期間、(d)積算対象期間を示している。
図示した期間では、(c)注入期間の矢印で示したように、試料はGCユニット20から連続的にイオン源32に注入されている。すなわち、その時刻に対応する保持時間をもつ成分が、イオン源32に注入されている。イオン源32では、エミッタ60とカソード66との間に定常的に高電圧が印加されている。このため、注入された試料は、エミッタ60によって連続的にイオン化され、質量分析部34に送られる。
(a)エミッタ電流に示すように、エミッタ60では、焼き出し電流が設定された短時間間隔(例えば約500ミリ秒)でパルス的に流されている。図示した例では、時刻t1から時刻t2までの非常に短い時間(例えば30ミリ秒)に一定値の焼き出し電流(例えば40mA)が流されている。この焼き出し電流の値は、パターン設定部50で設定され、焼き出し電流制御部38で制御されたものである。時刻t2から時刻t3までの間(間隔を正確に図示していないが、例えば470ミリ秒)は電流が止められている。そして、時刻t3以降では、時刻t1以降の過程が繰り返される。すなわち、時刻t3から時刻t4までの間は焼き出し電流が流され、時刻t4から時刻t5までは焼き出し電流が止められる。
焼き出し電流が流されると、(b)エミッタ温度に示すように、エミッタ60ではジュール熱が発生して温度が上昇する。図示した例では、エミッタ60は、時刻t1までは定常温度であったが、時刻t1から時刻t2までの時間では、ジュール熱による加熱が行われたため、(冷却作用を近似的に無視すれば)時間に比例して温度が上昇し、時刻t2の段階では最高温度である「焼き出し温度」に達している。時刻t2以降は、加熱が止まるため、熱放射や、接触したキャリアガスによる熱吸収の効果によって、エミッタ60は次第に低温化していき、やがて定常温度に戻る。
注入された試料の一部は、エミッタ60に吸着されるが、エミッタ60が焼き出し温度まで加温されることで、特に、沸点が焼き出し温度以下の試料成分は、エミッタ60から速やかに離脱する。ただし、沸点が焼き出し温度よりも高い成分は、エミッタ60に吸着しつづける場合がある。また、一部の試料は、焼き出し温度によって熱分解される場合がある。
図4の(d)に示したように、質量分析部34では、エミッタ60に焼き出し電流を通電している時刻t1から時刻t2の若干後までの期間は、検出したイオンの積算を行っていない。そして、その後時刻t3までは、検出したイオンの積算を行っている。これは、例えば、焼き出し温度によって熱分解されたイオンを積算対象から除外するとの理由による。積算対象時間は適宜変更することが可能である。例えば、後述するように、一連の測定期間中に焼き出し温度を高くした場合には、冷却にも時間が長くかかることから、当該測定期間中において、通電停止後から積算再開をするまでの時間を長く確保するように変更してもよい。
図5は、一連の測定において、焼き出し電流を一定とした場合における質量分析結果を示す図である。図5の(a)(b)は、同じ試料について、GCユニット20で分離を行った後、MSユニット30に注入して質量分析を行った結果得られたトータルイオンカレントクロマトグラム(TICC)を示している。TICCは、ガスクロマトグラによって時間的に分離された試料成分を質量分析計によってトータルイオン電流量として観測したもので、横軸はガスクロマトグラからその試料成分が流出するまでの時間、縦軸はその試料成分由来のイオン強度を示している。図5(a)(b)のいずれの場合も、検出期間中に焼き出し電流の値は一定としている。図5(a)のTICCは0.3秒毎に、30ミリ秒間、30mAの焼き出し電流を流した場合の結果であり、図5(b)のTICCは、0.3秒毎に、30ミリ秒間、50mAの焼き出し電流を流した場合の結果である。
図5(a)に示すように、この試料では、2.52分後付近に最初のピークが現れ、その後、4.38分後、6.14分後、7.72分後というように順にピークが検出されている。ここで、数値の上に丸で示した6.14分後のピーク及びそれより前のピーク(2.52分後と4.38分後のピーク)では、鋭いピークが見られている。しかし、数値の上に×で示した7.72分後以降のピークでは、ピークよりも後の時間にまで裾野が広がったピークテーリングがみられている。ピークテーリングは検出時刻が遅くなるにつれて大きくなり、14.78分後のピークはかなり丸まった形状になっている。そして、これより後の時刻ではピークがバックグランドに埋もれて検出できなくなっている。一般に、ピークテーリングが発生する場合、さらにピークが検出できない場合には、TICCのデータを、GCユニット20の検出器で検出したクロマトグラムと比較することができなくなってしまうなどの問題がある。
