以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
下記においては、アキューム装置を介して搬送される長尺帯状の基材が印刷された熱収縮性フィルムの両側縁を接合して折り畳んだ筒状の樹脂フィルムである例について説明する。ただし、これに限定されるものではなく、基材は、筒状でなくても良く、また、樹脂フィルム以外の材料、例えば、紙、布、金属等で構成されるものでもよい。
図1は、本発明の一実施形態であるアキューム装置10を含むフィルム処理システム1の全体構成を示す図である。図1(図2等でも同様)において、基材Sの搬送方向に沿った水平方向が矢印Xで示され、水平平面内で矢印Xに直交する方向が矢印Yで示され、矢印XおよびYにそれぞれ直交する鉛直方向が矢印Zで示される。
フィルム処理システム1は、長尺筒状の樹脂フィルムからなる基材Sを供給するフィルム供給部2と、フィルム供給部2から供給された基材Sに所定の処理を施す処理装置4と、所定の処理が施された基材Sをアキューム装置10を介して巻き取る巻取部5とを備える。
フィルム供給部2は、基材Sが巻回された操出リール3を備える。操出リール3は、矢印Aに回転駆動されながら基材Sを繰り出す。
フィルム供給部2から繰り出された基材Sは、処理装置4に供給される。処理装置4は、フィルム供給部2から繰り出された基材Sに所定の処理を施すものである。ここで、「所定の処理」には、基材Sを撮影して画像処理することによって基材Sの検査を行ったり、あるいは、基材Sに印刷やミシン目形成等の加工を施すことが例示される。
処理装置4から送り出された、シート状に折り畳まれた筒状の基材Sは、アキューム装置10を介して、巻取部5に搬送される。巻取部5は、矢印B方向に回転駆動される巻取リール6によって巻き取られる。また、巻取部5には、巻取リール6の外周に対向する位置に基材巻取量検出センサ7が設けられている。この基材巻取量検出センサ7は、巻取リール6に巻き取られた基材Sの巻取り量が所定量に達したことを検出するものである。基材巻取量検出センサ7による検出値は、信号として後述するアキューム装置10のコントローラ90に送信される。
アキューム装置10は、基材Sの搬送方向に沿って上流側から順に、搬入部20、張力付与部30、アキューム部50、搬出部80およびコントローラ90を備える。
搬入部20は、処理装置4から送り出された基材Sをアキューム装置10内に搬入する機能を有する。搬入部20は、アキューム装置10内において基材搬送方向の最上流側に設置されている。搬入部20は、インフィードモータM1によって回転駆動される駆動ローラ22と、駆動ローラ22との間にニップを形成しつつ従動回転可能な従動ローラ24とを備える。搬入部20では、インフィードモータM1は例えばサーボモータによって好適に構成される。これにより、搬入部20においてインフィードモータM1により駆動ローラ22が回転駆動されると、駆動ローラ22および従動ローラ24によって挟持された基材Sがアキューム装置10の張力付与部30へと送り出される。
また、搬入部20には、従動ローラ24の回転数を検出する回転数検出センサ26が設けられている。この回転数検出センサ26による検出値は、信号S1としてコントローラ90に送信され、基材Sの搬入速度の算出に用いることができる。ただし、インフィードモータM1自体が回転数を検出する機能を有する場合には、インフィードモータM1の回転数に基づいて駆動ローラ22の回転数を導出できることから、インフィードモータM1の回転数に基づいて基材Sの搬入速度を算出することができる。したがって、この場合には回転数検出センサ26を省略してもよい。
搬出部80は、基材Sをアキューム装置10から搬出する機能を有する。搬出部80は、アキューム装置10内において基材搬送方向の最下流側に設置されている。搬出部80は、アウトフィードモータM2によって回転駆動される駆動ローラ82と、駆動ローラ82との間にニップを形成しつつ従動回転可能な従動ローラ84とを備える。搬出部80では、アウトフィードモータM2は例えばサーボモータによって好適に構成される。これにより、搬出部80においてアウトフィードモータM2により駆動ローラ82が回転駆動されると、駆動ローラ82および従動ローラ84によって挟持された基材Sがアキューム装置10から巻取部5へ向けて搬出される。
また、搬出部80には、従動ローラ84の回転数を検出する回転数検出センサ86が設けられている。この回転数検出センサ86による検出値は、信号S2としてコントローラ90に送信され、基材Sの搬出速度の算出に用いることができる。ただし、アウトフィードモータM2自体が回転数を検出する機能を有する場合には、アウトフィードモータM2の回転数に基づいて駆動ローラ82の回転数を導出できることから、アウトフィードモータM2の回転数に基づいて基材Sの搬出速度を算出することができる。したがって、この場合には回転数検出センサ86を省略してもよい。
