[本開示が解決しようとする課題]
国際公開第2015/174200号に開示されている切削インサートを用いて工作物の加工を行う際、工作物の加工面に擦過痕が残る場合があった。
本発明の一態様の目的は、工作物の加工面に擦過痕が残ることを抑制可能な切削インサートを提供することである。
[本開示の効果]
本発明の一態様によれば、工作物の加工面に擦過痕が残ることを抑制可能な切削インサートを提供することができる。
[本発明の実施形態の概要]
まず、本発明の実施形態の概要について説明する。
(1)本発明の一態様に係る切削インサート100は、第1面5と、第2面7と、側面6とを備えている。第2面7は、第1面5と反対側にある。側面6は、第1面5および第2面7の双方と連なる。第1面5と側面6との稜線は、切れ刃3を含む。第1面5は、切れ刃3と連なるすくい面9と、すくい面9に対して切れ刃と反対側にあり、かつ平面形状を有する基準面1とを有する。切れ刃3は、コーナ切れ刃33と、コーナ切れ刃33の第1端部C1に連なるサラエ刃13と、コーナ切れ刃33の第1端部C1と反対側の第2端部C2に連なる主切れ刃23とを有する。すくい面9は、サラエ刃13と連なる第1すくい面部10と、主切れ刃23と連なる第2すくい面部20と、コーナ切れ刃33と連なり、かつ第1すくい面部10と第2すくい面部20との間にある第3すくい面部30とを有する。第1すくい面部10は、基準面1に対して第1角度θ1で傾斜している第1傾斜面11を有している。第2すくい面部20は、基準面1に対して第1角度θ1よりも大きい第2角度θ2で傾斜している第2傾斜面21を有している。第1角度θ1および第2角度θ2は、基準面1に対して正の角度である。基準面1に対して垂直な方向において、第1端部C1および第2端部C2は、基準面1よりも高く、かつ基準面1に平行な方向から見て、主切れ刃23は基準面1と交差するように延在する。すくい面9には、第3すくい面部30から立ち上がって第1すくい面部10に連なる第1段差部2が設けられている。
図10および図11を参照しつつ、切削インサート100を用いて工作物70に対して隅削り加工が行われる状態について説明する。切削インサート100の切れ刃3は、サラエ刃13と、主切れ刃23と、コーナ切れ刃33とを有している。切削インサート100は、フライスカッタボディ101に取り付けられている。図11に示されるように、フライスカッタボディ101が回転することで、切削インサート100は、回転方向Aに回転する。フライスカッタボディ101は、回転方向Aに回転しながら移動方向Bに移動する。回転する切れ刃3によって、工作物70が切削され、切屑102が発生する。好ましくは、切屑102は、渦巻き状にカールする。
国際公開第2015/174200号に開示されている切削インサートにおいては、切削インサートの主切れ刃と連なるすくい面の傾斜角は、主切れ刃の延在方向においてほぼ同じ角度である。そのため、当該切削インサートを用いて工作物70の加工を行う場合、主切れ刃23の中央付近の切屑部分の流出速度V2は、コーナ切れ刃33付近の切屑部分の流出速度V1と同程度か、もしくは、流出速度V1よりも低くなる。この場合、全体の切屑102の流出方向は、工作物70の側面72に略平行な方向D2か、もしくは、フライスカッタボディの外周方向のベクトル成分を含む方向D3になる。これらの場合、切屑102のカール径が大きくなると、切屑102が、工作物70の加工後(加工済)の側面72に接触し、側面72に擦過痕を残す。側面72は、たとえば白濁して見える。また切屑102が、側面72を超えて、工作物70の加工前(未加工)の上面73に接触し、上面73に擦過痕を残す場合がある。この場合、上面73は、たとえば白濁して見える。
さらに切屑102が側面72に接触して、切屑102の流出方向が変化すると、切屑102がサラエ刃での加工面である工作物70の底面71に接触する場合がある。この場合、工作物70の底面71においても、擦過痕が形成される。さらに、切屑102が切削インサート100の側面に接触して、当該側面に擦過痕が形成される場合もある。