ピークテーリングは、エミッタ60に吸着した試料や不純物が、焼き出し電流を流しても十分に離脱できなかったために生じている。特に、保持時間が長く沸点が高い成分については、30mAの焼き出し電流値で実現する焼き出し温度よりも高い沸点を有しており、焼き出しを行ってもエミッタ60に吸着しつづけてしまい、ピークテーリングの原因となる。
これに対し、図5(b)に示した例では、7.71分後のピーク(これは図5(a)における7.72分後のピークと同じ成分である)にピークテーリングが発生していないだけでなく、15.54分後のピークに至るまでピークテーリングが発生していない。しかし、16.38分後のピーク及びそれ以降のピークについては、ピークテーリングが発生していることがわかる。
図5(b)の例で流された焼き出し電流50mAは、図5(a)の例で流された焼き出し電流30mAの5/3倍である。したがって、図5(b)の例でエミッタ60に発生するジュール熱は電流を2乗した25/9倍であり、焼き出しの期間における冷却作用を無視すれば、焼き出しによって上昇する温度は25/9倍程度と見積もられる(ただし、実際には冷却の効果によってここまでは温度上昇比率は大きくない)。このため、沸点が高い成分もエミッタ60から離脱することが可能となり、ピークテーリングが大幅に減少している。ただし、16.38分後のピークの成分及びそれ以降の成分については、さらに高い沸点を有していると考えられ、これらのピークテーリングを無くすためには、さらに大きな焼き出し電流を流すことが必要となる。
注意すべきは、大きな焼き出し電流を流したときには、MSユニット30で検出できるイオン数が減少することである。図5(a)と図5(b)の縦軸から明らかなように、図5(b)の場合には図5(a)の場合に比べて検出できたイオン数が約1/10に減少している。したがって、例えば、図5(b)における16.38分後のピークのピークテーリングを無くすために、全ての期間においてさらに大きな(例えば60mAの)焼き出し電流値を設定することは好ましくないと言える。
そこで、例えば、図5に示した例では、6.14分後付近までは焼き出し電流を30mAとし、15.54分後付近までは50mAとし、その後はさらに高い電流を流すことが考えられる。これにより、測定の全期間を通じて、ピークテーリングの発生の防止または抑制と、分析感度の向上(強度値の増加)を図ることができる。このような処理を実現するため、本実施形態では、次に述べるように、焼き出し電流値を次第に増加させることが可能となっている。これにより、例えば、沸点が低い成分には小さな焼き出し電流値による低温での焼き出しを行い、沸点が高い成分には大きな焼き出し電流値による高温での焼き出しを行うことが可能となる。
(3)焼き出し電流の設定
(3−1)焼き出し電流の電流値の変更
最初に、図6Aと図6Bを参照して、焼き出し電流の設定について説明する。図6Aと図6Bは、PCユニット40の表示部42に表示されたMSユニット30の設定画面の例である。図6Aの設定画面90aは、FI法によるイオン化の設定を行うためのものである。項目92には、エミッタ60の型番等が入力される。ここでは「Type A」が入力されている。エミッタ60は、製品によってその電気抵抗値や熱容量が異なるため、ある電圧を印加した場合に流れる焼き出し電流の値や、エミッタ60の温度が変わることから、メーカ名や型番等を正しく入力する必要がある。
項目96は、焼き出し電流の詳細を設定するものである。「Flashing at solvent delay end」では、ガスクロマトグラフ質量分析装置10での測定を開始してからしばらくはGCユニット20から試料が出てこないため、待ち時間を設定している。この待ち時間経過後には、1度、非常に高い焼き出し温度でエミッタ60がクリーニングされて、測定が開始される。「Flashing every spectra recording」は、測定の期間中にわたって間欠的に焼き出し電流を流すことを意味している。具体的にどの程度の時間間隔で焼き出し電流を流すかの設定は、図示した画面とは別の画面で行われる。そして、default 下の「Flashing Time [msec] 30」及び「Flashing Current [mA] 35」は、焼き出し電流値と焼き出し時間のデフォルト値(初期値)設定を35mA及び30ミリ秒としたことを示している。「Flashing after run」は、一連の試料が注入された後に焼き出しを行うことを意味しており、無人で連続的に複数回の測定を行うような場合に利用される。