張力付与部30は、搬入部20と搬出部80との間であって基材搬送方向に関して上流側に設置されている。すなわち、張力付与部30は、搬入部20に対して基材搬送方向下流側に隣り合って設置されている。
張力付与部30は、互いに間隔をおいて平行に配置された複数の回転可能な固定ローラ32と、この固定ローラ32に対して平行で且つ固定ローラ32に接近および離間するように移動可能に配置される複数の回転可能な可動ローラ34とを備える。本実施形態では、固定ローラ32および可動ローラ34がそれぞれ3本ずつ設けられている例が示される。ただし、張力付与部30は、これに限定されるものではなく、少なくとも2本の固定ローラ32と、これら2本の固定ローラ32の間に対応する下方位置に鉛直方向又は上下方向に移動可能に設けられた少なくとも1本の可動ローラ34とを含んで構成されてもよい。
搬入部20から送り出された基材Sは、回転可能に配置された支持ローラ36の外周面によってガイドされて、搬送方向が水平方向から鉛直方向に変更されている。そして、基材Sは、張力付与部30において、固定ローラ32と可動ローラ34との間を交互に行き来するように巻き掛けられている。
図2は、図1に示したアキューム装置10の張力付与部30を基材搬送方向下流側から見た状態を示す図である。図1および図2を参照すると、各固定ローラ32の両端部は、アキューム装置10の固定フレーム12,14によって回転可能に支持されている。また、各可動ローラ34の両端部は、支持部材38によって回転可能に支持されている。支持部材38は、アキューム装置10に固定配置された図示しないガイドレールにより矢印E方向(または上下方向Z)に沿って移動可能に設けられている。可動ローラ34および支持部材38によって可動ユニット40が構成されている。なお、以下において、可動ローラ34を「ダンサーローラ」ということがある。
可動ローラ34を支持する支持部材38において、Y方向(幅方向)の一端部にはワイヤ42の一端部が連結されている。ワイヤ42は、支持部材38の一端部から上方へ延びて、2つの支持プーリ44a,44bの各外周面を経由して下方に方向が変更されている。そして、ワイヤ42の他端部は、張力モータM3の回転軸に連結されたテンションプーリ46に巻き掛けられている。張力モータM3は、アキューム装置10を構成する固定フレーム16に固定されている。
このように構成される張力付与部30では、可動ユニット40に対して固定ローラ32から離間する方向に作用する重力によって基材Sに所定の張力が付与されるように構成されている。具体的には、張力付与部30において、ワイヤ42の一端部側には可動ローラ34および支持部材38の重量によって下向きの張力F1が作用する。これに対し、ワイヤ42の他端側には、コントローラ90により張力モータM3がトルク制御されることによって下向きの張力F2が作用している。ここで、張力F2は張力F1より小さく設定される。これにより、基材Sが所定速度で搬送される定常運転時には、可動ユニット40に対して下向きの荷重Ft=F1−F2が作用し、その結果、固定ローラ32と可動ローラ34との間に架け渡された状態で連続搬送される基材Sに所定の張力が付与されることになる。
本実施形態では、上記のように張力モータM3をトルク制御することによって、可動ユニット40に作用させる荷重Ftの調整を迅速かつ正確に行うことができる。したがって、基材Sの種類(例えば、厚み、材質等)が変更された際に所望の張力を付与するための調整作業を容易に行うことができる。ただし、張力付与部30において基材Sに所定の張力を付与するための構成はトルク制御のモータを用いる構成に限定されるものではなく、例えば、可動ユニット40の自重だけで荷重Ftを設定してもよいし、支持部材38にウエイトを付けて荷重Ftを調整できるようにしてもよいし、あるいは、張力モータM3に代えてワイヤ42の他端部にカウンタウエイトを取り付けて張力F2を調整できるようにしてもよい。
図1に示すように、張力付与部30には、可動ユニット40の支持部材38の高さ位置を検出するための高さ位置センサ39が設けられている。高さ位置センサ39は、検出結果を信号としてコントローラ90に送信する。コントローラ90は、後述するように、高さ位置センサ39の検出結果に基づいて可動ユニット40の高さ位置、すなわち可動ローラ34の高さ位置を一定に維持するように制御を行う。
高さ位置センサ39は、図2に示すように、例えば、支持部材38に連結されたワイヤ48の操出長さを検出するエンコーダによって構成することができる。ただし、高さ位置センサ39は、これに限定されるものではなく、例えば、発光素子および受光素子を備えた光学式センサ、支持部材38に接触して可動ユニット40の高さ位置を検出する接触式センサ等の他の方式のセンサで構成されてもよい。
