近年では、サイドフラップ部の肌当接面を構成する表面材として、肌触りを柔軟にし、通気性を向上させることなどを目的として、エアスルー不織布やエアスルー開孔不織布などの柔らかく通気性が高い不織布を採用した使い捨ておむつが市場に提供されている。
しかしながら、上記特許文献1記載のものでは、おむつ使用前の折り畳み状態で、ファスニングテープ(止着テープ)が、帯状の接着剤塗工部からなる第3仮止部によっておむつ本体におけるサイドシートの表面に仮止めされているため、装着時にファスニングテープのおむつ本体に対する仮止めを剥がしたとき、サイドシートの表面に第3仮止部の接着剤が残ったり、第3仮止部の接着剤にサイドシートの繊維がくっついてサイドシートの表面が毛羽立ったりするおそれがあり、これによってサイドフラップ部の表面材が傷付き、装着時に肌触り感が悪化する可能性があった。また、上記特許文献2記載のものでは、基材先端部が止着材側へ折り返されて止着材の表面の一部を覆っているものの、おむつ使用前の折り畳み状態では、止着テープがサイドフラップ部の肌側面に折り返されて、止着材がサイドフラップ部の肌側面に仮止めされていると考えられるので、上記特許文献1記載のものと同様に、サイドフラップ部の表面材が傷付き、装着時に肌触り感が悪化することが懸念されていた。
そこで本発明の主たる課題は、サイドフラップ部の肌側面に柔軟で通気性の良い不織布を用いた場合でも、ファスニングテープによってサイドフラップ部の表面材が傷付くのを防止したテープ式使い捨ておむつを提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体の側縁よりも側方に延出するサイドフラップ部が形成され、前記サイドフラップ部の背側の両側部に側方に突出して設けられるとともに、ファスニング基材の肌側面にフック材が固設されてなるファスニングテープが備えられたテープ式使い捨ておむつにおいて、
前記ファスニングテープは、おむつ使用前の折り畳み状態で、突出方向中間部のおむつ長手方向に沿う折り線にて前記ファスニング基材の先端側が基端側の肌側面に折り返され、前記フック材の表面が前記ファスニング基材で覆われており、
前記使い捨ておむつは、前記吸収体の肌側を覆う透液性トップシートと、前記吸収体の非肌側を覆う防水シートと、この防水シートの非肌側に配置されたエアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布からなるバックシートと、肌側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーを形成するギャザーシートとを備え、
前記バックシートの幅方向両側部をそれぞれ肌側に折り返した折り返し部が前記ギャザーシートと重なり代を有しながら肌側に配置されていることを特徴とするテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項1記載の発明では、おむつ使用前の折り畳み状態で、ファスニングテープによってサイドフラップ部の表面材が傷付くのを防止するため、ファスニングテープのフック材を、従来のようにサイドフラップ部の肌側面に仮止めするのではなく、ファスニングテープの突出方向中間部のおむつ長手方向に沿う折り線にてファスニング基材の先端側を基端側の肌側面に折り返すことにより、フック材の表面がファスニング基材で覆われるようにしている。このため、サイドフラップ部の表面材が傷付いたり毛羽立ったりするのが防止でき、エアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布などのように柔軟で通気性に優れた表面材を用いた場合でも表面材の特性が維持できるようになる。
また、上記請求項1記載の発明では、前記サイドフラップ部の肌側面にエアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布からなるシート材を配設するため、バックシートの幅方向両側部をそれぞれ肌側に折り返した折り返し部を肌側に配置するようにしている。これによって、前記サイドフラップ部の肌当接面を構成するシート材として、エアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布からなるものを用いているため、装着時の脇部及び脚周り部の肌触りが柔軟で通気性に優れるようになる。バックシートの両側部を肌側に折り返すことによって、別部材をサイドフラップ部の肌側面に貼着するのに比べて、部品点数を増加させることなく、製造が簡略化できるとともに、簡単にサイドフラップ部の肌触りを柔軟にすることができ且つ通気性が向上できるようになる。
