<画像形成装置>
本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態の画像形成装置100は、電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する。画像形成装置100は、装置本体100Aに接続された原稿読取装置(不図示)又は装置本体100Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器からの画像信号に応じてトナー像を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
図1に示すように、画像形成部PY、PM、PC、PKは、中間転写ベルト8の移動方向に沿って並べて配置されている。中間転写ベルト8は複数のローラに張架されて、矢印R2方向に走行するように構成されている。そして、中間転写ベルト8は後述するようにして一次転写されたトナー像を担持して搬送する。中間転写ベルト8を張架するローラ9と中間転写ベルト8を挟んで対向する位置には、二次転写ローラ10が配置され、中間転写ベルト8上のトナー像を記録材に転写する二次転写部T2を構成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には定着装置11が配置されている。
画像形成装置100の下部には、記録材が収容されたカセット12が配置されている。記録材は、搬送ローラ13によりカセット12からレジストレーションローラ14に向けて搬送される。その後、レジストレーションローラ14が中間転写ベルト8上のトナー像と同期して回転開始されることにより、記録材は二次転写部T2に搬送される。
画像形成装置100が備える4つの画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。従って、ここでは代表して画像形成部PKについて説明し、その他の画像形成部については説明を省略する。
図2に示すように、画像形成部PKには、像担持体として円筒型の感光体、即ち感光ドラム1が配設されている。感光ドラム1は、矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲にはコロナ帯電器2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、クリーニング装置6が配置されている。
上述のように構成される画像形成装置100により、例えば4色フルカラーの画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム1の表面(感光体表面)がコロナ帯電器2によって一様に帯電される。コロナ帯電器2は、コロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム1を一様な負極性の暗部電位に帯電させる。コロナ帯電器2については詳細を後述する(図3〜図5参照)。次いで、感光ドラム1は、露光装置3から発せられる画像信号に対応したレーザー光Lにより走査露光される。これにより、感光ドラム上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム上の静電潜像は、現像装置4内に収容されたトナーによって顕像化され、可視像となる。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト8を挟んで配置される一次転写ローラ5との間で構成される一次転写部T1にて、中間転写ベルト8に一次転写される。この際、一次転写ローラ5には一次転写バイアスが印加される。一次転写後に感光ドラム1の表面に残ったトナーなどは、クリーニング装置6によって除去される。
このような動作をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部で順次行い、中間転写ベルト8上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングにあわせてカセット12に収容された記録材が二次転写部T2に搬送される。そして、二次転写ローラ10に二次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト8上の4色のトナー像を、記録材上に一括して二次転写する。
次いで、記録材は定着装置11に搬送される。定着装置11は、搬送される記録材を加熱、加圧する。これにより、記録材上のトナーが溶融、混合されて、フルカラーの画像として記録材に定着される。その後、記録材は排出トレイ15に排出される。こうして、一連の画像形成プロセスが終了する。
<コロナ帯電器>
次に、コロナ帯電器2の構成について図3乃至図5を用いて説明する。本実施形態のコロナ帯電器2はスコロトロンであり、図3には感光ドラム側から視たコロナ帯電器2を示した。コロナ帯電器2は画像形成装置100の装置本体100A(図1参照)に挿抜可能に設けられ、図3に示すように、感光ドラム1の回転軸線方向(長手方向)に沿って感光ドラム1に対向する位置に配置される。
コロナ帯電器2は、シールド電極としての一対のシールド板203と、コロナ帯電器2の挿入方向(図中矢印X方向)の手前側に配置された前ブロック201と、コロナ帯電器2の挿入方向の奥側に配置された奥ブロック202とを有する。シールド板203はステンレス鋼(SUS)を用いて形成され、筐体90の短手方向(感光ドラム1の回転軸線方向に交差する幅方向)に所定間隔で互いに対向するように配置されている。シールド板203と前ブロック201と奥ブロック202とは、断面が略コの字状の開口した筐体90を形成する。前ブロック201と奥ブロック202は、後述の放電ワイヤ205(図4参照)を感光ドラム1の長手方向に張架し、またグリッド206を保持する。
<放電ワイヤ>
図4に示すように、コロナ帯電器2は、放電電極としての放電ワイヤ205と、制御電極としてのグリッド206とを有する。放電ワイヤ205は、一対のシールド板203の内側(筐体内)に配置されている。放電ワイヤ205は、不図示の高圧電源から帯電電圧が印加されることによってコロナ放電を生じる。放電ワイヤ205は、例えばステンレススチール、ニッケル、モリブデン、タングステンなどが用いられ、これらがワイヤ状に形成されたものである。放電ワイヤ205は直径が小さくなるにつれ、放電に伴い発生するイオンの衝突により切断等しやすくなる。反対に、放電ワイヤ205は直径が大きくなるにつれ、安定したコロナ放電を生じさせるために帯電電圧をより高くする必要がある。しかしながら、帯電電圧を高くしすぎると、放電に伴いオゾンが発生しやすくなる。上記点に鑑み、放電ワイヤ205は、直径が40μm〜100μmに形成するのが好ましい。なお、放電電極は上記の放電ワイヤ205に限らず、長手方向に凹凸状に形成されたのこぎり歯を有するものでもよい。