次に、図1に加えて、図3および図4を参照して、アキューム装置10のアキューム部50について説明する。図3は、アキューム部50の駆動機構を示す側面図である。図4は、図3におけるC−C線矢視図である。
図1に示すように、アキューム部50は、互いに間隔をおいて平行に配置された複数の回転可能な上側ローラ(第1ローラ)52を含む上側ローラ群(第1ローラ群)54と、上側ローラ群54の下方において上側ローラ群54に対して接近および離間するように移動可能に配置される複数の下側ローラ(第2ローラ)56を含む下側ローラ群(第2ローラ群)58とを備える。本実施形態では、アキューム部50は、8本の上側ローラ52と、各上側ローラ52の間に対応する下方位置にある7本の下側ローラ56を含む例が示される。ただし、上側ローラ52および下側ローラ56の本数はアキューム装置10において蓄積したい基材長や基材搬送速度等に基づいて適宜に変更可能である。
図1および図3に示すように、各上側ローラ52は、その両端部が一対の上側支持部材60において櫛歯状にそれぞれ突出するアーム部61の先端部に回転可能に支持されている。また、各下側ローラ56は、その両端部が一対の下側支持部材62において櫛歯状にそれぞれ突出するアーム部63の先端部に回転可能に支持されている。アキューム部50において基材Sは、上側ローラ52と下側ローラ56との間を交互に行き来するように巻き掛けられた状態で矢印方向に搬送される。なお、図1において、各一対の上側支持部材60および下側支持部材62の各一方のみが示されている。
また、図3に示すように、アキューム部50は、上側ローラ群54および下側ローラ群58との間の距離を変更するように上側ローラ群54および下側ローラ群58を開閉動作させる駆動機構64を備える。駆動機構64は、上側用ボールねじ66Uおよび下側用ボールねじ66Lと、各ボールねじ66U,66Lの下端部にそれぞれ固定された上側用ギヤ68Uおよび下側用ギヤ68Lと、下側用ギヤ68Lの下部に同軸状に連結されるプーリ69と、下側用ギヤ68Lおよびプーリ69を回転駆動するアキュームモータM4とを含む。
上側用ボールねじ66Uには、上側支持部材60に一体的に形成されたナット部65Uが螺合している。また、下側用ボールねじ66Lには、下側支持部材62に一体的に形成されてナット部65Lが螺合している。さらに、各ボールねじ66U,66Lは、アキューム装置10の図示しない固定フレームによって互いに鉛直方向に沿って平行に且つ回転可能に支持されている。なお、図3(図4も同様)においては、見やすくするために2本のボールねじ66U,66LをX方向にずらして描いているが、2本のボールねじ66U,66LはY方向に揃う位置に設けられてもよい。
図3および図4に示すように、下側用ボールねじ66Lの下端部に連結されたプーリ69はタイミングプーリであることが好ましく、このプーリ69に架け渡される無端状のベルト70はタイミングベルトであることが好ましい。このようにタイミングプーリおよびタイミングベルトを用いることで、ベルトのスリップによるボールねじ66U,66Lの回転量のばらつきが生じるのを防止して、アキューム部50における上側ローラ群54および下側ローラ群58の開閉動作量を正確に制御することができる。
図3に示されるものからアキュームモータM4を除いたほぼ同様の構成の駆動機構が上側支持部材60および下側支持部材62の各上流側端部にも設けられている。そして、上記ベルト70は、アキューム部50の上流側端部に設置された駆動機構のプーリに架け渡されている。これにより、アキュームモータM4によってプーリ69が回転駆動されることによって、アキューム部50のX方向両側において各2本の上側用ボールねじ66Uおよび下側用ボールねじ66Lがそれぞれ回転駆動されるようになっている。
アキュームモータM4は、例えばサーボモータが好適に用いられる。アキュームモータM4は、コントローラ90からの指令に応じて回転駆動される。アキュームモータM4は、アキューム装置10の図示しない固定フレームに固定されている。
図4に示すように、駆動機構64において上側用ギヤ68Uと下側用ギヤ68Lとは、互いに噛合されている。これにより、アキュームモータM4によって下側用ボールねじ66Lが回転駆動されると、上側用ボールねじ66Uは反対方向に同じ回転量だけ回転することになる。その結果、下側用ボールねじ66Lにナット部65Lを介して取り付けられている下側ローラ群58は下降移動する一方で、上側用ボールねじ66Uにナット部65Uを介して取り付けられている上側ローラ群54は上昇移動する。すなわち、上側ローラ群54および下側ローラ群58は、互いに離間するように移動して、アキューム部50が開動作する。これにより、上側ローラ群54および下側ローラ群58間の距離が長くなって、アキューム部50において蓄積される基材Sの長さが長くなる。