請求項2に係る本発明として、前記フック材は、前記折り線を境に先端側のファスニング基材と基端側のファスニング基材とにそれぞれ設けられ、前記フック材は、前記ファスニング基材を折り返した際に、互いに重ならない位置に配置されている請求項1記載のテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項2記載の発明では、前記フック材がファスニング基材の折り線を境に先端側と基端側のそれぞれの領域に設けられるようにしている。このとき、前記フック材の配置は、ファスニング基材を折り返した際に、互いに重ならない位置とすることにより、フック材の表面がファスニング基材によって確実に覆われるようにしている。このようにフック材をファスニング基材の先端側と基端側のそれぞれに設けることによって、両フック材の間に離間部が形成されるようになり、おむつ装着時にファスニングテープを腹側の外面に止着した際に、1箇所で止着した場合より止着強度が向上できるとともに、ウエスト回り方向に離隔した止着幅の狭い2つのフック材によって止着されるため、身体の動きに対する追従性が向上するようになる。
請求項3に係る本発明として、前記フック材よりも先端側に延出するファスニング基材の先端部によって摘み部が形成され、前記摘み部は、基端部に、前記折り線にて前記ファスニング基材を折り返した状態で、先端が肌側に向けて突出するように折り癖が付けられている請求項1、2いずれかに記載のテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項3記載の発明では、おむつ使用前にファスニングテープが折り返された状態から、ファスニングテープを簡単に摘み出せるようにするため、前記フック材よりも先端側に延出するファスニング基材の先端部によって摘み部を形成している。この摘み部は、先端が肌側に向けて突出するような折り癖を基端部に付けることによって、おむつ装着時に摘みやすくするのが好ましい。
請求項4に係る本発明として、前記フック材よりも先端側に延出するファスニング基材の先端部によって摘み部が形成され、前記摘み部は、前記ファスニング基材を前記折り線にて折り返すとともに、前記サイドフラップ部よりも側方に突出する部分の基端部にて非肌側に折り返した状態で、前記サイドフラップ部の側縁よりも側方に突出して設けられている請求項1、2いずれかに記載のテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項4記載の発明では、おむつ使用前にファスニングテープが折り返された状態から、ファスニングテープを簡単に摘み出せるようにするため、前記フック材よりも先端側に延出するファスニング基材の先端部によって摘み部を形成する第2の形態例である。この第2の形態例に係る摘み部は、前記ファスニング基材を前記折り線にて折り返すとともに、前記サイドフラップ部よりも側方に突出する部分の基端部にて非肌側に折り返した状態で、サイドフラップ部の側縁よりも側方に突出するように設けている。このため、おむつ使用前の折り畳み状態でファスニングテープがよりコンパクトにおむつ本体側に折り返されるとともに、摘み部がおむつ本体の側縁から側方に突出して摘みやすくなる。
請求項5に係る本発明として、前記ファスニングテープの前記サイドフラップ部よりも側方に突出する部分の基端部にて非肌側に折り返した状態を保持するための仮止め手段が施されている請求項4記載のテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項5記載の発明では、前記摘み部の第2形態例において、ファスニングテープのサイドフラップ部よりも側方に突出する部分をサイドフラップ部の非肌側に折り返した状態を保持するため、折り返し部分の外面側からピンエンボス等による仮止め手段を施すようにしている。
請求項6に係る本発明として、前記サイドフラップ部に長手方向に沿って弾性伸縮部材が配置された平面ギャザーが形成され、前記バックシートの折り返し部が前記平面ギャザーと重なっている請求項1記載のテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項6記載の発明では、サイドフラップ部の肌側面の平面ギャザーと重なる位置に肌触りの良いバックシートと同じ材料が配置されるため、サイドフラップ部において平面ギャザーを形成する弾性伸縮部材によって肌トラブルが発生するのが軽減できるようになる。
