JP6758799B2 - 医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、従来の防風通聖散と比較して、肥満症の抑制または改善、特に体重の増加抑制および/または体内脂肪の蓄積抑制作用に優れた医薬組成物に関する。さらに本発明は、上記作用に加えて、従来の防風通聖散と比較して、血糖値上昇抑制作用、血中インスリン濃度上昇抑制作用、肝臓トリグリセリド値上昇抑制作用、および/または肝臓総コレステロール増加抑制作用に優れた医薬組成物に関する。
脂肪の過剰な蓄積によって、糖尿病、高脂血症、動脈硬化等をはじめとする生活習慣病を引き起こす可能性があるとされており、特に内臓脂肪型肥満の場合にはこれらの疾患の発症率が高まることが指摘されている。近年、特に生活習慣病や肥満に対する関心がさらに高まっており、より一層、肥満、特に内臓脂肪型肥満の予防、改善および/または治療に有効な医薬品の開発が求められていた。
現在、抗肥満関連の医薬品として利用されているものとしては、防風通聖散などの漢方薬があげられ、近年特に、内臓脂肪の減少に効果があることが確認されている(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、防風通聖散においても、肝障害という副作用があるため(例えば非特許文献2を参照)、内臓脂肪減少効果を求めるがために投与量を多くすることは問題があり、逆に投与量を少なくしすぎると、内臓脂肪減少効果を得ることができなくなってしまうという問題があった。
この様な背景から、副作用を生じるほどに投与量を多くすることなく、肥満、特に内臓脂肪型肥満の予防、改善および/または治療に有効である医薬品の開発が求められていた。
平成14年度 科学技術総合研究委託費 地域先導研究 研究成果報告書 ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用)添付文書
本発明は、体重増加および/または体内脂肪蓄積に対して優れた抑制作用を有する医薬組成物、特に、従来公知の防風通聖散と比較してより優れた上記抑制作用を有する医薬組成物を提供することを目的とする。また本発明は、上記作用に加えて、従来の防風通聖散と比較して、血糖値上昇、血中インスリン濃度上昇、肝臓トリグリセリド値上昇、および/または肝臓総コレステロール増加に優れた抑制作用を有する医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、防風通聖散の成分から、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキのいずれか一つを除去した一味抜き方剤が、従来公知の防風通聖散と比較して、肥満症の抑制または改善、特に体重の増加抑制乃至低減および/または内臓脂肪の蓄積抑制乃至低減効果に優れていることを見出した。さらに、この知見から、防風通聖散中のボウフウ、センキュウ、セッコウ、トウキ、及び/又はカッセキの含有量を減らすと、その含有量の低下に伴って上記効果が上昇すること、つまりこれらの生薬成分には上記効果を用量依存的に抑制する作用があることが推測された。また、本発明者らは、上記一味抜き方剤が、上記効果に加えて、従来の防風通聖散と比較して、血糖値の上昇抑制効果、血中インスリン濃度上昇抑制効果、肝臓トリグリセリド量上昇抑制効果、および/または肝臓総コレステロール量上昇抑制効果に優れていることを確認した。本発明はこれらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、完成されたものである。
本発明は以下の医薬組成物、及びその製造方法を提供するものである。
(I)医薬組成物
I−1.防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分をすべて含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下であることを特徴とする医薬組成物。
I−2.防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下であることを特徴とする、医薬組成物。
I−3.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、ボウフウ、カッセキ及びトウキのいずれか一つを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下であることを特徴とする医薬組成物。
I−4.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、センキュウまたはセッコウのいずれか一つを含まないことを特徴とする医薬組成物。
I−5.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、センキュウ、セッコウ、カッセキ及びトウキのいずれか一つを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下であることを特徴とする医薬組成物。
I−6.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、センキュウ、セッコウ、及びカッセキのいずれか一つを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下であることを特徴とする医薬組成物。
I−7.防風通聖散を構成する生薬成分のうちカッセキを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下であることを特徴とする医薬組成物。
(II)医薬組成物の製造方法
II−1.防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分をすべて含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下になるように、上記生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−1記載の医薬組成物の製造方法。
II−2.防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下になるように、上記生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−2記載の医薬組成物の製造方法。
II−3.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、ボウフウ、カッセキ及びトウキのいずれか一つを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下になるように、生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−3記載の医薬組成物の製造方法。
II−4.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、センキュウまたはセッコウのいずれか一つを除くそれ以外の上記生薬成分を含むように、生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−4記載の医薬組成物の製造方法。
