しかしながら、調整部材や締結部材が液体容器に覆い隠されない位置に配置される構成では、その分、キャリッジおよび噴射機構のサイズが大型化する問題があった。すなわち、調整部材による固定対象となる部分や当該調整部材を調整するための領域(調整部材の操作に必要な領域)をその位置にまで設けるために、キャリッジ等にその分のスペースが必要となる。また、液体貯留部材を着脱する工程が多くなる構成では、その分、製造工程全体が長くなるばかりでなく、アライメント調整後に液体貯留部材の着脱が行われることで噴射機構の位置がずれてしまう問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射装置の噴射に係る調整の工程数の増加を抑制し、あるいは、小型化が可能な液体噴射装置の製造方法、および、液体噴射装置を提供することにある。
本発明の液体噴射装置の製造方法は、上記目的を達成するために提案されたものであり、第1の液体容器および第2の液体容器が着脱可能に装着される容器保持部材と、前記各液体容器から供給された液体をノズルから噴射する噴射機構と、調整部材と、を備えた液体噴射装置の製造方法であって、
前記調整部材は、前記第1の液体容器に覆われる一方、前記第2の液体容器に覆われない位置に配置され、
前記第1の液体容器が装着されず前記第2の液体容器が装着された状態で、前記噴射機構により液体を噴射させる噴射工程と、
前記噴射工程における噴射結果に基づいて、前記調整部材により前記液体噴射装置の調整を行う調整工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、第1の液体容器が装着されない状態で噴射工程および調整工程を行うことができるので、製造の過程で必要な液体容器の着脱の回数が削減され、これにより、製造工程全体の短縮化が可能となる。また、液体容器の着脱回数が削減されることにより、当該液体容器の着脱時に調整部材等に作用する力や振動による調整結果への悪影響を低減することが可能となる。さらに、第1の液体容器により覆われる位置に調整部材が少なくとも一つ配置されることで、その分、容器保持部材等の小型化が可能となる。
上記方法では、前記噴射工程において、前記噴射機構は、前記第2の液体容器から供給された液体を噴射するようにすることができる。
この方法によれば、第1の液体容器が装着されていない状態で当該第1の液体容器に対応する液体流路から液体を噴射させるべく噴射機構を駆動させても、当該第1の液体容器に対応する液体流路に気体が流入して液体が正常に噴射されないおそれがある。これにより、調整部材による調整に支障が生じる可能性があるところ、噴射機構が第2の液体容器から供給された液体を噴射することにより、当該噴射結果に基づいて調整部材による調整を支障なく行うことができる。
また、上記方法では、前記第1の液体容器の液体の輝度は、前記第2の液体容器の液体の輝度よりも高いことが望ましい。
これによれば、調整工程において容器保持部材から取り外される第1の液体容器の液体の輝度が、噴射工程において噴射機構から噴射される第2の液体容器の液体の輝度よりも高いことになる。換言すると、第2の液体容器の液体の輝度が、第1の液体容器の液体の輝度よりも低いことにより、噴射結果について目視で検査が行われる場合には検査人員により視認しやすくなり、また、噴射結果の画像データに基づいて検査が行われる場合においてもコンピューター等で噴射結果が認識されやすくなる。その結果、噴射結果に基づく調整工程における調整精度が向上する。
さらに、上記方法では、前記液体噴射装置は、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器に覆われない位置に設けられた締結部材を備え、
前記調整工程は、前記締結部材と前記調整部材とにより行われるようにすることが望ましい。
当該方法により、第1の液体容器および第2の液体容器の着脱に係らず、締結部材を用いた調整をすることができる。
また、上記方法では、前記液体噴射装置は、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器からの液体を前記噴射機構に供給する流路を有する流路部材を備え、
前記噴射機構は、前記第2の液体容器からの液体が噴射されるノズルから構成されるノズル群を複数有し、
前記調整工程において、前記容器保持部材に対する前記流路部材のアライメントを調整することが望ましい。
これによれば、第2の液体容器からの液体が噴射されるノズルから構成されるノズル群が複数設けられていることにより、各ノズル群から液体を噴射したときの噴射結果に基づいて容器保持部材に対する流路部材のアライメントをより精度よく調整をすることができる。
また、上記方法において、前記第2の液体容器からの液体が噴射される前記各ノズル群は、前記第1の液体容器からの液体が噴射されるノズルが属するノズル群を間に挟むようにすることが望ましい。
この方法によれば、ノズル群の並設方向において、第2の液体容器から噴射されるノズル群が、第1の液体容器に対応するノズル群よりも外側に位置する方が、検査パターンにおいてアライメントずれがより顕著に現れるので、当該アライメントのずれをより特定しやすく、さらに高精度にアライメントを調整することが可能となる。
上記方法において、前記容器保持部材は、前記流路部材を往復移動させるためのキャリッジであり、
前記調整工程において、前記キャリッジと前記流路部材とを固定するようにすることができる。
この方法によれば、キャリッジに対する流路部材のアライメントを調整することができる。
さらに、上記方法では、前記調整工程において、前記キャリッジと前記噴射機構の前記ノズルとの相対位置を調整することが望ましい。
この方法によれば、キャリッジに対するノズルの位置をより精度よくアライメントすることが可能である。その結果、ノズルから噴射された液体の着弾精度が向上する。
また、上記方法において、前記噴射工程の前に、前記容器保持部材に前記第2の液体容器が装着されるとともに、当該容器保持部材における前記第1の液体容器との接続部に、前記噴射機構への気体の流通を規制する流通規制部材が装着された状態で、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器のそれぞれに対応するノズルから同時に吸引して前記噴射機構の液体流路に前記第2の液体容器からの液体を充填する充填工程を含むことが望ましい。
この方法によれば、液体の充填時に第1の液体容器が装着される接続部に、流通規制部材が装着されることにより、液体を充填する対象の液体流路に対して吸引による負圧をより効果的に作用させることができ、液体の充填作業をより効率よく円滑に行うことができる。
また、本発明の液体噴射装置は、第1の液体容器および第2の液体容器が着脱可能に装着される容器保持部材と、
前記各液体容器から供給された液体をノズルから噴射する噴射機構と、
調整部材と、
を備え、
前記調整部材は、前記第1の液体容器に覆われる一方、前記第2の液体容器に覆われない位置に配置されたことを特徴とする。
この構成によれば、第1の液体容器により覆われる位置に調整部材が配置されることで、その分、容器保持部材等の小型化が可能となる。
また、上記構成において、前記噴射機構により液体が噴射された際の噴射結果に基づいて前記調整部材により前記容器保持部材と当該容器保持部材に固定される被固定部材との相対位置の調整が行われる場合において、前記容器保持部材に前記第1の液体容器が装着されず且つ当該容器保持部材に前記第2の液体容器が装着された状態で、前記噴射機構が前記第2の液体容器からの液体を噴射するように構成されたことが望ましい。
この構成によれば、第1の液体容器を装着することなく噴射機構が第2の液体容器からの液体を噴射することができるので、調整部材による調整を行うにあたって予め第1の液体容器の着脱が不要となる。
上記構成において、前記容器保持部材は、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器の少なくとも一部を覆うカバーを有し、
前記調整部材は、回転軸を中心に回転可能に構成され、
前記カバーは、前記調整部材を回転させるための操作位置の前記回転軸方向の延長線上に開口を有する構成とすることができる。
この構成によれば、カバーを閉じた状態で調整部材を回転させて調整を行うことができるので、作業性が向上する。
上記構成において、前記容器保持部材は、前記流路部材を第1方向に往復移動させるためのキャリッジであり、
前記被固定部材は、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器からの液体を前記噴射機構に供給する流路を有する流路部材であり、