<グリッド>
グリッド206は、感光ドラム1の表面に近接されるように筐体90の開口部90aに、感光ドラム1と放電ワイヤ205との間に着脱自在に設けられている。グリッド206は、不図示の高圧電源から高圧電圧が印加されることに伴って感光ドラム側に流れる電流量を制御し得る。これにより、感光ドラム1の表面の帯電電位が制御される。グリッド206は感光ドラム表面に近付けたほうが、感光ドラム表面を均一に帯電する効果を高くし得る。本実施形態では、グリッド206と感光ドラム1との最近接距離を「1.5±0.5mm」とした。
グリッド206は、例えば厚みが1mm以下の薄い板状の金属平板(薄板)の基材206cにエッチング処理を施すことによって多数の貫通孔が形成された網目部分を有した、所謂エッチンググリッドである。本実施形態では、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)からなる厚さ約0.1mmの薄板を用いた。なお、基材206cとしては他にも、マルテンサイト系ステンレス鋼あるいはフェライト系ステンレス鋼等を用いてよい。
ここで、グリッド206の形状について図6を用いて説明する。参照しやすくするために、図6において符号「a〜f」を付した箇所の寸法を表1にまとめて記した。
貫通孔206aは、開口幅「0.312±0.03mm」となるように(図6中のa参照)、貫通孔206a以外の基材206c(図4参照)の残り部分が幅「0.071±0.03mm」となるように形成される(図6中のb参照)。また、貫通孔206aは、グリッド206の長手方向に延びる仮想線に対し角度「45±1°」(図6のc参照)に形成される。貫通孔206aの部分と、貫通孔206a以外の残り部分との面積比が大きいほど、感光ドラム1の表面を均一に帯電する効果が高い。グリッド206の短手方向には、「6.9±0.1mm」間隔毎に(図6中のe参照)、幅「0.1±0.03mm」(図6中のd参照)の梁206bがグリッド206の長手方向に設けられている。なお、グリッド206の短手方向の両端部には、幅「1.5±0.1mm」程度に基材206cを残しておくのが好ましい(図6中のf参照)。また、グリッド206は網目状に形成されることに限られず、例えばハニカム状に形成されてもよい。
<グリッドの保護層>
グリッド206の表面には、耐腐食性の向上を目的にコーティングなどと呼ばれる表面処理が施されて、保護層が形成される。即ち、コロナ放電により生成されるNOxなどの放電生成物は酸化剤として作用する。そのため、グリッド206が比較的高い耐腐食性を有するステンレス鋼などを用いて形成されたとしても、その表面には絶縁性の金属酸化物が発生し得る。ただし、ステンレス鋼の表面にはクロム酸化物を主成分とした不動態膜が形成されやすく、この不動態膜は金属素地を外界から遮断し得る。そして、不動態膜は自然に補修することが知られている。それ故、ステンレス鋼は耐腐食性の高い状態が比較的に長い期間にわたって維持される。
しかしながら、グリッド206にステンレス鋼を用いた場合、グリッド206は極めて過酷な環境(高温、高濃度のオゾン、NOx環境)にさらされる。とりわけ、高湿環境下では不動態膜の自己補修が間に合わなくなり、発錆等による腐食損傷が生じてしまいやすい。これは、酸化性物質(オゾン、NOx等)により不動態膜中のクロム等の金属原子が破壊され、不動態膜が自己補修される前に酸化性物質と反応するからである。具体的には、空気中の水分に溶けたオゾンの一部が分解してフリーラジカル(OH)となり、これによりオゾンの間接酸化反応が起きてステンレス鋼が酸化する。これを避けるため、グリッド206の表面には防錆効果のある保護層が形成される。
本実施形態では、コロナ放電によって発生する放電生成物に対して化学的に不活性度が高い材料であるテトラヘデラルアモルファスカーボン(Tetrahedral Amorphous Carbon:以下ta−Cと略す)の保護層が形成されている。本実施形態では、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc Technology)法を用いて、基材206cに保護層としてta−C層を形成した。ta−CはDLC(Diamond Like Carbon)の一種であり、水素を若干含有したダイヤモンド結合(sp3結合)とグラファイト結合(sp2結合)とが混在した非晶質構造である。ta−Cは他の材料に比べると、常温で空気や水等に対して不活性、耐腐食性、低摩耗性、自己潤滑性、高硬度、表面平滑性に優れている。また、ta−Cは化学的吸着及び酸化反応等が起き難く、さらに磨耗や傷の発生による部分的な劣化が生じ難い。
図8に、ta−Cの構造を示す。図8において白丸が炭素原子を、白丸を結ぶ線が結合状態を示す。ta−Cはミクロ的にみれば四面体結晶構造を有し、マクロ的にみれば非晶質構造を持つ化学種(アモルファス)である。ta−Cは、炭素のダイヤモンド構造とグラファイト構造の組成比(以下、結合割合と呼ぶ)に応じて耐摩擦性や耐磨耗性などが変化する。なお、sp3混成軌道のみ炭素原子が結晶化すると、図9(a)に示すようなダイヤモンド構造となる。同様に、sp2混成軌道のみ炭素原子が結晶化すると、図9(b)に示すようなグラファイト構造となる。
上記のように、ta−Cにより保護層を形成した場合、ta−C層中の炭素はダイヤモンド構造とグラファイト構造が一定の割合で存在する。そして、発明者らが検討したところによると、グラファイト構造よりダイヤモンド構造を多く含む方が、耐腐食性や耐摩耗性に優れることが分かった。即ち、グラファイト構造の結合割合が多い場合、グラファイト平面層間にミクロ孔充填が発生しやすく、他の化学種(例えばオゾン、放電生成物、遊離基)を吸着、充填しやすい状態になる。そして、腐食の発生は両構造で変わりないことから、もらい錆等の他因子による腐食が影響したと考えられる。これに対し、ダイヤモンド構造の結合割合が多い場合には、ナノ細密構造となって結晶構造の割合が高くなることから、他因子による影響が抑制されたと考えられる。
本実施形態のta−C層に関しては、6:4以上でグラファイト構造よりもダイヤモンド構造を多く含む結合割合とするのが好ましい。発明者らの検討によれば、7:3以上でグラファイト構造よりもダイヤモンド構造を多く含む結合割合とすると、より好ましいことが分かった。そこで、本実施形態では、ダイヤモンド構造とグラファイト構造の結合割合が7:3となるようにta−C層を形成した。なお、ta−C層中の炭素のダイヤモンド構造とグラファイト構造の結合割合は、ラマン顕微鏡(例えば、ナノフォトン社製RAMAN−11)などを用いて検出することができる。具体的には、レーザー光をta−C層に照射して得られるラマン散乱光を分光器や干渉計で検出することによってスペクトル分布を得て、各スペクトルのピークに基づいてダイヤモンド構造とグラファイト構造の結合割合を検出できる。
