以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
本明細書における粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称され得るものが包含される。また、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態のシートであってもよい。
<剥離ライナー付き粘着シート>
一実施形態に係る剥離ライナー付き粘着シートに関し、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、この実施形態の剥離ライナー付き粘着シート1は、粘着シート20と剥離ライナー10とを含む。この実施形態の粘着シート20は、粘着剤層(第一粘着剤層)24と、粘着剤層24を第一面22A上に支持するシート状の基材22と、基材22の第二面22Bに支持された粘着剤層(第二粘着剤層)26と、を含む基材付き両面粘着シートとして構成されている。剥離ライナー10は、粘着剤層24を覆って配置されている。この実施形態の剥離ライナー付き粘着シート1は、粘着剤層26を覆う剥離ライナー30をさらに含む。
剥離ライナー10は、少なくとも粘着剤層24側の表面10Aが剥離面(粘着剤層を剥離可能な表面)となっている。剥離ライナー10の背面10B(すなわち、表面10Aとは反対側の面)は、剥離面であってもよく、非剥離面(非剥離性の表面)であってもよい。同様に、剥離ライナー30は、少なくとも粘着剤層26側の表面30Aが剥離面となっている。剥離ライナー30の背面30Bは、剥離面であってもよく、非剥離面であってもよい。剥離ライナー10の背面10Bが剥離面である場合、剥離ライナー30を省略して剥離ライナー10と粘着シート20との積層体が巻回された形態とし、粘着剤層26の表面が剥離ライナー10の背面10Bに当接して保護されるように構成してもよい。なお、基材22の第一面22Aおよび第二面22Bは、いずれも非剥離面である。
剥離ライナー10の表面10Aには凹部12が形成されている。図6によく示されるように、この実施形態の剥離ライナー10では、凹部12の内面は、概ね平坦な底部122と、凹部12の開口端12Aと底部122との間に形成された周壁部124とを有する。これにより凹部12の内面は、全体として概ね皿状に形成されている。また、図2に示すように、凹部12の平面視における開口形状は、概ね菱形である。この実施形態では、かかる形状の複数の凹部12が、剥離ライナー10の表面10Aに、所定の間隔をおいて縦横に配列して設けられている。それらの凹部12は中間部14によって互いに隔てられている。中間部14は、図2に示すように、一の方向にほぼ平行に延びる複数の第一畝部142と、上記一の方向と交差する方向にほぼ平行に延びる複数の第二畝部144とが交点で連絡することにより、全体として格子状に形成されている。この実施形態では、第一畝部142と第二畝部144とが非直角に(すなわち、斜めに)交差することにより、菱形の平面形状を有する複数の凹部12が区画されている。
好ましい一態様において、中間部14は、少なくとも一箇所において、剥離ライナー付き粘着シート1の外端に至るように形成されている。このように構成することにより、粘着シート20と被着体との間に溜まり得る空気を、中間部14に対応(対向)する位置の粘着剤層24と被着体2との間を経由して粘着シート20の外端まで移動させて排出しやすくなる。これにより粘着シート20の空気抜け性が向上し得る。中間部14が剥離ライナー付き粘着シート1の外端に至る箇所は、剥離ライナー付き粘着シート1の一方向(例えば縦方向、典型的には長手方向)の一端にあってもよく、一方向の両端にあってもよく、全周にあってもよい。この実施形態では、図2に示されるように、剥離ライナー付き粘着シート1の全周(縦方向の両端および横方向の両端)において中間部14が剥離ライナー付き粘着シート1の外端に至っている。このような構成は、粘着シート20の空気抜け性がよいので好ましい。
粘着剤層24を構成する粘着剤の一部は凹部12の内側に延び、これにより凹部12を部分的に充填する突出部242が形成されている。すなわち、凹部12の内部空間STは、粘着剤層24を構成する粘着剤によって部分的に充填されている。ここで、凹部の内部空間STとは、凹部12の開口端12Aを結ぶ仮想面と凹部12の内面とにより区画される空間をいう(図6参照)。また、内部空間STが粘着剤によって部分的に充填されているとは、該内部空間STのうち、全容積ではなく一部容積のみが粘着剤で充填されていることをいう。内部空間STの非充填部SN(内部空間STから粘着剤で充填された部分を除いた残部をいい、典型的には凹部12内の空隙として把握され得る。図1参照。)は、主に空気によって占められ得る。非充填部SNは、空気以外の物質(典型的には流体、例えば窒素等の気体)により占められていてもよい。非充填部SNが複数種類の物質で占められていてもよい。
このように粘着剤層24の突出部242が凹部12を部分的に充填する構成によると、単位面積当たりの粘着剤量が少なくても凹部12の深さDRを大きくすることができ、したがって突出部242の高さを大きくすることができる。かかる突出部242を有する粘着シート20を被着体に貼り付けることにより、被着体表面に対する粘着面の初期密着性を抑え、良好な空気抜け性を確保することができる。また、粘着剤層24の突出部242が凹部12内に空隙を残して充填されていることにより、粘着シート20から剥離ライナー10を分離する際に凹部12から突出部242を抜き出しやすい。すなわち、凹部12内の突出部242が粘着剤層24から千切れて剥離ライナー10とともに除去される事象や、剥離ライナー10を除去する際に突出部242の形状が意図した形状から大きく変形して元の形状に戻らなくなる事象を回避することができる。これにより、突出部242を利用して安定した空気抜き性を発揮することができる。凹部12の開口面積が小さくかつ該開口面積に対して該凹部12の深さDRが大きい態様や、突出部242が凹部12の内面沿いに延びる壁状または柱状の部分を有する態様では、このように凹部12からの抜き出し性をよくして突出部242の千切れや変形を防止することが特に有意義である。
この実施形態では、突出部242は、凹部12の開口端12Aのほぼ全周から周壁部124に沿って凹部12の内側に薄く延びることにより、菱形環状の薄壁を形成している。この環状薄壁の内側(内周側)は非充填部SNとなっている。凹部12の底部122は非充填部SNに露出している。また、粘着剤層24のうち突出部242以外の部分は、概ね平坦な連続面である平坦部244となっている。突出部(環状薄壁)242の内側において、非充填部SNと基材22とは粘着剤層24の平坦部244により隔てられている。
粘着シート20から剥離ライナー10を剥がすと、図3に示すように、平坦部244のなかに突出部242が配列した凹凸構造の粘着剤層24が露出する。この粘着剤層24を被着体2に載せると、図4に示すように、まず突出部242の先端が被着体2に接触する。この突出部242がスペーサーとして機能することにより、少なくとも貼り合わせの初期において、粘着剤層24の平坦部244と被着体2との密着性(初期密着性)は制限される。このような初期貼付け状態を利用して空気抜け性を発揮することができる。例えば、粘着シート20を背面側(粘着剤層24が設けられた側とは反対側)から指先で軽く押さえつつ、その指を粘着シート20の外縁に向けて滑らせることにより、粘着剤層24と被着体との間に残ろうとする空気を移動させ、上記外縁から追い出すことができる。なお、このような空気抜きの操作自体は公知の方法で行うことができ、特に制限されない。例えば、粘着シートを背面から押さえて空気を移動させる操作は、上記のように手指により行ってもよく、適切な器具(布、スキージ、ローラ等)を用いて行ってもよい。
図5は、図4に示す初期貼付け状態を被着体側からみた状態を模式的に示している。この実施形態では、上記初期貼付け状態において、菱形環状に形成された各突出部242の先端が被着体2に接触する。かかる菱形環状の接触部の間には、中間部14に対応する格子状に、粘着剤層24と被着体2とが密着しない非接触部P1が形成される。上述のような空気抜き操作において、この格子状の非接触部P1を主な空気抜け通路として利用することにより、良好な空気抜け性を実現することができる。また、菱形環状の接触部の内側にも非接触部P2が形成される。このことによって上記初期貼付け状態において粘着剤層24と被着体2との接触面積を小さくし、良好な空気抜け性や貼り直し性を実現することができる。非接触部P2内の空気は、図4,5に示すように、主に突出部242の先端と被着体2との間から上記格子状の非接触部に押し出すことができ、該格子状の非接触部を通じて粘着シートの外端から追い出すことができる。この実施形態の突出部242は、環状に形成されているので形状維持性がよく、非接触部P1,P2を形成するスペーサーとしての機能を適切に発揮することができる。
なお、図1に示す剥離ライナー付き粘着シートでは、粘着剤層26を覆う剥離ライナー30の表面30Aは平坦な形状(凹部を有しない形状)であるが、例えば、剥離ライナー30にも剥離ライナー10と同様の凹部を設け、上記凹部を部分的に充填する突出部を粘着剤層26が有するように構成してもよい。かかる態様によると、粘着剤層26側の粘着面においても良好な空気抜け性が発揮され得る。また、図1に示す構成において、粘着剤層26および剥離ライナー30を省略してもよい。すなわち、粘着シート20は、基材22とその第一面22Aに支持された粘着剤層24を有する基材付き片面粘着シートとして構成されていてもよい。
ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートにおいて、剥離ライナーの凹部の容積に占める粘着剤の体積の割合、すなわち凹部の粘着剤充填率(体積基準)は、100%未満であればよく、特に限定されない。上記粘着剤充填率は、例えば90%以下とすることができ、通常は75%以下であることが適当であり、50%未満であることが好ましい。粘着剤充填率が小さくなると、凹部からの突出部の抜き出し性が向上する傾向にある。また、より単位面積当たりの粘着剤量が少ない態様においても好適な空気抜け性が得られやすくなる傾向にある。一態様において、上記粘着剤充填率は、30%以下であってよく、20%以下であってもよく、さらには10%以下(例えば5%以下)であってもよい。粘着剤充填率の下限は特に制限されないが、性能安定性や製造容易性の観点から、通常は0.5%以上が適当である。一態様において、粘着剤充填率は、1%以上であってよく、3%以上であってもよい。
ここで、凹部の粘着剤充填率は、所定面積Aの剥離ライナー付き粘着シートについて、該剥離ライナー付き粘着シートを構成する剥離ライナーが有する凹部の合計容積VRと、該凹部に充填されている粘着剤の合計体積VFAとから、次式:粘着剤充填率(%)=(VFA/VR)×100;により求められる。粘着剤充填率は、上記所定面積Aを10cm2以上(例えば10cm2〜25cm2)として、典型的には縦3cm以上、横3cm以上の正方形状または長方形状のサンプルについて求めることが好ましい。
上記所定面積Aの剥離ライナーが複数の凹部を有する場合、個々の凹部の粘着剤充填率は、同程度であってもよく異なってもよい。好ましい一態様では、それら複数の凹部のうち50個数%以上(より好ましくは70個数%以上、例えば90個数%以上)は、各凹部の粘着剤充填率が90%以下(典型的には50%未満、より好ましくは30%以下、例えば10%以下)であり、かつ0.5%以上(より好ましくは1%以上)である。このように粘着剤充填率の均質性のよい剥離ライナー付き粘着シートは、粘着シートの性能安定性(例えば、空気抜け性、粘着性等)の観点から好ましい。
凹部を充填する突出部の形状は、該凹部を有する剥離ライナーを粘着シートから剥がすことにより突出部を有する粘着剤層を露出させ得る形状であればよく、特に限定されない。好ましい一態様において、突出部の形状は、例えば、凹部の開口端から凹部の底に向かって柱状または壁状(膜状)に延びる形状であり得る。凹部の開口端が環状であって該開口端のほぼ全周から上記突出部が壁状に延びる形態が好ましい。かかる形態の突出部は、環状の壁(筒)を形成し得る。このような突出部は、上記壁が薄くても凹部からの抜き出し性や形状維持性のよいものとなり得るので好ましい。凹部からの突起部の抜き出し性の観点から、該凹部の表面の少なくとも一部(例えば底部)は凹部内の空隙に露出している(すなわち、粘着剤で覆われていない)ことが好ましい。突出部の形状の他の例として、凹部の上端中央部から該凹部の底に向かって柱状に延びる形状が挙げられる。
一態様において、図6に示すように、凹部12の開口端12Aを結ぶ仮想面と凹部12の周壁部124とのなす角θは、凡そ90度以下であることが好ましく、凡そ85度以下であることがより好ましい。θが90度を上回ると、凹部12からの突起部の抜き出し性が低下傾向となり得る。また、凹部12への粘着剤充填率を調整しやすくする観点から、θは凡そ30度以上であることが好ましく、凡そ45度以上(例えば凡そ60度以上)であることがより好ましい。θを大きくすることは、上述のような環状の突出部の形状維持性の向上や、粘着シートの初期剥離強度の抑制の観点からも有利となり得る。
ここに開示される技術において、剥離ライナーの凹部の深さDRは、例えば凡そ1μm以上とすることができ、通常は凡そ2μm以上が適当であり、凡そ3μm以上(例えば凡そ4μm以上)が好ましい。凹部の深さDRが大きくなると、粘着シートの空気抜け性が向上する傾向にある。一態様において、凹部の深さDRは、例えば凡そ7μm以上とすることができ、凡そ10μm以上であってもよく、凡そ15μm以上であってもよい。凹部の深さDRの上限は特に制限されないが、剥離ライナーの製造容易性の観点から、通常は凡そ100μm以下が適当であり、凡そ50μm以下(例えば凡そ30μm以下)が好ましい。ここで、凹部の深さDRとは、図1に例示するように、凹部12の開口端から凹部12の底までの深さをいう。凹部の深さDRは、剥離ライナー付き粘着シートまたは剥離ライナーの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより把握することができる。上記角度θや、凹部の粘着剤充填率も、同様にして把握され得る。
一態様に係る剥離ライナー付き粘着シートにおいて、凹部の深さDRは、該凹部を有する剥離ライナーに対向する粘着剤層(すなわち、該凹部を充填する突出部を有する粘着剤層)の平均厚さTAVEより大きくすることができる。ここで、粘着剤層の平均厚さTAVEとは、所定面積Aの粘着シートに含まれる粘着剤層の体積VTAを該所定面積Aで除した値をいう。粘着剤層の体積VTAは、例えば、所定面積Aに含まれる粘着剤層の重量および比重から求めることができる。凹部の深さDRを粘着剤層の平均厚さTAVEより大きくすることにより、該平均厚さTAVE(すなわち、単位面積当たりの粘着剤量)が小さい構成においても上記凹部を部分的に充填する突出部の高さを十分に確保することが可能となり、良好な空気抜け機能を発揮することができる。
特に限定するものではないが、ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートにおいて、DR/TAVEは、例えば凡そ1.05以上であり得、凡そ1.10以上であってもよく、凡そ1.20以上であってもよい。一態様において、DR/TAVEは、凡そ1.5以上とすることができ、凡そ2.0以上であってもよく、凡そ3.0以上、さらには凡そ4.0以上であってもよい。DR/TAVEの上限は特に制限されないが、凹部を有する剥離ライナーの厚さが大きくなりすぎることを避ける観点から、通常は凡そ20以下とすることが適当であり、凡そ10以下(例えば凡そ7.0以下)とすることが好ましい。
粘着剤層の平均厚さTAVEは特に限定されない。ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートにおいて、TAVEは、例えば凡そ500μm以下であり得、凡そ100μm以下であってもよく、凡そ60μm以下であってもよい。TAVEが凡そ30μm以下(好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、例えば10μm以下)である態様によると、凹部を粘着剤で部分的にのみ充填することの効果が好適に発揮され得る。かかる効果をよりよく発揮する観点から、ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートは、TAVEが凡そ7μm以下(例えば凡そ5μm以下)である態様でも好ましく実施され得る。TAVEを小さくすることは、粘着シートの軽量化、厚さ低減、省資源化等の観点から好ましい。TAVEの下限は特に制限されないが、製造容易性や粘着シートの性能安定性の観点から、通常は凡そ0.5μm以上とすることが適当であり、典型的には凡そ1μm以上、好ましくは凡そ1.5μm以上、より好ましくは凡そ2μm以上あり、例えば凡そ3μm以上であってもよい。なお、所定面積Aの粘着シートに含まれる粘着剤層の合計体積VTAに対して突出部を構成する粘着剤の合計体積VPの割合が相当に低い場合(例えば、VP/VTAが凡そ0.05以下である場合)、TAVEの近似値として、後述する中間部に対向する部分における粘着剤層の厚さを利用し得る。
凹部内に延びる突出部の高さHP(すなわち凹部の開口端から突出部の先端までの距離。図3参照)は、例えば凡そ0.5μm以上とすることができ、通常は凡そ1μm以上が適当であり、凡そ1.5μm以上(例えば凡そ2μm以上)が好ましい。突出部の高さHPが大きくなると、粘着シートの空気抜け性が向上する傾向にある。一態様において、突出部の高さHPは、例えば凡そ3μm以上とすることができ、凡そ5μm以上であってもよい。他の一態様において、突出部の高さHPは、例えば凡そ7μm以上であってよく、凡そ10μm以上であってもよい。突出部の高さHPの上限は特に制限されないが、凹部からの突出部の抜き出し性や形状維持性の観点から、通常は凡そ25μm以下が適当であり、凡そ20μm以下(例えば凡そ15μm以下)であってもよい。突出部の高さHPは、剥離ライナー付き粘着シートの断面をSEMまたはTEMで観察することにより把握することができる。
一態様において、突出部の高さHPは、凹部の深さDRの30%以上(典型的には50%以上)に相当する高さであり得る。突出部の高さHPは、例えば、凹部の深さDRに概ね対応する高さであってもよく、DRの95%以下(例えば90%以下)に相当する高さであってもよい。他の一態様において、突出部の高さHPは、粘着剤層の平均厚さTAVEの凡そ0.1倍以上(典型的には0.5倍以上)に相当する高さであり得る。HP/TAVEが凡そ1.0以上であってもよく、凡そ1.2以上であってもよく、凡そ1.5以上であってもよく、凡そ2.0以上であってもよい。HP/TAVEは、例えば凡そ10以下とすることができ、通常は凡そ5.0以下とすることが適当である。
ここに開示される粘着剤層は、突出部以外の部分は概ね平坦な形状の平坦部として形成され得る。平坦部における粘着剤層の厚さTB(図3参照)は、例えば500μm未満であり得、100μm未満であってもよく、60μm未満であってもよい。TBが30μm未満(好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、例えば10μm以下)である態様によると、凹部を粘着剤で部分的にのみ充填することの効果が好適に発揮され得る。かかる効果をよりよく発揮する観点から、ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートは、TBが8μm未満(より好ましくは6μm未満、例えば5μm未満)である態様でも好ましく実施され得る。TBを小さくすることは、粘着シートの軽量化や厚さ低減の観点からも好ましい。また、TBを小さくすることにより、被着体に対する初期粘着力を抑制しやすくなり、このことも空気抜け性の向上に貢献し得る。TBの下限は特に制限されないが、製造容易性や性能安定性の観点から、通常は凡そ1μm以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1.5μm以上、より好ましくは凡そ2μm以上(例えば凡そ3μm以上)である。