本発明の一態様に係る切削インサート100のすくい面9には、第3すくい面部30から立ち上がって第1すくい面部10に連なる第1段差部2が設けられている。第1段差部2は、コーナ切れ刃33付近における切屑102の流出速度を低減するように作用する。そのため、コーナ切れ刃33付近における切屑部分の流出速度V1は、主切れ刃23の中央付近における切屑部分の流出速度V2よりも低くなる。結果として、切屑102の流出方向が、フライスカッタボディの内周方向のベクトル成分を含む方向D1になる。よって、切屑102が、工作物70の加工後(加工済)の側面72に接触することを抑制することができる。その結果、工作物の加工面に擦過痕が残ることを抑制することができる。
(2)上記(1)に係る切削インサート100では、第2端部C2を通り、かつサラエ刃13に平行な断面において、基準面1に対して垂直な方向における第1段差部2の高さは、0.04mm以上0.10mm以下であってもよい。これにより、切屑の流出方向を適切に制御し、工作物の加工面に擦過痕が残ることをさらに抑制することができる。
(3)上記(2)に係る切削インサート100では、断面において、基準面1に平行な方向における第1段差部2と第2端部C2との距離は、0.4mm以上1.0mm以下である。これにより、切屑の流出方向を適切に制御し、工作物の加工面に擦過痕が残ることをさらに抑制することができる。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに係る切削インサート100において、第1すくい面部10の全体が、第1段差部2を構成していてもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る切削インサート100では、基準面1に対して垂直な方向において、サラエ刃13の中央部は、第1端部C1よりも高くてもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに係る切削インサート100において、第1角度θ1は、3°以上30°以下であってもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに係る切削インサート100において、第2角度θ2は、3°以上30°以下であってもよい。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに係る切削インサート100において、側面6は、サラエ刃13と連なる第1側部61を含んでいてもよい。サラエ刃13は、コーナ切れ刃側にある第1サラエ刃部13aと、第1サラエ刃部13aと連なる第2サラエ刃部13bとを有していてもよい。第1側部61に対して垂直な方向から見て、基準面1に平行な直線1aに対する第1サラエ刃部13aの傾斜角θ3は、基準面1に平行な直線1bに対する第2サラエ刃部13bの傾斜角θ4よりも大きくてもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに係る切削インサート100において、第2すくい面部20は、第3すくい面部30と連なる第1領域20aと、第1領域20aに対して第3すくい面部30とは反対側にある第2領域20bとを有していてもよい。第2すくい面部20には、第1領域20aから立ち上がり第2領域20bに連なる第2段差部16が設けられていてもよい。これにより、工作物の加工面に擦過痕が残ることをさらに抑制することができる。
上記(9)に係る切削インサート100によれば、第2すくい面部20には、第1領域20aから立ち上がり第2領域20bに連なる第2段差部16が設けられている。コーナ切れ刃33は湾曲しているため、コーナ切れ刃33によって切削された切屑は、図10における左斜め上方に移動する。第2段差部16は、切屑の移動方向に交差する方向に延在して設けられているため、コーナ切れ刃33によって切削された切屑の流出速度を低減するように作用する。そのため、コーナ切れ刃33付近における切屑部分の流出速度V1は、主切れ刃23の中央付近における切屑部分の流出速度V2よりもさらに低くなる。結果として、切屑102の流出方向が、フライスカッタボディの内周方向のベクトル成分を含む方向D1になる。よって、切屑102が、工作物70の加工後(加工済)の側面72に接触することを抑制することができる。その結果、工作物の加工面に擦過痕が残ることを抑制することができる。