なお、上記の結合割合を変更してta−C層を形成するにはFCVA法の他に、レーザーアブレーション法、高周波マグネトロンスパッタリング法等を用いてもよい。この場合、基板温度、パルス電圧、アシストガス流量、雰囲気内ガス種及びアニール処理温度を設定することにより、様々な結合割合でta−C層を形成することが容易にできる。
グリッド表面にta−C層を形成する際には、帯電性能を阻害することなく高い腐食効果を得ることができるように、体積抵抗率、層厚、表面の平滑性などが調整される。ta−C層の体積抵抗率は107〜1010Ω・cm程度であればよいが、108〜109Ω・cm程度であればより好ましい。
<保護層の形成>
本実施形態では、上記のようにFCVA法を用いて基材206cにta−C層を形成した。ta−Cはクロムよりも耐腐食性等の面で優れた特性を有するが、形成方法が限られる。具体的には、ta−Cを基材上に蒸着することでta−C層を形成つまりは成膜する。ただし、蒸着による形成方法はめっき液に基材206cを浸ける「液浸めっき」による形成方法と異なり、基材206cの両面に略同一厚さの保護層を形成するのが難しい。これは、蒸着による場合、低圧の保護膜形成室(チャンバーなどと呼ばれる)内に収容された基材206cに対し、材料のta−Cを一方向から吹きつけてta−C層を形成するからである。なお、本実施形態の場合には層厚の10%、具体的には±0.005μm程度までの誤差を略同一厚さと呼んでいる。
FCVA法により基材206cにta−C層を形成する際には、黒鉛からバキュームアーク放電により炭素プラズマを発生させ、そこからイオン化した炭素を抽出し、基材上に堆積させる。ta−C層は放電ワイヤ205や感光ドラム1に対向する基材206cの対向面だけでなく、それ以外の基材206cの側周面にも形成される。ta−C層の形成温度は0℃以上350℃以下が好ましく、40℃以上220℃以下がより好ましい。そして、ta−C層の形成速度は例えば1.5nm/secに設定される。なお、ta−C層はFCVA法の他に、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって形成してもよい。
FCVA法等の蒸着によってta−C層を形成する場合、基材上に形成されるta−C層は指向性を有する。つまり、ta−Cを吹き付ける面とその反対側の面では、ta−C層の形成速度が異なる。ここで、エッチング処理後の基材206cである場合には、貫通孔から炭素プラズマが通過して反対側の面に回り込みやすい。そのため、基材206cの片面側からta−Cを吹き付けるだけでも、反対側にも十分な厚みのta−C層を形成することができる。ただし、両面からta−Cを吹き付けるわけではないので、一方の面のta−C層は他方の面のta−C層よりも厚く形成されやすい。なお、蒸着により両面でta−C層を略同一厚さに形成するには、基材206cの両面からta−Cを吹き付ければよい。しかしながら、両面側からta−Cを吹き付ける場合は、片面側からta−Cを吹き付ける場合に比べてコストが高くなるので好ましくない。
<保護層の層厚>
ta−C層の厚さは、エッチング処理により形成された貫通孔206a(図6参照)のエッジ部分で、ta−C層の形成不良が発生しない層厚に形成されるのが望ましい。これは、エッジ部分においてta−C層の形成不良が発生すると、画像形成時にエッジ部分に腐食電流が集中するためである。なお、ta−C層が0.02μm未満の厚さに形成されると、エッジ部分で形成不良が発生しやすくなる。そのため、ta−C層は0.02μm以上の厚さに形成されるのが好ましい。
本実施形態ではグリッド206の表面に付着した付着物を除去するために、グリッド206は清掃ブラシ250によって清掃される(図4参照)。そして、清掃ブラシ250に清掃させるため、詳しくは後述するが、グリッド206は引き込み部材252により清掃ブラシ250側に引き込まれる。その際に、グリッド206は引き込み部材252に摺擦され移動するので、引き込み部材252と摺擦する部分(図6においてgで示す)で局所的な摩耗が生じやすい。そのため、グリッド206の引き込み部材252と摺擦する面側(ここでは感光ドラム側)の層厚が反対の面側(ここでは放電ワイヤ205側)の層厚よりも厚くなるように、ta−C層を形成するのがよい。例えば、グリッド206の放電ワイヤ205側の層厚に対して、感光ドラム側の層厚を1.15倍〜2.0倍とする。放電ワイヤ側の面と感光ドラム側の面の汚染、摩耗をほぼ同程度とするには、感光ドラム側の層厚を1.2倍〜1.8倍にするのがより好ましい。ただし、グリッド206の層厚を厚くすれば、グリッド206に保護層を形成するのに時間がかかるなどして、コストアップを招くため好ましくない。この点に鑑み、本実施形態では、放電ワイヤ側の層厚を0.05μm、感光ドラム側の層厚を0.07μmとしてta−C層を形成した。
ta−C層の層厚に関し、基材206cの色とta−C層の色とに差があれば、これらの光学濃度を測定することによってta−C層の層厚は検出され得る。具体的に、ステンレス鋼は銀白色であり、ta−C層は層厚が厚くなるのにつれて赤茶色〜青紫色(群青色)〜青みがかった銀色に変わる。そこで、ta−C層の層厚は色味や濃度差に基づいて検出することができる。なお、ta−C層の層厚をより正確に検出する場合には、グリッド206の断面を電子顕微鏡等を用いて観察すればよい。
ところで、グリッド206の表面粗さは、ta−C層の表面積が大きくなることにより粗くなる。そして、ta−C層の表面積が大きくなるにつれて、グリッド206の表面に放電生成物やエアロゾル、またトナーやトナーの外添剤等の付着物が付着しやすくなる。グリッド206の表面に付着した付着物はグリッド206を腐食させる原因となり、既に述べたように、感光ドラム表面を一律に帯電できなくなり、もって画像不良を招き得る。そのため、グリッド206の表面は平滑に形成されるのが好ましい。
また、グリッド206は清掃ブラシ250(図4参照)によって清掃されるが故に、清掃ブラシ250との接触によるta−C層の摩耗はできる限り抑制するのがよい。ta−C層は対摩耗性に優れていることから、清掃ブラシ250との接触摩擦が生じるグリッド206の保護層に用いるのに好適であるが、ta−C層の摩耗をより抑制するためにも、グリッド206の表面は平滑に形成されるのが好ましい。
