以下、本発明に係る小型油圧ショベルの実施の形態を、後方超小旋回型の小型油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態では、製鉄所で溶解した鉄を流通させる樋を清掃するための小型油圧ショベルを例示している。この小型油圧ショベルは、樋の全体が目視し易く、フロント装置が樋の隅々まで容易に届くようにするため、また樋を跨いで配置できるように、トラックフレームを構成する左,右のサイドフレーム間の距離寸法を拡大するように構造変更されている。
図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。この第1の実施の形態の特徴は、各脚体の五角形端面の外形形状は、上辺部が各延長部材の脚体側端面よりも上側に突出することにより脚体側端面の外形形状よりも大きくなっており、接続板体は、各脚体の五角形端面の外形形状以上の大きさをもって形成されていることにある。
図1において、後方超小旋回型の小型油圧ショベル1は、例えば、建物の内部における掘削、破砕作業、市街地における道路脇の側溝掘り作業などの狭い場所での掘削作業に用いられるものである。また、小型油圧ショベル1は、一般的なトラックによる搬送、工場内のクレーンによる昇降を可能にするために、例えば機械重量が0.8〜7.5トン程度に設定されている。
小型油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に支持された上部旋回体4と、上部旋回体4の前,後方向の前部位置に俯仰の動作が可能に設けられたスイング式のフロント装置5とを含んで構成されている。
ここで、上部旋回体4は、後述するトラックフレーム14上に旋回輪3を介して設けられ、前側位置にフロント装置5が取付けられた支持構造体をなす旋回フレーム6と、旋回フレーム6の後部位置に設けられた原動機としてのエンジン7と、エンジン7の上側を覆うように旋回フレーム6上に設けられた運転席台座8と、運転席台座8に設けられた運転席9と、運転席9の上方を覆うキャノピ10とを含んで構成されている。このように、小型油圧ショベル1は、エンジン7の上側のスペースを利用して運転席9を配置することで、上部旋回体4の小型化(小旋回半径)を可能にしている。
一方、小型油圧ショベル1の下部走行体2は、上部旋回体4を支持する後述のトラックフレーム14と、トラックフレーム14の各サイドフレーム16,17の後端部に設けられ、油圧モータ(図示せず)によって駆動される駆動輪11と、各サイドフレーム16,17の前端部に設けられた遊動輪12と、駆動輪11と遊動輪12とに亘って巻回された履帯13とにより構成されている。この駆動輪11、遊動輪12および履帯13によって走行装置が構成されている。
次に、本発明の特徴部分となるトラックフレーム14の構成について図2ないし図8を用いて説明する。
図2、図3に示すように、トラックフレーム14は、下部走行体2のベースとなるものである。トラックフレーム14は、後述のセンタフレーム15、左,右のサイドフレーム16,17、左,右の前脚体18,19、左,右の後脚体20,21、左前延長部材22、左前接続板体23、右前延長部材24、右前接続板体25、左後延長部材26、左後接続板体27、右後延長部材28、右後接続板体29により構成されている。ここで、センタフレーム15と各脚体18,19,20,21とは、鋳鋼を用いた鋳造によって成型された鋳造品として形成されている。
センタフレーム15は、上部旋回体4が取付けられるもので、トラックフレーム14の中央部分を構成している。センタフレーム15は、上,下方向に扁平な箱状体として形成されている。センタフレーム15の上面部15Aの中央には、旋回輪3が取付けられる大径な円筒体15Bが設けられている。
左サイドフレーム16は、センタフレーム15の左,右方向の左側に前,後方向に延びて設けられている。右サイドフレーム17は、センタフレーム15の左,右方向の右側に前,後方向に延びて設けられている。左サイドフレーム16は、前側位置が後述の左前脚体18、左前延長部材22、左前接続板体23を介してセンタフレーム15に取付けられている。一方、左サイドフレーム16は、後側位置が後述の左後脚体20、左後延長部材26、左後接続板体27を介してセンタフレーム15に取付けられている。