II−5.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、センキュウ、セッコウ、カッセキ及びトウキのいずれか一つを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下になるように、生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−5記載の医薬組成物の製造方法。
II−6.防風通聖散を構成する生薬成分のうち、センキュウ、セッコウ、及びカッセキのいずれか一つを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下になるように、生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−6記載の医薬組成物の製造方法。
II−7.防風通聖散を構成する生薬成分のうちカッセキを除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下になるように、生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、I−7記載の医薬組成物の製造方法。
本発明の医薬組成物は、従来の防風通聖散よりも肥満抑制乃至肥満改善効果に優れている。より詳細には、本発明の医薬組成物は、従来の防風通聖散と比較して、体重の増加抑制乃至低減、および/または体内脂肪の蓄積抑制乃至低減に優れた効果を奏する。なお、本明細書において「体内脂肪」とは、主として内臓脂肪を意味する。このように本発明の医薬組成物は、体重の増加抑制乃至低減および/または体内脂肪の蓄積抑制乃至低減する効果に優れているため、肥満の予防、改善および/または治療に有効である。
また本発明の医薬組成物は、上記効果に加えて、従来の防風通聖散よりも、血糖値の上昇抑制作用、血中インスリン濃度上昇抑制作用、肝臓トリグリセリド量上昇抑制作用、および/または肝臓総コレステロール量上昇抑制作用に優れているという効果を有している。
近年、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧および高脂血症のうち2つ以上を合併したメタボリックシンドロームに罹患することによって、心筋梗塞、脳梗塞等の発症率が高まることが指摘されている。本発明の医薬組成物は、上記効果を発揮することにより、メタボリックシンドロームの予防、改善および/または治療用の医薬組成物としても有用である。
試料投与から4週間目の各肥満モデルマウス(コントロール群(対照例)、防風通聖散投与群(比較例)、ボウフウ抜き防風通聖散投与群(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散投与群(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散投与群(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散投与群(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散投与群(実施例5):図2〜5も同じ)の内臓(後腹膜、精巣、腸間、腎臓)周囲の脂肪重量(g)を示す(実験例2)。なお、図1中の棒グラフは、横軸に示す各試料投与群のそれぞれについて、いずれも左側から順に、腹膜周囲、精巣周囲、腸間周囲、及び腎臓周囲の脂肪重量(g)、並びにそれらの合計量(g)を示す。 試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの肝臓トリグリセリド量(mg/g)を示す(実験例2)。 試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの肝臓総コレステロール量(mg/g)を示す(実験例2)。 試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの血糖値(mg/dl)を示す(実験例2)。 試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの血中インスリン濃度(ng/ml)を示す(実験例2)。 カッセキ抜き防風通聖散エキス(実施例4:アルミニウム含量0ppm)、及びカッセキ含量を低減した防風通聖散エキス(実施例6:アルミニウム含量1ppm、実施例8:アルミニウム含量11ppm)、及び従来の防風通聖散エキス(比較例:アルミニウム含量100ppm)をそれぞれ用いて、脂肪細胞における蓄積脂肪の減少効果を評価した結果を示す。なお、結果は従来の防風通聖散エキス(比較例:アルミニウム含量100ppm)による脂肪減少率を100%として示す。
本発明が対象とする医薬組成物には、防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を含まず、それ以外の上記生薬成分を含む医薬組成物、並びに上記生薬成分をすべて含むもののカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満である医薬組成物が含まれる。
(1)従来公知の防風通聖散
防風通聖散の植物原料としては、具体的には、例えばマオウ(Ephedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer,Ephedra equisetina Bunge)、カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer,Glycyrrhiza glabra Linne)、ショウキョウ(Zingiber officinale Roscoe)、ケイガイ(Schizonepeta tenuifolia Briquet)、レンギョウ(Forsythia suspense Vahl, Forsythia viridissima Lindley)、トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa, Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)、センキュウ(Cnidium officinale Makino)、サンシシ(Gardenia jasminoides Ellis)、ハッカ(Mentha arvensis Linne var. piperascens Malinvaud)、ボウフウ(Saposhnikovia divaricata Schischkin)、ダイオウ(Rheum palmatum Linne, Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinable Baillon, Rheum coreanum Nakaiまたはそれらの種間雑種)、ビャクジュツ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura, Atractylodes ovata De Candolle)、キキョウ(Platycodon grandiflorum A. De Candolle)、オウゴン(Scutellariae baicalensis Georgi)、ボウショウ(芒硝:硫酸ナトリウム)、カッセキ(滑石:天然含水ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素含有物)およびセッコウ(石膏:含水硫酸カルシウム)である。これらの植物原料は、日本薬局方に準じて使用部位が規定されている。