ここに開示される技術において、剥離ライナーの凹部の開口形状は、特に限定されない。凹部の開口形状は、図2に示すような菱形に限定されず、例えば、各種の四角形(正方形、長方形、台形、菱形等)、四角形以外の多角形(三角形、六角形等)、円形、楕円形、長円形、半円形、中心角が180度未満または180度超の扇形、リング状等であり得る。凹部の開口形状は、各種の記号や文字、その他の図案を表す形状であってもよい。凹部の開口形状が概ね線状であってもよい。ここでいう線状の概念には、直線状、曲線状およびこれらを組み合わせた形状が包含される。線の幅は場所によって異なってもよい。複数の線状の凹部がストライプ状に形成されていてもよい。また、それぞれストライプ状に形成された複数の線状凹部からなる2以上の凹部群が交差することで全体として格子状の凹部が形成されていてもよい。線状凹部(全体として格子状の凹部を構成する線状凹部であり得る。)を有する形態において、該線状凹部は、剥離ライナーの外縁に至るように形成することができる。剥離ライナーは、一種類の凹部を有していてもよく、サイズや形状の異なる複数種類の凹部を混在または領域別に有していてもよい。一種類の凹部を有する剥離ライナーは、製造容易性や性能安定性の観点から有利となり得る。
凹部の開口面積は特に制限されない。一態様に係る剥離ライナー付き粘着シートは、該剥離ライナー付き粘着シートを構成する剥離ライナーが、開口面積1mm2以下(好ましくは凡そ0.5mm2以下、より好ましくは凡そ0.3mm2以下、例えば凡そ0.1mm2以下)の複数の凹部を有する。このように凹部の開口面積が小さい構成では、凹部内に粘着剤を部分的に(典型的には、凹部内に空隙を残して)充填することで該凹部からの突出部の抜き出し性を向上させることが特に有意義である。また、開口面積を小さくすることにより、粘着シートの外観品質が向上し得る。凹部の開口面積の下限は特に制限されないが、粘着剤充填率の調整容易性の観点から、通常は0.001mm2以上が適当であり、0.005mm2以上(例えば0.01mm2以上)が好ましい。
複数の凹部を有する剥離ライナーにおいて、各凹部は中間部によって隔てられていることが好ましい。粘着剤層のうち上記中間部に対向する領域は、突起部の間に位置することで、粘着シートの空気抜け性に効果的に寄与し得る。上記中間部が剥離ライナー付き粘着シートの外端に至るように構成されていることが好ましい。中間部が外端に至る箇所は、例えば、剥離ライナー付き粘着シートの一方向の一端または両端であってもよく、その全周であってもよい。剥離ライナーは、複数の凹部を区画する一つの(ひと連なりの)中間部を有していてもよい。そのような表面形状を有する剥離ライナーの一例として、格子状(斜方格子、正方格子、三角格子、六角格子等の各種の格子形状を包含する。)の中間部によって区画された複数の多角形状の凹部を有する剥離ライナーが挙げられる。他の例として、中間部のなかに複数の円形の凹部が規則的または不規則な水玉状に配置された表面形状の剥離ライナーが挙げられる。
特に限定するものではないが、隣接する凹部を隔てる中間部の幅W(図2参照)は、例えば凡そ10μm以上とすることができ、凡そ25μm以上としてもよく、凡そ50μm以上としてもよい。Wを大きくすることにより、該中間部に対向する領域の粘着剤層と被着体との間に形成され得る隙間を経由しての空気抜け性が向上する傾向にある。また、上記中間部の幅Wは、例えば凡そ3mm以下とすることができ、凡そ1mm以下としてもよく、凡そ500μm以下(例えば凡そ300μm以下、さらには凡そ150μm以下)としてもよい。Wを小さくすることにより、粘着シートの外観品質が向上し得る。
剥離ライナーの平面視において、該剥離ライナーの面積に占める中間部の面積の割合は、通常、凡そ5%以上とすることが適当であり、凡そ10%以上としてもよく、例えば凡そ20%以上としてもよい。中間部の面積の割合を大きくすることにより、粘着シートの空気抜け性が向上する傾向にある。また、上記割合は、例えば凡そ90%以下とすることができ、凡そ75%以下としてもよく、凡そ50%以下としてもよい。中間部の面積の割合を小さくすることにより、凹部の面積割合が高くなり、該凹部を部分的に充填する突出部を形成しやすくなる傾向にある。
以下、ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートの各構成要素について、より詳細に説明する。
<剥離ライナー>
剥離ライナーとしては、粘着剤層を覆う面に凹部を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。ここに開示される剥離ライナーの好適例として、PET等のポリエステル製フィルムの少なくとも一方の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、片面または両面にプラスチックフィルム(例えばPE樹脂)がラミネートされた紙(例えば上質紙)が挙げられる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
剥離ライナーの厚さTL(図1参照)は特に限定されず、ここに開示される凹部を形成し得る厚さであればよい。剥離作業性や取扱い性、強度等の観点から、剥離ライナーの厚さTLは、凹部の深さDRより凡そ2μm以上(好ましくは凡そ10μm以上、例えば凡そ25μm以上)厚く、かつ凡そ10μm以上(例えば凡そ15μm以上)とすることが好ましい。また、剥離ライナーの厚さTLは、通常、凡そ500μm以下(例えば凡そ100μm以下)とすることが好ましい。
上述のような表面形状を有する剥離ライナーを得る方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。例えば、目的とする表面形状を凹凸反転した形状のエンボスロールを用いて、あらかじめ成形されたフィルム状基材(樹脂フィルム、)をエンボス加工することで凹部を形成する方法や、溶融状態の樹脂フィルム材料を上記エンボスロールに接触させて冷却することでフィルム状基材の成形と凹部の形成とを同時に行う方法等を採用し得る。他の方法として、あらかじめ成形されたフィルム状基材の表面に、所望の凹凸形状が得られるように(例えば、中間部に対応するパターンおよび凹部の深さDRに対応する厚さで)、印刷インクや硬化性樹脂組成物等の適切な材料を付与する方法が挙げられる。これらの方法は、一種を単独でまたは二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
<粘着剤層>
ここに開示される粘着剤層は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。粘着特性(例えば剥離強度や耐反撥性)や分子設計等の観点から、アクリル系ポリマーを好ましく採用し得る。換言すると、粘着剤層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。なお、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)をいう。また、この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下「アクリル系モノマー」ともいう。」)に由来するモノマー単位を含む重合物をいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。また、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好ましく使用することができる。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
ここで、上記式(1)中のR1は水素原子またはメチル基である。また、R2は炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R2がC1−12(例えばC2−10、典型的にはC4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。上記R2がC1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。副モノマーはまた、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、スチレン等の芳香族ビニル化合物、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等であり得る。例えば、凝集力向上の観点から、上記副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレートや4−ヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。