請求項7に係る本発明として、前記弾性伸縮部材は、前記バックシートの折り返し部とギャザーシートとの重なり代に重なる領域であって、前記防水シートとギャザーシートとの間に配置されている請求項6記載のテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項7記載の発明では、サイドフラップ部において平面ギャザーを形成する弾性伸縮部材の配置位置として、弾性伸縮部材による脚の付け根の内側部分に締め付け跡をできなくするとともに、汗疹や肌荒れ等の肌トラブルを軽減するため、前記バックシートの折り返し部とギャザーシートとの重なり代に重なる領域であって、前記防水シートとギャザーシートとの間に配置するのが好ましい。
請求項8に係る本発明として、前記弾性伸縮部材の配置領域と重なる領域では、前記バックシートとギャザーシートとが非接着とされている請求項6、7いずれかに記載のテープ式使い捨ておむつが提供される。
上記請求項8記載の発明では、前記弾性伸縮部材の配置領域と重なる領域では、前記バックシートとギャザーシートとを非接着としているため、平面ギャザーの肌当たりをより柔軟にすることができる。
以上詳説のとおり本発明によれば、サイドフラップ部の肌側面に柔軟で通気性の良い不織布を用いた場合でも、ファスニングテープによってサイドフラップ部の表面材が傷付くのが防止できるようになる。
〔使い捨ておむつの基本構成〕
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。本書において、「長手方向」とは使い捨ておむつ1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(使い捨ておむつ1の展開時の左右方向)を意味する。
図1〜図3に示されるように、本使い捨ておむつ1(以下、単におむつともいう。)は、綿状パルプ等からなり、たとえば砂時計形状(または長方形状等)のある程度の剛性を有するとともに、クレープ紙や不織布などからなる被包シート5によって囲繞された吸収体4と、該吸収体4の肌側(使用面側)を覆う有孔または無孔の不織布等からなる透液性トップシート3と、前記吸収体4の非肌側(裏面側)を覆うポリエチレン等からなる防水シート6と、この防水シート6の非肌側に配置された不織布からなるとともに、おむつ外形を画成するバックシート2と、肌側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーBS、BSを形成するとともに、前記透液性トップシート3より幅方向外側に延びるギャザーシート7、7と、前記透液性トップシート3の非肌側に隣接して配置された親水性の不織布からなるセカンドシート14と、おむつ背側両側部に設けられた機械接合式のファスニングテープ10,10とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記バックシート2、防水シート6及び透液性トップシート3の外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体4が存在しないエンドフラップ部EFが形成されるとともに、前記吸収体4の両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記バックシート2、防水シート6及びギャザーシート7の外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないサイドフラップ部SFが形成されたものである。
装着に当たっては、おむつ1の前身頃および後身頃をそれぞれ着用者の身体に当てがった後、前記ファスニングテープ10,10を腹側に持ち込み、バックシート2の外面側に設けられたフロントターゲットテープ11に係合させておむつを装着する。
以下、更に各構成部材について具体的に詳述すると、
前記透液性トップシート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンボンド法やサーマルボンド法によるものは柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、エアスルー法やスパンレース法によるものは嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性トップシート3としては、ロール表面に凸部が複数設けられた凸ロールと、ロール表面に前記凸部が嵌入する凹部が複数設けられた凹ロールとからなるエンボスロールを通過させることにより表面に凹凸のエンボスが付与されているものを用いるのが望ましい。トップシート表面に形成された凹凸が軟便の表面拡散速度を抑え、排便領域の近傍で吸収体に吸収され易くなる。
