本発明に係る冷蔵庫の実施形態例を,図1〜図8を参照しながら説明する。まず,本実施形態例の冷蔵庫の構成を,図1〜図5を参照しながら説明する。図1は本実施形態例の冷蔵庫の正面外形図,図2は本実施形態例の冷蔵庫の庫内の構成を表す断面図であり,図1中に示すA−A断面を矢視方向に見た図である。図3は本実施形態例の冷蔵庫の冷凍サイクル構成を表す図である。図4は本実施形態例の冷蔵庫の冷却器付近の構成を表す拡大断面図,図5は本実施形態例の冷蔵庫の冷却器付近の構成を表す拡大断面図であり,図4中に示すB−B断面を矢視方向に見た図である。
図1に示すように本実施形態例の冷蔵庫は、冷蔵庫本体1に上方から,冷蔵室2,製氷室4及び上段冷凍室5,下段冷凍室6,野菜室8を備えている。製氷室4と上段冷凍室5は,冷蔵室2と下段冷凍室6との間に左右に並べて設けられている。冷蔵室2及び野菜室8は,4℃程度の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また,製氷室4,上段冷凍室5及び下段冷凍室6は,−18℃程度の冷凍温度帯の貯蔵室である(以下,製氷室4,上段冷凍室5,下段冷凍室6の総称を冷凍室7とする)。
冷蔵室2には,前方に左右に分割された観音開き型の冷蔵室扉2a,2bが備えられている。製氷室4,上段冷凍室5,下段冷凍室6,野菜室8には,それぞれ引き出し式の製氷室扉4a,上段冷凍室扉5a,下段冷凍室扉6a,野菜室扉8aが備えられている。
図2に示すように,本実施形態例の冷蔵庫の庫外と庫内は,外箱1aと内箱1bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体50により隔てられている。また,本実施形態例の冷蔵庫には,背面,両側面に真空断熱材60が実装されている(両側面は不図示)。
冷蔵室扉2a,2bの貯蔵室内側には,複数の扉ポケット47,冷蔵室2内には複数の棚46が備えられている。また,製氷室4,上段冷凍室5,下段冷凍室6及び野菜室8は,それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉4a,5a,6a,8aと一体に前後方向に移動する収納容器4b,5b,6b,8bが備えられている。扉4a,5a,6a,8aは,それぞれ図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより,収納容器4b,5b,6b,8bが引き出せるようになっている。
図2に示すように本実施形態例の冷蔵庫では,冷蔵室2と,上段冷凍室5及び製氷室4(図1参照)とが上部断熱仕切壁51によって隔てられ,下段冷凍室6と野菜室8とが下部断熱仕切壁52によって断熱的に隔てられている。なお,冷蔵室2の最下段(上側断熱仕切り壁51の上部)には,−1〜+1℃程度に維持されるチルド室3が備えられている。また、冷凍室7の背部に冷却器収納室9を備え,冷却器収納室9内には冷却手段として冷却器21を備えている。また,冷却器21の上方には,送風手段として庫内送風機22を備えている。冷蔵室2,冷凍室7,野菜室8への送風経路には,それぞれ冷蔵室ダンパ24,冷凍室ダンパ26,野菜室ダンパ(不図示)を備えており,各室への送風が制御される。
冷蔵室ダンパ24が開放状態の場合,庫内送風機22により昇圧された冷気は,冷蔵室送風ダクト11を流れ,冷蔵室吐出口31から冷蔵室2に吹き出す。冷蔵室2を冷却して温度が上昇した冷気は,冷蔵室戻り口(不図示),冷蔵室戻りダクト12(図5参照)を介して冷却器収納室9に戻り,冷却器21と熱交換して再び低温冷気となる。
冷凍室ダンパ26が開放状態の場合,庫内送風機22により昇圧された低温冷気は,冷凍室送風ダクト13を流れ,冷凍室吐出口33から冷凍室7に吹き出す。冷凍室7を冷却して温度が上昇した冷気は,冷凍室戻り口36を介して冷却器収納室9に戻り,冷却器21と熱交換して再び低温冷気となる。
野菜室ダンパ(不図示)が開放状態の場合,庫内送風機22により昇圧された低温冷気は,野菜室送風ダクト(不図示)を流れ,野菜室吐出口(不図示)から野菜室8に吹き出す。野菜室8を冷却して温度が上昇した冷気は,野菜室戻り口37,野菜室戻りダクト17を介して冷却器収納室9に戻り,冷却器21と熱交換して再び低温冷気となる。
