本発明は、例えば組付トレー上に支持された状態のインパネアッシを受け取ってボディ本体に対する組付位置まで移送するためのインパネアッシ搭載装置において、インパネアッシを支持するための把持部の構成を工夫することにより、インパネアッシの姿勢制御を可能とし、インパネアッシのボディ本体への搭載性および作業効率を向上させるとともに、スペース面での優位性を得ようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、自動車の組立ライン1においては、インパネアッシ2を、自動車のボディ本体3に組み付けることが行われる。インパネアッシ2は、骨格部材であるインパネリインフォースメント4に、インストルメントパネル5のほか、ステアリング装置、空調ダクト、ハーネス類、エアバッグ等といった各種部品が組み付けられたものである。
自動車の組立ライン1におけるインパネアッシ2の組付工程では、インパネアッシ2が、自動車のボディ本体3の組立ライン1の近傍の所定の待機場所から移送され、組立ライン1上のボディ本体3に組み付けられる。ここで、インパネアッシ2を所定の待機場所から移送してボディ本体3に組み付けるために、組付装置としてのインパネアッシ搭載装置10が用いられる。
インパネアッシ2は、インパネアッシ搭載装置10により移送される前の待機場所に至るに際し、パレット等と称される組付トレー6に支持された状態で、自動車のボディ本体3の組立ライン1とは別に設けられた所定の組付ライン上を移動し、種々の部品の組付けを受ける。組付ライン上にて部品の組付けを受けたインパネアッシ2は、組付トレー6に支持された状態で、例えばAGV(Automatic Guided Vehicle)等により、組立ライン1の近傍に設けられた搬送ライン7に搬送され、搬送ライン7上における下流側の所定の停止位置で停止する。この搬送ライン7上におけるインパネアッシ2の停止位置が、インパネアッシ2の待機場所、つまりインパネアッシ搭載装置10への受渡し位置となる。なお、AGVとは、工場や倉庫等においてコンピュータ制御等によって目標走行経路上を自動的に走行する無人搬送車である。本実施形態の自動車の組立ライン1では、複数の車種の組立てが同一ラインで行われ、搬送ライン7には、組立ライン1上の組付け対象であるボディ本体3の車種に対応したインパネアッシ2が順次搬送される。組付トレー6において、インパネアッシ2は、自動車における左右方向(幅方向)に対応する長手方向の両端部となるインパネリインフォースメント4の両端部が把持または係止支持されることで支持される。
そして、組付トレー6に支持されたインパネアッシ2は、インパネアッシ搭載装置10によって取り出され、インパネアッシ搭載装置10に支持された状態で、作業者等によって組立ライン1上のボディ本体3内における所定の組付位置まで移送される。インパネアッシ搭載装置10は、搭載装置移動設備によって所定の経路に沿って移動可能に支持される。
搭載装置移動設備は、組立ライン1と搬送ライン7との間において、インパネアッシ搭載装置10を移動可能に支持し、作業者によるインパネアッシ搭載装置10の移動をガイドする。つまり、搭載装置移動設備によるインパネアッシ搭載装置10の動作及び移動が作業者により操作されることで、組付トレー6に支持されたインパネアッシ2が、組付トレー6から取り出され、ボディ本体3内へと移送される。
搭載装置移動設備は、例えば次のような構成を有する。すなわち、搭載装置移動設備は、組立ライン1および搬送ライン7の上方において平面視でこれらのラインに直交する方向(図1において上下方向、以下「ライン幅方向」という。)に配設されたスライドレールと、このスライドレールによりライン幅方向にスライド移動するスライド部とを有し、スライド部から垂設されインパネアッシ搭載装置10を上下動可能に支持する柱状の昇降支持部8を有する(図3参照)。昇降支持部8は、上下方向を回動軸方向として回動可能に設けられている。
図1に示すように、組付トレー6は、インパネアッシ2の長手方向に対応する方向を長手方向とする平面視略矩形枠状の支持枠部6aと、支持枠部6aの長手方向の両端部に立設された支柱部6cにおいて移動可能に設けられたワーク支持部6bとを有する。ワーク支持部6bは、組付トレー6においてインパネアッシ2を支持する部分であり、支持枠部6aの長手方向(図1において左右方向)に沿って平行移動するように設けられている。組付トレー6は、一対の支柱部6cのそれぞれに対して移動可能に設けられたワーク支持部6bにより、インパネアッシ2の長手方向の両側を支持する。
インパネアッシ搭載装置10は、インパネアッシ2をボディ本体3に搭載する際に用いられるものであり、インパネアッシ2の長手方向に対応する方向を長手方向とする支持台部11と、支持台部11の長手方向の両端部に設けられた把持ユニット12とを有する。把持ユニット12は、インパネアッシ搭載装置10においてインパネアッシ2を支持する部分である。
インパネアッシ搭載装置10は、一対の把持ユニット12により、インパネアッシ2の長手方向の両端部となるインパネリインフォースメント4の両端部に係合することで、インパネアッシ2を把持した状態で支持する。このため、インパネアッシ搭載装置10は、各把持ユニット12において、インパネアッシ2を長手方向の両側から把持するための把持部20を有する。つまり、把持部20は、インパネアッシ搭載装置10の長手方向に互いに対向するように一対設けられている。なお、インパネアッシ搭載装置10は、把持ユニット12のほかにインパネアッシ2の荷重を受ける所定の支持部を有する。
また、上述のとおり搭載装置移動設備が有する昇降支持部8は、インパネアッシ搭載装置10の支持台部11に連結されている。具体的には、図3に示すように、昇降支持部8は、具体的には大径のブレーキ付きエアシリンダ機構として構成されており、下端側にロッド部8bを介して上下動可能に設けられた昇降部8aを有し、この昇降部8aが、支持台部11の長手方向の一側(右側)において、支持台部11と一体的に連結されている。このような構成により、昇降支持部8の昇降部8aを昇降させる動作(矢印F1参照)によって、インパネアッシ搭載装置10が全体的に昇降する。また、昇降支持部8は、図示せぬ回動機構部によって上下方向を回転軸方向として回転可能に設けられている。昇降支持部8が回動することで、インパネアッシ搭載装置10が昇降支持部8の回動軸線回りに全体的に回動する。
以上のような構成において、次のような態様で、組付トレー6に支持された状態のインパネアッシ2が、インパネアッシ搭載装置10によってボディ本体3内へと移送される。
図1に示すように、まず、搬送ライン7上において、所定の待機場所となるインパネアッシ2の受渡し位置にある組付トレー6に支持されたインパネアッシ2が、搬送ライン7の組立ライン1の配設側(図1において上側、以下「組立ライン側」という。)に位置するインパネアッシ搭載装置10によって取り出される(矢印A1参照)。つまり、組付トレー6に支持されたインパネアッシ2が、組付トレー6からインパネアッシ搭載装置10に受け渡される。
ここで、インパネアッシ搭載装置10は、その長手方向を組付トレー6の支持枠部6aの長手方向に沿わせた向きで、受渡し位置の組付トレー6に組立ライン側から近付き、組付トレー6に支持された状態のインパネアッシ2を、一対の把持ユニット12によって把持する。インパネアッシ搭載装置10によりインパネアッシ2が把持された後、組付トレー6によるインパネアッシ2の支持状態が解除されることで、インパネアッシ2がインパネアッシ搭載装置10に受け渡された状態となる。