同様に、右サイドフレーム17は、前側位置が後述の右前脚体19、右前延長部材24、右前接続板体25を介してセンタフレーム15に取付けられ、後側位置が後述の右後脚体21、右後延長部材28、右後接続板体29を介してセンタフレーム15に取付けられている。左,右のサイドフレーム16,17には、後端部に駆動輪11がそれぞれ取付けられ、前端部に遊動輪12がそれぞれ取付けられている。
左サイドフレーム16は、左,右方向の内側に位置する内側板16Aと、内側板16Aと間隔をもって左,右方向の外側に配置された外側板16Bと、内側板16Aと外側板16Bの上部に設けられた上側板16Cとにより下側が開放された断面C字状の構造体として形成されている。また、左サイドフレーム16の後端部には、駆動輪11を取付けるためのブラケット16Dが設けられている。一方、右サイドフレーム17は、左サイドフレーム16と対称形状をなすもので、内側板17A、外側板17B、上側板17Cおよびブラケット17Dを備えている。
左前脚体18は、左サイドフレーム16の前側部分を支持するもので、センタフレーム15の前部から左,右方向の外側となる左側に延びる筒状体として形成されている。一方、右前脚体19は、左前脚体18と左,右方向で対称形状をなすものであるため、図示されている範囲で左前脚体18と対応する符号を付し、その説明を省略するものとする。
図4、図5に示すように、左前脚体18は、鋳造によって成型することにより角部に丸みをもった筒状体として形成されている。具体的には、左前脚体18は、前面部18A、後面部18B、下面部18Cおよび上面部18Dから形成されている。この上で、上面部18Dは、前,後方向の中間部が上側に突出することにより山形状に形成されている。これにより、左前脚体18は、断面が五角形状の角筒体として形成され、上面部18Dの山形形状によって土砂が堆積することを抑制できるようになっている。
また、左前脚体18の五角形の筒体形状に伴い、左前脚体18の左サイドフレーム16側の端部形状は、前辺部18E1、後辺部18E2、下辺部18E3および山形状の上辺部18E4によって五角形端面18Eとして形成されている。さらに、左前脚体18の五角形端面18Eは、各辺部18E1〜18E4間の角部がそれぞれなだらかに湾曲した丸角部18E5〜18E8として形成されている。
図6、図7に示すように、左前脚体18の五角形端面18Eは、後述する左前接続板体23の内端面23Eに当接され、その周囲が隅肉溶接によって左前接続板体23に一体的に固着されている。また、図8に示すように、五角形端面18Eの外形形状(点線で示す形状)は、上辺部18E4が後述の左前延長部材22を形成する脚体側端面22Eの上辺部22E4よりも上側に突出することにより、この脚体側端面22Eの外形形状よりも大きく形成されている。
図3、図4に示すように、右前脚体19は、前面部19A、後面部19B、下面部(図示せず)および山形状の上面部19Dから形成されている。また、右前脚体19の右サイドフレーム17側の端部形状は、五角形端面(図示せず)として形成されている。
左後脚体20は、左サイドフレーム16の後側部分を支持するもので、センタフレーム15の後部から左,右方向の外側となる左側に延びる筒状体として形成されている。これにより、左後脚体20は、左前脚体18と一緒に左サイドフレーム16を支持している。一方、右後脚体21は、左後脚体20と左,右方向で対称形状をなすものであるため、図示されている範囲で左後脚体20と対応する符号を付し、その説明を省略するものとする。
図5に示すように、左後脚体20は、左前脚体18と同様に、鋳造によって成型することにより角部に丸みをもった筒状体として形成されている。具体的には、左後脚体20は、前面部20A、後面部20B、下面部20Cおよび上面部20Dから形成されている。この上で、上面部20Dは、前,後方向の中間部が上側に突出することにより山形状に形成されている。これにより、左後脚体20は、左前脚体18と同様に、断面が五角形状の角筒体として形成されている。
また、左後脚体20の五角形の筒体形状に伴い、左後脚体20の左サイドフレーム16側の端部形状は、前辺部20E1、下辺部20E2および山形状の上辺部20E3によって後方が開放された五角形端面20Eとして形成されている。さらに、左後脚体20の五角形端面20Eは、前記各辺部20E1〜20E3間の角部がそれぞれなだらかに湾曲した丸角部20E4,20E5として形成されている。
