本発明は、二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法及びそのシステムに関する。
従来のデジタルトモシンセシス(Digital tomosynthesis,DTS)システムは、例えば、デジタルブレストトモシンセシスやデジタル胸部トモシンセシスというように、各種医用イメージングにおける臨床診断ツールとして幅広く利用されている。DTSイメージング過程では、限られた角度から物体について一連の投影画像を取得する。これらのシステムでは、比較的低い放射線量でCTと同様の3次元(3D)情報を有する画像を提供可能である。しかし、従来の胸部DTSの画質には限界があった。これは、システムの走査機構が頭足(Head−Feet,H−F)方向の単軸走査であって、人体の頭部から足部へ向かう走査経路にX線を沿わせためである。この場合、アーチファクト(例えば、Blurring−rippleやGhost−distortion)の影響で、走査方向と平行な構造の一部がぼやけてしまう。換言すれば、従来の胸部DTSは、走査方向が単軸に限られるために一部の構造について良好な画質を実現できていなかった。そこで、既存の頭足方向の走査に左右(Left−Right,L−R)方向の走査を加えた二軸走査方向の造影とすれば、上記の課題を解決可能と考えられる。ここで、左右方向の走査とは、人体の左側から右側へ向かう走査経路にX線を沿わせるものである。
しかし、二軸の走査運動方式を実現しようとすると、運動機構の幾何誤差が単軸走査の幾何構造に比べて複雑となる。単軸走査の幾何機構の場合には、走査過程において軸運動は1つしか発生しない。そのため、単軸走査の幾何構造においてシステムに軸ズレが生じたとしても、各走査位置が相対的に変動しなければ、再構成画像への影響は画像上での物体のズレにとどまり、画像にアーチファクトが発生することはない。ところが、二軸走査の幾何構造を有するシステムの場合には、図1に示すように、検出器による検出受信範囲Rにおいて、頭足方向の走査軸A1の中心点と左右方向の走査軸A2の中心点とが重なり合い(両軸の走査の中心点が重なり合う位置をPOで示す)、且つ、頭足方向の走査軸A1と左右方向の走査軸A2が直交せねばならない。換言すると、頭足方向の走査軸A1の中心点と左右方向の走査軸A2の中心点が重ならないだけで軸ズレが発生する。或いは、頭足方向の走査軸A1の中心点と左右方向の走査軸A2が直交しなければ軸傾斜が生じてしまう。このように、二軸走査の幾何構造を有するトモシンセシスシステムの場合には、いずれの幾何誤差(軸ズレ又は軸傾斜)の場合にも再構成画像にアーチファクトが発生する。
そこで、業界では、如何にして「二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法及びそのシステム」を改良及び提供し、上記の課題を回避可能とするかが解決すべき課題となっている。
本発明では、二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法及びそのシステムを提供することで、二軸走査の幾何誤差に起因する画像のアーチファクトを低減させる。
本発明の一実施例では、二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法を提供する。当該方法は、補正用ファントムを提供するステップであって、補正用ファントムが、第1プレート、第2プレート及び複数のマーキングポイントを含み、第1プレートと第2プレートが深さ方向において深さ距離を隔てており、複数のマーキングポイントが第1プレートと第2プレートに設けられるステップと、深さ方向において、第1プレートの複数のマーキングポイントの3次元座標位置を第2プレートの複数のマーキングポイントの3次元座標位置に重ねないステップと、X線により、補正用ファントムを平面検出器に投影することで補正用ファントム投影画像を取得するステップであって、各マーキングポイントの3次元座標位置が当該平面検出器の2次元投影座標位置に対応するステップと、各マーキングポイントの3次元座標位置と各2次元投影座標位置の変換関係から、トモシンセシスシステムに関する射影行列情報を構築するステップと、射影行列情報から複数の幾何学的パラメータを算出するステップ、を含む。
本発明の他の実施例では、平面検出器、光源及び補正用ファントムを含む二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正システムを提供する。光源はX線を出射する。補正用ファントムは、第1プレート、第2プレート及び複数のマーキングポイントを含み、当該第1プレートと当該第2プレートが、深さ方向において深さ距離を隔てている。複数のマーキングポイントは第1プレートと第2プレートにそれぞれ設けられる。且つ、深さ方向において、第1プレートの複数のマーキングポイントの3次元座標位置は第2プレートの複数のマーキングポイントの3次元座標位置と重ならない。補正用ファントムがX線により当該平面検出器に投影されることで補正用ファントム投影画像が取得され、各マーキングポイントの3次元座標位置が平面検出器の2次元投影座標位置に対応する。各マーキングポイントの3次元座標位置と各2次元投影座標位置の変換関係から、トモシンセシスシステムに関する射影行列情報が構築される。また、射影行列情報から複数の幾何学的パラメータが算出される。