組付トレー6からインパネアッシ2を取り出したインパネアッシ搭載装置10は、上述した搭載装置移動設備の昇降支持部8の回動により回動して長手方向をライン幅方向に沿わせるように向きを変え(矢印A2参照)、搭載装置移動設備のスライド部のライン幅方向の移動によって、ボディ本体3のドア開口部3aから、ボディ本体3内における所定の組付位置まで移送される(矢印A3参照)。
インパネアッシ搭載装置10に支持された状態のインパネアッシ2は、ボディ本体3内の組付位置まで移送されたインパネアッシ搭載装置10が作業者によってボディ本体3の前側(図1において右側)に向けて移動操作されることで(矢印A4参照)、ボディ本体3に組み付けられる。インパネアッシ2がボディ本体3に組み付けられた後、インパネアッシ搭載装置10によるインパネアッシ2の把持が解除され、インパネアッシ2の搭載(組付け)が完了する。その後、インパネアッシ搭載装置10は、搭載装置移動設備によって所定の位置まで移動する。
以上のようにしてインパネアッシ2のボディ本体3への搭載が行われる構成において、インパネアッシ搭載装置10に支持された状態のインパネアッシ2の姿勢を変化させる要素として、インパネアッシ搭載装置10における把持状態のインパネアッシ2の長手方向に沿う軸線回りの角度(以下「把持角度」という。)がある。このインパネアッシ搭載装置10におけるインパネアッシ2の把持角度に関し、組付トレー6からインパネアッシ2を取り出す際の取出し角度と、ボディ本体3内における所定の組付位置からボディ本体3への搭載角度とのそれぞれについて最適な角度が互いに異なる場合がある。
そこで、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10は、一対の把持ユニット12それぞれの把持部20において、インパネアッシの把持角度を調整するための構成を備える。以下、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10について詳細に説明する。
以下の説明では、図2および図3に示すように、インパネアッシ搭載装置10において、組付トレー6からインパネアッシ2を受け取る側を前側、その反対側を後側とし、支持した状態のインパネアッシ2の車両における左右をインパネアッシ搭載装置10の左右に対応させる。つまり、インパネアッシ搭載装置10に支持された状態のインパネアッシ2の車両における前後左右が、インパネアッシ搭載装置10における前後左右に対応する。
インパネアッシ搭載装置10は、上述のとおり長手状の支持台部11と、支持台部11の両端部に設けられた把持ユニット12と、左右両側に設けられたボディ内接地ローラ19とを有する。
支持台部11は、左右方向に延設された略角柱形状の部分である。支持台部11の長手方向の両端部に把持ユニット12が組み付けられる。インパネアッシ搭載装置10において、インパネアッシ2は、支持台部11の前側寄りの位置に支持される(図3参照)。
把持ユニット12は、支持台部11の両端部において、支持台部11に支持された状態で設けられる。
ボディ内接地ローラ19は、ボディ本体3内における下部に上下方向に配されたガイドレール3b(図12(b)参照)に着地し、ボディ本体3内におけるインパネアッシ搭載装置10の前後方向の移動をガイドする。ボディ内接地ローラ19は、昇降用電動シリンダ13を含む昇降機構部により、支持台部11に対して上下方向に移動可能に設けられている。すなわち、ボディ内接地ローラ19は、支持台部11に対して昇降機構部によって上下方向に移動可能に設けられており、昇降用電動シリンダ13により、支持台部11に対して昇降動作する。ボディ内接地ローラ19は、支持台部11の下方に延出する支持脚19aに左右方向を回転軸方向として支承されている。
昇降用電動シリンダ13は、駆動源としてのモータと、モータの回転駆動によって往復直線移動するロッドあるいはスライダ等の移動部と、モータの回転を移動部の往復直線運動に変換するボールネジ等を含む変換機構とを有する。昇降用電動シリンダ13は、移動部の往復運動の方向が上下方向に沿うように、支持台部11に支持固定されている。そして、昇降用電動シリンダ13の移動部に対して支持脚19aが移動部と一体的に移動するように連結されており、昇降用電動シリンダ13の動作によって、支持脚19aの支持台部11からの下方への突出量、つまりボディ内接地ローラ19の支持台部11に対する相対的な上下位置が変化する。このような構成により、インパネアッシ搭載装置10がボディ本体3内においてボディ内接地ローラ19をガイドレール3bに着地させた状態において、昇降用電動シリンダ13の動作によって、左右両側に把持ユニット12を支持した支持台部11の上下方向の位置が調整される。
昇降用電動シリンダ13は、図示せぬ制御部に接続されており、かかる制御部により、昇降用電動シリンダ13のモータの動作が制御され、ボディ内接地ローラ19の支持台部11に対する高さ位置(上下方向の位置)が調整される。各把持ユニット12に対応する昇降用電動シリンダ13は、左右の把持ユニット12の高さ位置を互いに同じとするように制御される。
また、図2に示すように、インパネアッシ搭載装置10においては、支持台部11上における左右両側に、組付トレー6に対する前後方向の位置関係を調整するための前後方向位置調整部14が設けられている。前後方向位置調整部14は、装置位置決め用電動シリンダ15と、装置位置決め用電動シリンダ15により前後方向に移動可能に設けられた当接ローラ16とを有する。
装置位置決め用電動シリンダ15は、駆動源としてのモータと、モータの回転駆動によって往復直線移動する移動部としてのロッド15aと、モータの回転を移動部の往復直線運動に変換するボールネジ等を含む変換機構とを有する。装置位置決め用電動シリンダ15は、ロッド15aの往復運動の方向が前後方向に沿うように、支持台部11に対して支持ステー等を介して支持固定された状態で設けられている。本実施形態では、装置位置決め用電動シリンダ15は、昇降用電動シリンダ13の左右方向の外側の位置に設けられている。
当接ローラ16は、図4(a)、(b)に示すように、装置位置決め用電動シリンダ15のロッド15aに対して支持ステー部18を介して設けられている。支持ステー部18は、ロッド15aの前端部から下方に延設された垂直部18aと、垂直部18aの下端から装置位置決め用電動シリンダ15の下方において後方に延設された水平部18bと、水平部18bから左右方向の内側(図4(a)においては右側)に延設された支持部18cとを有する。支持部18cの下側において、当接ローラ16が支持されている。当接ローラ16は、支持部18cの下側に設けられた左右一対の支持壁18d間において、左右方向を回転軸方向として回転可能に支持されている。
このような構成により、当接ローラ16は、装置位置決め用電動シリンダ15において前後方向に移動するロッド15aと一体的に前後方向に移動する。当接ローラ16は、組付トレー6側においてインパネアッシ搭載装置10の各当接ローラ16に対応して設けられた所定の被当接部6dに接触する。
また、装置位置決め用電動シリンダ15のロッド15aの先端部には、ジョイント部15bがロッド15aと一体的に移動するように設けられている。ジョイント部15bは、ロッド15aの移動方向を中心軸方向とする略円柱状の外形を有する部分であり、組付トレー6側においてインパネアッシ搭載装置10の各ジョイント部15bに対応して設けられた被ジョイント部にジョイントする。
