以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明は例示である。
<貨幣処理装置の概略構成>
図1は、貨幣処理装置1の外観を示している。貨幣処理装置1は、貨幣を処理する多機能装置であって、いわゆるオープン出納システムを構成している。こうした貨幣処理装置1は、一般に、銀行やスーパーマーケットなどの分野において用いられる。
貨幣処理装置1は、複数の装置を組み合わせて構成されている。具体的に、貨幣処理装置1は、図1に示すように、紙幣を処理する紙幣処理機100と、硬貨を処理する硬貨処理機200と、新券の払出しを行うための新券払出機300と、種々の伝票を発行するプリンタ400と、貨幣処理装置1全体を制御する管理装置500と、を備えている。管理装置500は、操作者に対するヒューマンインターフェース部分である操作表示部501と、紙幣処理機100を構成する各部を制御する制御部(図示省略)とを含む。本明細書では、貨幣処理装置1が備える構成のうち、特に、紙幣の処理に関する構成について詳細に説明する。
−紙幣処理機−
初めに、紙幣処理機100の構成について説明する。
紙幣処理機100は、バラ紙幣を処理する機構と、帯封紙幣を処理する機構とが一体化された装置として構成されており、当該紙幣処理機100を利用して、紙幣の入金や出金をはじめとした、種々の処理を行うことができる。
図2は、紙幣処理機100の概略構成を示している。なお、図2では、図面左側の側面が紙幣処理機100の前面となっており、図面右側の側面が紙幣処理機100の後面となっている。
紙幣処理機100は、バラ紙幣の処理に関する構成として、箱状の筐体101と、紙幣が投入される入金部102と、バラ紙幣を収納するバラ紙幣収納部103と、紙幣を一時的に保留する一時保留部104と、バラ紙幣を出金するバラ紙幣出金部105と、搬送部106と、搬送部106に設けられかつ搬送部106により搬送された紙幣を一枚ずつ識別するように構成された識別部107とを備えている。搬送部106は、入金部102、バラ紙幣収納部103、一時保留部104、及び、バラ紙幣出金部105を相互に連結することにより、各部の間で紙幣を搬送するように構成されている。筐体101には、バラ紙幣収納部103、一時保留部104、バラ紙幣出金部105、搬送部106、及び、識別部107が収容される。
さらに、紙幣処理機100は、出金時にリジェクト紙幣を集積する出金リジェクト部117と、搬送部106に設けられ、識別部107を通過した紙幣の表裏を反転する表裏反転部108とを備えており、これらもまた、筐体101に収容されている。
さらに、紙幣処理機100は、帯封紙幣の処理に関する構成として、バラ状態の紙幣を集積する集積部109と、集積部109に集積された紙幣を所定の位置まで搬送する搬送部110と、搬送部110により搬送された紙幣を結束し、帯封紙幣を形成する結束部111と、帯封紙幣を搬送する搬送部112と、帯封紙幣を収納する帯封紙幣収納部115と、帯封紙幣を出金する帯封紙幣出金部116と、を備えている。これらもまた、筐体101に収容されており、管理装置500の制御部により制御されるように構成されている。
入金部102は、例えば入金処理の際に紙幣が投入される入金口102aを有している。入金口102aは、筐体101の前面に開口していて、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能に構成されている。さらに、入金部102は、入金口102aに投入された複数枚の紙幣を一枚ずつ、搬送部106へ繰り出す繰出し機構102bと、紙幣に混入した異物を検知するための金属検知センサ(図示省略)と、入金部102に操作者の手などが接触したことを検知するアクセス検知センサ(図示省略)とを有している。
バラ紙幣収納部103は、複数(本実施形態では4つ)、設けられており、それぞれ、スタック式の収納カセットとして構成されている。4つのバラ紙幣収納部103は、筐体101内の下方位置において、前後方向に一列に配置されており、後側に位置する3つの金種別収納部103aと、前側に位置する1つの一括収納部103bと、を有している。各バラ紙幣収納部103の出入口には、紙幣を繰り出す繰出し機構103cが設けられている。
金種別収納部103aには、それぞれ、入金部102に投入されたバラ紙幣が、金種別(本実施形態では、千円、五千円、及び、一万円)に収容されるように構成されている。一括収納部103bは、例えば、入金部102に投入された紙幣のうち、3つの金種別収納部103aに収容しきれなかった紙幣(いわゆるオーバーフロー紙幣)、重送紙幣、及び、二千円などを一括して収納するようになっている。また、出金時において識別不可であったリジェクト紙幣が、この一括収納部103bに収納される場合がある。なお、金種別収納部103aに収容する紙幣の金種は、適宜、個別に設定可能である。
バラ紙幣収納部103の手前側には、紙幣を一時的に保留するための一時保留部104が設けられている。一時保留部104は、バラ紙幣収納部103と同様に、スタック式の収納カセットとして構成されている。すなわち、一時保留部104の出入口には、紙幣を繰り出すための繰出し機構104aが設けられている。
一時保留部104は、入金処理において識別部107により識別された紙幣が、バラ紙幣収納部103に収納される前に一時的に保留されたり、出金処理においてバラ紙幣収納部103から繰り出された紙幣が、バラ紙幣出金部105に搬送される前に一時的に保留されたりするようになっている。また、一時保留部104は、筐体101前面の下部に開口している取出口101aに連通しており、この取出口101aを通じて、一時保留部104に保留している紙幣を外部へ取り出すことができるようになっている。なお、取出口101aは、筐体101の前部に設けられた下部扉101bにより開閉される。
