ところで、風車が落雷を受けた際に、外部雷保護システムに溶損等の不具合が生じて雷電流を放電できなくなる場合や外部雷保護システム以外の風車のブレード等に落雷する場合と、外部雷保護システムが正常に機能して雷電流が接地まで放電される場合とが考えられる。前者については風力発電装置の停止・確認や補修が必要であるが、後者については外部雷保護が正常に行われるため、本来であれば風力発電装置を停止させる必要はない。
しかしながら、従来の落雷検知技術ではこの両者を区別して判定することが困難であり、したがって落雷を検知すると直ちに風力発電装置を停止させるという管理体制を採らざるを得ず、風力発電装置の稼働率を向上させる余地があった。本発明は、上記課題を鑑みて、外部雷保護システムの異常や外部雷保護システム以外への落雷により正常に外部雷保護システムが作動しない場合と、正常に外部雷保護システムが作動する場合とを判断することができる外部雷保護システム、風車ブレード、及び風力発電装置を提供することを目的とする。
請求項1に対応した外部雷保護システムは、風車ブレードの先端部に設けた落雷を受けるレセプタと、落雷により一時的に発生する落雷電流を接地部に導く前記レセプタに接続されたダウンコンダクタと、前記レセプタの近傍に設けられ前記ダウンコンダクタを流れる前記落雷電流を検出する光ファイバ電流センサと、前記レセプタの近傍に設けられ前記レセプタへの落雷により一時的に発生する電界を検出する電気光学素子と、前記光ファイバ電流センサで検出される検出電流と前記電気光学素子で検出される電界強度に基づいて前記レセプタと前記ダウンコンダクタを含む系統の正常作動を判断する判断手段とを備える。判断手段とは、例えば制御部を指す。
ここで、前記判断手段は、前記光ファイバ電流センサで検出される前記検出電流と、前記電気光学素子で検出される前記電界強度と前記レセプタの形状及び前記電気光学素子の設置位置により一義的に算定される算定レセプタ電圧に基づいて、前記系統の正常作動を判断することが好ましい。
また、前記判断手段は、前記光ファイバ電流センサで検出される前記検出電流と、前記光ファイバ電流センサで検出される前記検出電流から求める前記算定レセプタ電圧の電圧閾値に基づいて前記系統の正常作動を判断することが好ましい。
また、前記判断手段は、前記検出電流が有意なプラス電流で、前記算定レセプタ電圧が前記電圧閾値以下の場合、前記系統を正常と判定することが好ましい。
また、前記判断手段は、前記検出電流が有意なプラス電流で、前記算定レセプタ電圧が前記電圧閾値を超える場合、前記系統の前記レセプタと前記ダウンコンダクタの接続部又は前記ダウンコンダクタの異常と判定することが好ましい。
また、請求項6に対応した外部雷保護システムは、複数の風車ブレードの先端部にそれぞれ設けた落雷を受ける複数のレセプタと、落雷により一時的に発生する落雷電流を接地部に導く複数の前記レセプタにそれぞれ接続された複数のダウンコンダクタと、複数の前記レセプタの近傍にそれぞれ設けられ複数の前記ダウンコンダクタを流れる前記落雷電流をそれぞれ検出する複数の光ファイバ電流センサと、複数の前記レセプタの近傍にそれぞれ設けられ複数の前記レセプタへの落雷により一時的に発生する電界をそれぞれ検出する複数の電気光学素子と、複数の前記光ファイバ電流センサで検出される複数の検出電流と複数の前記電気光学素子で検出される複数の電界強度に基づいて前記レセプタと前記ダウンコンダクタを含む複数の系統及び複数の前記系統が集合した集合系統の正常作動を判断する判断手段とを備える。
ここで、前記判断手段は、複数の前記光ファイバ電流センサで検出される複数の前記検出電流と、複数の前記電気光学素子で検出される複数の前記電界強度と複数の前記レセプタの形状及び複数の前記電気光学素子の設置位置により一義的にそれぞれ算定される複数の算定レセプタ電圧に基づいて、複数の前記系統及び前記集合系統の正常作動を判断することが好ましい。
また、前記判断手段は、前記光ファイバ電流センサで検出される前記検出電流と、前記検出電流から求める前記算定レセプタ電圧の電圧閾値に基づいて、前記系統及び前記集合系統の正常作動を判断することが好ましい。
また、前記判断手段は、複数の前記検出電流がゼロ近傍で、複数の前記算定レセプタ電圧が所定の電圧以下のプラス電圧で互いに有意な差が少ない場合、複数の前記系統及び前記集合系統は正常で複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定することが好ましい。
また、前記判断手段は、特定の前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧がプラス電圧であり、かつ残りの前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧が前記特定の前記風車ブレードの前記プラス電圧よりも高い場合に、特定の前記風車ブレードの前記系統に異常があり、かつ複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定することが好ましい。
また、前記判断手段は、全ての前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧がプラス電圧で互いに有意な差がない場合、前記集合系統に異常があり、かつ複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定することが好ましい。