上述したように、本発明における二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法とそのシステムでは、従来の幾何学的補正方法や装置の場合には二軸走査の幾何構造を有するトモシンセシスシステムに適用できないとの制限が解消される。この方法では、射影行列法をベースとし、既知である補正用ファントムのマーキングポイント位置とその投影位置との関係性を利用することで、二軸デジタルトモシンセシスシステムのジオメトリを十分に表すトモシンセシスシステムの幾何学的パラメータを算出する。
また、本発明で提供する幾何学的補正用ファントムは、上下のプレートのマーキングポイントを特殊設計により互い違いに配列することで、二軸走査の幾何構造を有するデジタルトモシンセシスシステムでは、造影の幾何学的補正過程でマーキングポイントが重なってしまうとの課題を解決可能である。これにより、従来の補正用ファントムの設計では二軸走査のトモシンセシスシステムに適用できないとの制限が解消される。
本発明をより簡単明瞭とすべく、以下に、実施例を挙げるとともに図面を組み合わせて詳細に説明する。
図1は、二軸走査を示す図である。
図2は、本発明の二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正システムを示す図である。
図3は、本発明の幾何学的補正用ファントムの一実施例を示す図である。
図4は、本発明における二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法のフローチャートである。
図5Aは、肩甲骨辺縁の元の二軸胸部トモシンセシス画像を示す図である。
図5Bは、本発明の幾何学的補正方法を適用したあとの肩甲骨辺縁の二軸胸部トモシンセシス画像を示す図である。
図5Cは、横隔膜境界の元の二軸胸部トモシンセシス画像を示す図である。
図5Dは、本発明の幾何学的補正方法を適用したあとの横隔膜境界の二軸胸部トモシンセシス画像を示す図である。
以下に、図面と実施例を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に記載する。ただし、以下の実施例は本発明の技術方案をより明確に説明するためのものにすぎず、本発明による保護の範囲を限定するものではない。
各実施例の説明において、一方の部材が他方の部材の「上方/上」或いは「下方/下」に位置すると記載されている場合には、当該他方の部材の上又は下に直接的又は間接的に位置することを意味し、これらの間に設けられるその他の部材を含む場合もある。また、「直接的に」とは、これらの間にその他の仲介部材が設けられないことを意味する。また、「上方/上」或いは「下方/下」等の記載は図面を基準とした説明であるが、その他の可能な方向への変換も含まれる。また、「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」とは、異なる部材を記載するためのものであって、これらの部材はこの種の表現により限定されない。また、説明の便宜上及び明瞭化のために、図中の各部材の厚さ又はサイズは、誇張又は省略又は概略といった方式で示しており、各部材のサイズは実際のサイズと完全に一致しているわけではない。
図2は、本発明の二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正システムを示す図である。ここで、図2を参照する。本実施例の二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正システム100は、光源(source)SO、幾何学的補正用ファントムOB及び平面検出器(detector)IRを含む。幾何学的補正用ファントムOB(3次元座標系X,Y,Zに位置)は、光源SOと平面検出器IR(2次元座標系U,Vに位置)の間に位置する。光源SOはX線を出射する。また、光源SOは、頭足方向の走査軸A3と左右方向の走査軸A4において走査を実行可能とする。