前記吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプ等の吸収性繊維と高吸収性ポリマーとにより構成され、図示例では脚回りへの当たりを和らげるために、おむつ長手方向の中間両側部にそれぞれ幅方向内側へ窪む凹状の切欠き部19を有する略砂時計状とされている。前記高吸収性ポリマーは例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に混入されている。
前記吸収体4を囲繞する被包シート5としては、クレープ紙、親水性不織布等、吸収体4への体液吸収を阻害することなく、体液等を透過させ、かつ吸収体4が崩れないように形状保持するものであればどのようなシートを用いてもよい。この被包シート5は、無孔シートの他、多数の開孔が形成された多孔シートを用いることができる。
前記防水シート6は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられ、漏れを防止するために少なくとも吸収体4の全面積を覆う範囲に設置される。近年は、ムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
前記透液性トップシート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、防水シート6よりは狭く、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性トップシート3とは別のギャザーシート7、具体的には体液が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたギャザーシート7が配設されている。
前記ギャザーシート7は、前記吸収体4の側縁部近傍よりも外側に延び、前記防水シート6及びバックシート2と接合固着され、これらの積層シート部分によってサイドフラップSFを構成している。このサイドフラップ部SFにおいては、おむつ長手方向に沿って複数本、図示の例では2本の弾性伸縮部材8,8が配設されることにより、平面ギャザーGKが形成されている。この平面ギャザーGKは、着用した際におむつをきっちりと脚周りにて保持することにより、フィット性を向上させおむつがずれるのを防止する。
他方、前記ギャザーシート7の前記固着部よりも内方側の不織布シート部分によって表面側に起立する立体ギャザーBSが形成されている。この立体ギャザーBSは、吸収体4の側縁近傍位置に起立端を有し、その先端がおむつ長手方向に沿って2重に折り返され、この折り返し部の内方に1本または複数本の、図示例では1本の弾性伸縮部材9を配設することにより、その伸縮力を利用して立体ギャザーBSを起立させるようになっている。
前記弾性伸縮部材8,9としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。
また、前記ギャザーシート7としては、バリア性の高い不織布が用いられる。耐水圧(JIS L 1092)は80mmH2O以上、好ましくは100mmH2O以上あり、バックシート2よりも高い。そのため、肌触り、ふんわりとした嵩高感、通気性など、装着時の快適性に関する品質項目のいずれかでは、前記バックシート2よりも劣ることが多い。
不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、メルトブローン法、SMS法等の適宜の加工方法により得られた不織布を用いることができる。ギャザーシート用不織布には、適当なバリア性を得るために、繊維の太さが2.2dtex以下であるものが好ましい。また、スパンボンド法やサーマルボンド法、メルトブローン法によるものが薄くドレープ性に優れ高密度であるため好ましく、スパンボンド不織布とメルトブローン法を複合したSMS法によるものが特に好ましい。
不織布の目付は8〜20g/m2、特に10〜15g/m2程度とするのが好ましい。不織布の厚み(自動厚み測定器KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラムを用い、荷重:10gf/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で測定)は0.1〜0.4mmが好ましく、この数字で不織布の目付を割って求められる密度は、0.05〜0.15g/m3程度である。また、JIS L 1096 通気性A法(フラジール形法)に準じて測定される通気度が40cc/cm2・sec以下、特に30cc/cm2・sec以下と通気度の低いものが好ましい。