また、前記判断手段は、特定の前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧が所定の電圧を超えるプラス電圧であり、かつ残りの前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧が前記特定の前記風車ブレードの前記プラス電圧よりも低い場合に、特定の前記風車ブレードの前記系統に異常があり、かつ複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定することが好ましい。
また、前記光ファイバ電流センサと、前記電気光学素子からそれぞれ光ファイバを介して前記検出電流と前記電界強度を取り出すことが好ましい。
また、前記電気光学素子を雨水や直撃雷の当たらない状態で前記レセプタの近傍に設けることが好ましい。
また、前記外部雷保護システムにおける、前記レセプタと、前記ダウンコンダクタと、前記光ファイバ電流センサと、前記電気光学素子とを風車ブレードに備えることが好ましい。
また、前記外部雷保護システムを風力発電装置に備えることが好ましい。
請求項1に対応した外部雷保護システムによれば、ダウンコンダクタを流れる落雷電流と、落雷時のレセプタの電界強度を検出することで、レセプタ及びダウンコンダクタを含む系統の正常作動を判断することができる。例えば検出電流が有意なプラス電流であり、電界強度が高くは無い場合、レセプタとダウンコンダクタを含む系統の正常作動を判断することができる。また、外部雷保護システムの系統の一部が溶損するとその系統の抵抗値が増加するので、検出電流が有意なプラス電流以上となりレセプタの電界強度は高くなるので、系統が正常作動していないと判断することもできる。また、電流の流れ状態を把握することで落雷箇所を特定することができる。
また、前記判断手段は、前記電気光学素子で検出される前記電界強度と前記レセプタの形状及び前記電気光学素子の設置位置により算定レセプタ電圧を算出する。電界強度とレセプタの形状及び前記電気光学素子の設置位置に基づいて算定レセプタ電圧を求めることから、電気光学素子の検出値を単に電圧値に置き換える場合と比較して、レセプタの電界分布を加味したより正確な算定レセプタ電圧値を算出することが可能となる。また、算出した算定レセプタ電圧に基づいて系統の正常作動を判断することができる。
また、前記判断手段は、前記光ファイバ電流センサで検出される前記検出電流から前記算定レセプタ電圧の電圧閾値を求める。落雷の電荷は一定ではなく、例えば0.1クーロンから300クーロン超までと、気象条件等により種々変化する。このような場合に電圧閾値を一定値にすると系統の正常作動判断を誤るおそれがあるが、落雷の電荷量を反映させた検出電流量に基づいて電圧閾値を求めることで、レセプタに落雷した雷の規模に応じた電圧閾値を設定することが可能となる。
また、前記判断手段は、前記検出電流が有意なプラス電流で、前記算定レセプタ電圧が前記電圧閾値以下の場合、前記系統を正常と判定する。検出電流が有意なプラス電流となることで、雷電流が接地まで放電されたことが推定できる。また算定レセプタ電圧が電圧閾値以下となることで、系統の抵抗値は増加していない(系統の導線が溶損していない)ことが推定できる。
また、前記判断手段は、前記検出電流が有意なプラス電流で、前記算定レセプタ電圧が前記電圧閾値を超える場合、前記系統の前記レセプタと前記ダウンコンダクタの接続部又は前記ダウンコンダクタの異常と判定する。算定レセプタ電圧が電圧閾値を越えることで、系統の抵抗値が増加したものと推定できる。
また、請求項6に対応する外部雷保護システムによれば、複数の風車ブレードの先端部にそれぞれ設けた落雷を受ける複数のレセプタと、落雷により一時的に発生する落雷電流を接地部に導く複数の前記レセプタにそれぞれ接続された複数のダウンコンダクタと、複数の前記レセプタの近傍にそれぞれ設けられ複数の前記ダウンコンダクタを流れる前記落雷電流をそれぞれ検出する複数の光ファイバ電流センサと、複数の前記レセプタの近傍にそれぞれ設けられ複数の前記レセプタへの落雷により一時的に発生する電界をそれぞれ検出する複数の電気光学素子と、複数の前記光ファイバ電流センサで検出される複数の検出電流と複数の前記電気光学素子で検出される複数の電界強度に基づいて前記レセプタと前記ダウンコンダクタを含む複数の系統及び複数の前記系統が集合した集合系統の正常作動を判断する判断手段とを備える。ダウンコンダクタを流れる落雷電流と、落雷時のレセプタの電界強度を検出することで、レセプタ及びダウンコンダクタを含む系統の正常作動を判断することができる。例えば検出電流が有意なプラス電流であり、電界強度が高くは無い場合、レセプタとダウンコンダクタを含む系統の正常作動を判断することができる。また、外部雷保護システムの系統の一部が溶損するとその系統の抵抗値が増加するので、検出電流が有意なプラス電流以上となりレセプタの電界強度は高くなるので、系統が正常作動していないと判断することもできる。また、電流の流れ状態を把握することで落雷箇所を特定することができる。加えて、風車ブレードのそれぞれに光ファイバ電流センサ及び電気光学素子を設けることで、ブレード等の外部雷保護システム以外への落雷により正常に外部雷保護システムが作動しないことも判断することができる。