上記点に鑑み、グリッド206の表面は算術平均高さRa(JIS−B0601:2001)が2.0μm以下であるのが望ましい。算術平均高さRaが1.0μm以下であれば、放電生成物の他にもトナーやトナーの外添剤などの付着を抑制できるので、より好ましい。本実施形態の場合、グリッド206の表面は、算術平均高さRaが0.05〜0.2μmとなるように形成されている。なお、こうした算術平均高さRaのグリッド206を形成するためには、基材206cであるステンレス鋼の表面の算術平均高さRaが1.5μm以下である必要がある。これは、グリッド206の算術平均高さRaは、ta−C層よりも下地であるステンレス鋼の表面粗さに大きく影響されるからである。本実施形態の場合、算術平均高さRaが0.05〜0.2μmのステンレス鋼を用いた。これにより、耐腐食性に加えて耐摩耗性や耐付着性が良好なグリッド206を提供することができる。なお、保護層を形成する材料は上述したta−Cを用いるのが好ましいが、それ以外のDLC(Diamond Like Carbon)を用いてもよい。
<シャッタ>
コロナ帯電器2の説明に戻り、コロナ帯電器2は、図3に示すように、グリッド206と感光ドラム1との間を移動し得るシャッタ210を有する。シャッタ210は、グリッド206と感光ドラム1との間をグリッド206の長手方向に移動して、筐体90の開口部90a(図4参照)を開閉自在に設けられている。シャッタ210は、例えばレーヨン繊維などの柔らかい可撓性の不織布を用いて、厚み100μm程度の薄いシート状に形成されている。勿論、これに限られず、シャッタ210は薄いシート状に形成可能であれば、ナイロン繊維を編んだものや、ウレタンやポリエステル等のフィルムなどを用いて形成されていてもよい。シャッタ210は筐体90の開口部90aを覆い得るように、幅方向(短手方向)の長さが一対のシールド板203の間隔よりも広めに形成されている。
図5(a)及び図5(b)に示すように、シャッタ210は長手方向の一端が巻き取り機構211に接続され、巻き取り機構211によって長手方向へ移動される。巻取り機構211は、シャッタ210をロール状に巻き取って収納する。図5(a)に示すように、シャッタ210が全て巻き取り機構211に巻き取られた位置(開位置)にある場合、筐体90の開口部90aは開口された状態である。反対に、図5(b)に示すように、シャッタ210が全て巻き取り機構211から引き出された位置(閉位置)にある場合、筐体90の開口部90aは遮蔽された状態にある。即ち、シャッタ210は、感光ドラム1の一端側(図5(b)の右側)に移動されることで筐体90の開口部90aを遮蔽し、他端側(図5(a)の左側)に移動されることで筐体90の開口部90aを開口する。
巻取り機構211は、巻取り機構211を保持する保持ケース214ととともに前ブロック201に保持されている。保持ケース214のシャッタ引出部近傍には、シャッタ210がグリッド206のエッジ、保持部207、つまみ208などと当接して、シャッタ210の引き出し動作が阻害されないように、シャッタ210を案内するガイドコロ215が配置されている。
巻き取り機構211と反対側のシャッタ210の他端は、板ばね212に保持されている。板ばね212はシャッタ210を閉位置方向に付勢すると共に、閉位置でシャッタ210をアーチ状に維持することができる。シャッタ210は閉位置で、幅方向(短手方向)の中央付近が放電ワイヤ側に向けて凸状となるように維持されることによって、筐体外へ放電生成物を漏れ難くしている。
板ばね212は、キャリッジ213に接続されている。キャリッジ213は、駆動スクリュ217の回転により駆動される。駆動スクリュ217は、モータMにより回転駆動される。キャリッジ213が閉位置方向に移動するのに応じて、シャッタ210は巻取り機構211から引き出される。反対に、キャリッジ213が開位置方向に移動するのに応じて、シャッタ210は巻取り機構211により巻き取られる。なお、板ばね212は例えば厚さ0.10mmの金属を用いて形成され、薄いながらもシャッタ210を保持するに耐える強度が確保されている。
<光学センサ>
上述のシャッタ210が開位置にあるか閉位置にあるかを検出するために、コロナ帯電器2には検出手段としての第一の光学センサPS1、第二の光学センサPS2が設けられている。光学センサPS1、PS2はシャッタ210の位置検出、具体的にはシャッタ210が巻き取り機構211に巻き取られた状態(開位置)か巻き取られていない状態(閉位置)かを検出する。本実施形態の場合、光学センサPS1、PS2はシャッタ210が開位置にある場合と閉位置にある場合とでそれぞれ所定の信号を出力可能に、駆動スクリュ217の軸上方の二箇所に配置されている。
光学センサPS1、PS2としては、例えば光を照射する発光部と、発光部から照射された光を受光する受光部とが対向配置されたフォトインタラプト式のセンサを用いるのが好ましい。フォトインタラプト式のセンサの場合、遮蔽部材220がキャリッジ213に設けられる。遮蔽部材220は、キャリッジ213つまりはシャッタ210の移動に応じて移動される。遮蔽部材220が光学センサPS1、PS2を遮蔽した遮蔽位置にある場合、光学センサPS1、PS2は所定の信号(ここでは光量に応じた信号)を出力する。反対に、遮蔽部材220が光学センサPS1、PS2を遮蔽していない非遮蔽位置にある場合、光学センサPS1、PS2は所定の信号を出力しない。本実施形態では、図5(a)に示すように、巻取り機構211側に近い方に配置された光学センサPS1から所定の信号が出力されている場合、シャッタ210は開位置にある。他方、図5(b)に示すように、巻取り機構211側から遠い方に配置された光学センサPS2から所定の信号が出力されている場合、シャッタ210は閉位置にある。
そして、上述したグリッド206は、前ブロック201と奥ブロック202にそれぞれ配置された保持部207、209に保持されている。グリッド206は、使用者によりつまみ208が操作されることに応じて、保持部207、209から取り外されたり、取り付けられたりされるようになっている。つまり、グリッド206は筐体90に対し着脱可能に設けられていることから、使用者は交換することができる。なお、図5(b)に示すように、グリッド206は保持部209付近で一部が放電ワイヤ側に曲げられたアーチ状に形成されていてよい。こうした場合、グリッド206は例え外力を受けたとしても伸縮して外力を吸収し得るので、グリッド206が壊れたりあるいは保持部207、209から外れたりし難くなる。
<清掃パットと清掃ブラシ>