また、前記透液性トップシート3と吸収体4との間であって前記透液性トップシート3の非肌側に隣接して、親水性不織布からなるセカンドシート14を介在させることができる。このセカンドシート14は、無孔シートの他、多数の開孔が形成された多孔シートを用いることができる。前記親水性不織布としては、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることにより親水性を有するようにしたものを好適に用いることができる。
〔バックシート2〕
前記バックシート2としては有孔又は無孔の不織布が用いられる。不織布の目付は15〜35g/m2、特に20〜30g/m2程度とするのが好ましい。
不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、繊維の太さは1.2〜4.4dtex程度が好ましく、エアスルー法、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法(ポイントボンド法)、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。バックシート用不織布には、ふんわりとした感触で嵩高なもの(低密度なもの)が好適に用いられるため、エアスルー法やスパンレース法によるものが好ましい。これらの不織布の中でも、不織布製造時にドラム搬送過程で加熱空気を送り繊維同士を熱融着させるエアスルー法により製造された不織布が特に好ましく、高温空気の熱によって繊維同士を融着させるため、空間割合が高くふんわりとした感触と、嵩高であるなどの利点を有する。スパンボンド法やサーマルボンド法など、熱エンボスにより繊維を固定する方式の不織布は、柔軟性やドレープ性に優れるが薄く高密度なものになりがちだが、エンボス率が低い(12%以下程度)ものは、比較的嵩高になるため好ましい。
前記エアスルー法によって得られた不織布は、エアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布として用いることができる。前記エアスルー不織布とは、エアスルー法によって得られた特に開孔処理を施していない不織布であり、前記エアスルー開孔不織布とは、エアスルー法によって得られた不織布に、当分野で周知のピンエンボス加工、あるいは吸引による方法等により微細な多数の開孔を形成する開孔処理を施したものである。
不織布の厚み(自動厚み測定器KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラムを用い、荷重:10gf/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で測定)は0.5〜1.5mmが好ましく、この数字で不織布の目付を割って求められる密度は、0.01〜0.05g/m3程度である。また、JIS L 1096 通気性A法(フラジール形法)に準じて測定される通気度が50cc/cm2・sec以上、特に60cc/cm2・sec以上と通気度の高いものが好ましい。
前記バックシート2は、詳細には図3に示されるように、幅方向両端部をそれぞれ肌側に折り返した折り返し部20が前記ギャザーシート7と重なり代Sを有しながら肌側に配置されるとともに、使い捨ておむつ1の両側部にそれぞれ、非肌側に配置されたバックシート2部分と前記折り返し部20のバックシート2部分とが積層されたバックシート2の2重シート部21が形成されるようにするのが好ましい。
前記バックシート2の2重シート部21は、非肌側に配置されたバックシート2部分と、肌側に折り返した折り返し部20のバックシート2部分とが直接積層された前記ギャザーシート7及び防水シート6が介在しない部分である。前記2重シート部21において、バックシート2、2同士は、所定範囲がホットメルト接着剤などによって接合されている。前記2重シート部21は、前記防水シート6及びギャザーシート7よりおむつ幅方向の外側に形成され、かつおむつ長手方向のほぼ全長に亘って形成されている。前記2重シート部21は、おむつ長手方向の両端部(前後端部)では、図3に示されるように、バックシート2の折り返し端部がおむつ側縁を巻き込むようにして連続して覆っているが、おむつ長手方向の中間部では、図2に示されるように、脚周りのフィット性を考慮しておむつ両側縁に幅方向内側に括れた切欠き部19を設けているため、折り返し端部を含むおむつ両側縁部が切り取られることによって、非肌側と肌側のそれぞれにバックシート2、2を積層した構造となっている。
