JP6732532B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真及び静電印刷のような画像形成方法に用いられる静電荷像(静電潜像)を現像するためのトナーに関する。
電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されており、高画質化や高速化を始めとする性能の向上が求められている。また、様々な温度・湿度下で使用されることや、長期保管されることもあるため、環境安定性や保存安定性も求められている。高温環境下では、静電荷像の可視化に用いられるトナーが含有する着色剤、離型剤などがトナー表面へ染み出して帯電量の変化や、現像ローラー、規制ブレード、感光体の如き部材の汚染といった課題を招き易い。
この課題に対して、特許文献1にはトナー粒子の表層に特定の有機ケイ素重合体を含有するトナーの技術が開示されている。この技術により、高温環境下でのトナー表面への材料染み出しを抑制することが可能となり、現像耐久性、保存安定性、環境安定性及び低温定着性に優れたトナーの提供が可能となった。
一方で、低温低湿環境下において低印字率で連続印字を行った時にはゴーストが発生し易いことが分かってきた。これは、低印字率で現像剤担持体を繰り返し回転することで、トナーが規制ブレードと繰り返し摩擦されることにより過帯電状態、所謂チャージアップしたことに因ると考えられる。
チャージアップを抑制する技術としては、特許文献2に外添剤として特定の粒径を有するシリカ微粒子3種類及びアルミナ微粒子1種類を含有させる技術が開示されている。また、特許文献3にはマグネシウムおよびアルミニウムを含有する無機化合物よりなる複合無機微粒子を外添し、その含有比率や静抵抗を一定の範囲とする技術が開示されている。
特開2014−130238号公報 特開2014−130202号公報 特開2014−010224号公報
チャージアップが発生し易いトナーにおいては、トナーが消費されない非画像部では現像剤担持体に担持されているトナーが繰り返し摩擦されて帯電量が上がって行く。一方、画像部ではトナーが消費されるため繰り返し摩擦は起きない。そのため、画像部と非画像部では帯電状態が異なってしまう。この様な状態で印字を行うと、印字の前履歴が次の画像に現れてしまうゴースト現象が起き易い。
チャージアップを抑制する技術として、特許文献2の本文中には外添するアルミナの量が多いほどチャージアップを抑制可能であることが記載されている。更に、特許文献3には特定の静抵抗値の物質を外添することが記載されている。いずれも過剰な電荷をリークさせることがその思想であり、チャージアップを抑制するための優れた技術である。一方で、この技術を特許文献1の様な特定の有機ケイ素重合体を含有する表層を有するトナーに対して適用したところ、その効果は限定的であった。即ち、使用し始めの現像剤ではその効果が見られるものの、多数枚の現像に使用していくと効果が薄れて行った。これは、従来のトナーに比べて、表層が有機ケイ素重合体であるトナー粒子は表面が硬く、外添剤が固着しきれないために、使用中に外添剤がトナーから外れてしまったためと推測している。
以上のように、従来の技術ではトナー粒子の表層に有機ケイ素重合体を含有するトナーにおいて、チャージアップを抑制することは困難であった。
本発明の目的は、特定の有機ケイ素重合体を含有する表層を有するトナーにおいて、チャージアップを抑制することにより、低温低湿環境下において低印字率で連続印字を行った時のゴーストを抑制可能なトナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂を含有するコア部と
機ケイ素重合体を含有する表層と
有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結着樹脂はカルボキシル基を含有し、
前記有機ケイ素重合体は下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、
Figure 0006732532
(式(2)中のLは、メチレン基、エチレン基はフェニレン基を表す。)
前記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、ケイ素原子の濃度dSiが2.5atomic%以上22.2atomic%以下であり、
前記トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する前記式(1)又は(2)で表される部分構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であり、
前記トナー粒子は20℃における抵抗率2.5×10-8Ω・m以上10.0×10-8Ω・m以下の多価金属元素を含有し、
前記多価金属は鉄又はマグネシウムであり、
前記多価金属が鉄である場合、前記トナー粒子の蛍光X線分析における鉄に基づくNet強度が1.00kcps以上5.00kcps以下であり、
前記多価金属がマグネシウムである場合、前記トナー粒子の蛍光X線分析におけるマグネシウムに基づくNet強度が3.00kcps以上20.00kcps以下であ
ことを特徴とするトナーである。
本発明によれば、トナー粒子の表層に特定の有機ケイ素重合体を含有することにより、高温高湿環境下におけるトナー表面への材料染み出しを抑制することが可能となる。その際に課題となる低温低湿環境下におけるチャージアップは、適切な抵抗率の多価金属元素を適切な量含有させることで抑制可能となる。その結果、本発明によれば現像耐久性、保存安定性、環境安定性に優れ、更に低温低湿環境下において低印字率で連続印字を行ってもゴーストが発生し難いトナーを提供することができる。更に、トナーに強いシェアが加わった場合であっても、小粒子の離脱や割れが起き難く、これらに起因する現像スジなどの問題が起き難いトナーを提供することができる。
本発明のトナー粒子の29Si−NMRの測定チャートの一例である。 本発明における有機ケイ素化合物を含有する表層について、表層厚さを定義する概念図である。
本発明のトナーは、結着樹脂を含有するコア部と、特定の有機ケイ素重合体を含有する表層とを有するトナー粒子を有するトナーである。更に、20℃における抵抗率2.5×10-8Ω・m以上10.0×10-8Ω・m以下の多価金属元素を含有し、トナー粒子の蛍光X線分析における、前記多価金属元素に基づくNet強度が0.10kcps以上30.00kcps以下である。蛍光X線分析は、試料に連続X線を照射して、試料を構成する元素に固有の特性X線(蛍光X線)を発生させる。そして、発生した蛍光X線を分光結晶により分光(波長分散型)することによりスペクトルを生成させ、得られたスペクトルを測定し、その強度から構成元素を定量分析するものである。Net強度とは、金属元素が存在することを示すピーク角度におけるX線強度よりバックグラウンド強度を差し引いたX線強度のことをいう。尚、本発明における「多価金属元素」とは、多価の金属イオンを生じる金属元素のことである。
本発明が解決しようとする課題であるチャージアップは、従来技術にも開示されている様に過剰な電荷をリークさせる思想により解決し得ると考えた。従って、適度に電荷をリークし得る成分を含有させれば良いと考えられる。適度に電荷をリークさせるためには、特定の抵抗率の物質をトナーに含有させることが考えられる。本発明者の検討では特定の抵抗率の物質の中でも、多価金属元素を選択することがチャージアップの抑制に特段の効果があることを見出した。これは、特定の抵抗率の物質により過剰な電荷をリークさせる作用が得られただけでなく、多価金属であることによりシラノール基に配位することができ、帯電サイトとして負帯電性の高いシラノール基を減らす作用が得られたことに因ると推測している。
更に、異質の効果としてトナーに強いシェアが加わった場合であっても、小粒子の離脱や割れが起き難く、これらに起因する現像スジなどの問題が起き難いことを見出した。これは、含有させる金属が多価であることにより有機ケイ素重合体が金属架橋して強度が上がったためと推測している。
様々な物質の20℃における抵抗率は、例えば「化学大辞典」(第1版、東京化学同人、1989年)や「化学便覧 基礎編II」(改定5版、日本化学会編、丸善、平成16年、611ページ)などに記載されている。本発明においては、2.5×10-8Ω・m以上10.0×10-8Ω・m以下の多価金属元素を用いる必要がある。例えばアルミニウム2.7×10-8Ω・m、カルシウム3.5×10-8Ω・m、マグネシウム4.5×10-8Ω・m、タングステン5.5×10-8Ω・m、モリブデン5.6×10-8Ω・m、コバルト5.8×10-8Ω・m、亜鉛5.9×10-8Ω・m、ニッケル7.0×10-8Ω・m、鉄9.7×10-8Ω・mなどを挙げることができる。20℃における抵抗率が2.5×10-8Ω・mよりも小さい場合には高温高湿環境下における電荷のリークが起き、10.0×10-8Ω・mを超える場合にはチャージアップの抑制効果が十分とは言えない。
