JP6718192B2 - 磁気シールド構造 - Google Patents
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Description
また、孔穴部は、方向性電磁鋼板の高透磁率方向に沿った長辺を有するので、方向性電磁鋼板の持つ透磁率の異方性という特徴を残したまま軽量化することが可能となる。
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、磁気発生空間と対象空間との相互間の位置に形成され、磁気発生空間にて発生した磁気が、対象空間へと漏洩することを防止する磁気シールド構造に関するものである。ここで、「磁気発生空間」とは、磁気を発生させる磁気発生源が配置されている空間であって、任意の空間を適用することができるが、実施の形態においては、超伝導コイルや永久磁石によって磁気を発生させるMRI(核磁気共鳴画像法診断装置)が設置されたMRI検査室であるものとする。また、「対象空間」とは、磁気の漏洩を防止する対象となる空間であって、屋外又は屋内に限らず任意の空間を適用することができるが、実施の形態においては、上述したMRI検査室に隣接する待合室であるものとする。なお、各空間の利用目的や広さ等は任意である。
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
まずは、実施の形態1に係る磁気シールド構造について説明する。
まず、本実施の形態1に係る磁気シールド構造1の構成を説明する。図1は、本実施の形態1に係る磁気シールド構造1を示す斜視図、図2は、磁気シールド構造1を示す正面図、図3は、図2のA−A断面図である。ここで、以下では各図におけるX方向を幅方向(特に+X方向を右方向、−X方向を左方向)、Y方向を奥行き方向又は厚み方向(特に+Y方向を前方向、−Y方向を後方向)、Z方向を高さ方向(特に+Z方向を上方向、−Z方向を下方向)と必要に応じて称して説明する。なお、本実施の形態1においては、磁気発生空間E1の前方に対象空間E2が位置しており、これらの両空間の相互間に磁気シールド構造1が設けられるものとして説明する。
壁部10は、鋼板20を貼り付ける土台となる土台手段である。この壁部10は、磁気発生空間E1と対象空間E2との相互間の位置に形成されており両空間を区切るものであり、本実施の形態1では対象空間E2の前後左右の四方を囲うように配置されているが、図1ではX−Z平面に沿って配置された一部のみを図示している。なお、壁部10の形状や厚みや素材などは任意のものを適用できるが、本実施の形態1では公知の壁材である。ただし、当該壁部10を透光率の高い素材や通気性の良い素材で形成することにより、両空間の視認性や通気性を確保することができる。
鋼板20は、磁気発生空間E1と対象空間E2との相互間に配置される第1磁気遮蔽体である。この鋼板20は、磁気発生空間E1と対象空間E2との相互間である限り任意に配置できるが、本実施の形態1では全ての壁部10における対象空間E2側の全面に貼り付けられているが、図1ではX−Z平面に沿って配置された一部のみを図示している。なお、壁部10だけでなく天井部や床部に配置することで磁気遮蔽効果をさらに高めることができる。
続いて、実施例1について説明する。本実施例1では、磁気シールド構造1の磁気遮蔽性能に関して、孔穴部21に対応する位置(孔位置)と、孔穴部21以外の位置(鋼板位置)とで磁気遮蔽性能に差異が生じるかを解析した。なお、「孔位置」とは、具体的には孔穴部21の正面方向における投影領域に含まれる位置である。また、「鋼板位置」とは、具体的には孔穴部21以外の部分の正面方向における投影領域に含まれる位置であり、孔位置と重畳しない位置である。なお、解析の条件として、磁気発生空間E1で鋼板20から150mmの位置に設置したソレノイドコイル(外径600mm、内径300mm)にて磁気を発生させ、鋼板20の大きさは900×900mm角、板厚は2mm、評価面は鋼板20の中心から100mmの位置に設定し、有限要素法にて非線形解析を行った(後述する実施例2についても同様)。図4は、実施例1に係る解析結果1Aを示すグラフである。この図4における横軸は孔穴部21の孔径W[mm]であり、縦軸は孔無し鋼板(孔穴部21を有さない鋼板)に対する相対遮蔽率Slである。ここで、孔無し鋼板に対する相対遮蔽率Slは、孔無し鋼板と比べてどの程度の遮蔽性能を示すかの数値であり、孔無し鋼板と同一性能を「1」として小数値で表され、具体的には下記式(1)で表される。
Sl=(S−1)/(Splate−1)・・・(1)