一般に、防風通聖散の調製は、例えば、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)に準じて行うことができる。「一般用漢方処方の手引き」によれば、その成分および分量は、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2〜3、カッセキ3〜5とされており、原則として、これを、その20倍重量(従って560〜620重量部)の湯で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたもの(抽出液)を用いることができる。
なお、書簡によっては、上記成分中、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行)や、オウゴンを含まないもの(例えば「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行)や、上記分量中、1.2(重量部)をすべて1.5(重量部)としているもの(例えば「明解漢方処方」、西岡一夫、高橋真太郎共著、浪速社発行)など、成分や成分比が多少異なるものもある。また、防風通聖散エキスの作り方として、ボウショウ以外の上記各成分に水400重量部を加え、200重量部まで煎じて、かすを除き、次いでボウショウを加えるとしているもの(例えば「和漢薬ハンドブック」、久保道徳、森山健三共著、保育社発行)のように、作り方が上記と多少異なるものもある。
(2)本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物には、前述するように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される少なくとも1種の生薬成分を含まず、それ以外の上記生薬成分を含む医薬組成物、並びに上記生薬成分をすべて含み、そのうちカッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満である医薬組成物が含まれる。
前者の医薬組成物として、好ましくはボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキから選択される一つの生薬成分を含まない医薬組成物である(一味抜き方剤)。当該一味抜き方剤には、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びトウキから選択される一つの生薬成分を含まない医薬組成物であって、カッセキの配合量が、医薬組成物100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満である医薬組成物が含まれる。
なお、本発明の医薬組成物中のボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びカッセキの含有量は、下記実験例1(1)〜(4)に記載される方法に従って確認することができる。当該方法により、対象とする医薬組成物に、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びカッセキに含まれる特徴的な成分が検出されないか、または当該成分に基づく物理的/化学的特性が認められない場合は、本発明の医薬組成物にはこれらの生薬成分が含まれていないと判断することができる。特に、カッセキに関しては、当該カッセキに特徴的な成分の量が、従来公知の防風通聖散に含まれる成分の量よりも少ないか、または当該成分に基づく物理的/化学的特性が従来公知の防風通聖散で認められる特性よりも小さい場合は、本発明の医薬組成物に含まれるカッセキの割合は、従来公知の防風通聖散よりも少ないと判断することができる。ここでカッセキに特徴的な成分としては、アルミニウムを挙げることができる。より具体的には、アルミニウムの含有量が最終の医薬組成物100重量%あたり100ppm未満である場合、防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)を含んでおり、防風通聖散と称される医薬組成物であっても、従来公知の防風通聖散と区別することができる。
後述する実験例2に示すように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキから選択される一つの生薬成分、好ましくはボウフウ、カッセキ、及びトウキから選択される一つの生薬成分を含まず、それ以外の防風通聖散の生薬成分を含む医薬組成物(一味抜き方剤)、または防風通聖散の生薬成分をすべて含んでいても、そのうち、カッセキの配合量が従来公知の防風通聖散に含まれるカッセキの量よりも少ない本発明の医薬組成物は、従来公知の防風通聖散よりも体重増加抑制効果に優れている(表1参照)。
また実験例2に示すように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、センキュウ、及びセッコウから選択される一つの生薬成分を含まず、それ以外の防風通聖散の生薬成分を含む医薬組成物(一味抜き方剤)は、従来公知の防風通聖散よりも内臓(例えば後腹膜、精巣周囲、腸間膜、腎周囲など)への脂肪蓄積を抑制する効果に優れている(図1参照)。
また実験例2に示すように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキから選択される一つの生薬成分、好ましくはセンキュウ、及びカッセキから選択される一つの生薬成分を含まないか(一味抜き方剤)、または防風通聖散の生薬成分をすべて含んでいても、そのうち、カッセキの配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない本発明の医薬組成物は、従来公知の防風通聖散よりも肝臓トリグリセリド量の上昇を抑制する効果に優れている(図2参照)。
また実験例2に示すように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、センキュウ、セッコウ、及びカッセキから選択される一つの生薬成分、好ましくはセンキュウ、及びカッセキから選択される一つの生薬成分を含まないか(一味抜き方剤)、または防風通聖散の生薬成分をすべて含んでいても、そのうち、カッセキの配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない本発明の医薬組成物は、従来公知の防風通聖散よりも肝臓の総コレステロール量の上昇を抑制する効果に優れている(図3参照)。
さらに実験例2に示すように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、ボウフウ、カッセキ、及びトウキから選択される一つの生薬成分、好ましくはカッセキ、及びトウキから選択される一つの生薬成分を含まないか(一味抜き方剤)、または防風通聖散の生薬成分をすべて含んでいても、そのうち、カッセキの配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない本発明の医薬組成物は、従来公知の防風通聖散よりも血糖値の上昇を抑制する効果に優れている(図4参照)。
さらにまた実験例2に示すように、防風通聖散の上記生薬成分のうち、センキュウ、セッコウ、及びカッセキから選択される一つの生薬成分を含まないか(一味抜き方剤)、または防風通聖散の生薬成分をすべて含んでいても、そのうち、カッセキの配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない本発明の医薬組成物は、従来公知の防風通聖散よりも血中インスリン濃度の上昇を抑制する効果に優れている(図5参照)。