冷蔵室2の背部,冷凍室7の背部,野菜室8の背部には,それぞれ冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43が備えられており,各室の温度を検知できるようになっている。断熱箱体50の天井面前方には,庫外の温湿度を検知する庫外温湿度センサ(不図示)が備えられている。また,冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉4a,上段冷凍室扉5a,下段冷凍室扉6a,野菜室扉8の各扉の開閉状態は,冷蔵室扉センサ(不図示),製氷室扉センサ(不図示),上段冷凍室扉センサ(不図示),下段冷凍室扉センサ(不図示),野菜室扉センサ(不図示)により検知できるようになっている。
なお,上部断熱仕切壁51により区画された領域の左端には,製氷用の水を貯留する製氷水タンク(不図示)が備えられている。製氷水タンク内の水は,ポンプ(不図示)を駆動することにより,配管(不図示)を介して製氷室4内に備えられた製氷皿(図示せず)に供給される。
図3に示すように,本実施形態例の冷蔵庫の冷凍サイクルは,圧縮機23,放熱器70(フィンチューブ型熱交換器),放熱パイプ71,結露抑制パイプ72,キャピラリチューブ74(以下,放熱器70,放熱パイプ71,結露防止パイプ72の総称として放熱手段73と呼ぶことがある),冷却器21が冷媒配管77で接続されることで構成される。冷却器21出口から圧縮機23に向かう配管の一部77aはキャピラリチューブ74と接触させて熱交換するようにしている。なお,放熱パイプ71とは,外箱1aと内箱1bの間であって外箱1a面に接するように備えられた冷媒管(図2中に不図示)である。また,結露抑制パイプ72とは,断熱箱体10の上部断熱仕切壁51の前面や下部断熱仕切壁52の前面等に配設された冷媒管(図2参照)であり,管内を流れる高温冷媒による加熱作用で結露を抑制するために配設されるものである。
圧縮機23により昇圧された高温高圧冷媒は,放熱手段73を流れて放熱し,減圧手段であるキャピラリチューブで減圧されることで低温低圧冷媒となる。低温低圧冷媒が冷却器21に流れ,空気と熱交換して各貯蔵室を冷却するための低温冷気が生成される。なお,冷媒はイソブタンを例にして説明する。
図4に示すように,冷却器収納室9は,背面側の内箱1b,前面側の前面仕切壁27の間に形成される。冷却器収納室9に収納されている冷却器21は流れ方向に7段で,高さ寸法Hより,奥行き寸法Dが小さいフィンチューブ型熱交換器である(本実施形態例の冷蔵庫ではH=210mm、D=77mm)。このように高さ寸法Hより奥行き寸法Dを小さくすることで,冷却器収納室9の前方の貯蔵室(本実施形態例の冷蔵庫では冷凍室7)の有効内容積を大きくできる。
冷却器21下部の前面側には前面仕切壁27と冷却器21の間にバイパス流路55aが,背面側には内箱1bと冷却器21の間にバイパス流路55bがそれぞれ設けられている。なお,本実施形態例の冷蔵庫1では,バイパス流路55aの流路幅L1=5mm,バイパス流路56bの流路幅L2=7mmである。このようにバイパス流路の流路幅を冷却器の奥行き寸法D(=77mm)の10%以下の寸法にしているので、冷却器21への着霜量が少ない状態において,多くの気流が冷却器21をバイパスして流れることによる冷却効率低下を抑えられる。
図5に示すように,本実施形態例の冷蔵庫1は,冷却器21の下方に除霜ヒータ56を備えている。ここで,除霜ヒータ56の幅寸法W2を,冷却器21のフィン設置部21aの幅寸法W1より長くしている(W2>W1)。これにより冷却器21の全体を効率良く加熱できるようにしている。なお,本実施形態の冷蔵庫1では,W1=335mm,W2=350mmである。
除霜ヒータ56は,抵抗線をガラス管56aで覆い,さらにガラス管56aの外周にアルミニウム製の放熱フィン56bを配設することにより,除霜ヒータ通電中にガラス管表面温度がイソブタンの発火温度(約460℃)より低い温度に抑えるようにしている。