項目98では、焼き出し電流の値などの設定を受け付けるとともに、設定結果の表示を行っている。図示した例では、「Flash at solvent delay end」と「Flash after run」のときの焼き出し電流を「40mA」とすること、通常はエミッタ60には「0mA」の電流を流すこと(つまり電流を流さないこと)などが入力されている。「Wait Time」は、焼き出し電流を流し終わってからどの程度の時間が経過した後に積算を再開するかを示すものであり、設定結果がグラフ表示されている。また、焼き出し電流を流す時間間隔(インターバル)は、質量分析の信号を検出するために設定される期間(図4の(d)積算対象期間に相当)を含んで定義されており、図示しない別の画面で設定される。これらの設定は、Saveボタン97aを押すことで図1のパターンデータ格納部54に記憶され、分析開始時に、PCユニット40から焼き出し電流制御部38に指示が行われる。
図6Bの項目94中の項目93は、エミッタ60に流す焼き出し電流の数値設定表である。ここでは、焼き出し電流値(Flashing Current [mA])を、最初は比較的小さな値である5mAに5分間維持(図中Hold Time [min] と表示)し、途中から徐々に昇電流率(図中Rate [mA/min] と表示)1.5mA/分で20分間増加(Step 1)させ、最後に増加して到達した値35mAで5分間維持する設定(Step 2)がなされている。そして、項目93の数値設定表に合致したグラフ95が表示されている。なお、図6Bの項目93と同様の数値設定表は、後述するように、図7から図14においても表示され、参照されている。
ユーザは、項目91(File Name)の欄にファイル名(図示した例ではDemoFIP)を入力することで、設定内容をそのファイルに保存することができる。具体的には、図6BのSaveボタン97bを図示省略したマウス等でクリックすることで、設定内容が例えばテキスト形式で保存される。そして、そのファイルを参照した測定を図示しない別画面で指示した場合に、PCユニット40は、そのファイルの設定内容に従って、エミッタ60の焼き出しを行うよう焼き出し電流制御部38に指令を出すことになる。なお、ここでは項目93に値を入力してファイルを作成する例を示したが、例えば、別のコンピュータ等で作成されたファイルを図1のパターンデータ格納部54に予め格納しておき、項目91にそのファイル名を入力することで呼び出てもよい。呼び出した結果は、図6Bの項目93のように画面表示させてもよいし、その内容を修正できるようにしてもよい。
次に、図7〜図13を参照して、図6Bの項目94で設定する焼き出し電流値の例について説明する。
図7は、焼き出し電流値を一定に維持する場合の設定例である。ここでは、ユーザが、複数の焼き出し電流値のパターンデータから、図7のグラフ102に示すデータを選択したことを想定している。そして、その選択を受け付けたパターン設定部50では、数値設定表100を表示してユーザに具体的な電流値の入力を促している。図示した例では、焼き出し電流値(Flashing Current)が40mAに設定されている。例えば、試料中に含まれる各成分の沸点があまり違わないような場合には、このパターンデータを用いて測定を行うようにしてもよい。なお、焼き出し電流を流す焼き出し時間、焼き出し電流を流す時間間隔などは、前述の通り、別途設定される。
図7に図示したグラフ102には、数値設定表100に入力された値を反映した焼き出し電流値が表示されている。ここでは、35分間の測定時間にわたって、設定された焼き出し時間及び時間間隔で40mAの焼き出し電流が流される。