また、コロナ帯電器2は、放電ワイヤ205を清掃する清掃パット216と、グリッド206を清掃する清掃ブラシ250とを有する。これら清掃パット216と清掃ブラシ250は、キャリッジ213に保持されている。それ故、清掃パット216と清掃ブラシ250は、モータMの駆動に応じてグリッド206の長手方向に往復動される。特に清掃ブラシ250は、シャッタ210の開位置と閉位置間の移動にあわせてグリッド206に対して長手方向に往復動する。清掃パット216は、例えばスポンジを用いて形成され、放電ワイヤ205を両側から挟み込んだ状態で往復動することで放電ワイヤ205を清掃する。
図4に示すように、清掃部材としての清掃ブラシ250は、ABS樹脂やポリカーボネート樹脂などを用いて形成されたブラシホルダ251に着脱可能に保持される。つまり、清掃ブラシ250はブラシホルダ251から取り外して交換可能に、コロナ帯電器2に設けられている。清掃ブラシ250は、樹脂製ブラシを難燃化処理して基布に織り込んだものを用いる。本実施形態では、太さが9デシテックスのアクリル製のパイルを7万本/インチの密度で、ブラシ先端が清掃時にグリッド206側に0.3〜1.0mm程、侵入可能な長さに織り込まれた清掃ブラシ250を用いた。なお、清掃ブラシ250は、ナイロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の樹脂製ブラシを用いたものでもよい。また、ブラシ状のものに限らず、例えばフェルトやスポンジなどによって形成されたパット状のもの、あるいはアルミナや炭化珪素などの研磨剤を塗布したシート状のものなどを用いたものでもよい。
本実施形態の場合、清掃ブラシ250にグリッド206を清掃させるため、グリッド206は感光ドラム側から放電ワイヤ側に移動(引き込み)される。即ち、グリッド206は清掃前、感光ドラム側の清掃ブラシ250に接触しない待機位置に待機している。そして、グリッド206は清掃時、キャリッジ213の短手方向両端に配置されている引き込み部材252(図6参照)によって、待機位置と清掃ブラシ250に接触する清掃位置との間を移動されながら、清掃ブラシ250によって清掃されていく。引き込み部材252については後述する(図7(a)及び図7(b)参照)。清掃ブラシ250はグリッド206の清掃時、ブラシホルダ251によってブラシ先端のグリッド206に対する上記の侵入量が維持されたまま移動される。即ち、ブラシホルダ251は清掃ブラシ250を保持する機能に加え、清掃時の清掃ブラシ250の侵入量を規定するガイドとしての機能を有している。
<引き込み部材>
グリッド206を清掃位置と待機位置とに移動する引き込み部材252について、図7(a)及び図7(b)を用いて説明する。図7(a)及び図7(b)には、感光ドラム側から視たコロナ帯電器2を示した。即ち、図7(a)及び図7(b)では図面上側が重力方向である。図7(a)及び図7(b)に示すように、引き込み部材252はキャリッジ213からシールド板203よりも内側に向けて突出するように設けられている。引き込み部材252はキャリッジ213の移動方向に延設されて、テーパ部252aと摺擦部252bとを有する。テーパ部252aは、コロナ帯電器2の挿入方向(図中矢印X方向)に進むにつれて感光ドラム側に近付くように形成された傾斜面である。他方、摺擦部252bはテーパ部252aよりも前ブロック201側に形成された水平面である。
図7(a)に示すように、引き込み部材252は、キャリッジ213が閉位置方向に移動するのに応じて図中矢印X方向に移動する。引き込み部材252の移動に応じて、グリッド206はテーパ部252aに沿って感光ドラム側へ向け重力方向反対側(図面上側)に押し上げられるようにして移動される。テーパ部252aにより重力に逆らって押し上げられたグリッド206は局所的に変形する。そして、図7(b)に示すように、摺擦部252bまで進むと、グリッド206は摺擦部252bにより放電ワイヤ側(図面下側)へ変位する力Fを受けて、変位した状態に保持される。即ち、グリッド206はキャリッジ213の移動に応じて、感光ドラム側から放電ワイヤ側へと押圧される。上述したように、キャリッジ213には清掃ブラシ250が保持されていることから、清掃ブラシ250はキャリッジ213が移動すると同様に移動する。その際に、清掃ブラシ250は感光ドラム側から放電ワイヤ側へ押圧されたグリッド206に接触しながら移動され、グリッド206を清掃していく。
上述のように、引き込み部材252はグリッド206と摺擦して移動されるため、清掃ブラシ250による清掃回数が増えるにつれて、グリッド206は局所的に摩耗し得る。図6には、引き込み部材252との摺擦により摩耗するグリッド206の箇所を示してある。図6に示すグリッド206の箇所gが、引き込み部材252と摺擦する箇所である。グリッド206の箇所hは、引き込み部材252と摺擦しない箇所である。図6に示すように、引き込み部材252はグリッド206に形成された網目部分と接触しないように設けられている。これは、網目部分において貫通孔206a以外の基材206c(図4参照)の残りの部分は細いが故に、引き込み部材252に摺擦されると切断され得るからである。
既に述べた通り、グリッド206は劣化して感光ドラム1に対する帯電性能が低下することから、グリッド206は交換した方がよい。他方、清掃ブラシ250はグリッド206に摺動してグリッド206を清掃するので、清掃ブラシ250は清掃回数が増えるにつれて摩耗する(つまり劣化する)。摩耗によって清掃ブラシ250の清掃力が低下するので、清掃ブラシ250も交換した方がよい。ただし、従来では清掃ブラシ250の劣化とグリッド206の劣化とはその進行度合いが異なるにも関わらず、清掃ブラシ250はグリッド206の交換時にグリッド206と一緒に交換されていた。この場合、清掃ブラシ250がまだ使用可能であるにも関わらずに交換されてしまうことがあった。そこで、本実施形態では、使用者が清掃ブラシ250とグリッド206とをそれぞれ適切な交換タイミングで適宜に交換できるように、清掃ブラシ250の交換タイミングと、グリッド206の交換タイミングとを別々に通知できるようにした。以下、説明する。
<制御部>
図1に示すように、画像形成装置100は制御部300を備える。制御部300について、図5(a)及び図5(b)を参照しながら図10を用いて説明する。図10に示すように、制御部300にはメモリ301、モータM、光学センサPS1、PS2、表示部400、外部出力手段410などが接続されている。なお、制御部300には図示した以外にも画像形成装置100を動作させるモータや電源等の各種機器が接続されるが、ここでは発明の本旨でないのでそれらの図示及び説明を省略している。