霜が融解することで生じた除霜水は,冷却器収納室9の下部に備えられた樋57に流れ落ち,排水管58(図2参照)を介して機械室10(図2参照)に備えられた蒸発皿59(図2参照)に達する。蒸発皿59内の除霜水は,機械室10内に備えられた圧縮機23(図2参照)及び放熱器70(図3参照)の放熱と,機械室10内に備えられた庫外送風機(不図示)による通風作用により蒸発する。なお,除霜ヒータ56の上部には上部カバー53が備えられており,融解水や冷却器21から離脱した霜が除霜ヒータ56のガラス管56aに当たることを防いでいる。
冷却器21の1段目(最上流の段)のフィンピッチは,2段目以降の段(2〜7段)のフィンピッチより大きくしている(本実施形態例の冷蔵庫1では1段目のフィンピッチは10mm,2〜7段目のフィンピッチは5mm)。冷却器21の1段目は,物質伝達率が高く,高湿な空気が流入することから霜が成長しやすいので,フィン間の隙間を2段目以降より大きくすることでフィン間の流路が閉塞し難くして,熱交換性能をより長い時間維持できるようにしている。なお,フィン間の流路が閉塞し難くするには,少なくとも,最上流の段(1段目)のフィンピッチを,最下流の段(本実施形態例の冷蔵庫1では7段目)のフィンピッチ以上とすれば良く,本実施形態例の構成に限定されるものではない。
キャピラリチューブ74(図3参照)により減圧された低温低圧冷媒は,冷却器21の背面側上部の配管から入り,冷却器21の背面側に左右にわたって設けられた配管を上方から下方に順次流れ,1段目(最下段)において冷却器21の前面側の配管に移る。続いて,冷却器21の前面側に左右にわたって設けられた配管を下方から上方に順次流れて冷却器21の前面側上部から流れ出る。なお,冷却器21の出口配管には気液分離器28が備えられており,液冷媒が圧縮機23に吸い込まれて圧縮されることを防いでいる。
冷蔵室2からの戻り空気は,冷蔵室戻りダクト12を流れ,冷蔵室戻りダクト開口12aを介して,冷却器21の下部側方から冷却器収納室9に流入する。冷凍室7からの戻り空気は,冷却器21の下部前方の冷凍室戻り口36(図4参照)から冷却器収納室9に流入する。また,野菜室8からの戻り空気は野菜室戻りダクト17(図2参照)を介して冷却器21の下部前方右側(正面から見た場合は左側)の野菜室戻りダクト開口17aから冷却器収納室9に流入する。
本実施形態例の冷蔵庫1は,冷蔵温度帯の冷蔵室2と野菜室8への送風量と,冷凍温度帯の冷凍室7への送風量の比率は約3:7であり,低温に維持される冷凍室7への送風量が多くなるようにしている。また,冷凍室戻り口36の開口幅寸法W3を,冷却器21のフィン設置部21aの幅寸法W1よりも大きくすることで(W3>W1),特に送風量が多い冷凍室7からの戻り空気が効率良く冷却器7で熱交換できるようにしている。
また,本実施形態例の冷蔵庫1は,冷蔵室戻りダクト開口12aを,冷却器21の幅W1(フィン設置部幅)の中心面S1より右(正面から見た場合は左)に設け,野菜室戻りダクト開口17aを中心面S1より左(正面から見た場合は右)に設けている。これにより,冷却器21に偏った着霜が生じることを抑制している。
冷却器21上方には庫内送風機22が設置され,その設置位置は,中心面S1に略一致するようにしている。具体的には冷却器の中心面S1が庫内送風機22の翼幅W4の範囲を通過するようにしている。これにより,冷却器21における冷気流れの偏りが生じ難くなる。
冷却器21の両側には,戻り空気が冷却器21のフィン設置部21aに流入せずに,冷却器21の両側の配管ターン部21bを流れたり,フィン設置部21aに流入した空気が配管ターン部21bに漏れることを抑制するための冷却器流路仕切部材21c(アルミニウム製)を備えている。これにより,冷却器21と空気の間の熱交換効率を高めている。
中心面S1より右側の冷却器21の上部の吸込配管(正面から見た場合は左側)には冷却器温度センサ44(第一除霜完了検知手段)が備えられており,冷却器の温度を検知できるようになっている。また,冷却器21の下流の中心面S1より左側(正面から見た場合は右側)の前面仕切壁27表面には,庫内送風機22近傍の前面仕切壁の温度を検知する前面仕切壁温度センサ45(第二除霜完了検知手段)が備えられている。なお,本実施形態例の冷蔵庫1では,後述する除霜完了(ヒータ通電終了)時の前面仕切壁温度センサ45の検知温度と,庫内送風機22のマウスリング22aの表面温度が3℃以内で一致する位置に前面仕切壁温度センサ45を設けている。