バラ紙幣出金部105は、例えば出金処理の際にバラ紙幣が払い出される出金口105aを有している。出金口105aは、筐体101の前面において、入金口102aよりも高さ方向の下側かつ取出口101aよりも高さ方向の上側の位置に開口している。バラ紙幣出金部105は、搬送部106から出金口105aへ送り出された紙幣を集積し、複数枚の紙幣を一度に保持することができるように構成されている。なお、バラ紙幣出金部105は、例えば装置内に紙幣を取り込む入金処理や装填処理において、リジェクト紙幣であると判定された紙幣を出金して集積するように構成されている。
出金リジェクト部117は、例えば装置内から紙幣を払い出す出金処理や回収処理において、リジェクト紙幣であると判定された紙幣を集積するように構成されている。出金リジェクト部117へ出金された紙幣は、操作者が所定の操作を行うことで、外部から取り除くことができるようになっている。なお、出金リジェクト部117は、筐体101の前面において、出金口105aよりも高さ方向の下側かつ、取出口101aよりも高さ方向の上側の位置に配設されている。
搬送部106は、筐体101内において無端ループ状の搬送路106aを備えている。紙幣は、この搬送路106aに沿って図2における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送される。この搬送路106aは、詳細は省略するが、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、搬送される紙幣を検出するセンサ及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。搬送部106は、その搬送路106aに沿って、紙幣と紙幣との間に所定間隔を隔てた状態で、紙幣の一長辺が先頭になるように(紙幣の短辺に平行な方向に)紙幣を一枚ずつ搬送する。
搬送部106には、入金部102、バラ紙幣収納部103、一時保留部104、バラ紙幣出金部105及び集積部109がそれぞれ接続されている。この接続によって、搬送部106は、例えば、入金部102とバラ紙幣収納部103との間で紙幣を搬送したり、バラ紙幣収納部103と一時保留部104との間で紙幣を搬送したり、することができる。さらに、例えば、搬送部106は、制御部から制御を受けて分岐点に設けられた分岐機構(図示省略)が動作することにより、搬送路106a上を時計回り方向または反時計回り方向に搬送されている紙幣を、一時保留部104、出金口105a、出金リジェクト部117又は集積部109等の所望の構成要素に搬送することができる。具体的には、例えば、一時保留部104から繰り出された紙幣を、搬送路106a上で時計回り方向または反時計回り方向に搬送させて、所望の構成要素に送り出すことができる。
識別部107は、搬送路106a上に配設されており、搬送路106aに沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、その金種、真偽、正損、及び、表裏などを識別するように構成されている。具体的には、識別部107は、ラインセンサ、及び、磁気センサ等を有しており、紙幣の特徴を取得する。識別部107は、紙幣の特徴が、記憶している各種紙幣の特徴と一致するか否かを判定し、金種、真偽、正損、及び、表裏などを識別する。
表裏反転部108は、搬送路106a上に配設されており、識別部107による識別結果に基づいて、通過する紙幣の一枚一枚について、その表裏を整えるように構成されている。具体的には、表裏反転部108を通過する紙幣のうち、例えば裏面が上側となっている紙幣の表裏が反転されることにより、この表裏反転部108から繰り出された紙幣は、全て、表面(おもてめん)が上側となるように整えられる。同様に、表裏反転部108を通過する紙幣のうち、表面が上側となっている紙幣の表裏を反転してもよい。
入金口102aに投入された紙幣は、搬送路106aに沿って時計回り方向に搬送されるとき、識別部107、表裏反転部108、集積部109への分岐箇所(分岐機構)、バラ紙幣収納部103への分岐箇所(分岐機構)、一時保留部104への分岐箇所(分岐機構)、出金リジェクト部117への分岐箇所(分岐機構)、及び、出金口105aへの分岐箇所(分岐機構)の順で、各部を通過するように構成されている。
集積部109は、2つの集積部からなり、双方とも、結束対象の紙幣を集積するように構成されている。結束対象として集積する紙幣の金種は、適宜、設定することができる。
結束部111は、集積部109に集積された所定枚数(通常は100枚)の紙幣を結束する。具体的には、結束部111は、紙幣を帯封するためのテープ輪を作成し、該テープ輪の中へ紙幣が搬送された後にテープを引き戻し、紙幣をテープで結束する。テープで結束することで、帯封紙幣が形成される。図示は省略するが、結束部111は、例えば、テープを供給するテープ供給部、及び、供給されたテープを用いてテープ輪を作成するテープ輪作成部などを備えた機構として構成されている。
搬送部110は、集積部109に集積された紙幣を把持して、該紙幣をテープ輪の中へ搬送する。詳細は省略するが、搬送部110は、例えば、上下のアーム部によって紙幣を把握する把持ユニットと、把持ユニットを水平方向及び上下方向へ移動させる手段とを備えたアーム機構として構成されている。
搬送部112は、帯封紙幣を上下方向に搬送するように構成された揚送部113と、揚送部113と帯封紙幣収納部115との間で帯封紙幣を水平方向に搬送するように構成された横送り部114と、を有している。