前記キャリッジと前記流路部材とを固定するための締結部材を備え、
前記調整部材は、前記キャリッジと前記流路部材とのアライメントの調整に用いられ、
前記締結部材は、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器に覆われない位置に設けられたことが望ましい。
この構成によれば、第1の液体容器により覆われる位置にある調整部材と、液体容器には覆われない位置にある締結部材とを用いてアライメントの調整が行える。そして、調整部材は、液体容器の交換作業等以外においては当該液体容器によって覆い隠されて保護されるので、当該調整部材に意図しない外力が加わることが抑制される。これにより、アライメントの調整後において流路部材の位置ずれが抑制される。また、第1の液体容器および第2の液体容器の着脱に係らず、締結部材を用いたアライメントの調整が行える。
上記構成において、前記調整部材の数は、前記締結部材の数よりも少ないことが望ましい。
この構成によれば、液体容器に覆われた調整部材の数が締結部材よりも少ないので、調整部材による調整の際に取り外す必要のある液体容器の数を低減することができる。
上記構成において、前記調整部材と前記締結部材とは、合計3つ以上設けられ、且つ同一直線上に3つ以上が並ばない非直線状に配置された構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、調整部材と締結部材とは、合計3つ以上設けられ、且つ同一直線上に3つ以上が並ばない非直線状に配置されたので、キャリッジと流路部材とのアライメントを安定させることが可能となる。
上記構成において、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器からの液体を前記噴射機構に供給する流路を有する流路部材を備え、
前記流路部材は、前記第1の液体容器および前記第2の液体容器から液体が供給される上流部材と、当該上流部材から液体が供給される下流部材とを有し、
前記調整部材および前記締結部材は、前記上流部材側に設けられて当該上流部材と前記キャリッジとを固定し、
前記第1方向において、前記上流部材は前記下流部材よりも長尺であり、前記締結部材は、前記下流部材から外れた位置に配置されている構成を採用することができる。
この構成によれば、液体容器の大型化に影響されず下流部材の小型化が可能となる。
上記構成において、前記第1方向において、前記下流部材から外れた前記上流部材の突出範囲のうち、当該突出範囲の中心よりも前記下流部材側に前記締結部材が位置する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、第1方向において下流部材から外れた上流部材の突出範囲のうち、当該突出範囲の中心よりも下流部材側に締結部材が位置することにより、締結部材の距離が可及的に近づく。これにより、上流部材の突出範囲に締結部材が配置されることでアライメント調整の精度を高めつつも、万が一上流部材に反りが生じたとしても、これに追従して噴射機構が反ったり、当該噴射機構のノズルから着弾対象までの距離が変わったりすることが抑制される。その結果、アライメント調整の結果が変わってしまうことが抑制される。
上記構成において、前記噴射機構は、前記第2の液体容器からの液体が噴射されるノズルから構成されるノズル群を複数有し、
前記第2の液体容器からの液体が噴射される前記各ノズル群は、前記第1の液体容器からの液体が噴射されるノズルが属するノズル群を間に挟む構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、第2の液体容器から噴射されるノズル群が、ノズル群の並設方向において第1の液体容器に対応するノズル群よりも外側に位置する方が、アライメントのずれ量をより特定しやすく、さらに高精度にアライメントを調整することが可能となる。
また、上記構成において、前記第1の液体容器の液体の輝度は、前記第2の液体容器の液体の輝度よりも高いことが望ましい。
この構成によれば、第1の液体容器の液体の輝度が第2の液体容器の液体の輝度よりも高いことにより、換言すると、第2の液体容器の液体の輝度が第1の液体容器の液体の輝度よりも低いことにより、噴射機構による噴射結果について目視で検査が行われる場合には検査人員により視認しやすくなり、また、噴射結果の画像データに基づいて検査が行われる場合においてもコンピューター等で噴射結果が認識されやすくなる。その結果、噴射結果に基づくアライメント調整における調整精度が向上する。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
図1は、ヘッドユニット4を搭載するプリンター1の構成を示す正面図である。このプリンター1は、フレーム2と、このフレーム2内に配設されたプラテン3とを備えており、図示しない搬送機構によってプラテン3上に記録用紙、布帛、あるいは、樹脂シート等の記録媒体(液体の着弾対象の一種)が搬送される。また、フレーム2内には、プラテン3と平行にガイドロッド5が架設されており、このガイドロッド5には、記録ヘッド8を収容したキャリッジ6が摺動可能に支持されている。このキャリッジ6は、図示しないキャリッジ移動機構の駆動により、ガイドロッド5に沿って記録媒体の搬送方向である副走査方向(第2方向)に交差する主走査方向(第1方向)に往復移動するように構成されている。ヘッドユニット4は、このキャリッジ6に記録ヘッド8を搭載して構成されている。このプリンター1は、プラテン3上に載置された記録媒体に対してキャリッジ6を主走査方向に相対移動させながら記録ヘッド8のノズル34(図5参照)からインク(本発明における液体の一種)を噴射させて、記録媒体上に当該インクを着弾させることにより文字や画像等の着弾パターンを形成(記録・印刷)する。
キャリッジ6(本発明における容器保持部材の一種)には、インクを貯留したインクカートリッジ7(液体容器の一種)を着脱可能に装着されている。インクとしては、例えば、水系の染料インクもしくは顔料インクや、これらの水系のインクよりも耐候性が高められた有機溶剤系(エコソルベント系)インクや、紫外線の照射による硬化する光硬化型インク等、周知の種々の組成のものを用いることができる。なお、本実施形態においては、インクカートリッジ7がキャリッジ6に搭載される構成を例示したが、これには限られず、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、インク供給チューブを介して記録ヘッド8に供給される構成(オフキャリッジタイプ)を採用することも可能である。この構成の場合、キャリッジ6には、サブタンク(液体容器の一種)と呼ばれる部材が装着され、インクカートリッジからのインクがこのサブタンクに供給された後、当該サブタンクから記録ヘッド8にインクが供給される。このサブタンクには、記録ヘッド8に供給するインクの供給圧を一定に調整する機能を有するものもある。あるいは、インク供給チューブ液体容器の一種が、キャリッジ6に搭載された記録ヘッド8のインク導入針24等の接続部分に直接接続される構成であってもよい。
プリンター1の非記録領域であるホームポジションには、キャリッジ6に搭載された記録ヘッド8のノズル形成面(プラテン3と対向する面。図8等参照。)を払拭するワイピング機構11が配設されている。このワイピング機構11は、ワイパー12を有しており、このワイパー12としては、例えばゴムやエラストマー等の弾性・可撓性を有する部材により構成される。また、弾性を有するブレード本体の表面が布帛で被覆されたものを採用することもできる。このワイピング機構11は、ワイピングの際、ワイパー12の先端部を、記録ヘッド8のノズル形成面に接触可能な位置に配置する。そして、ワイパー12の先端部がノズル形成面に接触した状態で両者を相対移動させることにより当該ワイパー12によってノズル形成面が払拭される。