装置位置決め用電動シリンダ15は、図示せぬ制御部に接続されており、かかる制御部により、装置位置決め用電動シリンダ15のモータの動作が制御され、当接ローラ16の前後方向の位置が調整される。左右の前後方向位置調整部14が有する装置位置決め用電動シリンダ15は、組付トレー6側に設けられた被当接部6dの位置に応じて、例えば、左右の当接ローラ16の前後方向の位置が互いに同じとなるように制御される。
以上のような前後方向位置調整部14によれば、インパネアッシ搭載装置10が、組付トレー6からインパネアッシ2を取り出すために組立ライン側から組付トレー6に近接する際において、左右の当接ローラ16をそれぞれ組付トレー6の被当接部6dに接触させることで、前後方向についてインパネアッシ搭載装置10の組付トレー6に対する位置決めが行われる。つまり、前後方向位置調整部14により、組付トレー6に対するインパネアッシ搭載装置10の寄り付きが所定の距離に規制される。そして、組付トレー6に対するインパネアッシ搭載装置10の前後方向の相対的な位置関係が、一対の把持部20によるインパネアッシ2の把持に適した位置関係となるように、装置位置決め用電動シリンダ15の動作によって、ボディ本体3の車種等に応じて適宜調整される。
本実施形態のインパネアッシ搭載装置10は、各把持ユニット12において、インパネアッシ2を長手方向の両側から把持した状態でインパネアッシ2を支持するための把持部20を備える。以下、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10が備える把持部20について詳細に説明する。なお、左右の把持ユニット12は、把持部20を含めて略左右対称に構成されているため、以下では、主に右側の把持ユニット12が備える把持部20を図示して説明する。
図5から図9に示すように、本実施形態に係る把持部20は、係合回動部材21と、アクチュエータとしての電動シリンダ22と、電動シリンダ22の動作を係合回動部材21に伝達する変換機構部23とを有する。把持部20は、係合回動部材21、電動シリンダ22、および変換機構部23等の組付けを受ける組付基部24を有する。
係合回動部材21は、把持部20において、組付基部24に対して所定の回転軸回りに回動可能に支持された状態で設けられている。係合回動部材21は、その本体部として、長手状の部材であるプレート状の本体プレート部21aを有し、全体として長手状の部材として構成されている。本体プレート部21aは、略矩形板状の外形を有する。係合回動部材21は、その長手方向、つまり本体プレート部21aの長手方向が上下方向に沿うように設けられている。
係合回動部材21は、本体プレート部21aの板厚方向を左右方向とする向きで、左右方向を回転軸方向として、組付基部24に対して回動可能に支持されている。係合回動部材21は、本体プレート部21aの長手方向の一端部(下端部)において支承部21bにより所定の回転軸C1を中心として組付基部24に支承されている。支承部21bの構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では次のような構成により係合回動部材21が組付基部24に支持されている。
組付基部24は、略矩形板状の基部本体部24aを有し、この基部本体部24aの前側の板面部に、左右方向を中心軸方向とする円筒状の外形部分を有するプレート支承部24bが設けられている。図9に示すように、プレート支承部24bの左右方向の内側の端部には、縮径部24cが設けられている。一方、本体プレート部21aの下端部には、組付基部24に対する支持用の貫通孔21cが形成されている。
図9に示すように、プレート支承部24bの縮径部24cには、円環状の軸受部材25が外嵌される。また、プレート支承部24bの左右方向の内側の突出部分には、矩形板状の外形を有するとともに円形状の貫通孔を形成する内周面26aを有する介装部材26が嵌められる。
介装部材26は、その四隅を貫通する締結具26bにより、本体プレート部21aの左右方向の外側(図6において左側)の板面21dに固定され、本体プレート部21aと一体的に回動する。また、本体プレート部21aの貫通孔21cには、プレート支承部24bの円筒状の突出部分の端面に固定されて支承部21bを構成する短円筒状の軸支部材27が嵌入されている。以上のような構成により、係合回動部材21は、組付基部24に対して、左右方向に沿う所定の回転軸C1を中心に回動可能に支持されている。
係合回動部材21は、インパネアッシ2が有する被係合部に係合する係合部28を有する。上述のとおりインパネリインフォースメント4の端部に係合する把持ユニット12は、把持部20の係合回動部材21をインパネリインフォースメント4の端部に係合させる。このため、図10に示すように、インパネアッシ2を構成するインパネリインフォースメント4の両端部には、係合回動部材21の係合部28が係合する被係合部として、フランジ状の係合支持板部4aが設けられている。
本実施形態では、係合回動部材21は、係合支持板部4aに対する係合部28として、上下に配置された2本のピン部29を有する。ピン部29は、本体プレート部21aの左右方向の内側(図6において右側)の板面21eから左右方向の内側に向けて突出する突起部分である。ピン部29は、左右方向を中心軸方向とする略円筒状の外形を有するとともに先端側を縮径させたテーパ状の形状を有する。ピン部29は、本体プレート部21aに対してボルト等の締結具29aによって固定されており、支承部21bにより回動する本体プレート部21aと一体的に動作する。2本のピン部29の形状・寸法は、互いに略同じである。
2本のピン部29は、本体プレート部21aの長手方向(上下方向)の中間部において上下に間隔を隔てて配設されている。詳細には、本体プレート部21aの全体の長さに対して、上側のピン部29Xは、上から略1/3の高さ位置に設けられ、下側のピン部29Yは、上から略2/3の高さ位置に設けられている。
2本のピン部29は、本体プレート部21aにおける前側(図7において左側)の部分において、それぞれ本体プレート部21aに設けられた前方への突片部分の前端部に設けられている。2本のピン部29は、本体プレート部21aがその長手方向を上下方向に沿わせた状態(図7参照)において、係合回動部材21の回転軸C1の位置よりも前側に位置する。また、下側のピン部29Yは、上側のピン部29Xよりも、ピン部29の外径と略同じ寸法分、前側に位置している。
このような係合回動部材21の係合部28としての2本のピン部29に対し、インパネリインフォースメント4の係合支持板部4aにおいては、各ピン部29が挿入される係合孔4b,4cが設けられている(図10参照)。把持部20が係合支持板部4aに近付くことで、2本のピン部29が同時的に係合孔4b,4cに挿入される。すなわち、2つの係合孔4b,4cの位置関係は、2本のピン部29の位置関係に対応しており、上側のピン部29Xは上側の係合孔4bに挿入され、下側のピン部29Yは下側の係合孔4cに挿入される。把持部20は、後述するように組付基部24と一体的に左右方向に移動可能に設けられており、左右方向の移動によって、2本のピン部29を係合孔4b,4cに対して挿脱させる。