(10)上記(9)に係る切削インサート100において、サラエ刃13と平行な方向における第1端部C1と第2端部C2との中点MPを通り、かつ主切れ刃23に平行な断面において、基準面1に対して垂直な方向における第2段差部16の高さFは、0.04mm以上0.5mm以下であってもよい。これにより、工作物の加工面に擦過痕が残ることをさらに抑制することができる。
(11)上記(9)または(10)に係る切削インサート100において、基準面1に対する第2段差部16の立ち上がり面20cの傾斜角θ7は、10°以上60°以下であってもよい。これにより、工作物の加工面に擦過痕が残ることをさらに抑制することができる。
(12)上記(9)〜(11)のいずれかに係る切削インサート100において、基準面1に対する第2段差部16の立ち上がり面20cの傾斜角θ7は、基準面に対する第1段差部2の立ち上がり面40の傾斜角θ8よりも小さくてもよい。
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに係る切削インサート100において、側面6は、主切れ刃23と連なる第2側部62を含んでいてもよい。主切れ刃23は、コーナ切れ刃側にある第1主切れ刃部23aと、第1主切れ刃部23aと連なる第2主切れ刃部23bとを有していてもよい。第2側部62に対して垂直な方向から見て、基準面1に平行な直線1cに対する第1主切れ刃部23aの傾斜角θ5は、基準面1に平行な直線1dに対する第2主切れ刃部23bの傾斜角θ6よりも大きくてもよい。これにより、工作物の加工面に擦過痕が残ることをさらに抑制することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
次に、図面に基づいて本発明の実施形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る切削インサート100の構成について説明する。
図1および図2に示されるように、本実施形態に係る切削インサート100は、第1面5と、第2面7と、側面6とを主に有している。第1面5および第2面7の各々は、たとえば鋭角コーナ(または直角コーナ)と鈍角コーナとを交互に有する略多角形(略六角形)である。第2面7は、第1面5と反対側にある。側面6は、第1面5および第2面7の双方と連なる。切削インサート100には、第1面5および第2面7に開口する貫通孔8が設けられている。
第1面5と側面6との稜線は、切れ刃3を含む。切れ刃3は、たとえば略六角形状の第1面5における3箇所のコーナに設けられている。同様に、第2面7と側面6との稜線は、切れ刃3を含む。切れ刃3は、たとえば略六角形状の第2面7における3箇所のコーナに設けられている。第1面5は、すくい面9と、基準面1とを主に有する。すくい面9は、切れ刃3と連なる。基準面1は、すくい面9に対して切れ刃3と反対側にある。基準面1は、平面形状を有する。基準面1は、たとえば着座面である。基準面1は、貫通孔8とすくい面9との間にある。切削インサート100は、たとえば着座面においてフライスカッタボディ101に接して位置決めされる。
図3に示されるように、切れ刃3は、コーナ切れ刃33と、サラエ刃13と、主切れ刃23とを主に有している。コーナ切れ刃33は、第1面5のノーズR部にある。コーナ切れ刃33は、第1端部C1と、第2端部C2とを有する。第2端部C2は、第1端部C1とは反対側の端部である。サラエ刃13は、コーナ切れ刃33の第1端部C1に連なる。主切れ刃23は、コーナ切れ刃33の第2端部C2に連なる。
すくい面9は、第1すくい面部10と、第2すくい面部20と、第3すくい面部30とを有する。第1すくい面部10は、サラエ刃13と連なる。第2すくい面部20は、主切れ刃23と連なる。第3すくい面部30は、コーナ切れ刃33と連なる。第3すくい面部30は、第1すくい面部10と第2すくい面部20との間にある。