本実施形態例の冷蔵庫1は,冷蔵室ダンパ24(図2参照),野菜室ダンパ(不図示),冷凍室ダンパ26(図2参照)の開閉状態によって冷蔵室2,野菜室8,冷凍室7への送風が制御され,冷蔵室のみに送風する「冷蔵室単独運転」,野菜室のみに送風する「野菜室単独運転」,冷凍室のみに送風する「冷凍室単独運転」,冷蔵室と野菜室に送風する「冷蔵野菜運転」,冷蔵室,野菜室,冷凍室の全てに送風する「冷蔵野菜冷凍運転」の5種類の冷却運転モードを備えている。冷蔵室2,野菜室8,冷凍室7の各室は,これらの5つの冷却運転モードを,冷蔵室温度センサ41,野菜室温度センサ43,冷凍室温度センサ42の検知情報に基づいて適宜切り替えることで所望の温度帯に維持される。
本実施形態例の冷蔵庫は,冷蔵室2,チルド室3,冷凍室7や野菜室8の温度設定をする温度設定器等(図示せず)を備えている。
また冷蔵庫本体1の天井壁上面側にはCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板49が配置されている(図2参照)。制御基板49は,前記した冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43,庫外温湿度センサ,冷却器温度センサ44,前面仕切壁温度センサ45,及び,各扉センサ、冷蔵室扉2aaに設けられた温度設定器等と接続される。圧縮機23のON/OFFや回転速度制御,冷蔵室ダンパ24,冷凍室ダンパ26,及び,野菜室ダンパ27を個別に駆動するアクチュエータ(不図示)の制御,庫内送風機22のON/OFF制御や回転速度制御,前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御は,前記ROMに予め搭載されたプログラムにより行われる。
次に,本実施形態例の冷蔵庫の制御について図6〜図8を参照しながら説明する。図6は本実施形態例の冷蔵庫の制御を表すフローチャート,図7は本実施形態例の冷蔵庫の制御を表すタイムチャートである。図8は除霜開始条件が成立する条件を示す表である。
図6に示すように,本実施形態例の冷蔵庫は,電源の投入により(スタート),圧縮機23が駆動して冷却運転を開始する(ステップS101)。
本実施形態例の冷蔵庫の冷却運転は,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43及び庫外温湿度センサの検知情報に基づいて圧縮機23,庫内送風機22,庫外送風機のオン/オフ制御や回転速度制御と,冷蔵室ダンパ24,冷凍室ダンパ26,野菜室ダンパの開閉状態の制御によって,各室を設定温度(例えば,冷蔵室,野菜室は4℃程度,冷凍室は−18℃程度)に維持する運転が行われる。
冷却運転中には,除霜開始条件の判別が行われる(ステップS102)。本実施形態例の冷蔵庫1では,図8に示す条件が満たされた場合に除霜開始条件が成立する(ステップS102がYes)。ステップS102が不成立の場合,冷却運転が継続される(ステップS101に戻る)。
例えば,(a)庫外温度(Tout)がTout>35℃,庫外湿度(相対湿度)(RHout)がRHout≦50%において,扉開閉累積時間(t1)がt1≧20分且つ冷却運転継続時間(t2)(前回の除霜完了後からの経過時間,または,除霜運転未実施の場合の電源投入後からの経過時間)がt2≧12時間の場合,または,冷却運転継続時間(t2)がt2≧48時間の何れかが満足された場合に除霜開始条件が成立する。他の成立条件は,(b)Tout>35℃,50<RHout≦80%において,t1≧15分且つt2≧12時間,または,t2≧48時間の何れかが満足された場合,(c)Tout>35℃,RHout>80%において,t1≧10分且つt3≧12時間,または,t2≧48時間の何れかが満足された場合,(d)20℃<Tout≦35℃,RHout≦50%において,t1≧25分且つt2≧12時間,または,t2≧72時間の何れかが満足された場合,(e)20℃<Tout≦35℃,50<RHout≦80%において,t1≧20分且つt3≧12時間,または,t2≧72時間の何れかが満足された場合,(f)20℃<Tout≦35℃,RHout>80%において,t1≧15分且つt3≧12時間,または,t2≧72時間の何れかが満足された場合,(g)Tout≦20℃,RHout≦50%において,t1≧50分且つt3≧12時間,または,t2≧96時間の何れかが満足された場合,(h)Tout≦20℃,50<RHout≦80%において,t1≧40分且つt3≧12時間,または,t2≧96時間の何れかが満足された場合,(i)Tout≦20℃,RHout>80%において,t1≧30分且つt3≧12時間,または,t2≧96時間の何れかが満足された場合である。