上記ワイピング機構11に隣接して、上記ホームポジション若しくはその近傍に、キャッピング機構13が配設されている。キャッピング機構13は、記録ヘッド8のノズル形成面に当接し得るトレイ状の弾性部材からなるキャップ14を有する。このキャッピング機構13では、キャップ14内の空間が封止空部として機能し、この封止空部内に記録ヘッド8のノズル34を臨ませた状態でノズル形成面にキャップ14を密着可能に構成されている。すなわち、ノズル形成面に密着したキャップ14と、ノズル形成面とで覆われた空間内にノズル34が位置することになる。また、このキャップ14には、排液チューブを介してポンプユニットが接続されており、このポンプユニットの作動によってキャップ14の封止空部内を負圧化することができる。そして、記録ヘッド8の内部の流路にインクカートリッジ7からのインクを充填する初期充填処理や、記録ヘッド8のノズル34やインク流路の詰まりを解消するためのクリーニング処理においては、キャップ14がノズル形成面に密着した状態でポンプユニットが作動され、封止空部内が負圧化されると、ノズル34から吸引されてキャップ14の封止空部内にインクや気泡が排出される。本実施形態におけるキャップ14は、記録ヘッド8の噴射ユニット23毎に個別に設けられている。したがって、初期充填処理等の際には、全ノズル列49のノズル34から同時に吸引を行うこともできるし、あるいは、各噴射ユニット23について選択的に吸引を行うこともできる。なお、1つの噴射ユニット23のノズル形成面を封止可能な大きさのキャップ14を1つだけ備え、当該キャップ14を使用して各噴射ユニット23に対して順次吸引を行う構成を採用することも可能である。また、上記したオフキャリッジタイプにおいては、記録ヘッド8よりも上流側(インクカートリッジ7側)のインク供給経路を、例えばエアーポンプにより加圧することにより、記録ヘッド8の流路内を加圧して上記の初期充填処理やクリーニング処理を行う構成を採用することも可能である。
図2はカバー17が閉じられた状態におけるヘッドユニット4の上面図であり、図3はカバー17が外された状態におけるヘッドユニット4の上面図である。また、図4はカバー17が外されるとともに第3のインクカートリッジ7cが外された状態におけるヘッドユニット4の上面図である。本実施形態におけるヘッドユニット4は、記録ヘッド8とインクカートリッジ7とをキャリッジ6に取り付けて構成されている。本実施形態におけるキャリッジ6は、上面(プラテン3側とは反対側の面)が開放された箱体状の部材であり、例えば、合成樹脂等から作製されている。このキャリッジ6の底部(底板)には図示しない挿通口が設けられている。この挿通口は、記録ヘッド8におけるホルダー22の本体部22b(後述)のみが挿通可能である一方、インク導入部材21(本発明における被固定部材の一種)およびホルダー22のフランジ部22aは挿通し得ない形状・寸法とされている。これにより、キャリッジ6の内側空間に記録ヘッド8を配置した際に、ホルダー22の本体部22bは、挿通口を通ってキャリッジ6の外側(下面側)に露出する一方、インク導入部材21およびホルダー22のフランジ部22aは挿通口を通過できないためキャリッジ6の底板上面に着座する。キャリッジ6におけるインク導入部材21の配置位置には、後述する調整穴20a〜20cにそれぞれ対応する図示しないネジ穴が合計3箇所形成されている。そして、キャリッジ6に配置された記録ヘッド8は、後述するようにアライメント調整が行われた後、ネジ等の締結部材18(本発明における締結部材の一種であり、広義には調整部材の一種である)が調整穴20を通してネジ穴に螺合されて固定(締結)される。
記録ヘッド8が固定されたキャリッジ6には、当該記録ヘッド8の上部に重ねてインクカートリッジ7が着脱可能に装着される。本実施形態において、キャリッジ6には、合計4色(例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K))のインクカートリッジ7a〜7dがそれぞれ装着される。本実施形態において、第1インクカートリッジ7aにはブラックインクが、第2インクカートリッジ7bにはマゼンタインクが、第3インクカートリッジ7c(本発明における第1の液体容器に相当)にはイエローインクが、第4インクカートリッジ7d(本発明における第2の液体容器に相当)にはシアンインクが、それぞれ貯留されている。このうち第1インクカートリッジ7aの第1方向(カートリッジ並設方向)における寸法は、他のインクカートリッジ7の第1方向の寸法よりも大きく設計されている。このため、第1インクカートリッジ7aの容量は、他のインクカートリッジ7の容量よりも大きくなっている。
本実施形態におけるキャリッジ6には、カバー17が開閉可能に設けられており、閉じた状態ではキャリッジ6に装着された各インクカートリッジ7を部分的に覆うとともにキャリッジ6の底部側に向けて押さえつけることで、インクカートリッジ7をキャリッジ6により確実に装着させる。これにより、記録ヘッド8との接続が不十分になったり、誤って外れたりすることを防止するように構成されている。このカバー17には、開口19が形成されており、当該カバー17が閉じられた状態でインクカートリッジ7の上面の一部が開口19内に露出するように構成されている。また、後述するように、アライメント調整の際に第3インクカートリッジ7cを外してカバー17を閉じた状態で締結部材18(18c)を露出させることができる(図10参照)。開口19の形状に関し、例示したものには限られない。要は、回転軸を中心に回転可能に構成されている締結部材18(あるいは調整部材30)を回転させるための操作位置(回転させるための力を作用させる位置(力点))の締結部材18の回転軸方向の延長線上に開口していれば、どのような形状であってもよい。また、開口19の周囲はカバー17の素材により囲まれていなくても良く、例えば、切欠きのようなものであってもよい。
図5は記録ヘッド8の上面図、図6は記録ヘッド8の正面図である。また、図7は記録ヘッド8のノズル形成面の構成を説明する平面図である。さらに、図8は記録ヘッド8の断面図である。なお、図5において、破線で示す範囲Xは、ノズル形成面の範囲を示している。また、図8においては、第4インクカートリッジ7dからのインク(シアンインク)が導入される第2インク導入針24bから噴射ユニット23に至るまでの流路を主に図示しており、他のインクカートリッジ7からのインクが導入される流路は、同図の奥行き方向において互いに異なる位置を通って各噴射ユニット23とそれぞれ連通している。本実施形態における記録ヘッド8は、インク導入部材21(本発明における流路部材または上流部材の一種)、噴射ユニット23(本発明における噴射機構の一種)、およびホルダー22(本発明における流路部材または下流部材の一種)等を積層して備えている。なお、以下においては、便宜上、各部材の積層方向を上下方向として説明する。
本実施形態におけるインク導入部材21は、記録ヘッド8の上部に配置される部材であり、上面側にインクカートリッジ7a〜7dを配置し得るように、ホルダー22と比べて主走査方向に長尺に形成されている。このインク導入部材21の上面にはインク導入針24が、フィルター25を介在させた状態で複数立設されている。このインク導入針24は、インクの種類(色)毎に設けられている。本実施形態においては、4つのインクカートリッジ7a〜7dに対応して合計4本のインク導入針24a〜24dが主走査方向に沿って並設されている。インク導入部材21およびインク導入針24は、いずれも合成樹脂により作製されている。また、フィルター25は、インク導入針24から導入されたインクを濾過する部材であり、例えば、金属を網目状に編み込んだものや薄手の金属板に多数の穴を開けたもの等が用いられる。このフィルター25によってインク内の異物や気泡が捕捉される。そして、本実施形態においては、キャリッジ6にインクカートリッジ7が装着されると、当該インクカートリッジ7の内部にインク導入針24が挿入されるように構成されている。すなわち、インク導入針24は、キャリッジ6におけるインクカートリッジ7との接続部の一部として機能する。そして、インクカートリッジ7内のインクはインク導入針24の先端部に設けられた導入孔26(図8)から内部流路に導入される。インク導入針24からインクが導入されると、フィルター25を通過してインク導入部材21の内部に形成された導入流路27を通り、インク導入部材21の下方に配置されているホルダー22の供給流路28に流路接続部29を介して供給される。なお、本実施形態におけるインク導入部材21では、針状のインク導入針24がインクカートリッジ7に挿入されてインクが導入される構成が採用されているが、これには限られない。例えば、インク導入部材21のインク導入部分に不織布やスポンジ等の多孔質材が配設され、これに対応してインクカートリッジやサブタンク等の液体容器の導出部分にも同様な多孔質材が設けられ、両者の多孔質部材同士が接触して毛細管現象により液体の授受を行う所謂フォーム形式の構成を採用することもできる。