ここで、左後脚体20の五角形端面20Eは、後側に配置されている駆動輪11に向けて延びる複数本の油圧ホース(図示せず)の取り回しの関係で、駆動輪11側の後辺部は設けられていない。しかし、左後脚体20は、後辺部を除く前辺部20E1、下辺部20E2および山形状の上辺部20E3によって五角形状に外形を有している。この場合、五角形端面20Eは、前辺部20E1、下辺部20E2が後述の左後延長部材26を構成する脚体側端面の前辺部、下辺部と左後接続板体27を挟んで2辺の長さ方向でそれぞれ連続して互いに重ねられている。
左後脚体20の五角形端面20Eは、後述する左後接続板体27の内端面に当接され、その周囲が隅肉溶接によって左後接続板体27に一体的に固着されている。また、五角形端面20Eの外形形状は、上辺部20E3が後述の左後延長部材26を形成する脚体側端面の上辺部(いずれも図示せず)よりも上側に突出することにより、左後延長部材26の脚体側端面の外形形状よりも大きく形成されている。
図3、図4に示すように、右後脚体21は、前面部21A、後面部21B、下面部(図示せず)および山形状の上面部21Dから形成されている。また、右後脚体21の右サイドフレーム17側の端部形状は、五角形端面(図示せず)として形成されている。
次に、第1の実施の形態の特徴部分である各延長部材22,24,26,28および各接続板体23,25,27,29の構成について詳細に述べる。
各延長部材22,24,26,28と各接続板体23,25,27,29は、各脚体18〜21のサイドフレーム側に位置する五角形端面18E,20Eと各サイドフレーム16,17との間に1個ずつ設けられている。各延長部材22,24,26,28は、各サイドフレーム16,17間の距離寸法を拡大するものである。
なお、各前脚体18,19と各サイドフレーム16,17との間に設けられる各前延長部材22,24の形状と、各後脚体20,21と各サイドフレーム16,17との間に設けられる各後延長部材26,28の形状とは、多少の違いはあるものの、各サイドフレーム16,17間の距離寸法を拡大する機能は全く同じである。そこで、左前脚体18と左サイドフレーム16との間に設けられている左前延長部材22および左前接続板体23について詳細に説明し、その他の脚体19,20,21と各サイドフレーム16,17間の各延長部材24,26,28および各接続板体25,27,29については説明を省略するものとする。
左前延長部材22は、延長部材を構成するもので、左前脚体18の五角形端面18Eと左,右方向で対面する多角形筒体として形成されている。図7に示すように、具体的には、左前延長部材22は、五角形端面18Eの前,後方向の長さ寸法と同等な前,後方向の長さ寸法をもった矩形状の筒体として形成されている。従って、左前延長部材22は、前面部22A、後面部22B、下面部22Cおよび上面部22Dから形成されている。これにより、左前延長部材22は、例えば、安価な一般構造用角形鋼管を用いて簡単な加工で形成することができる。
左前延長部材22は、左,右方向に延びた外端が左サイドフレーム16の内側板16Aに溶接手段を用いて一体的に固着されている。一方、左前脚体18側となる左,右方向の内端は、後述の左前接続板体23に固着される脚体側端面22Eとなっている。この脚体側端面22Eは、左前脚体18の五角形端面18Eの前辺部18E1、後辺部18E2、下辺部18E3、上辺部18E4に左前接続板体23を挟んで対面する前辺部22E1、後辺部22E2、下辺部22E3、上辺部22E4を有している。
ここで、図8に示すように、左前脚体18の五角形端面18Eの前辺部18E1、後辺部18E2、下辺部18E3と左前延長部材22の脚体側端面22Eの前辺部22E1、後辺部22E2、下辺部22E3とは、左前接続板体23を挟んで3辺の長さ方向でそれぞれ連続して互いに重ねられている。これにより、左サイドフレーム16は、作業時、走行時に地面の反力を受けるが、この反力は、左前延長部材22から左前接続板体23を介して左前脚体18にスムーズに伝えることができる。
左前接続板体23は、左前脚体18の五角形端面18Eと左前延長部材22の脚体側端面22Eと間に設けられている。左前接続板体23は、五角形端面18Eと脚体側端面22Eとが対向して固着されるものである。左前接続板体23は、左前脚体18の五角形端面18Eの外形形状以上で、かつ左前延長部材22の脚体側端面22Eの外形形状以上の大きさに形成されている。第1の実施の形態では、左前接続板体23は、五角形端面18Eの外形形状以上の大きさをもった板体により形成されている。