本実施形態例の冷蔵庫1は,3つの除霜手段(除霜手段1、除霜手段2、除霜手段3)を備えている。1つ目の除霜手段(除霜手段1)は、庫内送風機22を駆動することによって冷蔵室と野菜室を冷却しながら除霜するものであり、「圧縮機停止状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ閉鎖状態」にて霜を解かすものである。2つ目の除霜手段(除霜手段2)は、除霜ヒータ56通電状態で庫内送風機22を駆動し,冷蔵室と野菜室を冷却しながら除霜するものであり、「圧縮機停止状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ通電状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍温室ダンパ閉鎖状態」にて霜を解かすものである。3つ目の除霜手段(除霜手段3)は、除霜ヒータ22の通電のみによって除霜するものであり、「圧縮機停止状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ通電状態、冷蔵室ダンパ閉鎖状態、冷凍室ダンパ開放状態」にて霜を解かすものである。
本実施形態例の冷蔵庫1は,上記除霜手段1〜3を順次切り替える「省エネ除霜モード」と,除霜手段3のみによる「高信頼性除霜モード」の2つの除霜モードを備えており,図8の(d)(e)(g)(h)(i)が成立した場合には「省エネルギー除霜モード」,(a)(b)(c)(f)が成立した場合には「高信頼性除霜モード」が選択される。
「省エネ除霜モード」の場合(ステップS103がNo),続いて「圧縮機駆動状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ閉鎖状態、野菜室ダンパ閉鎖状態,冷凍室ダンパ開放状態」で冷凍室プリクール運転が実施される(ステップS104)。これにより除霜中に冷却されない冷凍室7を事前に十分冷却することができ,除霜中に冷凍食品や氷が解けるといった不具合が生じ難くなる。
冷凍室プリクール運転を所定時間(本実施形態例の冷蔵庫1では30分)実施後,続いて除霜手段1(圧縮機停止状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ閉鎖状態)による除霜運転が実施される(ステップS105)。冷却器温度センサ44の検知温度TD1が−3℃に到達すると(ステップS106),除霜手段2(圧縮機停止状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ通電状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍温室ダンパ閉鎖状態)による除霜運転に移行する(ステップS107)。冷却器温度センサ44の検知温度TD1が+2℃に到達すると(ステップS108),さらに除霜手段3(圧縮機停止状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ通電状態、冷蔵室ダンパ閉鎖状態、冷凍室ダンパ開放状態)に移行する(ステップS109)。除霜手段3による除霜は,冷却器温度センサ44の検知温度TD1が+5℃以上,且つ,前面仕切壁温度センサ45の検知温度TD2が+3℃以上になった場合に除霜完了と判定し(ステップS110),冷却器収納室9内の融解水の排水を促すために「圧縮機停止状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ開放状態」とする「オフタイム」を所定時間(本実施形態例の冷蔵庫1では3分間)確保する(ステップS111)。なお,除霜完了の判定は,「冷却器温度センサ44の検知温度TD1と,前面仕切壁温度センサ45の検知温度TD2の両者が0℃より高い」という条件を満足していれば良く,本実施形態例の冷蔵庫1とは異なる温度であっても良い。ただし,除霜ヒータ56からの距離が遠い前面仕切壁温度センサ45TD2の判定基準温度を,冷却器温度センサ44の検知温度TD1より低くすることで,過熱を抑えることができ,省エネルギー性能を高くすることができる。