上記副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下(例えば5重量%以下)である。アクリル系ポリマーにカルボキシ基含有モノマーが共重合されている場合、粘着力と凝集力との両立の観点から、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.1重量%以上(例えば0.2重量%以上、典型的には0.5重量%以上)であることが好ましく、また凡そ10重量%以下(例えば8重量%以下、典型的には5重量%以下)であることが好ましい。アクリル系ポリマーに水酸基含有モノマーが共重合されている場合、粘着力と凝集力との両立の観点から、水酸基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.001重量%以上(例えば0.01重量%以上、典型的には0.02重量%以上)であることが好ましく、また凡そ10重量%以下(例えば5重量%以下、典型的には2重量%以下)であることが好ましい。また、上記副モノマーとして酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが共重合されている場合には、上記ビニルエステル系モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(典型的には10重量%以下)とすることが好ましく、また例えば0.01重量%以上(典型的には0.1重量%以上)であり得る。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。UV等を照射して行う活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。例えば、適当な重合溶媒(トルエン、酢酸エチル、水等)中にモノマー混合物を溶解または分散させ、アゾ系重合開始剤や過酸化物系開始剤等の重合開始剤を用いて重合操作を行うことにより、所望のアクリル系ポリマーを得ることができる。
ここに開示されるアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、粘着力と凝集力とをバランスよく両立する観点から、好ましくは10×104以上、より好ましくは20×104以上(例えば30×104以上)であり、また、好ましくは100×104以下、より好ましくは70×104以下(例えば50×104以下)である。なお、この明細書においてMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。
粘着剤組成物には架橋剤を含ませることができる。これにより、架橋した粘着剤により構成された粘着剤層が形成され得る。かかる粘着剤層によると、架橋剤の種類や使用量を適切に設定することによって該粘着剤層の保形性を的確に調節または向上させることができ、凹部に対する粘着剤の部分的な充填状態を好適に形成または維持することができる。また、粘着剤層を構成する粘着剤を架橋させることは、粘着剤の凝集力を高める観点からも好ましい。粘着剤の凝集力を高めることにより被着体に対する初期密着性を抑え、粘着シートの貼り直し性(リワーク性)や空気抜け性を向上させ得る。
架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。架橋剤の好適例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以下(好ましくは凡そ5重量部以下)とすることが適当であり、また、例えば凡そ0.005重量部以上(好ましくは凡そ0.01重量部以上)であり得る。
ここに開示される粘着剤層は、粘着付与剤を含む組成であり得る。粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着付与樹脂の軟化点(軟化温度)は、凡そ60℃以上(好ましくは凡そ80℃以上、典型的には100℃以上)であることが好ましい。これにより、粘着力により優れた粘着シートが実現され得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、凡そ180℃以下(例えば凡そ140℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902:2006およびJIS K2207:2006のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
粘着付与剤の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(粘着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、固形分基準で、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)100重量部に対して、粘着付与剤を凡そ10重量部以上(より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上)の割合で使用することが好ましい。また粘着付与剤の使用量は、固形分基準で、ベースポリマー100重量部に対して、凡そ100重量部以下(より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下)であることが好ましい。
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用すればよい。
ここに開示される粘着剤層は、水系、溶剤型、ホットメルト型、活性エネルギー線硬化型等の粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。環境負荷低減の観点からは水系粘着剤組成物が好ましく、粘着特性等の観点からは溶剤型粘着剤組成物が好ましく用いられる。
<基材>
ここに開示される粘着シートが基材を備える場合、該基材の外形は特に限定されない。製造時や使用時における取扱い容易性等の観点から、一態様において、フィルム状(シート状)の基材を好ましく用いることができる。上記基材は、例えば、樹脂フィルム、紙、布、ゴムフィルム、発泡体フィルム、金属箔、これらの複合体や積層体等であり得る。基材が積層体である場合、該積層体を構成する各層間または一部の層間には、層間密着性向上の観点から接着層が配置されていてもよい。
一態様において、貼り付け性や外観性の観点から、樹脂フィルムを含む基材を好ましく採用し得る。基材が樹脂フィルムを含むことは、寸法安定性、厚さ精度、加工性、引張強度等の観点からも有利である。ここでいう「樹脂フィルム」は、典型的には、以下に示すような樹脂成分を主体とする樹脂組成物を膜状に成形してなるフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(すなわち、不織布や織布を除く概念)である。例えば、実質的に非発泡の樹脂フィルムを好ましく使用し得る。ここで、非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムを指し、具体的には、発泡倍率が凡そ1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。樹脂フィルムの例としては、PE、PP、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂フィルム;PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;塩化ビニル系樹脂フィルム;酢酸ビニル系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;ポリアミド系樹脂フィルム;フッ素系樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。好適例としては、PE、PP、PETから形成された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムのなかでは、ポリエステルフィルムがより好ましく、そのなかでもPETフィルムがさらに好ましい。基材は、単層構造であってもよく、2層または3層以上の多層構造を有してもよい。
他の一態様において、発泡体フィルムを備える基材(発泡体含有基材)を好ましく採用し得る。これによって、粘着シートに衝撃吸収機能が付与される。ここで発泡体フィルムとは、気泡(気泡構造)を有する部分を備えたフィルム状構造体をいう。発泡体含有基材は、発泡体フィルムから構成された単層構造体であってもよく、2層以上の多層構造のうちの少なくとも1層が発泡体フィルム(発泡体層)で構成された多層構造体であってもよい。発泡体含有基材の構成例としては、発泡体フィルム(発泡体層)と非発泡体フィルム(非発泡体層)とが積層された複合基材が挙げられる。非発泡体フィルムとしては、例えば、上述のような樹脂フィルムを用いることができる。
上記発泡体フィルムの平均気泡径は特に限定されないが、通常は10μm以上であることが適当であり、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。平均気泡径を10μm以上とすることにより、衝撃吸収性が向上する傾向がある。また上記平均気泡径は、通常は200μm以下であることが適当であり、好ましくは180μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下である。平均気泡径を200μm以下とすることにより、取扱い性や防水性(止水性)が向上する傾向がある。発泡体フィルムの平均気泡径(μm)は、市販の低真空走査電子顕微鏡を用いて、発泡体断面の拡大画像を取り込み、画像解析することにより求めることができる。解析する気泡数は10〜20個程度とすればよい。低真空走査電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクサイエンスシステムズ社製の商品名「S−3400N型走査電子顕微鏡」を用いることができる。
