JP6747661B2 - 粘着剤用組成物、粘着剤層および粘着シート - Google Patents
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Description
一般に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材に、アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤を貼着する場合、良好な粘着力を発現させるためには、粘着剤中に適当なタッキファイヤーを添加する必要がある。
しかし、いずれの文献にも、好適なタッキファイヤーについては開示されておらず、また、ポリオレフィン系低極性素材に対する粘着力についても開示されていない。
[1] 分子の両末端に水酸基を有し、かつカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量(Mw)が100,000〜300,000、分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下である(メタ)アクリルポリマー(A)と、1分子中のイソシアネート基数が2であるイソシアネート化合物(B)と、軟化点95℃以上のタッキファイヤー(C)とを含有する粘着剤用組成物。
なお、本明細書において、「重合体」とは単独重合体および共重合体を包含する意味で用い、また、「重合」とは単独重合および共重合を包含する意味で用いる。
また、アクリルおよびメタクリルを総称して「(メタ)アクリル」とも記載する。
本発明の粘着剤用組成物は、特定の(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)(以下「重合体分子(a)」ともいう。)を含む特定の(メタ)アクリルポリマー(A)と、1分子中のイソシアネート基数が2であるイソシアネート化合物(B)(以下「ジイソシアネート化合物(B)」ともいう。)と、軟化点95℃以上のタッキファイヤー(C)とを含有する。
(メタ)アクリルポリマー(A)は、重合体分子(a)を含む。
〈(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)〉
重合体分子(a)は、分子の両末端に水酸基を有し、かつカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有する。
重合体分子(a)は、式(a1)で表される構造(以下「トリチオカーボネート構造」ともいう。)を有することが好ましい。
化合物(A1)の具体例を以下に示す。
(メタ)アクリルポリマー(A)は、重合体分子(a)に加え、重合体分子(a)以外の重合体をさらに含んでもよい。重合体分子(a)以外の重合体としては、例えば、RAFT重合で重合体分子(a)を製造する場合、RAFT重合の副生成物が挙げられる。
(メタ)アクリルポリマー(A)は、例えば、RAFT重合により得られる。
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するために使用する重合性二重結合含有モノマーは、前記重合体分子(a)を形成するために使用する重合性二重結合含有モノマーと、同一であることが好ましい。つまり、前記重合体分子(a)と、(メタ)アクリルポリマー(A)に含まれる前記重合体分子(a)以外の重合体とが、同一の重合性二重結合含有モノマーから形成された重合体であることが好ましい。
粘着剤用組成物中の(メタ)アクリルポリマー(A)の含有量は、粘着剤用組成物100質量%中、通常30〜95質量%である。
重合性二重結合含有モノマーを、例えば、RAFT重合することにより、重合体分子(a)を含む(メタ)アクリルポリマー(A)を得ることができる。重合性二重結合含有モノマーとしては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルおよびカルボキシル基含有モノマーが用いられる。ただし、前記(メタ)アクリル酸エステルからは、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート等の官能基含有(メタ)アクリレートを除く。
重合体分子(a)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するために、重合性二重結合含有モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。
(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、全重合性二重結合含有モノマー100質量%に対して、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
重合体分子(a)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を有するために、重合性二重結合含有モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーが用いられる。
カルボキシル基含有モノマーの使用量は、全重合性二重結合含有モノマー100質量%に対して、通常0.5〜15質量%、好ましくは1〜12質量%、より好ましくは3〜10質量%である。
カルボキシル基以外の官能基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基以外の酸基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素系複素環含有モノマー、シアノ基含有モノマーが挙げられる。カルボキシル基以外の酸基としては、例えば、酸無水物基、リン酸基、硫酸基が挙げられる。
重合体分子(a)の合成において、カルボキシル基以外の官能基含有モノマーを使用してもよいが、イソシアネート基との反応性が高い水酸基、アミノ基などの官能基を含有するモノマーの共重合体の場合、イソシアネート架橋により、分子の両末端以外の場所が架橋し、自由末端が一定量増加することで、結果として得られた粘着剤層の耐久性が低下することがある。よって耐久性向上の観点から、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有するモノマーの使用量は、全重合性二重結合含有モノマー100質量%中、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