ここで、
S=遮蔽率(Bi/B0)、
Splate=孔無し鋼板に対する遮蔽率、
また、
Bi=鋼板無しでの磁束密度、
B0=鋼板有りでの磁束密度。
Sg=Sl/(1−F/100)・・・(2)
ここで、
F=鋼板の開口率。
なお、「鋼板の開口率」とは、鋼板20の正面の面積における孔穴部21が占める割合を百分率で示したものである。
本実施の形態1によれば、孔穴部21を備えるので、鋼板20を軽量化して施工の手間やコストを削減することができると共に、さらに当該孔穴部21が径50mm以下であることにより、鋼板20における孔穴部21と孔穴部21以外の部分とで一様の磁気遮蔽性能を確保することができ、安定した磁気遮蔽効果を実現することができる。
続いて、実施の形態2について説明する。本実施の形態2は、概略的に、孔穴部が鋼板を貫通しない「穴」である形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号を必要に応じて付して、その説明を省略する。
図6は、本実施の形態2に係る磁気シールド構造2の図2のA−A断面に対応する断面図である。本実施の形態2に係る磁気シールド構造2は、概略的に、壁部10と鋼板30とを備えて構成されている。なお、壁部10については実施の形態1と同様に構成できるので詳細な説明を省略する。
鋼板30は、磁気発生空間E1と対象空間E2との相互間に配置される第1磁気遮蔽体である。本実施の形態2では、上述したようにこの鋼板30に設けられた孔穴部33は鋼板30を貫通していない。このように貫通しない孔穴部33を製造する方法は任意で、例えば一枚の鋼板30に対して突起を有するプレス機を当てて凹部を形成しても構わないが、本実施の形態2では、貫通する孔を有する鋼板30と、孔を有さない鋼板30とを相互に重ね合わせて接合することにより製造する。なお、この2枚の鋼板30のうち磁気発生空間E1側を「第1鋼板」31、対象空間E2側を「第2鋼板」32と称して説明する。なお、図6では第1鋼板31は貫通する孔を有さず、第2鋼板32は貫通する孔を有するが、逆に第1鋼板31に孔を設けても構わないし、第1鋼板31と第2鋼板32の両方に孔を設けてこれらの各孔の配置が重畳しないような配置としても良い。また、第2鋼板32の開口率は任意であるが、本実施の形態2では開口率は75%としている。
続いて、実施例2について説明する。本実施例2では、鋼板30を貫通しない孔穴部33を設けた場合における磁気遮蔽性能に関して解析を行った。図7は、実施例2に係る解析結果2Aを示すグラフである。具体的には、本実施例2では、(a)第1鋼板31及び第2鋼板32共に開口率=75%で厚み1mmである解析モデル、(b)第1鋼板31は開口率=75%で厚み1mm、第2鋼板32は孔無しで厚み1mmである解析モデル、(c)第1鋼板31は孔無しで厚み1mm、第2鋼板32は開口率=75%で厚み1mmである解析モデル、(d)開口率=37.5%で厚み2mmの単一の鋼板である解析モデルにおいて解析を行った。なお、出力は4mT、孔径10mm、板厚は計2mmで固定した。また、モデル(a)では2枚の鋼板の孔の位置が互いに一致するようにした。なお、図7における横軸は各解析モデル、縦軸(左側)は孔無し鋼板に対する相対遮蔽率Sl、縦軸(右側)は孔無し鋼板に対する重量比(%)である。また、図8は、実施例2に係る解析結果2Bを示すグラフである。図8の横軸は各解析モデル、縦軸は孔無し鋼板に対する重量比を考慮した相対遮蔽率Sgを示している。
本実施の形態2によれば、第1鋼板31に対して相互に重ね合される第2鋼板32を備えるので、第1鋼板31と第2鋼板32との組み合わせにより様々な形状や構造の磁気シールド構造2を構成できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
発明の詳細な説明や図面で説明した磁気シールド構造1、2の各部の寸法、形状、材料、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、材料、比率等とすることができる。例えば鋼板20、30は鋼板と称しているがアモルファス材料やナノ結晶軟磁性材料などでも構わない。