これとは逆に、アキュームモータM4によって各ボールねじ66U,66Lが反対方向に回転駆動されると、下側ローラ群58は上昇移動する一方で上側ローラ群54は下降移動する。すなわち、上側ローラ群54および下側ローラ群58が互いに接近するように移動して、アキューム部50が閉動作する。これにより、上側ローラ群54および下側ローラ群58間の距離が短くなって、アキューム部50において蓄積される基材Sの長さが短くなる。
本実施形態におけるアキューム部50では、上側用ボールねじ66Uに連結された上側用ギヤ68Uと、下側用ボールねじ66Lに連結された下側用ギヤ68Lとを互いに噛合させた状態として、1つのアキュームモータM4によって各ボールねじ66U,66Lを回転駆動する構成としている。そのため、上側ローラ群54および上側支持部材60の総重量を支持するために上側用ボールねじ66Uに作用するトルクと、下側ローラ群58および下側支持部材62の総重力を支持するために下側用ボールねじ66Lに作用するトルクが、各ギヤ68U,68Lの噛合部において互いに打ち消し合う方向に作用することになる。したがって、軽いトルクで2本のボールねじ66U,66Lを回転させることができ、アキュームモータM4を小型化で安価なものにできる利点がある。
図5は、アキューム部50の各ローラに設けられるテンデンシー機構を示す斜視図である。また、図6は、アキューム部50において基材Sに作用する張力の傾向を示すグラフである。本実施形態におけるアキューム部50において、上側ローラ52および下側ローラ56は、図5に示すように、テンデンシー機構を備えるのが好ましい。このテンデンシー機構は、各ローラ52,56のローラ部分71が内周面においてシャフト72に固定された軸受部材73によって回転可能に支持されている。また、シャフト72は、ローラ部分71から突出した端部にプーリ74が取り付けられており、このプーリ74にベルト75が掛け渡されている。これにより、各ローラ52,56のローラ部分71が基材Sの走行によって矢印方向に回転するとき、図示しないモータによってベルト75を回転駆動させることによりシャフト72をローラ部分71と同じ回転速度で同方向に回転させることができる。その結果、軸受部材73によって生じる回転抵抗が実質的に解消されて、アキューム部50において多数の上側ローラ52および下側ローラ56の回転抵抗が累積的に付加されることによる基材Sの張力増大を抑制できる。
より詳しくは、図6に示すように、アキューム部50の入口(上流側)での基材Sの張力は、張力付与部30によって付与された所定の張力で一定になる。これに対し、アキューム部50の各ローラ52,56にテンデンシー機構を設けない場合、各ローラ52,56の軸受部材の回転抵抗が累積することによって、アキューム部50の出口(下流側)における基材Sの張力は、図6中の二点鎖線で示すように基材Sの搬送速度に比例して大きくなる傾向にある。この傾向は、基材Sの搬送速度が数百メートル/分といった高速になると、特に顕著になる。しかし、本実施形態のように各ローラ52,56にテンデンシー機構を設けることによって、アキューム部50の出口における軸受部材の回転抵抗に起因した基材Sの張力増加を小さく抑制することができる。したがって、後述する張力付与部30およびアキューム部50の制御による作用とともに、アキューム装置10における基材Sの張力変動の抑制に寄与することができる。
図1を再び参照すると、アキューム部50には、下側支持部材62の高さ位置を検出するホームポジションセンサ76が設置されている。ホームポジションセンサ76は、下側支持部材62および下側ローラ群58が定常運転時の所定の高さ位置にあるか否かを検出する機能を有する。ホームポジションセンサ76には、例えば、ポテンションメータ、リニアエンコーダ等のセンサを用いることができる。ホームポジションセンサ76による検出結果は、信号S3としてコントローラ90に送信される。
図1に示すように、コントローラ90は、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)、制御プログラム、各センサの検出データ等を記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置を含むマイクロコンピュータによって好適に構成される。コントローラ90は、各センサ7,26,39,76,86からの信号を受け取る。また、コントローラ90は、各モータM1,M2,M3,M4に信号を送信して、各モータの動作を制御する。また、コントローラ90は、操作パネル(図示せず)を備えてもよい。オペレータは、操作パネルを介してシステム100の稼働および停止、基材搬送速度の設定等を指示できる。