続いて貯蔵室に高温空気が送風されることを避けるために,庫内送風機22停止状態で圧縮機を駆動し,「圧縮機停止駆動状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ開放状態」とすることで冷却器収納室9内の冷却を行う「庫内送風機停止運転」を所定時間(本実施形態例の冷蔵庫1では2分間)(ステップS112)実施後,冷却運転を再開する(ステップS101)。
ステップS103において「高信頼性除霜モード」が成立した場合(ステップS103がYes),続いて,「圧縮機駆動状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ開放状態」で全室プリクール運転が実施される(ステップS201)。「高信頼性除霜モード」では,除霜運転中に貯蔵室の冷却は行われないが,全室プリクールにより除霜中に冷却されない冷凍室7を事前に十分冷却することができ,除霜中に各貯蔵室の温度が過度に上昇することを防ぐことができる。
全室プリクール運転を所定時間(本実施形態例の冷蔵庫1では30分)実施後,ステップS109に移行し,除霜手段3(圧縮機停止状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ通電状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ開放状態)による除霜運転が実施される。以後は「省エネ除霜モード」と同様の制御ステップとなる。
図7は,冷蔵庫を32℃,相対湿度70%の室内に設置した際の制御状態と庫内要部の温度変化を表すタイムチャートである。
図7に示すように,経過時間taにおいて除霜開始条件が満足され(ここでは冷却運転継続時間t2が48hに達し,除霜運転開始条件が成立している(図8の(e)の条件により図5のステップ102がYes)。図8の(d)(e)(g)(h)(i)が成立した場合には「省エネルギー除霜モード」が選択されるので(図6ステップS103がNo),続いて「圧縮機駆動状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ閉鎖状態、野菜室ダンパ閉鎖状態,冷凍室ダンパ開放状態」で冷凍室プリクール運転が実施される(図6のステップS104)。これにより冷凍室7が冷却されて温度が下がり,冷却されない冷蔵室2,野菜室8の温度が上昇する。
経過時間tbにおいて冷凍室プリクール運転継続時間(30分)が経過し,除霜手段1(圧縮機停止状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ閉鎖状態)による除霜運転が実施される(図6のステップS105)。除霜手段1による除霜では,主に霜の顕熱と熱交換した空気で冷蔵室2,野菜室8を冷却するように庫内送風機22を制御(具体的には1500min-1で駆動)するので,除霜手段1による除霜中の冷蔵室2,野菜室8の温度は低下している。これは,ヒータを用いずに庫内の熱負荷で霜を加熱している状態となるため省エネルギー性能が高い除霜となる。
経過時間tcにおいて,冷却器温度センサ44の検知温度TD1が−3℃に到達し(図6のステップS106がYes),除霜手段2(圧縮機停止状態、庫内送風機駆動状態,除霜ヒータ通電状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍温室ダンパ閉鎖状態)による除霜に移行している(図6のステップS107)。除霜手段2による除霜では,除霜ヒータ56に通電することにより除霜を加速しつつ,主に霜の潜熱(冷却器温度(霜温度)が0℃でほぼ一定)と熱交換した空気で冷蔵室2,野菜室8を冷却するように除霜ヒータと庫内送風機22を制御(具体的には除霜ヒータ通電量を150W,庫内送風機回転数を1200min-1で駆動)するので,除霜手段2による除霜中の冷蔵室2,野菜室8の温度は維持されている。除霜手段2による除霜中の冷蔵室2,野菜室8は冷却されることで維持されている。これは,ヒータに通電しながら庫内の熱負荷も利用して霜を加熱している状態となるため省エネルギー性能が高く,また,比較的短い時間で霜の融解に必要な熱量を与えることが可能となる。