このように、把持部20は、係合回動部材21に設けられた2本のピン部29をインパネリインフォースメント4の係合孔4b,4cに挿入させることで、係合支持板部4aに係合した状態となる。このような係合態様によれば、把持部20は、インパネアッシ2に係合することで、インパネアッシ2に対してインパネアッシ2の長手方向に沿う軸線回りについて相対回転不能となる。
左右一対の把持部20は、2本のピン部29を互いに対向させるとともに、係合回動部材21の回転軸C1を同軸線上に位置させる。したがって、一対の把持部20は、係合回動部材21をインパネアッシ2の左右両側から係合支持板部4aに係合させることで、つまり2本のピン部29を係合孔4b,4cに挿入させることで、インパネアッシ2を把持した状態となる。言い換えると、インパネアッシ搭載装置10は、一対の把持部20をインパネアッシ2の左右両側から係合させることで、インパネアッシ2を左右両側から挟み込む態様でインパネアッシ2を把持する。
一対の把持部20により把持された状態のインパネアッシ2は、上記のとおり係合回動部材21に対して相対回転不能であることから、回転軸C1回りに回動する係合回動部材21と一体的に回動する。つまり、インパネアッシ2は、係合回動部材21の回転軸C1を回動軸として、係合回動部材21と同軸回動する。回転軸C1回りの係合回動部材21の回動にともなってインパネアッシ2が回動することで、インパネアッシ搭載装置10におけるインパネアッシ2の把持角度が変化し、インパネアッシ搭載装置10に支持された状態のインパネアッシ2の姿勢が変化する。
以上のように、係合回動部材21は、インパネアッシ搭載装置10において支持された状態のインパネアッシ2と一体的に左右方向の回転軸C1回りに回動する。すなわち、一対の把持部20は、係合回動部材21によってインパネアッシ2に対して左右両外側から係合することで、インパネアッシ2を回転軸C1回りに回動可能に支持し、インパネアッシ2の把持角度を変化させる。
また、係合回動部材21には、近接センサ30が設けられている。近接センサ30は、係合回動部材21が係合支持板部4aに係合する際に、2本のピン部29が係合孔4b,4cに確実に挿入されたことを検知するためのものである。
近接センサ30は、上側のピン部29Xの直下の位置において、係合回動部材21の本体プレート部21aに支持部材30aを介して支持固定されており、把持部20の左右方向の移動にともなって係合回動部材21と一体的に移動する。近接センサ30は、例えば誘導形や静電容量形等の検出方式を採用したものであり、その検出面から所定の距離に存在する検出対象物を非接触で検出する。
近接センサ30は、その検出面側を左右方向の内側に向けた状態で設けられ、係合支持板部4aの左右方向の外側の板面4dを検出対象とし、板面4dに対して所定の距離以内に近付いたことを検出する。近接センサ30は、本体プレート部21aの係合支持板部4aに対する近接を検出することで、本体プレート部21aと係合支持板部4aとの関係において、2本のピン部29が係合孔4b,4cに挿入されたことを検出する。
電動シリンダ22は、上述したようにインパネアッシ2を回動可能に支持する把持部20の係合回動部材21を回動させるためのアクチュエータである。つまり、本実施形態では、把持部20の係合回動部材21を回動させるためのアクチュエータとして、電動シリンダ式アクチュエータが採用されている。
電動シリンダ22は、駆動源としてのモータと、モータの回転駆動によって直線状に往復移動する移動部としてのロッド22aと、モータの回転をロッド22aの往復直線運動に変換するボールネジ等を含む変換機構とを有する。電動シリンダ22は、全体として略四角柱状の外形を有するケース22bを有し、このケース22b内に、モータおよび変換機構を収容するとともに、ケース22bの長手方向の一端側からロッド22aを突出させる。電動シリンダ22においては、モータの回転駆動により、ロッド22aが電動シリンダ22の長手方向に往復移動してケース22bからの突出量を変化させる。
電動シリンダ22は、制御部22Aに接続されており(図9参照)、かかる制御部22Aにより、電動シリンダ22のモータの動作が制御され、ケース22bからのロッド22aの突出量が調整される。電動シリンダ22が有するモータは、例えばサーボモータやステッピングモータである。
電動シリンダ22は、ロッド22aの移動方向、つまりケース22bの長手方向が上下方向に沿うように設けられる。電動シリンダ22は、組付基部24に固定された状態で設けられている。
組付基部24においては、基部本体部24aの左右方向の内側に、左右方向を板厚方向とする板状の支持ステー部24dが上方に向けて延設されている。支持ステー部24dは、基部本体部24aから上方に延出する略矩形板状の第1支持部24eと、第1支持部24eの上端部の後側に連続する略矩形板状の第2支持部24fとを有する。
電動シリンダ22は、この支持ステー部24dの第2支持部24fに支持固定される。第2支持部24fは、上下方向を長手方向とする略矩形板状の部分であり、電動シリンダ22のケース22bの幅と略同じ幅を有する。電動シリンダ22は、ケース22bの一側の側面を、第2支持部24fの左右方向の内側の板面に合わせた状態で、第2支持部24fを貫通するボルト等の締結具によって固定される。
変換機構部23は、電動シリンダ22のロッド22aの往復直線移動を係合回動部材21の回転軸C1回りの回動に変換するための部分である。変換機構部23は、電動シリンダ22におけるロッド22aの上下方向の移動にともなってロッド22aと一体的に上下方向に移動可能に設けられたガイドプレート31を有し、かかるガイドプレート31の動作によって、係合回動部材21を回動させる。
ガイドプレート31は、変換機構部23において、回転軸C1の軸方向視(図7参照)で電動シリンダ22のロッド22aの移動方向に対して傾斜したガイド部33を有し、ロッド22aと一体的に移動するガイド体として機能する。ガイドプレート31は、矩形板状の本体部31aを有し、本体部31aの長手方向を上下方向とし、かつ本体部31aの板厚方向を左右方向とする向きで、電動シリンダ22の前側の位置に設けられている。
ガイドプレート31において、本体部31aの左右方向の内側の板面31bには、ガイド部33を形成する一対のガイド突部31cが設けられている。ガイド突部31cは、ガイドプレート31の回転軸C1の軸方向視において細長い略三角形状ないし略扇形状をなす突部であり、同軸方向視で略点対称な形状をなすように一対設けられている。各ガイド突部31cは、2つの長手状の側面のうち一方の側面を矩形板状の本体部31aの前側または後側の側面に沿わせるとともに、他方の側面をガイド面33aとして相手側のガイド面33aに対向させ、ガイド部33を形成する。
ガイド部33は、一対のガイド突部31cが互いに対向させる互いに平行なガイド面33aと、本体部31aの板面31bとにより形成された直線状の溝部である。つまり、ガイド部33は、ガイドプレート31の板面31bにおいて、互いに対向する一対の傾斜面であるガイド面33aにより形成された溝状の部分である。ガイド部33は、上下方向に対して前傾方向つまり上前・下後の方向に傾斜している。ガイド部33の上下方向に対する傾斜角度は例えば20°程度である。
ガイドプレート31は、上下方向スライド機構部34によって、組付基部24に対して上下方向にスライド移動可能に支持されている。上下方向スライド機構部34は、ガイドプレート31側に固定されたリニアガイド34aと、組付基部24側に固定されたスライダ34bとを有する。