図8は、焼き出し電流を段階的に上昇させる場合の設定例である。ユーザがこのパターンデータを選択した場合には、図示した数値設定表110が表示され、数値の入力が促される。ここでは、0分から10分までは、焼き出し電流値(Flashing Current)を10mAに設定し、10分から20分までは焼き出し電流値(Flashing Current)を20mAに設定し、20分から30分までは焼き出し電流値(Flashing Current)を30mAに設定する入力がなされている。そして、グラフ112には、この設定に従った焼き出し電流値の時間変化が描画されている。この例では焼き出し電流値を、初期から2段階上昇させているが、数値設定表110への入力を変えることで1段階の上昇、あるいは3段階以上の上昇を設定することも可能である。
この設定パターンを用いれば、図5に示した実験例についても、最適性を高めた焼き出し電流の設定を行うことができる。例えば、開始から6〜7分後まではFlashing Currentを30mA、Hold Time 6から7分に設定し、15〜16分後まではFlashing Currentを50mA、Hold Time 8から10分に設定し、その後はFlashing Currentを70mA、Hold Timeを10分とすることで、全期間を通じて明瞭かつ大きなピークを得ることが期待できる。
図9は、焼き出し電流値を連続的に上昇させる場合の設定例である。ユーザがこのパターンデータを選択した場合には、数値設定表120が表示される。そして、数値設定表120には、焼き出し電流値の昇電流(Rate)を1mA/minの比率で設定し、開始時に0mA、最終時に30mAとする設定がなされている。この結果、グラフ122に描画されたように、焼き出し電流は、初期には0mAで30分後には30mAになるように時間的に一定比率で増加することになる。ここで、エミッタの焼き出しは、図4に示したように一定時間間隔での焼き出しを1サイクルとして繰り返されることから、1分間にn回(nサイクル)のエミッタの焼き出しを行うことになる。すなわち、1mA/minの昇電流の設定は、nサイクル当たり1mAの比率で昇電流を行うことを意味する。この場合、1分間(nサイクル)経過ごとに焼き出し電流値1mAを増加させるように、階段状に変化する関数で近似するように制御するものとする。従って、Rate欄に1の代わりに2/2と記載することで、2分間は焼き出し電流を変化させず、2分間経過する毎に焼き出し電流を2mA増加させるように、図1の焼き出し電流制御部38がイオン源32のエミッタを制御する態様も考えられる。
なお、図10以降の例においても、同様にして、昇電流比率の時間をサイクル数に換算して、所定サイクル数経過するごとに焼き出し電流を変化させるものとする。このように、実際の焼き出し電流制御部38の焼き出し電流電源70の制御では、単位時間当たりの昇電流比率を、所定サイクル数当たりの焼き出し電流の増加分として近似した制御を行うことが可能である。ただし、変形例として、1サイクル経過ごとに焼き出し電流値を微増させる制御を行うことも可能である。図9の例では、1サイクル経過する毎に、エミッタの焼き出し電流を「1/n」mA増加させることで、1mA/minの増加を行うことになる。なお、焼き出し電流値の連続的な上昇値の設定は、時間に対して非線形的(例えば、サインカーブによって元の値と後の値を滑らかに繋ぐパターンが挙げられる)に行うことも可能である。
図10は、焼き出し電流を一定値で開始し、途中では一定比率で上昇させ、最後に一定値に維持する場合の設定例である。このパターンが選択された場合には、数値設定表130に数値を入力することになる。図示した例では、焼き出し電流の昇電流(Rate)を1.5mA/minとし、開始から5分間は5mA、最後の5分間は35mAとする設定がなされている。グラフ132は、この設定に従った焼き出し電流値(Flashing Current)を表示している。
図11は、焼き出し電流値を、一定値での維持と、段階的な上昇と、連続的な上昇とを組み合わせて制御する場合の設定例である。数値設定表140では、Initial欄において開始から10分間は上昇させず最終的に10mAになるようにすること(すなわち、開始から10分間は10mAに維持すること)、Step 1欄において10分後から10分間は20mAに維持すること、Step 2欄において20分後からは4mA/minで電流を上昇させること、Step 3欄においてその後に15分間40mAで維持することが設定されている。グラフ142は、この設定に従った焼き出し電流値の変化を表示している。