具体的に、揚送部113は、上下に延びる通路として形成されており、その内部には、帯封紙幣を載せて昇降するための昇降台113aが設けられている。揚送部113の中段高さ位置は、帯封紙幣出金部116に連通している。よって、昇降台113aが、帯封紙幣出金部116の後方位置まで上昇した状態で、帯封紙幣出金部116のシャッタ116bが開放されると、昇降台113aに載置された帯封紙幣を外部へ取り出すことができる。
横送り部114は、詳細は省略するが、前後一対のプーリの間に掛け回された、前後方向に延びる搬送ベルト114aを有しており、搬送ベルト114aの下面と、帯封紙幣収納部115の上面との間に形成される通路に沿って、帯封紙幣を前後方向に搬送するようになっている。また、横送り部114の前端部は、揚送部113に連通している。よって、搬送ベルト114aによって帯封紙幣を前方へ搬送したとき、搬送された帯封紙幣は、横送り部114から揚送部113へ受け渡される。また、揚送部113によって上昇させられた帯封紙幣を横送り部114へ受け渡すことも可能になっている。
帯封紙幣収納部115は、複数(本実施形態では4つ)、設けられており、それぞれ、スタック式の収納カセットとして構成されている。4つの帯封紙幣収納部115は、筐体101内の上方位置において、前後方向に一列に並んでおり、それぞれ、搬送ベルト114aの下方に配置されている。4つの帯封紙幣収納部115には、それぞれ、搬送部112によって搬送された帯封紙幣が、金種別に収容されるように構成されている。なお、本実施形態では、4つの帯封紙幣収納部115のうち、2つの帯封紙幣収納部115には千円札が収容される一方、残りの2つの帯封紙幣収納部115には、一万円札が収容されるようになっている。五千円札は、帯封した状態では収納しないようになっている。五千円札から成る帯封紙幣の出金が要求されると、その都度、バラ紙幣収納部103から五千円札を搬送し、結束して出金するようになっている。なお、4つの帯封紙幣収納部115に収容する紙幣の金種は、適宜、個別に設定可能である。
帯封紙幣出金部116は、装置の内部から帯封紙幣を出金する出金口116aを有している。出金口116aは、例えば出金処理の際に帯封紙幣が払い出される開口である。出金口116aは、筐体101前面の上部に開口しており、シャッタ116b(図1参照)により開閉されるようになっている。
−硬貨処理機−
次に、硬貨処理機200の構成について、簡単に説明する。
図1に示すように、硬貨処理機200は、紙幣処理機100と並べて設置されており、図示は省略するが、バラ硬貨を処理するバラ硬貨処理部と、包装硬貨を処理する包装硬貨処理部とから構成されている。バラ硬貨処理部及び包装硬貨処理部は、相互に硬貨が行き来できるよう、互いに接続されている。
バラ硬貨処理部は、その内部に、バラ硬貨を金種別に収納できるようになっており、当該バラ硬貨処理部を利用して、バラ硬貨の入金処理や、出金処理をはじめとして、種々の処理を行うことができるように構成されている。
包装硬貨処理部は、バラ硬貨処理部から搬送されたバラ硬貨を金種別にかつ、所定枚数(例えば50枚)毎に包装し、包装硬貨を形成するように構成されている。形成された包装硬貨は、包装硬貨処理部の内部に収納されたり、包装硬貨処理部の外部に投出されたりするようになっている。
−新券払出機−
続いて、新券払出機300の構成について説明する。図3は新券払出機300の概略構成を示している。なお、図3では、図2と同様に、図面左側の側面が新券払出機300の前面、図面左側の側面が新券払出機300の後面となっている。
新券払出機300は、縦長の箱状の筐体310を備えている。筐体310内には、複数の収納部320(例えば4個)と、装填部330と、払出部340と、一時保留部350と、搬送部360と、識別部370とが設けられている。さらに、筐体310内には、図4のみで図示する新券払出機300の上記各構成要素を制御する制御部380及び記憶部381が設けられている。制御部380は、通信I/F部382を介してプリンタ400及び管理装置500と接続されている。
(収納部)
複数の収納部320は、筐体310の前下側において、上下方向に並べて配置されている。図3では、収納部320を上下方向に4個並べて配置し、4個の収納部320が同じ構成である例を示している。例えば、上側の3個の収納部320には、それぞれ新券が金種毎(例えば、万円札が上段、千円札が中段、5千円札が下段)に収容される。また、例えば、最下段の収納部320は、選択的に使用される収納部である。具体的には、上側の3個の収納部320のうちいずれか1つと同じ金種の新券Bが収容されたり、他の金種(例えば、2千円札)の新券Bが収容されたりする。
各収納部320は、集積部321と、繰出し機構322と、有無検知部323とを備えている。図5は収納部320の集積部321及び繰出し機構322の概略構成を示す平面図である。
集積部321は、上側が開口した有底箱状であり、新券Bは長手方向が前後方向(図3及び図5では左右方向)を向くように集積される。集積部321は、例えば最大350枚程度の新券Bが集積可能に構成されている。以下の説明において、収納部320の集積部321及び装填部330の集積部331に新券Bを収納することを「補充」ということがある。また、前後方向と直交する方向(図5及び図7では上下方向)を横方向というものとする。