上記発泡体フィルムの密度(見掛け密度)は、特に限定されないが、通常は0.01g/cm3以上とすることが適当であり、好ましくは0.01g/cm3以上、さらに好ましくは0.02g/cm3以上である。密度を0.01g/cm3以上とすることにより、発泡体フィルムの強度(ひいては粘着シートの強度)が向上し、耐衝撃性や取扱性が向上する傾向にある。また上記密度は、好ましくは0.7g/cm3以下、さらに好ましくは0.5g/cm3以下である。密度を0.7g/cm3以下とすることにより、柔軟性が低下し過ぎず、段差追従性が向上する傾向にある。発泡体フィルムの密度(見掛け密度)は、JIS K 7222:1999に記載の方法に準拠して測定される。具体的には、発泡体フィルムを100mm×100mmのサイズに打ち抜いて試料を作製し、当該試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径が20mmである1/100ダイヤルゲージを用いて試料の厚さを測定する。これらの値から発泡体フィルム試料の体積を算出する。また、上記試料の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値から発泡体フィルムの見掛け密度(g/cm3)を求めることができる。
上記発泡体フィルムの50%圧縮荷重は特に限定されない。耐衝撃性の観点からは、発泡体フィルムは0.1N/cm2以上の50%圧縮荷重を示すことが適当である。50%圧縮荷重が所定値以上であることにより、例えば発泡体フィルムが薄厚(例えば100μm程度の厚さ)の場合にも、圧縮された際に十分な抵抗(圧縮された際に押し戻そうとする力)を示し、良好な耐衝撃性を保つことができる。上記50%圧縮荷重は、好ましくは0.2N/cm2以上であり、より好ましくは0.5N/cm2以上である。また、柔軟性と耐衝撃性とをバランスよく両立する観点から、上記50%圧縮荷重は、8N/cm2以下であることが適当であり、好ましくは6N/cm2以下であり、より好ましくは3N/cm2以下である。発泡体フィルムの50%圧縮荷重(硬さ)は、JIS K 6767:1999に準拠して測定される。具体的には、発泡体フィルムを100mm×100mmに切り抜き、総厚さが2mm以上になるように積層し、これを測定サンプルとする。室温条件にて、圧縮試験機を用いて上記測定サンプルに対して10mm/分の速度で圧縮を行い、圧縮率が50%に達したところ(初期厚さに対して厚さが50%まで圧縮された時点)で、10秒保持した後の値(反発応力:N/cm2)を50%圧縮荷重として記録する。その他の条件(例えば治具や計算方法等)については、JIS K 6767:1999に準じればよい。
発泡フィルムを構成する発泡体の気泡構造は特に制限されない。気泡構造としては、連続気泡構造、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造のいずれであってもよい。衝撃吸収性の観点からは、連続気泡構造、半連続半独立気泡構造が好ましい。
発泡体フィルムの材質は特に制限されない。発泡体フィルムは、典型的にはポリマー成分(例えば熱可塑性ポリマー)を含む材料から形成され得る。通常は、プラスチック材料の発泡体(プラスチック発泡体)により形成された発泡体フィルムが好ましい。プラスチック発泡体を形成するためのプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)は、特に制限されず、公知のプラスチック材料のなかから適宜選択することができる。プラスチック材料(典型的には熱可塑性ポリマー)は1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、フィルム状基材や発泡体フィルムに含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)を、以下「ベースポリマー」ということがある。
発泡体の具体例としては、PE製発泡体、PP製発泡体等のポリオレフィン製樹脂発泡体;PET製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;アクリル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
発泡体の具体例としては、PE製発泡体、PP製発泡体等のポリオレフィン製樹脂発泡体;PET製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;アクリル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
好ましい一態様では、発泡体としてアクリル系樹脂発泡体(アクリル系樹脂製発泡体)が用いられる。ここでアクリル系樹脂発泡体とは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む発泡体のことをいう。本明細書におけるアクリル系ポリマーの定義は前述のとおりである。アクリル系ポリマーを構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1〜20(好ましくは1〜8、典型的には1〜4)の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上が好ましく用いられる。アルキル(メタ)アクリレートの好適例としては、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の70重量%以上とすることが適当であり、好ましくは75重量%以上(例えば80重量%以上)である。また、上記アルキル(メタ)アクリレートの量は、全モノマー成分中の98重量%以下が適当であり、好ましくは97重量%以下(例えば96重量%以下)である。
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。副モノマーはまた、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、スチレン等の芳香族ビニル化合物、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等であり得る。上記副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下である。
エマルション型の樹脂組成物を使用し、撹拌など機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法を採用して発泡体を形成する場合には、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分に、副モノマーとして窒素原子含有モノマーが含まれていることが好ましい。これにより、発泡時には気泡が発生しやすく、また、発泡体形成時(典型的には、上記樹脂組成物の乾燥時)には、上記組成物の粘度が上昇して発泡体内に気泡が保持されやすいという作用が発揮され得る。
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン等のラクタム環含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン等のラクタム環含有モノマーが好ましい。
上記窒素原子含有モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の2重量%以上とすることが適当であり、好ましくは3重量%以上(例えば4重量%以上)である。また、上記窒素原子含有モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは25重量%以下(例えば20重量%以下)である。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法、活性エネルギー線重合法(例えばUV重合法)等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、適当な重合溶媒(トルエン、酢酸エチル、水等)中にモノマー混合物を溶解または分散させ、アゾ系重合開始剤や過酸化物系開始剤等の重合開始剤を用いて重合操作を行うことにより、所望のアクリル系ポリマーを得ることができる。起泡性や環境面から、エマルション重合法により得られたアクリル系樹脂発泡体(エマルション型アクリル系樹脂発泡体)が好ましく用いられる。
アクリル系樹脂発泡体形成用組成物は、凝集力を高める観点から架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の種類は特に制限されず、各種架橋剤の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。架橋剤の好適例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属酸化物系架橋剤が挙げられる。なかでも、オキサゾリン系架橋剤が好ましい。架橋剤の使用量は特に制限されず、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以下(好ましくは凡そ5重量部以下)とすることが適当であり、また、例えば凡そ0.005重量部以上(好ましくは凡そ0.01重量部以上)であり得る。
他の好ましい一態様では、発泡体としてポリオレフィン系樹脂発泡体(ポリオレフィン製樹脂発泡体)が用いられる。上記ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
ここに開示される技術における発泡体フィルムの好適例としては、耐衝撃性や防水性等の観点から、ポリエチレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリエチレン系発泡体フィルム、ポリプロピレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリプロピレン系発泡体フィルム等が挙げられる。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等のほか、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。ここに開示される技術における発泡体フィルムとしては、ポリプロピレン系発泡体フィルムを好ましく採用し得る。
