JP6675916B2 - 耐火物の保温構造 - Google Patents
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ここで、たとえば、特開2009−107012号公報に開示されている連続鋳造用ノズルは、ノズル本体の外側面に外装ヒーターと断熱材を設けている。当該断熱材は、現在、耐火セラミックファイバー(Refractory Ceramic Fiber:RCF)が広く用いられている。
耐火セラミックファイバー(RCF)は、シリカとアルミナを主成分とする非晶質の人造鉱物繊維からなり、発がん性又は呼吸器に対する反復曝露による毒性を有し、健康被害を引き起こす有害性を有しているとされている。そのため、使用を制限することが望ましい。そして、当該耐火セラミックファイバー(RCF)の代替物として、近年、人体に対する影響が低い生体溶解性無機質繊維(Bio Soluble Inorganic Fiber:BSF)又はアルミナ繊維(Alumina Fiber:AF)からなる断熱材が注目されている。
このように耐火物本体の表面に酸化防止剤を塗布することは、例示した連続鋳造用ノズルに限らず、高温環境下で強い酸化雰囲気に晒される耐火物、特に黒鉛、カーボン質を含んでいる耐火物ではいずれも共通する解決方法である。また、常に酸化雰囲気に晒されるというわけではない耐火物は、釉薬を接着剤として用いて耐火物本体に断熱材を直接貼り合わせている場合がある。当該釉薬は、耐火物本体が高温になったとき、溶融する場合がある。
また、断熱材に生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)を用いた場合、上記のような高温環境下で予熱して使用するとき、生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)からなる断熱材を用いた連続鋳造用ノズルは、従来の耐火セラミックファイバー(RCF)からなる断熱材を用いた連続鋳造用ノズルよりも短時間で低温となる問題が生じた。これは、予熱の際に溶融して高温となった釉薬が生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)と反応して、断熱材が溶融し、当該断熱材が薄くなったことが原因である。
断熱材の多くは、無機質繊維をフェルト状に形成している。断熱材の断熱性・保温性に係る熱伝導率は、当該無機質繊維間に滞留する空気によって形成される空気層の厚さに大きく左右される。断熱材が溶融して薄くなると当該空気層もまた薄くなるので、断熱材は断熱性・保温性が悪化する。
ここで、生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)からなる断熱材は、従来の耐火セラミックファイバー(RCF)からなる断熱材よりも、高温環境下で酸化防止剤を含む釉薬に容易に反応して溶融することが確認されている。すなわち、生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)からなる断熱材を用いた連続鋳造用ノズルは、従来の耐火セラミックファイバー(RCF)からなる断熱材を用いた連続鋳造用ノズルよりも、高温環境下で断熱材が薄くなりやすい。そのため、生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)からなる断熱材を用いた連続鋳造用ノズルは、従来の耐火セラミックファイバー(RCF)からなる断熱材を用いた連続鋳造用ノズルよりも短時間で低温となったと考えられる。
このように、生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)は、耐火セラミックファイバー(RCF)よりも容易に釉薬、特に酸化防止剤と反応して溶融するおそれがあり、生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)からなる断熱材は、十分な耐熱性、断熱性を得ることができずに保温効果が低下するおそれがある。
当該耐火物本体を一様に覆う釉薬からなる被膜層と、
