JP6758799B2 - 医薬組成物 - Google Patents
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(I)医薬組成物
I−1.防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分をすべて含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下であることを特徴とする医薬組成物。
II−1.防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分をすべて含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下になるように、上記生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−1記載の医薬組成物の製造方法。
防風通聖散の植物原料としては、具体的には、例えばマオウ(Ephedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer,Ephedra equisetina Bunge)、カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer,Glycyrrhiza glabra Linne)、ショウキョウ(Zingiber officinale Roscoe)、ケイガイ(Schizonepeta tenuifolia Briquet)、レンギョウ(Forsythia suspense Vahl, Forsythia viridissima Lindley)、トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa, Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)、センキュウ(Cnidium officinale Makino)、サンシシ(Gardenia jasminoides Ellis)、ハッカ(Mentha arvensis Linne var. piperascens Malinvaud)、ボウフウ(Saposhnikovia divaricata Schischkin)、ダイオウ(Rheum palmatum Linne, Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinable Baillon, Rheum coreanum Nakaiまたはそれらの種間雑種)、ビャクジュツ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura, Atractylodes ovata De Candolle)、キキョウ(Platycodon grandiflorum A. De Candolle)、オウゴン(Scutellariae baicalensis Georgi)、ボウショウ(芒硝:硫酸ナトリウム)、カッセキ(滑石:天然含水ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素含有物)およびセッコウ(石膏:含水硫酸カルシウム)である。これらの植物原料は、日本薬局方に準じて使用部位が規定されている。
本発明の医薬組成物には、前述するように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を含まず、それ以外の上記生薬成分を含む医薬組成物、並びに上記生薬成分をすべて含み、そのうちカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満である医薬組成物が含まれる。
防風通聖散の上記生薬成分のうちセンキュウ及びセッコウのいずれか一方を含まない本発明の医薬組成物(一味抜き方剤)は、従来公知の防風通聖散よりも、体重増加抑制、体内脂肪蓄積抑制、肝臓トリグリセリド量増加抑制、肝臓総コレステロール量増加抑制、および/または血中インスリン濃度増加抑制効果に優れている。この結果から、防風通聖散において、センキュウ及びセッコウのいずれか一方を含んでいても、その配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない医薬組成物(例えば、配合量が微量である医薬組成物を含む)は、上記本発明の医薬組成物と同様の効果を有すると考えられ、本発明の医薬組成物と同等に扱うことができる。
(1)ボウフウ