発泡体フィルムの発泡方法は、特に限定されず、目的や操作性等に応じて化学的手法、物理的手法等の手法を単独でまたは組み合わせて採用することができる。汚染性等の観点から物理的発泡法が好ましい。具体的には、炭化水素等の低沸点化合物や熱膨張微小球等の発泡剤をフィルム形成材料中に含有させておき、当該発泡剤から気泡を形成する発泡方法、機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法、水等の溶媒の除去を利用した溶媒除去発泡法、超臨界流体を利用した発泡法等が挙げられる。また例えば、発泡体フィルム形成用ポリマー中に加圧条件下で不活性ガス(例えば二酸化酸素)を注入し、それを減圧することで発泡体フィルムを形成する方法も好ましく採用され得る。この方法によると、平均気泡径を所定以下に制限しやすく、かつ発泡体フィルムを低密度化しやすい。
上記のような発泡方法を採用することにより、発泡体フィルムは作製される。発泡体フィルムの形成は、特に制限されず、例えば、機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法を採用する場合には、その後、気泡を含む樹脂組成物(例えばエマルション型樹脂組成物)を基材または剥離紙等の上に塗布し、乾燥させることにより発泡体フィルムを得ることができる。乾燥は、気泡安定性等の観点から、50℃以上125℃未満の予備乾燥工程と、125℃〜200℃の本乾燥工程を含むことが好ましい。あるいは、カレンダや押出機、コンベアベルトキャスティング等を用いて連続的にフィルム状の発泡体を形成してもよく、発泡体形成材料の混練物をバッチ方式で発泡成形する方法を採用してもよい。発泡体フィルムの形成にあたっては、表層部分をスライス加工により除去し、所望の厚さ、発泡特性となるよう調整してもよい。
好ましい一態様では、基材は透明(半透明を包含する。)である。このような基材を備える粘着シートでは、粘着シートと被着体との間に気泡等が混入すると、粘着シート越しに当該気泡等が視認されて外観性が損なわれやすい。ここに開示される技術によると、粘着シートと被着体との間における気泡等の発生が防止されるので、透明基材を備える構成において優れた外観性が得られる。具体的には、上記基材は80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)の全光線透過率を示すものであり得る。また、基材のヘイズ値は10%以下(例えば5%以下)であることが好ましい。
上記基材(例えば、樹脂フィルムを含む基材や発泡体含有基材)は、所望の意匠性や光学特性を付与するために、各種着色剤(例えば顔料)を含ませて黒色、白色その他の色に着色されていてもよい。黒色系着色剤としてはカーボンブラックが好ましい。また、基材の少なくとも一方の表面(片面または両面)に印刷等により1層または2層以上の着色層(例えば黒色層や白色層)を積層する方法を採用してもよい。
上記基材(例えば、樹脂フィルムを含む基材や発泡体含有基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤がさらに配合されていてもよい。上記基材には、粘着剤層を支持する表面に、該表面と粘着剤層との密着性を高めること等を目的として、コロナ放電処理、下塗り剤の塗布等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。
<剥離ライナー付き粘着シートの製造>
ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートの製造方法は、特に限定されない。基材を有する粘着シートを備えた剥離ライナー付き粘着シートの好適な製造方法の一例として、例えば図6に示すように、基材22の少なくとも片面に粘着剤層24を有する粘着シート20を用意する工程と、凹部12を有する剥離ライナー10に粘着剤層24を貼り合わせて積層体を構成する工程と、該積層体をプレスする工程と、を含む方法が挙げられる。粘着剤層24は、凹部12を有する剥離ライナー10に貼り合わされる前には平坦な表面形状を有し得る。すなわち、凹部12を有する剥離ライナー10と粘着剤層24とを積層した後に、粘着剤層24を変形させて、例えば図1に示すように凹部12を部分的に充填する突出部242を形成することが好ましい。このことによって、凹部12への粘着剤の充填の程度を的確に調整することができる。
凹部を有する剥離ライナーに貼り合わせられる粘着剤層を形成する方法としては、基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用してもよく、凹部を有する剥離ライナー表面とは異なる剥離面(典型的には、凹部を有しない剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、工程材(製品としての剥離ライナー付き粘着シートには含まれず、該剥離ライナー付き粘着シートの製造過程においてのみ用いられる部材)の剥離面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、コンマコーター、ディップロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40〜150℃程度とすることができ、通常は60〜130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
<粘着シートの特性等>
ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートにおいて、該剥離ライナー付き粘着シートを構成する粘着シートは、突出部を有する粘着剤層表面を測定対象面として測定される初期剥離強度が例えば0.5N/20mm以下(好ましくは0.3N/20mm以下)であり得る。初期剥離強度は、下記の方法で測定することができる。具体的には、粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの測定対象面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度(N/20mm)を測定する。粘着シートの初期剥離強度が低いことは、空気抜け性向上の観点から好ましく、該粘着シートの貼り直し性向上の観点からも有利となり得る。また、初期剥離強度の下限は特に制限されないが、被着体の表面における粘着シートの位置ずれを抑えて作業性を向上させる観点から、通常は0.1N/20mm以上(例えば0.3N/20mm以上)とすることが適当である。
また、ここに開示される粘着シートは、上記測定対象面について測定される経時後剥離強度が、例えば5N/20mm以下(好ましくは4N/20mm以下)であり得る。経時後剥離強度は、測定対象面を被着体としてのSUS304BA板に圧着した後、23℃、50%RHの環境下に3日間放置した上で剥離強度測定を行う点を除いては、上述した初期剥離強度と同様にして測定することができる。
ここに開示される粘着シート(粘着剤層と基材とを含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さTTSは、特に限定されない。粘着シートの総厚さTTSは、例えば凡そ2μm以上とすることができ、好ましくは凡そ5μm以上(例えば凡そ10μm以上、典型的には30μm以上)である。また上記総厚さTTSは、凡そ1000μm以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ500μm以下(例えば凡そ300μm以下、典型的には凡そ100μm以下)である。ここで、粘着シートの総厚さTTSに関し、該粘着シートに含まれる粘着剤層のうち突出部を有する粘着剤層の厚さとしては、図6に示すように、平均厚さTAVEを用いるものとする。したがって、例えば図1に示す構成の粘着シート20の総厚さTTSは、基材22と粘着剤層26との合計厚さと粘着剤層24の平均厚さTAVEとの和として把握される。なお、前述のように、VP/VTAの値が相当に小さい構成においてには、TAVEの近似値として、剥離ライナーの中間部に対向する部分における粘着剤層の厚さを利用してもよい。
一態様において、粘着シートの総厚TTSさは、例えば凡そ50μm以下であり得、凡そ35μm以下であってもよく、凡そ20μm以下(例えば凡そ15μm以下)であってもよい。ここに開示される技術によると、上記のように総厚さTTSが制限された粘着シートであっても、良好な空気抜け性が得られる。また、総厚さTTSが制限された粘着シートは、該粘着シートが適用される製品の小型化、軽量化、省資源化等の点で有利なものとなり得る。
好ましい一態様では、粘着シートは透明(半透明を包含する。)である。このような粘着シートでは、粘着シートと被着体との間に気泡等が混入すると、粘着シート越しに当該気泡等が視認されて外観性が損なわれやすい。ここに開示される技術によると、粘着シートと被着体との間における気泡等の発生が防止されるので、透明な粘着シートにおいて優れた外観性が得られる。なお、粘着シートが透明であることは、粘着シートの構成要素(粘着剤層、コート層等)が透明であることを意味する。本明細書において、粘着シートやその構成要素(粘着剤層、コート層等)が透明であるとは、粘着シートやその構成要素が50%以上の全光線透過率を示すことを意味し、具体的には80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)の全光線透過率を示すものであり得る。また、粘着シートのヘイズ値は10%以下(例えば5%以下)であることが好ましい。上記全光線透過率およびヘイズ値は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計(例えば、商品名「HAZEMETER HM−150」、村上色彩技術研究所社製)を使用して測定することができる。後述のフィルム状基材の全光線透過率およびヘイズ値も同様の方法で測定される。