また、前記判断手段は、複数の前記電気光学素子で検出される複数の前記電界強度と複数の前記レセプタの形状及び複数の前記電気光学素子の設置位置に基づいて、算定レセプタ電圧をそれぞれ算出する。電界強度とレセプタの形状及び前記電気光学素子の設置位置に基づいて算定レセプタ電圧を求めることから、電気光学素子の検出値を単に電圧値に置き換える場合と比較して、レセプタの電界分布を加味したより正確な算定レセプタ電圧値を算出することが可能となる。また、算出した算定レセプタ電圧に基づいて系統の正常作動を判断することができる。
また、前記判断手段は、前記検出電流から前記算定レセプタ電圧の電圧閾値を求める。検出電流に基づいて電圧閾値を求めることで、風車に落雷した雷の規模に応じた電圧閾値を設定することが可能となる。
また、前記判断手段は、複数の前記検出電流がゼロ近傍で、複数の前記算定レセプタ電圧が所定の電圧以下のプラス電圧で互いに有意な差が少ない場合、複数の前記系統及び前記集合系統は正常で複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定する。このように、複数の検出電流及び複数の算定レセプタ電圧が所定の電圧よりも小さくまた差が少ない場合、系統及び集合系統は正常であるのに複数のレセプタ以外に落雷し、正常に外部雷保護システムが作動しないものと判定することが可能となる。
また、前記判断手段は、特定の前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧がプラス電圧であり、かつ残りの前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧が前記特定の前記風車ブレードの前記プラス電圧よりも高い場合に、特定の前記風車ブレードの前記系統に異常があり、かつ複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定する。このように、複数の検出電流及び複数の算定レセプタ電圧の値に基づいて、系統の正常/異常判定に加えて、レセプタ以外への落雷と風車ブレードの落雷位置とが推定できる。
また、前記判断手段は、全ての前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧が所定の電圧を超えるプラス電圧で互いに有意な差がない場合、前記集合系統に異常があり、かつ複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定する。このように、複数の検出電流及び複数の算定レセプタ電圧の値に基づいて、後述する集合系統の正常/異常判定に加えて、レセプタ以外への落雷と風車ブレードの落雷位置とが推定できる。
また、前記判断手段は、特定の前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧がプラス電圧であり、かつ残りの前記風車ブレードの前記検出電流がゼロ近傍で前記算定レセプタ電圧が前記特定の前記風車ブレードの前記プラス電圧よりも低い場合に、特定の前記風車ブレードの前記系統に異常があり、かつ複数の前記レセプタ以外に落雷したものと判定する。このように、複数の検出電流及び複数の算定レセプタ電圧の値に基づいて、系統の正常/異常判定に加えて、レセプタ以外への落雷と風車ブレードの落雷位置とが推定できる。
また、前記光ファイバ電流センサと、前記電気光学素子からそれぞれ光ファイバを介して前記検出電流と前記電界強度を取り出す。検出電流と電界強度の伝送媒体として光信号を用いることで、電気信号を用いる場合と比較して落雷の影響を抑えることが可能となる。
また、前記電気光学素子を雨水や直撃雷の当たらない状態で前記レセプタの近傍に設ける。このようにすることで、電気光学素子の劣化を抑制しレセプタへの落雷により発生する電界を正しく検出することができる。
また、前記外部雷保護システムにおける、前記レセプタと、前記ダウンコンダクタと、前記光ファイバ電流センサと、前記電気光学素子とを風車ブレードに備えることで、外部雷保護システムを備えた風車ブレードを実現でき、風車ブレードの外部雷に対する保護性を向上させることが可能となる。
また、前記外部雷保護システムを風力発電装置に備えることで、風力発電装置の稼働率を向上させることが可能となる。
<全体構成>
図1に、本実施形態に係る風力発電装置10を例示する。風力発電装置10は、風車12、変圧器14、及び制御部16を含んで構成される。
風車12により風力エネルギーが電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは変圧器14によって電圧変換されて商用電源等の系統に連結される(交流リンク方式)。
また、風車12が落雷を受けた(受雷または着雷)ときには、レセプタ18、避雷導線20、タワー22、接地線端子盤24を含む外部雷保護系統に落雷電流が流れる。このとき光ファイバ電流センサ26A〜26C、電気光学素子28A〜28C、及び制御部16を含んで構成される監視システムが外部雷保護系統の正常/異常判定を行う。正常と判定されると風力発電装置10の運転が継続される。異常と判定されると管理者等により、風力発電装置10の運転が停止され、点検、補修等が行われる。
<各構成の詳細>
風車12は、タワー22、ナセル30、主軸32、ハブ34、及びブレード36A〜36Cを含んで構成される。なお、以下では、風車12として3枚のブレードから構成される3枚羽タイプのものを例示する。