経過時間tdにおいて,冷却器温度センサ44の検知温度TD1が+2℃に到達し(図6のステップS108がYes),除霜手段3(圧縮機停止状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ通電状態、冷蔵室ダンパ閉鎖状態、冷凍室ダンパ開放状態)による除霜に移行している(図6のステップS109)。除霜手段2は除霜ヒータ56への通電のみによる除霜となるため,冷蔵室2,野菜室8,冷凍室7は冷却されず温度は上昇する。また,冷却器温度は除霜ヒータ56により加熱されるので温度が上昇する。また,前面仕切壁温度センサ45の検知温度TD2は,経過時間tdにおいては約0℃となっているが,除霜手段3による除霜運転中にプラス温度に上昇しはじめている。
経過時間teにおいて,冷却器温度センサ44の検知温度TD1が+6℃,前面仕切壁温度センサ45の検知温度TD2が+3℃に到達し(図6のステップS110がYes),除霜ヒータ56への通電が停止され,「オフタイム(圧縮機停止状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ開放状態)」に移行している(図6のステップS111)。
さらに経過時間tfにおいて,「オフタイム」の設定時間(3分)が経過したことにより,庫内送風機22停止状態で圧縮機23が駆動される「庫内送風機停止運転(圧縮機停止駆動状態、庫内送風機停止状態,除霜ヒータ停止状態、冷蔵室ダンパ開放状態、野菜室ダンパ開放状態,冷凍室ダンパ開放状態)」に移行している(図6のステップS112)。
冷蔵室2,野菜室8,冷凍室7は「オフタイム」から「庫内送風機停止運転」の間は,冷却されないため温度が上昇している。一方,冷却器温度と前面仕切壁表面温度は「オフタイム」中に上昇するが,「庫内送風機停止運転」では,冷却器に低温冷媒が流れるため,冷却器温度や前面仕切壁表面温度は低下している。
経過時間tgにおいて,「庫内送風機停止運転」の設定時間(2分)が経過したことにより,庫内送風機22が駆動され,冷却運転(冷凍運転)が再開されている(図6のステップS101)。
以上のように本実施形態例の冷蔵庫では,冷却器21の下流流路の庫内側の仕切壁表面の温度を検知する温度センサ(前面仕切壁温度センサ45)を備えており,その検知情報に基づいて除霜完了の判定を行っている。冷気流路を形成する壁面のうち庫外側に位置する壁面(例えば本実施形態例の冷蔵庫1における冷却器収納室9の背面)は,除霜運転中に庫外からの熱侵入により温度上昇しやすいが,庫内側に位置する壁面(貯蔵室や風路との境界を形成する壁面)は,低温の貯蔵室の影響で温度が上昇し難い。一般に冷蔵庫における除霜運転では,冷却器及びその周辺部の霜が融解したと推定される場合に除霜完了と判定されるため,除霜完了検知手段(温度センサ)の設置位置は,霜が解け難い箇所に設置することが望ましい。本実施形態例の冷蔵庫では,温度が上昇し難い冷却器21の下流の庫内側の仕切壁表面の温度を検知する温度センサ(前面仕切壁温度センサ45)を備え,その検知情報に基づいて除霜完了の判定を行う。これにより,霜が解け難い箇所の温度を検知できるので,過度に余裕度を持った除霜完了判定基準温度にすることなく,除霜運転を行うことができる。したがって,省エネルギー性能と信頼性がともに高い冷蔵庫を提供することができる。
本実施形態例の冷蔵庫では,冷却器温度を検知する温度センサ(冷却器温度センサ44)と,冷却器21の下流流路の温度を検知する温度センサ(前面仕切壁温度センサ45)を備えており,これらのセンサの検知情報に基づいて除霜完了の判定を行っている。具体的には,冷却器温度センサ44の検知温度TD1と,前面仕切壁温度センサ45の検知温度TD2の両者が0℃より高い所定温度に到達した場合に,除霜完了と判定する。なお,冷却器温度センサ44(第一除霜完了検知手段)と,前面仕切壁温度センサ45(第二除霜完了検知手段)を備えており,第一除霜完了検知手段の表面温度と,第二除霜完了検知手段の表面温度がともに0℃より高い所定温度になった場合に除霜運転(ヒータ通電)を終了すれば,第一除霜完了検知手段の検知温度と,第二除霜完了検知手段の検知温度の検知情報に基づく制御とみなすことができる。