図5に示すように、インク導入部材21には、キャリッジ6に固定するための締結部材18が挿通される調整穴20が、キャリッジ6のネジ穴に対応させて合計3箇所に形成されている。具体的には、副走査方向における一側(図5における上側)の辺に、主走査方向(インク導入部材21の長尺方向)に沿って相互に間隔を空けて第1調整穴20aと第2調整穴20bとが、形成されている。また、副走査方向における他側(図5における下側)の辺には第3調整穴20cが形成されている。このように、各調整穴20a〜20c(およびこれらに挿通されて組み合わされる各締結部材18a〜18c)のうち、2組がインク導入部材21の副走査方向における一方側の辺に当該インク導入部材21の長尺方向に沿って配置され、また、残りの1組が、インク導入部材21の副走査方向における他方側の辺に配置されることにより、これらの3組が同一直線上に並ばない非直線状(平面視において三角形状)に配置されている。そして、このようなレイアウトを採用することで、これらの3組をそれぞれ通る仮想的な平面が一義的に規定されるので、インク導入部材21(記録ヘッド8)とキャリッジ6とのアライメントを安定させることが可能となる。
各調整穴20a〜20cは、所定の方向において締結部材18の軸径よりも長く設定された長穴になっている。各調整穴20a〜20cの長尺方向は、それぞれ異なっている。例えば、第1調整穴20aの長尺方向は、主走査方向に対して10〜20°の範囲で傾斜している。同様に、第2調整穴20bの長尺方向は、副走査方向に対して10〜20°の範囲で傾斜し、第3調整穴20cの長尺方向は、副走査方向に対して約−10〜−20°(340〜350°)の範囲で傾斜している。このように構成することにより、キャリッジ6に対してインク導入部材21の配置位置の調整(アライメント調整)ができるようになっている。すなわち、記録ヘッド8がキャリッジ6に配置されるとともに締結部材18a〜18cが各調整穴20a〜20cにそれぞれ通されてネジ穴に仮留された状態、つまり、調整穴20と締結部材18の軸との間に形成される隙間の範囲内でインク導入部材21を動かせる状態で、キャリッジ6に対するインク導入部材21、すなわち、記録ヘッド8の主走査方向および副走査方向における位置、および、各方向に対する傾きが微調整できる。
そして、アライメントの調整後には、締結部材18a〜18cによってキャリッジ6にインク導入部材21を固定することで、当該キャリッジ6に記録ヘッド8をアライメントが調整された状態で固定することができる。すなわち、本実施形態においては、これらの調整穴20a〜20cおよび締結部材18a〜18cが、アライメント調整に係る広義の調整部材(広義の調整部材と狭義の調整部材との違いについては後述する)として機能する。すなわち、調整穴20とこれに対応する締結部材18との組み合わせが、噴射ユニット23のインクの噴射に係る調整を行うための調整部材30である。この調整部材30は締結部材を兼ねている。そして、本実施形態において、アライメントの調整のために、各調整部材30a〜30cの締結部材18a〜18cを緩めたりあるいは締めたりする操作や、締結部材18を緩めた状態でキャリッジ6に対してインク導入部材21(記録ヘッド8)の位置を調整する作業が、本発明における調整部材により行われる液体噴射装置の調整に相当する。
これらの調整部材30a〜30cは、インク導入部材21においてヘッドユニット4の構成部材の積層方向(ノズル形成面に直交する方向)で見て記録ヘッド8のノズル形成面よりも外側に外れた位置に配置されている。そして、これらの調整部材30a〜30cのうち、インクカートリッジ7によっては覆い隠されない位置に配置され、しかも主走査方向に沿って並ぶ第1調整部材30aおよび第2調整部材30bに関し、図6に示すように、主走査方向においてインク導入部材21のホルダー22よりも外側に突出した突出範囲(図6における白抜きの矢印で示す範囲であって、主走査方向においてホルダー22の側端にあたるL1からインク導入部材21の側端にあたるL2の範囲)のうちの中心(図6においてLcで示す位置)よりもホルダー22側の範囲内(L1からLcまでの範囲)にそれぞれ位置している。また、第3調整部材30cは、主走査方向において第1調整部材30aと第1調整部材30bとの間の範囲に形成されている。そして、第3調整部材30cは、図4等で示されるように、キャリッジ6に配置された記録ヘッド8の上面において、第3インクカートリッジ7cによって覆われる位置、すなわち、アライメント調整の際に締結部材18cを緩めたり締めたりするためのドライバー等の調整ツールがアクセスすること(調整部材30について位置調整や固定に必要な操作を行うこと)が、第3インクカートリッジ7cによりできない位置に配置されている。当該位置は、第2インクカートリッジ7b等の他のインクカートリッジ7には覆われない位置である。なお、図6において、第1調整部材30aの位置をA、第2調整部材30bの位置をB、第3調整部材30cの位置をCでそれぞれ示している。
このように、インク導入部材21の長尺方向に並ぶ第1調整部材30aと第2調整部材30bとが上記突出範囲に配置されることにより、これらの調整部材30a,30bが、ホルダー22に近い位置に配置される。すなわち、2つの調整穴20a,20bおよび締結部材18の距離が比較的近づく。これにより、後述するアライメント調整の精度を高めつつも、万が一インク導入部材21に反りが生じたとしても、これに追従して噴射ユニット23、特に、ノズル形成面が沿ったり、ノズルから記録媒体までの距離が変わったりすることが抑制される。その結果、アライメント調整の結果が変わってしまうことが抑制される。また、調整部材30の少なくとも一つがインクカートリッジ7によって覆われる位置に配置されることで、調整部材の全てをインクカートリッジに覆われない位置(インクカートリッジが装着された状態で調整ツール等がアクセスできる位置)に配置する構成と比較して、その分だけキャリッジ6、記録ヘッド8、ヘッドユニット4の小型化が可能となる。また、調整部材の全てをインクカートリッジに覆われる位置に配置する構成と比較して、インクカートリッジ7の着脱に係らず、調整部材30を用いた調整を行いやすい。
ホルダー22は、インク導入針24から導入されたインクを噴射ユニット23側に案内する供給流路28や、各噴射ユニット23の圧電素子39を駆動する駆動信号の電気信号を扱う図示しない回路基板等を内部に有する部材である。なお、図8においては、ホルダー22自体に供給流路28が形成されている状態に図示されているが、これには限られず、ホルダー22に収容された流路部材(ホルダー22とは別体の部材)に供給流路28が形成された構成を採用することもできる。本実施形態におけるホルダー22は、インク導入部材21側のフランジ部22aと、これよりも下流側の本体部22bとを有している。フランジ部22aは、主走査方向において本体部22bの寸法よりも大きく、なおかつ、インク導入部材21の寸法よりも小さく形成された部材である。このホルダー22の内部には、インク導入針24ごとに対応して供給流路28がそれぞれ設けられている。各供給流路28は途中で2つに分岐して、それぞれ対応する噴射ユニット23の導入口42と連通される。このように、主走査方向(インクカートリッジ7の並設方向)において、ホルダー22の寸法が、インク導入部材21の寸法よりも小さく設定されており、インクカートリッジ7の大容量化に影響されることなく小型化が図られている。これにより、ヘッドユニット4全体としての小型化や軽量化に寄与することができる。
ホルダー22の内部における下面側には、噴射ユニット23を収容可能な空間である収容空部31が複数区画されている。この収容空部31は、下面側(印刷動作中に記録媒体と相対する側)が開口しており、この開口から固定板32に接合された噴射ユニット23が収容される。固定板32は、例えば、ステンレス鋼等の金属製の板材から構成されている。この固定板32に各噴射ユニット23の下面(ノズルプレート35あるいはノズルプレート35の周囲に配置された部材)が接合されることにより、これらの噴射ユニット23の高さ方向(ノズルプレート35に垂直な方向の位置)が規定されている。また、固定板32には、各噴射ユニット23に対応して開口部33が形成されている。上記のように、固定板32に各噴射ユニット23の下面に接合された状態では、各噴射ユニット23のノズルプレート35のノズル34が形成された領域が、開口部33においてそれぞれ露出する。そして、噴射ユニット23がホルダー22の収容空部31に位置決めされた状態で収容されると、噴射ユニット23のノズル34や圧力室46を含むユニット内流路が、供給流路28と連通する。インクカートリッジ7からインク導入針24を通じて導入されたインクは、フィルター25で濾過された後、導入流路27および供給流路28を通じて噴射ユニット23のノズル34に至るまでのインク流路(液体流路の一種)を満たす。