タワー22は、ナセル30やブレード36A〜36C等を地上から所定の高さに支持するための架台であって、例えば高さ60m程度の鋼鉄製の円筒形状から構成される。単一のタワー22を山の尾根や洋上等に運搬することが困難な場合があり、タワー22は複数の分割体から構成される。例えば図1ではタワー22が5つの分割円筒から構成されている。分割体の両端にあるフランジを位置合わせしてボルト留め等により固定して分割体を組み上げる。タワー22は中空となっており、主回路盤38や接地線端子盤24が収容される。
主回路盤38は発電機42と変圧器14とを中継する中継局としての機能を備えており、また、風車12の運転動作を設計限界以下に保つように保護する保護制御機能も備えている。接地線端子盤24は、地中に埋設された接地極と避雷導線とを中継するための端子を備えている。また、接地線端子盤24は、接地抵抗値を測定するための測定用端子を備えていてもよい。
ナセル30はタワー22の上部に配置され、主軸32、増速機40や発電機42等を収容する箱体である。主軸32の回転が増速機40に伝達され、さらに増速後の回転駆動力が発電機42に伝達されることで発電が行われる。また、ナセル30内には、後述する外部雷保護系統において回転系から静止系に落雷電流を伝送するためのブラシ48を備えている。なお、ブラシに代えてスリップリングを設けるようにしてもよい。
ハブ34はロータヘッドとも呼ばれ、ブレード36A〜36Cを主軸32に固定する。ハブ34は中空構造であり、図1に示す例では、この中に光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cの送受信機44が収容される。なお、送受信機44を風車12外、例えば制御部16の近傍に配置するようにしてもよい。
ブレード36A〜36Cは例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の絶縁体から構成され、また軽量化を図るため中空構造を採っている。ブレード36A〜36Cの先端(最外径端)にはレセプタ18A〜18Cが取り付けられている。レセプタ18A〜18Cはアルミニウム等の導電性材料から構成され、主に雷を受ける部位(受雷部)として機能する。なお、図1に示す例ではブレード36A〜36Cの先端形状に沿ったいわゆるキャップタイプのレセプタ18A〜18Cを例示したが、この形態に限らない。例えばディスク形状またはロッド形状のレセプタ18A〜18Cをブレード36A〜36Cの先端に収容させてもよい。
また、ブレード36A〜36C内には、破線で示す避雷導線20A〜20Cが収容されている。避雷導線20A〜20Cの一端はレセプタ18A〜18Cに接続され、他端は接続点46(ノード)でそれぞれ結線される。
加えて、本実施形態における風車12においては、ブレード36A〜36C内に、光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cが設けられている。
光ファイバ電流センサ26A〜26Cは、ファラデー効果を利用した電流センサであって、避雷導線20A〜20Cの周りに光ファイバが巻き付けられる(ループを形成する)。光ファイバには位相の揃った2種類の光が伝送され、避雷導線20A〜20Cに電流が流れると、電流の作る磁界によって2種類の光に位相差が生じる。この位相差は避雷導線20A〜20Cの電流の大きさに比例することが知られている。2種類の光が重ね合わされた干渉光の光量変化を捉えることで位相差を検出でき、さらにそこから避雷導線20A〜20Cを流れる電流の大きさを算出することができる。
電気光学素子28A〜28Cは、例えば樹脂モールドされたポッケルス素子から構成される。ポッケルス素子はビスマスシリコンオキサイド等の誘電体の等方性結晶を備えており、この結晶に電場をかけると電場強度に比例して光の屈折率が変化する特性を備えている。電気光学素子28A〜28Cに継続的に光を入射させ、その際にブレード36A〜36Cまたはレセプタ18A〜18Cが落雷を受けると、電気光学素子28A〜28Cに電圧が印加され、結晶の屈折率が変化して結晶からの出力光強度が変化する。つまり出力光強度を監視することで、電気光学素子28A〜28Cに印加された電圧を算出できる。このようにして、電気光学素子28A〜28Cを用いて、落雷によりレセプタ18A〜18Cに一時的に発生する電界を検出できる。なお、電気光学素子28A〜28Cとしては、ポッケルス素子以外のカー効果を利用した素子等も利用可能である。
図1に示されているように、光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cは、それぞれ各レセプタ18A〜18Cの近傍に設けられる。例えば、光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cは、それぞれ各レセプタ18A〜18Cから50cm以内の範囲に設けられる。
例えば、光ファイバ電流センサ26A〜26Cは、各レセプタ18A〜18Cに接続する避雷導線20A〜20Cの接続部に巻き付けられる(光ファイバのループを配置させる)。また、電気光学素子28A〜28Cはレセプタ18A〜18Cに接するようにして配置される。ここで、電気光学素子28A〜28Cは、雨水や直撃雷(雷撃)の当たらない状態でレセプタ18A〜18Cの近傍に設けられていることが好適である。例えば、電気光学素子28A〜28Cはブレード36A〜36C内に収容されていることが好適である。このようにすることで、電気光学素子28A〜28Cの劣化を抑制しレセプタ18A〜18Cへの落雷により発生する電界を正しく検出することができる。