また、孔穴部21、33の配置や形状は図示のものに限定されない。図9は、第1の変形例に係る鋼板40を示す拡大正面図、図10は、第2の変形例に係る鋼板50を示す拡大正面図である。これらの図9に示すように孔穴部41を60°千鳥(1つの孔穴部41の中心と、隣接する他の複数の孔穴部41の中心と、を結ぶ直線の成す角度が60°である配置)で配置しても良いし、図10に示すように孔穴部51を45°千鳥(1つの孔穴部51の中心と、隣接する他の複数の孔穴部51の中心と、を結ぶ直線の成す角度が45°である配置(格子状配置))で配置しても良いし、図示はしないが、放射状に配置しても良い。なお、図9及び図10では、互いに隣接する孔穴部41、51の中心を結ぶ線を一点鎖線で図示している。ただし、図9及び図10のように孔穴部41、51の正面形状を円形とする場合には、図10のように45°千鳥とするよりも、図9のように60°千鳥とする方が好ましい。すなわち、図9のような60°千鳥の配置では、互いに隣接する孔穴部41同士の間隔を一定にすることができ、図10のような孔穴部51同士の間隔が狭い部分(鋼板50の薄い部分52)を無くすことができ、磁気遮蔽性能の観点から好ましい。このように、第1の変形例によれば、孔穴部41は正円形孔穴であり、60°千鳥配列で複数配列されているので、鋼板40における孔穴部41を除く部分の幅を好適に確保でき、磁気遮蔽性能を向上させることが可能となる。
各実施の形態1、2において鋼板20、30は方向性を有さない鋼板としたが、これに限らない。図11は、第3の変形例に係る鋼板60を示す拡大正面図である。この図11に示すように、例えば、鋼板60は方向性電磁鋼板であり、孔穴部61は方向性電磁鋼板の高透磁率方向に沿った長辺を有する長丸形孔穴又は長方形孔穴であっても良い。ここで、「方向性電磁鋼板」とは透磁率の方向性を有する電磁鋼板であり、「透磁率の方向を有する」とは、方向によって透磁率が異なることを示す。そして、例えば以下における「X方向に透磁率の方向性を有する」という表現は、X方向の透磁率が他の方向の透磁率よりも大きいことを示す。このように透磁率の方向性を有する磁性体としては、例えば方向性珪素鋼板や、アモルファス繊維をシート状に形成したもの等を適用できる。この図11では、鋼板60は配置した状態で幅方向(X方向)に透磁率の方向性を有しており、各孔穴部61は幅方向(X方向)に長い長方形孔穴である。このように、鋼板60の電磁率の方向と、孔穴部61の長手方向とが一致し、孔穴部61は、方向性電磁鋼板の高透磁率方向に沿った長辺を有するので、方向性電磁鋼板の持つ透磁率の異方性という特徴を残したまま軽量化することが可能となる。
各実施の形態1、2における壁部10と鋼板20、30との位置関係は例示に過ぎず、これに限らない。例えば各実施の形態1、2においては壁部10の前面に鋼板20、30が貼り付けられているが、これに限らず、壁部10の後面や、前面と後面の両面等に鋼板20、30を貼り付けても構わないし、壁部10の内部に鋼板20、30を埋め込んで配置しても構わない。また、壁部10ではなく扉に対して鋼板20、30を貼り付けても構わない。また、鋼板20、30がそれ自身で自立できる場合には、この壁部10を設けなくても構わない。
付記1の磁気シールド構造は、磁気発生空間にて発生した磁気が対象空間へと漏洩することを防止する磁気シールド構造であり、前記磁気発生空間と前記対象空間との相互間に配置される第1磁気遮蔽体であって、径50mm以下の孔穴部を有する第1磁気遮蔽体を備える。
付記1に記載の磁気シールド構造によれば、孔穴部を備えるので、第1磁気遮蔽体を軽量化して施工の手間やコストを削減することができると共に、さらに当該孔穴部が径50mm以下であることにより、第1磁気遮蔽体における孔穴部と孔穴部以外の部分とで一様の磁気遮蔽性能を確保することができ、安定した磁気遮蔽効果を実現することができる。
10 壁部
20 鋼板
21 孔穴部
30 鋼板
31 第1鋼板
32 第2鋼板
33 孔穴部
40 鋼板
41 孔穴部
50 鋼板
51 孔穴部
52 薄い部分
60 鋼板
61 孔穴部
E1 磁気発生空間
E2 対象空間
Claims (3)
- 磁気発生空間にて発生した磁気が対象空間へと漏洩することを防止する磁気シールド構造であり、
前記磁気発生空間と前記対象空間との相互間に配置される第1磁気遮蔽体であって、径50mm以下の孔穴部を有する第1磁気遮蔽体を備え、
前記第1磁気遮蔽体は方向性電磁鋼板であり、
前記孔穴部は、前記方向性電磁鋼板の高透磁率方向に沿った長辺を有する長丸形孔穴又は長方形孔穴である、
磁気シールド構造。 - 前記孔穴部は、前記磁気発生空間側から前記対象空間側へ至る方向に沿って貫通する孔である、
請求項1に記載の磁気シールド構造。 - 前記第1磁気遮蔽体に対して相互に重ね合される第2磁気遮蔽体を備える、
請求項1又は2に記載の磁気シールド構造。
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