図12は、焼き出し電流値を、数分の時間周期で振動させながら上昇させる場合の設定例である。数値設定表150では、焼き出し電流値は、開始時に0mA(Initial)、最終的に30mAとなるように、1mA/minの比率(Rate)で30分間(Hold Time)連続的に上昇させる設定(Step 1)をした上で、さらに周期(Period)5分で振幅(Amplitude)5mAの三角関数型の振動を重ね合わせる設定がなされている。この設定では、グラフ152に示すように、焼き出し電流値は5分の周期で増加と減少を繰り返しつつ次第に値を増加させている。
図13は、焼き出し電流値を、GCユニット20のオーブン22の昇温パターンと同様に設定する場合の例である。ここでは、オーブン22は、30分間にわたって、時間変化量が一定となるように線形的に温度上昇する設定がなされているものとする。数値設定表160では、Rate欄において、「ガスクロマトグラフの昇温パターンと同様のパターンで昇電流を設定する」(ここではGCと表示)が入力あるいは選択(Step 1)されている。そして、開始時に0mA(Initial)、最終的に30mAの焼き出し電流値(Flashing Current)を設定(Step 2)している。この結果、グラフ162に示すように、焼き出し電流値はガスクロマトグラフの昇温時間に同期して(ここでは30分間かけて)、0mAから30mAまで線形的に上昇している。
(3−2)焼き出し電流の焼き出し時間の変更
続いて、焼き出し時間を変更する例について説明する。上述の通り、焼き出し時間(すなわち通電時間)を変更することによっても、焼き出し電流の電流量を増加させ、さらには焼き出し温度を上昇させることが可能である。焼き出し時間の変更は、図6Bで示した設定画面90bに類似した設定画面を用意して設定することができる。すなわち、ユーザは、焼き出し電流値は一定(例えば40mA)に設定した上で、焼き出し時間のパターンデータを選択して焼き出し時間を変更する。
図14は、ユーザが焼き出し時間を段階的に上昇させるパターンデータを選択した場合における設定例を示している。この場合、図示した数値設定表170が表示され、数値の入力が促される。ここでは、0分から10分までは、焼き出し時間(Flashing Time)を10ミリ秒に設定(Initial)し、10分から20分までは焼き出し時間を20ミリ秒に設定(Step 1)し、20分から30分までは焼き出し時間を30ミリ秒に設定(Step 2)する入力がなされている。また、各焼き出し時間の保持時間(Hold Time)は10分として入力されている。そして、グラフ172には、この設定に従った焼き出し時間の時間変化が描画されている。図14においては、焼き出し時間を測定時間内に2段階上昇させているが、数値設定表170への入力を変えることで1段階の上昇、あるいは3段階以上の上昇を設定することも可能である。
焼き出し時間の変更は、この他にも様々なパターンで行うことが可能である。具体例としては、図9〜図13に示した焼き出し電流値の変更パターンと同様にして、焼き出し時間の変更パターンを設定する態様が挙げられる。すなわち、図9に対応した焼き出し時間を連続的に上昇させる態様、図10に対応した焼き出し時間を一定値で開始し、途中では一定比率で上昇させ、最後に一定値に維持する態様をとることができる。また、図11に対応した焼き出し時間を一定値での維持と、段階的な上昇と、連続的な上昇とを組み合わせて制御する態様、図12に示した焼き出し時間を数分の時間周期で振動させながら延長する態様、図13に対応した焼き出し時間をGCユニット20のオーブン22の昇温パターンと同様に設定する態様もとることができる。
図7から図14に示した数値設定表は、前述したように図6Bの項目91にファイル名を入力して、図6BのSaveボタン97bを押すことで、パターンデータ格納部54に保存される。これらの数値設定表を用いて、Flashing Currentや Flashing Timeを変更しながらGCユニット20とMSユニット30で質量分析する際には、図示しない別画面上で、呼び出したい数値設定表のファイル名(図6Bの項目91に入力したファイル名)を入力または選択する。これにより、焼き出し電流制御部38は、質量分析中に、当該ファイルの設定に応じて、イオン源32のエミッタの焼き出し電流値及び焼き出し時間を制御する。このように数値設定表を指定して行う質量分析では、図6Aで初期値設定したFlashing CurrentとFlashing Timeの値に代わって、これらの数値設定表の値が優先的に使用される。他方、数値設定表を指定しないで行う質量分析では、図6Aで初期値設定したFlashing CurrentとFlashing Timeの値が用いられる。