本実施形態における噴射ユニット23は、ノズルプレート35、連通基板36、圧力室形成基板37、振動板38、圧電素子39、および保護基板40が積層された状態で接着剤等により接合されてユニットケース41に取り付けられている。ユニットケース41は、インクカートリッジ7側からのインクが導入される導入口42と、当該導入口42から導入されたインクを共通液室43側に導入するケース流路44が形成された部材である。ユニットケース41の下面側には、当該下面からユニットケース41の高さ方向の途中まで直方体状に窪んだ収納空部45が形成されている。この収納空部45は、圧力室形成基板37、振動板38、圧電素子39、および保護基板40を収容する空間である。この収容状態で、ユニットケース41の下面には、連通基板36の上面が接合される。
本実施形態における圧力室形成基板37は、例えばシリコン基板から作製されている。この圧力室形成基板37には、圧力室46を区画する圧力室空部が、ノズルプレート35の各ノズル34に対応して異方性エッチングによって複数形成されている。圧力室形成基板37における圧力室空部の一方(上面側)の開口部は、振動板38によって封止される。また、圧力室形成基板37における振動板38とは反対側の面には、連通基板36が接合され、当該連通基板36によって圧力室空部の他方の開口部が封止される。これにより、圧力室46が区画形成される。圧力室46は、ノズル連通口42を介してノズル34と連通するとともに個別連通口47を介して共通液室43と連通する。そして、圧力室46は、ノズル34毎に対応して複数並設されている。連通基板36は、圧力室形成基板37と同様にシリコン基板から作製された板材である。この連通基板36には、圧力室形成基板37の複数の圧力室46に共通に設けられる共通液室43(リザーバーあるいはマニホールドとも呼ばれる)となる空部が、異方性エッチングによって形成されている。この共通液室43は、各圧力室46の並設方向に沿って長尺な空部である。なお、圧力室形成基板37と振動板38とが一体的に形成されていてもよいし、別体的に形成されていてもよい。また、連通基板36を設けずに圧力室形成基板37にノズル連通口42が形成されていてもよい。
図7に示すように、各噴射ユニット23のノズルプレート35は、複数のノズル34が列状に開設された板材である。本実施形態では、所定のピッチでノズル34が複数列設されてノズル列49(本発明におけるノズル群に相当)が構成されている。ノズルプレート35は、例えばシリコン基板から作製され、当該基板に対してドライエッチングにより円筒形状のノズル34が形成されている。本実施形態において、各噴射ユニット23のノズルプレート35には、それぞれ合計2列のノズル列49が形成されており、記録ヘッド8には合計4つの噴射ユニット23が設けられているので、記録ヘッド8には合計8列のノズル列49a〜49hが、主走査方向に並設されている。そして、キャリッジ6に装着される各インクカートリッジ7には、それぞれノズル列49がそれぞれ2列ずつ対応している。より具体的には、第4インクカートリッジ7dのシアンインクは、ノズル列49のうち両端に位置する第1ノズル列49aと第8ノズル列49hに割り当てられている。このシアンインクは、後述する検査パターンの形成に用いられるインクである。同様に、第3インクカートリッジ7cのイエローインクは第2ノズル列49bおよび第7ノズル列49gに、第2インクカートリッジ7bのマゼンタインクは第3ノズル列49cおよび第6ノズル列49fに、第1インクカートリッジ7aのブラックインクは第4ノズル列49dおよび第5ノズル列49eに、それぞれ割り当てられている。
本実施形態においては、検査パターンの形成に使用されるシアンインクに対応する第1ノズル列49aおよび第8ノズル列49hが、少なくともアライメント調整の際に取り外されるインクカートリッジ7cのインク(イエローインク)に対応する第2ノズル列49bおよび第7ノズル列49gを間に挟むようなレイアウトとなっている。このように、検査パターンの形成に使用されるシアンインクが噴射されるノズル列49が複数設けられていることにより、各ノズル列49a〜49hからインクを噴射したときの噴射結果である検査パターンに基づいて行われる後述するアライメント調整をより精度よく行うことができる。また、検査パターンの形成に使用されるシアンインクに対応する第1ノズル列49aおよび第8ノズル列49hが、アライメント調整の際に取り外されるインクカートリッジ7cのインクに対応する第2ノズル列49bおよび第7ノズル列49gよりもノズル列並設方向における外側(各ノズル列49の配列の中心位置を基準として、より外側)に配置されることで、記録ヘッド8にアライメントのずれがある場合には当該アライメントのずれが検査パターンにおいてより顕著に現れるので、検査パターンに基づいてアライメントのずれ量をより特定しやすく、さらに高精度にアライメントを調整することが可能となる。なお、検査パターンの形成に使用されるインクに対応するノズル列49に関し、必ずしも各ノズル列49の並設方向の両端に位置している必要は無く、当該ノズル列49よりもノズル列並設方向の外側に他のノズル列49が位置してもよい。また、アライメント調整の際に取り外されるインクカートリッジ7に対応するノズル列49に関し、当該ノズル列49の一部が、検査パターンの形成に使用されるインクに対応するノズル列49に挟まれていなくてもよい。例えば、アライメント調整の際に取り外されるインクカートリッジ7に対応する2列のノズル列49のうちの一方が検査パターンの形成に使用されるインクに対応するノズル列49の間に挟まれ、他方が検査パターンの形成に使用されるインクに対応するノズル列49に挟まれていない構成とすることもできる。
なお、検査パターンの形成に使用されるインクに対応するノズル列49が少なくとも2列以上設けられていることが望ましいが、これ以外の他の色のインクについては、必ずしも2列のノズル列49が割り当てられていなくてもよい。すなわち、検査パターン形成用のインク以外の各色のインクについてそれぞれ一つのノズル列49が割り当てられる構成や、各色のインクに付いてそれぞれ3列以上のノズル列49が割り当てられる構成を採用することもできる。また、各色のインクに割り当てられるノズル列49の数は、必ずしも同数である必要は無く、例えば、検査パターンの形成に用いられるインクについては複数のノズル列49が割り当てられ、他のインクについてはそれぞれ1列ずつノズル列49が割り当てられる構成であってもよい。また、同一のノズル列49に複数種類(複数色)のインクが割り当てられる構成であってもよい。また、本実施形態においては、1つの第4インクカートリッジ7dからインクが記録ヘッド8のインク流路に供給され、当該インク流路が途中で分岐することで第1ノズル列49aおよび第8ノズル列49hに供給されるが、例えば、インクカートリッジ7とノズル列49とが1対1に対応する構成とすることもできる。例えば、ブラックインクを検査パターンに使用する場合において、当該インクを噴射させるノズル列49が2列設けられた構成においては、当該ブラックインクを貯留したインクカートリッジ7もノズル列49と同数の2つ設けられる。また検査パターンを1列のみのノズル列49で形成してもよいし、検査パターンを2色のノズル列49で形成してもよい。
圧力室形成基板37の上面に形成された振動板38は、例えば厚さが約1μmの二酸化シリコンから構成される。また、この振動板38上には、図示しない絶縁膜が形成される。この絶縁膜は、例えば、酸化ジルコニウムから成る。そして、この振動板38および絶縁膜上における各圧力室46に対応する位置に、圧電素子39がそれぞれ形成されている。本実施形態における圧電素子39、振動板38および絶縁膜上に、金属製の下電極膜、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層、および、金属製の上電極膜(何れも図示せず)が順次積層されて構成される(何れも図示せず)。この構成において、上電極膜または下電極膜の一方が共通電極とされ、他方が個別電極とされる。また、個別電極となる電極膜および圧電体層が圧力室46毎にパターニングされる。
圧力室形成基板37および圧電素子39が積層された連通基板36の上面には、保護基板40が配置される。この保護基板40は、例えば、ガラス、セラミックス材料、シリコン単結晶基板、金属、合成樹脂等から作製される。この保護基板40の内部には、圧電素子39に対向する領域に当該圧電素子39の駆動を阻害しない程度の大きさの凹部48が形成されている。圧電素子39の素子端子には、フレキシブル基板50の一端部と電気的に接続される。プリンターの制御部側からフレキシブル基板50を通じて駆動信号(駆動電圧)が圧電素子39に印加されると、当該圧電素子39は印加電圧の変化に応じて圧電能動部が撓み変形することにより、圧力室46の一面を区画する可撓面、すなわち、振動板38が、ノズル34に近づく側またはノズル34から遠ざかる方向に変位する。これにより、圧力室46内のインクに圧力変動が生じ、この圧力変動を利用してノズル34からインクが噴射される。