繰出し機構322は、集積部321に集積された新券Bを繰り出すための繰出しローラ324,326と、新券が重なった状態で集積部321から繰り出されるのを阻止する逆転ローラ325(図6参照)とを含む。繰出しローラ324及び逆転ローラ325は、収納部320の新券Bの出入口(図3では、収納部320の左上の隅角部)に設けられており、上下方向に並べて配置されている。繰出しローラ326は、繰出しローラ324より後側(集積部331の前後方向の中間位置)に配置されている。なお、以下の説明において、収納部320及び装填部330における新券Bの出入口を、単に「出入口」という場合がある。
収納部320の出入口には、繰出しローラ324を回転駆動するための上回転軸324aと、逆転ローラ325を回転駆動するための下回転軸325aとが、上下方向に離間しかつ横方向に向かって平行に延びている。
上回転軸324aには、上回転軸324aの径よりも大きい外形を有し、新券Bの繰出し処理において新券Bに接触して繰り出すための3個の円柱状の繰出しローラ324が一体的に設けられている。3個の繰出しローラ324は、上回転軸324aの軸方向に等ピッチ間隔で並べて配置されている。図10に示すように、3個の繰出しローラ324は、新券Bのスムーズかつ正確な繰出しを行う観点から、集積部321に集積される新券Bの幅方向における中心線(長手方向に延びる中心線)に対して線対称の位置になるように配置されている。すなわち、繰出しローラ324は、新券Bの幅方向中心及びその両外側に接触して、新券Bを繰り出すように構成されている。また、中間の繰出しローラ324は、両外側の繰出しローラ324よりも若干幅広になっている。
図6に示すように、下回転軸325aには、下回転軸325aの径よりも大きい外形を有し、新券Bの繰出し処理において新券Bに接触幅W1で接触するように構成された、2個の逆転ローラ325が一体的に設けられている。具体的には、逆転ローラ325は、回転体325bの外側を掛け回され、収納方向に向かって互いに近づくように延び、回転体325bの回転に応じて周回するベルト325cを有するベルト型ローラである。ベルト型ローラは、繰り出される新券の前さばきができるとともに、繰出し方向端部の当たりをやさしくして繰り出しをよりスムーズにするメリットがある。
図6及び図10に示すように、2個の逆転ローラ325は、互いに隣接する繰出しローラ324の横方向における中間位置にそれぞれ配置され、かつ、集積部321に集積される新券Bの幅方向の中心線に対して線対称の位置になるように配置されている。具体的には、新券Bの幅方向の中心線から横方向に互いに同じ距離(D12)だけ離して配置されている。このように、繰出しローラ324と逆転ローラ325との横方向の位置をずらすことにより、両ローラ324,325が新券Bを強く挟持しないので、両ローラ324,325に対してインク等が付着しにくくなるとともに、仮にローラ324,325にインク等が付着している場合でも新券Bに転写しにくくすることができる。
また、繰出しローラ324の回転軌跡と、逆転ローラ325の回転軌跡とは、横方向から見て若干の重なり部分を有するように配置している。すなわち、繰り出される新券Bを繰出しローラ324と逆転ローラ325との間で挟み込むようになっている。なお、図10では、新札Bを記載する便宜上、上記重なり部分をなくして図示している。
図5に戻り、繰出しローラ326は、上回転軸324aより後側に配置され、かつ横方向に延びる回転軸326aの中央近傍に1個設けられている。また、繰出しローラ326の横方向の両外側には、入金処理の際に、収納部320に収納される新券を叩いて集積部321の内方へと移動させる札たたき328が回転軸326aと回転一体に設けられている。回転軸326aは、ベルト327を用いて上回転軸324aと連結されており、上回転軸324aと回転軸326aとは連動して回転する。繰出しローラ326は、収納部320から新券Bが繰り出される際に、繰り出される新券Bの上面に接触するように構成されている。
具体的には、収納部320から新券を繰り出す際には、繰出しローラ324,326は、新券Bを繰り出す方向(以下、繰出し方向という)に向かって回転し、逆転ローラ325は繰出し方向と反対方向(以下、送込み方向という)に向かって回転する。繰出しローラ326によって繰出された新券Bは、繰出しローラ324と逆転ローラ325との間に挟み込まれ、収納部320の出入口に接続された第1搬送路361に繰り出される。新券Bが重なった状態で繰出しローラ324と逆転ローラ325との間に進入した場合、下側の新券Bに逆転ローラ325からの送込み方向への力が与えられ、下側の新券Bは集積部321内に戻される。
図3に戻り、有無検知部323は、集積部321内の新券Bの有無を検知する。有無検知部323は、例えば、反射センサまたはマイクロスイッチによって構成される。
筐体310の前板において、複数の収納部320と対応する位置には、開口が形成され、その開口を塞ぐように板状の前カバー311が設けられている。複数の収納部320は、図示しない内部ユニット内に収容されており、内部ユニットの前面に前カバー311が固定されている。内部ユニットは、前カバー311及び複数の収納部320を含めて、一体的に前後方向にスライド移動が可能に構成されている。これにより、操作者(例えば紙幣処理機100の管理者)は、内部ユニットを筐体310の外側に引き出して、横方向から収納部320の集積部321に直接、新券Bの補充ができるようになっている。
(装填部)
装填部330は、集積部331と、繰出し機構332と、有無検知部333と、開閉検知部339とを備えている。最上段の収納部320の上側は、板材を用いて矩形箱状に区画されており、その前側には開口が形成されている。この区画内は、収容空間312となっており、装填部330は、この収容空間312内に前後方向へのスライド移動が可能に収容されている。図7は装填部330の集積部331及び繰出し機構332の概略構成を示す平面図である。