続いて、上述した構成を有するアキューム装置10の制御について図7ないし図10を参照して説明する。図7は、図1に示したコントローラ90において実行される定常運転制御の処理を示すフローチャートである。図8は、コントローラ90において実行されるアキューム動作制御の処理を示すフローチャートである。図9は、コントローラ90において実行されるアキューム動作制御の処理を図8に続いて示すフローチャートである。また、図10は、アキューム装置10におけるアキューム動作状態を示す図である。
まず、図7を参照して、アキューム装置10の定常運転制御について説明する。コントローラ90は、ステップS10において、張力モータM3に一定のトルクを掛けるように制御する。これにより、基材Sが搬入部20および搬出部80によって所定速度(例えば、数百メートル/分)で連続搬送されるとき、張力付与部30において所望の張力を基材Sに付与することができる。
続いて、コントローラ90は、ステップS12において、搬入部20のインフィードモータM1および搬出部80のアウトフィードモータM2を同期させて所定の一定速度で回転するように駆動する。これにより、フィルム処理システム1において、フィルム供給部2から繰り出されて処理装置4において所定の処理が施された基材Sが一定速度でアキューム装置10を経由して搬送されて、巻取部5において巻き取られる。
次に、コントローラ90は、ステップS14において、アキューム部50におけるアキュームモータM4をロックした状態にする。すなわち、この場合、アキューム部50では上側ローラ群54および下側ローラ群58は互いに接近した所定の位置関係に保たれることになる。
続いて、コントローラ90は、ステップS16において、ダンサーローラ位置、すなわち張力付与部30の可動ローラ34の位置が、所定高さより低いか否かについて判定する。この判定は、張力付与部30における高さ位置センサ39からの信号に基づいて行われる。そして、この判定において肯定判定されると(ステップS16でYES)、続くステップS18においてアウトフィードモータM2を加速させる。これにより、アキューム部50での各ローラ群54,58の開閉動作を行われないことから、アウトフィードモータM2の増速によって張力付与部30では可動ローラ34が上方に移動することになる。一方、上記ステップS16において否定判定された場合、すなわち、ダンサーローラ位置が所定高さより低くないと判定された場合、ステップS20においてアウトフィードモータM2の速度を減速する。
そして、コントローラ90は、続くステップS22において、定常運転の停止命令があるか否かを判定する。定常運転の停止命令は、例えば、巻取リール6による基材Sの巻取り量が所定量に達したことを検出した基材巻取量検出センサ7の検出信号に基づいてコントローラ90において生成される。また、上記定常運転の停止命令は、フィルム処理システム1の稼働自体を停止させる操作が行われたときにも生成される。
上記ステップS22において否定判定されると(ステップS22でNO)、上記のステップS12〜S22を繰り返し実行する。これにより、基材Sは張力付与部30で所定の張力を付与されつつ可動ローラ34が一定高さに維持された状態で、アキューム装置10を定常速度で連続搬送される。一方、上記ステップS22において、定常運転の停止命令があると判定された場合(ステップS22でYES)、コントローラ90は定常運転制御を終了する。
次に、図8および図9を参照して、アキューム装置10のアキューム動作制御について説明する。この制御は、巻取部5の基材巻取量検出センサ7の検出結果に基づいて、巻取リールを自動で又は手動で交換する場合に実行される。
図8に示すように、コントローラ90は、ステップS10において、張力モータM3に一定のトルクを掛けるように制御する。この処理は、上述した定常運転制御の場合と同じである。
続いて、コントローラ90は、ステップS23においてインフィードモータM1を定常運転時の一定速度で回転させる一方で、ステップS24においてアウトフィードモータM2を減速して停止させる。これにより、アキューム装置10において、基材Sの搬入が継続される一方で搬出が停止される。
続いて、コントローラ90は、ステップS26において、ダンサーローラ位置、すなわち、張力付与部30の可動ローラ34の高さ位置が、所定高さより低いか否かを判定する。この判定は、張力付与部30における高さ位置センサ39からの信号に基づいて行われる。そして、この判定において肯定判定されると(ステップS26でYES)、ステップS28において、アキュームモータM4を正転方向に駆動してアキューム部50を開動作させる。これにより、図10に示すように、アキューム部50において上側ローラ群54が上昇移動するとともに下側ローラ群58が下降移動する。その結果、搬出が停止される一方で搬入が継続されているために生じる基材Sの余裕分をアキューム部50が開動作することによって吸収および蓄積することができる。そのため、張力付与部30では、可動ローラ34の高さ位置を一定に維持して、基材Sに所定の張力が付与された状態を保つことができる。