図3に示されるように、第1すくい面部10は、第1傾斜面11と、第1ランド面12とを有していてもよい。第1ランド面12は、サラエ刃13と連なる。第1傾斜面11は、第1ランド面12と連なる。第1傾斜面11は、第1ランド面12に対してサラエ刃13の反対側にある。第2すくい面部20は、第2傾斜面21と、第2ランド面22とを有していてもよい。第2ランド面22は、主切れ刃23と連なる。第2傾斜面21は、第2ランド面22と連なる。第2傾斜面21は、第2ランド面22に対して主切れ刃23の反対側にある。第3すくい面部30は、第3傾斜面31と、第3ランド面32とを有していてもよい。第3ランド面32は、コーナ切れ刃33と連なる。第3傾斜面31は、第3ランド面32と連なる。第3傾斜面31は、第3ランド面32に対してコーナ切れ刃33の反対側にある。
図4に示されるように、第1傾斜面11は、基準面1に平行な面P1に対して第1角度θ1で傾斜している。第1角度θ1は、たとえば3°以上30°以下である。第4傾斜面4は、第1傾斜面11と連なっている。基準面1は、第4傾斜面4に連なっている。第4傾斜面4は、第1傾斜面11と基準面1との間にある。基準面1に対する第4傾斜面4の傾斜角は、基準面1に対する第1傾斜面11の傾斜角よりも大きくてもよい。
図5に示されるように、第2傾斜面21は、基準面1に平行な面P2に対して第2角度θ2で傾斜している。第2角度θ2は、第1角度θ1よりも大きい。第2角度θ2は、たとえば3°以上30°以下である。第5傾斜面25は、第2傾斜面21と連なっている。基準面1は、第5傾斜面25に連なっている。第5傾斜面25は、第2傾斜面21と基準面1との間にある。基準面1に近づくにつれて第5傾斜面25は高くなる。基準面1に対して垂直な方向において、第2傾斜面21と第5傾斜面25との境界部24は、基準面1よりも低い。言い換えれば、基準面1に沿った平面は、第2傾斜面21と交差する。
第1角度θ1は、基準面1に対して正の角度である。ここで、第1角度θ1は、基準面1に対して正の角度であるとは、第1傾斜面11が、サラエ刃13から離れるにつれて低くなるように、第1傾斜面11が基準面1に対して傾斜していることをいう。別の観点から言えば、サラエ刃13を右方に向け、かつ基準面1を上方に向けて切削インサート100を配置した場合(図4参照)、第1傾斜面11が左下方に延在している場合をいう。図4に示されるように、第1ランド面12は、サラエ刃13から離れるにつれて高くなるように基準面1に対して傾斜している。基準面1に対する第1ランド面12の傾斜角は、負の角度である。
同様に、第2角度θ2は、基準面1に対して正の角度である。ここで、第2角度θ2は、基準面1に対して正の角度であるとは、第2傾斜面21が、主切れ刃23から離れるにつれて低くなるように、第2傾斜面21が基準面1に対して傾斜していることをいう。別の観点から言えば、主切れ刃23を左方に向け、かつ基準面1を上方に向けて切削インサート100を配置した場合(図5参照)、第2傾斜面21が右下方に延在している場合をいう。図5に示されるように、第2ランド面22は、主切れ刃23から離れるにつれて高くなるように基準面1に対して傾斜している。基準面1に対する第2ランド面22の傾斜角は、負の角度である。
図6および図7に示されるように、側面6は、第1側部61と、第2側部62と、第3側部63とを有する。第1側部61と第1すくい面部10との稜線が、サラエ刃13を構成する。第2側部62と第2すくい面部20との稜線が、主切れ刃23を構成する。第3側部63と第3すくい面部30との稜線が、コーナ切れ刃33を構成する。
図6に示されるように、基準面1に対して垂直な方向D4において、コーナ切れ刃33の第1端部C1および第2端部C2は、基準面1よりも高い。第1端部C1および第2端部C2は基準面1よりも高いとは、基準面1を上向きにして切削インサート100を配置した場合に、第1端部C1および第2端部C2が、基準面1よりも上方にある場合をいう。サラエ刃13は、第1端部C1から離れるにつれて高くなり、ピークになった後、低くなる。基準面1に平行な方向において、サラエ刃13と他の主切れ刃123との接続部15と、第1端部C1との距離を2等分する位置は、サラエ刃13の中央部14である。基準面1に平行な方向D5において、中央部14から接続部15までの距離W1は、中央部14から第1端部C1までの距離W2と同じである。基準面1に対して垂直な方向D4において、サラエ刃13の中央部14は、第1端部C1よりも高くてもよい。