図7、図8に示すように、左前接続板体23の具体的な形状は、左前脚体18の五角形端面18Eの外形形状よりも所定寸法だけ大きな五角形状をなしている。この五角形端面18Eの周縁からはみ出した左前接続板体23の周囲部分の大きさを示す寸法は、例えば、左前接続板体23に対して左前脚体18と左前延長部材22とを溶接するときに、必要な大きさの隅肉溶接を施すための溶接代を確保できる寸法となっている。
左前接続板体23は、前縁部23A、後縁部23B、下縁部23C、上縁部23Dを有している。上縁部23Dは、五角形端面18Eの上辺部18E4に対応し、上側に突出した山形状をなしている。これにより、左前接続板体23は、隅肉溶接を施すための溶接代を確保した上で、小さな外形形状をもって形成することができる。
左前接続板体23は、左前脚体18側の内端面23Eに左前脚体18の五角形端面18Eが溶接手段を用いて固着されている。一方、左前接続板体23は、左前延長部材22側の外端面23Fに左前延長部材22の脚体側端面22Eが溶接手段を用いて固着されている。
左前接続板体23は、形状が異なる左前脚体18と左前延長部材22とを繋ぐためのアタッチメントを構成している。左前接続板体23の板厚寸法は、左前脚体18および左前延長部材22の最も薄い部分よりも大きな寸法に設定されている。
図2、図3に示すように、右前延長部材24は、延長部材を構成するもので、左前延長部材22と同様に、右前脚体19の五角形端面と左,右方向で対面する矩形状の筒体として形成されている。右前延長部材24は、左,右方向に延びた外端が右サイドフレーム17の内側板17Aに溶接手段を用いて一体的に固着されている。一方、右前脚体19側となる左,右方向の内端は、後述の右前接続板体25に固着される脚体側端面となっている。
右前接続板体25は、右前脚体19の五角形端面と右前延長部材24の脚体側端面と間に設けられている。右前接続板体25は、左前接続板体23と同様に、右前脚体19の五角形端面と右前延長部材24の脚体側端面とが対向して固着されるものである。右前接続板体25は、右前脚体19の五角形端面の外形形状以上の大きさをもった五角形状の板体により形成されている。
左後延長部材26は、延長部材を構成するもので、左前延長部材22と同様に、左後脚体20の五角形端面20Eと左,右方向で対面する矩形状の筒体として形成されている。左後延長部材26は、左,右方向に延びた外端が左サイドフレーム16の内側板16Aに溶接手段を用いて一体的に固着されている。一方、左後脚体20側となる左,右方向の内端は、後述の左後接続板体27に固着される脚体側端面となっている。
ここで、左後延長部材26の脚体側端面は、左後脚体20の五角形端面20Eに対応して後辺部は設けられていない。この場合、左後延長部材26の脚体側端面は、後辺部を除く前辺部、下辺部が左後脚体20の五角形端面20Eの前辺部20E1、下辺部20E2と、左後接続板体27を挟んで2辺の長さ方向でそれぞれ連続して互いに重ねられている。
左後接続板体27は、左後脚体20の五角形端面20Eと左後延長部材26の脚体側端面と間に設けられている。左後接続板体27は、左前接続板体23と同様に、左後脚体20の五角形端面20Eと左後延長部材26の脚体側端面とが対向して固着されるものである。左後接続板体27は、左後脚体20の五角形端面20Eの外形形状以上の大きさをもった五角形状の板体により形成されている。
右後延長部材28は、延長部材を構成するもので、左前延長部材22と同様に、右後脚体21の五角形端面と左,右方向で対面する矩形状の筒体として形成されている。右後延長部材28は、左,右方向に延びた外端が右サイドフレーム17の内側板17Aに溶接手段を用いて一体的に固着されている。一方、右後脚体21側となる左,右方向の内端は、後述の右後接続板体29に固着される脚体側端面となっている。
右後接続板体29は、右後脚体21の五角形端面と右後延長部材28の脚体側端面と間に設けられている。右後接続板体29は、左前接続板体23と同様に、右後脚体21の五角形端面と右後延長部材28の脚体側端面とが対向して固着されるものである。右後接続板体29は、右後脚体21の五角形端面の外形形状以上の大きさをもった五角形状の板体により形成されている。
本実施の形態による小型油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、例えば、製鉄所で溶解した鉄を流通させる樋を清掃するために用いる場合には、ミニショベルと呼ばれる小型油圧ショベル1の下部走行体2では、樋を跨ぐことができるように、下部走行体2を構成するトラックフレーム14の左,右のサイドフレーム16,17間の距離寸法を拡大するように構造変更する必要がある。