本使い捨ておむつ1では、前記バックシート2の折り返し部20がギャザーシート7と重なり代Sを有しながら肌側に配置されているため、従来の使い捨ておむつのように、使い捨ておむつの側縁までギャザーシートを延在させたものと比較して、部品点数を増加させることなく、肌触りの良いバックシート2の折り返し部20によってサイドフラップ部SFの肌触りが良好になる。また、サイドフラップ部SFの肌側面に肌触りの良いバックシート2の折り返し部20が配置されているため、サイドフラップ部SFにおいて平面ギャザーGKを形成する弾性伸縮部材8、8によって肌トラブルが発生するのが軽減できるようになる。
更に、使い捨ておむつ1の両側部にそれぞれ、折り返したバックシート同士を積層したバックシート2の2重シート部21が設けられているため、おむつ両側部の肌触りをより一層滑らかなものとすることができるとともに、両側部の通気性が向上するようになる。
前記ギャザーシート7は、おむつ幅方向の外方側端縁が防水シート6の側端と同等又はこれより内側に位置するように配置するのが好ましい。つまり、前記ギャザーシート7は、防水シート6よりおむつ幅方向の外側に延在しないように、防水シート6と重なる領域に配置するのが好ましい。これによって、サイドフラップ部SFにギャザーシート7が介在する範囲が少なくなり、サイドフラップ部SFの通気性を確実に向上させることができるようになる。これに伴い、前記防水シート6よりおむつ幅方向の外側に、前記バックシート2の2重シート部21が形成されるようになり、脚周りの柔軟性を更に高めることが可能になる。ギャザーシート7のおむつ幅方向外方側端縁を防水シート6の側端より内側に位置させた場合、ギャザーシート7の端縁と防水シート6の側端とのおむつ幅方向の離間長さは、20mm以内、好ましくは10mm以内とするのがよい。20mmより長く離間して内側に配置した場合には、ギャザーシート7と防水シート6との積層部分に弾性伸縮部材8、8を配置することにより形成される平面ギャザーGKが内側に偏り過ぎるようになる。
前記バックシート2の2重シート部21では、バックシート同士を全面に亘ってホットメルト接着剤などで接合してもよいが、図3に示されるように、前記バックシート2の2重シート部21のうち、バックシート2の折り返し端から内側に所定の範囲(距離Lの範囲)では、バックシート同士を非接着とし、それより内側の範囲を接合するのが好ましい。これにより、前身頃及び後身頃のおむつ側縁の肌当たりを柔らかくすることができる。折り返し端から内側への距離Lとしては、3〜15mm(少なくとも3mmで最大15mm)、好ましくは5〜10mmとするのがよい。また、おむつ長手方向の中間両側部にそれぞれ幅方向内側へ窪む凹状の切欠き部19を形成した場合において、前記切欠き部19から内側へ1〜10mm以内、好ましくは2〜5mm以内の範囲の前記バックシート同士を非接着としてもよい。これにより、脚周りの肌当たりを和らげることができる。
前記バックシート2の折り返し部20とギャザーシート7との重なり代Sは、前記防水シート6と重なる範囲に形成するのが好ましい。前記重なり代Sの幅W(おむつ幅方向の長さ)は、10〜30mmとするのが好ましい。図示例では、透液性トップシート3より幅方向外側に延在したギャザーシート7部分によって前記重なり代Sが形成されているが、透液性トップシート3との積層部分を含むギャザーシート7によって前記重なり代Sを形成してもよい。この重なり代Sと重なる範囲に、平面ギャザーGKを形成する弾性伸縮部材8、8を配置するのが望ましい。
前記重なり代Sでは、バックシート2とギャザーシート7とを全面に亘ってホットメルト接着剤などで接合してもよいが、図2に示されるように、前記弾性伸縮部材8,8の配置領域と重なる領域は、バックシート2とギャザーシート7との非接着領域22とするのが好ましい。これによって、ギャザーシート7に接合されないバックシート2部分によって、弾性伸縮部材8、8の肌当たりがより柔らかくなり、脚周りの柔軟性を更に向上させることができるようになる。なお、前記非接着部は、前記重なり代Sの外縁、特におむつ幅方向の内側の端縁に達しない重なり代Sの中間部に設けるのが好ましい。すなわち、重なり代Sにおいて前記バックシート2とギャザーシート7とは、少なくとも前記弾性伸縮部材8、8が配置されない長手方向の両端部及びバックシート折り返し部20の折り返し端縁に沿った部分で接着されるようにするのが好ましい。
ところで、本使い捨ておむつ1では、図1及び図3に示されるように、背側の吸収体4より非肌側におむつ幅方向に伸縮性を有するウエストシート12を配置するのが好ましい。前記ウエストシート12は、通気性不織布間に、おむつ幅方向に伸縮する伸縮部材が伸長状態でおむつ長手方向に間隔を置いて複数配置されたものである。前記ウエストシート12を配置するに当たって、該ウエストシート12の両側部が、前記防水シート6よりおむつ幅方向の外側であって、前記バックシート2の2重シート部21に延在して配置されるようにするのが好ましい。これにより、背側において、両側のバックシート2の2重シート部21、21間に亘っておむつ幅方向の伸縮性が付与されるため、ウエスト回りのフィット性が良好になる。