次に、装填部330の各構成要素について、収納部320との違いを中心に説明する。例えば、装填部330の集積部331及び有無検知部333は、収納部320と同様の構成であるためここではその詳細な説明を省略する。
図7及び図8に示すように、繰出し機構332は、集積部331に集積された新券Bを繰り出すための繰出しローラ334,336と、新券が重なった状態で集積部331から繰り出されるのを阻止する逆転ローラ335とを含む。図8は繰出しローラ334と逆転ローラ335との位置関係を示している。
収納部320の場合と同様に、繰出しローラ334及び逆転ローラ335は、装填部330の出入口に設けられており、上下方向に並べて配置された回転軸(上回転軸334a及び下回転軸335a)と一体に構成されている。
具体的には、上回転軸334aには、所定の幅で形成され、上回転軸334aの径よりも大きい外形を有する4個の円柱状の繰出しローラ334が一体的に設けられている。4個の繰出しローラ334は、上回転軸324aの軸方向に等ピッチ間隔で並べて配置されている。4個の繰出しローラ334は、新券のスムーズかつ正確な繰出しを行う観点から、集積部331に集積される新券Bの幅方向における中心線(長手方向に延びる中心線)に対して線対称の位置になるように配置されている。
下回転軸335aには、下回転軸335aの径よりも大きい外形を有し、新券Bの繰出し処理において新券Bに接触幅W2で接触するように構成された、3個の逆転ローラ335が一体的に設けられている。
図8及び図10に示すように、3個の逆転ローラ335は、互いに隣接する繰出しローラ334の横方向における中間位置にそれぞれ配置され、かつ、集積部331に集積される新券Bの幅方向の中心線に対して線対称の位置になるように配置されている。具体的には、中間の逆転ローラ335が新券Bの幅方向の中心線上に配置されている。また、外側の逆転ローラ335は、中間の逆転ローラ335の両外側に互いに同じ距離(D22)だけ離して配置されている。
さらに、図10に示すように、収納部320の逆転ローラ325及び装填部330の逆転ローラ335は、逆転ローラ325が新券Bと接触する軌跡である収納側の接触軌跡(図10における右上がりの斜線)と、逆転ローラ335が新券Bの接触する軌跡である装填側の接触軌跡(図10における左上がりの斜線)とが、平面視において重なり部分を有さないように配置している。
図3に戻り、筐体310の前板において、収容空間312の前側開口と対応する位置には開口が形成されており、その開口を塞ぐように板状の前カバー313が設けられている。図示しないが前カバー313と装填部330とは一体的に連結されている。また、収容空間312を区画する横方向の両側壁には、前後方向への伸縮が可能に構成された左右一対のガイドレール314が取り付けられており、装填位置および引出位置の間を移動可能に構成されている。ガイドレール314の前端部は前カバー313に固定されている。前カバー313には、凹陥する手掛かり部313aが設けられており、操作者が手掛かり部313aを手前側に引くと、装填位置(図3の状態)にある装填部330を筐体310の外側(引出位置)に引き出すことができ、横方向から集積部331に対して新券が補充できるようになっている。なお、後述する装填搬送路365と第1及び第2搬送路361,362との間は、装填部330の装着及び引き出しに応じて、接続または分離の切り換えができるように構成されている。すなわち、装填搬送路365は、装填部330が筐体310の外側に引き出された際には、筐体外に露出するように構成されている。
(払出部)
払出部340は、筐体310内の前方上側の隅角部に設けられており、集積部341と、出金口342と、有無検知部343とを備えている。
出金口342は、筐体310の上端部における前板に矩形状に貫通形成されている。出金口342の形状、大きさは特に限定されないが、例えば最大100枚の新券を一度に出金できるようになっている。
集積部341は、箱状であり、前側は出金口342と連通している。また、払出部340の後方上側の隅角部には、後述する第3搬送路363と接続された新券Bの入口が設けられ、収納部320等から繰り出された新券Bがこの入口を介して集積部341に送り込まれる。集積部341内には、図示は省略するが、複数のローラやベルトが設けられており、これらのローラやベルトが回転することによって、集積部341に集積された新券Bが出金口まで送り出される。
有無検知部343は、集積部341内の新券Bの有無を検知する。有無検知部343は、例えば、反射センサまたはマイクロスイッチによって構成される。
(一時保留部)
一時保留部350は、筐体310内において、後方上側に配置されている。一時保留部350は、いわゆるテープリール式であり、2つのテープリール352と、それぞれのテープリールに巻かれたテープ(図示省略)の先端部が接続されたドラム353とを含む巻き取り機構351を備えている。新券Bが後述する第4搬送路364に送り込まれると、モータ等の駆動部(図示省略)により、ドラム353が上記テープを巻き取る方向に駆動回転する。これにより、新券Bは、2つのテープの間に挟まれた状態でドラム353に巻き取られて、一時保留状態になる。そして、例えば、操作者による確認処理等によって一時保留状態が解除されると、ドラム353が逆方向に回転し、ドラム353に巻き取られていた新券Bが第4搬送路364に向かって送り出される。
一時保留部350は、さらに、一時保留部350内における新券Bの有無を検知する媒体検知部354を備えている。媒体検知部354は、例えば、反射センサまたはマイクロスイッチによって構成される。
(搬送部)