また、蛍光X線分析における前記多価金属元素に基づくNet強度が0.10kcps以上である場合にチャージアップの抑制効果を満足に得ることができる。一方、量が多すぎると高温高湿環境下において電荷のリーク起因のカブリが発生し得るため、30.00kcps以下である必要がある。より好ましいのは20.00kcps以下である。なお、前記抵抗率範囲の多価金属元素を2種以上含有させる場合には、前記Net強度の範囲はそれぞれの多価金属元素の合算値とする。
前記の多価金属元素をトナー粒子中に含有させる手段は特に問わないが、有機ケイ素重合体による表層が形成された後は困難であるため、その前若しくは表層を形成しながら含有させることが好ましい。例えば、粉砕法によりトナー粒子を製造する場合には原料の樹脂に予め前記多価金属元素を含有させておくことや、原料を溶融混練する際に添加してトナー粒子に含有させることもできる。重合法など湿式製造法でトナー粒子を製造する場合には、原料に含有させておくことや、製造過程で水系媒体を介して添加することもできる。湿式製造法において、水系媒体中でイオン化させた状態を経てトナー粒子中に含有させることは均一化の観点から好ましい。前記多価金属元素がアルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウムであると、イオン化傾向が比較的大きく、イオン化し易いため特に好ましい。
製造時に混合する際の前記多価金属元素の態様は特に問わないが、単体、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩、ヘキサフルオロシリル化物、酢酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、塩素酸類塩、硝酸類塩等を挙げることが出来る。前述の通りこれらを水系媒体中で一度イオン化した状態を経てトナー粒子中に含有させることが好ましい。水系媒体とは水が50質量%以上と、水溶性の有機溶媒50質量%以下からなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを挙げることができる。
水系媒体がヒドロキシアパタイトを含有し、該多価金属元素がカルシウムである場合にはカルシウムの添加量に注意が必要である。ヒドロキシアパタイトの化学式はCa10(PO46(OH)2であり、カルシウムとリンのモル数の比は1.67である。従って、カルシウムのモル数をM(Ca)、リンのモル数をM(P)とした時、M(Ca)≦1.67M(P)の条件下ではカルシウムはヒドロキシアパタイトの結晶に取り込まれ易いため、これを超える量のカルシウムを存在させる必要がある。
[有機ケイ素重合体を含有する表層について]
本発明における表層とは、コアを被覆してトナー粒子の最表面に存在する層である。表層はコアの表面全てを被覆することが好ましいが、コア表面の一部に表層が形成されていない部分が存在していてもよい。詳細な方法は後述するが、本発明では有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合(以下、表層の厚み2.5nm以下の割合ともいう)が、20.0%以下であることが好ましい。この条件は、トナー粒子の表層のうち少なくとも80.0%以上が、2.5nm以上の前記有機ケイ素重合体を含む表層で構成されていることを近似している。すなわち、本条件を満たすと、前記有機ケイ素重合体を含む表層が十分にコア表面を被覆することとなる。更に好ましくは10.0%以下である。測定は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により規定できるが、詳細は後述する。
本発明におけるトナーの前記有機ケイ素重合体は、式(1)又は式(2)で表される部分構造を有する。更に、前記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析(ESCA)において、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、ケイ素原子の濃度dSiが2.5atomic%以上22.2atomic%以下である。
Figure 0006732532
(式(2)中のLは、メチレン基、エチレン基またはフェニレン基を表わす。)
有機ケイ素重合体は、Si原子の4個の原子価について1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si−O−Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、−SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の−SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO2)と類似の性質を有することが考えられる。従って本発明のトナーは、シリカを表面に添加した場合と似た状況を作り出していると考えられる。それにより、トナー粒子表面の疎水性を向上させることができ、トナーの環境安定性の向上が可能であると考えられる。
ESCAは、トナー粒子の表面からトナー粒子の中心(長軸の中点)に数nmの厚さで存在する表層の元素分析を行うものである。このトナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度dSiが2.5atomic%以上あることで、表層の表面自由エネルギーを小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することができる。一方、本発明におけるケイ素原子の濃度dSiは帯電性の観点より、22.2atomic%以下である必要がある。これを超えると前記多価金属化合物を含有させてもチャージアップの抑制効果が十分に得られない。
前記トナー粒子の表層におけるケイ素原子の濃度は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量によって制御することができる。また、有機ケイ素重合体の親水性基と疎水性基の割合、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによっても制御することができる。
更に、本発明におけるトナーは、トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)又は式(2)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上である。詳細な測定法は後述するが、これはトナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体の中で−SiO3/2で表される部分構造を、20%以上有していることを近似している。前述の通り、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のSi原子と結合することが、−SiO3/2の部分構造の意味である。もし、そのうち酸素1つがシラノール基であったとすると、その有機ケイ素重合体の部分構造は−SiO2/2−OHで表現される。さらに、酸素2つがシラノール基であれば、その部分構造は−SiO1/2(−OH)2となる。これら構造を比較すると、より多くの酸素原子がSi原子と架橋構造を形成するほうが、SiO2で表わされるシリカ構造に近い。そのため−SiO3/2骨格が多いほど、トナー粒子表面の表面自由エネルギーを低くすることができるため、環境安定性及び耐部材汚染に優れた効果がある。一方、−SiO3/2骨格が少ないほど負帯電性の強いシラノール基が増えることとなり、チャージアップを抑制しきれないことがあるため、−SiO3/2で表される部分構造は20%以上有している必要がある。帯電性、耐久性の観点からは100%以下であることが好ましく、40%以上80%以下であることがより好ましい。
また、前記部分構造による耐久性と疎水性及び帯電性により、表層よりも内部に存在する、染み出しやすい低分子量(Mw1000以下)樹脂、及び低Tg(40℃以下)樹脂、並びに、場合によっては離型剤のブリードが抑えられる。その結果、トナーの撹拌性が良化し、保存安定性、並びに、印字率が30%以上の高印字率画像出力耐久時の環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。
前記部分構造のピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体の代表的な製造例としては、ゾルゲル法と呼ばれる方法が挙げられる。ゾルゲル法は液体原料を出発原料に用いて、加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経て、ゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機−無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。