被験試料を粉末とし、その3gを量り、水15mLを加え、超音波で5分間抽出した後、アンモニア水(28)2mL及びジエチルエーテル20mLを加え、よく振り混ぜ、遠心分離する。ジエチルエーテル層を分取し、水浴上で留去した後、残留物をアセトン1mLに溶かし、これを「試料溶液」とする。別に「ボウフウ」(防風:Saposhnikovia divaricata)の根茎を切断、その10gをとり、水100mLを加えて沸騰後約30分間加熱(90〜100℃)抽出した後、熱時ろ過し、ろ液を濃縮して軟エキスとする。これに水10mLを加え、超音波で5分間抽出した後、アンモニア水(28)2mL及びジエチルエーテル20mLを加え、よく振り混ぜ、遠心分離する。ジエチルエーテル層を分取し、水浴上で留去した後、残留物をアセトン2mLに溶かし、これを「標準溶液」とする。これらの2つの液につき、薄層クロマトグラフィーにより試験を行う。試料溶液の10μL及び標準溶液の5μLを薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。次に酢酸エチル/エタノール(99.5)/酢酸(100)混液(10:1:1)を展開溶媒として約10cm展開した後、薄層板を風乾する。これに希硫酸を噴霧し、100℃で1分間加熱した後、紫外線(主波長365nm)を照射するとき、試料溶液から得た数個のスポットのうち1個のスポットが、標準溶液から得られるRf値0.4付近の青白色の蛍光を発するスポットと色調及びRf値が等しい場合、当該被験試料には、ボウフウが含まれていると判断することができる。またRf値0.4付近の青白色の蛍光スポットの蛍光強度から、被験試料に含まれるボウフウの含有量を求めることができる。この場合、被験試料として従来公知の防風通聖散を用いて測定した当該防風通聖散中のボウフウの含有量(既知量)と比較することで、対象とする被験試料中のボウフウの含有量が、上記既知量より少ないか否かを判断することができる。
被験試料を粉末とし、その2gを量り、水5mLを加えて振り混ぜた後、ジエチルエーテル2mLを加えてよく振り混ぜ、遠心分離し、ジエチルエーテル層を分取して、これを「試料溶液」とする。別に、薄層クロマトグラフィー用3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−(E)−プロペン酸・(E)−フェルラ酸混合試液を「標準溶液」とする。これらの2つの液につき、薄層クロマトグラフィーにより試験を行う。試料溶液の20μL及び標準溶液の2μLを薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。次に酢酸エチル/ヘキサン/エタノール(99.5)混液(5:4:2)を展開溶媒として約10cm展開した後、薄層板を風乾する。これに硫酸/エタノール(99.5)混液(1:1)を均等に噴霧し、105℃で5分間加熱した後、紫外線(主波長365nm)を照射するとき、試料溶液から得られた数個のスポットのうち1個のスポットが標準溶液から得たRf値0.4付近の黄色の蛍光を発するスポットと色調及びRf値が等しい場合、当該被験試料には、センキュウが含まれていると判断することができる。またRf値0.4付近の青白色の蛍光スポットの蛍光強度から、被験試料に含まれるセンキュウの含有量を求めることができる。この場合、被験試料として従来公知の防風通聖散を用いて測定した当該防風通聖散中のセンキュウの含有量(既知量)と比較することで、対象とする被験試料中のセンキュウの含有量が、上記既知量より少ないか否かを判断することができる。
被験試料を粉末とし、その1.7gをとり、強熱灰化する。冷後、希塩酸50mLを加えてよく振り混ぜた後、ろ過する。このろ液にアンモニア試液を加え、中性とし、ろ過する。このろ液1mLに0.5mol/Lの塩化バリウム試液を数滴添加するとすぐに白色の白い沈殿が生じる場合(硫酸塩の定性反応(1))は、被験試料中にセッコウ(硫酸ナトリウム+水塩)が含まれていると判断することができる。またこの方法に代えて、日本工業規格の「セッコウの化学分析方法」(JIS R9101-1995)により、セッコウの有無を測定、評価することもできる。
被験試料中に含まれるアルミニウムの量を測定することで、被験試料中のカッセキの有無及びその配合量を求めることができる。なお、被験試料中のアルミニウム含量は、ICP発光分析法に基づいて下記の方法によって測定することができる。
(1)被験試料を約0.5〜1g石英ビーカーに量り取り、500℃の電気炉で灰化する。(2)灰化終了後、20%濃度の塩酸水溶液を20ml加えて溶解し、100℃で乾固させる。
(3)10%濃度の塩酸を5ml加え、100℃で30分間加熱する。
(4)得られた溶液を濾紙を用いて濾過し、50ml容量のポリプロピレン製容器に集める。
(5)下記条件のICP発光分析装置を用いて、吸光度からアルミニウムの量を算出する。
装置:ICP発光分析装置(735-ES:アジレント・テクノロジー株式会社)
RF出力:1600W
プラズマガス:15L/min
補助ガス:1.5L/min
キャリアーガス:0.55L/min
プラズマ観測方向:垂直方向
測定波長:167.019nm。
防風通聖散(比較例)、及びこれからボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキのいずれか一つを除去した一味抜き方剤(実施例1〜5)を、それぞれ肥満モデルマウスに経口投与し、経時的に体重、内臓脂肪重量、肝臓トリグリセリド量、肝臓総コレステロール量、血糖値、及び血中インスリン濃度を測定し、本発明の医薬組成物の肥満症(またはメタボリックシンドローム)に対する改善効果を評価した。