そこで、左,右のサイドフレーム16,17間の距離寸法を拡大する構造変更について述べる。この構造変更は、左,右の前脚体18,19、左,右の後脚体20,21と左,右のサイドフレーム16,17との間に、各延長部材22,24,26,28と各接続板体23,25,27,29とを設けることにより実現される。この場合、全ての脚体18,19,20,21に対する構造変更の手順が実質的に同様であるから、左前脚体18と左サイドフレーム16との間に左前延長部材22と左前接続板体23とを設ける場合の一例について説明する。
所定の長さ寸法をもった左前延長部材22を用意し、この左前延長部材22の左サイドフレーム16側の端部を左サイドフレーム16の内側板16Aに隅肉溶接を用いて固着する。次に、左前延長部材22の脚体側端面22Eに左前接続板体23の外端面23Fを当接させ、左前延長部材22を左前接続板体23に隅肉溶接を用いて固着する。また、左前脚体18の五角形端面18Eに左前接続板体23の内端面23Eを当接させ、左前脚体18を左前接続板体23に隅肉溶接を用いて固着する。
この作業を他の脚体19〜21と左,右のサイドフレーム16,17との間に適宜に施すことにより、左,右のサイドフレーム16,17間の距離寸法が広く変更された樋の清掃専用の小型油圧ショベル1とすることができる。なお、上述した作業手順以外、例えば、脚体側に接続板体、延長部材の順で取付け、最後に延長部材をサイドフレームに固着する手順で組み立てることもできる。
次に、樋の清掃専用の小型油圧ショベル1を用いて製鉄所の樋の清掃を行う場合の動作について説明する。
小型油圧ショベル1をクレーンで吊り上げ、樋を跨ぐように樋の上側に小型油圧ショベル1を配置する。この場合、小型油圧ショベル1は、左,右のサイドフレーム16,17間の距離寸法が樋の幅寸法に合わせて広く構造変更されているから、安定的に配置することができる。しかも、小型油圧ショベル1は、車体全体が小型であるから、工場の天井部分に干渉することがない。
小型油圧ショベル1を樋の上側に配置したら、上部旋回体4に乗り込んで運転席9に着座し、この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を自走させて小型油圧ショベル1を所定位置に移動させる。また、運転席9の左,右両側に設けられた作業用の操作レバーを操作することにより、上部旋回体4を旋回させつつフロント装置5を用いて樋に付着した鉄や異物を除去する作業を行うことができる。
一方、小型油圧ショベル1を走行させたり、フロント装置5を動作させたりしたときには、左,右のサイドフレーム16,17は、地面の反力を受ける。この反力は、各延長部材22,24,26,28、各接続板体23,25,27,29を介して各脚体18,19,20,21に伝わる。しかも、各延長部材22,24,26,28によってセンタフレーム15と左,右のサイドフレーム16,17との距離寸法が大きくなっているから、各サイドフレーム16,17からの負荷をセンタフレーム15側に確実に伝える必要がある。
しかし、左前脚体18は、上面部18D上に土砂が堆積することを抑制できるように山形状に突出しており、全体として断面五角形状に形成されている。一方、左前延長部材22は、一般構造用角形鋼管を用いることによって断面矩形状に形成されている。
然るに、本実施の形態では、各脚体18,19,20,21と各サイドフレーム16,17との間には、各サイドフレーム16,17間の距離寸法を拡大するための延長部材22,24,26,28がそれぞれ設けられている。各脚体18,19,20,21のサイドフレーム16,17側の端部形状は、前辺部18E1,20E1、後辺部18E2、下辺部18E3,20E2および山形状の上辺部18E4,20E3によって五角形端面18E,20Eとして形成されている。各延長部材22,24,26,28は、五角形端面18E,20Eと左,右方向で対面する多角形筒体(矩形状筒体)として形成されている。また、各脚体18,19,20,21の五角形端面18E,20Eと各延長部材22,24,26,28の脚体側端面22Eとの間には、五角形端面18E,20Eと脚体側端面22Eとが対向して固着される接続板体23,25,27,29が設けられている。