制御手段としての制御部300は、画像形成動作などの画像形成装置100の各種制御を行うものであり、図示を省略したCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部300には、記憶手段としてのROMやRAMあるいはハードディスク装置などのメモリ301が接続されている。メモリ301には、画像形成装置100を制御するための各種プログラムやデータ等が記憶されている。制御部300はメモリ301に記憶されている画像形成ジョブを実行して、画像形成を行うよう画像形成装置100を動作させ得る。本実施形態の場合、制御部300は清掃ブラシ250を動作させてグリッド206を清掃する清掃制御を実行可能である。グリッド206の清掃制御については、後述する(図11参照)。なお、メモリ301には、各種制御プログラムの実行に伴う演算処理結果などが一時的に記憶され得る。
画像形成ジョブとは、記録材に画像形成するプリント信号に基づいて、画像形成開始してから画像形成動作が完了するまでの一連の動作のことである。即ち、画像形成を行うにあたり必要となる予備動作(所謂、前回転)を開始してから、画像形成工程を経て、画像形成を終了するにあたり必要となる予備動作(所謂、後回転)が完了するまでの一連の動作のことである。具体的には、プリント信号を受けた(画像形成ジョブの受信)後の前回転時(画像形成前の準備動作)から、後回転(画像形成後の動作)までのことを指し、画像形成期間、紙間を含む。
制御部300は駆動手段としてのモータMを制御することで、上述したように駆動スクリュ217及びキャリッジ213を介してシャッタ210を動作させ得る。本実施形態の場合、制御部300は画像形成ジョブの実行後、画像形成ジョブ終了後からの経過時間が所定時間(例えば2時間)過ぎたらシャッタ210を閉める制御を行ってスリープモードに入る。また、制御部300はスリープモードから画像形成ジョブを開始させる場合、シャッタ210を開ける制御を行ってから画像形成を開始する。シャッタ210が開位置にあるか閉位置にあるかは、上述の通り、光学センサPS1、PS2によって検出される。また、上述のように、清掃ブラシ250はシャッタ210と一緒に動作されることから、グリッド206に対する清掃ブラシ250の摺動動作は光学センサPS1、PS2によって検出される。制御部300は、光学センサPS1、PS2から出力される所定の信号(光量に応じた信号)を取得可能である。
表示部400は、実行可能な画像形成ジョブなどの各種制御プログラムを使用者に提示するメニューや、エラー表示を含む装置本体の動作状態などを表示する。本実施形態の場合、制御部300はグリッド206の交換タイミングと清掃ブラシ250の交換タイミングとをそれぞれ通知する通知信号を表示部400に対し出力する。表示部400には、通知信号に基づいてグリッド206の交換タイミングと清掃ブラシ250の交換タイミングとがそれぞれ表示される。外部出力手段410は、不図示のインタフェースを介して通信可能に接続された外部機器に各種信号を出力可能である。制御部300は、外部出力手段410により上記の通知信号を外部機器に対し出力することも可能である。
上記の制御部300は、第一カウンタ302と第二カウンタ303とを有している。第一カウント手段としての第一カウンタ302は、グリッド206の交換後からつまり初期状態のグリッド206の使用開始からの使用時間をカウントする。具体的に、第一カウンタ302はグリッド206の交換後に画像形成した記録材の累計枚数、あるいはグリッド206の交換後からのコロナ帯電器2の動作時間(電圧印加時間)などをカウントする。第二カウント手段としての第二カウンタ303は、清掃ブラシ250の交換後からつまり初期状態の清掃ブラシ250の使用開始からのグリッド206の清掃回数をカウントする。上述したように、清掃ブラシ250は、モータMの制御によりシャッタ210と共に動作される。従って、第二カウンタ303は光学センサPS1、PS2から取得した信号に基づいて、清掃ブラシ250の清掃回数をカウントできる。なお、第一カウンタ302は、グリッド206の交換時に記録材の累計枚数あるいはコロナ帯電器2の動作時間を「0」にクリアする。第二カウンタ303は、清掃ブラシ250の交換時にグリッド206の清掃回数を「0」にクリアする。
本実施形態の場合、制御部300は第一カウンタ302により計時された記録材の累計枚数が所定の画像形成枚数(例えば6000枚)に達する毎に、グリッド206を清掃する清掃制御を行う。その際に、清掃ブラシ250は1回の清掃制御で1往復されるので、第二カウンタ303は清掃ブラシ250の1往復を「+1回」とカウントする。また、清掃ブラシ250はシャッタ210の開閉時にも動作されるので、第二カウンタ303はシャッタの開閉時にもグリッド206の清掃回数をカウントする。なお、初期状態のグリッド206は帯電に一度も供されていない未使用状態のグリッドである。また、初期状態の清掃ブラシ250は、清掃に一度も供されていない未使用状態の清掃ブラシである。
<画像形成ジョブ制御>
本実施形態の画像形成ジョブ制御について、図1、図5(a)及び図5(b)、図10を参照しながら図11を用いて説明する。図11に、本実施形態の画像形成ジョブ制御を示す。
図11に示すように、制御部300はモータMを制御してシャッタ210を閉位置から開位置に移動させる(S1)。上述したように、シャッタ210が移動すれば、それに連動して清掃ブラシ250も移動してグリッド206が清掃される。ただし、この場合、清掃ブラシ250は1往復せずに往路を移動するだけなので、第二カウンタ303はグリッド206の清掃回数を「0.5」回とカウントする。制御部300は不図示のドラム駆動モータを制御して、感光ドラム1の回転を開始させる(S2)。そして、制御部300は放電ワイヤ205への帯電電圧の印加及びグリッド206への電圧印加を開始させる(S3)。その後、制御部300は各種制御を行って画像形成を開始させる(S4)。第一カウンタ302は、これにあわせ画像形成した記録材の累計枚数をカウントしていく。
制御部300は画像形成ジョブの最後の画像形成終了後、放電ワイヤ205への帯電電圧の印加及びグリッド206への電圧印加を停止させる(S5)。そして、制御部300は不図示のドラム駆動モータを制御して、感光ドラム1の回転を停止させる(S6)。制御部300は、モータMを制御してシャッタ210を開位置から閉位置に移動させスリープモードに入る(S7)。この際に、清掃ブラシ250はシャッタ210に連動して復路を移動するので、第二カウンタ303はグリッド206の清掃回数を「0.5回」とカウントする。つまり、第二カウンタ303はシャッタ210の開動作時にカウントした「0.5回」とあわせて、グリッド206の清掃回数を「+1回」とカウントすることになる。