幾何学的補正用ファントムOBを図3に示す。幾何学的補正用ファントムOBは、第1プレート11、第2プレート12及び複数のマーキングポイントX11,X12を含む。第1プレート11と第2プレート12はアクリル板である。また、第1プレート11と第2プレート12が深さ方向Lにおいて深さ距離Dを有するよう、第1プレート11と第2プレート12は接続部材13により接続されている。第1プレート11には複数のマーキングポイントX11が設けられ、第2プレート12には複数のマーキングポイントX12が設けられる。マーキングポイントX11,X12は、スチールボールやその他の金属等のX線に対し高減衰の物質とする。また、深さ方向Lにおいて、第1プレート11の複数のマーキングポイントX11の3次元座標位置は、第2プレート12の複数のマーキングポイントX12の3次元座標位置と重ならない。且つ、マーキングポイントX11とマーキングポイントX12は互い違いとなっている。このように設計することで、二軸によるX線走査及び投影過程において、第1プレート11のマーキングポイントX11と第2プレート12のマーキングポイントX12が平面検出器IRに投影される際に、各マーキングポイントX11とX12が重なり合うとの事態を回避可能である。
図4は、本発明における二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法のフローチャートである。ここで、図1〜図4を参照する。本実施例の二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法S10は、以下のステップS11〜ステップS15を含む。ステップS11では、図3に示すように、幾何学的補正用ファントムOBを提供する。幾何学的補正用ファントムOBは、第1プレート11、第2プレート12及び複数のマーキングポイントX11,X12を含む。第1プレート11と第2プレート12は、深さ方向Lにおいて深さ距離Dを隔てている。また、マーキングポイントX11は第1プレート11に設けられ、マーキングポイントX12は第2プレート12に設けられる。これにより、幾何学的補正用ファントムOBの各マーキングポイントX11,X12は、対応する3次元座標位置(x,y,z)を有する。次に、深さ方向Lにおいて、第1プレート11の複数のマーキングポイントX11の3次元座標位置を第2プレート12の複数のマーキングポイントX12の3次元座標位置に重ねないステップS12を実行する。図3に示すように、第1プレート11の複数のマーキングポイントX11は、深さ方向Lにおいて第2プレート12の複数のマーキングポイントX12と重なり合うことがない。且つ、マーキングポイントX11とマーキングポイントX12は互い違いとなっている。
続いて、X線により幾何学的補正用ファントムOBを平面検出器IRに投影することで補正用ファントム投影画像を取得するステップS13を実行する。詳述すると、幾何学的補正用ファントムOBは平面検出器IRの上方に設けられる。光源SOはX線を出射し、幾何学的補正用ファントムOBをX線イメージングすることで、補正用ファントム投影画像を取得する。上記のX線により幾何学的補正用ファントムOBを平面検出器IRに投影するステップは、平面検出器IR上の補正用ファントム投影画像に投影された各マーキングポイントX11,X12の重心位置を算出することで、各マーキングポイントの2次元投影座標位置を取得するステップを含む。即ち、各マーキングポイントX11,X12を補正用ファントム投影画像に投影し、補正用ファントム投影画像における各マーキングポイントの重心位置をマーキングポイントの2次元投影座標位置(u,v)として算出する。一実施例では、幾何学的補正用ファントムOBの補正用ファントム投影画像について画像前処理を行う。画像前処理は、より正確且つ迅速に前記マーキングポイントX11,X12の2次元投影座標位置が得られるよう、画像の平滑化(Smoothing)、画像の二値化(Thresholding)等の慣用の画像処理技術を含む。
本実施例において、X線は、幾何学的補正用ファントムOBを平面検出器IRに投影する。平面検出器IRは2次元平面である。即ち、幾何学的補正用ファントムOBのマーキングポイントX11,X12の3次元座標位置(x,y,z)は平面検出器IRの2次元投影座標位置(u,v)に投影され、各マーキングポイントX11,X12の3次元座標位置(x,y,z)が平面検出器IRの2次元投影座標位置(u,v)に対応する。続いて、各マーキングポイントX11,X12の3次元座標位置(x,y,z)とその2次元投影座標位置(u,v)の変換関係から、下記の方程式(1)のように、トモシンセシスシステムにおける射影行列の関係式を構築するステップS14を実行する。