(1)被験試料の調製
(a)防風通聖散エキス(比較例:従来品)
原料生薬を、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2.0およびカッセキ3.0の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量(560重量部)を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥した。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
上記防風通聖散エキスの製造方法において、ボウフウを配合しない以外は、全て同様にして、ボウフウ抜き防風通聖散エキスを調製した。
上記防風通聖散エキスの製造方法において、センキュウを配合しない以外は、全て同様にして、センキュウ抜き防風通聖散エキスを調製した。
上記防風通聖散エキスの製造方法において、セッコウを配合しない以外は、全て同様にして、セッコウ抜き防風通聖散エキスを調製した。
上記防風通聖散エキスの製造方法において、カッセキを配合しない以外は、全て同様にして、カッセキ抜き防風通聖散エキスを調製した。
上記防風通聖散エキスの製造方法において、トウキを配合しない以外は、全て同様にして、トウキ抜き防風通聖散エキスを調製した。
マウス(ICRマウス、4週齢、雄)に高脂肪食(D12492:Rodent Diet 60Kcal% Research Diets)を5週間自由摂食させて飼育し、肥満モデルマウスを作製した。この肥満モデルマウスの体重を測定後、コントロール群(対照例)、防風通聖散投与群(比較例)、ボウフウ抜き防風通聖散投与群(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散投与群(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散投与群(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散投与群(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散投与群(実施例5)の合計7つの群に分けた(各群6−7匹)。
(1)体重変化
表1に、各肥満モデルマウスについて、被験試料投与前(初期)、投与10日目、20日目、及び28日目に測定した体重の変化率を示す。なお、変化率は、まず各肥満モデルマウスの試料投与後の体重を初期体重を100とした場合の相対値に換算し、さらに防風通聖散投与群(比較例)の体重を基準として増減を評価するために、防風通聖散投与群の投与10日目、20日目及び28日目の体重を100とした場合の相対値に換算した。
図1に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの内臓(後腹膜、精巣、腸間、腎臓)周囲の脂肪重量(g)を示す。図1中、各試料投与群ごとに、左側から順に、腹膜周囲、精巣周囲、腸間周囲、及び腎臓周囲の脂肪重量(g)、並びにそれらの合計量(g)を示す。図1から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、特にセンキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、及びセッコウ抜き防風通聖散(実施例3)は、防風通聖散(比較例)よりも内臓への脂肪蓄積を抑制する効果に優れていた。
図2に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの肝臓トリグリセリド量(mg/g)を示す。図2から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)、特にセンキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)は、防風通聖散(比較例)よりも肝臓トリグリセリド量の増加を抑制する効果に優れていた。
図3に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの肝臓総コレステロール量(mg/g)を示す。図3から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、特にセンキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)は、防風通聖散(比較例)よりも肝臓総コレステロール量の増加を抑制する効果に優れていた。
図4に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの血糖値(mg/dl)を示す。図4から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)、特にカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)は、防風通聖散(比較例)よりも血糖値の上昇を抑制する効果に優れていた。