コントローラ90は、続くステップS32において、アキューム開動作終了指令があるか否かを判定する。アキューム開動作終了指令は、例えば、巻取部5で巻取リールが交換されて基材Sの巻取り再開が可能になったことを基材巻取量検出センサ7からの信号に基づいて検出したときにコントローラ90において生成されてもよいし、あるいは、オペレータによって巻取リール交換終了の操作が行われたときにコントローラ90において生成されてもよい。
上記ステップS32においてアキューム開動作終了指令があると判定されない場合(ステップS32でNO)、コントローラ90は上記ステップS23〜S32を繰り返し実行する。この間に、ステップS26においてダンサーローラ位置が所定高さより低いと判定されない場合(ステップS26でNO)、ステップS30においてアキュームモータM4を逆転方向に駆動してアキューム部50を閉動作させる。ただし、アキューム動作、すなわち基材蓄積動作が継続している間、アキューム部50では所定の最大位置まで開動作が行われることになるため、上記ステップS30の処理は稀である。
上記ステップS32においてアキューム開動作終了指令があると判定されたとき(ステップS32でYES)、コントローラ90は、図9に示すように、ステップS34において、アウトフィードモータM2を定常速度より高い速度(例えば、定常速度の1.2倍)まで加速させる。
そして、コントローラ90は、続くステップS36においてダンサーローラ位置が所定高さより低いか否かを判定する。この判定は、上述したステップS16およびS26と同様である。この判定において肯定判定されると(ステップS36でYES)、続くステップS38においてアキュームモータM4の正転駆動によりアキューム部50を開動作させる。ただし、この場合、搬出部80における基材Sの搬出速度が搬入部20における搬入速度より高く設定されているため、上記ステップS36の判定ではダンサーローラ位置が所定高さより低くない、すなわち、所定高さより高いと判定される場合が殆どである。したがって、この場合、ステップS36で否定判定されて、続くステップS40においてアキュームモータM4が逆転駆動されてアキューム部50では閉動作が行われる。具体的には、上側ローラ群54が下降移動するとともに下側ローラ群58が上昇移動して、互いに接近する方向に移動する。
そして、コントローラ90は、続くステップS42において、アキューム部50が定常運転位置になったか否かを判定する。この判定は、下側ローラ群58を支持する下側支持部材62の高さ位置を検出するホームポジションセンサ76の検出信号に基づいて判定される。この判定において否定判定されると(ステップS42でNO)、上述したステップS36〜S42を繰り返し実行する。他方、アキューム部50が定常運転位置に戻ったと判定された場合(ステップS42でYES)、続くステップS44において、アウトフィードモータM2を定常速度にまで減速する。すなわち、この状態ではインフィードモータM1とアウトフィードモータM2とが同じ一定速度で駆動され、基材Sが所定速度で連続搬送される定常運転状態に移行する。
上述したように本実施形態のアキューム装置10によれば、基材Sに張力を付与する張力付与部30と、搬出が停止される一方で搬入が継続されることにより生じた基材の余裕分を蓄積するアキューム部とを別々に設けたため、張力付与部では比較的小さい荷重Ftを掛けて基材Sに所望の張力を付与することができる。また、コントローラ90が張力付与部30における固定ローラ32に対する可動ローラ34の高さ位置を一定に維持するように、定常運転時には搬出部80による基材搬出速度を制御し、アキューム動作時にはアキューム部50の開閉動作を制御する。そのため、張力付与部30において固定ローラ32に対して可動ローラ34が移動することによる基材Sの張力変動を低減できる。したがって、長尺帯状の基材Sを所定速度で連続搬送する定常運転時と、基材の搬出を停止しつつ搬入される基材Sを蓄積するアキューム動作時との間で運転状態が切り替わる際にも基材Sに作用する張力の変動を抑制することができる。その結果、基材Sの張力変動によって生じる蛇行や弛みを防止して、これに起因する基材Sの皺や破断等の発生を抑制できる。
次に、図11〜図13を参照して、下側ローラ56の支持構造の変形例について説明する。図11は、アキューム部50aの下側ローラ56を独立懸架方式としたアキューム装置の変形例を示す図である。図12は、図11中のD−D線断面図である。
図11に示すように、この変形例における一対の下側支持部材62aは、各下側ローラ56を回転可能に支持する櫛歯状のアーム部63が下側(−Z方向)へそれぞれ突出して形成されている。そして、各アーム部63の先端部に、弾性部材87を介して、下側ローラ56が連結されている。なお、一対の下側支持部材62aを昇降移動させる駆動機構64は、上述した実施形態と同様である。