図7に示されるように、主切れ刃23は、第2端部C2から離れるにつれて低くなる。基準面1に平行な方向から見て、主切れ刃23は基準面1と交差するように延在する。言い換えれば、基準面1に対して垂直な方向D4において、第2端部C2から離れるにつれて、主切れ刃23は基準面1に近づき、基準面1と交差した後、基準面1から離れる。
図8は、第2端部C2を通り、かつサラエ刃13に平行な断面である。図3および図8に示されるように、すくい面9には、第3すくい面部30の第3傾斜面31から立ち上がって第1すくい面部10に連なる第1段差部2が設けられている。第1段差部2は、立ち上がり面40と、立ち上がり面40に連なる第1傾斜面11とにより規定されていてもよい。基準面1に垂直な方向D4において、第3傾斜面31と立ち上がり面40との境界部36は、第1傾斜面11よりも低い。図8の断面において、第2端部C2から離れるにつれて、第1傾斜面11は単調に高くなる。図8に示されるように、第1すくい面部10の全体が、第1段差部2を構成していてもよい。図8の断面において、第2端部C2から離れるにつれて、第1傾斜面11の高さは、ほぼ一定であってもよいし、低くなる部分があってもよい。
図8の断面(つまり、第2端部C2を通り、かつサラエ刃13に平行な断面)において、基準面1に対して垂直な方向D4における第1段差部2の高さHは、たとえば0.04mm以上0.50mm以下であってもよい。なお、第1段差部2の高さHとは、第3傾斜面31と立ち上がり面40との境界部36と、立ち上がり面40と第1傾斜面11との境界部41との距離である。断面視において、基準面1に対する第3傾斜面31の傾斜角は、正の角度である。反対に、基準面1に対する立ち上がり面40の傾斜角は、負の角度である。第3傾斜面31と立ち上がり面40との境界部36は、傾斜角が0となる位置である。同様に、基準面1に対する第1傾斜面11の傾斜角は、負の角度である。基準面1に対する第1傾斜面11の傾斜角は、基準面1に対する立ち上がり面40の傾斜角よりも小さい。立ち上がり面40と第1傾斜面11との境界部41は、傾斜角が変化する位置である。
図8の断面において、基準面1に平行な方向における第1段差部2と第2端部C2との距離Lは、たとえば0.4mm以上3.0mm以下である。なお、より具体的には、第1段差部2と第2端部C2との距離とは、立ち上がり面40と第1傾斜面11との境界部41と、第2端部C2との距離である。
図3に示されるように、第1段差部2は、基準面1に対して垂直な方向から見て、第3すくい面部30と基準面1との境界線に沿って、第1端部C1に向かって延在していてもよい。第1段差部2の延在方向は、主切れ刃23とほぼ平行であってもよい。第1段差部2は、基準面1に連なっていてもよい。第1段差部2は、第4傾斜面4に連なっていてもよい。
図9に示されるように、主切れ刃23と、第2すくい面部20と、第3傾斜面31とを横切る断面において、第1段差部2は、立ち上がり面40と、頂面42と、第6傾斜面43とにより規定されていてもよい。立ち上がり面40は、第3傾斜面31から頂面42に向かって立ち上がる。第6傾斜面43は、第4傾斜面4から頂面42に向かって立ち上がる。第1段差部2は、第3傾斜面31から立ち上がり、かつ第4傾斜面4から立ち上がる突起部であってもよい。図9の断面において、基準面1に対する第6傾斜面43の傾斜角は、正の角度である。基準面1に対する立ち上がり面40の傾斜角は、負の角度である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る切削インサート100の構成について説明する。第2実施形態に係る切削インサートは、主に、第2段差部を有している点において第1実施形態に係る切削インサートと異なっており、その他の構成については第1実施形態に係る切削インサートとほぼ同じである。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に第2実施形態の切削インサートの構成について説明する。