本実施形態では、光ファイバ電流センサ及び電気光学素子は、1つのブレード当たりそれぞれ1つ設けるのみでよい。このような構成とすることで計測系に係るコストを低減させることが可能となる。また後述するように、このような簡素な構成であっても本実施形態に係る外部雷保護システムでは外部雷保護系統の正常/異常判定はもちろんのこと、損傷箇所や落雷箇所の特定も可能であることから、光ファイバ電流センサ及び電気光学素子を1つのブレード当たり複数設けた構成と比較しても、少なくとも同等の計測精度を有することが可能となっている。
<外部雷保護システム>
上述したように、本実施形態に係る風車12には、外部雷保護システムが設けられている。外部雷保護システムは、外部雷保護系統と、その監視システムを含んで構成される。外部雷保護系統は、落雷を受雷部から接地に放電させるための避雷系統であって、レセプタ18A〜18C→避雷導線20A〜20C→結線(接続点46)後の避雷導線20D→ブラシ48→避雷導線20E→タワー22→避雷導線20F→接地線端子盤24→接地極との放電経路を備えている。
風車12に触れた作業者等に落雷電流が分流することを抑制するために、外部雷保護系統の抵抗値は十分低い値であることが好適である。例えば外部雷保護系統の抵抗値は10Ω以下となるように、避雷導線等の導電材料や径が定められる。
一般的に、外部雷保護系統は受雷部、ダウンコンダクタ(引き下げ導体)及び接地システムの三者を含んで構成される。ダウンコンダクタは受雷部の落雷電流を接地システム(接地部)に導く部材である。本実施形態では、レセプタ18A〜18Cが受雷部に相当し、避雷導線20A〜20F、ブラシ48及びタワー22がダウンコンダクタに相当し、接地線端子盤24及び接地極が接地システムに相当する。
なお、上記した放電経路では、その一部の機能をタワー22に持たせるいわゆる構造体利用型の放電経路であるが、これに代えて、ブラシ48から接地線端子盤24までを避雷導線で繋ぐようにしてもよい。
また、外部雷保護系統は、2種類の系統に分けることができる。つまりブレード36A〜36C別の系統と、これらの系統が集合した集合系統に分けることができる。本実施形態においては、レセプタ18A〜18C及び避雷導線20A〜20Cが前者(ブレード別系統)に相当し、それ以降の避雷導線20D、ブラシ48、避雷導線20E、タワー22、避雷導線20F、接地線端子盤24及び接地極が後者(集合系統)に相当する。後述するように、本実施形態に係る監視システムを備えることで、ブレード別の系統と集合系統のどちらに系統上の不具合(抵抗値の増加等)が生じたかを判定することができる。
本実施形態に係る風車12には、外部雷保護システムの一部として、外部雷保護系統の監視システムが設けられている。監視システムは、光ファイバ電流センサ26A〜26C、電気光学素子28A〜28C、送受信機44、及び制御部16を含んで構成される。
またこの監視システムには、送受信機44から光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cに光を伝送し、またこれらからの戻り光を送受信機44に伝送する伝送路が設けられている。
例えばハブ34内に設けられた送受信機44と光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cとの間には、一点鎖線で示すような光ファイバ50A,50Bが設けられている。図示を簡略化するため、図1では、紙面左下の一部拡大図を除き、光ファイバ電流センサ26A〜26C用の送信用ファイバと受信用ファイバとをまとめて光ファイバ50Aとして表し、同様にして電気光学素子28A〜28C用の送信用ファイバと受信用ファイバとをまとめて光ファイバ50Bとして表している。
このように、光ファイバ電流センサ26A〜26Cが検出した落雷電流(検出電流)と、電気光学素子28A〜28Cが検出した電界強度とを光ファイバを介して取り出すことで、電気信号を介して取り出す場合と比較して落雷によるノイズ混入等の影響が抑制される。
また、送受信機44と制御部16とは無線LAN等の無線通信手段で接続されており、送受信機44はこの無線通信手段を介して制御部16に検出電流データと電界強度データを送信する。また、これに代えて、送受信機44から制御部16までを光ファイバや電気通信線で繋ぐようにしてもよい。この場合は、ブラシ48と同様に、回転系から静止系に信号を伝達させる光ロータリジョイントや光スリップリング、またはブラシを設けることが好適である。
制御部16は、光ファイバ電流センサ26A〜26Cが検出した落雷電流(検出電流)と、電気光学素子28A〜28Cが検出した電界強度とを基に、外部雷保護系統の正常判定(判断)を行う判断手段である。制御部16は、コンピュータから構成されてよく、例えば、演算回路であるCPU、メモリ等の記憶部、及び機器・センサインターフェースが内部バスを介して互いに接続されている。記憶部には後述する外部雷保護系統の正常/異常判定プログラムが記憶されている。また、制御部16は、TCP/IP等のプロトコルを用いて、外部のコンピュータ等にネットワーク接続(WAN)されていてもよい。