焼き出し時間の変更は、焼き出し電流値の変更と組み合わせて行ってもよい。この場合には、図6Bに示した設定画面90bに代えて、焼き出し電流値と焼き出し時間の両方を変更することができる設定画面を用意することで、ユーザは簡単に設定を行うことが可能となる。焼き出し電流値の変更パターンと、焼き出し時間の変更パターンは類似するもの(例えば、図8に示した焼き出し電流値のパターンと図14に示した焼き出し時間のパターン)を使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。
(4)質量分析結果
続いて、図15と図16を参照して、焼き出し電流の違いによる質量分析結果の違いについて説明する。
図15は、C10〜C40までのn−Alkaneを含む試料について、焼き出し電流値の違いによるピーク強度(ここでは、ピークの高さを強度としているが、ピーク面積を強度としてもよい)を示した図である。「B.P.」は沸点を表しており、「R.T.」はGCユニット20における保持時間を表している。例えば、C10のアルカンの沸点は174.1℃であり、保持時間は2.51分である。n−Alkaneは、炭素数が大きくなるほど沸点が高くなり、かつ、(実験に使用したカラムの場合には)保持時間が長くなる。
図15における「5mA」「10mA」・・・「50mA」の欄は、焼き出し電流を5mA、10mA、・・・50mAに固定した状態における各アルカンのTICCピーク強度を示している。例えば、5mAでは、C10のアルカンのピーク強度は1842380であり、C12のアルカンのピーク強度は4237300である。5mAのデータのうち、符号180で示した白地の領域のデータ(すなわちC10のアルカンのデータ)は、ピークテーリングが生じず、検出精度が高かったことを示している。また、符号182で示した薄いグレーの領域のデータ(すなわちC12〜C36までのアルカンのデータ)は、ピークがみられたが、ピークテーリングが発生していることを示している。そして、符号184で示した濃いグレーの領域のデータは、ピークが検出できなかったことを示している。
焼き出し電流を10mAにした場合には、C10とC12のデータは符号186で示した黒地に白字の領域にある。この領域はピークテーリングがなく、かつ、全ての焼き出し電流値の結果中、最も大きな値が得られたものであることを示している。したがって、10mAの場合には、C10とC12については、イオン化が高効率に行われ、かつ、検出精度が高かった最適な状態であったと言うことができる。なお、10mAの例では、C14〜C36のアルカンについてはピークが検出されたもののピークテーリングが発生していたことがわかる。また、C38とC40については、ピークが検出できずかつピークテーリングが発生したことを示している。
このように50mAまでの全ての焼き出し電流におけるTICCピーク強度を見た場合、C10、C12のアルカンは10mAの焼き出し電流値が最適であり、C14のアルカンは25mAの焼き出し電流値が最適であり、C16のアルカンは35mAの焼き出し電流値が最適であると言える。さらに、C18、C20のアルカンは40mAの焼き出し電流値が最適であり、C22、C24のアルカンは45mAの焼き出し電流値が最適であり、C26〜C30のアルカンは50mAの焼き出し電流値が最適であると言える。したがって、各アルカンの保持時間において、この焼き出し電流値を与えるような焼き出しを行えば、ピーク強度が最大となり、かつ、ピークテーリングが生じないデータが得られるものと推測される。