リニアガイド34aは、直線状のレール部材であり、ガイドプレート31の左右方向の外側の板面31dにボルト等の締結具によって固定されている。スライダ34bは、リニアガイド34aにスライド自在に嵌合した態様で係合し、リニアガイド34aに対してその延設方向に沿って直線移動する。スライダ34bは、組付基部24の支持ステー部24dを構成する第1支持部24eの上端部において左右方向の内側の板面に形成された被取付凹部24gに嵌合した状態でボルト等の締結具によって第1支持部24eに固定されている(図9参照)。つまり、ガイドプレート31は、組付基部24の第1支持部24eに対して上下方向スライド機構部34を介して上下に可動状態で支持されている。
このように、ガイドプレート31は、上下方向スライド機構部34を介して組付基部24に支持されることで、上下方向スライド機構部34のスライド動作によって組付基部24に対して上下方向に移動するように設けられている。
ガイドプレート31は、電動シリンダ22のロッド22aの先端部の連結を受け、ロッド22aと一体的に上下方向に移動する。つまり、電動シリンダ22の動作によって、上下方向スライド機構部34によるガイドプレート31の上下方向の移動が操作される。
ガイドプレート31は、ロッド22aの連結を受ける部分として、係合アーム部35を有する。係合アーム部35は、本体部31aの下端部から後方に向けて突出しており、左右方向の内側を開放側とする略半円環状の係合凹部35aを有する。係合アーム部35には、組付基部24の第2支持部24fに支持された電動シリンダ22のロッド22aの先端部が係合凹部35aに係合した状態で締結固定されている。
一方、係合回動部材21においては、ガイドプレート31に設けられたガイド部33に対する被ガイド部として、ガイドフォロア36が設けられている。ガイドフォロア36は、左右方向を中心軸方向とする略円筒状の部分であり、溝状のガイド部33の幅寸法、つまり互いに対向するガイド面33a間の間隔の寸法と略同じ外径を有する。ガイドフォロア36は、その外周面36aをガイド面33aに対する接触面とする。
ガイドフォロア36は、本体プレート部21aにおいて上側のピン部29Xよりも上側の相対的に幅狭の部分の上端部であって、本体プレート部21aの左右方向の外側の板面21dに支持されている。ガイドフォロア36は、雄ネジ部を有し、この雄ネジ部を本体プレート部21aの上端部に貫通させ、本体プレート部21aの左右方向の内側においてナット36bにより締結支持されている。
ガイドフォロア36は、ガイド部33に嵌った状態で係合し、ガイド部33に沿ってガイドプレート31に対して相対移動する。すなわち、溝状の部分であるガイド部33が、ガイドフォロア36に対するガイド通路として、上下方向に移動するガイドプレート31に対するガイドフォロア36の相対的な移動経路を定める。ガイドフォロア36は、係合回動部材21がその長手方向を上下方向に沿わせた状態において、ガイド部33の長手方向の略中央部に位置する(図7参照)。なお、ガイド部33は、少なくともガイドプレート31の上下方向の移動範囲でガイドフォロア36のガイド部33に対する係合状態が維持される長さを有する。
このように係合回動部材21に設けられたガイドフォロア36は、ガイドプレート31の上下方向の往復直線移動にともなってガイド部33に沿って移動することで、係合回動部材21を回転軸C1により回動させる。ガイドプレート31が上下方向スライド機構部34によって組付基部24に対して相対的に上下方向に移動することで、ガイド部33に係合した状態のガイドフォロア36がガイド部33の傾斜によって略前後方向に移動し、組付基部24に対して支承部21bにより支持された係合回動部材21が回転軸C1を中心として回動(傾動)する。
以上のような構成を備えた把持部20においては、組付基部24に、係合回動部材21、電動シリンダ22、および変換機構部23が組み付けられた一体的な把持部組立体が構成されている。かかる把持部組立体は、左右方向にスライド移動可能に支持されており、そのスライド移動について、横移動用電動シリンダ37による操作を受ける。具体的には次のとおりである。
把持部組立体は、左右方向スライド機構部38によって、把持部組立体の後側に設けられたバックプレート39に対して左右方向にスライド移動可能に支持されている。バックプレート39は、把持ユニット12を構成する略矩形板状の部材であり、長手方向を左右方向とし、板厚方向を前後方向とする向きで設けられている。左右方向スライド機構部38は、バックプレート39側に固定されたリニアガイド38aと、組付基部24側に固定されたスライダ38bとを有する。
リニアガイド38aは、直線状のレール部材であり、バックプレート39の前側の板面の上縁部39aに沿うようにボルト等の締結具によって固定されている。スライダ38bは、リニアガイド38aにスライド自在に嵌合した態様で係合し、リニアガイド38aに対してその延設方向に沿って直線移動する。スライダ38bは、組付基部24の基部本体部24aの後面側にボルト等の締結具によって固定されている。
このように、組付基部24は、左右方向スライド機構部38を介してバックプレート39に支持されることで、左右方向スライド機構部38のスライド動作によってバックプレート39に対して左右方向に移動するように設けられている。
一方、横移動用電動シリンダ37は、駆動源としてのモータと、モータの回転駆動によって往復直線移動する移動部としてのロッド37aと、モータの回転を移動部の往復直線運動に変換するボールネジ等を含む変換機構とを有する。横移動用電動シリンダ37は、組付基部24の基部本体部24aの下側の位置にて、ロッド37aの往復運動の方向を左右方向に沿わせるとともにロッド37a側を左右方向の内側とする向きで、ボルト等の締結具によってバックプレート39に対してその前側に支持固定された状態で設けられている。
そして、組付基部24は、横移動用電動シリンダ37のロッド37aの連結を受け、ロッド37aと一体的に左右方向に移動する。つまり、横移動用電動シリンダ37の動作によって、左右方向スライド機構部38による組付基部24の左右方向の移動が操作される。
組付基部24は、ロッド37aの連結を受ける部分として、連結アーム部24hを有する。連結アーム部24hは、組付基部24において、基部本体部24aから左右方向に沿って内側に向けて直線状に延設された部分であり、その先端部に、支持板部24jを有する。支持板部24jは、連結アーム部24hから垂設された左右方向を板厚方向とする板状の部分である。
これに対し、横移動用電動シリンダ37のロッド37aの先端部には、略矩形厚板状の連結板部37bが設けられている。連結板部37bが支持板部24jの左右方向の外側の板面24kにボルト等の締結具によって固定されることで、ロッド37aが組付基部24に連結固定されている。
横移動用電動シリンダ37は、図示せぬ制御部に接続されており、かかる制御部により、横移動用電動シリンダ37のモータの動作が制御され、組付基部24を含む把持部組立体の左右方向の位置が調整される。
以上のように、組付基部24に組み付けられた係合回動部材21、電動シリンダ22、および変換機構部23は、把持部組立体として組付基部24を介してバックプレート39に対して左右方向スライド機構部38および横移動用電動シリンダ37によって左右方向に移動操作されるように構成されている。なお、本実施形態では、右側の把持ユニット12においては、全体として直線状のケースを有するストレートタイプの横移動用電動シリンダ37が採用されており、左側の把持ユニット12においては、モータ等を収容する部分が折り返されたケース構造を有する折返しタイプの横移動用電動シリンダ37(37X)が採用されている(図2参照)。横移動用電動シリンダ37としては、スペース上の制約等の観点から適宜のタイプのものが採用される。