図12に示されるように、第2すくい面部20には、第2段差部16が設けられている。平面視において、第2段差部16は、主切れ刃23の延在方向に交差する方向に延在している。具体的には、第2段差部16は、主切れ刃23の延在方向に対してほぼ垂直な方向に延在している。第2段差部16は、主切れ刃23に連なっていてもよいし、主切れ刃23から離間していてもよい。一方、平面視において、第1段差部2は、サラエ刃13の延在方向に交差する方向に延在している。具体的には、第1段差部2は、サラエ刃13の延在方向と対してほぼ垂直な方向に延在している。第2段差部16は、第1段差部2と連なっていてもよいし、第1段差部2から離間していてもよい。
図13に示されるように、側面6は、サラエ刃13と連なる第1側部61と、コーナ切れ刃33と連なる第3側部63とを含んでいる。サラエ刃13は、第1サラエ刃部13aと、第2サラエ刃部13bとを有している。第1サラエ刃部13aは、コーナ切れ刃33側にある。第2サラエ刃部13bは、第1サラエ刃部13aと連なる。第2サラエ刃部13bは、第1サラエ刃部13aに対してコーナ切れ刃33と反対側にある。第1サラエ刃部13aは、第2サラエ刃部13bとコーナ切れ刃33との間に位置する。
図13に示されるように、第1側部61に対して垂直な方向から見て、基準面1に平行な直線1aに対する第1サラエ刃部13aの傾斜角θ3は、基準面1に平行な直線1bに対する第2サラエ刃部13bの傾斜角θ4よりも大きい。言い換えれば、第1側部61に対して垂直な方向から見て、サラエ刃13は、その傾きが変化する変曲点を有する。第1サラエ刃部13aと第2サラエ刃部13bとの境界部13cが変曲点となる。基準面1に平行な直線1aに対する第1サラエ刃部13aの傾斜角θ3は、たとえば10°以上60°以下であってもよいし、15°以上55°以下であってもよい。傾斜角θ3から傾斜角θ4を引いた値は、たとえば5°以上であってもよいし、10°以上であってもよい。基準面1に対して垂直な方向において、第1サラエ刃部13aと第2サラエ刃部13bとの境界部13cと、コーナ切れ刃33の最低位置との距離Dは、たとえば0.04mm以上0.5mm以下である。
図14に示されるように、側面6は、主切れ刃23と連なる第2側部62を含んでいる。主切れ刃23は、第1主切れ刃部23aと、第2主切れ刃部23bとを有している。第1主切れ刃部23aは、第2主切れ刃部23bに対してコーナ切れ刃側にある。第2主切れ刃部23bは、第1主切れ刃部23aと連なる。第2主切れ刃部23bは、第1主切れ刃部23aに対してコーナ切れ刃33と反対側にある。第1主切れ刃部23aは、第2主切れ刃部23bと、コーナ切れ刃33との間に位置する。
図14に示されるように、第2側部62に対して垂直な方向から見て、基準面1に平行な直線1cに対する第1主切れ刃部23aの傾斜角θ5は、基準面1に平行な直線1dに対する第2主切れ刃部23bの傾斜角θ6よりも大きい。言い換えれば、第2側部62に対して垂直な方向から見て、主切れ刃23は、その傾きが変化する変曲点を有する。第1主切れ刃部23aと、第2主切れ刃部23bとの境界部23cが変曲点となる。基準面1に平行な直線1aに対する第1主切れ刃部23aの傾斜角θ5は、たとえば10°以上60°以下であってもよいし、15°以上55°以下であってもよい。図14に示されるように、第2主切れ刃部23bは、第1主切れ刃部23aと第2主切れ刃部23bとの境界部23cから離れるにつれて、基準面1に垂直な方向における高さが低くなるように延在している。基準面1に対して垂直な方向において、第1主切れ刃部23aと第2主切れ刃部23bとの境界部23cと、主切れ刃23の最低位置23dとの距離Eは、たとえば0.04mm以上0.5mm以下である。