図5に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの血中インスリン濃度(ng/ml)を示す。図5から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)は、防風通聖散(比較例)よりも血中インスリン濃度の上昇を抑制する効果に優れていた。
下記の方法に従って、防風通聖散中のカッセキの配合量を調製し、アルミニウム含量が100ppm未満である防風通聖散(実施例6〜8)を調製した。
下記に説明するように抽出に使用するカッセキの形状を変えて、防風通聖散エキスを調製し、それに含まれるカッセキ(天然含水ケイ酸アルミニウム及び二酸化ケイ素含有物)由来のアルミニウム含量を求めた。なお、アルミニウム含量は、実験例1で示すICP発光分析装置を用いて測定した。
従来の方法に従って、粉末状のカッセキを用いて、下記の方法により防風通聖散乾燥エキスを調製した。
上記形状のカッセキに代えて、原塊のままのカッセキ(一辺が2cm程度の略立法体状)、原塊を粗く砕いた大きめの塊状のカッセキ(一辺が1cm程度の略立法体状)、及び原塊を細かく砕いた小さめの塊状のカッセキ(一辺が数mm程度の略立法体状)を用いて、上記と同様にして防風通聖散乾燥エキスを調製した。斯くして調製した防風通聖散エキスに含まれるアルミニウム含量をICP発光分析装置を用いて測定したところ、原塊のままのカッセキを用いて調製した防風通聖散乾燥エキス(実施例6)に含まれるアルミニウム含量は1ppm、原塊を粗く砕いた大きめの塊状のカッセキを用いて調製した防風通聖散乾燥エキス(実施例7)に含まれるアルミニウム含量は2ppm、及び原塊を細かく砕いた小さめの塊状のカッセキを用いて調製した防風通聖散乾燥エキス(実施例8)に含まれるアルミニウム含量は11ppmであった。
上記で調製したカッセキ抜き防風通聖散エキス(実施例4:アルミニウム含量0ppm)、防風通聖散乾燥エキス(実施例6:アルミニウム含量1ppm、実施例8:アルミニウム含量11ppm)、及び防風通聖散エキス(比較例:アルミニウム含量100ppm)をそれぞれ用いて、脂肪細胞における蓄積脂肪の減少効果を評価した。具体的には、これら各被験試料の共存下で脂肪細胞を培養し、被験試料非存在下で培養した脂肪細胞(コントロール)と、脂肪細胞中に蓄積した脂肪量を比較することで、被験試料による脂肪減少効果を評価した。
(1−1)被験試料の調製
上記各防風通聖散エキスをそれぞれ約620mg秤量し、水10mLを加え、60℃の温湯を用いて30分間超音波照射して溶解させた。遠心分離(3000回転、10分間)し、上清を2種類の0.45μmのフィルター(:25mm GD/X CAT#6872-2504/whatman、及び25mm GHP ACRODISCCAT#4560/PALL)で順にろ過した後、0.2μmの滅菌フィルターでろ過し、ろ液を試料原液として回収した。回収した試料原液を細胞培養用培地を用いて5倍希釈し、さらにこれを同培地で6倍希釈することで調製した試験液を被験試料として下記の実験を行った。
[被験試料]
(a)アルミニウム含量0ppm 防風通聖散エキス:実施例4
(b)アルミニウム含量1ppm 防風通聖散エキス:実施例6
(c)アルミニウム含量11ppm 防風通聖散エキス:実施例8
(d)アルミニウム含量100ppm 防風通聖散エキス:比較例
(1)冷凍保存された3T3−L1細胞を融解し、これを細胞培養用培地を用いて、5%炭酸ガス−空気、飽和水蒸気、37℃の環境下で培養した。なお、細胞培養用培地として、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、HEPES)及び10%FBSを含むDMEMを用いた。
(2)培養細胞が80%コンフルエント状態になったことを確認した後、培地を除去し、トリプシン−EDTA溶解液にて細胞培養用フラスコの底にくっついている細胞をはがした。
(3)この細胞を、細胞数が3×104cells/wellになるよう96ウェルプレートに播種し、細胞培養用培地で37℃で培養した。細胞が100%コンフルエンス状態になったのを確認した後(培養開始から約2日後)、更に2日間37℃で培養した。
(4)次いで、細胞培養用培地を除去し、各ウェルに分化誘導培地で30倍希釈した各被験試料を200μl/well加えて、37℃で3日間培養した。なお、分化誘導培地として、上記細胞培養用培地10mlあたり、IBMX(Cell-Based Assay IBMX Solution (1,000X)、Insulin(Adipogenesis Assay Insulin Solution(1,000X)、及びDEX(Adipogenesis Assay Dexamethasone Solution(1,000X)をそれぞれ10μl添加した培地を用いた。これらの試薬はいずれもAdipogenesis Assay Kit(Cay man CHEMICAL社)の付属試薬である。