〔ファスニングテープ10〕
次に、前記機械接合式のファスニングテープ10について説明する。前記ファスニングテープ10は、図1に示されるように、プラスチック、ポリラミ不織布、不織布、紙等のファスニング基材30の基部がおむつに接合されている。前記ファスニング基材30の突出片部分でかつ肌側面(透液性トップシート3側の面)にフック材31が固設されている。前記フック材31は、ファスニング基材30に接着剤により剥離不能に接着されている。前記フック材31は、その表面(外面)に多数の係合片32、32…を有する。
前記ファスニング基材30は、詳細には図5(A)に示されるように、使い捨ておむつへの取付部30Aと、サイドフラップ部SFよりも側方へ突出する基材本体部30Bとから構成されている。前記おむつ取付部30Aは、おむつ長手方向に長手縁を有する略矩形状とされ、前記基材本体部30Bは前記おむつ取付部30Aの外側縁から連続的に側方に突出し、前記フック材31が貼着されている。
前記ファスニングテープ10を背側の両側部に取り付ける際、図3に示されるように、本実施形態の使い捨ておむつ1では、バックシート2の両側部が肌側に折り返されているため、前記おむつ取付け部30Aを、非肌側に配置されたバックシート2の外面側に接合するのが好ましい。バックシート2の肌側に折り返された折り返し部20の肌側面に接合すると、サイドフラップ部SFの柔軟性が低下するので好ましくない。
前記使い捨ておむつ1は、おむつ使用前において、図4に示されるように、サイドフラップ部SFがそれぞれ内側(肌側)に折り畳まれるとともに、長手方向中央部で内側に半分に折り畳まれた折り畳み状態(製品状態)とされている。
このおむつ使用前の折り畳み状態で、前記ファスニングテープ10は、所定の形態で折り返されることにより、フック材31の表面がファスニング基材30で覆われるようになっている。ファスニングテープ10を折り返す第1の形態例としては、図5及び図6に示されるように、突出方向中間部のおむつ長手方向に沿う折り線33にて、ファスニング基材30の先端側が基端側の肌側面に折り返され、前記フック材31の表面の全面がファスニング基材30で覆われるとともに、前記フック材31が前記ファスニング基材30に対して剥離可能に接合された状態となっている。
このようにファスニングテープ10を所定の形態で折り返すことにより、サイドフラップ部SFの肌当接面を構成するシート材を、エアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布で構成して脇部及び脚周り部の肌触りが柔軟で通気性に優れた使い捨ておむつとした場合でも、おむつ使用前の折り畳み状態で、ファスニングテープ10によってサイドフラップ部SFの表面材が傷付けられるのが防止できるようになる。つまり、従来の使い捨ておむつでは、ファスニングテープのフック材をサイドフラップ部の肌側面に仮止めしていたため、装着時にファスニングテープを剥がしたとき、サイドフラップ部の表面が毛羽立って傷付くことにより、柔軟性に欠け、毛羽立ちにより開孔不織布の開孔が塞がれることによる通気性の低下が問題となっていたが、本使い捨ておむつ1では、フック材31の表面がファスニング基材30で覆われているため、サイドフラップ部SFの不織布がフック材31によって傷付くのが防止でき、装着時に肌触り感が低下することがないとともに、不織布の通気性が維持できるようになる。
前記フック材31は、図5及び図6に示されるように、前記折り線33を境に先端側のファスニング基材30と基端側のファスニング基材30とにそれぞれ設けられることにより、突出方向に離間して2箇所に配置するのが好ましい。図5及び図6では、内側のフック材を31a、外側のフック材を31bとしている。これらのフック材31a、31bは、前記ファスニング基材30を折り線33にて折り返した際に、互いに重ならない位置に配置されている。このため、ファスニング基材30を折り返したとき、確実にフック材31がファスニング基材30によって覆われるようになる。前記フック材31をファスニング基材30の先端側と基端側のそれぞれに配置することによって、おむつ装着時にファスニングテープ10を腹側のフロントターゲットテープ11に止着したとき、1箇所で止着した場合より止着強度が向上できるとともに、ウエスト回り方向に離隔して止着幅の狭い2つのフック材31a、31bによって止着されるため、装着時の身体の動きに対する追従性が向上するようになる。