また、制御部16は、電気光学素子28A〜28Cが検出した電界強度と、レセプタ18A〜18Cの形状や電気光学素子28A〜28Cの設置位置に基づいて電圧値(算定レセプタ電圧値)を求める。レセプタ18A〜18Cに落雷(受雷、着雷)したときに、レセプタの形状に応じて電界分布が生じる。したがって電気光学素子28A〜28Cのレセプタ18A〜18C上の位置に応じて電気光学素子28A〜28Cから検出される電界強度は異なるものとなる。このことから、レセプタ18A〜18Cの形状に基づく電界分布と電気光学素子28A〜28Cのレセプタ18A〜18C上の位置が分かれば、電気光学素子28A〜28Cが検出した電界強度から落雷電圧(レセプタに印加された電圧)を一義的に求めることができる。制御部16は、電気光学素子28A〜28Cが検出した電界強度と、予め記憶部に記憶されたレセプタ18A〜18Cの形状や電気光学素子28A〜28Cの設置位置に基づいた係数等を用いて、レセプタ18A〜18Cに印加された電圧値(算定レセプタ電圧値)を求める。
また、制御部16は、光ファイバ電流センサ26A〜26Cによる検出電流と、予め記憶された外部雷保護系統の抵抗値(例えば10Ω)とに基づいて、算定レセプタ電圧の電圧閾値を算出する。後述するように、電圧閾値は外部雷保護系統の正常/異常判定に用いられる指標であり、算定レセプタ電圧値が電圧閾値を超過すると、制御部16は外部雷保護系統の異常判定を行う。
落雷の電荷は一定ではなく、例えば0.1クーロンから300クーロン超までと、気象条件等により種々変化する。このような場合に電圧閾値を一定値にすると正常作動の誤判定に繋がるおそれがあるが、落雷の電荷量を反映させた検出電流量に基づいて電圧閾値を求めることで、風車に落雷(受雷、着雷)した雷の規模に応じた電圧閾値を設定することが可能となる。
なお、制御部16(判断手段)は、外部雷保護系統の正常/異常判定プログラムを有さずに、落雷電流(検出電流)や算定レセプタ電圧を示し人の判断に供するもの、また異常を判定した場合に風力発電装置10の運転を自動で停止するもの等バリエーションは幅広くあり得る。
<監視システムによる、外部雷保護系統の正常/異常判定>
図2〜図9を用いて、監視システムによる、外部雷保護系統の正常/異常判定について説明する。なお図2〜図9では、ブレード36A〜36C及びハブ34と、外部雷保護システム(外部雷保護系統及びその監視システム)のみを図示し、残りのナセル30やタワー22等の構造物は図示を省略している。
また、図2〜図9では、外部雷保護系統として、上述した集合系統(避雷導線20D、ブラシ48、避雷導線20E、タワー22、避雷導線20F、接地線端子盤24及び接地極)をまとめて集合系統52として置き換えている。
なお、図2〜図9の光ファイバ電流センサ26A〜26Cの検出値のグラフについて、横軸は時間を表し、縦軸は電流値[A]を表している。また、電気光学素子28A〜28Cの検出値について、横軸は時間を表し、縦軸は算定レセプタ電圧値[V]を表している。また両グラフについて横軸の時間は同期しているものとする。
図2には、外部雷保護系統が正常である(抵抗値が十分低い)とき、すなわち外部雷保護系統により雷電荷の放出が正常に行われたときの、光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cの検出値が例示されている。この図では、ブレード36Aの先端に設けられたレセプタ18Aが受雷したときの例が示されている。
このとき、落雷電流はレセプタ18Aから避雷導線20A及び集合系統52を経由して接地電極まで放電される。このとき、光ファイバ電流センサ26はこの放電電流を検出する。例えば300クーロンの雷電荷が3ミリ秒で流れたとすると、放電電流は100[KA]となる。
制御部16は、光ファイバ電流センサ26が検出した放電ピーク値電流(検出電流)と予め記憶された外部雷保護系統の抵抗値(例えば10[Ω])に基づいて、電圧閾値Vthを求める。例えば検出ピーク値電流が100[KA]、外部雷保護系統の抵抗値が10[Ω]とすると、電圧閾値Vthは1[MV]となる。
さらに制御部16は、電気光学素子28Aが検出した電界強度と予め記憶されたレセプタ18Aの形状や電気光学素子28Aの設置位置に基づいた係数等を用いて、レセプタ18Aにおける算定レセプタ電圧値を求める。
算定レセプタ電圧値が電圧閾値を超えている場合、外部雷保護系統の抵抗値増加が考えられ、外部雷保護系統の溶損等が推定される。図2に示す例では、算定レセプタ電圧値が電圧閾値を下回っているため、制御部16は、外部雷保護系統のうち、少なくともレセプタ18Aから集合系統52に至る系統は正常であると判定する。
また、ブレード36B,36Cについても、制御部16は光ファイバ電流センサ26B,26Cの検出電流及び電気光学素子28B,28Cの検出した電界強度に基づく算定レセプタ電圧値を求める。
ブレード36B,36Cについては、ブレード36Aとブレード36B,36Cを結ぶ避雷導線の抵抗を無視すると、ブレード36Aと同等の電圧が印加される。その一方で、ブレード36B,36Cでは電流の流れるループが形成されていないため、基本的に電流値は0となる。厳密には、レセプタ18B,18Cに生じる寄生容量により、電圧変化に応じた電流が流れるが、ブレード36Aにおける電流値(MAオーダー)から見ると無視できる程度の電流量となる。例えば、寄生容量が100[pF]とすると、落雷により0[V]から1[MV]の電圧変化が生じても0.1[mA]の電流が流れるのみとなり、上述した100[KA]と比較して無視できるほどの電流量となる。