搬送部360は、第1から第4搬送路361,362,363,364と、装填搬送路365とを備えている。なお、図示を省略するが、これらの搬送路361,362,…,365には、それぞれにローラ及び無端状のベルトが設けられており、双方向への新券Bの搬送が可能になっている。さらに、搬送路361,362,…,365が分岐する各分岐点には、分岐機構366が設けられており、制御部380からの制御を受けて搬送される新券Bの方向を変更できるようになっている。
第1搬送路361は、基端部が各収納部320の出入口に接続され、そこから前方向に向かって延び、それぞれ、前カバー311の内方に設けられ、上下方向に互いに離間して配置された分岐機構366aに接続されている。さらに、第1搬送路361は、各分岐機構366aの間を接続するように上下方向に延びる搬送路を有し、その搬送路の上端、すなわち第1搬送路361の先端部は、装填部330と最上段の収納部320との中間の高さ位置に設けられた分岐機構366bに接続されている。
第2搬送路362は、基端部が分岐機構366bに接続され、そこから装填部330と最上段の収納部320との間を後方向に向かって延びた後、上方向に向かって延びている。そして、第2搬送路362の先端部は、一時保留部350の出入口と略同じ高さ位置に設けられた分岐機構366cに接続されている。
第3搬送路363は、分岐機構366cと払出部340の入口とを接続する搬送路である。
第4搬送路364は、分岐機構366cと一時保留部350の出入口とを接続する搬送路である。
装填搬送路365は、基端部が装填部330の出入口に接続され、そこから前方向に向かって前カバー313の後方まで延びた後、下方向に向かって延び、分岐機構366bに接続されている。
開閉検知部339は、装填部330が装着位置又は引出位置のどちらにあるかを検知するためのものである。開閉検知部339は、例えば、反射センサまたはマイクロスイッチによって構成される。
−新券の補充から出金までの流れ(計数装填)−
次に、各収納部320に新券を補充する場合に係る処理について、図9を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明において、管理装置500の制御部と制御部380とが協働して処理を行う場合があるが、相互の制御部間の信号のやり取り、指令のやり取りについては説明を省略するものとする。
まず、権限を有する管理者が、表示操作部を操作して収納部320への「手補充」をするのか、装填部330に新券の補充を行う「計数装填」をするのかを選択する。
管理者が「計数装填」を選択した場合、管理装置500の制御部は、操作表示部501を介して管理者に金種の入力を促す。その際に、管理装置500の制御部が、金種毎の補充可能枚数を操作表示部に表示するようにしてもよい。
管理者による金種の確定操作がされた後、管理装置500の制御部は、例えば、操作表示部501に装填部330への新券の装填に関する案内画面を表示する。上記案内画面を表示するタイミングにおいて、制御部380は、装填部330及び前カバー313をロックするロック機構(図示省略)を解除する。これにより、管理者は、前カバー313の手掛かり部313aに指を掛けて、装填部330を引出位置まで引き出すことができるようになる。
管理者が、引き出した装填部330の集積部331に選択した金種の新券を補充し終わった後に、装填部330を後側に押して装着位置まで移動させると、その状態が開閉検知部339及び有無検知部333によって検知される。具体的には、開閉検知部339は、装填部330が装着状態にあることを、有無検知部333は集積部331内に新券Bがあることを検知し、検知結果(検知信号)を制御部380に送信する。
制御部380は、上記検知結果に基づいて装填部330の繰出し機構332を制御して、装填部330からの新券Bの繰出しを開始する。装填部330から繰出された新券Bは、図9(a)に示すように、搬送部360によって、装填搬送路365、第2搬送路362及び第4搬送路364を介して、一時保留部350に送り込まれ、一時保留される。このとき、新券Bは、識別部370を1枚ずつ通過するため、制御部380は、識別部370から通過する新券Bの識別情報及び計数情報を取得する。なお、制御部380は、新券Bにリジェクト券(例えば、汚損紙幣や金種の異なる紙幣等)が含まれていた場合には、第3搬送路363を介して払出部にリジェクト券を送り込み、出金口342から返却するようにしてもよい。また、リジェクト券を直ちに出金せずに、一時保留部350と装填部330との間を何度か往復させることで識別部370を再通過させて識別情報を再取得し、それでもリジェクト券と判断された場合に、上記返却処理を行うようにしてもよい。
装填部330から一時保留部350への新券Bの搬送が完了し、有無検知部333が装填部330内に新券Bがないことを検知すると、制御部380は、操作表示部501に確認画面を表示させる。例えば、一時保留部350に一時保留されている新券Bの金種及び枚数と、収容先の収納部320の空き状況を操作表示部501に表示させ、収納部320への収納処理を実施してよいか確認する。
制御部380は、操作表示部501への確認操作がされた後、一時保留部350を制御して、一時保留されている新券Bの収納部320への収納を開始する。具体的には、図9(b)に示すように、一時保留部350から送り出された新券Bは、搬送部360によって、第4搬送路364、第2搬送路362及び第1搬送路361を介して対応する収納部320に送り込まれ、収納される。なお、本実施形態では、一時保留部350は、テープリール式であるため、繰出し処理は行われない。