共重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウ化スチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレン等のスチレン系単量体、酢酸ビニルが挙げられる。
共重合性モノマーは1種単独で、または2種以上を使用することができる。
RAFT重合は、重合開始剤の存在下に行うことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、通常の有機系重合開始剤が挙げられ、具体的には、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリウム等の過酸化物、2,2'−アソビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの中でも、アゾ化合物が好ましい。
重合開始剤の使用量は、重合性二重結合含有モノマー100質量部に対して、通常0.001〜2質量部、好ましくは0.002〜1質量部である。重合開始剤を前記範囲内で使用することにより、(メタ)アクリルポリマー(A)のMwを適切な範囲内に調整することができる。
RAFT重合法での反応温度は、通常60〜120℃、好ましくは70〜110℃であり、通常は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行われる、この反応は常圧、加圧および減圧のいずれの条件で行うこともでき、通常は常圧で行われる。また、反応時間は通常1〜20時間、好ましくは2〜14時間である。重合条件については、例えば、特開2007−230947号公報および特開2011−52057号公報を参照することができる。
ジイソシアネート化合物(B)は、1分子中のイソシアネート基数が2のイソシアネート化合物である。重合体分子(a)の分子両末端に有する水酸基が、ジイソシアネート化合物(B)で架橋され、架橋体(ネットワークポリマー)を形成する。前記架橋体は、分岐の少ない構造を有するため、本発明の粘着剤用組成物から得られる粘着剤層は、応力緩和性および耐久性に優れると考えられる。
ジイソシアネート化合物(B)は、1種単独で、または2種以上を使用することができる。
本発明の粘着剤用組成物は、タッキファイヤー(C)を含有するため、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材への貼着においても良好な粘着力を発揮する粘着剤層を形成することができる。
前記ロジンエステル樹脂としては、例えば、不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂が挙げられる。
これらのタッキファイヤー(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の粘着剤用組成物は、上記成分のほか、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶媒、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、前記(C)以外の粘着付与樹脂、可塑剤、消泡剤、充填剤、安定剤、軟化剤、および濡れ性調整剤から選択される1種または2種以上を含有してもよい。
本発明の粘着剤層は、上述の粘着剤用組成物を架橋することにより、具体的には(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)を含む(メタ)アクリルポリマー(A)をジイソシアネート化合物(B)で架橋することにより得ることができる。このようにして得られる粘着剤層は、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系低極性素材への貼着においても、良好な粘着力を発揮し、かつ高温荷重環境下での秀逸な耐久性を有する。
粘着剤層は、偏光板の歪みの抑制、凝集力、接着力、再剥離性の向上の観点から、ゲル分率が、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%、さらに好ましくは40〜70質量%である。
本発明の粘着シートは、上述の粘着剤用組成物からなる粘着剤層を有する。この粘着シートは、基材を有することが好ましく、粘着剤層上にセパレーターを有していてもよい。粘着シートとしては、例えば、上記粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、およびそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面にセパレーターが貼付された粘着シートが挙げられる。
したがって、本発明の粘着シートは、広く工業用粘着シートとして使用できるものであるが、特に自動車の内装や電子機器内部に用いられる、不織布両面テープやウレタンフォーム貼り合わせ用両面テープに使用することができる。
実施例における各測定値は、以下の方法により求めた。
精秤したブリキシャーレ(質量:n1)にポリマー溶液1gを入れ、合計質量(n2)を精秤した後、105℃で3時間加熱した。その後、当該ブリキシャーレを室温のデシケータ内に1時間静置し、次いで再度精秤し、加熱後の合計質量(n3)を測定した。得られた質量測定値(n1〜n3)を用いて、下記式から加熱残分を算出した。
加熱残分(質量%)=100×[加熱後質量(n3−n1)/加熱前質量(n2−n1)]
ポリマー溶液を500ml瓶に投入し、これを25℃の恒温水槽に浸し12時間静置後、B型粘度計の測定方法に従い、粘度を測定した。
(メタ)アクリルポリマーについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記条件で標準ポリスチレン換算によるMwおよびMw/Mnを求めた。
・測定装置:HLC-8120GPC(東ソー(株)製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー(株)製)
(1)TSK-GEL HXL-H (ガードカラム)
(2)TSK-GEL G7000HXL
(3)TSK-GEL GMHXL
(4)TSK-GEL GMHXL
(5)TSK-GEL G2500HXL
・サンプル濃度:1.0mg/cm3となるように、テトラヒドロフランで希釈
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0cm3/min
・カラム温度:40℃