(5)各被験試料が希釈された分化誘導培地にて培養した後、培地を除去し、インスリン(分化)培地を全てのウェルに再度、分化誘導培地で30倍希釈した各被験試料200μl/wellずつ加えて37℃で2−3日間培養し、その後、培地をインスリン(分化)培地に置き換え、インスリン(分化)培地で30倍希釈した各試験試料にて再度37℃で2日間培養した。なお、インスリン(分化)培地として、上記細胞培養用培地10mlあたり、Insulin(Adipogenesis Assay Insulin Solution(1,000X)を10μl添加した培地を用いた。
(6)各被験試料が希釈されたインスリン(分化)培地で培養後、当該培地を除去し、再び細胞培養用培地に置き換えて37℃で2日間培養した。
(7)培養終了後、脂肪細胞の形態に変化(分化)したことを確認した後、これを脂肪細胞として下記の染色試験に使用した。
下記(1)−(6)の一連の試験で使用する試薬はAdipogenesis Assay Kit(Cay man CHEMICAL社)の付属試薬である。
(1)上記(1−2)に記載する方法で脂肪細胞を調製した後、96ウェルプレートの各ウェルから細胞培養用培地を除去した。次いで各ウェルにFixativeを75μl加え、37℃で15分間インキュベートした。なお、Fixativeは、pH7.2のPBS 90mlにFixative(Lipid Droplets Assay Fixative(10X))10μl添加して調製した。
(2)各ウェルを、Wash Solution(Lipid Droplets Assay Wash Solution)100μlを用いて5分ごとに2回洗浄し、洗浄後、ウェルを乾燥した。
(3)各ウェルにOil Red O solution(Lipid Droplets Assay Oil Red O solution)を75μl添加し、37℃で20分間インキュベートした。
(4)次いで、Oil Red O solutionを除去し、蒸留水で2−3回ピンク色が見えなくなるまで洗浄した。さらにウェルをWash Solution100μlを用いて5分ごとに2回洗浄した。
(5)洗浄後、完全にウェルを乾燥させ、各ウェルに100μlのDye Ectraction solutionを加え、30分間静かに混合した。
(6)次いで、各ウェルについて520nmの波長で吸光度(被験試料添加群の吸光度)を測定し、被験試料不存在下で培養した脂肪細胞(コントロール)の吸光度との対比から、下記計算式に従って脂肪細胞に蓄積した脂肪の減少率を計算する。なお、下記計算式で使用する吸光度は試験結果をN=3で平均した値である。
図6に示すように、防風通聖散中のカッセキの割合が、従来の防風通聖散中のカッセキの割合よりも少なくなるほど、具体的にはアルミニウム含量に換算して100ppm未満、特に11ppm以下と、少量になればなるほど、脂肪細胞に蓄積された脂肪に対する防風通聖散の減少効果が高くなることが判明した。このことから、従来の防風通聖散からカッセキを抜くか(一味抜き方剤)、あるいは従来の防風通聖散よりもカッセキ含量を減少させた医薬組成物は、従来の防風通聖散よりも脂肪の蓄積抑制効果、肥満症の抑制または改善効果、ひいては体重増加抑制効果に優れている。
Claims (5)
- 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分をすべて含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して11ppm以下であることを特徴とする、医薬組成物。
- 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、カッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満であることを特徴とする、医薬組成物。
- カッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して11ppm以下であることを特徴とする、請求項2記載の医薬組成物。
- 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、カッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分のすべてを含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して11ppm以下になるように、上記生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、請求項1記載の医薬組成物の製造方法。
- 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、カッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満または11ppm以下になるように、上記生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、請求項2または3記載の医薬組成物の製造方法。
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