この有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子に均一に設けることによって、外添を行わなくても、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることができる。
さらに、ゾルゲル法は、液体から出発し、その液体をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類及び量などによって調整することができる。
本発明における前記有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を縮重合させて得られる物であることが好ましい。更に、前記有機ケイ素重合体を縮重合させる際には、イオン化した前記多価金属元素の存在下で行うことが、有機ケイ素重合体の強度向上の観点から好ましい。
Figure 0006732532
(式(Z)中、R1は、下記式(i)または(ii)であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
Figure 0006732532
(式(i)、式(ii)中の*は、ケイ素原子との結合部、式(ii)中のLはメチレン基、エチレン基またはフェニレン基を表わす。)
R2、R3、R4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合させて架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、アルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R2、R3、R4の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のR1を除く一分子中に3つの反応基(R2、R3、R4)を有する有機ケイ素化合物を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
式(Z)で表わされる構造を有する有機ケイ素化合物としては以下のものが挙げられる。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルエトキシジクロロシラン、ビニルジメトキシクロロシラン、ビニルメトキシエトキシクロロシラン、ビニルジエトキシクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシランの如き三官能性のビニルシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシメトキシシラン、アリルエトキシジメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメトキシジクロロシラン、アリルエトキシジクロロシラン、アリルジメトキシクロロシラン、アリルメトキシエトキシクロロシラン、アリルジエトキシクロロシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルジアセトキシメトキシシラン、アリルジアセトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジメトキシシラン、アリルアセトキシメトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジエトキシシラン、アリルトリヒドロキシシラン、アリルメトキシジヒドロキシシラン、アリルエトキシジヒドロキシシラン、アリルジメトキシヒドロキシシラン、アリルエトキシメトキシヒドロキシシラン、アリルジエトキシヒドロキシシランの如きの如き三官能性のアリルシラン。
有機ケイ素化合物は単独で用いても、あるいは二種類以上を複合して用いても良い。
前記式(Z)を満たす有機ケイ素化合物の含有量は、有機ケイ素重合体中の50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上である。前記式(Z)を満たす有機ケイ素化合物の含有量を50モル%以上とすることによって、さらにトナーの環境安定性を向上させることができる。
また、前記式(Z)の構造を有する有機ケイ素化合物と共に、その他の一分子中に3つ反応基を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)または1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。併用してもよい有機ケイ素化合物としては以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、ビニルトリイソシアネートシラン。
更に、トナー中の前記有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上10.5質量%以下であり、有機ケイ素重合体を含有する表層の平均厚みDav.が5.0nm以上100.0nm以下であることは特に好ましい。
前記有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上であることで、表層の表面自由エネルギーを更に小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を更に抑制することができる。10.5質量%以下であることで、前記多価金属化合物によるチャージアップ抑制効果を更に十分に得ることができる。有機ケイ素重合体の含有量は有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明における表層の平均厚みの求め方は後述する方法で求める。本発明において、有機ケイ素重合体を含有する表層とコア部は、隙間なく接していることが好ましい。換言すれば特開2001−75304号公報に開示されているような粒状塊の被覆層でないことが好ましい。これにより、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。トナー粒子の表層の平均厚みDav.が5.0nm未満ではトナー粒子中の樹脂成分や離型剤等によるブリードが発生しやすい。そのため、トナー粒子の表面性が変化して環境安定性、現像耐久性が悪くなる傾向がある。トナー粒子の表層の平均厚みDav.が100.0nmを超える場合では低温定着性が悪くなる傾向がある。前記トナー粒子の表層の平均厚みDav.は、有機ケイ素重合体の含有量、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法によって制御することができる。また、有機ケイ素重合体形成時の付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによっても制御することができる。
表層には特定の有機ケイ素重合体の他に、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や各種添加剤などが含有されていてもよい。
[結着樹脂を含有するコア部について]
本発明におけるトナー粒子を構成するコア部は、結着樹脂を含有するものである。結着樹脂は特段限定されず、従来公知のものを用いることができるが、本発明では結着樹脂はカルボキシル基を含有し、更に前記多価金属元素はアルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウムいずれか1種類以上である組み合わせが特に好ましい。その際、含有する多価金属元素がアルミニウムである場合には、前記トナー粒子の蛍光X線分析におけるアルミニウムに基づくNet強度は0.10kcps以上0.50kcps以下であることが特に好ましい。また、含有する多価金属元素が鉄である場合には、前記トナー粒子の蛍光X線分析における鉄に基づくNet強度は1.00kcps以上5.00kcps以下であることが特に好ましい。また、含有する多価金属元素がマグネシウム及び/又はカルシウムである場合には、マグネシウム及び/又はカルシウムに基づくNet強度は3.00kcps以上20.00kcps以下であることが特に好ましい。上記組み合わせであることにより、トナーに強いシェアが加わった場合の小粒子の離脱や割れが更に起き難くなることを見出した。これは、結着樹脂のカルボキシル基、有機ケイ素重合体のシラノール基、比較的にイオン化しやすい多価金属とが存在することにより、金属架橋が起きてコアと表層の接着強度が上がったと推測している。また、物質により好ましいNet強度の範囲が異なるのは金属の価数に関係するものと考えられる。即ち、価数が高い場合には少ない金属量で多数のシラノール基やカルボキシル基と配位し得るため、3価のアルミニウムは少量で、2価のマグネシウムとカルシウムは多量で、混合価数を取り得る鉄はその間の量であると考えられる。