制御部300は、第一カウンタ302によってカウントされた記録材の累計枚数が所定通知枚数(第一画像形成枚数、例えば50万枚)に到達したか否かを判定する(S8)。カウントされた記録材の累計枚数が所定通知枚数に到達している場合(S8のYES)、制御部300はグリッド206の交換タイミングを通知する(S9)。また、制御部300は、第二カウンタ303によってカウントされたグリッド206の清掃回数が所定回数(例えば500回)に到達したか否かを判定する(S10)。グリッド206の清掃回数が所定回数に到達している場合(S10のYES)、制御部300は清掃ブラシ250の交換タイミングを通知する(S11)。なお、後述するように、清掃ブラシ250の交換タイミングは、例えば二段階に分けて通知するようにしてよい(後述する図15(a)及び図15(b)参照)。また、グリッド206は上述したように例えば6000枚ごとに1回清掃されることに鑑みれば、上記の清掃ブラシ250の交換タイミングは、初期状態の清掃ブラシ250の使用開始からの第二画像形成枚数で通知されるようにしてよい。
<グリッド清掃制御>
次に、本実施形態のグリッド206の清掃制御について、図1、図5(a)及び図5(b)、図10を参照しながら図12を用いて説明する。図12に、本実施形態のグリッド清掃制御を示す。制御部300は図12に示した清掃制御を、図11に示した画像形成ジョブ制御の実行にあわせて開始する。
図12に示すように、制御部300は第一カウンタ302によりカウントされた記録材の累計枚数が所定枚数(例えば6000枚)以上であるか否かを判定する(S21)。記録材の累計枚数が所定枚数以上でない場合(S21のNO)、制御部300はS21の処理を繰り返して待機する。他方、カウントされた記録材の累計枚数が所定枚数以上である場合(S21のYES)、制御部300はモータMを制御して清掃ブラシ250を往路動作させる(S22)。そして、制御部300は光学センサPS2から所定の信号が出力されるまで(S23のNO)、S22の処理を繰り返す。光学センサPS2から所定の信号が出力された場合(S23のYES)、制御部300は清掃ブラシ250のグリッド206に対する往路の清掃動作が終わったと判定し、モータMを往路動作時と逆回転させて清掃ブラシ250を復路動作させる(S24)。そして、制御部300は光学センサPS1から所定の信号が出力されるまで(S25のNO)、S24の処理を繰り返す。光学センサPS1から所定の信号が出力された場合(S25のYES)、制御部300は清掃ブラシ250のグリッド206に対する復路の清掃動作が終わったと判定し、第二カウンタ303によりグリッド206の清掃回数を「+1回」カウントする(S26)。その後、制御部300は本清掃制御を終了する。
<交換タイミングについて>
発明者らは清掃ブラシ250とグリッド206の好ましい交換タイミングを検討すべく、画像形成枚数、画像形成時に画像形成する画像の画像比率、グリッド206を清掃する清掃間隔などを変更して、繰り返し画像形成する実験を行った。実験では、カラー複写機「imagePRESS C1」(キヤノン社製)に、ta−C層が形成されたグリッド206と清掃ブラシ250とを有する上述のコロナ帯電器2を取り付けた。そして、上記のカラー複写機を25℃、55%の環境下に設置して、放電ワイヤ205に1000μAの電流が流れるように帯電電圧を印加し、且つグリッド206に−800Vの電圧を印加した。
比較のために、第一条件として画像比率は3パターン1%、10%、50%とした。第二条件としてグリッド206の清掃間隔は1000枚、5000枚、10000枚毎に、清掃ブラシ250を1回往復動させた。また、スリープモード時のシャッタ開閉動作を再現すべく、適宜の間隔でシャッタ210を開け閉めした。これは、シャッタ210の開閉時にも、清掃ブラシ250が動作されグリッド206を清掃するからである。第三条件として1回分の実験では、画像形成枚数を5000枚と30000枚とした。第四条件として画像形成ジョブは、10枚、500枚の記録材に連続で画像形成を行うものとした。上記の第一条件〜第四条件を組み合わせて繰り返し画像形成を行い、30000枚毎にグリッド206による感光ドラム1の帯電電位の均一性と、清掃ブラシ250によるグリッド206の清掃状態を調べた。また、画像形成した記録材の累計枚数をカウントした。
上記の第一条件〜第四条件を組合せて実験を行った結果、グリッド206の劣化に最も影響したのは記録材の累計枚数であった。記録材の累計枚数は、グリッド206への電圧印加時間と相関関係にある。実験の結果、記録材の累計枚数つまりはグリッド206への電圧印加時間に応じて感光ドラム1の帯電電位が均一となり難くなることがわかった。実験的に、感光ドラム1の帯電電位が均一となり難くなるのは、記録材の累計枚数が50万枚を超えたあたりであることが確かめられた。そして、次にグリッド206の劣化に影響したのは第一条件の画像比率であった。これは、画像比率が高いほどグリッド表面に付着する付着物の量が増えやすいからである。ただし、記録材の累計枚数に比べれば、その影響の程度は小さかった。そこで、本実施形態では、記録材の累計枚数が50万枚になったらグリッド206の交換タイミングを使用者へ通知するようにした。
他方、清掃ブラシ250の劣化に最も影響したのは、第二条件のグリッド206の清掃間隔つまりはグリッド206の清掃回数であった。実験結果から、グリッド206の清掃回数が最も清掃ブラシ250の清掃力に関連し、その清掃力は摩耗量に比例して低下することがわかった。ここで、グリッド清掃時のグリッド206が撓んだ状態の断面方向の概略図を図13に示す。上述したように、清掃時、グリッド206は両端が引き込み部材252により清掃ブラシ250側に引き込まれるので、グリッド206は撓む。その結果、図13に示すように、グリッド両端に近付くにつれて清掃ブラシ250のグリッド206に対する侵入量は大きくなり、グリッド206の長手方向中央部ほど清掃ブラシ250のグリッド206に対する侵入量は小さくなる。そのため、清掃ブラシ250はグリッド206の長手方向中央部の摩耗量に比べて、両端部の摩耗量が大きくなる。
図14に、グリッド206の清掃回数と清掃ブラシ250の平均ブラシ長との関係を示す。清掃ブラシ250の平均ブラシ長は、清掃ブラシ250の摩耗量が中央部と両端部で異なるため、中央部のブラシ長と両端部のブラシ長の平均値を平均ブラシ長とした。清掃回数「0回」(初期状態)のブラシ長から各清掃回数時に測定されたブラシ長を減算すれば、ブラシの摩耗量は求められる。図14に示すように、清掃ブラシ250は初期状態から清掃回数200回程度までは一気に摩耗するが、200回を超えてから以降は清掃回数に対する摩耗量の変化が小さくなり、清掃回数800回以降はほとんど摩耗しなくなる。この点について確認すべく、発明者らが清掃回数100回後の清掃ブラシ250を電子顕微鏡にて調べたところ、ブラシ先端が削られて細くなっていた。また、ブラシ先端の一部は細くなるだけでなく、ブラシ先端が途中からちぎれていた。このように、清掃回数が増すにつれて、初期状態に比べてブラシ先端が細くなったりちぎれたりすると、清掃ブラシ250の剛性が弱くなり、剛性が弱い状態でグリッド206に接触して清掃を行うことになる。接触力が弱ければ、清掃回数に対する摩耗量の変化は緩やかになる。