<用途>
ここに開示される粘着シートは、上述のように、被着体への貼り付け時において、被着体との間における気泡等の発生を効率よく防止することができる。したがって、手作業による貼り付け(手貼り)や、自動貼り機等を用いての貼り付け(自動貼り)のいずれの貼り付け方法においても、貼り付け性が向上する。例えば、手貼りで貼り付ける場合には、個人の技量への依存度を低減し得るので、貼り付け効率や貼り付け品質の向上、安定化等の利点が得られる。また、自動貼りで貼り付ける場合には、気泡の混入等の貼り付け不良の低減や、貼り直し作業の低減が実現され得る。したがって、手貼り、自動貼りいずれの場合も、貼り付け効率や品質の向上、品質の安定化等を実現することが可能となり、これによって粘着シートを使用して構築される物品の生産性や品質も向上する。ここに開示される技術は、より均一な貼り付けを実現し得ることから、自動貼り機を用いて貼り付けられる態様の粘着シートとして、特に好適である。
ここに開示される粘着シートは、上述したような特徴を活かして、各種物品の表面に貼り付ける用途に好ましく利用され得る。好ましい一態様では、各種の装飾シートや表面保護シート、フレキソ印刷等の印刷板の固定シート、遮光シート等として利用され得る。例えば、車両の外装や住宅建材等に貼り付けられる装飾シート(典型的には塗装代替シート)として好適である。また、ディスプレイ(典型的にはテレビのディスプレイ)等の電子機器の内部において、例えばシャーシ外面の平滑性を向上する目的や、各種部材表面のネジ穴等の不均一部分を覆う目的で使用される被覆シートとしても好適である。このような被覆シートを用いることで、被着体外面における外観ムラの低減や寸法精度の均一化が実現され得る。また、外観性が重視されるバッテリーパックの外装シートとしても好ましく使用され得る。
また、ここに開示される粘着シートは、単位面積当たりの粘着剤量が少ない構成においても所望の空気抜け性を発揮し得る。したがって、薄厚化や軽量化が求められており、かつ省資源化が望ましい用途(例えば携帯電子機器用途)に好ましく適用され得る。具体的には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯電子機器の表面保護シート、上記携帯電子機器の液晶表示装置における接合固定用途、上記携帯電子機器の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定、携帯電話のキーモジュール部材固定、リムシート固定、デコレーションパネル固定、バッテリー固定、その他各種部材の固定、ロゴ(意匠文字)や各種デザイン等の表示物(各種標章を含む。)の固定等の用途に好ましく適用され得る。上記携帯電子機器に用いられる場合、粘着シートは、目的等に応じて、枠状(額縁状)、帯状(ストリップ状)等の形状を有するものであり得る。なお、本明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 粘着剤層を含む粘着シートと、該粘着剤層を覆う剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き粘着シートであって、
上記剥離ライナーは、上記粘着剤層を覆う面に凹部を有し、
上記粘着剤層には、上記凹部を部分的に充填する突出部が形成されている、剥離ライナー付き粘着シート。
(2) 粘着剤層を含む粘着シートと、該粘着剤層を覆う剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き粘着シートであって、
上記剥離ライナーは、上記粘着剤層を覆う面に凹部を有し、
上記凹部内に空隙が存在する、剥離ライナー付き粘着シート。
(3) 上記剥離ライナーは、互いに間隔をおいて形成された複数の上記凹部を有する、上記(1)または(2)に記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(4) 上記突出部は、上記凹部内において壁状に形成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(5) 上記突出部は、上記凹部内において環状に形成されている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(6) 上記突出部は、上記凹部の開口端から該凹部の内面に沿って延びる環状薄壁を形成している、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(7) 上記凹部内に延びる上記突出部の高さHPが凡そ2μm以上(例えば、凡そ2μm以上凡そ25μm以下)である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(8) 上記凹部の深さDRが上記粘着剤層の平均厚さTAVEよりも大きい、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(9) 上記凹部の深さDRは、凡そ3μm以上(例えば、凡そ3μm以上凡そ30μm以下)である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(10) 上記凹部の深さDRは、上記粘着剤層の平均厚さTAVEの凡そ1.05倍以上凡そ10倍以下に相当する深さである、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(11) 上記粘着剤層の平均厚さTAVEが凡そ10μm以下(例えば、凡そ1μm以上凡そ10μm以下)である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(12) 上記粘着剤層を構成する粘着剤による上記凹部の充填率(体積基準の粘着剤充填率)が50%未満(例えば凡そ1%以上凡そ20%以下)である、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(13) 上記剥離ライナーの上記粘着剤層を覆う面は、複数の上記凹部と、該凹部を互いに隔てる中間部とを含み、上記中間部は上記剥離ライナー付き粘着シートの外端に至っている、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(14) 上記凹部の開口面積が凡そ0.5mm2以下(例えば、凡そ0.005mm2以上凡そ0.3mm2以下)である、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(15) 上記粘着シートは透明である、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(16) 上記粘着剤層は、架橋した粘着剤により構成されている、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(17) 上記粘着剤層を構成する粘着剤はアクリル系粘着剤である、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(18) 上記粘着剤層を支持する基材を備える、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(19) 上記粘着シートの総厚が凡そ5μm以上凡そ35μm以下である、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シート。
(20) 上記(1)〜(19)のいずれかに記載の剥離ライナー付き粘着シートを製造する方法であって、
基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着シートを用意する工程と、
凹部を有する剥離ライナーに粘着剤層を貼り合わせて積層体を構成する工程と
を包含する、方法。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<剥離ライナーの作製>
(剥離ライナーA)
厚さ75μmのPETフィルム(製品名「ルミラーS10」、東レ社製)の第一面に、グラビアコーターを用いて印刷インクを斜め格子状に塗布して厚さ約2μmのインク層を形成した後、剥離処理剤CA1(フジコー社製)を塗布して剥離処理層を形成することにより、上記インク層により区画された深さ約2μmの凹部を有する剥離ライナーAを作製した。上記凹部の形状は概ね菱形であり、該菱形の縦の対角線の長さは凡そ300μm、横の対角線の長さは凡そ183μmであった。また、上記凹部は、上記菱形の縦方向のピッチが約550μm、横方向のピッチが約280μmとなるように配列されていた。
(剥離ライナーB)
剥離ライナーAの作製において、印刷インクの塗布厚を調節することにより、上記インク層により区画された凹部の深さが約5μmとなるようにした。その他の点は剥離ライナーAの作製と同様にして、剥離ライナーBを作製した。
(剥離ライナーC)
上質紙の片面にポリエチレンがラミネートされた剥離ライナー(製品名「75EPSクリーム」、王子特殊紙株式会社製)を熱プレスして、上記ポリエチレンラミネート面に深さ約17μmの凹部が斜め格子状の中間部で隔てられた凹凸形状を付与することにより、剥離ライナーCを作製した。上記凹部の形状、サイズおよびピッチは、該凹部の深さを除いては剥離ライナーAと同等であった。
<粘着シートの作製>