管理者は、継続して別の金種の計数装填や、同じ金種で追加の計数装填を行ってもよいし、計数装填を終了してもよい。以上のようにして新券Bが収納部320に補充されると、新券払出機300は、利用者(例えば、一般ユーザー)による出金処理の指示を受け付ける待機状態になる。
続いて、利用者からの操作表示部への出金操作が行われた場合における、出金処理について説明する。
利用者からの出金操作を受けると、制御部380は、出金対象となる金種が収容された収納部320の繰出し機構322を制御して、出金処理を開始する。具体的には、収納部320の繰出し機構322に必要枚数の新券を繰り出させる。そして、図9(c)に示すように、収納部320から繰り出された新券は、搬送部360によって、第1搬送路361、第2搬送路362及び第3搬送路363を介して払出部340に送り込まれ、払出部340によって出金口342から払い出される。なお、上記出金処理において、識別部370によりリジェクト券と判断された新券Bは、一時保留部350を介して元の収納部320に戻されるようにしてもよい。これにより、例えば搬送時の新券Bの傾斜等の要因で、正常な新券Bであるにも拘わらずリジェクトされるのを防ぐことができる。
このように、計数装填を行うことにより、従来のように、管理者が手作業で計数した後に直接収納部320に新券を補充(以下、単に「手補充」ともいう)する場合と比較して、作業性を向上させることができる。具体的には、管理者による計数に係る作業及び前さばきに係る作業を軽減することができる。また、計数装填を行うことにより、手補充の場合と比較して、人為的ミス(金種間違い、計数間違い、等)が発生する可能性を低減することができる。
一方で、上記のように、「管理者が装填部に対して新券の補充を行い、装填部から収納部への補充は新券払出機が行う」、いわゆる「計数装填」を実施する場合、装填部による繰出し処理(図9(a)参照)と、収納部による繰出し処理(図9(c)参照)の少なくとも2回の繰出し処理が行われる。この場合において、簡易な構成、すなわち、装填部330及び収納部320に互いに同じ構成の繰出し機構332,322を採用した場合、複数の繰出し処理によって、それぞれの逆転ローラ335,325からの転写や新券Bの擦れ合いによって付着する汚れが重なり、濃くなる場合がある。
この点に関し、図11に示す比較例を用いてより具体的に説明する。
図11は、「計数装填」において、装填部330及び収納部320に、同一構成の繰出し機構332,322を用いた場合における新券Bの汚れる可能性がある領域を斜線で示している。
図11に示すように、装填部330と収納部320とに同一構成の繰出し機構332,322を用いると、新券Bの表面(おもてめん)又は裏面(うらめん)における逆転ローラ335,325の新券Bへの接触位置が完全に重なるため、汚れの付着場所が重なる場合があり、濃い繰出し跡が付く場合がある。
一方で、上記本実施形態で説明したような構成にすることにより、仮に、収納部320及び装填部330からの繰出し処理によって逆転ローラ325,335の接触位置(図10の斜線部分)に若干の汚れが付着した場合においても、収納部320と装填部330とで、逆転ローラ325,335の接触位置が横方向にずらしてあるため、汚れが重ならず、新券Bに濃い繰出し跡が付くことを防止することができる。特に、逆転ローラ325,335は、繰出し方向と逆の送込み方向に向かって回転しているため、汚れの付着する可能性が高い。そこで、収納部320及び装填部330の互いの逆転ローラ325,335の接触位置が重なり部分を有さないように構成する、すなわち、接触位置が異なる位置になるようにすることにより、より確実に紙葉類の汚れの重なりを防ぐことができ、新券に濃い繰出し跡が付くことを防止することができる。
なお、上記実施形態では、詳細に説明していないが、収納部320及び装填部330の繰出しローラ324,334に関しても、新券Bに若干の汚れが付着する可能性がある。そこで、本実施形態では、収納部320及び装填部330の繰出しローラ324,334に関しても、接触位置の少なくとも一部が他のローラと互いに異なるように配置している。すわなち、本実施形態では、各ローラ(繰出しローラ324,334及び逆転ローラ325,335)と新券Bとの接触位置を調整し、汚れの付着する可能性がある位置を分散させることにより、新券Bに濃い繰出し跡が付かないようにしている。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態では、「計数装填」の場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図12に示すように、一時保留部350がスタック式の場合には、収納部320に新券Bを補充する、いわゆる「手補充」を行った場合においても、「計数装填」の場合と同様の問題が生じる場合があり、本開示の技術を適用することにより解決することができる。以下において、図面を参照しながら具体的に説明する。
−新券払出機−
図12に示す新券払出機300ついて、上記実施形態の構成との相違点を中心に説明する。具体的には、図3ではテープリール式の一時保留部350を用いていたのに対し、図12ではスタック式の一時保留部390を用いている点が異なる。
(一時保留部)
図12に示すように、一時保留部390は、集積部391と、繰出し機構392と、有無検知部393とを備えている。なお、集積部391及び有無検知部393は、収納部320と同様の構成であり、ここではその詳細な説明を省略する。