当該被膜層の外側面側に配した、断熱材とからなる耐火物の保温構造であって、
前記被膜層と、前記断熱材の間に、
厚さが2mm以上5mm以下で、前記断熱材に対する非反応性を有し、所定の割合で混合して形成したアルミナ及びシリカを主成分とするアルミナ・シリカ系耐火物である蓄熱層を設け、
高温環境下で前記被膜層の前記釉薬が溶融したとき、
溶融した当該釉薬が前記断熱材と反応しないように、前記蓄熱層が前記断熱材を保護すると共に、
高温環境下で熱せられた前記耐火物本体の熱を前記蓄熱層が蓄熱して、前記耐火物本体を保温するようにしたことを特徴とする。
これにより、たとえば、耐火物本体と断熱材を貼り合せている釉薬、特に耐火物本体の酸化を防止するための酸化防止剤が高温環境下で溶融した場合であっても、蓄熱層は、酸化防止剤と断熱材が直接接触することを防ぎ、酸化防止剤が断熱材と反応することを防止することができる。そのため、本発明に係る耐火物の保温構造は、断熱材の断熱効果低減を防止することができる。そして、断熱材と耐火物本体の間で蓄熱層が耐火物本体から伝導する熱を蓄熱すると共に、断熱材は、蓄熱層の熱が空気中へ放熱されることを防止することができるので、本発明に係る耐火物の保温構造は、長時間に亘って耐火物本体を保温することができる。
さらに、本発明に係る耐火物の保温構造によれば、従来の耐火セラミックファイバー(RCF)よりも高温環境下で釉薬、特に酸化防止剤と反応しやすい生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)からなる断熱材を、耐火セラミックファイバー(RCF)からなる断熱材と同じ環境下で使用することができる。これにより、人体に悪影響を及ぼすとされる耐火セラミックファイバー(RCF)が使用されている高温の溶湯を扱う環境において、当該耐火セラミックファイバー(RCF)を人体に対する影響が低い生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)と入れ替えることができる。そのため、当該高温環境における環境負荷を軽減させることができる。
特に、頻繁に断熱材が高温環境下に晒される連続鋳造の工程、その中でも連続鋳造用ノズルの断熱材に、生体溶解性無機質繊維(BSF)又はアルミナ繊維(AF)からなる断熱材を用いた場合には、入れ替えた効果を大きくすることができる。
第1の実験は、蓄熱層13の不浸透性を示すものである。当該第1実験の概略を図2に示し、当該第1実験の結果を図3に示す。第1実験は、第1実施例に係る蓄熱層13と従来の耐熱性無機接着剤からなる接着層13Aとを比較対照して行った。これによって、所定の高温環境下において、耐酸化層12をなす酸化防止剤が蓄熱層13に浸透しないことを示す。
第2の実験は、第1実施例に係る耐火物の保温構造の保温効果を示すものである。当該第2実験の結果を図4に示す。第2実験は、断熱材14を貼らない場合、従来の耐熱性無機接着剤からなる接着層13Aを用いて断熱材14を貼り付けた場合、第1実施例に係る蓄熱層13を耐酸化層12と断熱材14の間に設けた場合と場合分けし、比較対照して行った。これによって、第1実施例に係る蓄熱層13が従来の耐熱性無機接着剤を用いた場合よりも高い保温効果を有することを示す。
連続鋳造用ノズルに係る耐火物10は、耐火物本体11の外側に断熱材14を配して形成されている。
なお、このように耐火物本体11と断熱材14をセットにして用いられる耐火物10は、連続鋳造用ノズルに限定されず、たとえば、製銑・製鋼炉のライニング材又は絶縁材、熱遮蔽板、耐熱材、防火壁保護材等の高温に晒される箇所に使用されるものがあり、高温の熱源は、鋳造に係る溶融金属の他に、たとえば溶融スラグ、火炎、加熱ヒーターといったものがある。
耐火物10は、図1に示すように、内側から外側に向かって耐火物本体11、耐酸化層12、蓄熱層13、断熱材14となるように積層されて形成されている。
本実施例に係る耐火物本体11は、少なくとも1500℃以上の高温に耐えることができるように形成されている。これにより、耐火物本体11は、使用前の予熱において数時間高温環境下で晒されても、また使用時に内側面側に高温の溶鋼が接した場合であっても、当該高温による耐火物本体11の溶損を防止することができる。