この上で、各接続板体23,25,27,29は、各脚体18,19,20,21の五角形端面18E,20Eの外形形状以上で、かつ各延長部材22,24,26,28の脚体側端面22Eの外形形状以上の大きさをもった板体により形成されている。
従って、形状が異なる各脚体18,19,20,21と各延長部材22,24,26,28とは、各接続板体23,25,27,29を介在させることにより、隙間なく一体的に接続することができる。この結果、各延長部材22,24,26,28は、安価で、かつ形成が単純な一般構造用角形鋼管を用いて形成することができ、かつ各接続板体23,25,27,29は、板体を切り出すだけで容易に形成することができる。これにより、構造変更するための作業時間を短縮できる上に、製造コストを低減することができる。
しかも、各サイドフレーム16,17からの負荷(反力)を各脚体18,19,20,21を通じてセンタフレーム15に確実に伝えることができ、耐久性を向上することができる。特に、各延長部材22,24,26,28によってセンタフレーム15と各サイドフレーム16,17との距離寸法を大きくした場合でも、各サイドフレーム16,17からの負荷をセンタフレーム15側に確実に伝えることができる。
各延長部材22,24,26,28の脚体側端面22Eは、五角形端面18E,20Eの前辺部18E1,20E1、後辺部18E2、下辺部18E3,20E2、上辺部18E4,20E3に各接続板体23,25,27,29を挟んで対面する前辺部22E1、後辺部22E2、下辺部22E3、上辺部22E4を有している。第1の実施の形態では、前脚体18,19の五角形端面18Eの前辺部18E1、後辺部18E2、下辺部18E3と各前延長部材22,24の脚体側端面22Eの前辺部22E1、後辺部22E2、下辺部22E3とが各前接続板体23,25を挟んで3辺の長さ方向でそれぞれ連続して互いに重ねられている。また、後脚体20,21の五角形端面20Eの前辺部20E1、下辺部20E2と各後延長部材26,28の脚体側端面の前辺部、下辺部とが各後接続板体27,29を挟んで2辺の長さ方向でそれぞれ連続して互いに重ねられている。
これにより、各サイドフレーム16,17からの負荷(反力)を、各延長部材22,24,26,28、各脚体18,19,20,21を通じてセンタフレーム15側に円滑に伝えることができ、各脚体18,19,20,21にかかる負荷を軽減して、耐久性を向上することができる。また、各脚体18,19,20,21と各延長部材22,24,26,28との間の段差を小さくすることができ、下部走行体2による走行移動や下部走行体2上での上部旋回体4の旋回動作は通常のミニショベルと同様良好に実施することができる。
各脚体18,19,20,21の五角形端面18E,20Eの外形形状は、上辺部18E4,20E3が各延長部材22,24,26,28の脚体側端面22Eよりも上側に突出することにより脚体側端面22Eの外形形状よりも大きくなっている。これに伴い、各接続板体23,25,27,29は、各脚体18,19,20,21の五角形端面18E,20Eの外形形状以上の大きさをもって形成されている。これにより、外形形状が大きな五角形端面18E,20Eの全周を各接続板体23,25,27,29に対して溶接することができる。
さらに、上部旋回体4は、トラックフレーム14上に設けられた旋回フレーム6と、旋回フレーム6に設けられた原動機としてのエンジン7と、エンジン7の上側を覆うように設けられた運転席台座8と、運転席台座8に設けられた運転席9とを含んで構成されている。これにより、小型油圧ショベル1は、上部旋回体4がコンパクトに形成されたミニショベルとして形成することができる。
次に、図9は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、接続板体を各脚体の五角形端面の外形形状よりも大きな矩形状の板体によって形成したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、第2の実施の形態では、左前脚体18と左前延長部材22との間に設けられた左前接続板体31を例に挙げて説明している。
図9において、第2の実施の形態による左前接続板体31は、左前脚体18の五角形端面18Eの外形形状よりも大きな矩形状の板体として形成されている。左前接続板体31は、第1の実施の形態による左前接続板体23とほぼ同様に、前縁部31A、後縁部31B、下縁部31C、上縁部31Dを有している。また、内端面31Eには、左前脚体18の五角形端面18Eが溶接手段を用いて固着され、外端面31Fには、左前延長部材22の脚体側端面22Eが溶接手段を用いて固着されている。