このように、光ファイバ電流センサ26B,26Cの検出電流に基づいて電圧閾値を設定すると0[V]近傍になり、これをブレード36B,36Cの算定レセプタ電圧に対する電圧閾値として設定すると、算定レセプタ電圧が電圧閾値を超過してしまい、異常判定に繋がるおそれがある。そこで、制御部16は、光ファイバ電流センサ26A〜26Cの検出電流値が所定の電流閾値以下である場合には、電圧閾値の設定を行わないようにしてもよい。言い換えると、制御部16は、検出電流値が電流閾値を超過するような有意なプラス電流である場合に、電圧閾値を設定する。電流閾値は例えば1[A]に設定される。
さらに図2において、ブレード36B,36Cに、電圧閾値Vthであるブレード36Aと同等の電圧が印加されることから、制御部16は、レセプタ18B及び避雷導線20Bならびにレセプタ18C及び避雷導線20Cについて正常判定を行う。
図3〜図9には、外部雷保護系統による外部雷保護に異常が生じたときの例が示されている。より詳しく説明すると、図3〜図5には、レセプタに落雷したものの外部雷保護システムに異常が生じた場合が例示され、図6〜図9には、外部雷保護システム以外の箇所(例えばブレード)への落雷により正常に外部雷保護システムが作動しない例が示されている。
図3には、外部雷保護系統に溶損が生じた例を示している。この例では、レセプタ18Aと光ファイバ電流センサ26Aとの間の避雷導線20A、つまり避雷導線20Aの接続部が溶損して抵抗値が増加した例が示されている。また、図2と同様に、ブレード36Aの先端に設けられたレセプタ18Aが受雷したときの例が示されている。
このとき、ブレード36Aでは落雷電流は接地まで流れるものの、溶損により電流が絞られることから、ブレード36Aにおける算定レセプタ電圧は電圧閾値を超過する。また、避雷導線20Aの溶損による電圧降下を受けて、ブレード36B,36Cにおける算定レセプタ電圧は図2の場合と比較して低減される。またこれらの検出電流は0[A]近傍となるため電圧閾値の設定は省略される。
ブレード36Aにて算定レセプタ電圧値が電圧閾値を超過しているとの検出結果を受けて、制御部16は、ブレード36Aに対して異常判定を行う。また、避雷導線20Aの溶損による電圧降下を受けて、ブレード36B,36Cの算定レセプタ電圧はブレード36Aの算定レセプタ電圧と比較して有意な差が生じる。制御部16は、特定のブレード(この例ではブレード36A)の算定レセプタ電圧値が電圧閾値を超過し、かつ、その算定レセプタ電圧値が他のブレード(この例ではブレード36B,36C)の算定レセプタ電圧値と有意な差を持つ場合に、ブレード36Aに異常が生じていると判定する。ここで、有意な差を持つとは、例えば特定のブレードの算定レセプタ電圧値が他の算定レセプタ電圧値の1.2倍以上となっている状態を指す。
図4には、集合系統52に抵抗値増加が生じている例が示されている。これは、例えば避雷導線20D,20E,20Fが溶損している場合や、タワー22の分割体のフランジ間の接合不良や雨による腐食等により生じ得る。なお、この図では図2と同様に、レセプタ18Aが受雷したときの例が示されている。
このとき、溶損が生じた集合系統52により電流が絞られることから、ブレード36Aにおける算定レセプタ電圧は電圧閾値Vthを超過し、また他のブレード36B,36Cにおいてもブレード36Aと同程度に算定レセプタ電圧が増加する。つまりこの場合においてはブレード36A〜36C間で算定レセプタ電圧の有意な差が生じないこととなる。制御部16は、特定のブレード(この例ではブレード36A)における算定レセプタ電圧値が電圧閾値Vthを超過し、かつ、ブレード36A〜36Cの算定レセプタ電圧間に有意な差がない場合に、集合系統52に異常が生じたものと判定する。ここで、有意な差がない状態とは、例えばブレード36A〜36Cのそれぞれの算定レセプタ電圧値の一方に対する他方の比が1.2未満に収まっている状態を指す。
図5には、ブレード36Aの避雷導線20Aの、光ファイバ電流センサ26Aよりも集合系統52寄りの箇所に溶損が発生した場合の例が示されている。また、この図でも、レセプタ18Aが受雷したときの例が示されている。
このとき、溶損箇所により電流の流れが絞られることから、ブレード36Aにおける算定レセプタ電圧は増加して電圧閾値を超過する。また溶損箇所における電圧降下を受けて、ブレード36B,36Cでは正常時(図2)と比較して算定レセプタ電圧が低減される。制御部16は、特定のブレード(この例ではブレード36A)の算定レセプタ電圧値が電圧閾値を超過し、かつ、その算定レセプタ電圧値が他のブレード(この例ではブレード36B,36C)の算定レセプタ電圧値と有意な差を持つ場合に、ブレード36Aに異常が生じていると判定する。ここで、有意な差を持つとは、例えば特定のブレードの算定レセプタ電圧値が他の算定レセプタ電圧値の1.2倍以上となっている状態を指す。
図6〜図9は、レセプタ18A〜18Cには落雷せずに絶縁体であるブレード36A〜36Cに落雷したときの例が示されている。これらの場合において、ブレード36A〜36Cの検出電流はいずれも0[A]近傍の値を示す。すなわち、落雷したブレード(ブレード36A)の避雷導線20Aでは、落雷点(受雷点、着雷点)から接地までの放電経路が形成される一方で、レセプタ18A〜18Cに近接した光ファイバ電流センサ26A近傍は落雷点から離れているため放電経路が形成されない。このとき、光ファイバ電流センサ26Aでは、光ファイバ電流センサ26B,26Cと同様にレセプタ18A〜18Cの寄生容量に流れる電流を検出するのみとなり、いずれも検出電流は0[A]近傍となる。検出電流が0[A]近傍となることから、電圧閾値の設定は省略される。