[結着樹脂について]
結着樹脂はビニル系樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましく例示できる。ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンのようなスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体のようなスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これら結着樹脂は単独或いは混合して使用できる。
本発明においては結着樹脂がカルボキシル基を含有することが好ましく、カルボキシル基を含む重合性単量体を用いて製造された樹脂であることが好ましい。例えばα−エチルアクリル酸、クロトン酸などの(メタ)アクリル酸、およびα−アルキル誘導体あるいはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノアクリロイルオキシエチレンエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノメタクリロイルオキシエチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル誘導体など。
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させたものを用いることができる。カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂としては末端などのカルボキシル基はキャップしないことが好ましい。
本発明のトナーにおいては、高温時におけるトナーの粘度変化の改良を目的として樹脂が重合性官能基を有していてもよい。重合性官能基としては、ビニル基、イソシアナート基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基が挙げられる。
[架橋剤]
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
架橋剤の添加量としては、重合性単量体に対して0.001質量%以上15.000質量%以下であることが好ましい。
[離型剤について]
本発明において、トナー粒子を構成する材料の1つとして、離型剤を含有することが好ましい。前記トナー粒子に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ−ン樹脂が挙げられる。なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。なお、離型剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
[着色剤について]
本発明において、トナー粒子に着色剤を含有させる場合には特に限定されず、以下に示す公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。
パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
また、トナーの製造方法によっては、着色剤の持つ重合阻害性や分散媒体移行性に注意を払う必要がある。必要により、重合阻害のない物質による着色剤の表面処理を施して表面改質を行ってもよい。特に、染料やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。
[荷電制御剤について]
本発明において、トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩のようなによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤は単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。また、本発明のトナーにおいて金属を含有する荷電制御剤を用いる場合には、金属の抵抗率と含有量が本発明の範囲から外れない様に注意が必要である。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂100.00質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下であることが好ましい。
〔外添剤〕
本発明のトナー粒子は、外添せずに本発明のトナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、いわゆる外添剤である流動化剤、クリーニング助剤などを添加して本発明のトナーを構成してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。外添剤のBET比表面積は、10m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。
BET比表面積は、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、(株)島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m2/g)を算出することができる。
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
〔現像剤〕
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15μm以上100μm以下のものが好ましく、25μm以上80μm以下のものがより好ましい。
[トナー粒子の製造方法について]
本発明のトナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。更に湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができ、本発明においては乳化凝集法を好ましく用いることができる。これは、水系媒体中で前記多価金属元素をイオン化させ易いこと、結着樹脂を凝集させる際にトナー粒子中に前記多価金属元素を含有させ易いこと、更に前記有機ケイ素重合体と結着樹脂を金属架橋させ易いためである。
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子や着色剤などの材料を分散安定剤によって分散混合する。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。更に必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、またはいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子を内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を樹脂微粒子を凝集させる際に共に凝集させてもよい。また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を作ることもできる。
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。
界面活性剤として、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデイシルトリメチルアンオニウムブロマイドなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げることができる。
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
本発明におけるトナーの粒径は、画像の高精細、高解像の観点から重量平均粒径が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。トナーの粒径は細孔電気抵抗法により測定することができる。例えば「コールター・カウンター Multisizer 3」と、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3Version3.51」(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定および算出することができる。
また、本発明のトナーは転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。本発明において、トナーの平均円形度は、「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて測定および算出することができる。
[トナーの物性の測定方法]
<NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分の調製法>
トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように調製した。
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。
なお、外添剤などでトナー粒子の表面が処理されている場合は、下記方法によって外添剤を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
<式(1)又は式(2)で表される部分構造の確認方法>
式(1)のケイ素原子に結合しているメチン基(>CH−Si)の有無または式(2)のケイ素原子に結合しているメチレン基(Si−CH2−)、エチレン基(Si−C24−)、又はフェニレン基(Si−C64−)の有無を13C−NMRにより確認した。
13C−NMR(固体)の測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
式(1)で表わされるユニットの場合、式(1)のケイ素原子に結合しているメチン基(>CH−Si)に起因するシグナルの有無により、式(1)で表わされるユニットの存在を確認した。
式(2)で表わされるユニットの場合、式(2)のケイ素原子に結合しているメチレン基(Si−CH2−)、エチレン基(Si−C24−)、又はフェニレン基(Si−C64−)に起因するシグナルの有無により、式(2)で表わされるユニットの存在を確認した。
<トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)で表される部分構造の割合の算出方法>
トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMR(固体)測定を、以下の測定条件で行う。
29Si−NMR(固体)の測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
90°パルス幅:4.00μs,−1dB
コンタクト時間:1.75ms〜10ms
繰り返し時間:30s(DD/MASS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
上記測定後に、トナー粒子の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 式(2)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/22 式(3)
X3構造:RmSi(O1/23 式(4)
X4構造:Si(O1/24 式(5)
Figure 0006732532
(式(2)、(3)及び(4)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、水酸基またはアルコキシ基を示す。)
カーブフィティングはJEOL RESONANCE製 JNM−ECX500II用ソフトのJOEL Delta version5.0.4(商品名)を用いる。それぞれのピークをピークアップした。波形分離はガウス型を用いてピーク分離した。その一例を図1に示す。合成ピーク(b)と測定結果(d)の差分である合成ピーク差分(a)のピークが最も小さくなるようにピーク分割を行う。
本発明では化学シフト値でシランモノマーを特定して、トナー粒子の29Si−NMRの測定において全ピーク面積から未反応のモノマー成分を取り除いたX1構造の面積とX2構造の面積とX3構造の面積とX4構造の面積の合計を重合体の全ピーク面積とした。SX1+SX2+SX3+SX4=1.00
SX1={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX2={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX3={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX4={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
本発明においては、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であることを特徴とする。この測定方法において、−SiO3/2構造を示す値は上記SX3である。この値が、0.20以上であることが本発明の条件である。
<透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、トナー粒子の表面層の平均厚みDav.及び表面層の厚みが2.5nm以下の割合の測定方法>
本発明において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XT)(TEM)で1万〜10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
本発明においては、用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行っている。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四酸化ルテニウム染色法及び四酸化オスミウム染色法を用いてもよい。
当該測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値が後述の方法により求めたトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるものとした。
上述のように、FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XTを用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIF Tridiemを用い、Three Window法によりSi−K端(99eV)のEFマッピング像を取得して表面層に有機ケイ素重合体が存在することを確認する。
次いで、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径D4の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割する(図2参照)。次に、該中心からトナー粒子の表層へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1乃至32)、分割軸の長さをRAn、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の厚みをFRAnとする。
そして、該分割軸上の32箇所の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の平均厚みDav.を求める。さらに、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合を求める。
本発明では、平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算した。
[透過型電子顕微鏡(TEM)写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径Dtemを下記式に従って求める。
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
[トナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)]
トナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)は以下方法で求める。
まず、1つのトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)を以下の方法で求める。
(n)=(分割軸上における表面層の厚みの32箇所の合計)/32
平均化するためトナー粒子10個のトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)(n=1乃至10)を求め、トナー粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)とする。
Dav.={D(1)+D(2)+D(3)+D(4)+D(5)+D(6)+D(7)+D(8)+D(9)+D(10)}/10
[表面層の厚み2.5nm以下の割合]
[表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合]=〔{表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である分割軸の数}/32〕×100