本実施形態では、例えば注入される試料の沸点が時間とともに高温化する場合には、ユーザは図8〜図11に示した焼き出し電流値のパターンデータを選択し、かつ、数値を好ましい値に設定することで、最適な、あるいは最適に近い焼き出し電流値を与えることができる。また、注入される試料の沸点が時間とともに高温化する傾向にあるがその過程で若干沸点が下がるような場合には、図12に示した焼き出し電流値のパターンデータを選択するようにしてもよい。もちろん、こうしたパターンデータの選択の判断は、図15に示したようなデータを入力した上で、PCユニット40に行わせることもできる。また、毎回、同じような成分をもつ試料について質量分析を行う場合には、最適な電流値のパターンデータを保存しておくことで、迅速にそのパターンデータを呼び出して測定を行うことが可能となる。
ただし、一般的な場合には、質量分析を行う前の段階では、試料にどのような成分が含まれているかを把握できておらず、各成分の保持時間も、各成分の最適な焼き出し電流値もわからない。しかし、このような場合であっても、例えば、沸点の順に成分を分離するカラムからの試料を質量分析する場合には、測定の開始時には比較的低い焼き出し電流値とし、やがて焼き出し電流値を上昇させることが有効であると推測される。そこで、ユーザは、図8〜図12に示した焼き出し電流値のパターンデータを選択し、数値を推定的に設定することで、比較的良好な焼き出し電流値を与えることができると考えられる。また、沸点の推測が困難な場合などには、図13に示したように、焼き出し電流値を、GCユニット20のオーブン22の昇温パターンと同様に設定することも有効である。
さらに、ある試料について質量分析を行っている最中に、その分析状態を評価しながら焼き出し電流値を変更するようにしてもよい。PCユニット40のピーク評価部52による評価機能を利用することで、このような臨機応変な処理が可能となる。
図16は、図15の場合と同様に、C10〜C40までのアルカンを含む試料について得られたTICCのピーク強度を示している。ただし、この実験では、焼き出し電流値を40mAに固定し、焼き出し電流を通電する焼き出し時間を30ミリ秒、40ミリ秒、50ミリ秒、60ミリ秒とする4つの場合について分析している。焼き出し電流の通電周期はいずれも300ミリ秒である。
焼き出し時間が30ミリ秒である場合、C10〜C20アルカンのデータは、符号190で示した白地の領域にあり、ピークテーリングが発生していない。しかし、C22〜C40のアルカンのデータは、符号192で示した薄いグレーの領域にあり、ピークテーリングが発生している。
焼き出し時間を40ミリ秒にした場合、C10〜C24のアルカンについては、ピークテーリングが発生しなくなる。また、焼き出し時間を50ミリ秒にした場合には、C10〜C30のアルカンについては、ピークテーリングが発生しなくなり、焼き出し時間を60ミリ秒にした場合にはC10〜C36のアルカンのピークテーリングが発生しなくなる。
このように、焼き出し電流を一定にした場合でも、焼き出し時間を長くすることで、ピークテーリングの発生を防ぎ、検出精度を高めることが可能となる。したがって、(3−2)に記載したように、測定時間中に焼き出し時間を変化させる態様が有効となる。一般に、焼き出し電流を一定にした場合のジュール熱は、焼き出し時間に比例することから、冷却作用を無視した場合には、エミッタの温度の上昇は焼き出し時間に比例することが想定される。ただし実際の温度を正しく見積もる場合にはこの間の冷却効果も考慮することになる。
以上の説明では、理解を容易にするため、具体的な態様について示した。しかし、これらは実施形態を例示するものであり、他にも様々な実施形態をとることが可能である。
10 ガスクロマトグラフ質量分析装置、20 GCユニット、22 オーブン、24 カラム、28 温度制御部、30 MSユニット、32 イオン源、34 質量分析部、36 信号処理部、38 焼き出し電流制御部、40 PCユニット、42 表示部、44 入力部、46 制御部、48 分析処理部、50 パターン設定部、52 ピーク評価部、54 パターンデータ格納部、60 エミッタ、60a ウィスカー、62 ピン、64 絶縁体、66 カソード、68 電界用電源、70 焼き出し電流電源。

Claims (9)

  1. 注入される試料に電界を付与して、当該試料をイオン化させるエミッタと、
    前記エミッタに通電される焼き出し電流を短時間間隔でオン/オフすることで、前記エミッタを高温化させる焼き出し処理を、前記試料の注入期間中に短時間間隔で繰り返す焼き出し処理部と、
    前記エミッタによってイオン化された試料の質量分析を行う質量分析部と、
    を備え、