[製造例A1]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、n−ブチルアクリレート60g、2−エチルヘキシルアクリレート34g、アクリル酸6g、およびビス[4−{エチル−(2−ヒドロキシエチル)アミノカルボニル}−ベンジル]トリチオカーボネート(日本テルペン化学(株)製)(以下「RAFT剤−1」ともいう。)0.25gを仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を80℃に加熱した。
製造例A1において、成分組成を表1に記載したとおりに変更したこと以外は製造例A1と同様にして、アクリルポリマー(A2)または(B1)〜(B4)を含むポリマー溶液を得た。なお、製造例B2では、酢酸エチルは、フラスコ内の内容物の温度を80℃に保ったまま1時間かけて100g滴下し、最後に20g添加した。また、製造例B4では、モノマー成分を120gの酢酸エチルに溶解させた状態でフラスコに仕込み、酢酸エチルの追加添加は行わなかった。
[実施例1]
製造例A1で得られたアクリルポリマー(A1)を含むポリマー溶液と、タッキファイヤーとしてD−125(荒川化学工業社製、軟化点120〜130℃)とを混合した。この混合物に、イソシアネート化合物として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(DCDI)を混合し粘着剤用組成物を得た。なお、アクリルポリマー(A1)100部に対するD−125の配合量が25部、DCDIの配合量が1.0部となる割合(いずれも固形分比)で混合し、粘着剤用組成物を得た。
実施例1において、組成成分を表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤用組成物および両面粘着シートを得た。
なお、表2に記載のイソシアネート化合物およびタッキファイヤーは以下に示すとおりである。
DCDI:4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
L−45:多官能イソシアネート系架橋剤(綜研化学社製、商品名、平均イソシアネート官能基数:約3)
D−125:ロジン系タッキファイヤー(荒川化学社製、商品名:ペンセルD−125、軟化点:120〜130℃)
A−75:ロジン系タッキファイヤー(荒川化学社製、商品名:スーパーエステルA−75、軟化点:70〜80℃)
〔ゲル分率〕
実施例等で得られた粘着剤層約0.1gをサンプリング瓶に採取し、酢酸エチル30mLを加えて4時間振盪した後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥質量を測定した。次式により、粘着剤層のゲル分率を求めた。結果を表2に示す。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着剤層採取質量)×100(%)
23℃、50%RH条件下で、実施例等で得られた両面粘着シートの一方の面の紙セパレーターを剥がし、露出した一方の粘着剤層面に厚み25μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを裏打ちした。その後、他方の面の紙セパレーターを剥離し、露出した他方の粘着剤層面をSUS板に貼り付け、2kgのローラーを用いて圧着した。貼付面積は25mm×25mmとした。貼付から20分後に、80℃かつ乾燥条件で1kgの荷重を粘着剤層面と平行方向にかけ、1時間後のもとの位置からのズレの距離(mm)を測定した。結果を表2に示す。
23℃、50%RH条件下で、実施例等で得られた両面粘着シートの一方の紙セパレーターを剥がし、露出した粘着剤層面に厚み25μmのPETフィルムを裏打ちした。その後、もう一方の紙セパレーターを剥がし、露出した粘着面に、厚さ1mmのポリプロピレン板を2kgのローラーを用いて圧着した。貼付面積は20mm幅×50mmとした。貼付から20分後に、40℃または80℃、かつ乾燥条件で、PETフィルム面から200gまたは50gの荷重を90°方向に鉛直にかけ、60分後のはがれ長さ(mm)を測定した。測定時間内に試験片が被着体から落下した場合は、落下までに要した時間を測定した。落下した場合は「落下」と記載した。
Claims (6)
- 分子の両末端に水酸基を有し、かつカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量(Mw)が100,000〜300,000、分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下であり、かつ、カルボキシル基含有モノマーを含む重合性二重結合含有モノマーの可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合体である(メタ)アクリルポリマー(A)と、
1分子中のイソシアネート基数が2であるイソシアネート化合物(B)と、
軟化点95℃以上のタッキファイヤー(C)と
を含有する粘着剤用組成物(ただし、前記(メタ)アクリルポリマー(A)と、前記イソシアネート化合物(B)と、前記タッキファイヤー(C)と、1分子中の平均イソシアネート基数が2を超えるイソシアネート化合物(B')とを含有し、前記イソシアネート化合物(B')のイソシアネート基の総量が、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体分子(a)の末端水酸基1モルに対して1〜100モルとなる範囲で前記イソシアネート化合物(B')を含有する粘着剤用組成物を除く)。 - (メタ)アクリルポリマー(A)が、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有するモノマーの使用量が0.3質量%以下である重合性二重結合含有モノマーの重合体である、請求項1に記載の粘着剤用組成物。
- 前記イソシアネート化合物(B)の含有量が、前記(メタ)アクリルポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜3質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤用組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤用組成物から形成された粘着剤層。
- 請求項5に記載の粘着剤層を有する粘着シート。
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