図12に示すように、一対の下側支持部材62aにおける各アーム部63の下端には、連結部材89が例えばボルト留め等によって架設されている。連結部材89には、Y方向に間隔を開けて2つの貫通孔89aが形成されている。また、連結部材89の下面には、後述するコイルばねの端部をそれぞれ収容する2つの凹部89bが形成されている。
一対の下側支持部材62aのアーム部63間に架設された連結部材89には、可動部材88が取り付けられている。可動部材88の上面には複数の軸部材94が立設されており、これらの軸部材94が上記連結部材89の貫通孔89aに挿通されている。そして、軸部材94の上端には、貫通孔89aの直径よりも大径のストッパ95が設けられている。
これにより、可動部材88は、連結部材89(すなわち一対の下側支持部材62a)に対して上下方向に移動可能に支持されている。また、ストッパ95により可動部材88の上下方向の移動可能長さが規定されている。
上記可動部材88は、Y方向の両端部に垂下する2つの側壁部92を有する。これらの側壁部92には、下側ローラ56が回転可能に支持されている。具体的には、下側ローラ56は、回転中心軸となるシャフト72と、このシャフト72の両端部分に固定された2つの軸受部材73によって回転可能に支持される円筒状のローラ部分71とを備え、シャフト72の両端部が可動部材88の2つの側壁部92に固定されている。これにより、下側ローラ56は、可動部材88によって回転可能に支持されている。
上記可動部材88の上面には、上記連結部材89の凹部89bに対向して2つの凹部93が形成されている。そして、上記弾性部材87を構成するコイルばねが連結部材89と可動部材88との間に設けられている。弾性部材87を構成する2つのコイルばねは、両端部が連結部材89および可動部材88の各凹部89b,93に嵌まり込んで位置決めされている。
図12は、アキューム部50aにおいて、基材Sが一定速度で連続搬送される定常運転時の状態を示している。この定常運転時には、搬送される基材Sに所定の張力が作用しているため、下側ローラ56を支持する可動部材88が弾性部材87の付勢力に抗して持ち上がった状態になっている。すなわち、弾性部材87であるコイルばねが圧縮状態にあって、下側ローラ56を下方に付勢した状態になっている。
なお、この変形例では弾性部材87としてコイルばねを用いた例について説明するが、これに限定されるものではなく、下側ローラ56に対して下方への付勢力を生じさせるものであれば、例えば、板ばね、空気ばね等の他の弾性部材を用いてもよい。
また、この変形例では、弾性部材87により下側ローラ56を付勢するように構成したが、これに限定されるものではなく、下側ローラ56および可動部材88などの自重だけで下側ローラ56が基材Sに対して付勢されてもよい。この場合、弾性部材87および各凹部89b,93を省略できる。
続いて、図11に加えて図13も参照して、この変形例のアキューム部50aの動作について説明する。図13は、図11に示すアキューム部50aがアキューム動作するときの状態を示す図である。
図11に示すように、アキューム部50aが定常運転状態にあるとき、搬入部12および搬出部14が同一速度で駆動されているため、アキューム部50aでは複数の下側ローラ56を含む下側ローラ群58は或る高さ位置に維持された状態で基材Sが一定速度で搬送される。このとき、各下側ローラ56は、搬送される基材Sに作用する張力によって、上述したように弾性部材87の付勢力に抗して持ち上がった状態になっている。
アキューム装置10の基材搬送方向下流側に設置される下流側装置の稼働が一時停止したとき、図10に示すように、コントローラ90からの指令を受けて搬出部14は回転速度を減速させて停止する一方で、搬入部12では定常運転時と同じ速度で基材Sの搬入が継続される。そのため、搬出部14による基材Sの搬出速度と搬入部12による搬入速度との差によって基材Sに余裕分が生じる。この基材Sの余裕分を吸収するようにアキューム装置10のアキューム部50aはアキューム動作を実行する。
具体的には、搬出部14が減速を開始すると、それに応じて生じる基材Sの余裕分を蓄積するために、上側ローラ群54は上昇移動し、下側ローラ群58は図13に示すように矢印G方向へ下降移動する。これにより、上側ローラ群54と下側ローラ群58との間の距離が長くなることによって、アキューム部50aにおいて基材Sの余裕分が吸収されて蓄積される。このとき、下側ローラ群58は、上側ローラ群54から最大離間距離だけ離れた所定の高さ位置まで下降可能であるが、弾性部材87による下側ローラ56に対する下方への付勢力は上記所定の高さ位置に至るまで及びそこに到達した後も常に作用している。なお、弾性部材87による付勢力は、基材Sに作用する張力に変動が無ければ、弾性部材87の圧縮量が変わらないため一定となる。