これらの結果を総合すると、以下のことがいえる。
防風通聖散の上記生薬成分のうちセンキュウ及びセッコウのいずれか一方を含まない本発明の医薬組成物(一味抜き方剤)は、従来公知の防風通聖散よりも、体重増加抑制、体内脂肪蓄積抑制、肝臓トリグリセリド量増加抑制、肝臓総コレステロール量増加抑制、および/または血中インスリン濃度増加抑制効果に優れている。この結果から、防風通聖散において、センキュウ及びセッコウのいずれか一方を含んでいても、その配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない医薬組成物(例えば、配合量が微量である医薬組成物を含む)は、上記本発明の医薬組成物と同様の効果を有すると考えられ、本発明の医薬組成物と同等に扱うことができる。
また、防風通聖散の上記生薬成分のうちカッセキを含まないか(一味抜き方剤)、または含んでいても、その配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない本発明の医薬組成物は、従来公知の防風通聖散よりも、体重増加抑制、体内脂肪蓄積抑制、肝臓トリグリセリド量増加抑制、肝臓総コレステロール量増加抑制、血糖値上昇抑制および/または血中インスリン濃度増加抑制効果に優れている。上記効果を奏する本発明の医薬組成物であるか否かは、防風通聖散に含まれるカッセキの特徴的成分であるアルミニウムの含有量に基づいて判断することができる。具体的には、防風通聖散の上記生薬成分のうちカッセキを含まないか(一味抜き方剤)、または含んでいてもアルミニウムの含有量が最終の医薬組成物100重量%あたり100ppm未満である場合は、上記効果を奏する本発明の医薬組成物であると判断することができる。効果の点から上記アルミニウムの含有量はより少ないことが好ましく、具体的には30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは15ppm以下、特に好ましくは11ppm以下である。
また、防風通聖散の上記生薬成分のうちトウキを含まない本発明の医薬組成物(一味抜き方剤)は、従来公知の防風通聖散よりも、体重増加抑制、肝臓トリグリセリド量増加抑制、および/または血糖値上昇抑制効果に優れている。この結果から、防風通聖散において、トウキを含んでいても、その配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない医薬組成物(例えば、トウキの配合量が微量である医薬組成物を含む)は、上記本発明の医薬組成物と同様の効果を有すると考えられ、本発明の医薬組成物と同等に扱うことができる。
さらに、防風通聖散の上記生薬成分のうちボウフウを含まない本発明の医薬組成物(一味抜き方剤)は、従来公知の防風通聖散よりも、体重増加抑制、および/または血糖値上昇抑制効果に優れている。この結果から、防風通聖散において、ボウフウを含んでいても、その配合量が従来公知の防風通聖散に含まれる量よりも少ない医薬組成物(例えば、ボウフウの配合量が微量である医薬組成物を含む)は、上記本発明の医薬組成物と同様の効果を有すると考えられ、本発明の医薬組成物と同等に扱うことができる。
こうした本発明の医薬組成物は、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、およびトウキからなる群から選択される少なくとも一種の生薬、好ましくは一種の生薬を配合しないか、その配合量を低減する以外は、原材料の選択、上記以外の生薬成分の割合、及び製剤形状など、従来公知の防風通聖散の調製方法に準じて調製することができる。ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、および/またはトウキの配合量を低減する方法としては、特に制限されないものの、例えば従来公知の防風通聖散の調製に際して、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、および/またはトウキの使用量を減らすか、これらの植物原料からの抽出または放出を妨げ、抽出効率または放出効率を低減する方法を用いることができる。後者の方法として、制限されないものの、一例を挙げると、抽出に使用するこれらの植物原料を刻まずそのまま使用する、刻んでも粗さの程度を大きくする、抽出時間を短くする、または抽出温度を低くする等の方法を用いることができる。これらは、上記生薬の含有量の低減にあたり、一つを選択して単独で行ってもよいし、2以上を組み合わせて行ってもよい。
本発明の医薬組成物の形態及び形状は、従来公知の防風通聖散の形態及び形状に従うことができる。例えば漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている漢方処方(生薬配合物)やこれらの漢方処方から得られるエキスおよびエキス末が包含される。すなわち、本発明の医薬組成物は、植物原料から溶媒で抽出して調製されるエキス(エキス形態)を使用してもよく、また当該エキスを常法により粉末状または顆粒状に製剤化した、いわゆるエキス末(エキス末形態)、並びにさらにこれを打錠して錠剤形態としたものを使用してもよい。好ましい形態としては、エキスを常法により粉末状または顆粒状に製剤化したエキス末形態、またはこれを打錠した錠剤形態である。
かかるエキス末の製造方法としては、一味抜き方剤の例を挙げると、防風通聖散を調製する植物原料のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、およびトウキからなる群から選択される一種を除く各植物原料の混合物に対し、約10〜20倍量の水を加え、80〜100℃程度で1〜3時間程度撹拌抽出し、温時遠心分離もしくは、ろ過して抽出液を得、これを減圧下に濃縮し、スプレードライ法等により乾燥エキス末とするか、或いはエキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着エキス末とする方法が挙げられる。またボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、およびトウキからなる群から選択される一種の含有量が所定量未満のエキス末は、抽出に使用する各植物原料の混合物として、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、およびトウキからなる群から選択される一種の配合量が従来公知の防風通聖散よりも少ないか、刻まずそのまま使用する、刻んでも粗さの程度を大きくするなど、抽出効率を下げた形態の上記植物原料を用いることで製造することができる。
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の状態や症状の程度によって適宜変更され得るが、成人一人(体重60kg)に対する1日あたりの投与量は、当該医薬組成物に含まれるゲニポシド類(ゲニポシド、ゲニポシド酸)の量に換算して通常15〜90mg程度、好ましくは20〜90mg程度、より好ましくは25〜90mg程度である。本発明の医薬組成物は、当該ゲニポシド類の投与量を満たすように調製される。
本発明の医薬組成物は、上記有効成分と薬学的に許容される従来公知の担体、賦形剤等を組み合わせて各種剤型に調製され得る。