清掃ブラシ250の劣化に次に影響したのは、第一条件の画像比率であった。これは、グリッド206に付着した付着物の量が多いと、付着物が緩衝材として機能し、清掃ブラシ250とグリッド206とが直接的に接触せず、その結果、清掃回数に対する摩耗量の変化が緩やかになるからである。なお、清掃ブラシ250は、平均ブラシ長が2.0mm以下になると清掃力が著しく低下するため、平均ブラシ長が2.0mmになる清掃回数を交換タイミングとした。実験的に、平均ブラシ長が2.0mmになる清掃回数は500回であることが確かめられた。そこで、本実施形態では、清掃回数が500回になったら清掃ブラシ250の交換タイミングを使用者へ通知するようにした。なお、第一カウンタ302にグリッド206への電圧印加時間をカウントさせる場合、制御部300はグリッド206への電圧印加時間が例えば150時間に到達する毎にグリッド206の交換タイミングを通知するとよい。
以上のように、本実施形態の画像形成装置100では、グリッド206の交換タイミングの通知が初期状態のグリッド206の使用開始からの使用時間に基づき行われる。他方、グリッド206の交換タイミングの通知とは別に、清掃ブラシ250の交換タイミングの通知が初期状態の清掃ブラシ250の使用開始からの清掃回数に基づいて行われる。そして、清掃回数は光学センサPS1、PS2が清掃ブラシ250の清掃動作を実際に検出することに応じてカウントされる。こうして、清掃ブラシ250の交換タイミングは適切な交換タイミングで通知され、もって清掃ブラシ250は無駄なく使用された時点で効率的に交換され得る。これにより、劣化した清掃ブラシ250が用いられることによるグリッド206の劣化を抑制でき、また清掃ブラシ250を無駄なく使用できることから、これらの交換にかかるコストを抑制することができる。
<他の実施形態>
上述のように、制御部300はグリッド206の清掃回数が500回に到達したら、清掃ブラシ250の交換タイミングと判断して使用者へ通知する。しかしながら、清掃ブラシ250がグリッド206に影響を与えるほど著しく劣化した状態となってから、交換タイミングを使用者に通知すると、使用者が実際に交換するまでは劣化した清掃ブラシ250が用いられ、グリッド206の劣化を早める虞がある。これを避けるため、本実施形態では通知回数(500回)の例えば85%程度(425回)の段階で、使用者に対して清掃ブラシ250の交換タイミングの到来を通知する。そして、通知回数を超えたら使用者に対して清掃ブラシ250の交換を警告する。
図15(a)に、使用者に対し清掃ブラシ250の交換タイミングである旨を通知する画面を表示部400に表示した場合を示す。図15(a)に示すように、この画面では使用者に対して早めの交換を促すために、清掃ブラシ250の交換タイミングが到来したことが表示される。図15(b)に、使用者に対し清掃ブラシ250の交換を警告する画面を表示部400に表示した場合を示す。図15(b)に示すように、この画面では使用者に対して早急の交換を促すために、清掃ブラシ250の交換を強く促す旨の警告が表示される。外部出力手段410(図10参照)を用いて交換タイミングを通知する場合には、インターネットなどを介して所定のサービスセンター側の端末装置(外部機器)などに清掃ブラシ250の交換タイミングが近いことを通知する。サービスセンター側ではこの通知を受けて、交換用の清掃ブラシ250を使用者に対して送付する、あるいはサービスマンを派遣して清掃ブラシ250の交換を行うことができる。なお、グリッド206の交換タイミングに関しても、上記したような清掃ブラシ250の交換タイミングと同様の通知を行ってよい。
また、使用者が使用状況にあわせて好みの交換タイミングで清掃ブラシ250やグリッド206を交換できるよう、制御部300がそれらの交換タイミングを変更可能な変更画面を表示部400に表示できるようにしてもよい。その場合、制御部300は表示部400に仮想操作子を表示して、使用者が仮想操作子を操作してグリッド206や清掃ブラシ250の交換通知タイミングを変更できるようにする。図16(a)は、コロナ帯電器2の各パーツの交換タイミングを変更可能な変更画面である。使用者はパーツ名が記された仮想操作子を操作して、そのパーツの寿命に対する割合を変更することができる。制御部300は、この画面で変更されるパーツの寿命に対する割合に従って、各パーツの交換タイミングを通知する。例えば、ここではグリッド206の寿命に対する割合が「50%」であることから、制御部300はグリッド206の寿命に対応した基準交換タイミングである所定通知枚数(50万枚)の「50%」である「25万枚」で交換タイミングを通知する。清掃ブラシ250の寿命に対する割合が「80%」であることから、制御部300は清掃ブラシ250の基準交換タイミングである清掃回数(500回)の「80%」である「400回」で交換タイミングを通知する。
なお、図16(b)に示すように、制御部300は外部出力手段410(図10参照)を用いてサービスセンターに対し、使用者がパーツの交換を連絡できる画面を表示部400に表示させることもできる。特には、表示部400に交換タイミングを表示させるようにした場合に、使用者は図16(b)に示した画面を用いてサービスセンターに清掃ブラシ250やグリッド206の交換を行いたい旨を通知することができる。
なお、上述した実施形態では、清掃回数をカウントするためにフォトインタラプト式の光学センサPS1、PS2からの出力信号を用いたがこれに限られない。例えば、シャッタに押圧されることで信号を出力する圧電センサや接触センサを巻き取り機構211から遠い側に設け、これらからの出力信号を用いて清掃回数をカウントしてもよい。また、センサは巻き取り機構211に近い側と遠い側のいずれかに一個だけ設ければよい。即ち、シャッタ210が開位置と閉位置の少なくともいずれか一方にあることを検出可能であればよい。
なお、上述した実施形態では、画像形成部PY〜PKの各感光ドラム1から中間転写ベルト8に各色のトナー像を一次転写した後に、記録材に各色の複合トナー像を一括して二次転写する構成の画像形成装置を説明したが、これに限らない。例えば、感光ドラム1から記録材に直接転写する構成の直接転写方式の画像形成装置であってもよい。