図10は、アライメント調整時のヘッドユニット4の状態を説明する平面図である。また、図11は、プリンター1の製造方法について説明するフローチャートである。以下においては、主に、キャリッジ6に対する記録ヘッド8のアライメント調整および固定について説明する。まず、後述するようにアライメント調整に係る検査パターンの形成に使用するインク(本実施形態においてはシアンインク)を記録ヘッド8のインク流路に充填するため、予め記録ヘッド8が締結部材18により仮留された状態のキャリッジ6に対し、インクカートリッジ7が装着される(S1)。ここで、アライメント調整のためには、上記の各調整部材30a〜30cにドライバー等の調整ツールがアクセス可能な状態にする必要がある。そして、本実施形態においては、第3調整部材30cは、第3インクカートリッジ7cに覆われる位置に配置されているので、第3調整部材30cを露出させるべく、少なくとも第3インクカートリッジ7cは装着されない。本実施形態では、カートリッジ装着工程S1において第1インクカートリッジ7a、第2インクカートリッジ7b、および第4インクカートリッジ7dが装着された後、図10に示すように、カバー17が閉じられる。これにより、各インクカートリッジ7a,7b,7dがより確実に装着される。このカバー17には開口19が形成されているので、この開口19内に第3調整部材30cが露出する。このため、この後のアライメント調整の際にカバー17が閉じられたままで第3調整部材30cの第3締結部材18cを緩めたり締めたりするための調整ツールがアクセスすることができる。すなわち、カバー17を閉じた状態でアライメント調整を行うことができる。このため、カバー17が作業の邪魔とならず、作業性が向上する。
続いて、キャッピング機構13によりインクの充填工程が行われる(S2)。すなわち、キャップ14によってノズル形成面がキャッピングされた状態でポンプユニットが作動されて吸引されることにより、キャリッジ6に装着されているインクカートリッジ7内のインクが、記録ヘッド8のノズル34までのインク流路に充填される。ここで、上記のように本実施形態におけるキャップ14は、噴射ユニット23毎に独立しているので、充填対象のインク流路に選択的にインクの充填を行うことができる。すなわち、本実施形態においては、第3インクカートリッジ7cのイエローインクに対応する第2ノズル列49bおよび第7ノズル列49g以外の各ノズル列49a,49c,49d,49e,49f,49hに対応する各インク流路にインクが充填される。ただし、キャップ14が噴射ユニット23毎に独立していなくても、検査パターンの形成に使用するインクが充填されればよい。
充填対象のインク流路にインクが充填されたならば、続いて、キャリッジ6のネジ穴に締め付けられて固定(仮留)されている調整部材30の締結部材18が緩められる(S3)。すなわち、第1調整部材30aの第1締結部材18a、第2調整部材30bの第2締結部材18b、および第3調整部材30cの第3締結部材18cが、それぞれネジ穴から外れない範囲内で図示しない調整ツールによって緩める方向に順次回動されることにより、調整穴20と締結部材18の軸との間に形成される隙間の範囲内でキャリッジ6に対する記録ヘッド8の位置を調整できる状態とされる。広義には、この締結部材18をネジ穴にネジ込んで締結するための操作、または、締結した締結部材18を緩めるための操作(締結を解除するための操作)も本発明における調整部材による調整の一種である。上記のように、第3インクカートリッジ7cによって覆われる位置に設けられた第3調整部材30cに関し、第3インクカートリッジ7cがキャリッジ6から取り外されていることで、カバー17の開口19を通じて第3調整部材30cの第3締結部材18cを調整ツールにより緩める作業(第3締結部材18cを回動させる操作)を行うことができる。
次に、プリンター1に記録用紙がセットされ、当該記録用紙に対して記録ヘッド8のノズル34からインクが噴射されることで検査パターンが印刷(形成)される(S4)。すなわち、この工程は、本発明における噴射工程の一種である。また、これにより形成された検査パターンは、本発明における噴射結果の一種である。検査パターンとしては、例えば、少なくとも2列以上のノズル列49のノズル34からインクを噴射させることにより形成される罫線等が採用される。つまり、主走査方向における位置が異なる複数のノズル列49から罫線(副走査方向に沿った縦罫線または副走査方向に交差する横罫線)を印刷し、これらの罫線の副走査方向における位置に基づき、キャリッジ6に対する記録ヘッド8の傾き(主走査方向および副走査方向に対する傾き)の有無および程度について検査が行われる。この検査は、検査に携わる人員が記録用紙に印刷された検査パターンを目視で確認することにより行われるようにしてもよいし、記録用紙に印刷された検査パターンがスキャナー等により光学的に読み取られ、得られた検査パターンの画像データに基づいて画像処理等により行われるようにしてもよい。このようなキャリッジ6に対する記録ヘッド8の傾きを検査する方法としては周知の種々の方法を採用することができる。要するに、ノズル34からインクを噴射したときの噴射結果に基づきキャリッジ6に対する記録ヘッド8の傾きが把握できる方法であればよい。
本実施形態においては、検査パターンを形成するためのインクとしてシアンインクが用いられる。すなわち、検査パターンを形成する際には、キャリッジ6から取り外された第3インクカートリッジ7cのイエローインクは使用されない。第3インクカートリッジ7cが装着されていない状態で且つ当該第3インクカートリッジ7cに対応するインク流路にイエローインクが充填されていない状態でイエローインクを噴射させるべく、これに対応する噴射ユニット23の圧電素子39を駆動させてもイエローインクに対応するインク流路に気体(空気)が流入してノズル34からインクが正常に噴射されず、検査パターンも正常に形成することができないおそれがあり、調整部材によるアライメント調整に支障が生じる可能性がある。本実施形態においては、検査パターンを形成するためのインクとしてキャリッジ6に装着されている第4インクカートリッジ7dのシアンインクを使用することにより、これに対応するノズル34からインクを噴射させることができ、これにより形成された検査パターンに基づいて調整部材30によるアライメント調整を支障なく行うことができる。また、本実施形態における構成によれば、第3インクカートリッジ7cを装着することなく第4インクカートリッジ7dからのインクを噴射ユニット23が噴射することができるので、調整部材30cによる調整を行うにあたって予め第3インクカートリッジ7cの着脱が不要となる。
また、この検査パターンを形成するためのインクとしては、アライメント調整工程においてキャリッジ6から外されるインクカートリッジ7に貯留されているインク(本実施形態においては、第3インクカートリッジ7cに貯留されているイエローインク)よりも記録媒体(記録用紙)上での輝度(明度)が低いものが使用される。換言すると、第3インクカートリッジ7cに貯留されているイエローインクの輝度は、第2インクカートリッジ7bに貯留されているシアンインクの輝度よりも高い。この輝度は、例えば、JIS Z8729に規定されているL*a*b*表色系(CIELAB色空間)におけるL*値で表されるものである。より具体的には、記録媒体に対し、各インクカートリッジ7のインクを用いてそれぞれ1440×720〔dpi〕の解像度で100%dutyの印刷を行って得られた印刷物の光学濃度(OD)を分光測色計で測定して得られた上記L*を「輝度」としている。なお、上記「duty」とは、下記式(A)で定義され、算出される値Dの単位を示すものである。
D=100×(実印字ドット数)/(縦解像度×横解像度)...(A)
100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。
このように、検査パターンを形成するためのインクとして、アライメント調整工程においてキャリッジ6から外されるインクカートリッジ7のインクよりも輝度が低いものが使用されることにより、検査パターンについて目視で記録ヘッド8の傾き(ノズル位置のずれ)の検査が行われる場合には検査人員により視認しやすくなり、また、検査パターンの画像データに基づいて行われる場合においてもコンピューター等で認識しやすくすることが可能となる。その結果、検査パターンに基づく記録ヘッド8の傾きについての判定精度が向上し、その結果、アライメント調整における調整制度が向上する。