このことから、図6〜図9においては、検出電流に基づく電圧閾値がいずれも設定されない場合における、外部雷保護系統の正常/異常判定や外部雷保護システム以外への落雷により正常に外部雷保護システムが作動しない場合の判断が行われる。なお、図6〜図9に共通するように、(レセプタではなく)ブレード36A〜36Cへの落雷があったときには、算定レセプタ電圧は有意なプラス電圧を示すのに対して、検出電流はゼロ近傍となる。このような検出結果を得た場合に、制御部16は、図6〜図9を通して、レセプタ18A〜18C以外、例えばブレード36A〜36Cに落雷があったものと判定し、落雷異常、すなわち外部雷保護システムによる外部雷保護に異常が生じたものと判定する。
図6には、外部雷保護系統が正常である(抵抗値が十分低い)ときの、光ファイバ電流センサ26A〜26C及び電気光学素子28A〜28Cの検出値が例示されている。この図では、ブレード36Aのうち、光ファイバ電流センサ26A及び電気光学素子28Aよりも集合系統52側の位置に落雷(受雷、着雷)したときの例が示されている。
制御部16は、ブレード36A〜36Cの算定レセプタ電圧を求める。図6に示すように、ブレード36A〜36Cの算定レセプタ電圧は、いずれも有意な差を示さない。例えばブレード36A〜36Cのそれぞれの算定レセプタ電圧値の一方に対する他方の比が1.2未満に収まっている。
ここで、ブレード36A〜36Cの算定レセプタ電圧が有意な差を示さない場合、図6のように外部雷保護系統が正常である場合と、図7のように、集合系統52に溶損が生じている場合との2種類が考えられる。両者を切り分けるため、制御部16は、ブレード36A〜36Cの算定レセプタ電圧が有意な差を示さない場合には、算定レセプタ電圧値の絶対値判定を行う。制御部16は、ブレード36A〜36Cの算定レセプタ電圧値が所定の電圧以下である場合には、外部雷保護系統は正常であると判定し、所定の電圧を超過している場合には、集合系統52に異常があると判定する。ここで、上記所定の電圧を設定する方法は、経験的なデータを積み上げて設定する方法、最小の雷電荷量を計測値から設定して集合系統52の異常レベルから算定して設定する方法、風力発電装置10の設置の初期時(集合系統52を含む外部雷保護系統の正常時)におけるブレード落雷時の算定レセプタ電圧のデータから設定する方法等各種の方法がある。なお、雷電荷は季節や地域によって変動することから、この閾値電圧は風力発電装置10の設置地域や季節に応じて種々変更することができる。
また、ブレード36A〜36Cの算定レセプタ電圧が有意な差を示す場合として、特定のブレードの算定レセプタ電圧が他の2つのブレードの算定レセプタ電圧より有意に高い場合と、有意に低い場合とが考えられる。ここで、有意に高いとは、例えば特定のブレードの算定レセプタ電圧値が他の2つのブレードの算定レセプタ電圧値の1.2倍以上となっている状態を指し、有意に低いとは、例えば他2つのブレードの算定レセプタ電圧値が特定のブレードの算定レセプタ電圧値の1.2倍以上となっている状態を指す。
図8には、特定のブレード(ここではブレード36A)の算定レセプタ電圧が他の2つブレード(ここではブレード36B,36C)の算定レセプタ電圧より有意に低い場合が示されている。図8では、ブレード36Aの避雷導線20Aのうち、光ファイバ電流センサ26Aとレセプタ18Aとの間に溶損が生じている。このとき、溶損による電圧降下を受けて、ブレード36Aの算定レセプタ電圧はブレード36B,36Cの算定レセプタ電圧よりも有意に低下する。制御部16は、特定のブレード(ここではブレード36A)の算定レセプタ電圧が他の2つブレード(ここではブレード36B,36C)の算定レセプタ電圧より有意に低い場合に、有意に低い特定のブレード(ブレード36A)に対して異常判定を行う。またこのとき、その異常個所は、光ファイバ電流センサとレセプタの間と判定する。
図9には、特定のブレード(ここではブレード36A)の算定レセプタ電圧が他の2つブレード(ここではブレード36B,36C)の算定レセプタ電圧より有意に高い場合が示されている。図9では、ブレード36Aの避雷導線20Aのうち、光ファイバ電流センサ26Aよりも集合系統52寄りに溶損が生じている。また、落雷点(受雷点、着雷点)は光ファイバ電流センサ26Aと溶損箇所の間とする。
このとき、溶損によって抵抗値が増加することで、落雷点から接地への電流が絞られ、これによりブレード36Aの算定レセプタ電圧は相対的に高くなる。一方、溶損箇所の電圧降下を受けて、ブレード36B,36Cの算定レセプタ電圧は相対的に低くなる。制御部16は、特定のブレード(ここではブレード36A)の算定レセプタ電圧が他の2つブレード(ここではブレード36B,36C)の算定レセプタ電圧より有意に高い場合に、有意に高い特定のブレード(ブレード36A)に対して異常判定を行う。またこのとき、その異常個所は、当該特定のブレード内の避雷導線のうち、光ファイバ電流センサよりも集合系統52寄りにあるものと判定する。
なお、本実施形態においては、落雷電流、算定レセプタ電圧は、電流値、電圧値を用いた例を示したが、電流波形、電圧波形に基づいて系統の正常作動を判断することも可能である。