これにより,霜が成長しやすい冷却器と,温度が上昇し難い冷却器の下流流路の両方について,除霜完了判定基準値に過度な余裕度を持つ必要がなくなり,過熱を抑えることができる。よって,省エネルギー性能と信頼性がともに高い冷蔵庫を提供することができる。
一般に,冷蔵庫の冷却器や冷却器の周辺への着霜の状態は,冷蔵庫の運転履歴,庫内に収納される食品の種類や量,扉開閉頻度等により多様に変化するため,冷却器への着霜量の多少,冷却器下流流路への着霜量の多少は一定にはならない。よって,従来の冷蔵庫では,冷却器の除霜状態を検知する単一の除霜完了検知手段で除霜完了を判定するために,信頼性上で最も厳しい条件,すなわち,冷却器の温度が上昇しやすく,冷却器下流流路に霜が残りやすい条件を想定して判定基準値を定めることが必要になっていた。
冷却器の温度が上昇しやすく,冷却器下流流路に霜が残りやすいのは,冷却器への着霜が比較的少なくて,冷却器下流流路に多くの着霜が生じている場合であり,冷却器温度センサ44のみによって除霜完了を判定する場合は,冷却器の下流流路に多量の着霜が生じていても十分に融解させることができる判定基準値として,例えば10℃程度とする必要があった。一方で,本実施形態例の冷蔵庫では,第一除霜完了検知手段の検知温度と,第二除霜完了検知手段の検知温度の検知情報に基づいて除霜完了を判定するので,冷却器への着霜が比較的少なくて,冷却器下流流路に多くの着霜が生じている最も厳しい条件以外の条件,例えば,冷却器への着霜が多く,冷却器下流流路への着霜が少ない,あるいは,冷却器と冷却器下流流路への着霜がともに少ない条件等で冷却器の過熱が抑えられる。例えば,本実施形態例の冷蔵庫では,冷却器下流流路の除霜が完了したと判定していた時点(前面仕切壁温度センサ45の検知温度が3℃)で,冷却器温度(冷却器温度センサ44の検知温度)は6℃であり,冷却器の過熱が抑えられていることがわかる。本実施形態例の冷蔵庫では,冷却器温度を検知する温度センサ(冷却器温度センサ44)と,冷却器21の下流流路の温度を検知する温度センサ(前面仕切壁温度センサ45)を備えており,冷却器21の幅方向の中心面を基準に分けられる領域の双方に少なくとも1つの温度検知手段を配設している。
これにより,冷却器収納室9内において,霜が成長しやすい冷却器と,温度が上昇し難い冷却器の下流流路の双方の除霜状態を効率良く検知することができる。
本実施形態例の冷蔵庫では,冷却器21の下流流路の中に設置されている可動部品(庫内送風機22)の近傍温度を仕切壁表面の温度を検知する温度センサ(前面仕切壁温度センサ45)により検知している。これにより,温度が上昇し難い冷却器の下流流路の特に可動部品(庫内送風機22)の近傍に霜の解け残りが生じるリスクを抑えることができるので,除霜完了判定基準値に過度な余裕度を持つ必要がなくなり,過熱を抑えることができる。
よって,省エネルギー性と信頼性がともに高い冷蔵庫を提供することができる。
なお,本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,冷却器21の温度を検知する温度センサや,冷却器21の下流流路の温度を検知する温度センサを複数配設しても良い。また,本実施形態例の冷蔵庫1では、冷却器21の下流流路における可動部品として庫内送風機22の温度を検知しているが、冷却器21の下流流路にある他の可動部品として例えばダンパ温度(ダンパの近傍温度)を検知する温度センサを配設しても良い。さらに,冷却器21の下流流路の庫内側に位置する壁面に保持される稼働部品に直接温度センサを配設して可動部品の温度を測定する構成としたり、可動部品や、温度が上昇し難い箇所に補助ヒータを配設して,除霜運転時に加熱するようにしても良い。また,本実施形態例の冷蔵庫1は「冷蔵室単独運転」,「野菜室単独運転」,「冷凍室単独運転」,「冷蔵野菜運転」,「冷蔵野菜冷凍運転」の5種類の冷却運転モードを備えた冷蔵庫だが,これら全てを備えていなくてもよい。
すなわち,上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。