以上のような構成によれば、インパネアッシ2の係合支持板部4aに係合する係合回動部材21について、組付トレー6に支持された状態のインパネアッシ2に対して、上下方向、左右方向、および前後方向についての位置調整が可能となる。
すなわち、上下方向については、インパネアッシ搭載装置10が昇降支持部8により支持された構成により、昇降支持部8の動作によって、インパネアッシ搭載装置10が備える係合回動部材21の上下方向の位置が調整される。また、左右方向については、把持ユニット12において、係合回動部材21を含む把持部組立体が、横移動用電動シリンダ37により、バックプレート39に対して位置調整可能に設けられている。また、前後方向については、前後方向位置調整部14を構成する装置位置決め用電動シリンダ15により、組付トレー6に対するインパネアッシ搭載装置10の位置が調整されることで、組付トレー6に支持された状態のインパネアッシ2に対する係合回動部材21の前後方向の位置が調整される。
また、インパネアッシ搭載装置10が搭載装置移動設備によってボディ本体3内に移送された状態においては、ボディ本体3内に設けられたガイドレール3bに接地するボディ内接地ローラ19の上下位置、つまり支持脚19aの下側への突出量が、昇降用電動シリンダ13の動作により調整される。これにより、ボディ本体3内におけるインパネアッシ搭載装置10の上下方向の位置が調整され、係合回動部材21の上下方向の位置が調整される。
本実施形態に係る把持部20の動作について、図11を用いて説明する。図11(a)に示すように、把持部20において、係合回動部材21は、その長手方向を上下方向に沿わせた状態で、ガイドフォロア36をガイド部33の長手方向の中央部に位置させる。かかる状態における係合回動部材21の回転軸C1による回動位置を中立位置とし、把持部20に支持されたインパネアッシ2の姿勢について、係合回動部材21が中立位置にある状態におけるインパネアッシ2の姿勢を中立姿勢とする。また、インパネアッシ2の把持角度について、インパネアッシ2が中立姿勢にある状態での把持角度を基準角度(0°)とし、前側への回動角度をプラスの角度、後側への回動角度をマイナスの角度とする。
係合回動部材21が中立位置にある状態から、図11(b)に示すように、電動シリンダ22がロッド22aを下方に向けて移動させることで、ロッド22aと一体的にガイドプレート31が下方に移動する(矢印D1参照)。ガイドプレート31は、係合回動部材21が支持された組付基部24に対して前後方向および左右方向については固定の位置で上下方向についてのみ移動する。
ガイドプレート31が下方に移動することで、ガイドプレート31のガイド部33に係合した状態のガイドフォロア36は、外周面36aをガイド部33のガイド面33aに接触させた状態でガイド部33の傾斜にならって前方に移動し、これにともない、上端部にガイドフォロア36を支持した係合回動部材21は、回転軸C1により前側に回動する(矢印D2参照)。つまり、支承部21bにより下端部が支持された係合回動部材21は、鉛直状態の中立位置から前傾するように回動する。
係合回動部材21が前側に回動することで、係合回動部材21の2本のピン部29による係合を受けて把持された状態のインパネアッシ2は、係合回動部材21と一体的に(同じ回動量で)回動する。この場合、中立姿勢にあったインパネアッシ2が、係合回動部材21とともに前側に回動して前傾するように姿勢を変化させ、インパネアッシ2の把持角度が増加する。電動シリンダ22のロッド22aの下方への移動量の増加にともない、係合回動部材21およびインパネアッシ2の前側への回動量が増加する。
一方、係合回動部材21が中立位置にある状態から、図11(c)に示すように、電動シリンダ22がロッド22aを上方に向けて移動させることで、ロッド22aと一体的にガイドプレート31が上方に移動する(矢印D3参照)。
ガイドプレート31が上方に移動することで、ガイドプレート31のガイド部33に係合した状態のガイドフォロア36は、ガイド部33のガイド面33aに接触した状態でガイド部33の傾斜にならって後方に移動し、これにともない、上端部にガイドフォロア36を支持した係合回動部材21は、回転軸C1により後側に回動する(矢印D4参照)。つまり、支承部21bにより下端部が支持された係合回動部材21は、鉛直状態の中立位置から後傾するように回動する。
係合回動部材21が後側に回動することで、係合回動部材21の2本のピン部29による係合を受けて把持された状態のインパネアッシ2は、係合回動部材21と一体的に(同じ回動量で)回動する。この場合、中立姿勢にあったインパネアッシ2が、係合回動部材21とともに後側に回動して後傾するように姿勢を変化させ、インパネアッシ2の把持角度が減少する(マイナスの方に増加する)。電動シリンダ22のロッド22aの上方への移動量の増加にともない、係合回動部材21およびインパネアッシ2の後側への回動量が増加する。
このような把持部20の動作は、係合回動部材21の回転軸C1を同軸線上に位置させる左右の把持部20で同期的に行われる。つまり、左右の把持部20における係合回動部材21の回動位置が互いに同じとなるように、各把持部20の電動シリンダ22の動作が制御される。
以上のように、本実施形態の把持部20によれば、電動シリンダ22の動作によるガイドプレート31の上昇端から下降端までの範囲で、係合回動部材21が所定の回転軸C1によって前後に回動し、インパネアッシ2の把持角度が所定の角度範囲(±α°)で変化する。つまり、一対の把持部20により、インパネアッシ搭載装置10に支持したインパネアッシ2についてのチルト機構が構成されている。そして、電動シリンダ22のロッド22aの移動量の制御により、係合回動部材21の回動量、つまりインパネアッシ2の把持角度が調整される。
把持部20においては、必要とされる係合回動部材21の回動量、つまりインパネアッシ2の把持角度の範囲が得られるように、ガイドプレート31の上下移動のストロークやガイド部33の傾斜角度等が適宜設定される。例えば、ガイドプレート31の移動ストロークは50mm程度であり、係合回動部材21の回動量は3°程度である。
以上のようにインパネアッシ2の把持角度が調整可能な構成を備えたインパネアッシ搭載装置10によれば、次のようにしてボディ本体3へのインパネアッシ2の搭載が行われる。インパネアッシ2の搭載に際してのインパネアッシ搭載装置10の動作について、図12を用いて説明する。
図12(a)に示すように、インパネアッシ搭載装置10は、搬送ライン7上の組付トレー6に支持された状態のインパネアッシ2を取り出すため、組付トレー6に対して組立ライン側(図12(a)において右側)から近付く。ここで、インパネアッシ搭載装置10は、前後方向位置調整部14の当接ローラ16(図2、図4(a)、(b)参照)を組付トレー6の所定の部位(被当接部6d)に当接させることで、前後方向(図12(a)において左右方向)について組付トレー6に対して位置決めされる。また、昇降支持部8(図3参照)により、インパネアッシ搭載装置10の全体的な上下方向の位置が調整されることで、把持ユニット12の上下方向の位置が調整される。