このアキューム動作の際、駆動機構64(図3参照)によって各下側ローラ56を下降移動させる動作が基材Sに張力変動が生じないように実行されれば良いが、このアキューム動作の応答性が若干鈍い場合には図11を参照して上述したように基材搬送方向上流側(図11中の右側)に位置する1つ又は複数の下側ローラ56aに対して基材Sが一瞬、弛んで浮く現象が生じることがある。その状態が図11中の破線Stで示される。基材Sの搬送速度が数百メートル/分といった高速になると、このような基材Sが弛んで浮く現象がより顕著になる。このような弛みが一瞬でも生じると、基材Sが蛇行してしまって、巻き取られる基材Sに皺が形成されることがある。
これに対し、この変形例のアキューム部50aでは、各下側ローラ56が弾性部材87によってそれぞれ独立して下方に付勢された状態で支持された「独立懸架方式」を採用している。これにより、上記のようにアキューム動作する際に基材Sに張力変動が生じた場合でも、その張力変動によって基材Sが下側ローラ56から浮こうとしたときそれに追従するように各下側ローラ56、特に基材搬送方向の上流側に位置する1つ又は複数の下側ローラ56aがその自重と弾性部材87の付勢力とによって下方に移動する。そのため、下側ローラ56が基材Sに接触した状態を維持することができる。その結果、基材Sと下側ローラ56との間に空気層が巻き込まれるのを防止でき、基材Sの蛇行とこれに起因する皺の発生をより効果的に抑制できる。
また、定常運転時に基材Sを一定速度で搬送する場合、図14中に破線101で示すように、下側ローラ56の直前位置で筒状の基材Sの内部に空気が溜まって風船状に膨らむ現象がある。この変形例のアキューム部50aによれば、上述したように各下側ローラ56が独立懸架方式で設けられているため、筒状の基材Sの内部にたまった空気の圧力が高くなると弾性部材87の付勢力に抗して下側ローラ56が押し上げられ、基材S内部の空気が下流側へと抜ける。そのため、空気溜りによる基材Sの搬送障害も抑制できる。
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲内において種々の変更や改良が可能である。
上記においてはアキューム部50,50aのアキューム動作において上側ローラ群54を上昇させるとともに下側ローラ群58を下降移動させて蓄積可能な基材長を長くできるように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、上側ローラ群54を固定配置する一方で下側ローラ群58だけを可動としてもよいし、あるいは、この逆としてもよい。
また、上記においては、アキューム部50,50aに含まれる上側ローラ群54および下側ローラ群58を上下方向に移動させるタイプのアキューム装置10について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、複数の回転可能な第1ローラを含む第1ローラ群と、この第1ローラ群に対して接近および離間する方向に移動可能な複数の回転可能な第2ローラを含む第2ローラ群とを備え、第1ローラ群に対して第2ローラ群を例えば水平方向あるいはこれと交差する方向に相対移動させて両者間の距離を変更するタイプのアキューム装置に本発明を適用してもよい。
さらに、上記においてはアキューム装置10の定常運転時にはアキューム部50の開閉動作を行わずに基材搬出速度を変更することによって張力付与部30における可動ローラ34の高さ位置を一定に維持する制御を実行したが、これに限定されるものではない。例えば、アキューム動作時と同様にアキューム部50における開閉動作を併せて実行して、張力付与部30の可動ローラ34の位置を一定に維持するように制御してもよい。
さらにまた、上記では、アキューム装置10を処理装置4と巻取部5との間に設置したフィルム処理システム1を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上記特許文献1および2に記載されるようなラベル被嵌システムに適用されてもよい。この場合、上流側装置としての基材送出装置と下流側装置としてのラべル被嵌装置との間にアキューム装置が設置され、基材送出装置からラベル基材が一定速度で繰り出される定常運転時にはアキューム装置は開動作した状態にあってラベル基材を蓄積しており、基材送出装置の基材リール交換作業に伴いラベル基材の送り出しが一時的に停止されている間、アキューム装置が閉動作しながら蓄積されていたラベル基材の搬出を継続することにより、ラべル被嵌装置の稼働を継続することができる。また、この場合、アキューム装置の定常運転時には、基材送出装置から送り出された基材をアキューム装置に搬入する搬入部20の搬入速度を変更することによって、アキューム部30の可動ローラ34の高さ位置を一定に維持するように制御するのが好ましい。