本発明の医薬組成物は、経口投与形態であれば限定されず、液剤(シロップ等を含む)等の液状製剤(懸濁剤含む)や、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)等の固形製剤のいずれでもよい。
本発明の医薬組成物を液状製剤の形態とする場合、凍結保存することもでき、また凍結乾燥等により水分を除去して保存してもよい。凍結乾燥製剤やドライシロップ等は、使用時に滅菌水等を加え、再度溶解して使用される。
本発明の医薬組成物を固形剤の形態とする場合、例えば、錠剤の場合であれば、担体として当該分野で従来公知のものを広く使用することができる。このような担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、アルギン酸ナトリウム等の結合剤;乾燥デンプン、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、クロスポビドン、ポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。さらに錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。また、前記有効成分を含有する組成物を、ゼラチン、プルラン、デンプン、アラビアガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等を原料とする従来公知のカプセルに充填して、カプセル剤とすることができる。
また、丸剤の形態とする場合、担体として当該分野で従来公知のものを広く使用できる。その例としては、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
上記以外に、添加剤として、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩を、得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択し使用することができる。
また、アミノ酸、ビタミン類、有機酸塩類等の他の活性成分を含有させても良い。他の活性成分としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等のアミノ酸;ビタミンA1、ビタミンA2、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ビオチン等のビタミン類;塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
これらの形態はいずれも当該分野における通常の方法を用いて調製でき、例えば、錠剤は、上記有効成分と、不溶性食物繊維およびその他錠剤を得るために必要な賦形剤等を適宜添加し、よく混合分散させたのち打錠して得ることができる。また、散剤は、上記有効成分と、不溶性食物繊維およびその他散剤を得る為に必要な賦形剤等を適宜添加し、好適な方法にて混合、粉体化して得ることができる。
本発明の医薬組成物の投与量は、上記(4)に記載する投与量(1日当たりの投与量)に従って適宜設定することができ、通常一日2〜3回に分けて経口投与の形態で用いられる。服用時刻は、特に限定されないが、食前または食間が好ましい。
本発明の医薬組成物は、成人一人(体重60kg)1日あたり、乾燥エキスとして通常1〜10g程度、好ましくは1.5〜8g程度、より好ましくは1.5〜6g程度である。
本発明の医薬組成物は、体重の増加抑制乃至低減および/または体内脂肪蓄積抑制乃至低減に優れた効果を発揮する。従って、本発明の防風通聖散は、抗肥満用製剤(特に抗内臓脂肪型肥満用製剤)等として好適に使用され得る。
内臓脂肪型肥満とは、内臓のまわりに脂肪が蓄積するタイプの肥満症であり、メタボリックシンドロームタイプの肥満として認識されている。内臓脂肪型肥満の判定基準は、日本肥満学会の肥満症治療ガイドライン2006によると、(i)「ウェスト径が男性85cm以上、女性90cm以上」(ii)「腹部CTスキャンによる内臓脂肪面積が100cm以上」の2つの条件を満たしたものとされている。本発明の防風通聖散は、内臓脂肪の蓄積が原因となるメタボリックシンドロームの予防、改善および/または治療用としても好適である。
以下に実施例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記の実施例において特に言及しない場合は、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味するものとする。
実験例1 各生薬成分の確認試験
(1)ボウフウ
被験試料を粉末とし、その3gを量り、水15mLを加え、超音波で5分間抽出した後、アンモニア水(28)2mL及びジエチルエーテル20mLを加え、よく振り混ぜ、遠心分離する。ジエチルエーテル層を分取し、水浴上で留去した後、残留物をアセトン1mLに溶かし、これを「試料溶液」とする。別に「ボウフウ」(防風:Saposhnikovia divaricata)の根茎を切断、その10gをとり、水100mLを加えて沸騰後約30分間加熱(90〜100℃)抽出した後、熱時ろ過し、ろ液を濃縮して軟エキスとする。これに水10mLを加え、超音波で5分間抽出した後、アンモニア水(28)2mL及びジエチルエーテル20mLを加え、よく振り混ぜ、遠心分離する。ジエチルエーテル層を分取し、水浴上で留去した後、残留物をアセトン2mLに溶かし、これを「標準溶液」とする。これらの2つの液につき、薄層クロマトグラフィーにより試験を行う。試料溶液の10μL及び標準溶液の5μLを薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。次に酢酸エチル/エタノール(99.5)/酢酸(100)混液(10:1:1)を展開溶媒として約10cm展開した後、薄層板を風乾する。これに希硫酸を噴霧し、100℃で1分間加熱した後、紫外線(主波長365nm)を照射するとき、試料溶液から得た数個のスポットのうち1個のスポットが、標準溶液から得られるRf値0.4付近の青白色の蛍光を発するスポットと色調及びRf値が等しい場合、当該被験試料には、ボウフウが含まれていると判断することができる。またRf値0.4付近の青白色の蛍光スポットの蛍光強度から、被験試料に含まれるボウフウの含有量を求めることができる。この場合、被験試料として従来公知の防風通聖散を用いて測定した当該防風通聖散中のボウフウの含有量(既知量)と比較することで、対象とする被験試料中のボウフウの含有量が、上記既知量より少ないか否かを判断することができる。
(2)センキュウ
被験試料を粉末とし、その2gを量り、水5mLを加えて振り混ぜた後、ジエチルエーテル2mLを加えてよく振り混ぜ、遠心分離し、ジエチルエーテル層を分取して、これを「試料溶液」とする。別に、薄層クロマトグラフィー用3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−(E)−プロペン酸・(E)−フェルラ酸混合試液を「標準溶液」とする。これらの2つの液につき、薄層クロマトグラフィーにより試験を行う。試料溶液の20μL及び標準溶液の2μLを薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。次に酢酸エチル/ヘキサン/エタノール(99.5)混液(5:4:2)を展開溶媒として約10cm展開した後、薄層板を風乾する。これに硫酸/エタノール(99.5)混液(1:1)を均等に噴霧し、105℃で5分間加熱した後、紫外線(主波長365nm)を照射するとき、試料溶液から得られた数個のスポットのうち1個のスポットが標準溶液から得たRf値0.4付近の黄色の蛍光を発するスポットと色調及びRf値が等しい場合、当該被験試料には、センキュウが含まれていると判断することができる。またRf値0.4付近の青白色の蛍光スポットの蛍光強度から、被験試料に含まれるセンキュウの含有量を求めることができる。この場合、被験試料として従来公知の防風通聖散を用いて測定した当該防風通聖散中のセンキュウの含有量(既知量)と比較することで、対象とする被験試料中のセンキュウの含有量が、上記既知量より少ないか否かを判断することができる。