酸化防止剤は、溶融温度が500℃〜1400℃となるように形成されている。500℃を下回る場合には、溶融した酸化防止剤の粘性が下がって耐火物本体の外側面にムラができるおそれがある。また、溶鋼の温度が約1500℃であって、連続鋳造用ノズルを使用前に予熱するときの温度が約1400℃であることから、酸化防止剤を1400℃に熱した場合、耐火物本体の外側面を充分にコーティングすることができる。
なお、耐火物本体11の組成によって耐火物本体11自身が高い耐酸化性を有する場合、または耐火物を使用する環境が高温の酸化性雰囲気中でない場合には、耐酸化層12を設けなくとも良く、たとえば、一般的な釉薬からなる被膜層を形成して、耐火物本体11を保護するようにしたり、蓄熱層13の下地として耐熱性無機接着剤を塗布するようにしても良い。
本実施例に係るアルミナ・シリカ(Al2O3−SiO2)系耐火物は、不浸透性を有し、高い強度と優れた耐熱性、耐熱衝撃性を備えているものが好ましい。
不浸透性をする蓄熱層13は、耐酸化層12又は耐火物本体11の外側面に塗布した耐熱性無機接着剤が、耐火物10の使用前、又は使用時の高温環境下で溶融したとき、溶融した酸化防止剤等が、断熱材14の隙間に浸透することを防止することができる。
そして、耐熱性、耐熱衝撃性を有する蓄熱層13は、耐火物本体11からの熱を遮断して、当該熱が断熱材14へ伝導することを防止することができる。
さらに、蓄熱層13は、耐火物本体11から伝導する熱を蓄熱するように形成されている。蓄熱層13と断熱材14によって耐火物本体11を保熱することができ、スポーリングを防止することができる。また、たとえば、耐火物本体11が連続鋳造用ノズルである場合、蓄熱層13の高い保熱効果によって、当該連続鋳造用ノズルの温度を高く保ったまま維持することができるので、当該連続鋳造用ノズルが冷えてノズル内壁に不純物が付着してノズル内孔を閉塞することを防止することができる。
このように、高い不浸透性と耐熱性、耐熱衝撃性を有する蓄熱層13は、高温環境下で耐酸化層12から酸化防止剤を浸透させず、蓄熱層13自身もまた高温環境下に耐え得るので、断熱材14と反応しない非反応性を有している。そのため、蓄熱層13は、断熱材14を溶融した酸化防止剤等から保護して、当該断熱材14の断熱性を維持することができ、さらには耐火物10の耐熱性、耐熱衝撃性を向上させることができる。
蓄熱層13は、アルミナ・シリカ(Al2O3−SiO2)系耐火物を0.1mm以上5mm以下の厚さで耐火物本体11又は耐酸化層12に塗布又は吹き付けて形成されている。蓄熱層13が、0.1mm厚よりも薄い場合には十分な耐熱性、耐熱衝撃性を得ることができず、断熱材14を保護することができないおそれがある。また蓄熱層13が5mm厚よりも厚い場合には、耐火物本体11又は耐酸化層12に塗布した後、乾燥するまでに垂れたり、偏ったりして蓄熱層13の厚さにムラが出るおそれがある。これを踏まえて、耐熱性、耐熱衝撃性を維持しつつ蓄熱層13の蓄熱効果が最も期待できる厚さは、2mm以上5mm以下が好ましい。
本実施例に係るアルミナ・シリカ(Al2O3−SiO2)系耐火物のアルミナ(Al2O3)と、シリカ(SiO2)の混合割合は、重量比でアルミナが50%〜90%、シリカが50%〜10%である。アルミナの混合割合が50%を下回り、シリカの混合割合が増えると耐熱性が低下し、耐火物本体からの熱によって溶けるおそれがある。一方、アルミナの混合割合が90%を上回ると熱伝導率が向上し、断熱材14に対する蓄熱層13としての働きが低減する。また、アルミナ(Al2O3)と、シリカ(SiO2)からなるアルミナ・シリカ(Al2O3−SiO2)系耐火物に、マグネシア(MgO)、又はジルコニア(ZrO2)といった無機質原料を添加して、断熱材14と高温環境下で反応しない非反応性を高めても良い。