上記方程式(1)において、射影行列情報Pは3×4の射影行列(projection matrix)、wは距離の重み係数(distance weighting factor)であって(単位無し)、マーキングポイントが位置する3次元座標系(X,Y,Z)とその2次元投影座標系(U,V)の関係をマッチングするために用いられる。また、Tは転置行列である。幾何学的補正用ファントムOB上の各マーキングポイントX11,X12は予め設計したものであるため、幾何学的補正用ファントムOBの各マーキングポイントX11,X12の3次元座標位置(x,y,z)は既知である。且つ、幾何学的補正用ファントムOBはX線により平面検出器IRに投影されるため、平面検出器IR上のマーキングポイントX11,X12に対応する2次元投影座標(u,v)についても、重心座標を算出することで明らかとなる。そのため、方程式(1)から射影行列情報Pを算出可能である。また、図3に示すように、第1プレート11における複数のマーキングポイントX11の3次元座標位置は、第2プレート12における複数のマーキングポイントX12の3次元座標位置と重ならないため、二軸トモシンセシスの走査過程において、第1プレート11のマーキングポイントX11と第2プレート12のマーキングポイントX12が平面検出器IRに投影される際に、各マーキングポイントX11とX12が重なり合うとの事態を回避可能である。
このように、方程式(1)と、幾何学的補正用ファントムOBにおけるマーキングポイントX11,X12の3次元座標位置(x,y,z)と、マーキングポイントX11,X12を平面検出器IRの平面に投影した2次元投影座標位置(u,v)より、射影行列情報Pを取得可能である。続いて、射影行列情報Pから複数の幾何学的パラメータを算出するステップS15を実行する。ここで、射影行列情報Pは、更に方程式(2)のように分解可能である。
方程式(2)において、Kは3×3の内部行列(intrinsic matrix)情報、Rは3×3の回転行列(rotation matrix)情報、tは3×1の並進ベクトル(translation vector)情報である。内部行列情報Kは、方程式(3)で表すことができる。
上記方程式(3)において、SIDは投影距離であって、光源SOから平面検出器IRの表面までの距離(図2参照)を示す。また、Pu及びPvは平面検出器IRにおける画素の高さ及び幅であり、u0及びv0は、光源SOからの中心線(central ray)が垂直に平面検出器IRに入射する際の方向u及びvの座標位置である。
方程式(2)において、回転行列情報Rは、方程式(4)のように表すことができる。
上記方程式(4)において、オイラー角(θx,θy,θz)は、幾何学的補正用ファントムOB(検出対象)の座標系(XYZ軸)周りにおける平面検出器IRの傾斜(回転)角度を示す。
方程式(2)において、並進ベクトル情報tは、方程式(5)のように表すことができる。
方程式(5)において、tx、ty、tzは、幾何学的補正用ファントムOB(検出対象)の座標系と光源SOの座標系との偏移量を示す。
ステップS14では、射影行列情報Pについて数値の演算精度をより高めるべく、演算により取得した射影行列情報Pと、各マーキングポイントX11,X12の当該座標位置(x,y,z)から、方程式(1)を用いてマーキングポイントの座標位置(ui(P),vi(P))を推定するステップを含む。次に、非線形最小二乗法(nonlinear least−squares method)を用いることで、射影行列から算出したマーキングポイントの2次元投影座標位置(ui(P),vi(P))と、投影画像から算出したマーキングポイントの2次元投影座標位置(ui,vi)との差分を縮小する。非線形最小二乗法を用いることで、射影行列情報Pは反復法の過程で2つの位置の差を縮小しつつ収束するため、最適な射影行列情報Pが得られる。上記の過程はレーベンバーグ・マーカート法(Levenberg−Marquradt algorithm)により実現される。目的関数(objective function)は、方程式(6)の通りとなる。
方程式(6)において、(ui,vi)はマーキングポイントX11,X12の2次元投影座標位置、(ui(P),vi(P))は射影行列情報Pを用いて算出したマーキングポイントの投影座標位置、Nはマーキングポイント数である。この反復式の初期値は、方程式(1)のように、直接線形変換法(direct linear transformation,DLT)により算出される射影行列情報Pに代入可能である。
上記から明らかなように、本実施例では、上記演算により射影行列情報P、内部行列情報K及び回転行列情報Rを取得する。また、これに続く関係式より、トモシンセシスシステムの幾何学的パラメータを導くことができる。まず、光源SOからの中心線が垂直に平面検出器IRに入射する際の方向u及び方向vの座標(u0,v0)は、方程式(3)の内部行列情報Kより、方程式(7):u0=K13、v0=K23から導くことができる。次に、光源SOから検出器IRの表面までの距離(SID)もまた、方程式(3)の内部行列情報Kより、方程式(8):SID=K11Pu=K12Pvから導くことができる。
また、幾何学的補正用ファントムOB(検出対象)の座標系(XYZ軸)周りにおける平面検出器IRの回転傾斜量(θx,θy,θz)は、方程式(4)の回転行列より、方程式(9)、方程式(10)、方程式(11)から導くことができる。
最後に、光源SOの3次元座標位置S=[Sx,Sy,Sz,1]Tは、射影行列情報Pと方程式(12)の制約関係から導くことができる。