(3)セッコウ(硫酸ナトリウム+水塩)
被験試料を粉末とし、その1.7gをとり、強熱灰化する。冷後、希塩酸50mLを加えてよく振り混ぜた後、ろ過する。このろ液にアンモニア試液を加え、中性とし、ろ過する。このろ液1mLに0.5mol/Lの塩化バリウム試液を数滴添加するとすぐに白色の白い沈殿が生じる場合(硫酸塩の定性反応(1))は、被験試料中にセッコウ(硫酸ナトリウム+水塩)が含まれていると判断することができる。またこの方法に代えて、日本工業規格の「セッコウの化学分析方法」(JIS R9101-1995)により、セッコウの有無を測定、評価することもできる。
(4)カッセキ(天然含水ケイ酸アルミニウム及び二酸化ケイ素含有物)
被験試料中に含まれるアルミニウムの量を測定することで、被験試料中のカッセキの有無及びその配合量を求めることができる。なお、被験試料中のアルミニウム含量は、ICP発光分析法に基づいて下記の方法によって測定することができる。
(1)被験試料を約0.5〜1g石英ビーカーに量り取り、500℃の電気炉で灰化する。(2)灰化終了後、20%濃度の塩酸水溶液を20ml加えて溶解し、100℃で乾固させる。
(3)10%濃度の塩酸を5ml加え、100℃で30分間加熱する。
(4)得られた溶液を濾紙を用いて濾過し、50ml容量のポリプロピレン製容器に集める。
(5)下記条件のICP発光分析装置を用いて、吸光度からアルミニウムの量を算出する。
[ICP発光分析条件]
装置:ICP発光分析装置(735-ES:アジレント・テクノロジー株式会社)
RF出力:1600W
プラズマガス:15L/min
補助ガス:1.5L/min
キャリアーガス:0.55L/min
プラズマ観測方向:垂直方向
測定波長:167.019nm。
アルミニウムが検出されない場合、当該被験試料中にはカッセキは含まれていないと判断される。またアルミニウム含量から、被験試料に含まれるカッセキの含有量を求めることができる。また被験試料として従来公知の防風通聖散を用いて測定した当該防風通聖散中のアルミニウムの含有量(既知量)と比較することで、対象とする被験試料中のカッセキの含有量が、上記既知量より少ないか否かを判断することができる。
実験例2 肥満モデル動物を用いた抗肥満効果の評価
防風通聖散(比較例)、及びこれからボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキのいずれか一つを除去した一味抜き方剤(実施例1〜5)を、それぞれ肥満モデルマウスに経口投与し、経時的に体重、内臓脂肪重量、肝臓トリグリセリド量、肝臓総コレステロール量、血糖値、及び血中インスリン濃度を測定し、本発明の医薬組成物の肥満症(またはメタボリックシンドローム)に対する改善効果を評価した。
1.実験方法
(1)被験試料の調製
(a)防風通聖散エキス(比較例:従来品)
原料生薬を、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2.0およびカッセキ3.0の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量(560重量部)を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥した。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
(b)ボウフウ抜き防風通聖散エキス(実施例1)
上記防風通聖散エキスの製造方法において、ボウフウを配合しない以外は、全て同様にして、ボウフウ抜き防風通聖散エキスを調製した。
(c)センキュウ抜き防風通聖散エキス(実施例2)
上記防風通聖散エキスの製造方法において、センキュウを配合しない以外は、全て同様にして、センキュウ抜き防風通聖散エキスを調製した。
(d)セッコウ抜き防風通聖散エキス(実施例3)
上記防風通聖散エキスの製造方法において、セッコウを配合しない以外は、全て同様にして、セッコウ抜き防風通聖散エキスを調製した。
(e)カッセキ抜き防風通聖散エキス(実施例4)
上記防風通聖散エキスの製造方法において、カッセキを配合しない以外は、全て同様にして、カッセキ抜き防風通聖散エキスを調製した。
(f)トウキ抜き防風通聖散エキス(実施例5)
上記防風通聖散エキスの製造方法において、トウキを配合しない以外は、全て同様にして、トウキ抜き防風通聖散エキスを調製した。
(2)動物実験
マウス(ICRマウス、4週齢、雄)に高脂肪食(D12492:Rodent Diet 60Kcal% Research Diets)を5週間自由摂食させて飼育し、肥満モデルマウスを作製した。この肥満モデルマウスの体重を測定後、コントロール群(対照例)、防風通聖散投与群(比較例)、ボウフウ抜き防風通聖散投与群(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散投与群(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散投与群(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散投与群(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散投与群(実施例5)の合計7つの群に分けた(各群6−7匹)。
コントロール群を除くこれらの各群の肥満モデルマウスに、4週間にわたり、高脂肪食とともに上記各被験試料を連日投与し、体重を2日に1回測定した。コントロール群には、被験試料を与えず高脂肪食のみを摂取させた。なお、被験試料のうち防風通聖散(比較例)は、一日あたり2000mg/kg体重の割合で、またそれ以外の実施例1〜5は一日あたり2200mg/kg体重の割合で肥満モデルマウスに経口的に投与した。4週間後に、採血と臓器脂肪を採取し、血糖値、血中インスリン濃度、肝臓トリグリセリド量、肝臓総コレステロール量、及び内臓(後腹膜、精巣、腸間膜、腎)周囲に蓄積した脂肪量を測定した。
2.実験結果
(1)体重変化
表1に、各肥満モデルマウスについて、被験試料投与前(初期)、投与10日目、20日目、及び28日目に測定した体重の変化率を示す。なお、変化率は、まず各肥満モデルマウスの試料投与後の体重を初期体重を100とした場合の相対値に換算し、さらに防風通聖散投与群(比較例)の体重を基準として増減を評価するために、防風通聖散投与群の投与10日目、20日目及び28日目の体重を100とした場合の相対値に換算した。
これから分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)はいずれも防風通聖散(比較例)よりも体重増加を抑制する効果に優れていた。なかでもボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)は、体重増加抑制効果に優れていることが判明した。