なお、本実施形態においては、検査パターンの形成に使用されるインク(シアンインク)が、記録ヘッド8におけるノズル列49a〜49hのうちノズル列並設方向の両端に位置する第1ノズル列49aと第8ノズル列49hに割り当てられているので、当該シアンインクのみを使用して検査パターンを形成することにより、検査パターンにおいて記録ヘッド8のアライメントずれがある場合には、当該ずれがより顕著に現れるので、キャリッジ6に対する各ノズル34の位置関係をより精度よく検査することができる。このため、本実施形態においては、第3インクカートリッジ7cのみが装着されない構成を例示したが、これには限られず、第3インクカートリッジ7c以外のインクカートリッジ7であって、検査パターンの形成に使用するインク以外のインクのインクカートリッジ7(例えば、第1インクカートリッジ7aおよび第2インクカートリッジ7b)が装着されなくてもよい。このように、アライメント調整時にキャリッジ6に装着されなくても良いインクカートリッジ7が複数となるような構成を採用することで、調整部材30の配置レイアウトの自由度が向上する。
続いて、上記のようにして形成された検査パターンに基づき、記録ヘッド8のアライメント調整が必要か否かについて判定が行われる(S5)。検査パターンに基づく検査の結果、記録ヘッド8のアライメント調整が必要(Yes)と判定された場合、キャリッジ6に対するインク導入部材21の位置を調整することにより、キャリッジ6における記録ヘッド8のアライメント調整が行われる(S6)。その結果として、キャリッジ6に対する記録ヘッド8の各ノズル34の位置関係(キャリッジ6とノズル34から噴射されて記録媒体に形成されたドットとの位置関係)が調整される。上記キャリッジ6における記録ヘッド8のアライメント調整については周知であるため、その詳細な説明は省略するが、調整穴20と締結部材18の軸との間に形成される隙間の範囲内でキャリッジ6に対する記録ヘッド8の位置を調整できるものであれば、種々の調整機構や部材を使用することができる。本実施形態において、上記調整部材30a〜30cとは別途キャリッジ6に設けられた調整機構(狭義の調整部材)を利用してアライメント調整が行われる。例えば、インク導入部材21に当接するカム面を有する図示しない回動式のカム機構やスライド機構、あるいは、インク導入部材21が当接する当接面とインク導入部材21を当接面側に付勢する付勢部材との組み合わせからなる機構等により行われる。その他、例えば、別途の治具により記録ヘッド8を保持し、当該治具により記録ヘッド8とキャリッジ6とを相対的に移動させる構成を採用することができる。
また、上記調整部材30a〜30cとは別途に調整機構を設けることなく、インクカートリッジ7によって覆い隠される位置に配置されている第3調整部材30cが、上記カム機構やスライド機構のような調整機構として機能し、また、インクカートリッジ7により覆われない位置にある第1調整部材30aおよび第2調整部材30bが主に締結部材として機能する構成を採用することもできる。つまり、この場合、第3調整部材30cは、それ自体でアライメント調整を直接的に行う(当該第3調整部材30cの操作によりアライメント対象の部材であるインク導入部材21に力を直接または間接的に作用させる)ための狭義の調整部材として機能する。これに対し、第1調整部材30aおよび第2調整部材30bは、主にインク導入部材21(記録ヘッド8)をキャリッジ6に直接的または間接的に固定・締結するための締結部材として機能し、それ自体ではアライメントの調整を行う機構(狭義の調整部材)としては機能しないが、上記のように調整穴20と締結部材18の軸との間に形成される隙間の範囲内でキャリッジ6に対するインク導入部材21(記録ヘッド8)の位置を調整できるので、間接的にアライメント調整を行う広義の調整部材と言える。
そして、アライメントの調整に直接係る調整部材としての調整機構は、複数あってもよいが、少なくとも一つの調整部材(狭義の調整部材)が、何れかのインクカートリッジ7に覆われる位置に配置され、当該インクカートリッジ7cが外された状態で調整ツール等がアクセスすることができる(そのような位置に配置されている)ことが望ましい。このように、調整部材が、インクカートリッジ7の交換作業等以外においては当該インクカートリッジ7によって覆い隠されて保護される構成とすることで、調整部材に意図しない外力が加わることが抑制される。これにより、アライメントの調整後においてインク導入部材21(記録ヘッド8)の位置ずれが抑制される。また、調整部材の数は、締結部材の数よりも少ないことが望ましい。これにより、調整部材によるアライメント調整の際に、キャリッジ6から取り外す必要のあるインクカートリッジ7の数を削減することが可能となる。
アライメント調整が行われたならば、再度、検査パターンの印刷が行われ(S4)、調整が不要と判定されるまで以降の工程(S4〜S6)が繰り返される。検査パターンに基づく検査の結果、記録ヘッド8のアライメント調整は不要(S5でNo)と判定された場合、すなわち、記録ヘッド8がキャリッジ6に対して傾くことなく正しく取り付けられている(キャリッジ6に対する記録ヘッド8の各ノズル34の位置関係が望ましい状態となっている)と判定された場合、続いて、調整部材30の締結部材18が締めつけられることでキャリッジ6に記録ヘッド8が固定される(S7)。すなわち、本実施形態においては、第1調整部材30aの第1締結部材18a、第2調整部材30bの第2締結部材18b、および第3調整部材30cの第3締結部材18cが、調整ツールにより締め付ける方向に順次回動されることにより、記録ヘッド8がキャリッジ6に本固定される。この場合においても、カバー17の開口19を通じて第3調整部材30cの第3締結部材18cを調整ツールにより締め付ける作業(第3締結部材18cを回動させる操作)を行うことができる。なお、インク導入部材21(記録ヘッド8)とキャリッジ6とは直接固定されていなくてもよく、例えば、インク導入部材21とキャリッジ6との間に別の部材が配置されることで、インク導入部材21がキャリッジ6に間接的に固定される構成であっても良い。
キャリッジ6に記録ヘッド8が固定されたならば、続いて、アライメント調整のために取り外されていた第3インクカートリッジ7cがキャリッジ6に装着される(S8)。この際、アライメント調整の後に既に締結部材18a〜18cにより記録ヘッド8がキャリッジ6に対して本固定されているので、第3インクカートリッジ7cの装着作業に伴い記録ヘッド8とキャリッジ6との間に外力が作用したとしても、記録ヘッド8の位置ずれが抑制され、アライメントの調整結果を良好に維持することができる。続いて、キャッピング機構13により当該第3インクカートリッジ7cに貯留されているインクの充填工程が行われる(S9)。すなわち、第3インクカートリッジ7cのイエローインクに対応する第2ノズル列49bおよび第7ノズル列49g以外の各ノズル列49のインク流路に第3インクカートリッジ7cのイエローインクが選択的に充填される。
以上のようにして、キャリッジ6に対する記録ヘッド8のアライメント調整および固定が行われる。ここで、本願発明に係る製造方法との比較のため、従来の構成において行われていた製造方法について、図12のフローチャートに基づいて簡単に説明する。なお、従来のヘッドユニットにおいて一部の調整部材が特定のインクカートリッジに覆われており、当該インクカートリッジが装着された状態では当該調整部材に調整ツール等がアクセスできないことを前提として説明する。まず、キャリッジに全てのインクカートリッジがキャリッジに装着され(S11)、インク充填後(S12)に、調整部材を覆っているインクカートリッジが外されて、当該インクカートリッジによって覆われていた調整部材を露出させる(S13)。そして、調整部材を緩められた後(S14)、取り外されたインクカートリッジが再度キャリッジに装着される(S15)。検査パターンの印刷(S16)およびアライメント調整(S18)が完了したならば(S17でNo)、調整部材を覆っているインクカートリッジが再度外されて、当該インクカートリッジによって覆われていた調整部材を露出させる(S19)。そして、締結部材によりキャリッジに対して記録ヘッドが本固定された後(S20)、取り外されていたインクカートリッジがキャリッジに装着される(S21)。このように、従来の製造方法では、インクカートリッジの挿抜回数が本願発明に係る製造方法と比較して多くなる。しかも、アライメント調整の後、本固定をする前にインクカートリッジを取り外す際に記録ヘッドとキャリッジとの間に外力が作用して記録ヘッドの位置がずれてしまう虞があった。カートリッジを挿抜する工程を減らす観点では、調整部材をインクカートリッジに覆われない位置に配置する構成を採用することも考えられるが、その分、記録ヘッド(ヘッドユニット)全体が大型化するという問題がある。すなわち、調整部材による固定対象となる部分や当該調整部材を調整するための領域(調整部材の操作に必要な領域)をその位置にまで設けるために、キャリッジ6等を延長する必要があり、装置が大型化する。特にインクカートリッジを大型化するのに伴って記録ヘッドが大型化してしまうので、インクカートリッジの大容量化の障害となってしまう。