この計算をトナー粒子10個に対して行い、得られた10個の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合の平均値を求め、トナー粒子の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合とした。
<トナー粒子の表層に存在するケイ素元素の濃度(atomic%)>
トナー粒子の表層に存在するケイ素原子の濃度dSi(atomic%)、炭素原子の濃度dO(atomic%)、及び、酸素原子の濃度dO(atomic%)は、X線光電子分光分析(ESCA)を用いた表面組成分析を行い算出した。本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:ULVAC−PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件:X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
ラスター:300μm×200μm
PassEnergy:58.70eV StepSize:0.125eV
中和電子銃:20μA、1V Arイオン銃:7mA、10V
Sweep数:Si 15回、C 10回、O 5回
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、ULVAC−PHI社提供の相対感度因子を用いて、トナー粒子の表層に存在する、ケイ素原子の濃度dSi、炭素原子の濃度dC、及び、酸素原子の濃度dO(いずれも、atomic%)を算出した。
<トナー粒子の粒径の測定>
細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置(商品名:コールター・カウンター Multisizer 3)と、専用ソフト(商品名:ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51、ベックマン・コールター社製)を用いる。アパーチャー径は100μmを用い、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、ベックマン・コールター社製のISOTON II(商品名)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は(標準粒子10.0μm、ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON II(商品名)に設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。ここにコンタミノンN(商品名)(精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器(商品名:Ultrasonic Dispersion System Tetora150、日科機バイオス(株)製)
の水槽内にイオン交換水所定量とコンタミノンN(商品名)を約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
<トナー(粒子)の平均円形度の測定方法>
トナー(粒子)の平均円形度の測定には、フロー式粒子像分析装置である「FPIA−3000型」(シスメックス(株)製)を用い、校正作業時の測定・解析条件で測定する。
イオン交換水20mLに、分散剤として界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加える。発振周波数50kHz、電気的出力150ワットの卓上型の超音波洗浄器分散機(商品名:VS−150、(株)ヴェルヴォクリーア製)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス(株)製)を使用する。前記手順に従い調整した分散液をHPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー(粒子)を計測する。粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.98μm以上19.92μm以下に限定し、トナー(粒子)の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の5100A(商品名)をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
また、トナー(粒子)の円形度分布において、モード円形度が0.98以上1.00以下であると、トナー(粒子)の多くが真球に近い形状を有することを意味している。鏡像力やファンデルワールス力等に起因するトナー(粒子)の感光体への付着力の低下がより一層顕著になり、転写効率が高くなり好ましい。
ここで、モード円形度とは、0.40から1.00までの円形度を、0.40以上0.41未満、0.41以上0.42未満、…0.99以上1.00未満及び1.00のように0.01ごとに61分割する。測定した各粒子の円形度をそれぞれ各分割範囲に割り振り、円形度頻度分布において頻度値が最大となる分割範囲の円形度をいう。
<蛍光X線>
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119−1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー粒子4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE−32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:kcps)を測定する。
<トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量の測定>
有機ケイ素重合体の含有量の測定は、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー粒子4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE−32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
有機ケイ素重合体を含まないトナー粒子100質量部に対して、シリカ(SiO2)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を5.0質量部、10.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi−Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO2添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナーを錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi−Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー中の有機ケイ素重合体含有量を求める。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1〜35のうち、実施例9、11、12、14〜18、21、22、25〜30は参考例である。なお、以下の配合における部数は、質量部を示す。
まず、実施例で行った評価について、その方法を以下に述べる。
<LBPでのトナー現像性評価>
タンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9600Cのトナーカートリッジに、トナー220gを装填した。そして、そのトナーカートリッジを高温高湿HH(30.0℃/80%RH)、常温常湿NN(25℃/50%RH)、低温低湿LL(温度10℃/湿度15%RH)の各環境下で24時間放置した。各環境下で24時間放置後のトナーカートリッジを上記LBP9600Cに取り付ける。HH環境とNN環境では35.0%の印字率、LL環境では1.0%の印字率画像をA4用紙横方向で1,000枚までプリントアウトして、初期と1,000枚出力時の画像の比較を行った。各環境で行った評価を以下に示す。
<HH環境カブリの評価>
初期の0%の印字比率の画像及びHH環境で1,000枚耐久出力後の0%の印字比率の画像において、「リフレクトメータ」((有)東京電色製)により測定した出力画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出した。また、そのカブリ濃度を下記の基準で画像カブリとして評価した。転写紙は70g/m2のA4サイズを用い、A4横方向に印字した。基準Dまでが実用上問題のないレベルである。
A:1.0%未満
B:1.0%以上1.5%未満
C:1.5%以上2.0%未満
D:2.0%以上2.5%未満
E:2.5%以上
<NN環境現像耐久性の評価>