なお、蓄熱層13はアルミナ・シリカ(Al2O3−SiO2)系耐火物に限定されるものでは無く、高い不浸透性、耐熱性、耐熱衝撃性、及び低い熱伝導率を備えた無機質化合物であれば良い。たとえば、少なくとも重量比50%以上のアルミナを含有しているアルミナ系耐火物であって、当該アルミナ系耐火物にシリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)、又はジルコニア(ZrO2)からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上を所定の割合で配合することによって、断熱材14と高温環境下で反応しない非反応性を有するものであれば良い。ここで、たとえば、シリカ(SiO2)とマグネシア(MgO)を組み合わせてアルミナ(Al2O3)に添加した場合、アルミナ・シリカ・マグネシア系耐火物を得ることができ、シリカ(SiO2)とジルコニア(ZrO2)を組み合わせてアルミナに添加した場合、アルミナ・ジルコン系耐火物を得ることができる。これらはいずれも、本実施例に係るアルミナ・シリカ(Al2O3−SiO2)系耐火物と同様な断熱材14に対する非反応性を呈する。
本実施例においては、耐火度が1250℃以上の生体溶解性無機質繊維(BSF)からなる無機質繊維を断熱材14としている。
生体溶解性無機質繊維(BSF)は、高純度のアルミナ、シリカ、酸化カルシウム(CaO)、マグネシア(MgO)を電気溶融させて所定の割合で混合し、繊維化して形成されている。当該生体溶解性無機質繊維(BSF)は、吸引等で人体に摂取されたとしても体内の水分によって分解・排出される特性を有している。生体溶解性無機質繊維(BSF)は、耐火セラミックファイバー(RCF)と同程度の耐熱性を有しているが、高温環境下で、耐火物本体11を被覆する釉薬、特に上記の耐酸化層12を形成する酸化防止剤と容易に反応して溶融しやすく、その場合には耐火セラミックファイバー(RCF)と同程度の耐熱性を維持できないという問題がある。
また、酸化防止剤にとどまらず、当該生体溶解性無機質繊維(BSF)からなる断熱材14は、従来、耐火物本体を被覆する釉薬、たとえば耐熱性無機接着剤であっても、使用環境によっては当該耐熱性無機接着剤と生体溶解性無機質繊維(BSF)が熱によって反応して、生体溶解性無機質繊維(BSF)が溶融する場合がある。
しかしながら、図1に示すように、耐酸化層12と断熱材14との間に、高温環境下で当該断熱材14に対する非反応性を有する蓄熱層13を設けた。これによって、耐酸化層12をなす酸化防止剤、又は従来の釉薬、或いは耐熱性無機接着剤は、蓄熱層13で阻まれて断熱材14へ浸透することができず、高温環境下で溶融した酸化防止剤等と生体溶解性無機質繊維(BSF)が直接接触することを防止することができる。すなわち、蓄熱層13は、高熱環境下で生体溶解性無機質繊維(BSF)からなる断熱材14を、耐酸化層12等から保護することができる。
アルミナ繊維(AF)は、アルミナとシリカの重量比が70:30〜97:3であり、圧縮空気または遠心力を利用して生成される直径数μmで長さ数百mm以下のコットン状の繊維である。アルミナ繊維(AF)と耐火セラミックファイバー(RCF)は共にアルミナとシリカを主成分としているものではあるが、アルミナを多く含むアルミナ繊維(AF)が結晶質の繊維であることに対し、シリカを多く含む耐火セラミックファイバー(RCF)は非晶質である点が相違している。これにより、アルミナ繊維(AF)は、耐火セラミックファイバー(RCF)よりも融点が高く、耐熱性において優れている。しかしながら、アルミナ繊維(AF)は、第1実施例に記載した生体溶解性無機質繊維(BSF)と同様に、高温環境下で、耐酸化層12を形成する酸化防止剤と容易に反応して溶融しやすく、その場合には耐火セラミックファイバー(RCF)と同程度の耐熱性を維持できないという問題がある。また、酸化防止剤にとどまらず、当該アルミナ繊維(AF)からなる断熱材14Aは、従来の釉薬、たとえば耐火物本体11と断熱材を貼り合わせる接着剤として用いている耐熱性無機接着剤であっても、使用環境によっては当該耐熱性無機接着剤とアルミナ繊維(AF)が熱によって反応して、アルミナ繊維(AF)が溶融する場合がある。