(2)内臓脂肪重量
図1に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの内臓(後腹膜、精巣、腸間、腎臓)周囲の脂肪重量(g)を示す。図1中、各試料投与群ごとに、左側から順に、腹膜周囲、精巣周囲、腸間周囲、及び腎臓周囲の脂肪重量(g)、並びにそれらの合計量(g)を示す。図1から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、特にセンキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、及びセッコウ抜き防風通聖散(実施例3)は、防風通聖散(比較例)よりも内臓への脂肪蓄積を抑制する効果に優れていた。
(3)肝臓トリグリセリド量
図2に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの肝臓トリグリセリド量(mg/g)を示す。図2から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)、特にセンキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)は、防風通聖散(比較例)よりも肝臓トリグリセリド量の増加を抑制する効果に優れていた。
(4)肝臓総コレステロール量
図3に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの肝臓総コレステロール量(mg/g)を示す。図3から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、特にセンキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)は、防風通聖散(比較例)よりも肝臓総コレステロール量の増加を抑制する効果に優れていた。
(5)血糖値
図4に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの血糖値(mg/dl)を示す。図4から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)、特にカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)は、防風通聖散(比較例)よりも血糖値の上昇を抑制する効果に優れていた。
(6)血中インスリン濃度
図5に、試料投与から4週間目の各肥満モデルマウスの血中インスリン濃度(ng/ml)を示す。図5から分かるように、ボウフウ抜き防風通聖散(実施例1)、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、カッセキ抜き防風通聖散(実施例4)、及びトウキ抜き防風通聖散(実施例5)のなかでも、センキュウ抜き防風通聖散(実施例2)、セッコウ抜き防風通聖散(実施例3)、及びカッセキ抜き防風通聖散(実施例4)は、防風通聖散(比較例)よりも血中インスリン濃度の上昇を抑制する効果に優れていた。
実施例6〜8
下記の方法に従って、防風通聖散中のカッセキの配合量を調製し、アルミニウム含量が100ppm未満である防風通聖散(実施例6〜8)を調製した。
(1)防風通聖散エキスの調製
下記に説明するように抽出に使用するカッセキの形状を変えて、防風通聖散エキスを調製し、それに含まれるカッセキ(天然含水ケイ酸アルミニウム及び二酸化ケイ素含有物)由来のアルミニウム含量を求めた。なお、アルミニウム含量は、実験例1で示すICP発光分析装置を用いて測定した。
(2)防風通聖散エキス(比較例)の調製
従来の方法に従って、粉末状のカッセキを用いて、下記の方法により防風通聖散乾燥エキスを調製した。
原料生薬を、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2.0およびカッセキ3.0の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量(560重量部)を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥した。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
斯くして調製した防風通聖散乾燥エキス(従来品)に含まれるアルミニウム含量を測定したところ、100ppmであった。
(3)防風通聖散乾燥エキス(実施例6〜8)の調製
上記形状のカッセキに代えて、原塊のままのカッセキ(一辺が2cm程度の略立法体状)、原塊を粗く砕いた大きめの塊状のカッセキ(一辺が1cm程度の略立法体状)、及び原塊を細かく砕いた小さめの塊状のカッセキ(一辺が数mm程度の略立法体状)を用いて、上記と同様にして防風通聖散乾燥エキスを調製した。斯くして調製した防風通聖散エキスに含まれるアルミニウム含量をICP発光分析装置を用いて測定したところ、原塊のままのカッセキを用いて調製した防風通聖散乾燥エキス(実施例6)に含まれるアルミニウム含量は1ppm、原塊を粗く砕いた大きめの塊状のカッセキを用いて調製した防風通聖散乾燥エキス(実施例7)に含まれるアルミニウム含量は2ppm、及び原塊を細かく砕いた小さめの塊状のカッセキを用いて調製した防風通聖散乾燥エキス(実施例8)に含まれるアルミニウム含量は11ppmであった。
実験例3 脂肪細胞を用いた脂肪減少効果の評価
上記で調製したカッセキ抜き防風通聖散エキス(実施例4:アルミニウム含量0ppm)、防風通聖散乾燥エキス(実施例6:アルミニウム含量1ppm、実施例8:アルミニウム含量11ppm)、及び防風通聖散エキス(比較例:アルミニウム含量100ppm)をそれぞれ用いて、脂肪細胞における蓄積脂肪の減少効果を評価した。具体的には、これら各被験試料の共存下で脂肪細胞を培養し、被験試料非存在下で培養した脂肪細胞(コントロール)と、脂肪細胞中に蓄積した脂肪量を比較することで、被験試料による脂肪減少効果を評価した。
1.実験方法
(1−1)被験試料の調製
上記各防風通聖散エキスをそれぞれ約620mg秤量し、水10mLを加え、60℃の温湯を用いて30分間超音波照射して溶解させた。遠心分離(3000回転、10分間)し、上清を2種類の0.45μmのフィルター(:25mm GD/X CAT#6872-2504/whatman、及び25mm GHP ACRODISCCAT#4560/PALL)で順にろ過した後、0.2μmの滅菌フィルターでろ過し、ろ液を試料原液として回収した。回収した試料原液を細胞培養用培地を用いて5倍希釈し、さらにこれを同培地で6倍希釈することで調製した試験液を被験試料として下記の実験を行った。
[被験試料]
(a)アルミニウム含量0ppm 防風通聖散エキス:実施例4
(b)アルミニウム含量1ppm 防風通聖散エキス:実施例6
(c)アルミニウム含量11ppm 防風通聖散エキス:実施例8
(d)アルミニウム含量100ppm 防風通聖散エキス:比較例
(1−2)細胞の調製
(1)冷凍保存された3T3−L1細胞を融解し、これを細胞培養用培地を用いて、5%炭酸ガス−空気、飽和水蒸気、37℃の環境下で培養した。なお、細胞培養用培地として、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、HEPES)及び10%FBSを含むDMEMを用いた。