前記フック材31の幅は、2箇所とも同じ幅で形成するのが好ましいが、異なる幅で形成してもよい。前記フック材31の幅寸法は、10〜15mmが好ましい。2つのフック材31a、31bの離間幅は、前記折り線33にて折り返したときにフック材31a、31bが重ならない幅であればよいが、前記フック材31の幅寸法と略同等とするのが好ましい。これにより、内側のフック材31aの先端側縁部を折り線33として折り返したときに、2つのフック材31a、31bが近接して配置されるようになり、折り畳み状態がコンパクトになり、外観が良好となる。一方、内側のフック材31aとサイドフラップ部SFの側縁との離間距離は、前記フック材31の幅寸法より3〜10mm、好ましくは4〜8mmだけ大きくするのが好ましい。ファスニングテープ10の折り返し時に、サイドフラップ部SFの側縁に近接して外側のフック材31bが配置されると、何らかの外力により、サイドフラップ部SFの側縁にフック材31bが引っ掛かって、サイドフラップ部SFの表面材を傷つけるおそれがあるため、十分な余裕を持ってフック材が配置されるようにするのが好ましい。
前記折り線33は、内側のフック材31aの先端側縁部又はその近傍に沿って設けるのが好ましい。これにより、この折り線33にてファスニング基材30を折り返したときに、折り畳み状態がコンパクトになり、外観が良好になる。
次いで、ファスニングテープ10を折り返す第2の形態例として、図7に示されるように、ファスニング基材15の先端側を前記折り線33にて基端側の肌側に折り返すとともに、前記ファスニング基材15をサイドフラップ部SFよりも側方に突出する部分の基端部にてサイドフラップ部SFの非肌側に折り返すことにより、断面Z形に折り畳むようにしてもよい。これにより、ファスニングテープ10の本体部分がサイドフラップ部SFよりも側方に突出しなくなるので、さらにコンパクトなおさまりとなり、外観が良好になる。
この折り返し状態の第2形態例においては、前記ファスニングテープ10のサイドフラップ部SFよりも側方に突出する部分の基端部にてサイドフラップ部SFの非肌側に折り返した状態を保持するための仮止め手段を施すのが好ましい。前記仮止め手段としては、図7(C)に示されるように、ファスニングテープ10の外面側(非肌側)から施された1箇所又は複数箇所のピンエンボスなどによって構成することができる。
前記ファスニングテープ10は、先端側のフック材31bよりも先端側に延出するファスニング基材30の先端部によって摘み部34を形成するのが好ましい。この摘み部34は、おむつの装着時に、ファスニングテープ10の折り返し状態を展開する際に簡単に摘み出せるようにするためのものである。図4〜図6に示される折り返し状態の第1形態例において、前記摘み部34は、基端部(先端側のフック材31bの先端側縁部に沿う部分)に、前記折り線33にてファスニング基材30を折り返した状態で、先端が肌側に向けて突出するように折り癖を付けるようにするのが好ましい。これにより、摘み部34が摘みやすくなる。この折り癖は、先端が肌側の斜め幅方向外方側に向けて突出するように付けるのが好ましい。これによって、図4に示されるように、おむつ使用前の折り畳み状態で、摘み部34が押し潰されても、折り癖が解除されるのが防止できる。
一方、図7に示される折り返し状態の第2形態例において、前記摘み部34は、ファスニング基材30を前記折り線33にて折り返すとともに、サイドフラップ部SFよりも側方に突出する部分の基端部にて非肌側に折り返した状態で、サイドフラップ部SFの側縁よりも側方に突出するように配置するのが好ましい。これにより、摘み部34が摘みやすくなる。
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、バックシート2の幅方向両側部をそれぞれ肌側に折り返した折り返し部20をサイドフラップ部SFの肌側に配置することにより、サイドフラップ部SFの肌当接面を構成するシート材がエアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布からなるようにしていたが、図8に示されるように、サイドフラップ部SFの肌側に前記バックシート2とは別部材のエアスルー不織布又はエアスルー開孔不織布からなるシート材40を配置してもよい。このとき、前記ファスニングテープ10は、バックシート2の外面側に固定してもよいし、同図8に示されるように、バックシート2と前記シート材40との間に固定するようにしてもよい。
(2)上記形態例では、前記ファスニングテープ10のフック材31を突出方向に離間する2箇所に設けていたが、前記折り線33より先端側のファスニング基材に1箇所のみ配置するようにしてもよい。