現像耐久性はNN環境での部材汚染(フィルミング、現像スジ、ドラム融着)の程度で評価を行った。部材汚染は1,000枚耐久出力後に、前半部分をハーフトーン画像(トナー載り量0.25mg/cm2)で出力し、後半部分をベタ画像(トナー載り量0.40mg/cm2)であるミックス画像を出力して、下記基準に従い評価した。なお、転写紙は70g/m2のA4サイズを用い、A4横方向に印字した。基準Cまでが実用上問題のないレベルである。
A:現像ローラー上にも、ハーフトーン部、ベタ部の画像上にも排紙方向の縦スジや濃度の異なるポチは見られない。
B:現像ローラーの両端に周方向の細いスジが1本以上2本以下又は感光ドラム上に1個以上3個以下の融着物があるものの、ハーフトーン部、ベタ部の画像上に排紙方向の縦スジや濃度の異なるポチは見られない。
C:現像ローラーの両端に周方向の細いスジが3本以上5本以下又は感光ドラム上に3個以上5個以下の融着物あるものの、ハーフトーン部、ベタ部の画像上に排紙方向の縦スジや濃度の異なるポチがほんの少し見られる。しかし、画像処理で消せるレベル。
D:現像ローラーの両端に周方向の細いスジが6本以上20本以下又は感光ドラム上に6個以上20個以下の融着物があり、ハーフトーン部、ベタ部の画像上にも細かいスジが数本や濃度の異なるポチが見られる。画像処理でも消せない。
E:現像ローラー上とハーフトーン部の画像上に21本以上のスジや濃度の異なるポチが見られ、画像処理でも消せない。
<LL環境ゴーストの評価>
LL環境において低印字率で連続印字を行った時のゴーストを評価する。1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向で1000枚連続印刷を行った。その後、3cm幅のベタ黒縦ラインとベタ白縦ラインの繰り返しで構成される画像を連続10枚印字させてから、ハーフトーン画像を一枚印字させ、画像上に残る前画像の履歴を目視で判断した。尚、ハーフトーン画像の画像濃度はマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度測定を行い反射濃度0.4になるように調整した。基準Cまでが実用上問題のないレベルである。
A:ゴースト発生なし。
B:目視で一部に軽微な前画像の履歴が確認できる。
C:目視で一部に前画像の履歴が確認できる。
D:目視で全体的に前画像の履歴が確認できる。
<保存安定性の評価>
10gのトナーを100mLガラス瓶にいれ、温度50℃、湿度20%で15日間放置した後に目視で判定した。基準Cまでが実用上問題のないレベルである。
A:変化なし。
B:凝集体があるが、すぐにほぐれる。
C:ほぐれにくい凝集体が発生。
D:流動性なし。
E:明白なケーキングが発生。
<トナーの摩擦帯電量の測定>
負帯電極性トナー用標準キャリア(商品名:N−01、日本画像学会製)276gと評価トナー24gを500ccの蓋付きプラスチックボトルに投入した。振とう器(YS−LD:(株)ヤヨイ製)で、1秒間に4往復のスピードで1分間振とうを行って二成分現像剤を得た。この二成分現像剤30gを絶縁性の50ccプラスチック容器に分取して、HH環境及びLL環境それぞれで5昼夜調湿した。調湿した二成分現像剤をHH環境では帯電の立ち上がりとリークを評価するために200回/分の速度で30秒間振とう、LL環境では過剰な帯電を評価するために600秒間振とうしてから以下の方法で帯電量の測定を行った。
底部に目開き20μmの導電性スクリーンを装着した金属製の容器にいれ、吸引機で吸引し、吸引前後の質量差と、容器に接続されたコンデンサに蓄積された電位とを測定した。この際、吸引圧を2.0kPaとした。前記吸引前後の質量差、蓄電された電位、及びコンデンサの容量から、下記式を用いてトナー粒子又はトナーの摩擦帯電量を算出した。
Q=(A×B)/(W1−W2)
Q(mC/kg):トナー粒子又はトナーの摩擦帯電量
A(μF):コンデンサの容量
B(V):コンデンサに蓄積された電位差
W1−W2(kg):吸引前後の質量差
<表層強度>
表層強度が弱いと超音波分散機などのシェアにより表層が剥離したり、トナーが欠けたりして粒径の小さな粒子が増えるため、これを測定する。
測定装置として、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス株式会社製)及び「FPIA−3000用 試料自動分散機能搭載オートサンプラ」(シスメックス株式会社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は付属の専用ソフトを用いる。
測定には高倍率撮像ユニット(対物レンズ「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40))を用い、1.0μmポリスチレンラテックス粒子#5100A(DUKE SCIENTIFIC CORP.製)を用いて焦点調整を行ってから測定を行う。シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用する。オートサンプラの条件は分散剤分注量0.5ml、パーティクルシース分注量10ml、揺動撹拌強度80%、揺動撹拌時間30秒、超音波照射強度100%、超音波照射時間600秒、プロペラ撹拌回転数500rpm、プロペラ撹拌時間600秒とする。サンプルは、乾燥したトナー約40mgをオートサンプラ用ビーカーに秤りとってオートサンプラにセットする。測定条件設定は測定モードHPF、トータルカウント数2000として測定を行う。本発明の測定においては、粒子周囲長6.3μm以下粒子の個数頻度を付属ソフトにより解析した。表層強度が弱いトナー粒子は粒子周囲長6.3μm以下粒子の個数頻度が多い。
[実施例1]
<結着樹脂粒子分散液の調製>
スチレン89.5部、アクリル酸ブチル9.2部、カルボキシル基付与モノマーとしてアクリル酸1.3部、n−ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.3部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径が0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
<離型剤分散液の調製>
離型剤(ベヘン酸ベヘニル、融点:72.1℃)100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミル JN100((株)常光製)を用いて約1時間分散して離型剤分散液を得た。離型剤分散液の濃度は20質量%であった。
<着色剤分散液の調製>
着色剤としてカーボンブラック「Nipex35(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)」100部、ネオゲンRK15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミル JN100を用いて約1時間分散して着色剤分散液を得た。
<トナー1の作製例>
樹脂粒子分散液265部、ワックス分散液10部、着色剤分散液10部をホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させる。撹拌しながら容器内の温度を30℃に調整して、1規定の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=8.0に調整した(pH調整1)。凝集剤として、硫酸マグネシウム0.3部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を、30℃攪拌下、10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、50℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定する。重量平均粒径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム0.9部とネオゲンRK5.0部を添加して粒子成長を停止させた。
ここに、追添金属化合物として硫酸マグネシウム0.5部を添加してから有機ケイ素化合物であるビニルトリエトキシシラン14.0部を添加し、1規定の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=9.0に調整して(pH調整2)から95℃まで昇温した。95℃で撹拌保持してビニルトリエトキシシランの加水分解、縮合を行いながら、会合粒子の融着と球形化を行った。平均円形度が0.980に到達したら降温を開始し、85℃まで降温してから1規定の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=9.5に調整(pH調整3)して180分間撹拌して、縮合を更に進めてから冷却を行ってトナー粒子分散液1を得た。