図示を省略するが、繰出し機構392は、収納部320の構成と同様に、2個の回転軸に対してそれぞれ設けられた繰出しローラと、逆転ローラとを含む。そして、繰出し機構392の逆転ローラは、新券Bの接触位置が、少なくとも収納部320の逆転ローラ325と異なるように構成されているのが好ましい。具体的には、一時保留部390の逆転ローラは、図10において、W1で示された領域外において、新券Bと接触するように構成されているのが好ましい。また、一時保留部390の逆転ローラは、新券Bの接触位置が、収納部320及び装填部330の逆転ローラ325,335の両方と異なるように構成されているのがより好ましい。例えば、図10において、新券B内で斜線が引かれていない領域に、一時保留部390の逆転ローラが新券Bに接触する接触位置がくるように構成するのが好ましい。
以下において、手補充の場合における例を示して、上記構成が好ましい理由について説明する。
−新券の補充から出金までの流れ(手補充)−
管理者が「手補充」を選択した場合、制御部380は、前カバー311のロックを解除する。管理者は、内部ユニットを前カバー311ごと引出位置まで引き出し、補充対象の金種に応じた収納部320に手で新券Bを補充する。管理者が収納部320に新券Bを補充した後に、前カバー311を押して内部ユニットを装填位置まで押し込むと、制御部380は前カバー311のロック機構を作動させ、前カバー311がロックされる。これにより、補充作業は完了し、新券払出機300は待機状態となる。
続いて、利用者は操作表示部501への出金操作を行う。出金処理については、計数装填と同様であり、ここではその説明を省略する。
以上のように、収納部320と一時保留部390に繰出し機構が設けられている場合においても、複数回の繰出し処理が行われる場合がある。そして、収納部320の繰出し機構322と、一時保留部390の繰出し機構392とにおいて、接触部(例えば、繰出しローラや逆転ローラ)の接触位置を互いに異ならせることにより、仮に接触部から紙葉類へのインク等の転写があって若干の汚れが紙葉類に付着するようなことがある場合においても、汚れが重なって濃くなることを防ぐことができる。
−その他の変形例−
上記実施形態では、本開示に係る技術が新券払出機300に適用される例について説明したが、適用される装置は、新券払出機300に限らない。例えば、紙幣処理機100において本開示に係る技術を適用してもよい。例えば、紙幣処理機100において、入金部102と、バラ紙幣収納部103と、一時保留部104に設けられた繰出し機構のうち、少なくとも2つの繰出し機構において、上記実施形態のように、接触部(例えば、繰出しローラや逆転ローラ)の接触位置を互いに異ならせるようにすればよい。
また、繰出し機構を構成する繰出しローラ及び逆転ローラの形状は、特に限定されない。例えば、繰出しローラの形状がベルト型であってもよく、分離ローラの形状も、ベルト型であってもよいし、回転軸心回りに回転する環状又は円柱状の回転ローラであってもよい。
また、上記実施形態では、紙葉類分離部として、逆転ローラが適用されている例を示したが、紙葉類分離部は逆転ローラに限定されない。例えば、板状の分離シートが逆転ローラと同じ位置に配置されていてもよい。また、逆転ローラは、繰出しローラと逆方向に回転するものとしたが、これに限定されない。例えば、紙葉類分離部として、繰出しローラと同じ回転方向であるが、回転速度を遅くしたローラを設け、このローラによって重なった紙葉類の分離を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、収納部320の繰出し機構322と、装填部330の繰出し機構332において、逆転ローラの横方向の位置を、重なり部分を有さないように配置しているが、その一部に重なり部分を有するようにしてもよい。例えば、少なくとも紙葉類のインクの濃い部分は、接触位置が重ならないように構成するとしてもよい。また、接触位置の横方向の中心部分において接触圧が強いような構成の場合に、接触位置の横方向の中心部分は重ならないようにする一方で、横方向の両側においては重なり部分を有するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、装填部330と収納部320の逆転ローラの数を異ならせているが、装填部330と収納部320の逆転ローラの数が同じであっても、紙葉類との接触位置をずらすことで、同様の効果を得ることができる。繰出しローラについても同様である。すなわち、逆転ローラや繰出しローラを用いて例示した接触部が紙葉類と接触する接触位置の少なくとも一部を互いに異ならせることにより、紙幣に濃い繰出し跡が付くことを防止する効果が得られる。例えば、上記実施形態では、繰出しローラ324,334及び逆転ローラ335は、それぞれの回転軸の軸方向に等ピッチで配置されているものとしたがこれに限定されない。同様に、上記実施形態では、繰出しローラ324,334及び逆転ローラ335は、新券Bの幅方向における中心線に対して線対称の位置になるように配置されているものとしたがこれに限定されない。
また、上記実施形態では、新券Bを上下方向に積み重ねて収納する収納部320を示しているが、新券Bを水平方向に並べて収納する収納部としてもよい。
また、上記実施形態では、集積部(例えば、収納部320、装填部330等)は、箱状であるものとしたが、これに限定されず、集積部は紙幣が集積される構成であれば他の形状であってもよい。例えば、集積部は、前側及び上側の2側面が解放された形状やさらに一方の側面を開放し3側面が解放された形状であってもよい。
また、処理対象となる紙葉類は新券に限らず、流通している紙幣であってもよい。また紙幣に限らず、商品券や、小切手や商品券等の有価証券を含む紙葉類全般であり、ここに開示する技術は、紙葉類処理装置に適用可能である。