上記から明らかなように、本発明で提供する方法では、1回の造影で取得した補正用ファントム投影画像を利用して、光源SOからの中心線が平面検出器IRの中心に入射する際の偏移量(u0,v0)、光源SOから平面検出器IRの表面までの距離(SID)、平面検出器IRの傾斜角度(θx,θy,θz)及び光源位置(Sx,Sy,Sz)等を含む一群の幾何学的パラメータを得ることができる。
上記フローで取得した幾何学的パラメータを利用することで、二軸走査の幾何構造を有するトモシンセシスシステムによる完全な走査軌道を描くことが可能となる。また、上記の幾何学的パラメータは、二軸(頭足方向(H−F)の走査軸と左右方向(L−R)の走査軸)の中心点位置が重なっているか否か、及び、二軸(頭足方向(H−F)の走査軸と左右方向(L−R)の走査軸)の傾斜角が大き過ぎるか否かといった幾何誤差の評価にも用いられる。このうち、頭足方向の走査軸A1の中心点と左右方向の走査軸A2が直交していなければ、両軸に傾斜が生じて傾斜角を有することになる。一例を挙げると、頭足方向(H−F)の走査軸の走査ストロークが−300mmから+300mm(合計61枚の投影画像を取得)、左右方向(L−R)の走査軸の走査ストロークが−150mmから+150mm(合計31枚の投影画像を取得)の場合、二軸走査の各運動軸の中心点が重なっていなければ、再構成画像にアーチファクトが発生する。評価の結果、運動機構の幾何誤差がシステムの許容範囲を上回っている場合には、上記の幾何学的パラメータをフィードバックして画像再構成アルゴリズムに代入し、システムの幾何行列を補正することで、幾何学的補正を経た再構成画像を得ることができる。これにより、再構成画像の品質が改善される。一例を挙げると、図5Aに示す肩甲骨(scapula)の辺縁と図5Cに示す横膈膜(diaphragm)の境界には、いずれも明らかに不明瞭な位置ズレが見られる。また、肺血管もぼやけており、不明瞭である(矢印箇所参照)。しかし、本実施例の分析結果を利用した幾何学的パラメータをフィードバックし、画像再構成アルゴリズムに代入することでシステムの幾何行列を補正したところ、幾何学的補正後の二軸胸部トモシンセシス画像は図5B及び図5Dに示すようになった。これらの画像より、上記の状況が明らかに改善されたことがはっきりと見て取れる。こうすることで、医師によるいっそう的確な病巣診断を補助可能となるため、医療の質が向上する。
上述したように、本発明における二軸走査の幾何構造を有するデジタル胸腔トモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法とそのシステムでは、従来の幾何学的補正方法や装置の場合には二軸走査の幾何構造を有するトモシンセシスシステムに適用できないとの制限が解消される。この方法では、射影行列法をベースとし、既知である補正用ファントムのマーキングポイント位置とその投影位置との関係性を利用することで、二軸デジタルトモシンセシスシステムのジオメトリを十分に表すトモシンセシスシステムの幾何学的パラメータを算出する。
また、本発明で提供する幾何学的補正用ファントムは、上下のプレートのマーキングポイントを特殊設計及び最適化することで、二軸走査の幾何構造を有するデジタルトモシンセシスシステムでは、造影の幾何学的補正過程でマーキングポイントが重なってしまうとの課題を解決可能である。これにより、従来の補正用ファントムの設計では二軸走査のトモシンセシスシステムに適用できないとの制限が解消される。
最後に、本発明は、二軸走査のデジタルトモシンセシスシステムに適用可能なだけでなく、従来の単軸走査のトモシンセシスシステム、コンピュータ断層撮影システム、及び、角度制限のあるその他の3次元走査システム等にも適用可能である。いずれの場合でも、本発明を利用することでシステムの幾何誤差が低下し、アーチファクトが除去されるため、画質を向上させられる。
本発明は実施例により上記の通り開示したが、これらは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神を逸脱しない範囲において多少の変更や補足を実施可能である。よって、本発明による保護の範囲は添付の特許請求の範囲により規定される。
100 二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正システム
11 第1プレート
12 第2プレート
13 接続部材
A1,A3 頭足方向の走査軸
A2,A4 左右方向の走査軸
D 深さ距離
PO 両軸の走査の中心点が重なり合う位置
X11,X12 マーキングポイント
L 深さ方向
R 検出受信範囲
IR 平面検出器
OB 幾何学的補正用ファントム
SID 投影距離
SO 光源
S10 二軸デジタルトモシンセシスシステムに用いられる幾何学的補正方法
S11〜S15 ステップ
θx 平面検出器の傾斜角度
θy 平面検出器の傾斜角度
θz 平面検出器の傾斜角度