そして、インパネアッシ搭載装置10は、一対の把持部20によって組付トレー6に支持された状態のインパネアッシ2を把持する。この際、組付トレー6において所定の姿勢で支持された状態のインパネアッシ2に対し、係合回動部材21の角度がインパネアッシ2の係合支持板部4aの角度に合わない場合、把持部20によりインパネアッシ2が掴めないことになる。すなわち、組付トレー6に支持されたインパネアッシ2を把持するためには、係合回動部材21の2本のピン部29を係合支持板部4aの2つの係合孔4b,4cに対応させ、横移動用電動シリンダ37の動作によって把持部20が左右方向の内側へ移動することで2本のピン部29が係合孔4b,4cに挿入されるように、係合回動部材21の角度を合わせる必要がある。
このように組付トレー6に支持された状態のインパネアッシ2を取り出す際における係合支持板部4aに対応した係合回動部材21の角度が、インパネアッシ2の取出し角度に対応した角度(以下「取出し用角度」という。)となる。そこで、各把持部20においては、電動シリンダ22の動作により、係合回動部材21の角度が取出し用角度に調整される。
組付トレー6からインパネアッシ2を取り出したインパネアッシ搭載装置10は、上述したように搭載装置移動設備によって向きを変えて移動し、ボディ本体3内における所定の組付位置まで移送される(図1参照)。ボディ本体3内に移送されたインパネアッシ搭載装置10は、図12(b)に示すように、ボディ内接地ローラ19をガイドレール3bに接地させた状態で支持され、昇降用電動シリンダ13の動作により、支持台部11および把持ユニット12を含む構成の上下方向の位置の調整が可能となる。
そして、図12(b)に示すように、ボディ本体3内の組付位置まで移送されたインパネアッシ搭載装置10が作業者によって前側(図12(b)において右側)に向けて移動操作されることで、インパネアッシ搭載装置10に支持された状態のインパネアッシ2が、ボディ本体3に組み付けられる。ここで、インパネアッシ搭載装置10の前方への移動は、ボディ内接地ローラ19の接地を受けるガイドレール3bによりガイドされる。
インパネアッシ2をボディ本体3に組み付けるに際し、インパネアッシ2側の構成とボディ本体3側の構成とで互いに対応する各種部位の位置関係を合わせる必要がある。かかる位置関係が合わない場合、インパネアッシ2とボディ本体3の各種部位同士の位置関係がずれ、インパネアッシ2の搭載や各種部位同士の対応に不具合が生じる可能性がある。そこで、インパネアッシ2側の構成とボディ本体3側の構成とで互いに対応する各種部位の位置関係に基づき、インパネアッシ2の把持角度が所定の搭載角度に調整される。
このようにインパネアッシ搭載装置10に支持された状態のインパネアッシ2をボディ本体3に組み付ける際における各種部位の位置関係に対応した係合回動部材21の角度が、インパネアッシ2の搭載角度に対応した角度(以下「搭載用角度」という。)となる。そこで、各把持部20においては、電動シリンダ22の動作により、係合回動部材21の角度が搭載用角度に調整される。
インパネアッシ2の搭載角度により影響を受ける部位、つまりインパネアッシ2側の構成とボディ本体3側の構成とで互いに対応する各種部位としては、例えば、図12(b)に示すように、カウル嵌合部(矢印E1参照)、基準ピン係合部(矢印E2参照)、AC(エアコン)パイプ貫通部(矢印E3参照)、スタッド嵌合部(矢印E4参照)等がある。
カウル嵌合部においては、ボディ本体3のカウルパネルの後端部41aに凹側の部分である所定の被嵌合部が設けられており、インパネアッシ2を構成するインストルメントパネル5の前側の縁部41bに、被嵌合部に嵌合する凸側の部分である所定の嵌合部が設けられている。インパネアッシ2の前側への移動により、インパネアッシ2側の嵌合部がボディ本体3側の被嵌合部に差し込まれて嵌合する(矢印E1参照)。
基準ピン係合部においては、ボディ本体3側において左右方向の両側に突出した基準ピン42aが設けられており、インパネアッシ2側に、係合支持板部4aの上部に前側を開放側とする前後方向に延びたスリット状の係合凹部42bが設けられている(図10参照)。インパネアッシ2の前側への移動により、係合凹部42bが基準ピン42aを受け入れ、ボディ本体3側の基準ピン42aがインパネアッシ2側の係合支持板部4aに係合する(矢印E2参照)。かかる基準ピン係合部は、ボディ本体3に対するインパネアッシ2の組付けにおける位置の基準となる。
ACパイプ貫通部においては、インパネアッシ2側においてエアコンにおける流路を構成するパイプ43bが前方に突出しており、ボディ本体3側に、パイプ43bが貫通する孔部43aが形成されている。インパネアッシ2の前側への移動により、パイプ43bが孔部43aに差し込まれる(矢印E3参照)。
スタッド嵌合部においては、ボディ本体3側の下部においてインパネアッシ2を固定するためのスタッドボルト44aが後方に向けて突設されており、インパネアッシ2側に、スタッドボルト44aを貫通させる孔部44bが形成されている。インパネアッシ2の前側への移動により、孔部44bにスタッドボルト44aが差し込まれる(矢印E4参照)。スタッドボルト44aの後方への突出部にはナットが螺合され、インパネアッシ2のボディ本体3に対する締結が行われる。
以上のようなインパネアッシ2とボディ本体3との間で互いに対応する各種部位は、インパネアッシ搭載装置10におけるインパネアッシ2の把持角度が所定の搭載角度となることで、インパネアッシ2の前側への平行移動により自動的に組み付けが行われるように構成されている。そこで、インパネアッシ2の姿勢を搭載角度にすべく、チルト機構としての各把持部20において係合回動部材21の角度が搭載用角度に調整される。
また、本実施形態の組立ライン1においては、上記のとおり複数の車種の組立てが同一ラインで行われており、ボディ本体3の車種に対応したインパネアッシ2が組み付けられる。ボディ本体3の車種等により、組付トレー6に支持されたインパネアッシ2の取出し角度、および上述したような各種部位の配置構成に基づくインパネアッシ2の搭載角度は異なる場合がある。具体的には、例えば、インパネアッシ2の取出し角度について、インパネアッシ2の重心位置の違い等により、最適な角度が異なる場合がある。また、インパネアッシ2の搭載角度について、組立ライン1におけるボディ本体3の姿勢やインパネアッシ2の組立精度等のばらつきにより、最適な角度が異なる場合がある。
そこで、インパネアッシ搭載装置10においては、組付トレー6に支持されたインパネアッシ2の取出し、およびボディ本体3へのインパネアッシ2の搭載のそれぞれの動作に際して、把持部20における係合回動部材21の角度が、電動シリンダ22の動作制御により、ボディ本体3の車種等に対応した取出し用角度および搭載用角度に調整される。
このようなボディ本体3の車種毎の係合回動部材21の回動角度、つまりインパネアッシ2の把持角度の調整を行うための構成として、インパネアッシ搭載装置10においては、車種選択用の操作ボックス17が設けられている(図3参照)。操作ボックス17には、例えば右ハンドル・左ハンドルの違いを含む各車種に対応した複数の選択ボタン17aが配置されている。