これに対し、本願発明に係る製造方法によれば、第3調整部材30cを覆い隠す第3インクカートリッジ7cを取り外した状態で各工程が行われるので、図12で示されるような従来の製造方法と比較して、インクカートリッジ7を挿抜する工程が少なくて済み、製造工程全体の短縮化が可能となる。しかも、アライメントが調整された後、締結部材18により記録ヘッド8がキャリッジ6に本固定される前にインクカートリッジ7が挿抜される工程が無いので、アライメント調整が行われた後に記録ヘッド8がキャリッジ6に対して位置ずれすることが抑制される。そして、調整部材30をインクカートリッジ7によって覆い隠される位置に配置することができるので、その分、記録ヘッド8(ヘッドユニット4)の小型化が可能なり、インクカートリッジの大型化(大容量化)に対応することが可能となる。
図13は、本発明の第2の実施形態におけるアライメント調整時のヘッドユニット4の状態を説明する平面図である(カバー17を取り外した状態)。上記第1の実施形態においてはキャッピング機構13におけるキャップ14が噴射ユニット23毎に個別に設けられているのに対し、第2の実施形態においてはキャップ14が記録ヘッド8の全ノズル列49a〜49hに共通の一つのキャップである構成である点で第1の実施形態と相違している。本実施形態では、第3インクカートリッジ7cを装着しない状態で全ノズル列49a〜49hから同時に吸引を行うと、当該第3インクカートリッジ7cに対応するインク流路が大気と連通しているため、充填対象のインク流路に負圧が十分に作用せず、充填効率が悪化するという問題が生じる。このため、本実施形態における充填処理等の際には、第3インクカートリッジ7cが装着される位置にある第3インク導入針24c(本発明における接続部の一種)に、ダミーカートリッジ51(流通規制部材の一種)が装着される。このダミーカートリッジ51は、インク導入針24に取り付けられることにより、吸引時にインク導入針24の導入孔26からインク流路に空気が流入することを規制する(流体の流入量を調整する)部材であり、例えば、流量制御弁を備えている。このダミーカートリッジ51は、第3インクカートリッジ7cの装着予定位置に装着可能な形状であって、少なくともインクカートリッジ7よりも奥行き方向(副走査方向)の寸法が小さく設計されることにより、キャリッジ6に装着された状態において第3調整部材30cを露出させることができるように構成されている。このようにインクの充填時に第3インクカートリッジ7cが装着される位置にある第3インク導入針24cに、ダミーカートリッジ51が装着されることにより、インクを充填する対象のインク流路に対し吸引による負圧がより効果的に作用し、インクの充填作業をより効率よく円滑に行うことができる。
なお、ダミーカートリッジ51の形状・寸法については例示したものには限られず、要は、インク充填時にインク導入針24の導入孔26からインク流路に空気が流入することを規制することができ、なおかつ、キャリッジ6に装着された状態において第3調整部材30cを露出させることができるものであればよい。また、必ずしもダミーカートリッジ51を使用しなくてもよく、例えば、第3インクカートリッジ7cを装着した状態で当該第3インクカートリッジ7cに対応するインク流路にもインクを充填し、充填後に第3インクカートリッジ7cを外して以降の工程を行うようにすることもできる。
また、上記各実施形態においては、検査パターンを形成するためのインクとしてキャリッジ6に装着されている第4インクカートリッジ7dのシアンインクが用いられる構成を例示したが、これには限られない。例えば、アライメント調整の際にキャリッジ6から取り外されるインクカートリッジ7に貯留されているインクを検査パターンの形成に使用することもできる。すなわち、インクカートリッジ7を取り外す前に当該インクカートリッジ7に対応するインク流路にインクを充填し、充填後に当該インクカートリッジ7が取り外される。そして、検査パターンの形成の際には、当該インク流路に残ったインクが、当該インク流路に対応するノズル列49のノズル34から噴射されて検査パターンが形成される。この際、このままでインクを噴射した場合には、当該インク流路にインク導入針24側から空気が流入し、インクの噴射に支障が生じる可能性がある。その一方で、インク流路に空気が流入しないようにインク導入針24の導入孔26等の入り口を閉塞した場合、噴射ユニット23(圧電素子39)の駆動によりノズル34からインクを噴射するのに伴ってインク流路内の負圧が大きくなり、この場合にもインクを正常に噴射することができないおそれがある。この点に関し、取り外されたインクカートリッジ7の装着位置に上記ダミーカートリッジ51が装着されることにより、上記不具合が抑制される。すなわち、ダミーカートリッジ51が装着されていることにより、インク流路への空気の流入を許容しつつその流入量が規制されるので、圧力室46へのインクの供給圧が望ましい状態に調整され、これにより、上記不具合を低減することができる。この構成においても、検査パターンの形成に使用されるインクとして、当該検査パターンの視認等に有利なインク(輝度がより低いインク)を使用することが望ましい。
上記各実施形態では、噴射ユニット23(噴射機構)の噴射に係る調整としてインク導入部材21(流路部材)とキャリッジ6(容器保持部材)とのアライメント調整を例示したが、これには限られず、噴射機構による噴射結果に基づいて調整を行う構成であれば、例えば、容器保持部材に設けられた光学センサー等の調整にも本発明を適用することができる。このセンサーとしては、噴射機構により噴射される液体の着弾対象に着弾した液体(ドット)を認識するためのセンサー、ノズルから液体の着弾対象までの距離を計測するセンサー、あるいは、液体の着弾対象の端を認識するためのセンサー等が挙げられる。そして、噴射機構による噴射結果に基づき、イニシャライズとして上記センサーをより望ましい位置(噴射結果としての検査パターンをより明確に認識できる位置)に配置するべく調整部材によるアライメント調整を行ったり、あるいは、センサーの配置を変えることなく焦点等の調整を行ったりする構成を採用することもできる。これらの調整も液体噴射装置の調整の一種である。
また、例えば、噴射機構への液体の供給圧の調整する機構を備える構成にも本発明を適用することができる。例えば、噴射機構による噴射結果(ドットの大きさや着弾位置等)に基づき、ネジ等の調整部材の回転量によって流路の断面積を変えて噴射機構への液体の供給圧を変更することにより、噴射機構のノズルから噴射される液体の噴射特性を調整する構成においても本発明を適用することができる。さらに、噴射機構のノズルから液体の着弾対象までの距離(所謂プラテンギャップあるいはペーパーギャップとも呼ばれる)を調整する調整部材を備えた構成にも本発明を適用することができる。例えば、噴射機構による噴射結果として、液体の噴射に伴って生じる不要な液滴(サテライト滴)の量が相対的に多ければ調整部材により上記距離をより小さく設定して、印刷品質をより重視するように調整したり、サテライト滴の量が相対的に少なければ調整部材により上記距離をより大きく設定して、噴射機構へのメディア(着弾対象)の衝突やゴミの付着量の低減をより重視するように調整したりすることができる。これらの調整も液体噴射装置の調整の一種である。なお、これらの噴射結果に基づく調整のために、検査パターンは必ずしも必須ではなく、センサー等により調整の要否や調整の程度を特定してもよい。
そして、上記各実施形態においては、液体噴射装置としてプリンター1を例示したが、例えば、より広義には、ヘッドユニット4も液体噴射装置の一種である。また、本発明は、ノズルから液体を噴射させる他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドでは液体の一種としてR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液体の一種として液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは液体の一種として生体有機物の溶液を噴射する。