(粘着シートA)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート95部と、アクリル酸5部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、58℃で6時間溶液重合して、アクリル系ポリマーAのトルエン溶液(粘度28Pa・s、固形分40%)を得た。得られたアクリル系ポリマーAのMwは約62万であった。上記トルエン溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーA100部に対してイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)5部を加えて混合することにより、粘着剤組成物Aを調製した。
厚さ75μmのPETフィルム(製品名「ルミラーS10」、東レ社製)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に粘着剤組成物Aを乾燥後の厚さが4μmとなるように平滑に塗布し、100℃で3分間乾燥させて粘着シートAを得た。この粘着シートAの粘着面を保護するために、該粘着面に剥離ライナーF0(片面が剥離処理されたPETフィルム)を貼り合わせた。
(粘着シートB1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート70部と、n−ブチルアクリレート70部と、2−エチルヘキシルアクリレート30部と、アクリル酸3部と、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.05部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.08部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、60℃で6時間溶液重合して、アクリル系ポリマーBのトルエン溶液(粘度28Pa・s、固形分40%)を得た。得られたアクリル系ポリマーBのMwは約44万であった。上記トルエン溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーB100部に対し、粘着付与樹脂としての重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学工業社製、製品名「ペンセルD−125」、軟化点125℃)30部を加えた後、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)3部を加え、混合して、粘着剤組成物Bを調製した。
厚さ75μmのPETフィルム(商品名「ルミラーS10」、東レ社製)の片面を剥離処理剤で処理して剥離ライナーF1を作製した。この剥離ライナーF1の剥離処理面に上記粘着剤組成物Bを乾燥後の厚さが4μmとなるように平滑に塗布し、100℃で3分間乾燥させて粘着剤層Aを形成した。また、片面が剥離処理されて剥離面となっているポリエステル製剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル社製;以下、剥離ライナーF2という。)の剥離処理面に上記粘着剤組成物Bを乾燥後の乾燥後の厚さが4μmとなるように平滑に塗布し、100℃で3分間乾燥させて粘着剤層Bを形成した。
基材としての厚さ2μmのPETフィルム(商品名「ルミラー SDC61」、東レ社製)の第一面に剥離ライナーF1上の粘着剤層Aを貼り合わせ、該PETフィルムの第二面に剥離ライナーF2上の粘着剤層Bを貼り合わせることにより、総厚約10μmの粘着シート(両面粘着シート)B1を作製した。この粘着シートB1の粘着剤層A,Bの表面は、剥離ライナーF1,P2によってそれぞれ保護されている。また、粘着シートB1は、剥離ライナーF2の粘着剤層Bからの剥離力が、剥離ライナーF1の粘着剤層Aからの剥離力より小さくなるように(軽剥離となるように)構成されている。
(粘着シートB2)
粘着シートB1において、基材として厚さ4μmのPETフィルム(商品名「ルミラー #5AF53」、東レ社製)を使用し、この基材の第一面および第二面に設ける粘着剤層の厚さをいずれも約13μmとした。その他の点は粘着シートB1の作製と同様にして、総厚約30μmの粘着シート(両面粘着シート)B2を作製した。
(粘着シートC)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート95部と、アクリル酸5部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、58℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーCのトルエン溶液(粘度28Pa・s、固形分40%)を得た。得られたアクリル系ポリマーCのMwは約57万であった。上記トルエン溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマーC100部に対してイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)0.5部を加えて混合することにより、粘着剤組成物Cを調製した。
厚さ75μmのPETフィルム(製品名「ルミラーS10」、東レ社製)の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に粘着剤組成物Cを、乾燥後の厚さが4μmとなるように平滑に塗布し、100℃で3分間乾燥させて粘着シートCを得た。
<剥離ライナー付き粘着シートの作製>
(例1)
粘着シートB1から剥離ライナーF2を剥がし、露出した粘着面に剥離ライナーBをハンドローラーで貼り合わせて、剥離ライナーF1/粘着シートB1/剥離ライナーBの構造を有する積層体を得た。この積層体を45mm角の正方形状にカットし、23℃,5kgfの条件で2分間プレスして、本例に係る剥離ライナー付き粘着シートを得た。
(例2)
粘着シートAから剥離ライナーF0を剥がし、露出した粘着面に剥離ライナーCをハンドローラーで貼り合わせて、粘着シートA/剥離ライナーCの構造を有する積層体を得た。この積層体を例1と同様にカットおよびプレスして、本例に係る剥離ライナー付き粘着シートを得た。
(例3)
剥離ライナーBに代えて剥離ライナーCを用いた他は例1と同様にして、本例に係る本例に係る剥離ライナー付き粘着シートを得た。
(例4)
粘着シートB2から剥離ライナーF2を剥がし、露出した粘着面に剥離ライナーBをハンドローラーで貼り合わせて、剥離ライナーF1/粘着シートB2/剥離ライナーBの構造を有する積層体を得た。この積層体を例1と同様にカットおよびプレスして、本例に係る剥離ライナー付き粘着シートを得た。
(例5)
剥離ライナーBに代えて剥離ライナーAを用いた他は例1と同様にして、本例に係る本例に係る剥離ライナー付き粘着シートを得た。
(例6)
粘着シートCから剥離ライナーF0を剥がし、露出した粘着面に剥離ライナーBをハンドローラーで貼り合わせて、粘着シートC/剥離ライナーBの構造を有する積層体を得た。この積層体を例1と同様にカットおよびプレスして、本例に係る剥離ライナー付き粘着シートを得た。
(例7)
粘着シートB1に代えて粘着シートB2を用いた他は例1と同様にして、本例に係る本例に係る剥離ライナー付き粘着シートを得た。
[断面観察]
各例に係る剥離ライナー付き粘着シートについて、凹部を通る切断線に沿って厚さ方向に切断した断面をSEMにより観察することにより、凹部内に粘着剤が充填されない空隙が残っているか否かを調べた。SEM観察は以下のようにして行った。
分析装置:日立社製の電界放出形走査電子顕微鏡、S−4800を使用した。
測定条件:加速電圧1kVにて二次電子像を観察した。
試料調製:試料をアクリル樹脂に包埋した後、ミクロトームで面出しを行い、重金属染色処理および導電処理を施した。
結果を表1に示す。なお、例1〜4に係る剥離ライナー付き粘着シートは、上記SEM観察において、凹部内にいずれも菱形環状の突出部が形成されていることが確認された。そのうち例2に係る剥離ライナー付き粘着シートでは、凹部の開口端付近において突出部と凹部内面との間にも空隙が認められた。また、上記SEM観察において、例1の突出部高さHPは約5μmであり、例2〜4の突出部高さHPはいずれも約13μm〜約14μm程度であることが確認された。
[空気抜け性]
被着体としての透明なガラス板を水平に保持し、各例に係る剥離ライナー付き粘着シートから凹部を有する剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させ、該粘着面を下にして上記ガラス板の上に載せた(圧着はしない)。次いで、上記ガラス板上の粘着シートを上面側(粘着面とは反対側)から指で直径2cm程度の円を描くように押圧し、上記円内にて粘着シートと被着体との間に空気が留まるように粘着シートを被着体に圧着した。そして、上記円が周方向に狭まるように指で円を描きながら円の中心に向かって圧着していき、円の中心に所定サイズの気泡を形成した。この気泡を指で押しつぶし、そのときの空気抜け性を以下の4水準で官能評価した。結果を表1に示す。
E:気泡内の空気は速やかに抜け、目視で認められる気泡は残存しなかった(空気抜け性に優れる)。
G:気泡内の空気は比較的速く抜け、目視で認められる気泡は残存しなかった(空気抜け性良好)。
A:気泡内の空気は比較的ゆっくりと抜け、目視で認められる気泡は残存しなかった(実用可能な空気抜け性を示す)。
P:目視で認められる気泡が残存した(空気抜け性に乏しい)。
表1に示されるように、剥離ライナーの凹部内に粘着剤で充填されない空隙が存在する形態(すなわち、該凹部に粘着剤が部分的に充填された形態)の剥離ライナー付き粘着シート(例1〜4)によると、凹部内に空隙を有しない形態の剥離ライナー付き粘着シート(例5〜7)に比べて、該剥離ライナー付き粘着シートを構成する粘着シートにおいて明らかに空気抜け性が改善された。粘着剤層の平均厚さTAVEが小さい例3によると、例4に比べてより高い効果が得られた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。