しかしながら、図1に示すように、耐酸化層12と断熱材14との間には、高温環境下で断熱材14に対して非反応性を有する蓄熱層13を設けた。これによって、耐酸化層12をなす酸化防止剤、又は従来の耐熱性無機接着剤は、蓄熱層13で阻まれて断熱材14へ浸透することができず、高温環境下で溶融した酸化防止剤等とアルミナ繊維(AF)が直接接触することを防止することができる。すなわち、蓄熱層13は、高熱環境下でアルミナ繊維(AF)からなる断熱材14を、耐酸化層12から保護することができる。
まず、第1の実験は、本実施例に係る蓄熱層13の不浸透性を示すものである。当該第1実験は、2つのサンプルを用意した。
第1のサンプルは、図2に示すように、耐火物本体11に耐酸化層12と蓄熱層13を同厚で積層して形成されている。第2のサンプルは、蓄熱層13に替えて従来の耐熱性無機接着剤からなる接着層13Aを有している。図3は、第1サンプルと第2サンプルを比較対照した実験結果を示すものであって、サンプルを所定の高温環境下に置いたとき、耐酸化層12をなす酸化防止剤が、蓄熱層13へ浸透するか否か、従来の耐熱性無機接着剤と比較対照したものである。所定の高温環境下で浸透している場合を○で、浸透していない場合を×で示す。
一方、図3に示した表の上段に示すように、蓄熱層13を耐酸化層12に積層した第1サンプルで行った実験例の場合、1100℃〜1500℃の各高温環境下では、いずれも×が表示されている。すなわち、耐酸化層12をなす酸化防止剤は、1100℃から1500℃の各高温環境下で蓄熱層13へ浸透していないことが解る。これによって、蓄熱層13が高い不浸透性を有していることを、確認することが出来た。
したがって、上記の比較対照実験は、所定の高温環境下において蓄熱層13が酸化防止剤に対する不浸透性を有していることを示すという本第1実験の課題を証明するものである。
当該第2実験は、本実施例に基づく耐火物10の実験例と、比較対象として第1比較実験例と第2比較実験例の2例との合計3例を比較対照することによって行う。図4に当該第2実験に係る実験結果を示す。
実験に用いた耐火物10は、図1に示すように、連続鋳造用に形成された黒鉛質耐火物からなる耐火物本体11と、当該耐火物本体11の外側面側に、耐酸化層12を有している。図1に示す耐火物本体11の内側面側11aには、熱源が配置されている。当該熱源を所定の温度にして耐火物本体11を加熱することによって、耐火物10を所定の高温環境下に置いた場合と同様の状態にしている。耐火物10は図1に示すように断熱材14を有している。本実験において、断熱材14は、1mm厚、2mm厚、3mm厚、6mm厚、12mm厚、25mm厚と厚さを変えたが、断熱材の厚さを変えたことによる実験結果の差異は保温時間の長短の他に認められなかった。そのため、図4の実験結果には25mm厚の断熱材14を使用した場合を示す。
実験例は、本実施例に係る蓄熱層13を有する場合、第1比較実験例は、蓄熱層13に替えて接着層13Aを有する場合、第2比較実験例は、蓄熱層13及び接着層13Aのいずれも設けず、また断熱材14も貼り付けていない場合である。
第1比較実験例の接着層13Aは、水ガラスからなり、図1に示すように、実験例の蓄熱層13と同様に、耐酸化層12上に3mm厚で形成されている。水ガラス(珪酸ナトリウム溶液)は、上述した耐熱性無機接着剤の一種であって、無機繊維・建材・鋳型の接着剤、コーティング剤・シーリング剤として広く使用されている。当該第1比較実験例に係る耐火物本体11の温度変化を示すグラフは、図4の●マーク付き折れ線グラフである。
第2比較実験例は、蓄熱層13及び接着層13Aのいずれも形成せず、また断熱材14を貼り付けておらず、耐火物本体11と耐酸化層12からなる耐火物10である。当該第2比較実験例に係る耐火物本体11の温度変化を示すグラフは、図4の■マーク付きの折れ線グラフである。
これに対し、図4の●マークに示すように、接着層13Aを有する第1比較実験例の場合、耐火物本体11の温度は、若干緩やかに冷めていくようになったものの、15分後には約700℃と、実験開始直後から半分の温度まで冷めている。