しかし、第2の実施の形態による左前接続板体31は、上縁部31Dが五角形端面18Eの上辺部18E4よりも高い位置で直線状(水平方向)に形成されている点で、第1の実施の形態による左前接続板体23と相違している。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、例えば、鋼板を矩形状に切り出すことにより左前接続板体31を簡単に形成することができる。
次に、図10は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、接続板体を各脚体の五角形端面の外形形状と同じ大きさをもった板体によって形成したことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、第3の実施の形態では、左前脚体18と左前延長部材22との間に設けられた左前接続板体41を例に挙げて説明している。
図10において、第3の実施の形態による左前接続板体41は、左前脚体18の五角形端面18Eの外形形状と同じ大きさをもった板体によって形成されている。左前接続板体41は、第1の実施の形態による左前接続板体23とほぼ同様に、前縁部41A、後縁部41B、下縁部41C、山形状の上縁部41Dを有している。また、内端面41Eには、左前脚体18の五角形端面18Eが溶接手段を用いて固着され、外端面41Fには、左前延長部材22の脚体側端面22Eが溶接手段を用いて固着されている。
しかし、第3の実施の形態による左前接続板体41は、五角形端面18Eの外形形状と同じ大きさをもった板体によって形成されている点で、第1の実施の形態による左前接続板体23と相違している。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、左前接続板体41を最も小さく形成することができ、軽量化を図ることができる。また、左前脚体18、左前延長部材22および左前接続板体23間のつなぎ部分を滑らかにすることができ、外観上の見栄えを良好にすることができる。
次に、図11ないし図15は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、各脚体の五角形端面は、各辺部間の角部がそれぞれなだらかに湾曲した丸角部として形成され、各延長部材の脚体側端面は、各辺部間がそれぞれ角張った角部となり、各脚体の五角形端面の外形形状は、各丸角部が各延長部材の脚体側端面の各角部よりも内側に位置することにより脚体側端面の外形形状よりも小さくなっており、接続板体は、各延長部材の脚体側端面の外形形状以上の大きさをもって形成される構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図11、図12において、トラックフレーム51は、第4の実施の形態による各延長部材52,54,56,58と各接続板体53,55,57,59とを備えている。なお、第4の実施の形態では、左前脚体18と左サイドフレーム16との間に設けられた左前延長部材52と左前接続板体53とについて詳細に説明し、他の延長部材54,56,58と接続板体55,57,59の説明を省略するものとする。
図13に示すように、左前延長部材52は、延長部材を構成するもので、左前脚体18の五角形端面18Eと左,右方向で対面する多角形筒体として形成されている。図14に示すように、具体的には、左前延長部材52は、4枚の板体を溶接手段を用いて互いに固着することにより前,後方向に延びた矩形状の筒体として形成されている。即ち、左前延長部材52は、前面板52A、後面板52B、下面板52Cおよび上面板52Dから形成されている。上面板52Dは、左前脚体18を構成する五角形端面18Eの山形状の上辺部18E4に対応するように、山形状に折り曲げて形成されている。
左前延長部材52は、左,右方向に延びた外端が左サイドフレーム16の内側板16Aに溶接手段を用いて一体的に固着されている。一方、左前脚体18側となる左,右方向の内端は、後述の左前接続板体53に固着される脚体側端面52Eとなっている。