    前記エミッタを含むイオン源には、ガスクロマトグラフによって分離された前記試料が順次注入され、
    前記焼き出し処理部は、ガスクロマトグラフによって時間的に分離された前記試料を質量分析によってトータルイオン電流として観測することで得られるTICC(トータルイオンカレントクロマトグラム)のピークにピークテーリングが生じないように、長期的に前記焼き出し電流のオン時に前記焼き出し電流を増大させることで、前記高温化の際に前記エミッタが到達する焼き出し温度を前記注入期間中に長期的に上昇させる、ことを特徴とする質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置において、
    前記焼き出し処理部は、前記エミッタに焼き出し電流を通電することにより前記焼き出し処理を行い、前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させることで、前記焼き出し温度を長期的に上昇させる、ことを特徴とする質量分析装置。
  3. 請求項に記載の質量分析装置において、
    前記焼き出し処理部は、前記焼き出し電流の電力量を長期的に段階的に増大させる、ことを特徴とする質量分析装置。
  4. 請求項に記載の質量分析装置において、
    前記焼き出し処理部は、前記短時間間隔よりも長く、かつ、前記注入期間に比べて短い時間間隔で変動させながら、前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる、ことを特徴とする質量分析装置。
  5. 請求項に記載の質量分析装置において、
    さらに、前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる複数の電力量増大パターンをユーザに提示する提示手段と、
    ユーザが選択した電力量増大パターンを受け付ける受付手段と、
    を備え、
    前記焼き出し処理部は、前記受付手段が受け付けた前記電力量増大パターンに従って、前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる、ことを特徴とする質量分析装置。
  6. 請求項に記載の質量分析装置において、
    さらに、前記質量分析部によって得られた前記イオン化された試料の時間的ピークを評価して、前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる電力量増大パターンを選択する選択手段を備え
    前記時間的ピークは、検出した時間軸上に現れるイオンの強度のピークである、
    ことを特徴とする質量分析装置。
  7. 請求項に記載の質量分析装置において、
    前記焼き出し処理部は、前記焼き出し電流の焼き出し時間の延長及び電流値の増大の一方または両方を行うことで前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる、ことを特徴とする質量分析装置。
  8. 請求項に記載の質量分析装置と、
    温度制御したカラムを有し、当該カラムで分離した前記試料を順次前記質量分析装置に注入するガスクロマトグラフと、
    を備え、
    前記焼き出し処理部は、前記カラムの温度制御パターンに応じて、前記焼き出し電流の電力量を長期的に増大させる、ことを特徴とするガスクロマトグラフ質量分析装置。
  9. 注入される試料に電界を付与して当該試料をイオン化させるエミッタの制御装置であって、
    前記エミッタに通電される焼き出し電流を短時間間隔でオン/オフすることで、前記エミッタを高温化させる焼き出し処理を、前記試料の注入期間中に短時間間隔で繰り返す焼き出し処理部を備え、
    前記エミッタを含むイオン源には、ガスクロマトグラフによって分離された前記試料が順次注入され、
    前記焼き出し処理部は、ガスクロマトグラフによって時間的に分離された前記試料を質量分析によってトータルイオン電流として観測することで得られるTICCのピークにピークテーリングが生じないように、長期的に前記焼き出し電流のオン時に前記焼き出し電流を増大させることで、前記注入期間中に長期的に前記焼き出し電流の電力量を増大させる、ことを特徴とする焼き出し電流制御装置。
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