操作ボックス17は、係合回動部材21を回動させて把持角度を調整するための電動シリンダ22を制御する制御部、並びに昇降用電動シリンダ13、装置位置決め用電動シリンダ15、および横移動用電動シリンダ37のそれぞれを制御する制御部に接続されており、操作ボックス17からの信号が、各電動シリンダの制御部に送られる。なお、各電動シリンダの制御部は、例えば、一台の制御装置等の一体的な制御部として集約される。現場の作業者により組立ライン1上のボディ本体3の車種に応じた選択ボタン17aが押されることで、各電動シリンダが当該車種ごとに設定された制御動作を行い、把持角度並びに係合回動部材21の上下・左右方向の位置およびインパネアッシ搭載装置10の組付トレー6に対する前後方向の相対的な位置が当該車種に最適な角度・位置に調整される。
以上のような本実施形態のインパネアッシ搭載装置10によれば、ボディ本体3へのインパネアッシ2の搭載性および作業効率を向上させることができるとともに、簡単な構成により、装置の大型化を招くことなくスペース上の制約を容易にクリアすることができる。
すなわち、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10によれば、インパネアッシ2の把持角度に関し、組付トレー6からの取出し角度およびボディ本体3への搭載角度のそれぞれを最適な角度に合わせ込むことができる。このため、インパネアッシ搭載装置10による組付トレー6からのインパネアッシ2の取出しに際してのインパネアッシ2の把持動作、およびボディ本体3へのインパネアッシ2の組付け動作を正確かつ円滑に行うことができ、インパネアッシ2の搭載成功率を向上させることができるとともに把持角度の調整作業の効率を向上させることができる。また、取出し角度および搭載角度が最適な角度となるため、多少の条件変化が生じた場合であっても、インパネアッシ2の組付トレー6からの取出し時やボディ本体3への搭載時において不具合が発生する可能性を可及的に少なくすることができる。また、インパネアッシ2の把持角度が調整可能であることから、取出し角度および搭載角度それぞれの許容誤差範囲内における共通の角度を見出すといった事前の調整作業が不要となるため、その分の作業の手間を省くことができる。
また、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10によれば、アクチュエータとしての電動シリンダ22の動作が変換機構部23により変換されて係合回動部材21に伝達されるという構成を備えることから、駆動源を小出力のものとすることができ、重量物であるインパネアッシ2を支持し回動させる構成として駆動源が大型化し装置が大がかりなものとなることを容易に回避することができる。これにより、インパネアッシ2の搭載に際してのボディ本体3内へのインパネアッシ搭載装置10の進入スペースの制約を容易にクリアすることができ、自動車の組立ライン1周りにおける省スペース化に貢献することができる。
また、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10において、把持部20を構成する変換機構部23は、回転軸C1方向視で電動シリンダ22のロッド22aの移動方向に対して傾斜したガイド部33を有しロッド22aと一体的に移動するガイドプレート31と、係合回動部材21に設けられ、係合回動部材21の往復直線移動にともなってガイド部33に沿って移動することで、係合回動部材21を回転軸C1回りに回動させる被ガイド部とを含む。
このような構成によれば、インパネアッシ2の把持角度を変化させる係合回動部材21の回動角度について、取出し角度および搭載角度の調整のために必要かつ十分な角度範囲を得るに際し、効果的に駆動源の大型化を回避することができるとともに、簡単な構成を実現することができる。また、係合回動部材21の回動角度について例えば0コンマ数°といった微調整を行うために適した構成を実現することができる。
また、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10において、電動シリンダ22は、その長手方向、つまりロッド22aの移動方向が上下方向に沿うように縦に配置されている。また、係合回動部材21は、長手状の部材であって、その長手方向が上下方向に沿うように設けられ、インパネアッシ2に対する係合部として、上下に配置された2本のピン部29を有する。
このような構成によれば、インパネアッシ2を把持するための把持部20の構成として、小型でスリムな構成を実現することができ、重量物であるインパネアッシ2に係合するとともに回動方向の作用を与える係合部において確実な係合作用を得ることができる。
また、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10において、把持部20を構成するアクチュエータは、駆動源としてモータを有する電動シリンダ22である。
このような構成によれば、数値設定等による電動シリンダ22の駆動制御によってロッド22aの位置をその動作範囲で任意の位置に調整することができるので、インパネアッシ2の把持角度の調整に際し、複数種類の車種に容易に対応することができる。つまり、アクチュエータとして電動シリンダ22を採用することにより、インパネアッシ搭載装置10の汎用性を向上することができる。
この点、従来、インパネアッシ2の把持角度が車種毎に調整できないことから、例えば、搭載時にある車種に限ってわずかに把持角度を変えて搭載した方が搭載成功率が上がると判っていたとしても、他車種への影響や組付トレー6全数の角度見直しを考えると断念せざるを得ず、結局、全ての把持角度の最大公約数的な調整をして使用する以外無かった。このため、把持角度の調整中心を各車種の最適値に置けないことから、少しの条件変化で不具合が発生する可能性もあった。このような問題を、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10により解消することができる。
以上のように、本実施形態のインパネアッシ搭載装置10により、2本のピン部29を有する係合回動部材21の角度を制御で任意に変えられることで、取出し角度と、全ての車種の搭載角度を各々個別に設定できるようになり、インパネアッシ2の取出しから搭載までの各ステップで把持角度を理想的な角度にチューニングすることが可能となる。また、生産ラインの稼働中、ある車種で不具合が発生した場合等、他の車種に影響を与えることなく、その車種限定で把持角度の調整を行うことができるようになるため、例えば不具合対策によって問題の無かった他車種で搭載の不具合が発生する等といった二次的な不具合の発生を回避することができる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るインストルメントパネルアッセンブリ搭載装置は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態においては、係合回動部材21は、インパネアッシ2に対する係合部として2本のピン部29を有するが、係合部の構成はこれに限定されるものではない。係合部としては、例えば3本以上のピン部や矩形状の突起部分などのように、インパネアッシ2の係合支持板部4aに対して相対回転不能に係合するものであればよい。
また、上述した実施形態においては、把持部20において係合回動部材21を動作させるアクチュエータとして電動シリンダ22が採用されているがこれに限定されるものではない。係合回動部材21を動作させるアクチュエータとしては、例えばエアシリンダや油圧シリンダ等であってもよい。ただし、上述したようにインパネアッシ2の把持角度について複数の車種に対応する観点からは、アクチュエータは電動シリンダであることが好ましい。