図15は、サラエ刃13と平行な方向における第1端部C1と第2端部C2との中点MP(図12参照)を通り、かつ主切れ刃23に平行な断面である。図15に示されるように、第2すくい面部20は、第1領域20aと、第2領域20bと、立ち上がり面20cとを有している。第1領域20aは、第3すくい面部30と連なる。第2領域20bは、第1領域20aに対して第3すくい面部30とは反対側にある。第1領域20aは、第2領域20bと、第3すくい面部30との間にある。第2すくい面部20には、第1領域20aから立ち上がり第2領域20bに連なる第2段差部16が設けられている。第2段差部16は、立ち上がり面20cと、立ち上がり面20cに連なる第2領域20bとにより規定されている。図15の断面において、基準面1に平行な方向における第2段差部16とコーナ切れ刃33との距離Iは、たとえば1.5mmである。なお、より具体的には、第2段差部16とコーナ切れ刃33との距離Iとは、立ち上がり面20cと第2領域20bとの境界部20dと、コーナ切れ刃33との距離である。第2段差部16とコーナ切れ刃33との距離Iは、第1段差部2と第2端部C2との距離L(図8参照)よりも大きくてもよい。
図15の断面に示されるように、第1領域20aは、コーナ切れ刃33から離れるにつれて、基準面1に対して垂直な方向D4における高さが低くなるように延在している。立ち上がり面20cは、コーナ切れ刃33から離れるにつれて、基準面1に対して垂直な方向D4における高さが高くなるように延在している。第2領域20bは、コーナ切れ刃33から離れるにつれて、基準面1に対して垂直な方向D4における高さが低くなるように延在している。図15に示す断面(つまり、中点MPを通り、かつ主切れ刃23に平行な断面)において、基準面1に対して垂直な方向D4における第2段差部16の高さFは、たとえば0.04mm以上0.5mm以下である。第2段差部16の高さFは、基準面1に対して垂直な方向D4における第2すくい面部20の最低位置37と、立ち上がり面20cと第2領域20bとの境界部20dとの距離である。基準面1に平行な面に対する第2段差部16の立ち上がり面20cの傾斜角θ7は、たとえば10°以上60°以下である。
図16は、第2端部C2を通り、かつサラエ刃13に平行な断面である。図16に示されるように、すくい面9には、第3すくい面部30から立ち上がって第1すくい面部10に連なる第1段差部2が設けられている。第1段差部2は、立ち上がり面40と、立ち上がり面40に連なる第1すくい面部10とにより規定されている。図16の断面において、第2端部C2から離れるにつれて、第1すくい面部10は単調に高くなる。基準面1に平行な面に対する第2段差部16の立ち上がり面20cの傾斜角θ7(図15参照)は、基準面に平行な面に対する第1段差部2の立ち上がり面40の傾斜角θ8(図16参照)よりも小さくてもよい。基準面1に対して垂直な方向D4における第1段差部2の高さGは、たとえば0.04mm以上0.5mm以下である。第1段差部2の高さGは、基準面1に対して垂直な方向D4における第3すくい面部30の最低位置38と、立ち上がり面40と第1すくい面部10との境界部41との距離である。基準面1に平行な面に対する第1段差部2の立ち上がり面40の傾斜角θ8は、たとえば10°以上60°以下である。
次に、本実施形態に係る切削インサート100の作用効果について説明する。
本実施形態に係る切削インサート100によれば、第1段差部2が、コーナ切れ刃33付近における切屑102が流出することを阻害するように作用する。そのため、コーナ切れ刃33付近における切屑部分の流出速度V1は、主切れ刃23付近における切屑部分の流出速度V2よりも低くなる。結果として、切屑102の流出方向が、フライスカッタボディの内周方向のベクトル成分を含む方向D1になる。よって、切屑102が、工作物70の加工後(加工済)の側面72に接触することを抑制することができる。
また本実施形態に係る切削インサート100によれば、切屑102が工作物70の加工前(未加工)の上面73に接触することを抑制することができる。結果として、上面73に擦過痕が残ることを抑制することができる。さらに切屑102が側面72に接触することを抑制することができるため、切屑102は良好に排出される。結果として、切屑102がサラエ刃での加工面である工作物70の底面71に接触することを抑制することができる。結果として、工作物70の底面71において擦過痕が形成されることを抑制することができる。さらに、切屑102が切削インサート100の側面6に接触することを抑制することができる。結果として、切削インサート100の側面6に擦過痕が形成されることを抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。