得られたトナー粒子分散液1に塩酸を添加してpH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行い、更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。トナー粒子1の断面TEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層に均一なケイ素原子が存在すること、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以下であることを確認した。以降の実施例及び比較例においても、有機ケイ素重合体を含有する表層は同様のケイ素マッピングで表層に均一なケイ素原子が存在すること、表層の厚み2.5nm以下である分割軸の数の割合が20.0%以下であることを確認した。本実施例においては、得られたトナー粒子1を外添せずにそのままトナー1として用いた。
得られたトナー1のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例2]
添加する有機ケイ素化合物をアリルトリエトキシシランに変えた。また、有機ケイ素化合物の添加量を表1の如く変えた以外は、トナー1の作成例と同様の方法でトナー2を作製した。トナー2のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例3]
添加する有機ケイ素化合物の添加量、pH調整時に調整したpHを表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法でトナー3を作製した。トナー3のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例4〜8]
pH調整時に調整したpHを表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法でトナー4〜8を作製した。トナー4〜8のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例9〜14]
添加する凝集剤の種類と量、追添金属化合物の種類と量を表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法でトナー9〜14を作製した。トナー9〜14のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例15]
実施例1の<樹脂粒子分散液の調製>における配合比率をスチレン89.5部、アクリル酸ブチル10.5部、n−ラウリルメルカプタン3.2部とした。カルボキシル基付与モノマーであるアクリル酸は配合しなかった。それ以外はトナー1の作製例と同様の方法でトナー15を作製した。トナー15のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例16〜30]
凝集剤の種類と量、追添金属化合物の種類と量を表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法でトナー16〜30を作製した。トナー16〜30のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例31〜34]
添加する有機ケイ素化合物の量を表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法でトナー31〜34を作製した。トナー31〜34のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[実施例35]
添加する有機ケイ素化合物をp−スチリルトリメトキシシランに変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法でトナー35を作製した。トナー35のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[比較例1]
有機ケイ素化合物を添加しなかった以外は、トナー1の作製例と同様の方法で比較用トナー1を作製した。比較用トナー粒子1の断面TEM観察においてケイ素マッピングを行ったところ、表層にはケイ素原子は存在しなかった。また、比較用トナー粒子1は有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以上であった。
比較用トナー1〜3のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[比較例2]
添加する有機ケイ素化合物を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法で比較用トナー2を作製した。比較用トナー粒子2は有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以上であった。比較用トナー2のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[比較例3]
添加する有機ケイ素化合物をアリルトリエトキシシランに変えた。また、有機ケイ素化合物の量、pH調整時に調整したpHを表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法で比較用トナー3を作製した。
比較用トナー3のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[比較例4、5]
添加する有機ケイ素化合物の量、pH調整時に調整したpHを表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法で比較用トナー4、5を作製した。
比較用トナー4、5のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。
[比較例6〜12]
添加する凝集剤の種類と量、追添金属化合物の種類と量を表1の如く変えた以外は、トナー1の作製例と同様の方法で比較用トナー6〜12を作製した。比較用トナー6〜12のESCA、NMR、蛍光X線、TEMによる分析結果を表2に、現像評価と保存安定性、帯電量、表層強度の評価結果を表3に示す。なお、比較例6〜8の蛍光X線分析結果は多価金属元素が検出されなかったため、凝集剤と追添金属化合物で用いたカリウムの値を示す。
Figure 0006732532
Figure 0006732532
Figure 0006732532
表2及び表3より明らかな様に、本発明のトナー粒子の製造方法である「実施例1〜35」は「比較例1〜12」と比較して、現像耐久性、保存安定性、環境安定性に優れ、低温低湿環境下において低印字率で連続印字を行ってもゴーストが発生し難い。

Claims (2)

  1. 結着樹脂を含有するコア部と
    機ケイ素重合体を含有する表層と
    有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記結着樹脂はカルボキシル基を含有し、
    前記有機ケイ素重合体は下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、
    Figure 0006732532
    (式(2)中のLは、メチレン基、エチレン基はフェニレン基を表す。)
    前記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、ケイ素原子の濃度dSiが2.5atomic%以上22.2atomic%以下であり、
    前記トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する前記式(1)又は(2)で表される部分構造に帰属されるピーク面積の割合が20%以上であり、
    前記トナー粒子は20℃における抵抗率2.5×10-8Ω・m以上10.0×10-8Ω・m以下の多価金属元素を含有し、
    前記多価金属は鉄又はマグネシウムであり、
    前記多価金属が鉄である場合、前記トナー粒子の蛍光X線分析における鉄に基づくNet強度が1.00kcps以上5.00kcps以下であり、
    前記多価金属がマグネシウムである場合、前記トナー粒子の蛍光X線分析におけるマグネシウムに基づくNet強度が3.00kcps以上20.00kcps以下であ
    ことを特徴とするトナー。
  2. 前記トナー粒子中の前記有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上10.5質量%以下であり、
    透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた前記トナー粒子の断面の観察によって測定される、有機ケイ素重合体を含有する表層の平均厚みDav.が5.0nm以上100.0nm以下である、
    請求項1に記載のトナー。
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