(2)培養細胞が80%コンフルエント状態になったことを確認した後、培地を除去し、トリプシン−EDTA溶解液にて細胞培養用フラスコの底にくっついている細胞をはがした。
(3)この細胞を、細胞数が3×10cells/wellになるよう96ウェルプレートに播種し、細胞培養用培地で37℃で培養した。細胞が100%コンフルエンス状態になったのを確認した後(培養開始から約2日後)、更に2日間37℃で培養した。
(4)次いで、細胞培養用培地を除去し、各ウェルに分化誘導培地で30倍希釈した各被験試料を200μl/well加えて、37℃で3日間培養した。なお、分化誘導培地として、上記細胞培養用培地10mlあたり、IBMX(Cell-Based Assay IBMX Solution (1,000X)、Insulin(Adipogenesis Assay Insulin Solution(1,000X)、及びDEX(Adipogenesis Assay Dexamethasone Solution(1,000X)をそれぞれ10μl添加した培地を用いた。これらの試薬はいずれもAdipogenesis Assay Kit(Cay man CHEMICAL社)の付属試薬である。
(5)各被験試料が希釈された分化誘導培地にて培養した後、培地を除去し、インスリン(分化)培地を全てのウェルに再度、分化誘導培地で30倍希釈した各被験試料200μl/wellずつ加えて37℃で2−3日間培養し、その後、培地をインスリン(分化)培地に置き換え、インスリン(分化)培地で30倍希釈した各試験試料にて再度37℃で2日間培養した。なお、インスリン(分化)培地として、上記細胞培養用培地10mlあたり、Insulin(Adipogenesis Assay Insulin Solution(1,000X)を10μl添加した培地を用いた。
(6)各被験試料が希釈されたインスリン(分化)培地で培養後、当該培地を除去し、再び細胞培養用培地に置き換えて37℃で2日間培養した。
(7)培養終了後、脂肪細胞の形態に変化(分化)したことを確認した後、これを脂肪細胞として下記の染色試験に使用した。
(1−3)染色試験
下記(1)−(6)の一連の試験で使用する試薬はAdipogenesis Assay Kit(Cay man CHEMICAL社)の付属試薬である。
(1)上記(1−2)に記載する方法で脂肪細胞を調製した後、96ウェルプレートの各ウェルから細胞培養用培地を除去した。次いで各ウェルにFixativeを75μl加え、37℃で15分間インキュベートした。なお、Fixativeは、pH7.2のPBS 90mlにFixative(Lipid Droplets Assay Fixative(10X))10μl添加して調製した。
(2)各ウェルを、Wash Solution(Lipid Droplets Assay Wash Solution)100μlを用いて5分ごとに2回洗浄し、洗浄後、ウェルを乾燥した。
(3)各ウェルにOil Red O solution(Lipid Droplets Assay Oil Red O solution)を75μl添加し、37℃で20分間インキュベートした。
(4)次いで、Oil Red O solutionを除去し、蒸留水で2−3回ピンク色が見えなくなるまで洗浄した。さらにウェルをWash Solution100μlを用いて5分ごとに2回洗浄した。
(5)洗浄後、完全にウェルを乾燥させ、各ウェルに100μlのDye Ectraction solutionを加え、30分間静かに混合した。
(6)次いで、各ウェルについて520nmの波長で吸光度(被験試料添加群の吸光度)を測定し、被験試料不存在下で培養した脂肪細胞(コントロール)の吸光度との対比から、下記計算式に従って脂肪細胞に蓄積した脂肪の減少率を計算する。なお、下記計算式で使用する吸光度は試験結果をN=3で平均した値である。
さらに、これから、被験試料としてアルミニウム含量100ppmの防風通聖散エキス(比較例)(被験試料(d))を用いた被験試料添加群の脂肪減少率を100としたときの、その他の被験試料添加群(被験試料(a)−(c))の脂肪減少率の相対値((被験試料(a)-(d))/(被験試料(d))×100)を算出した。結果を図6に示す。
2.実験結果
図6に示すように、防風通聖散中のカッセキの割合が、従来の防風通聖散中のカッセキの割合よりも少なくなるほど、具体的にはアルミニウム含量に換算して100ppm未満、特に11ppm以下と、少量になればなるほど、脂肪細胞に蓄積された脂肪に対する防風通聖散の減少効果が高くなることが判明した。このことから、従来の防風通聖散からカッセキを抜くか(一味抜き方剤)、あるいは従来の防風通聖散よりもカッセキ含量を減少させた医薬組成物は、従来の防風通聖散よりも脂肪の蓄積抑制効果、肥満症の抑制または改善効果、ひいては体重増加抑制効果に優れている。

Claims (5)

  1. 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、及びカッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分をすべて含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して11ppm以下であることを特徴とする、医薬組成物。
  2. 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、カッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満であることを特徴とする、医薬組成物。
  3. カッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して11ppm以下であることを特徴とする、請求項記載の医薬組成物。
  4. 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、カッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、カッセキ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含むか、または上記生薬成分のすべてを含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して11ppm以下になるように、上記生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、請求項1記載の医薬組成物の製造方法。
  5. 防風通聖散を構成する生薬成分(カンゾウ、ダイオウ、サンシシ、マオウ、ボウショウ、レンギョウ、ショウキョウ、オウゴン、ケイガイ、キキョウ、ハッカ、シャクヤク、ビャクジュツ、センキュウ、セッコウ、ボウフウ、トウキ、カッセキ)のうち、ボウフウ、センキュウ、セッコウ、及びトウキからなる群から選択される1種の生薬成分を除くそれ以外の上記生薬成分を含み、且つカッセキの配合量が、防風通聖散エキス100重量%あたりのカッセキ由来のアルミニウム含量に換算して100ppm未満または11ppm以下になるように、上記生薬成分の抽出エキスを調製する工程を含む、請求項2または3記載の医薬組成物の製造方法。
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