一方、図4の▲マークに示すように、蓄熱層13を有する実験例の場合、耐火物本体11の温度は、8分前後まで約1000℃以上をキープし、15分後も約900℃と高い温度を維持していることが確認できる。これは、耐火物本体11と断熱材14との間に設けた蓄熱層13が熱を蓄え、断熱材14の保温効果と相まって耐火物本体11からの放熱を抑えて高い蓄熱効果を発揮しているものと推測することができる。
すなわち、蓄熱層13を設けた結果、長時間に亘って耐火物本体11を保温できることが確認された。
ここで、連続鋳造用ノズルは、通常、使用前に約1400℃の高温環境下に数時間置かれて予熱される。本実験において生体溶解性無機質繊維(BSF)からなる断熱材14と蓄熱層13によって、長時間耐火物本体11を保温可能であることが確認できたので、従来の耐火セラミックファイバー(RCF)からなる断熱材と置き換えて使用しても実用に十分耐え得るといえる。これによって、耐火セラミックファイバー(RCF)を生体溶解性無機質繊維(BSF)に置き換えた場合には、人体への影響を極めて低くすることができ、作業者の健康被害を防止することができる。
当該蓄熱層13は、耐火物本体11の酸化を防止するために高温環境下で耐酸化層12を成す酸化防止剤が溶融したとき、溶融した酸化防止剤と反応せず溶融しないので、溶融した酸化防止剤が断熱材14に浸透することを防止することができる。これによって、酸化防止剤と断熱材14が高温環境下で接触することを防ぐことができるので、断熱材14が溶融した酸化防止剤と反応して溶融することを防止することができ、断熱材14の断熱性、耐久性を向上させることができる。
また、蓄熱層13は、溶融した酸化防止剤が断熱材14に浸透することを防ぐだけではなく、従来の耐熱性無機接着剤が、所定の高温環境下で溶融した場合にも断熱材14へ浸透することを防ぐことができる。これにより、耐熱性無機接着剤を使用している場合であっても、断熱材14の断熱性、耐久性を向上させることができる。
このように、断熱材14の断熱性と耐久性を向上させつつ、蓄熱層13自身が耐火物本体11からの熱を蓄熱するようにした。これにより蓄熱された熱は、断熱材14側へ放熱されることがないので、蓄熱層13は、耐火物本体11を長時間に亘って保温することができる。
Claims (7)
- 内側面側に金属溶湯からなる高温物が接する耐火物本体と、
当該耐火物本体を一様に覆う釉薬からなる被膜層と、
当該被膜層の外側面側に配した、断熱材とからなる耐火物の保温構造であって、
前記被膜層と、前記断熱材の間に、
厚さが2mm以上5mm以下で、前記断熱材に対する非反応性を有し、所定の割合で混合して形成したアルミナ及びシリカを主成分とするアルミナ・シリカ系耐火物である蓄熱層を設け、
高温環境下で前記被膜層の前記釉薬が溶融したとき、
溶融した当該釉薬が前記断熱材と反応しないように、前記蓄熱層が前記断熱材を保護すると共に、
高温環境下で熱せられた前記耐火物本体の熱を前記蓄熱層が蓄熱して、前記耐火物本体を保温するようにしたことを特徴とする耐火物の保温構造。 - 前記断熱材が、生体溶解性無機質繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の耐火物の保温構造。
- 前記断熱材が、アルミナ繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の耐火物の保温構造。
- 前記断熱材が、フェルト状に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の耐火物の保温構造。
- 前記釉薬の溶融温度が、500℃〜1400℃であることを特徴とする請求項1に記載の耐火物の保温構造。
- 前記釉薬が、1%〜30%のNa2O及び1%〜20%のK2Oを含有する酸化防止剤であって、前記被膜層が、前記耐火物本体の酸化を防止する耐酸化層であることを特徴とする請求項5に記載の耐火物の保温構造。
- 前記耐火物が連続鋳造用ノズルであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の耐火物の保温構造。
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