脚体側端面52Eは、左前脚体18の五角形端面18Eの前辺部18E1、後辺部18E2、下辺部18E3、上辺部18E4に左前接続板体53を挟んで対面する前辺部52E1、後辺部52E2、下辺部52E3、上辺部52E4を有している。ここで、脚体側端面52Eは、各辺部52E1〜52E4間の角部がそれぞれ角張った角部52E5〜52E8として形成されている。
これにより、左前脚体18の五角形端面18Eの外形形状は、各丸角部18E5〜18E8が左前延長部材52の脚体側端面52Eの各角部52E5〜52E8よりも内側に位置することにより、脚体側端面52Eの外形形状よりも小さくなっている。即ち、脚体側端面52Eの外形形状が五角形端面18Eの外形形状よりも大きくなっている。
また、図15に示すように、左前脚体18の五角形端面18Eの前辺部18E1、後辺部18E2、下辺部18E3と左前延長部材52の脚体側端面52Eの前辺部52E1、後辺部52E2、下辺部52E3とは、左前接続板体53を挟んで3辺の長さ方向でそれぞれ連続して互いに重ねられている。
左前接続板体53は、左前脚体18の五角形端面18Eと左前延長部材52の脚体側端面52Eと間に設けられている。左前接続板体53は、五角形端面18Eと脚体側端面52Eとが対向して固着されるものである。左前接続板体53は、左前脚体18の五角形端面18Eの外形形状以上で、かつ左前延長部材52の脚体側端面52Eの外形形状以上の大きさに形成されている。第4の実施の形態では、左前接続板体53は、脚体側端面52Eの外形形状以上の大きさをもった板体により形成されている。
左前接続板体53の具体的な形状は、左前延長部材52の脚体側端面52Eの外形形状よりも所定寸法だけ大きな五角形状をなしている。左前接続板体53は、第1の実施の形態による左前接続板体23と同様に、隅肉溶接を施すための溶接代を確保できる程度の寸法だけ大きな五角形状の板体として形成されている。
左前接続板体53は、前縁部53A、後縁部53B、下縁部53C、上縁部53Dを有している。上縁部53Dは、五角形端面18Eの上辺部18E4に対応し、上側に突出した山形状をなしている。これにより、左前接続板体53は、隅肉溶接を施すための溶接代を確保した上で、小さな外形形状とすることができる。
左前接続板体53は、左前脚体18側の内端面53Eに左前脚体18の五角形端面18Eが溶接手段を用いて固着されている。一方、左前接続板体53は、左前延長部材52側の外端面53Fに左前延長部材52の脚体側端面52Eが溶接手段を用いて固着されている。
左前接続板体53は、形状が異なる左前脚体18と左前延長部材52とを繋ぐためのアタッチメントを構成している。左前接続板体53の板厚寸法は、左前脚体18および左前延長部材52の最も薄い部分よりも大きな寸法に設定されている。
また、図11、図12に示すように、右前延長部材54と右前接続板体55は、右前脚体19の五角形端面と右サイドフレーム17の内側板17Aとの間に設けられている。また、左後延長部材56と左後接続板体57は、左後脚体20の五角形端面20Eと左サイドフレーム16の内側板16Aとの間に設けられている。さらに、右後延長部材58と右後接続板体59は、右後脚体21の五角形端面と右サイドフレーム17の内側板17Aとの間に設けられている。
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、左前延長部材52を、左前脚体18の五角形端面18Eに近い形状とすることができるから、負荷の伝達をより一層円滑に行うことができる上に、外観上の見栄えを良好にすることができる。
なお、第4の実施の形態では、左前接続板体53は、左前延長部材52の脚体側端面52Eの外形形状よりも所定寸法だけ大きな五角形状に形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、左前接続板体53を矩形状に形成してもよく、また、脚体側端面52Eの外形形状と同じ大きさに形成してもよい。
第1の実施の形態では、左前接続板体23を1枚の板体によって形成した場合を例示している。本発明はこれに限らず、例えば、左前接続板体23の中央に開口部を設ける構成としてもよい。この場合、左前接続板体23を軽量化することができる。この構成は、他の接続板体25,27,29および他の実施の形態にも同様に適用することができる。
また、各実施の形態では、建設機械としてキャノピ10を備えた小型油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばキャブを備えた小型油圧ショベルに適用する構成としてもよい。